説明

光ピックアップ及び光ディスク装置

【課題】 対物レンズをフォーカス方向、トラッキング方向及びチルト方向に駆動可能にするとともに、不要共振を低減する。
【解決手段】 対物レンズ21,22が取り付けられ、対物レンズ21,22の光軸と平行なフォーカス方向Fと、対物レンズ21,22の光軸方向と直交するトラッキング方向Tとに移動されるレンズホルダ2と、レンズホルダ2をフォーカス方向F及びトラッキング方向Tに移動可能に支持する支持ブロック3と、支持ブロック3をベース8に対して傾動可能に支持する支持部材4と、支持ブロック3をタンジェンシャル方向Tzを軸とした軸回り方向に傾斜させる駆動力を支持ブロック3に付与し、支持ブロック3に支持されたレンズホルダ2を傾斜させる駆動手段5とを備え、支持ブロック3と、ベース8との間に、支持ブロック3の振動を抑制する振動抑制手段7を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに情報信号の記録をし、光ディスクに記録された情報信号の再生を行うために用いられる光ピックアップ及びこの光ピックアップを用いた光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報信号の記録媒体として、DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクが用いられ、この種の光ディスクに情報信号の記録を行い、あるいは光ディスクに記録された情報信号の再生を行うために光ピックアップが用いられている。
【0003】
このような光ピックアップは、光源から出射された光ビームを光ディスクの記録面上に合焦させるため、対物レンズをその光軸方向であるフォーカス方向に移動させるフォーカス用アクチュエータを備え、さらに、光ビームが光ディスクに設けた記録トラックを追従するようにするため、対物レンズをその光軸と直交する平面方向でのトラッキング方向に移動させるトラッキング用アクチュエータとを備えている。すなわち、光ピックアップは、対物レンズをフォーカス方向とトラッキング方向との互いに直交する2軸方向に駆動変位させる2軸アクチュエータを備えている。
【0004】
近年、光ディスクの高記録密度化に伴って、光ディスクの記録面に形成される光スポットの形状をより正確な円形とすることが要求されてきており、対物レンズをその光軸が光ディスクの記録面に対して垂直となるように制御することが一層重要となっている。このため、フォーカス方向及びトラッキング方向への変位に加えて、対物レンズの光軸を光ディスクの傾きに追従して傾けるいわゆるチルト方向への駆動変位を可能とした3軸アクチュエータを備えた光ピックアップが提案されている。
【0005】
かかる光ピックアップは、対物レンズを支持したレンズホルダにフォーカスコイルとトラッキングコイルとが取り付けられ、これらのコイルの対向面にマグネットが取り付けられる。そして、これらのコイルに通電することで発生する電磁力によりフォーカス及びトラッキング動作を行う。さらに、レンズホルダにチルト用のコイルを取り付けることによりチルト方向への駆動変位を可能とする。
【0006】
しかしながら、この光ピックアップでは、可動部分であるレンズホルダの重量が増加してしまい、フォーカス及びトラッキング方向への駆動感度が低下する等の問題があった。
【0007】
また、3軸アクチュエータを備えた光ピックアップとしては、レンズホルダをフォーカス及びトラッキング方向へ支持する支持ばね機構とは別に、このレンズホルダを支持する支持ブロックをチルト方向へ傾動可能に支持するチルト用支持ばね機構を有するものが考えられる。
【0008】
しかし、このチルト用支持ばね機構を有する光ピックアップは、レンズホルダを支持ばね機構により支持する支持ブロックをさらにチルト用支持ばね機構で支持する構成から、支持ブロック及びこの支持ブロックに支持されたレンズホルダに不要共振を発生させてしまうおそれがあった。すなわち、かかる光ピックアップでは、不要共振によるサーボ特性の劣化が問題となっていた。
【0009】
【特許文献1】特開平9−44879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、対物レンズをフォーカス方向、トラッキング方向及びチルト方向に駆動可能にするとともに、不要共振を低減した光ピックアップ及び光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明に係る光ピックアップは、対物レンズが取り付けられ、上記対物レンズの光軸と平行なフォーカス方向と、上記対物レンズの光軸方向と直交するトラッキング方向とに移動されるレンズホルダと、上記レンズホルダを上記フォーカス方向及び上記トラッキング方向に移動可能に支持する支持ブロックと、上記支持ブロックをベースに対して傾動可能に支持する支持部材と、上記支持ブロックを上記フォーカス方向及び上記トラッキング方向に直交するタンジェンシャル方向を軸とした軸回り方向に傾斜させる駆動力を上記支持ブロックに付与し、上記支持ブロックに支持された上記レンズホルダを傾斜させる駆動手段とを備え、上記支持ブロックと、上記ベースとの間に、上記支持ブロックの振動を抑制する振動抑制手段を設けた。
【0012】
この目的を達成するため、本発明に係る光ディスク装置は、光ディスクを保持して回転駆動する駆動手段と、上記駆動手段によって回転駆動する光ディスクに対し情報信号の記録又は再生行う光ビームを照射するとともに、上記光ディスクから反射される反射光ビームを検出する光ピックアップとを有する光ディスク装置であり、この光ディスク装置に用いる光ピックアップとして、上述したようなものを用いたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、対物レンズをフォーカス方向、トラッキング方向及びチルト方向に駆動可能にするとともに、不要共振を低減し、良好なサーボ特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を適用した光ピックアップを用いた光ディスク装置について、図面を参照して説明する。
【0015】
本発明を適用した光ディスク装置101は、図1に示すように、CD−RやDVD±R、DVD−RAMなどの光記録媒体としての光ディスク102を回転駆動する駆動手段としてのスピンドルモータ103と、光ピックアップ1と、光ピックアップ1をその半径方向に移動させる駆動手段としての送りモータ105とを備えている。ここで、スピンドルモータ103は、システムコントローラ107及び制御回路部109により所定の回転数で駆動するように制御されている。
【0016】
信号変復調部及びECCブロック108は、信号処理部120から出力される信号の変調、復調及びECC(エラー訂正符号)の付加を行う。光ピックアップ1は、システムコントローラ107及び制御回路部109からの指令に従って回転する光ディスク102の信号記録面に対して光ビームを照射する。このような光ビームの照射により光ディスク102に対する情報信号の記録が行われ、光ディスクに記録された情報信号の再生が行われる。
