光ピックアップ装置
【課題】表面に光触媒膜を有する光学部品を接着剤にてホルダに固定する構造の光ピックアップ装置において、光触媒作用により光学部品の汚れを除去し、かつ接着剤の接着強度低下を防止して信頼性を向上させることを課題とする。
【解決手段】光源と、少なくとも一面の一領域に光触媒膜8を有する光学部品4と、この光学部品4を保持するためのホルダ3とを備え、光学部品4は、前記光学部品4とホルダ3の間であって前記光源からのレーザ光および/または外光によって生じる前記光触媒膜8の光触媒作用が及ばない領域に塗布された接着剤7によって、ホルダ3に固定された光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】光源と、少なくとも一面の一領域に光触媒膜8を有する光学部品4と、この光学部品4を保持するためのホルダ3とを備え、光学部品4は、前記光学部品4とホルダ3の間であって前記光源からのレーザ光および/または外光によって生じる前記光触媒膜8の光触媒作用が及ばない領域に塗布された接着剤7によって、ホルダ3に固定された光ピックアップ装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置に関し、詳しくは、光学部品の表面に光触媒膜を形成して光触媒作用による自己清浄化を利用した光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光ピックアップ装置において光学部品の汚れ、とりわけ対物レンズの光ディスク側表面に異物が付着することによる汚れが、光ピックアップ装置の記録・再生能力を低下させている。付着汚れを除去するためには、一般的にレンズ面を綿棒で拭いたり、専用のレンズクリーナーを用いて汚れを除去しているが、この作業で対物レンズを設置しているアクチュエータの支持制御用ワイヤーに外力が加わると簡単に曲がってしまい、そうするとアクチェータが正常に作動できなくなるといった問題が生じるため、上記のような清浄作業は好ましい方法とはいえない。
【0003】
このような問題を解決する方法として、光ピックアップ装置の光学部品の表面にアナターゼ型、ルチル型あるいはブルッカイト型の結晶構造を有する酸化チタン膜を形成し、半導体レーザのレーザ光(紫外線)を酸化チタン膜に照射することによって、酸化チタン膜の光触媒作用により光学部品に付着した汚れを分解し除去する方法が、特開2004−294521号公報(特許文献1)および特開2003−323734号公報(特許文献2)などに提案されている。
【0004】
従来の光ピックアップ装置における各種光学部品は、ラジカル重合のアクリル系樹脂、アクリルシリコーン樹脂、カチオン重合のエポキシ系樹脂などいずれも有機物より構成される接着剤を用いてホルダの所定位置に高精度に設置されている。
【0005】
図11は、表面に酸化チタン膜が形成された対物レンズを有する従来の光ピックアップ装置の概略構成図であり、図中、符号101は半導体レーザ、102はコリメートレンズ、103はホルダ、104はホルダにて保持された対物レンズ、109は情報記憶媒体である光ディスクを示している。
また、図12は図11のホルダ103を設置するアクチュエータ部分の拡大図であって、(a)は光ディスク側からみた図であり、(b)は半導体レーザ側から見た図である。図11中、符号106は支持制御用ワイヤー、107はホルダ103に対物レンズ104を固定するための接着剤を示している。
【0006】
また、図13は図12のホルダ部分の拡大側面断面図である。図13に示すように、対物レンズ104には、光ディスク側に向けられる一面(凸状湾曲面)と半導体レーザ側に向けられる他面(平坦面)の両方に、酸化チタン膜108が形成されている。また、ホルダ103は、対物レンズ104を平坦面側から嵌め込む凹部103aと、この凹部103aの底面に同心円状に形成された対物レンズの有効径以上の径を有する光通過用孔部と、半導体レーザ側の面における孔部の周縁に形成された対向する一対の接着剤塗布用切欠き部103bを有している。
【0007】
このようなホルダ103の凹部103aに対物レンズ104を嵌め込み、対物レンズ104の凸状湾曲面からホルダ103の上面(光ディスク側の表面)にかけて接着剤107を塗布すると共に、対物レンズ104の平坦面からホルダ103の切欠き部103bの底面にかけて接着剤107を塗布することにより、対物レンズ104をホルダ3に固定している。このとき、光ディスク側において、対物レンズ104にかかる接着剤107の一部は光触媒膜108の上に塗布されており、半導体レーザ側において、対物レンズ104にかかる接着剤107の全てが光触媒膜108の上に塗布されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−294521号公報
【特許文献2】特開2003−323734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図13に示すような従来の対物レンズの保持構造では、半導体レーザのレーザ光が、対物レンズ104の表面の酸化チタン膜108に当たると、接着剤107と接触および近接している部分の酸化チタン膜108も光触媒作用を発現するため、酸化チタン膜108と接している部分の接着剤107が分解してしまい、それによって接着強度が低下して振動や衝撃等によって対物レンズ104がぐらついたり位置ずれするおそれがあった。光ピックアップ装置において、光学部品のぐらつきや位置ずれはレーザ光の光路ずれを招き、正確に情報を記憶、再生することができなくなるため決して許されないが、光触媒作用によって接着剤が分解することへの対策については検討されていない。
【0010】
本発明は、前記問題に鑑み、表面に光触媒膜を有する光学部品を接着剤にてホルダに固定する構造の光ピックアップ装置において、光触媒作用により光学部品の汚れを除去し、かつ接着剤の接着強度低下を防止して信頼性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かくして、本発明によれば、レーザ光を出射し得る光源と、少なくとも一面の一領域に光触媒膜を有する光学部品と、この光学部品を保持するためのホルダとを備え、光学部品は、光学部品とホルダの間であって前記光源からのレーザ光および/または外光によって生じる前記光触媒膜の光触媒作用が及ばない領域に塗布された接着剤によって、ホルダに固定された光ピックアップ装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光源からのレーザ光および/または外光(例えば太陽光、照明器具による室内光等)が光触媒膜に照射して生じる光触媒作用によって、光学部品をホルダに固定する接着剤を分解させることなく、光学部品の自己清浄が可能となる。よって、光学部品を頻繁に清浄化することが可能となると共に、光触媒作用による接着強度の低下および振動や衝撃等による光学部品のぐらつき、位置ずれ等を防止することができ、光ピックアップ装置としての記憶、再生機能を高精度で長期間維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の光ピックアップ装置は、レーザ光を出射し得る光源と、少なくとも一面の一領域に光触媒膜を有する光学部品と、この光学部品を保持するためのホルダとを備え、