【0017】
また、光ピックアップ1は、光ディスク102の信号記録面から反射される反射光ビームに基づいて、後述するような各種の光ビームを検出し、各光ビームから得られる検出信号を信号処理部120に供給するように構成されている。
【0018】
信号処理部120は、各光ビームを検出して得られる検出信号に基づいて各種のサーボ用信号、すなわち、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号を生成し、さらに、光ディスクに記録された情報信号であるRF信号を生成する。また、再生対象とされる記録媒体の種類に応じて、制御回路部109、信号変調及びECCブロック108等により、これらの信号に基づく復調及び誤り訂正処理等の所定の処理が行われる。
【0019】
ここで、信号変調及びECCブロック108により復調された記録信号が、例えばコンピュータのデータストレージ用であれば、インタフェース111を介して外部コンピュータ130等に送出される。これにより、外部コンピュータ130等は光ディスク102に記録された信号を再生信号として受け取ることができるように構成されている。
【0020】
また、信号変調及びECCブロック108により復調された記録信号がオーディオ・ビジュアル用であれば、D/A、A/D変換器112のD/A変換部でデジタル/アナログ変換され、オーディオ・ビジュアル処理部113に供給される。そして、このオーディオ・ビジュアル処理部113でオーディオ・ビデオ信号処理が行われ、オーディオ・ビジュアル信号入出力部114を介して外部の撮像・映写機器に伝送される。
【0021】
光ピックアップ1には、送りモータ105が接続されている。光ピックアップ1は、送りモータ105の回転によって光ディスク102の径方向に送り操作され、光ディスク102上の所定の記録トラックまで移動される。スピンドルモータ103の制御と、送りモータ105の制御と、光ピックアップ1の対物レンズをその光軸方向のフォーカス方向及び光軸方向と直交するトラッキング方向へ移動変位させるアクチュエータの制御は、それぞれ制御回路部109により行われる。
【0022】
すなわち、制御回路部109は、スピンドルモータ103の制御を行い、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に基づいてアクチュエータの制御を行う。
【0023】
また、制御回路部109は、信号処理部120から入力されるフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、RF信号などに基づいて、後述するフォーカスコイル10及びトラッキングコイル11(図4参照)に供給するための駆動信号(駆動電流)をそれぞれ生成するように構成されている。
【0024】
また、レーザ制御部121は、光ピックアップ1におけるレーザ光源を制御するものである。
【0025】
尚、ここでフォーカス方向Fとは、光ピックアップ1の対物レンズ21,22(図2参照)の光軸方向をいい、タンジェンシャル方向Tzとはフォーカス方向Fと直交する方向であって光ディスク装置101の円周のタンジェンシャル方向と平行する方向をいい、トラッキング方向Tとはフォーカス方向F及びタンジェンシャルTz方向と直交する方向をいう。また、対物レンズ21,22の光軸と、この光軸を通り光ディスク102の半径方向に延在する仮想線とのなす角度が90度に対してずれている差分の角度をラジアル方向のチルト角という。
【0026】
また、光ディスク装置101には、スピンドルモータ103に装着された光ディスク102の傾きを検出する傾き検出センサ55(図9参照)が設けられている。傾き検出センサ55によって検出された検出信号は、制御回路部109に供給される。制御回路部109は、傾き検出信号に基づいてチルト角制御信号を出力し、後述する駆動手段5に供給する。駆動手段5は、チルト角制御信号に応じた駆動電流により対物レンズ21,22を駆動変位させてチルト角の調整を行う。
【0027】
次に、本発明が適用された光ピックアップ1について詳細に説明する。
【0028】
光ピックアップ1は、波長を異にする複数種類の光ビームを選択的に用いて情報信号の記録又は再生が行われる複数種類の光ディスク102に対して、情報信号の記録及び/又は再生を行う光ディスク装置に用いられるものであり、具体的には、波長400〜410nm程度の光ビームを用いて情報信号の記録又は再生が行われる第1の光ディスクと、波長650〜660nm程度の光ビームを用いて情報信号の記録又は再生が行われる第2の光ディスクと、波長760〜800nm程度の光ビームを用いて情報信号の記録又は再生が行われる第3の光ディスクとに対して情報信号の記録及び/又は再生を行うものとして説明する。
【0029】
尚、以下では、光ピックアップ1を異なる3種類の光ディスクに対して、情報信号の記録及び/又は再生を行うものとして説明するが、これに限られるものではなく、異なる複数種類又は1種類の光ディスクに対して情報信号の記録及び/又は再生を行うものであってもよい。
【0030】
本発明が適用された光ピックアップ1は、上述した異なる波長の複数種類の光ビームを出射する光源としての半導体レーザと、光ディスク102の信号記録面から反射される反射光ビームを検出する光検出素子としてのフォトダイオードと、半導体レーザからの光ビームを光ディスク102に導くとともに、光ディスク102で反射した光ビームを光検出素子に導く光学系とを有している。
【0031】
この光ピックアップ1は、図2及び図3に示すように、光ディスク装置101の筐体内で光ディスク102の半径方向に移動可能に設けられた取り付け基台9上に設けられている。
【0032】
また、光ピックアップ1は、図2乃至図4に示すように光源から出射された光ビームを集光して光ディスクに照射する複数の対物レンズ21,22を支持するレンズホルダ2と、レンズホルダ2からタンジェンシャル方向Tzに間隔をおいて配置され取り付け基台9に取り付けられた支持ブロック3とを備える。この第1及び第2の対物レンズ21,22は、光ピックアップ1の光学系の一部を構成している。
【0033】
ここで、第1の対物レンズ21は、例えば、波長を400〜410nmとする光ビームを第1の光ディスクに集光させるために用いられ、第2の対物レンズ22は、波長を650〜660nmとする光ビームと波長を760〜800nmとする光ビームとを第2又は第3の光ディスクに集光させるために用いられる。また、第1及び第2の対物レンズ21,22は、タンジェンシャル方向Tzに並列して配置されている。ここで、第1の対物レンズ21は、後述する支持アーム6a〜6dの固定部側である支持ブロック3側に位置して設けられ、第2の対物レンズ22は、レンズホルダ2の先端側に位置して設けられる。
【0034】
尚、光ピックアップ1では、タンジェンシャル方向Tzに並んで配置される複数の対物レンズ21,22を備えるように構成したが、これに限られるものではなく、例えば複数の対物レンズをラジアル方向に配置するように構成してもよく、また、1つの対物レンズを備えるように構成してもよい。
【0035】
レンズホルダ2は、図2及び図4に示すように、第1及び第2の対物レンズ21,22の外周面側を囲むように設けられ、第1及び第2の対物レンズ21,22を対物レンズの光軸と平行なフォーカス方向Fと、光軸と直交するトラッキング方向Tとに移動可能に支持している。
【0036】
レンズホルダ2のフォーカス方向F及びトラッキング方向Tに直交するタンジェンシャル方向Tzに相対向する側面には、フォーカスコイル10及びトラッキングコイル11が取り付けられている。トラッキングコイル11は、レンズホルダ2の各側面に一対ずつ設けられている。
【0037】
レンズホルダ2のトラッキング方向Tに離間した両側面には、それぞれフォーカス方向Fに間隔をおいて一対ずつの支持アーム6a,6b及び支持アーム6c、6dを支持するアーム支持部24が設けられている。
【0038】
支持ブロック3は、図2及び図4に示すように、レンズホルダ2に対してトラッキング方向Tに沿った長さと、フォーカス方向Fに沿った高さとを有している。
【0039】
支持ブロック3のトラッキング方向Tに離間した両側面には、それぞれフォーカス方向Fに間隔をおいて一対ずつの支持アーム6a,6b及び支持アーム6c,6dを支持するアーム支持部31が設けられている。支持ブロック3の背面側には、プリント配線基板が取り付けられている。このプリント配線基板には、制御回路部109からフォーカス用の駆動電流とトラッキング用の駆動電流が供給される。
【0040】
そして、レンズホルダ2のトラッキング方向Tにおける両側のアーム支持部24と、支持ブロック3のトラッキング方向Tにおける両側のアーム支持部31とは、それぞれ一方及び他方の一対ずつの支持アーム6a,6b,6c,6dで連結されている。一方及び他方の各支持アーム6a,6b,6c,6dは、図2に示すように、フォーカス方向Tに間隔をおいて互いに平行に設けられ、支持ブロック3に対してレンズホルダ2をフォーカス方向Fとトラッキング方向Tとに移動可能に支持している。これら各支持アーム6a,6b,6c,6dは、導電性を有するとともに、弾性を有する線状部材により構成されている。
【0041】
支持ブロック3の一方の側に配設された一対の支持アーム6a,6bは、そのレンズホルダ2側の端部が、フォーカスコイル10に設けられた接続端子12,12に半田付けなどで接続され、支持ブロック3側の端部が、プリント配線基板15に設けた導電パターンに接続されている。これにより、制御回路部109からのフォーカス用の駆動電流が支持アーム6a,6bを介してフォーカスコイル10に供給される。
【0042】
同様に、支持ブロック3の他方の側に配設された支持アーム6c,6dは、そのレンズホルダ2側の端部が、トラッキングコイル11に設けられた接続端子13に半田付けなどで接続され、支持ブロック3側の端部が、プリント配線基板15に設けた導電パターンに接続されている。これにより、制御回路部109からのトラッキング用の駆動電流が支持アーム6c,6dを介してトラッキングコイル11に供給される。
【0043】
第1及び第2の対物レンズ21,22が取り付けられたレンズホルダ2は、支持アーム6a〜6dの延長方向において、第1及び第2の対物レンズ21,22の光軸間の中間部分の両側を6a〜6dによって支持されている。すなわち、レンズホルダ2は、第1及び第2の対物レンズ21,22の光軸間の中間部分の両側に設けたアーム支持部24に支持アーム6a〜6dの先端部を固定することによって、少なくともフォーカス方向F及びトラッキング方向Tの2軸方向に変位可能に支持される。
【0044】
尚、レンズホルダ2の支持アーム6a〜6dの先端部によって支持される位置には、フォーカスコイル10及びトラッキングコイル11を取り付けたレンズホルダ2の重心の両側に位置することが望ましい。このような位置が支持されることにより、第1及び第2の対物レンズ21,22は、捩れ等を生じさせることなくフォーカス方向F及びトラッキング方向Tに安定して変位可能となる。
【0045】
そして、レンズホルダ2と取り付け基台9との間には、図2及び図4に示すように、ヨーク18が配設されている。ヨーク18は、ベース8に取り付けられ取り付け基台9に固定されている。このヨーク18のほぼ中央部には、第1及び第2の対物レンズ21,22に入射する光ビームを透過するための開口部が設けられている。
【0046】
ヨーク18のタンジェンシャル方向Tzの両側には、図2及び図4に示すように、第1及び第2の対物レンズ21,22を挟んで相対向するように一対のヨーク片18a,18bが立ち上がり形成される。各ヨーク片18a,18bの相対向する面には、マグネット19,19が取り付けられている。これら各マグネット19,19は、レンズホルダ2の相対向する側面にそれぞれ取り付けられたフォーカスコイル10及びトラッキングコイル11に相対向されている。マグネット19,19は、図5(a)又は図5(b)に示すように着磁されており、対向して配置されるフォーカスコイル10及びトラッキングコイル11に所定の磁界を与える。尚、図5(a)又は図5(b)に示すS極及びN極は、逆であってもよい。
【0047】
このように、フォーカスコイル10、トラッキングコイル11にマグネット19が対向されることにより、フォーカスコイル10にフォーカス用の駆動電流が供給されると、フォーカスコイル10に供給された駆動電流と各マグネット19からの磁界との相互作用によってレンズホルダ2をフォーカス方向に駆動変位させ、トラッキングコイル11にトラッキング用の駆動電流が供給されると、トラッキングコイル11に供給された駆動電流と各マグネット19からの磁界との相互作用によってレンズホルダ2をトラッキング方向Tに駆動変位させる。
【0048】
その結果、レンズホルダ2に支持された第1及び第2の対物レンズ21,22が、フォーカス方向F又はトラッキング方向Tに駆動変位され、第1及び第2の対物レンズ21,22を介して光ディスク102に照射される光ビームが光ディスク102の信号記録面に合焦するように制御されるフォーカス制御が行われ、光ビームが光ディスク102に形成された記録トラックを追従するように制御されるトラッキング制御が行われる。
【0049】
そして、本発明を適用した光ピックアップ1は、左右一対ずつの支持アーム6a〜6dを介してレンズホルダ2を支持した支持ブロック3をベース8に対して傾動可能に支持する支持部材4と、支持部材4に傾動可能に支持された支持ブロック3を光ディスク102の傾きに応じてタンジェンシャル方向Tzを軸とした軸回り方向であるチルト方向に傾斜させる駆動手段5とを備える。
【0050】
支持部材4は、図2及び図6に示すように、帯状の板ばね材を折り曲げて形成したもので、支持ブロック3に固定される支持ブロック取付片42と、支持ブロック取付片42の両端から延長された一対の脚片41,41とを備える。これら脚片41,41の先端部からは、支持部材4をベース8に取り付けるためのベース取付片43,43が設けられている。支持ブロック取付片42の中央には、貫通穴42aが設けられている。
【0051】
駆動手段5は、支持ブロック3の下面に取り付けられるチルト用のコイル51と、このコイル51に対向してベース8に取り付けられる二極着磁マグネット52とから構成される。二極着磁マグネット52は、平板状に形成されており、ベース8上に接着剤等により固定されている。