光学部品は、光学部品とホルダの間であって前記光源からのレーザ光および/または外光によって生じる前記光触媒膜の光触媒作用が及ばない領域に塗布された接着剤によって、ホルダに固定されたことを特徴としている。
本発明において、「光触媒作用が及ばない領域」とは、接着剤が光触媒膜に接触しない領域のみならず、接着剤の一部が光触媒膜に接触した領域も含む。接着剤の一部が光触媒膜に接触している場合、その接触部分の光触媒膜に光源からのレーザ光および/または外光が当たると光触媒作用を発現し接着剤を分解する可能性があるため、本発明では接着剤と光触媒膜の接触部分(好ましくはその近傍部分も含めて)を遮光する。この遮光の方法等については後述する。
以下、本発明の光ピックアップ装置の各構成要素について説明する。
【0014】
本発明において、光源としては半導体レーザが用いられ、CD、DVD、MO等の情報記憶媒体に対応したものであれば特に限定されないが、波長780nm以下のレーザ光を出射する半導体レーザが、可視光線および紫外線の両方で光触媒膜の光触媒作用を生じさせて光学部品の自己清浄を行なえる観点から好ましい。
【0015】
光ピックアップ装置に設置される半導体レーザの数は1個または2個以上であってもよい。半導体レーザが1個の場合、半導体レーザを情報の記憶・再生用と光学部品クリーニング用に共用する、あるいは異なる2種類以上の波長のレーザを出射可能な半導体レーザを用い、そのうち1種類以上の波長のレーザ光を清浄専用に割り当てることができる。半導体レーザが2個以上の場合、1個以上の半導体レーザを清浄専用に割り当てることができる。
本発明の光ピックアップ装置は上記構成に加え光検出器(受光素子)を備え、光検出器は情報の記憶・再生用の半導体レーザと一体でもよく、別体でもよい。
【0016】
本発明において、光学部品としては、光ピックアップ装置に一般的に使用されている光学部品が対象であり、例えば対物レンズ、コリメートレンズ、グレーティングレンズ、ビームスプリッタ、立ち上げミラー、スポット調整レンズ等が挙げられる。これらの光学部品は、接着剤によってホルダにそれぞれ固定され、光源からの光を情報記憶媒体である光ディスクに導き、かつ光ディスクを反射した反射光を光検出器に導くようホルダに保持され所定位置に配置される。なお、本発明において、ホルダは、各種光学部品を所定位置に配置するためのケーシングも含む。
【0017】
本発明において、光学部品の表面に形成される光触媒膜の材料としては特に限定されず、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)等が挙げられ、酸化チタンが好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ型およびルチル型の酸化チタンを用いることができ、さらには窒素原子を含有するアナターゼ型およびルチル型の酸化チタンが好ましく、特に窒素原子を含有するアナターゼ型酸化チタンが好ましい。
酸化チタンにおいて、ルチル型は安定な構造であるが、光触媒機能としてはアナターゼ型の方が優れていると考えられている。また、通常酸化チタンは、紫外光によってのみ光触媒機能を発揮するが、窒素原子が酸化チタンにドープ(添加)されることにより、可視光によっても光触媒機能を発揮することができる。
【0018】
したがって、窒素原子を含有する酸化チタンからなる光触媒膜は、光ピックアップ装置に内蔵された半導体レーザの紫外線を含むレーザ光のみならず、外光である太陽光、照明器具の室内光等に含まれる可視光線によって光触媒作用が生じ、それによって光学部品に付着した汚れを除去することができる。この場合、光ピックアップ装置の各種光学部品の中で対物レンズが外部に露出する場合が多いため、外光は主として対物レンズから入射し、外光の強さによっては対物レンズを透過して他の光学部品へも達し、その結果各光学部品が有する光触媒膜の光触媒作用により各光学部品が自己清浄化される。
【0019】
さらに、光ピックアップ装置の半導体レーザに波長780nm以下のレーザ光を出射するものを用いれば、窒素原子を含有する酸化チタンからなる光触媒膜は、外光のみならずレーザ光によっても光触媒作用を生じるため、各光学部品をそれぞれ自己清浄することができる。
【0020】
半導体レーザによる光学部品の自己清浄化を前提とする場合は、光触媒膜の屈折率をn、半導体レーザの波長をλとすると、光触媒膜の膜厚をλ/4nとすることが好ましい。つまり、図10に示すように、光触媒膜の膜厚をλ/4nとすることにより、光触媒膜の表面と光学部品の表面で反射した迷光が逆位相となって打ち消し合い、迷光を防止することができる。具体的に例示すると、光触媒膜が窒素原子を含有するアナターゼ型酸化チタン(屈折率n=2.5)であり、半導体レーザのレーザ光の波長が780nm以下、410nm以上のとき、光触媒膜の膜厚は41nm〜78nmに設定される。
【0021】
ここで、窒素原子を含有するアナターゼ型酸化チタンからなる光触媒膜を所望の膜厚で光学部品表面に形成するに際しては、独立行政法人物質・材料研究機構が提案しているデュアルマグネトロンスパッタリング法を用いることができる。また別の方法としては、酸化チタンの微粒子をシリカ系無機バインダに添加しレンズ表面に固定化する方法があり、この方法によれば酸化チタンの微粒子の吸収係数とレンズ表面の光触媒膜中の酸化チタンの割合を調整することにより、スピンコート法によって数十nmの膜厚で光触媒膜の成膜が可能である。
【0022】
光学部品をホルダに固定する接着剤としては、当該分野で通常用いられているものを使用することができ、例えばラジカル重合のアクリル系樹脂、アクリルシリコーン樹脂、カチオン重合のエポキシ系樹脂等の有機系樹脂からなる接着剤が挙げられる。
このような有機系樹脂からなる接着剤は、光触媒作用により分解するため、以下の具体的な実施の形態のように、光源からのレーザ光および/または外光によって生じる光触媒膜の光触媒作用が及ばない領域に配置される。