【0052】
支持部材4は、チルト用コイル51が接合された取付部材51aに差し込まれることでチルト用コイル51と一体化されるとともに、支持ブロック取付片42を支持ブロック3の下面側に接合して固定ねじにより螺合されることにより支持ブロック3に固定される。支持部材4は、支持ブロック取付片42上に支持ブロック3を載置して固定されるとともに、ベース取付片43,43がベース8に固定されることにより、支持ブロック3をベース8に対して傾動可能に支持する。
【0053】
二極着磁マグネット52は、図2及び図6に示すように、第1及び第2の対物レンズ21,22のフォーカス方向F及びトラッキング方向Tに垂直なタンジェンシャル方向Tzを分極線としてN極とS極が配置されるように固定される。また、支持部材4は、各脚片41と支持ブロック取付片42との連結部とされている折り曲げ部及び各脚片41とベース取付片43との連結部とされている曲げ部が、タンジェンシャル方向Tzと平行となるように固定される。さらに、支持部材4は、支持ブロック3に対してガタが生じないように固定される。
【0054】
また、支持部材4のベース取付片43,43にはそれぞれ貫通穴43a,43aが設けられ、ベース8には、各貫通穴43a,43aに挿通される図示しない固定ねじが螺合するねじ穴が設けられている。支持部材4は、ベース取付片43,43の貫通穴43a,43aにそれぞれに固定ねじを挿通し、これら固定ねじをねじ穴に螺合することでベース8に固定される。これにより、支持ブロック3は、支持部材4の一対の脚片41,41を介してベース8に支持される。
【0055】
ところで、支持部材4を構成する一対の脚片41,41は、図7に示すように、支持ブロック取付片42側からベース取付片43,43側に向かって間隔が広がるように傾斜して非平行に設けられている。そして、互いに傾斜された一対の脚片41,41は、支持ブロック取付片42上に支持された支持ブロック3側に向かって延長した仮想線L1,L2の交点Oと同じ高さに対物レンズ21,22の重心の高さが略一致するように形成されている。したがって、支持部材4は、全体で台形状に形成されている。
【0056】
また、二極着磁マグネット52は、これら一対の脚片41,41の間でコイル51と対向するようにしてベース8上に固定される。
【0057】
そして、チルト用のコイル51に駆動電流が供給されると、コイル51に流れる電流と、二極着磁マグネット52の磁界との作用により、二極着磁マグネット52に対してコイル51を動かす力、すなわち、ベース8に対して支持部材4及びこれに支持された支持ブロック3を駆動する力が発生する。支持部材4は、板ばねにより形成され、一対の非平行な脚片41,41を有し、全体で台形状をなす支持部材4で支持されているので、駆動力を受けたとき、支持部材4の形状に倣ってその姿勢が可変される。
【0058】
ところで、支持部材4は、ねじれに対しては剛性を持つように所定の幅を有する。そして、支持部材4は支持ブロック取付片42が支持ブロック3に固定され、取付片43がベース8に固定されることで、駆動力を受けたときに各脚片41,41が弓なりに弾性変形することができる。また、脚片41,41と支持ブロック取付片42との間の連結部となる折り曲げ部及び脚片41,41とベース取付片43、43との連結部となる折り曲げ部も弾性変形することができる。
【0059】
次に、上述したような支持ブロック3を駆動する駆動手段5を備えた光ピックアップ1の動作を説明する。
【0060】
光ピックアップ1は、駆動手段5のコイル51に給電がされていない状態では、図7に示すように、支持部材4が変形することなく中立状態にある。このとき、支持部材4は、レンズホルダ2に支持された第1及び第2の対物レンズ21,22が水平となるように形状等が設定されている。
【0061】
図7に示す状態において、コイル51に駆動電流が供給されると、二極着磁マグネット52の磁界中のコイル51に電流が流れることで、支持ブロック3を二極着磁マグネット52の延在方向であるトラッキング方向Tに沿って略水平方向に駆動する力が発生する。支持ブロック3は、非平行な一対の脚片41,41を有する台形の支持部材4により支持されているので、駆動力を受けたとき、支持ブロック3の姿勢が支持部材4の形状に倣って制御される。
【0062】
すなわち、支持ブロック3を略水平方向に駆動する力が加わると、図8に示すように、支持部材4の一方の脚片41はベース8の平面に対する角度が小さくなる矢印a方向に弾性変形し、他方の脚片41はベース8の平面に対する角度が大きくなる矢印b方向に弾性変形する。これにより、支持ブロック3は、図8中矢印c方向に傾く。このとき、支持ブロック3は、図7に示す中立状態にある一対の脚片41,41の延長線上の交点Oを中心として回転する。
【0063】
支持ブロック3は、4本の支持アーム6a〜6dによりレンズホルダ2を支持しているので、支持ブロック3が傾斜することで、レンズホルダ2が傾斜する、これにより、所定の制御信号に応じた駆動電流をコイル51に供給することで、レンズホルダ2に支持された第1及び第2の対物レンズ21,22の光軸を、光ディスクの反り等に対応させて傾斜させるチルト角の制御を行うことができる。支持ブロック3の傾斜の方向は、コイル51に供給される駆動電流の向きで切り換えられる。また、支持ブロック3の傾斜の角度は、コイル51に供給される駆動電流電圧値により所定の角度に調整できる。
【0064】
上述したように、支持部材4を構成する互いに傾斜された一対の脚片41,41は、支持ブロック取付片42上に支持された支持ブロック3側に向かって延長した仮想線L1,L2の交点Oと同じ高さに対物レンズ21,22の重心の高さとを略一致させてあるので、レンズホルダ2は、対物レンズ21,22の重心を通る軸を中心とした回転を行う。これにより、対物レンズ21,22が水平な状態と傾斜した状態とで、光軸はほぼ一致している。
【0065】
このように、駆動手段5は、チルト用のコイル51に駆動電流を流すことで、支持ブロック3をチルト方向に傾斜させる駆動力を支持ブロック3に付与することができ、支持ブロック3に支持されたレンズホルダ2及び対物レンズ21,22を傾斜させることができる。
【0066】
光ピックアップ1は、支持ブロック3に対して駆動手段5から駆動力を付与すると、支持部材4の一対の脚片41,41が変位し、支持ブロック3を傾動させることでレンズホルダ2が変位され、対物レンズ21,22を傾斜させることができ、したがって、光ディスクの反り等に応じて、対物レンズ21,22を傾けることができる。また、支持部材4で支持した支持ブロック3を駆動するので、レンズホルダ2の構成を変更することなく、対物レンズ21,22を光ディスクの反り等に応じて傾ける構成を付加することができる。
【0067】