以下、光学部品の中でも外光が当たる場合が多い対物レンズを代表に挙げ、その保持構造を図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1のホルダによる対物レンズの保持構造を示す断面図であり、図2は図1の判截図である。実施の形態1において、対物レンズ4は、図13で説明した従来の対物レンズと同様に光ディスク側に向けられる凸状湾曲面と半導体レーザ側に向けられる平坦面を有し、これら両面の全面に光触媒膜8が形成されている。
なお、実施の形態1に対応する図1、2および後述する実施の形態2〜8に対応する図3〜9において対物レンズ4の断面斜線は省略している。
【0024】
ホルダ3は、対物レンズ4を平坦面側から嵌め込んで設置するための凹部3aと、凹部3aの底面に同心円状に形成された対物レンズの有効径以上の径を有する光通過用孔3cと、凹部3aの内周面から底面にかけて形成された対向する一対の接着剤塗布用の凹窪部3bとからなるリング状のホルダ本体3Aを備え、さらに、ホルダ本体3Aの凹部3aとは反対側の面から凹窪部3bまで斜めに貫通して形成された差込孔に差し込まれた遮光片5とを有している。この遮光片5は、接着剤7が光触媒膜8の一部と接触する領域を光源のレーザ光から遮光する。
【0025】
遮光部材としての遮光片5は、その構成材料として特に限定されず、例えばホルダ本体3Aと同じ材料にて構成することができるが、この場合光が透過しないように着色剤(例えば黒色系)にて着色される。遮光片5は樹脂製以外にも例えばガラス、金属等でもよいが、光透過性を有する材料の場合は材料そのものを黒色系に着色するか、あるいは表面に黒色系の塗膜やフィルム等を形成して遮光性を付加する。
【0026】
対物レンズ4がホルダ3に取り付けられた状態において、上記凹窪部3bに塗布された接着剤7は、対物レンズ4の外周面の下部から底面の光触媒膜8の一部にかけて接している。また、遮光片5は、一端が光触媒膜8と近接乃至接触し、一端から他端に向かって径方向外側へ斜めに延びており、ホルダ3の半導体レーザ側から光軸方向を見て少なくとも接着剤7と接触する部分の光触媒膜8およびその近傍部分の光触媒膜8を覆っている。つまり、その接着剤7と接触する部分およびその近傍部分の光触媒膜8が存在する領域は、対物レンズ4に入射したレーザ光による光触媒作用の及ばない領域とされている。
【0027】
実施の形態1は上記のような対物レンズ保持構造であるため、清浄用半導体レーザから出射した清浄用レーザ光(例えば波長780nm以下)が対物レンズ4を透過することにより、対物レンズ4の両面の光触媒膜8にレーザ光が当たって光触媒作用が発生し、光触媒膜8に付着した汚れが分解され除去される。このとき、対物レンズ4の有効径を越えるレーザ光外周領域がホルダ3の遮光片5によって遮光されるため、レーザ光がホルダ3を透過したとしても接着剤7と接触している部分およびその近傍部分の光触媒膜8には光が当たらず、よって光触媒作用が発生して接着剤7が分解されるということがない。
なお、光ピックアップ装置の構成として、清浄用レーザ光を再度光学系に戻しても戻さなくてもどちらでも可能であるが、戻す方が光学部品の清浄化を高められる点で好ましい。この場合、戻り光の径は光学部品の有効径程度であるため、光触媒作用による接着剤への影響はない。
【0028】
この実施の形態1の対物レンズ保持構造は、外光が対物レンズに全く乃至殆ど照射しない構造の光ピックアップ装置に好適である。一方、例えばポータブルCD、DVDのように光触媒作用を発現させる程度の外光が対物レンズに照射する可能性がある光ピックアップ装置に適用させる場合は、ホルダ本体3Aおよび接着剤7が透明であると外光が透過して接着剤7に接触する部分の光触媒膜8に当たるおそれがあるため、ホルダ本体3Aおよび/または接着剤7を黒色系に着色して遮光するようにしてもよい。この場合、外光によっても対物レンズ4の自己清浄化を行なわせることができる。
【0029】
(実施の形態2)
図3は実施の形態2のホルダによる対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。この場合、実施の形態1で用いた対物レンズ4の凸状湾曲面側に遮光片15を設けている。
詳しく説明すると、ホルダ13のホルダ本体13Aは、実施の形態1と同様の凹部13aおよび光通過用孔13cを有すると共に、凹部13aの開口端縁に接着剤塗布用の凹窪部13bを有している。また、遮光片15は、上記凹窪部13bに塗布された接着剤7上に接着されている。
【0030】
対物レンズ4がホルダ13に取り付けられた状態において、接着剤7は、対物レンズ4の外周面の上部から凸状湾曲面上の光触媒膜8の周縁部の一部にかけて接している。また、遮光片5は、一端が光触媒膜8と近接乃至接触し、一端から他端に向かって径方向外側へ斜めに延びており、ホルダ3の光ディスク側から光軸方向を見て接着剤7と接触する部分およびその近傍部分の光触媒膜8を覆っている。つまり、その接着剤7と接触する部分およびその近傍部分の光触媒膜8が存在する領域は、外光による光触媒作用の及ばない領域とされている。
【0031】
実施の形態2は上記のような対物レンズ保持構造であるため、光触媒膜が窒素原子を含有する酸化チタン膜である場合、外光が対物レンズ4を透過することにより、対物レンズ4の両面の光触媒膜8に外光が当たって光触媒作用が発生し、光触媒膜8に付着した汚れが分解され除去される。このとき、外光は遮光片5によって遮光されるため、接着剤7と接触している部分およびその近傍部分の光触媒膜8には光が当たらず、よって光触媒作用が発生して接着剤7が分解されるということがない。
【0032】
この実施の形態2の対物レンズ保持構造は、外光によってのみ対物レンズの自己清浄化を行なわせる構造の光ピックアップ装置に好適である。一方、清浄用半導体レーザのレーザ光によっても自己清浄化を行なわせる場合は、ホルダ本体13Aが透明であると対物レンズ4の有効径を越える清浄用レーザ光外周領域がホルダ本体13Aを透過して接着剤7に接触する部分の光触媒膜8に当たるおそれがあるため、ホルダ本体13Aを黒色系に着色して遮光することが好ましい。
【0033】
(実施の形態3)
図4は実施の形態3のホルダによる対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。この場合も、実施の形態1で用いた対物レンズ4の凸状湾曲面側に遮光片25を設けている。
詳しく説明すると、ホルダ23のホルダ本体23Aは、実施の形態1と同様の凹部23aおよび光通過用孔23cを有し、接着剤塗布用の凹窪部は省略され、接着剤塗布箇所がホルダ本体23Aの上面(光ディスク側表面)とされている。また、遮光片15は、ホルダ本体23Aの上面に塗布された接着剤7上に接着されている。
【0034】
対物レンズ4がホルダ23に取り付けられた状態において、接着剤7は、対物レンズ4の外周面の上部から凸状湾曲面上の光触媒膜8の周縁部の一部にかけて接着している。また、遮光片25は、一端がホルダ本体23Aの上面と近接乃至接触し、一端から他端に向かって径方向内側へ斜めに延びておち、光ディスク側から光軸方向を見て接着剤7と接触する部分およびその近傍部分の光触媒膜8を覆っている。つまり、その接着剤7と接触する部分およびその近傍部分の光触媒膜8が存在する領域は、外光による光触媒作用の及ばない領域とされている。なお、遮光片25の他端は、レーザ光に干渉しない。
【0035】
実施の形態3は上記のような対物レンズ保持構造であるため、光触媒膜が窒素原子を含有する酸化チタン膜である場合、外光が対物レンズ4を透過することにより、対物レンズ4の両面の光触媒膜8に外光が当たって光触媒作用が発生し、光触媒膜8に付着した汚れが分解され除去される。このとき、外光は遮光片5によって遮光されるため、接着剤7と接触している部分およびその近傍部分の光触媒膜8には光が当たらず、よって光触媒作用が発生して接着剤7が分解されるということがない。
【0036】
この実施の形態3の対物レンズ保持構造も実施の形態2と同様に、外光によってのみ対物レンズの自己清浄化を行なわせる構造の光ピックアップ装置に好適である。一方、清浄用半導体レーザのレーザ光によっても自己清浄化を行なわせる場合は、ホルダ本体23Aが透明であると対物レンズ4の有効径を越えるレーザ光外周領域がホルダ本体23Aを透過して接着剤7に接触する部分の光触媒膜8に当たるおそれがあるため、ホルダ本体23Aを黒色系に着色して遮光することが好ましい。
【0037】
(実施の形態4)
図5は実施の形態4のホルダによる対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。この場合、対物レンズ4の凸状湾曲面側および平坦面側の両方に遮光片35a、35bを設けている。
詳しく説明すると、ホルダ33のホルダ本体33Aは、実施の形態1と同様の凹部33aおよび光通過用孔33cを有し、ホルダ本体33Aの上面が一方の接着剤塗布箇所とされると共に、ホルダ本体33Aの下面(半導体レーザ側表面)から凹部33aに貫通する接着剤塗布用の孔部33bを有している。この孔部33bは、幅方向の一部が凹部33aの側面に開口している。
【0038】
対物レンズ4がホルダ33に取り付けられた状態において、光ディスク側の接着剤7および遮光片35aは、実施の形態3と同様に配置されているため、遮光片35aによって覆われた領域が、外光による光触媒作用の及ばない領域とされている。
【0039】
一方、半導体レーザ側においては、ホルダ本体33Aの孔部33bに充填された接着剤7は、対物レンズ4の外周面の下部から底面の光触媒膜8の一部にかけて接し、その接着剤7により遮光片35bがホルダ本体33Aの下面に接着されている。この遮光片35bは、半導体レーザ側から見て、接着剤7に接触する部分およびその近傍部分の光触媒膜8を覆っている。つまり、その接着剤7と接触する部分およびその近傍部分の光触媒膜8が存在する領域は、清浄用レーザ光による光触媒作用の及ばない領域とされている。
【0040】
実施の形態4は上記のような対物レンズ保持構造であるため、外光および清浄用レーザ光が対物レンズ4を透過することにより、対物レンズ4の両面の光触媒膜8に光が当たって光触媒作用が発生し、光触媒膜8に付着した汚れが分解され除去される。このとき、外光および清浄用レーザ光は遮光片35a、35bによって遮光されるため、接着剤7と接触している部分およびその近傍部分の光触媒膜8には光が当たらず、よって光触媒作用が発生して接着剤7が分解されるということがない。
この実施の形態4の対物レンズ保持構造は、外光とレーザ光の両方で対物レンズの自己清浄化を行なわせる構造の光ピックアップ装置に好適である。
【0041】
(実施の形態5)
図6は実施の形態5のホルダによる対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。この場合、実施の形態4の光ディスク側の遮光片の代わりに、黒色系に着色された遮光ブロック35cが用いられている。実施の形態5において、その他の構成は実施の形態4と同様であり、同一の要素には同一の符号を付している。
【0042】
(実施の形態6)
図7は実施の形態6のホルダによる対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。この場合、上述の遮光部材は用いることなく、接着剤に対して光触媒作用が及ばない領域を形成する。
詳しく説明すると、実施の形態6の対向レンズ44は、凸状湾曲面および平坦面を有し、半導体レーザのレーザ光を通過させる本体部44aと、本体部44aの周囲に配置された対向する一対の突起部44bとからなる。突起部44bは、接着剤7との光触媒膜を有さない接着面を得るためのものであり、本体部44aの外周面の厚み方向略中間位置に配置されている。ホルダ43は、実施の形態1と同様の凹部43aおよび光通過用孔43cを有すると共に、上面から凹部43aの底面まで達しない深さで形成された一対の溝部43bを対向する位置に有している。この溝43bの底面が接着剤の塗布箇所とされており、溝部43bの幅は上記突起部44bの幅と略等しく設定されている。
【0043】
対物レンズ44がホルダ43に取り付けられた状態において、接着剤7は、対物レンズ4の突起部44bとホルダ43の溝部43bの底面の間に配置されている。よって、接着剤7は各光触媒膜8とは全く接触しないため、突起部44bの溝部43bの間の領域が光による光触媒作用の及ばない領域とされている。
【0044】
実施の形態6は上記のような対物レンズ保持構造であるため、外光または清浄用レーザ光が対物レンズ44を透過することにより、対物レンズ44の両面の光触媒膜8に光が当たって光触媒作用が発生し、光触媒膜8に付着した汚れが分解され除去される。このとき、接着剤7は光触媒膜とは非接触であるため、光触媒作用によって接着剤7が分解されるということがない。
この実施の形態6の対物レンズ保持構造は、外光とレーザ光の両方で対物レンズの自己清浄化を行なわせる構造の光ピックアップ装置に好適である。
【0045】
(実施の形態7)
図8は実施の形態7のホルダによる対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。この場合も遮光部材は用いることなく、接着剤に対して光触媒作用が及ばない領域を形成する。
詳しく説明すると、光触媒膜を有する対物レンズは実施の形態1と同様のものが用いられる。ホルダ53は、実施の形態1と同様の凹部53aおよび光通過用孔53cを有すると共に、凹部53aの開口端縁に一対の凹窪部53bを対向する位置に有している。この凹窪部53bが接着剤塗布箇所とされている。
【0046】