尚、上述した支持部材4を用いた構成では、支持ブロック3は、正確に一点を中心とする回転動作を行っていない。このため、支持ブロック3を傾斜させてレンズホルダ2を回転させると、第1及び第2の対物レンズ21,22はフォーカス方向及びトラッキング方向にも微小量移動する。このため、必要に応じてフォーカス補正やトラッキング補正を行う。また、レンズホルダ2を含む支持ブロック3の傾斜による対物レンズ21,22の光軸に対する微小移動量を予め測定し、支持ブロック3の傾斜量に応じてフォーカス補正及びトラッキング補正を行ってもよい。
【0068】
次に、レンズホルダ2を支持した支持ブロック3を傾動させる制御系を図9を参照して説明する。
【0069】
図9は、光ピックアップ1の制御系を示すブロック図であり、図2及び図6に示すコイル51に供給する制御信号を得るため、例えば、光ディスク102の傾きを検出する検出装置としての傾き検出センサ55を備える。そして、傾き検出センサ55の出力に応じて、コイル駆動回路56はコイル51に制御信号を印加し、レンズホルダ2を光ディスク102の反り等によるディスク面の傾きに合わせて回転させる。尚、この動作は、光ディスク102がスピンドルモータ103に最初に装着されたときに行い、再生中等は、補正されたレンズホルダ2の傾きを維持する。ここでは、傾き補正を静的に行うようにしたが、後述するフォーカス制御及びトラッキング制御と同様に、チルト制御信号を常時検出し、このチルト制御信号に応じて記録・再生中に動的に傾き補正を行うようにしてもよい。
【0070】
また、光ディスクの傾きは、図示しない光検出器の出力にノイズとなって現れるため、傾き検出センサを用いず、光検出器の出力のノイズが少なくなる方向にレンズホルダ2を傾斜させるように駆動手段5を制御するような制御機能を持たせてもよい。
【0071】
以上のように、支持ブロック3を駆動する駆動手段5を設けてレンズホルダ2を傾斜させる構成とすれば、光ディスクの傾斜を検出する手段を設けることで、個々の光ディスクの反り等に対応した量だけ第1及び第2の対物レンズ21,22を傾動させて、第1及び第2の対物レンズ21,22の光軸が光ディスクの面に対して垂直となるように補正できる。これにより、光ディスクの信号記録面に光ビームが集光されて形成される光スポットの形状を常に適正なものとできる。また、人手によりレンズホルダ2の傾きを調整する作業も不要となる。
【0072】
次に、レンズホルダ2のフォーカス制御及びトラッキング制御について説明する。フォーカスコイル10に再生信号から生成したフォーカス制御信号に応じた駆動電流が供給されると、フォーカスコイル10に流れる電流と、ヨーク18及びヨーク片18a,18aと、これらヨーク片18a,18aに支持されたマグネット19,19とによって形成された磁界との作用により生ずる力で、レンズホルダ2を駆動電流の向きに応じて、第1及び第2の対物レンズ21,22の光軸方向と平行な上昇あるいは下降させる方向の力が生じる。レンズホルダ2は、4本の支持アーム6a〜6dの一端部に支持されているので、昇降する方向の力を受けると、スピンドルモータ103によって回転される光ディスク102に対して平行な姿勢を保ったまま上下に昇降する。これにより、対物レンズ21,22が光軸に沿った方向にフォーカス制御され、対物レンズ21,22からの光スポットが光ディスクのトラック上に合焦点される。
【0073】
また、トラッキングコイル11に再生信号から生成したトラッキング制御信号に応じた駆動電流が供給されると、このコイル11に流れる電流と、ヨーク18及びヨーク片18a,18aと、これらヨーク片18a,18aに支持されたマグネット19,19とによって形成された磁界との作用により生ずる力で、レンズホルダ2を電流の向きに応じて、スピンドルモータ103によって回転される光ディスク102の内周方向、又は光ディスク102の外周方向へ移動させる力が生じる。レンズホルダ2は、4本の支持アーム6a〜6dの一端部に支持されているので、光ディスク102の平面と平行な方向に移動する方向の力を受けると、光ディスク102に形成された記録トラックの法線方向とほぼ平行な方向に移動変位する。これにより第1及び第2の対物レンズ21,22が光ディスク102の径方向に移動制御されるトラッキング制御が行われ、第1及び第2の対物レンズ21,22から出射された光ビームが所望の記録トラックをトレースすることができる。
【0074】
尚、このフォーカス制御及びトラッキング制御による反力が支持アーム6a〜6dを介して支持ブロック3に伝わるが、支持部材4は、レンズホルダ2を移動させる力では変形しないように形成されている。
【0075】
さらに、本発明を適用した光ピックアップ1は、支持ブロック3とベース8との間に、支持ブロック3の振動を抑制する振動抑制手段7を備える。
【0076】
振動抑制手段7は、図4に示すように、ベース8に取り付けられたヨーク18のヨーク片18bと、支持ブロック3との対向する面に設けられるダンピング用のゲル等の粘弾性部材7aである。尚、この振動抑制手段7としての粘弾性部材7aは、ここでは、ヨーク片18bと支持ブロック3との間に設けるように構成したがこれに限られるものではなく、ベース8と一体に立ち上げられた部材又はベース8に固定される部材と支持ブロック3との間に設けるように構成してもよく、また、ベース8と支持ブロック3の下部との間に設けるように構成してもよい。
【0077】
この粘弾性部材7aは、静的な外力に対してはばね性をもたないため、静的なチルト動作に対する感度には影響を及ぼすことはなく、チルト動作に必要な消費電力は変化しない。また、この粘弾性部材7aは、時間的変化を有する周期的な外力に対してはばね性を有し、例えば、ローリング周波数が高くなるように作用し、ディスク面振れとの共振を回避できる。
【0078】
以上のように構成された光ピックアップ1は、フォーカスコイル10及びトラッキングコイル11並びにマグネット19,19を備えることにより、支持アーム6a〜6dを弾性変位させて、レンズホルダ2に保持された対物レンズ21,22をフォーカス方向F及びトラッキング方向Tに駆動変位させることができる。
【0079】
また、光ピックアップ1は、チルト用コイル51及び二極着磁マグネット52を備えることにより、支持部材4を弾性変位させて、支持ブロック3及びレンズホルダ2に保持された対物レンズ21,22をタンジェンシャル方向Tzを軸とした軸回り方向であるチルト方向に駆動変位させることができる。
【0080】
また、光ピックアップ1は、2つの対物レンズ21,22を共通のレンズホルダ2に取り付けた場合においても、部品点数を増加することなくチルト角の調整が可能となり、複数の対物レンズ21,22を用いることによる可動部の重量化を抑え、対物レンズ21,22を少ない駆動電流により安定して駆動制御することができる。
【0081】
また、対物レンズ21,22を少ない駆動電流により安定して駆動制御することができる光ピックアップ1を用いた光ディスク装置101は、省電力化を実現できるばかりか、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号及びチルト制御信号に応じて対物レンズ21,22の正確に駆動変位することができ、情報信号の記録又は再生特性の向上を実現できる。
【0082】