対物レンズ4がホルダ53に取り付けられた状態において、凹窪部53bに塗布された接着剤7は、対物レンズ4の凸状湾曲面の光触媒膜8と平坦面の光触媒膜8との間の高さ位置に配置されており、各光触媒膜8とは全く接触していない。よって、この凹窪部53bの領域が光による光触媒作用の及ばない領域とされている。
【0047】
実施の形態7は上記のような対物レンズ保持構造であるため、外光またはレーザ光が対物レンズ4を透過することにより、対物レンズ4の両面の光触媒膜8に光が当たって光触媒作用が発生し、光触媒膜8に付着した汚れが分解され除去される。このとき、接着剤7は光触媒膜とは非接触であるため、光触媒作用によって接着剤7が分解されるということがない。
この実施の形態7の対物レンズ保持構造も、外光とレーザ光の両方で対物レンズの自己清浄化を行なわせる構造の光ピックアップ装置に好適である。
【0048】
(実施の形態8)
図9は実施の形態8のホルダによる対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。この場合も遮光部材は用いることなく、接着剤に対して光触媒作用が及ばない領域を形成する。
詳しく説明すると、対物レンズは実施の形態1と同様のものが用いられるが、凸状湾曲面側の光触媒膜8は対物レンズ4の有効径の領域を僅かに越える程度の範囲に形成され、凸状湾曲面の外周部には形成されない。一方、対物レンズ4の平坦面には略全面に光触媒膜8が形成されている。ホルダ63は、実施の形態1と同様の凹部63aおよび光通過用孔63cを有するのみの簡素な構造であり、上面が接着剤塗布箇所とされている。
【0049】
対物レンズ4がホルダ63に取り付けられた状態において、接着剤7は、対物レンズ4の凸状湾曲面の光触媒膜8を有しない外周部からホルダ63の上面にかけて塗布されており、各光触媒膜8とは全く接触していない。よって、対物レンズ4の凸状湾曲面からホルダ63の上面にかけての領域が、光による光触媒作用の及ばない領域とされている。
【0050】
実施の形態8は上記のような対物レンズ保持構造であるため、外光またはレーザ光が対物レンズ4を透過することにより、対物レンズ4の両面の光触媒膜8に光が当たって光触媒作用が発生し、光触媒膜8に付着した汚れが分解され除去される。このとき、接着剤7は光触媒膜とは非接触であるため、光触媒作用によって接着剤7が分解されるということがない。
この実施の形態8の対物レンズ保持構造も、外光とレーザ光の両方で対物レンズの自己清浄化を行なわせる構造の光ピックアップ装置に好適である。
【0051】
以上、各実施の形態について説明したが、これらの実施の形態においては、万が一接着剤が部分的に光触媒作用にて分解した場合でも十分な接着強度を維持する観点から、接着剤の光学部品に直接接触する接着面積を十分に確保しておくことが望ましい。
また、上記実施の形態では、接着剤の塗布箇所が周方向の180°対向する2箇所に配置した場合を例示したが、3箇所以上でもよく、あるいは接着強度が十分確保されるのなら1箇所でもよい。
また、接着剤に接触した部分の光触媒膜を遮光する遮光部材は、光を透過させない材料であれば特に限定されず、遮光片、遮光ブロック以外にも、遮光塗膜、遮光フィルム等も使用可能である。
また、上記実施の形態では、対物レンズの保持構造を例示したが、対物レンズ以外の光学部品にも本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、CD、DVD、MO等の光ピックアップ装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の光ピックアップ装置における実施の形態1のホルダによる対物レンズの保持構造を示す断面図である。
【図2】図1の判截図である。
【図3】実施の形態2の対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。
【図4】実施の形態3の対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。
【図5】実施の形態4の対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。
【図6】実施の形態5の対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。
【図7】実施の形態6の対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。
【図8】実施の形態7の対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。
【図9】実施の形態8の対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。
【図10】本発明における光触媒膜の膜厚を説明する図である。
【図11】従来の光ピックアップ装置の概略構成図である。
【図12】図11のホルダを有するアクチュエータ部分の拡大図である。
【図13】図12のホルダ部分の拡大側面断面図である。
【符号の説明】
【0054】
3、13、23、33、43、53、63 ホルダ
3A、13A、23A、33A、43A、53A、63A ホルダ本体
3a、13a、23a、33a、43a、53a、63a 凹部
3b、13b、33b、43b、53b 凹窪部
3c、13c、23c、33c、43c、53c、63c 孔部
4 対物レンズ(光学部品)
5、15、25、35a、35b 遮光片
7 接着剤
8 光触媒膜
101 半導体レーザ(光源)
102 コリメートレンズ(光学部品)
103 ホルダ
103a 凹部
103b 切欠き部
104 対物レンズ(光学部品)
106 支持制御用ワイヤ
107 接着剤
108 酸化チタン膜(光触媒膜)
109 光ディスク(情報記憶媒体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置に関し、詳しくは、光学部品の表面に光触媒膜を形成して光触媒作用による自己清浄化を利用した光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光ピックアップ装置において光学部品の汚れ、とりわけ対物レンズの光ディスク側表面に異物が付着することによる汚れが、光ピックアップ装置の記録・再生能力を低下させている。付着汚れを除去するためには、一般的にレンズ面を綿棒で拭いたり、専用のレンズクリーナーを用いて汚れを除去しているが、この作業で対物レンズを設置しているアクチュエータの支持制御用ワイヤーに外力が加わると簡単に曲がってしまい、そうするとアクチェータが正常に作動できなくなるといった問題が生じるため、上記のような清浄作業は好ましい方法とはいえない。
【0003】
このような問題を解決する方法として、光ピックアップ装置の光学部品の表面にアナターゼ型、ルチル型あるいはブルッカイト型の結晶構造を有する酸化チタン膜を形成し、半導体レーザのレーザ光(紫外線)を酸化チタン膜に照射することによって、酸化チタン膜の光触媒作用により光学部品に付着した汚れを分解し除去する方法が、特開2004−294521号公報(特許文献1)および特開2003−323734号公報(特許文献2)などに提案されている。
【0004】
従来の光ピックアップ装置における各種光学部品は、ラジカル重合のアクリル系樹脂、アクリルシリコーン樹脂、カチオン重合のエポキシ系樹脂などいずれも有機物より構成される接着剤を用いてホルダの所定位置に高精度に設置されている。
【0005】
図11は、表面に酸化チタン膜が形成された対物レンズを有する従来の光ピックアップ装置の概略構成図であり、図中、符号101は半導体レーザ、102はコリメートレンズ、103はホルダ、104はホルダにて保持された対物レンズ、109は情報記憶媒体である光ディスクを示している。
また、図12は図11のホルダ103を設置するアクチュエータ部分の拡大図であって、(a)は光ディスク側からみた図であり、(b)は半導体レーザ側から見た図である。図11中、符号106は支持制御用ワイヤー、107はホルダ103に対物レンズ104を固定するための接着剤を示している。
【0006】
また、図13は図12のホルダ部分の拡大側面断面図である。図13に示すように、対物レンズ104には、光ディスク側に向けられる一面(凸状湾曲面)と半導体レーザ側に向けられる他面(平坦面)の両方に、酸化チタン膜108が形成されている。また、ホルダ103は、対物レンズ104を平坦面側から嵌め込む凹部103aと、この凹部103aの底面に同心円状に形成された対物レンズの有効径以上の径を有する光通過用孔部と、半導体レーザ側の面における孔部の周縁に形成された対向する一対の接着剤塗布用切欠き部103bを有している。
【0007】
このようなホルダ103の凹部103aに対物レンズ104を嵌め込み、対物レンズ104の凸状湾曲面からホルダ103の上面(光ディスク側の表面)にかけて接着剤107を塗布すると共に、対物レンズ104の平坦面からホルダ103の切欠き部103bの底面にかけて接着剤107を塗布することにより、対物レンズ104をホルダ3に固定している。このとき、光ディスク側において、対物レンズ104にかかる接着剤107の一部は光触媒膜108の上に塗布されており、半導体レーザ側において、対物レンズ104にかかる接着剤107の全てが光触媒膜108の上に塗布されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−294521号公報
【特許文献2】特開2003−323734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図13に示すような従来の対物レンズの保持構造では、半導体レーザのレーザ光が、対物レンズ104の表面の酸化チタン膜108に当たると、接着剤107と接触および近接している部分の酸化チタン膜108も光触媒作用を発現するため、酸化チタン膜108と接している部分の接着剤107が分解してしまい、それによって接着強度が低下して振動や衝撃等によって対物レンズ104がぐらついたり位置ずれするおそれがあった。光ピックアップ装置において、光学部品のぐらつきや位置ずれはレーザ光の光路ずれを招き、正確に情報を記憶、再生することができなくなるため決して許されないが、光触媒作用によって接着剤が分解することへの対策については検討されていない。
【0010】
本発明は、前記問題に鑑み、表面に光触媒膜を有する光学部品を接着剤にてホルダに固定する構造の光ピックアップ装置において、光触媒作用により光学部品の汚れを除去し、かつ接着剤の接着強度低下を防止して信頼性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かくして、本発明によれば、レーザ光を出射し得る光源と、少なくとも一面の一領域に光触媒膜を有する光学部品と、この光学部品を保持するためのホルダとを備え、光学部品は、光学部品とホルダの間であって前記光源からのレーザ光および/または外光によって生じる前記光触媒膜の光触媒作用が及ばない領域に塗布された接着剤によって、ホルダに固定された光ピックアップ装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光源からのレーザ光および/または外光(例えば太陽光、照明器具による室内光等)が光触媒膜に照射して生じる光触媒作用によって、光学部品をホルダに固定する接着剤を分解させることなく、光学部品の自己清浄が可能となる。よって、光学部品を頻繁に清浄化することが可能となると共に、光触媒作用による接着強度の低下および振動や衝撃等による光学部品のぐらつき、位置ずれ等を防止することができ、光ピックアップ装置としての記憶、再生機能を高精度で長期間維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の光ピックアップ装置は、レーザ光を出射し得る光源と、少なくとも一面の一領域に光触媒膜を有する光学部品と、この光学部品を保持するためのホルダとを備え、
光学部品は、光学部品とホルダの間であって前記光源からのレーザ光および/または外光によって生じる前記光触媒膜の光触媒作用が及ばない領域に塗布された接着剤によって、ホルダに固定されたことを特徴としている。
本発明において、「光触媒作用が及ばない領域」とは、接着剤が光触媒膜に接触しない領域のみならず、接着剤の一部が光触媒膜に接触した領域も含む。接着剤の一部が光触媒膜に接触している場合、その接触部分の光触媒膜に光源からのレーザ光および/または外光が当たると光触媒作用を発現し接着剤を分解する可能性があるため、本発明では接着剤と光触媒膜の接触部分(好ましくはその近傍部分も含めて)を遮光する。この遮光の方法等については後述する。
以下、本発明の光ピックアップ装置の各構成要素について説明する。
【0014】
本発明において、光源としては半導体レーザが用いられ、CD、DVD、MO等の情報記憶媒体に対応したものであれば特に限定されないが、波長780nm以下のレーザ光を出射する半導体レーザが、可視光線および紫外線の両方で光触媒膜の光触媒作用を生じさせて光学部品の自己清浄を行なえる観点から好ましい。
【0015】
光ピックアップ装置に設置される半導体レーザの数は1個または2個以上であってもよい。半導体レーザが1個の場合、半導体レーザを情報の記憶・再生用と光学部品クリーニング用に共用する、あるいは異なる2種類以上の波長のレーザを出射可能な半導体レーザを用い、そのうち1種類以上の波長のレーザ光を清浄専用に割り当てることができる。半導体レーザが2個以上の場合、1個以上の半導体レーザを清浄専用に割り当てることができる。