ところで、光ピックアップ1において、第1及び第2の対物レンズ21,22が取り付けられたレンズホルダ2を支持ブロック3に対してフォーカス方向及びトラッキング方向に移動可能に支持する構成、すなわち、レンズホルダ2を支持ブロック3に対して支持アーム6a〜6dを介して支持する構成、及び、この支持ブロック3を支持部材4によりチルト方向に傾動可能に支持する構成から、従来の2軸アクチュエータに比べて支持ばね系の固有モードが増え、このことによる支持ブロック3及びレンズホルダ2に発生する不要共振が問題となる。この不要共振は、具体的には、支持ブロック3及びレンズホルダ2のタンジェンシャル方向Tzを軸とした軸回り方向に発生するローリング、トラッキング方向Tを軸とした軸回り方向に発生するピッチング、及びフォーカス方向Fを軸とした軸回り方向に発生するヨーイングである。
【0083】
本発明を適用した光ピックアップ1は、支持ブロック3とベース8との間に支持ブロック3の振動を抑制する振動抑制手段7として粘弾性部材7aを設けるように構成したことにより、ローリング、ピッチング及びヨーイング等の不要共振を減衰させることができる。そして、光ピックアップ1は、不要共振による伝達関数の位相まわり、そしてサーボ応答の劣化等を防止することができ、光ディスクに対して情報信号の良好な記録及び/又は再生を行うことを可能とする。
【0084】
よって、本発明を適用した光ピックアップ1は、レンズホルダ2を支持ブロック3により支持し、この支持ブロック3を支持部材4によりベース8に対して傾動可能に支持する構成を備えることにより、対物レンズ21,22をフォーカス方向F、トラッキング方向T及びチルト方向に駆動可能にするとともに、この構成により発生する不要共振を振動抑制手段7により低減することを可能とし、良好なサーボ特性を得ることができる。
【0085】
また、本発明を適用した光ピックアップ1は、レンズホルダ2を支持ブロック3により支持し、この支持ブロック3を支持部材4によりベース8に対して傾動可能に支持する構成、及びこの支持ブロック3とベース8との間に振動抑制手段7を設ける構成により、光ピックアップを構成する光学部品の製造誤差等による特性のばらつきを抑えることができ、サーボ特性を向上させるとともに製品の歩留りを向上させることができる。
【0086】
尚、上述の光ピックアップ1では、振動抑制手段7として、ヨーク片18bと支持ブロック3との間に粘弾性部材7aを設けるように構成したがこれに限られものではなく、例えば、支持ブロック3をベース8に対して傾動可能に支持する支持部材に一体に振動抑制手段を設けるように構成してもよい。
【0087】
次に、図10に示すように支持部材に一体に振動抑制手段を設けた、図2に示す光ピックアップ61について説明する。尚、以下の説明において、上述した光ピックアップ1と共通する部分については、共通の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0088】
本発明を適用した光ピックアップ61は、図2に示すように、レンズホルダ2と、支持ブロック3と、この支持ブロック3をベース8に対して傾動可能に支持する支持部材64と、駆動手段5とを備える。
【0089】
支持部材64は、図10に示すように、支持ブロック3が固定される支持ブロック取付片72と、この支持ブロック取付片72の両端から延長され、支持ブロック取付片72に固定された支持ブロック3を支持する一対の脚片71,71とを有する。この一対の脚片71,71は、支持ブロック3を支持する支持ブロック取付片72側から先端側に向かって互いの間隔を拡げるように傾斜して形成される。脚片71,71の先端部には、支持部材64をベース8に対して固定するためのベース取付片73,73が設けられている。支持部材64は、上述した支持部材4と同様に、支持ブロック3を支持ブロック取付片74上に載置して一体化されることにより支持ブロック3をベース8に対して傾動可能に支持する。
【0090】
この支持部材64は、2枚の帯状の板ばね材を折り曲げて形成した板ばね部材64a,64bを振動抑制手段67となる両面テープ等の粘弾性部材67aを介して重ね合わされることにより形成される。粘弾性部材67aは、板ばね部材64a,64bを接合して一体化する。
【0091】
尚、ここでは、折り曲げて形成した板ばね部材64a,64bを粘弾性部材で接合するように構成したが、2枚の帯状の板ばね材を両面テープ等の粘弾性部材により接合した後に折り曲げるようにしてもよい。また、支持部材64は、一対の脚片71,71、支持ブロック取付片72及びベース取付片73,73を全て2枚の板ばね材及び粘弾性部材により形成したが、少なくとも一対の脚片の部分が2枚の板ばね部材を粘弾性部材を介して重ね合わされるように構成すればよい。
【0092】
そして、この粘弾性部材67aからなる振動抑制手段67は、時間的変化を有する周期的な外力に対してはばね性を有し、支持ブロック3の振動を抑制して、不要共振を減衰させることができる。
【0093】
本発明を適用した光ピックアップ61は、支持ブロック3とベース8との間、すなわち、支持部材64に一体に振動抑制手段67として粘弾性部材67aを設けるように構成したことにより、ローリング、ピッチング及びヨーイング等の不要共振を減衰させることができる。そして、光ピックアップ61は、不要共振による伝達関数の位相まわり、そしてサーボ応答の劣化等を防止することができ、光ディスクに対して情報信号の良好な記録及び/又は再生を行うことを可能とする。
【0094】
よって、本発明を適用した光ピックアップ61は、レンズホルダ2を支持ブロック3により支持し、この支持ブロック3を支持部材64によりベース8に対して傾動可能に支持する構成を備えることにより、対物レンズ21,22をフォーカス方向F、トラッキング方向T及びチルト方向に駆動可能にするとともに、この構成により発生する不要共振を振動抑制手段67により低減することを可能とし、良好なサーボ特性を得ることができる。
【0095】
また、本発明を適用した光ピックアップ61は、レンズホルダ2を支持ブロック3により支持し、この支持ブロック3を支持部材64によりベース8に対して傾動可能に支持する構成、及びこの支持ブロック3とベース8との間に振動抑制手段67を設ける構成により、光ピックアップを構成する光学部品の製造誤差等による特性のばらつきを抑えることができ、サーボ特性を向上させるとともに製品の歩留りを向上させることができる。
【0096】
また、本発明を適用した光ピックアップを構成する振動抑制手段は、ベース8と支持ブロック3との対向する面に設けられる磁気吸引手段又は磁気反発手段であってもよい。
【0097】
次に、振動抑制手段として磁気吸引手段又は磁気反発手段を有する図11に示す光ピックアップ81について説明する。尚、以下の説明において、上述した光ピックアップ1と共通する部分については、共通の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0098】
本発明を適用した光ピックアップ81は、図11に示すように、レンズホルダ2と、支持ブロック3と、支持部材4と、駆動手段5とを備える。そして、光ピックアップ81は、図11に示すように、支持ブロック3と、ベース8との間に、支持ブロック3の振動を抑制する振動抑制手段87を有する。