本発明の光ピックアップ装置は上記構成に加え光検出器(受光素子)を備え、光検出器は情報の記憶・再生用の半導体レーザと一体でもよく、別体でもよい。
【0016】
本発明において、光学部品としては、光ピックアップ装置に一般的に使用されている光学部品が対象であり、例えば対物レンズ、コリメートレンズ、グレーティングレンズ、ビームスプリッタ、立ち上げミラー、スポット調整レンズ等が挙げられる。これらの光学部品は、接着剤によってホルダにそれぞれ固定され、光源からの光を情報記憶媒体である光ディスクに導き、かつ光ディスクを反射した反射光を光検出器に導くようホルダに保持され所定位置に配置される。なお、本発明において、ホルダは、各種光学部品を所定位置に配置するためのケーシングも含む。
【0017】
本発明において、光学部品の表面に形成される光触媒膜の材料としては特に限定されず、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)等が挙げられ、酸化チタンが好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ型およびルチル型の酸化チタンを用いることができ、さらには窒素原子を含有するアナターゼ型およびルチル型の酸化チタンが好ましく、特に窒素原子を含有するアナターゼ型酸化チタンが好ましい。
酸化チタンにおいて、ルチル型は安定な構造であるが、光触媒機能としてはアナターゼ型の方が優れていると考えられている。また、通常酸化チタンは、紫外光によってのみ光触媒機能を発揮するが、窒素原子が酸化チタンにドープ(添加)されることにより、可視光によっても光触媒機能を発揮することができる。
【0018】
したがって、窒素原子を含有する酸化チタンからなる光触媒膜は、光ピックアップ装置に内蔵された半導体レーザの紫外線を含むレーザ光のみならず、外光である太陽光、照明器具の室内光等に含まれる可視光線によって光触媒作用が生じ、それによって光学部品に付着した汚れを除去することができる。この場合、光ピックアップ装置の各種光学部品の中で対物レンズが外部に露出する場合が多いため、外光は主として対物レンズから入射し、外光の強さによっては対物レンズを透過して他の光学部品へも達し、その結果各光学部品が有する光触媒膜の光触媒作用により各光学部品が自己清浄化される。
【0019】
さらに、光ピックアップ装置の半導体レーザに波長780nm以下のレーザ光を出射するものを用いれば、窒素原子を含有する酸化チタンからなる光触媒膜は、外光のみならずレーザ光によっても光触媒作用を生じるため、各光学部品をそれぞれ自己清浄することができる。
【0020】
半導体レーザによる光学部品の自己清浄化を前提とする場合は、光触媒膜の屈折率をn、半導体レーザの波長をλとすると、光触媒膜の膜厚をλ/4nとすることが好ましい。つまり、図10に示すように、光触媒膜の膜厚をλ/4nとすることにより、光触媒膜の表面と光学部品の表面で反射した迷光が逆位相となって打ち消し合い、迷光を防止することができる。具体的に例示すると、光触媒膜が窒素原子を含有するアナターゼ型酸化チタン(屈折率n=2.5)であり、半導体レーザのレーザ光の波長が780nm以下、410nm以上のとき、光触媒膜の膜厚は41nm〜78nmに設定される。
【0021】
ここで、窒素原子を含有するアナターゼ型酸化チタンからなる光触媒膜を所望の膜厚で光学部品表面に形成するに際しては、独立行政法人物質・材料研究機構が提案しているデュアルマグネトロンスパッタリング法を用いることができる。また別の方法としては、酸化チタンの微粒子をシリカ系無機バインダに添加しレンズ表面に固定化する方法があり、この方法によれば酸化チタンの微粒子の吸収係数とレンズ表面の光触媒膜中の酸化チタンの割合を調整することにより、スピンコート法によって数十nmの膜厚で光触媒膜の成膜が可能である。
【0022】
光学部品をホルダに固定する接着剤としては、当該分野で通常用いられているものを使用することができ、例えばラジカル重合のアクリル系樹脂、アクリルシリコーン樹脂、カチオン重合のエポキシ系樹脂等の有機系樹脂からなる接着剤が挙げられる。
このような有機系樹脂からなる接着剤は、光触媒作用により分解するため、以下の具体的な実施の形態のように、光源からのレーザ光および/または外光によって生じる光触媒膜の光触媒作用が及ばない領域に配置される。
以下、光学部品の中でも外光が当たる場合が多い対物レンズを代表に挙げ、その保持構造を図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1のホルダによる対物レンズの保持構造を示す断面図であり、図2は図1の判截図である。実施の形態1において、対物レンズ4は、図13で説明した従来の対物レンズと同様に光ディスク側に向けられる凸状湾曲面と半導体レーザ側に向けられる平坦面を有し、これら両面の全面に光触媒膜8が形成されている。
なお、実施の形態1に対応する図1、2および後述する実施の形態2〜8に対応する図3〜9において対物レンズ4の断面斜線は省略している。
【0024】
ホルダ3は、対物レンズ4を平坦面側から嵌め込んで設置するための凹部3aと、凹部3aの底面に同心円状に形成された対物レンズの有効径以上の径を有する光通過用孔3cと、凹部3aの内周面から底面にかけて形成された対向する一対の接着剤塗布用の凹窪部3bとからなるリング状のホルダ本体3Aを備え、さらに、ホルダ本体3Aの凹部3aとは反対側の面から凹窪部3bまで斜めに貫通して形成された差込孔に差し込まれた遮光片5とを有している。この遮光片5は、接着剤7が光触媒膜8の一部と接触する領域を光源のレーザ光から遮光する。
【0025】
遮光部材としての遮光片5は、その構成材料として特に限定されず、例えばホルダ本体3Aと同じ材料にて構成することができるが、この場合光が透過しないように着色剤(例えば黒色系)にて着色される。遮光片5は樹脂製以外にも例えばガラス、金属等でもよいが、光透過性を有する材料の場合は材料そのものを黒色系に着色するか、あるいは表面に黒色系の塗膜やフィルム等を形成して遮光性を付加する。
【0026】
対物レンズ4がホルダ3に取り付けられた状態において、上記凹窪部3bに塗布された接着剤7は、対物レンズ4の外周面の下部から底面の光触媒膜8の一部にかけて接している。また、遮光片5は、一端が光触媒膜8と近接乃至接触し、一端から他端に向かって径方向外側へ斜めに延びており、ホルダ3の半導体レーザ側から光軸方向を見て少なくとも接着剤7と接触する部分の光触媒膜8およびその近傍部分の光触媒膜8を覆っている。つまり、その接着剤7と接触する部分およびその近傍部分の光触媒膜8が存在する領域は、対物レンズ4に入射したレーザ光による光触媒作用の及ばない領域とされている。