【0099】
この振動抑制手段87は、ベース8に固定されるヨーク片18bと、支持ブロック3との対向する面に、磁気吸引手段として、対向する面に互いに異なる極性を有する一対のマグネット87a,87bが設けられている。この一対のマグネット87a,87bは、その互いに吸引する機能により、支持ブロック3のタンジェンシャル方向Tzの剛性を高めることができ、剛性を高めることで振動抑制手段87として機能する。
【0100】
尚、ここでは、磁気吸引手段としての一対のマグネット87a,87bを設けるように構成したが、これに限られるものではなく、ベース8に固定されたヨーク片18bと、支持ブロックとの対向する面に、磁気反発手段として、対向する面に同じ極性を有する一対のマグネットを設けるように構成し、この磁気反発手段により、支持ブロックのタンジェンシャル方向の合成を高めることで振動抑制手段として用いるように構成しても良い。
【0101】
この一対のマグネット87a,87bからなる振動抑制手段87は、支持ブロック3のタンジェンシャル方向Tzの剛性を高めることで、支持ブロック3の振動を抑制して、不要共振を減衰させることができる。
【0102】
本発明を適用した光ピックアップ81は、支持ブロック3とベース8に固定されたヨーク片18bとの間に振動抑制手段87として一対のマグネット87a,87bを設けるように構成したことにより、ローリング、ピッチング及びヨーイング等の不要共振を減衰させることができる。そして、光ピックアップ81は、不要共振による伝達関数の位相まわり、そしてサーボ応答の劣化等を防止することができ、光ディスクに対して情報信号の良好な記録及び/又は再生を行うことを可能とする。
【0103】
よって、本発明を適用した光ピックアップ81は、レンズホルダ2を支持ブロック3により支持し、この支持ブロック3を支持部材4によりベース8に対して傾動可能に支持する構成を備えることにより、対物レンズ21,22をフォーカス方向F、トラッキング方向T及びチルト方向に駆動可能にするとともに、この構成により発生する不要共振を振動抑制手段87により低減することを可能とし、良好なサーボ特性を得ることができる。
【0104】
また、本発明を適用した光ピックアップ81は、レンズホルダ2を支持ブロック3により支持し、この支持ブロック3を支持部材4によりベース8に対して傾動可能に支持する構成、及びこの支持ブロック3とベース8との間に振動抑制手段87を設ける構成により、光ピックアップを構成する光学部品の製造誤差等による特性のばらつきを抑えることができ、サーボ特性を向上させるとともに製品の歩留りを向上させることができる。
【0105】
さらに、本発明を適用した光ピックアップを構成する振動抑制手段は、不要共振が発生したときに逆起電力を発生させる振動抑制用のコイル及びマグネットを設けるように構成してもよい。
【0106】
次に、振動抑制用のコイル及びマグネットを有する、図12に示す光ピックアップ91について説明する。尚、以下の説明において、上述した光ピックアップ1と共通する部分については、共通の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0107】
本発明を適用した光ピックアップ91は、図12に示すように、レンズホルダ2と、支持ブロック3と、支持部材4と、駆動手段5とを備える。そして、光ピックアップ91は、支持ブロック3とベース8との間に、支持ブロック3の振動を抑制する振動抑制手段97を有する。
【0108】
この振動抑制手段97は、支持ブロック3のトラッキング方向Tの両側面に設けられる振動抑制用のコイル97a,97aと、ベース8から立ち上げられる取付部8a,8aに設けられる振動抑制用のマグネット97b,97bとからなる。振動抑制用のコイル97a,97a及びマグネット97b,97bは、対向して配置され、支持ブロック3が振動して変位されたときに逆起電力を発生し、この逆起電力による反力により、支持ブロックの不要共振を減衰させる。
【0109】
この振動抑制用のコイル97a,97a及びマグネット97b,97bからなる振動抑制手段97は、支持ブロック3に不要共振が発生したときに、マグネット97b、97bで発生する磁界の作用によりコイル97a,97aに電流が発生し、この電流により発生する反力により、支持ブロック3の振動を抑制して、不要共振を減衰させることができる。
【0110】
本発明を適用した光ピックアップ91は、支持ブロック3とベース8との間、すなわち、支持部材4に一体に振動抑制手段97として振動抑制用のコイル97a,97a及びマグネット97b,97bからなる振動抑制手段97を設けるように構成したことにより、ローリング、ピッチング及びヨーイング等の不要共振を減衰させることができる。そして、光ピックアップ91は、不要共振による伝達関数の位相まわり、そしてサーボ応答の劣化等を防止することができ、光ディスクに対して情報信号の良好な記録及び/又は再生を行うことを可能とする。
【0111】
よって、本発明を適用した光ピックアップ91は、レンズホルダ2を支持ブロック3により支持し、この支持ブロック3を支持部材4によりベース8に対して傾動可能に支持する構成を備えることにより、対物レンズ21,22をフォーカス方向F、トラッキング方向T及びチルト方向に駆動可能にするとともに、この構成により発生する不要共振を振動抑制手段97により低減することを可能とし、良好なサーボ特性を得ることができる。
【0112】
また、本発明を適用した光ピックアップ91は、レンズホルダ2を支持ブロック3により支持し、この支持ブロック3を支持部材4によりベース8に対して傾動可能に支持する構成、及びこの支持ブロック3とベース8との間に振動抑制手段97を設ける構成により、光ピックアップを構成する光学部品の製造誤差等による特性のばらつきを抑えることができ、サーボ特性を向上させるとともに製品の歩留りを向上させることができる。
【0113】
尚、上述した光ピックアップ91において、コイル97a,97a及びマグネット97b,97bを振動抑制用として用い、上述したコイル51及び二極着磁マグネット52をチルト用、すなわち支持ブロック3の駆動用として用いたが、この機能を逆に用いても良い。すなわち、支持ブロック3の下面に取り付けられる振動抑制用のコイルと、このコイルに対向してベース8に取り付けられる振動抑制用の二極着磁マグネットとからなる振動抑制手段と、支持ブロック3のトラッキング方向の両側面に設けられるチルト用のコイルと、ベース8から立ち上げられる取付部8a,8aに設けられるとともにこのコイルに対向して配置されるチルト用のマグネットとからなる駆動手段とを設けるように構成しても良い。
【0114】
尚、上述した光ピックアップ1,61,81,91を構成するマグネットは、図13、図14及び図15に示すように、対向する内面側のフォーカス方向の両端にテーパ部19b,19cを有するように構成してもよい。
【0115】
テーパ部19b,19cを有するマグネット19aを用いた場合は、レンズホルダ2をフォーカス方向に駆動したときに図14中矢印d方向に円弧状に移動することにより、レンズホルダ2に設けられたフォーカスコイル及びトラッキングコイルと、支持ブロック3に近い側のマグネットとのギャップが狭くなり、フォーカスコイル及びトラッキングコイルと、支持ブロック3から遠い側のマグネットとのギャップが広くなることにより、推力のバランスがくずれて不要共振が発生することを防止する。すなわち、マグネットにテーパ部を設けることで、両マグネットとそれぞれに対向するフォーカスコイル及びトラッキングコイルとの推力バランスを調整することができる。
【0116】
また、図13、図14及び図15では、支持ブロック3に近い側のマグネット19aに、テーパ部19bとテーパ部19cとの間の平坦部19dが突状に形成されるように構成したが、これに限られるものではなく、支持ブロック3に遠い側のマグネット19eの内面側のフォーカス方向の両端にテーパ部19f,19gを設け、上下のテーパ部の間の平坦部19hが凹状に形成されるように構成してもよく、さらに、図16に示すように、両マグネット19a,19eを上述のテーパ部を設けるような構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明を適用した光ピックアップを用いた光ディスク装置のブロック回路図である。
【図2】本発明を適用した光ピックアップの斜視図である。
【図3】本発明を適用した光ピックアップの背面図である。
【図4】本発明を適用した光ピックアップの平面図である。
【図5】本発明を適用した光ピックアップを構成するマグネットの着磁パターンを示す平面図である。
【図6】本発明を適用した光ピックアップを構成する支持部材及び駆動手段の分解斜視図である。
【図7】本発明を適用した光ピックアップを構成する支持部材の側面図である。
【図8】本発明を適用した光ピックアップを構成する支持部材の駆動手段により力が加わったときに弾性変形した状態を示す側面図である。
【図9】本発明を適用した光ピックアップの支持ブロックを傾動させる制御系を示すブロック回路図である。
【図10】本発明を適用した光ピックアップの他の例を構成する支持部材を示す側面図である。
【図11】本発明を適用した光ピックアップの更に他の例を示す平面図である。
【図12】本発明を適用した光ピックアップの、振動抑制手段として振動抑制用のコイル及びマグネットを設けた例を示す斜視図である。
【図13】本発明を適用した光ピックアップを構成するレンズホルダ、支持ブロック及びマグネットの例を示す斜視図である。
【図14】本発明を適用した光ピックアップを構成するレンズホルダ、支持ブロック及びマグネットの例を示す側面図である。
【図15】図13に示すマグネットの斜視図である。
【図16】本発明を適用した光ピックアップを構成するマグネットの他の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0118】
1 光ピックアップ、 2 レンズホルダ、 3 支持ブロック、 4 支持部材、 5 駆動手段、 6a〜6d 支持アーム、 7 振動抑制手段、 8 ベース、 9 取り付け基台、 10 フォーカスコイル、 11 トラッキングコイル、 18 ヨーク、 19 マグネット、 21 第1の対物レンズ、 22 第2の対物レンズ 、51 コイル、 52 二極着磁マグネット、 101 光ディスク装置、 102 光ディスク、 103 スピンドルモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズが取り付けられ、上記対物レンズの光軸と平行なフォーカス方向と、上記対物レンズの光軸方向と直交するトラッキング方向とに移動されるレンズホルダと、
上記レンズホルダを上記フォーカス方向及び上記トラッキング方向に移動可能に支持する支持ブロックと、
上記支持ブロックをベースに対して傾動可能に支持する支持部材と、
上記支持ブロックを上記フォーカス方向及び上記トラッキング方向に直交するタンジェンシャル方向を軸とした軸回り方向に傾斜させる駆動力を上記支持ブロックに付与し、上記支持ブロックに支持された上記レンズホルダを傾斜させる駆動手段とを備え、
上記支持ブロックと、上記ベースとの間に、上記支持ブロックの振動を抑制する振動抑制手段を設けた光ピックアップ。
【請求項2】
上記振動抑制手段は、上記ベースと、上記支持ブロックとの間に設けられた粘弾性部材である請求項1記載の光ピックアップ。
【請求項3】
上記支持部材は、上記支持ブロックを支持し、上記支持ブロックを支持する側から先端側に向かって互いの間隔を拡げるように傾斜して設けられた一対の脚片を有し、上記脚片の先端部を上記ベースに対して固定することにより上記支持ブロックを傾動可能に支持し、
上記一対の脚片は、それぞれ、2枚の板バネ部材を粘弾性部材を介して重ね合わせられ、上記粘弾性部材によって、上記支持ブロックの振動を抑制する請求項1記載の光ピックアップ。
【請求項4】
上記振動抑制手段は、上記ベースと、上記支持ブロックとの対向する面に設けられた磁気吸引手段又は磁気反発手段である請求項1記載の光ピックアップ。
【請求項5】
上記磁気吸引手段又は磁気反発手段は、上記ベースと上記支持ブロックとの対向する面に設けられた一対のマグネットである請求項4記載の光ピックアップ。
【請求項6】
上記振動抑制手段は、上記ベース及び上記支持ブロックのいずれか一方に設けられたコイルと、他方に設けられたマグネットとからなり、
上記コイル及び上記マグネットは、上記支持ブロックが振動されて変位したときの逆起電力により上記支持ブロックに支持されたレンズホルダに発生する共振を抑制する請求項1記載の光ピックアップ。
【請求項7】
光ディスクを保持して回転駆動する駆動手段と、
上記駆動手段によって回転駆動する光ディスクに対し情報信号の記録又は再生を行う光ビームを照射するとともに、上記光ディスクから反射される反射光ビームを検出する光ピックアップとを有する光ディスク装置であって、
上記光ピックアップは、対物レンズが取り付けられ、上記対物レンズの光軸と平行なフォーカス方向と、上記対物レンズの光軸方向と直交するトラッキング方向とに移動されるレンズホルダと、
上記レンズホルダを上記フォーカス方向及び上記トラッキング方向に移動可能に支持する支持ブロックと、
上記支持ブロックをベースに対して傾動可能に支持する支持部材と、
上記支持ブロックを上記フォーカス方向及び上記トラッキング方向に直交するタンジェンシャル方向を軸とした軸回り方向に傾斜させる駆動力を上記支持ブロックに付与し、上記支持ブロックに支持された上記レンズホルダを傾斜させる駆動手段とを備え、
上記支持ブロックと、上記ベースとの間に、上記支持ブロックの振動を抑制する振動抑制手段を設けた光ディスク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2007−149309(P2007−149309A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116040(P2006−116040)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】