【0027】
実施の形態1は上記のような対物レンズ保持構造であるため、清浄用半導体レーザから出射した清浄用レーザ光(例えば波長780nm以下)が対物レンズ4を透過することにより、対物レンズ4の両面の光触媒膜8にレーザ光が当たって光触媒作用が発生し、光触媒膜8に付着した汚れが分解され除去される。このとき、対物レンズ4の有効径を越えるレーザ光外周領域がホルダ3の遮光片5によって遮光されるため、レーザ光がホルダ3を透過したとしても接着剤7と接触している部分およびその近傍部分の光触媒膜8には光が当たらず、よって光触媒作用が発生して接着剤7が分解されるということがない。
なお、光ピックアップ装置の構成として、清浄用レーザ光を再度光学系に戻しても戻さなくてもどちらでも可能であるが、戻す方が光学部品の清浄化を高められる点で好ましい。この場合、戻り光の径は光学部品の有効径程度であるため、光触媒作用による接着剤への影響はない。
【0028】
この実施の形態1の対物レンズ保持構造は、外光が対物レンズに全く乃至殆ど照射しない構造の光ピックアップ装置に好適である。一方、例えばポータブルCD、DVDのように光触媒作用を発現させる程度の外光が対物レンズに照射する可能性がある光ピックアップ装置に適用させる場合は、ホルダ本体3Aおよび接着剤7が透明であると外光が透過して接着剤7に接触する部分の光触媒膜8に当たるおそれがあるため、ホルダ本体3Aおよび/または接着剤7を黒色系に着色して遮光するようにしてもよい。この場合、外光によっても対物レンズ4の自己清浄化を行なわせることができる。
【0029】
(実施の形態2)
図3は実施の形態2のホルダによる対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。この場合、実施の形態1で用いた対物レンズ4の凸状湾曲面側に遮光片15を設けている。
詳しく説明すると、ホルダ13のホルダ本体13Aは、実施の形態1と同様の凹部13aおよび光通過用孔13cを有すると共に、凹部13aの開口端縁に接着剤塗布用の凹窪部13bを有している。また、遮光片15は、上記凹窪部13bに塗布された接着剤7上に接着されている。
【0030】
対物レンズ4がホルダ13に取り付けられた状態において、接着剤7は、対物レンズ4の外周面の上部から凸状湾曲面上の光触媒膜8の周縁部の一部にかけて接している。また、遮光片5は、一端が光触媒膜8と近接乃至接触し、一端から他端に向かって径方向外側へ斜めに延びており、ホルダ3の光ディスク側から光軸方向を見て接着剤7と接触する部分およびその近傍部分の光触媒膜8を覆っている。つまり、その接着剤7と接触する部分およびその近傍部分の光触媒膜8が存在する領域は、外光による光触媒作用の及ばない領域とされている。
【0031】
実施の形態2は上記のような対物レンズ保持構造であるため、光触媒膜が窒素原子を含有する酸化チタン膜である場合、外光が対物レンズ4を透過することにより、対物レンズ4の両面の光触媒膜8に外光が当たって光触媒作用が発生し、光触媒膜8に付着した汚れが分解され除去される。このとき、外光は遮光片5によって遮光されるため、接着剤7と接触している部分およびその近傍部分の光触媒膜8には光が当たらず、よって光触媒作用が発生して接着剤7が分解されるということがない。
【0032】
この実施の形態2の対物レンズ保持構造は、外光によってのみ対物レンズの自己清浄化を行なわせる構造の光ピックアップ装置に好適である。一方、清浄用半導体レーザのレーザ光によっても自己清浄化を行なわせる場合は、ホルダ本体13Aが透明であると対物レンズ4の有効径を越える清浄用レーザ光外周領域がホルダ本体13Aを透過して接着剤7に接触する部分の光触媒膜8に当たるおそれがあるため、ホルダ本体13Aを黒色系に着色して遮光することが好ましい。
【0033】
(実施の形態3)
図4は実施の形態3のホルダによる対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。この場合も、実施の形態1で用いた対物レンズ4の凸状湾曲面側に遮光片25を設けている。
詳しく説明すると、ホルダ23のホルダ本体23Aは、実施の形態1と同様の凹部23aおよび光通過用孔23cを有し、接着剤塗布用の凹窪部は省略され、接着剤塗布箇所がホルダ本体23Aの上面(光ディスク側表面)とされている。また、遮光片15は、ホルダ本体23Aの上面に塗布された接着剤7上に接着されている。
【0034】
対物レンズ4がホルダ23に取り付けられた状態において、接着剤7は、対物レンズ4の外周面の上部から凸状湾曲面上の光触媒膜8の周縁部の一部にかけて接着している。また、遮光片25は、一端がホルダ本体23Aの上面と近接乃至接触し、一端から他端に向かって径方向内側へ斜めに延びておち、光ディスク側から光軸方向を見て接着剤7と接触する部分およびその近傍部分の光触媒膜8を覆っている。つまり、その接着剤7と接触する部分およびその近傍部分の光触媒膜8が存在する領域は、外光による光触媒作用の及ばない領域とされている。なお、遮光片25の他端は、レーザ光に干渉しない。
【0035】
実施の形態3は上記のような対物レンズ保持構造であるため、光触媒膜が窒素原子を含有する酸化チタン膜である場合、外光が対物レンズ4を透過することにより、対物レンズ4の両面の光触媒膜8に外光が当たって光触媒作用が発生し、光触媒膜8に付着した汚れが分解され除去される。このとき、外光は遮光片5によって遮光されるため、接着剤7と接触している部分およびその近傍部分の光触媒膜8には光が当たらず、よって光触媒作用が発生して接着剤7が分解されるということがない。
【0036】
この実施の形態3の対物レンズ保持構造も実施の形態2と同様に、外光によってのみ対物レンズの自己清浄化を行なわせる構造の光ピックアップ装置に好適である。一方、清浄用半導体レーザのレーザ光によっても自己清浄化を行なわせる場合は、ホルダ本体23Aが透明であると対物レンズ4の有効径を越えるレーザ光外周領域がホルダ本体23Aを透過して接着剤7に接触する部分の光触媒膜8に当たるおそれがあるため、ホルダ本体23Aを黒色系に着色して遮光することが好ましい。
【0037】
(実施の形態4)
図5は実施の形態4のホルダによる対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。この場合、対物レンズ4の凸状湾曲面側および平坦面側の両方に遮光片35a、35bを設けている。
詳しく説明すると、ホルダ33のホルダ本体33Aは、実施の形態1と同様の凹部33aおよび光通過用孔33cを有し、ホルダ本体33Aの上面が一方の接着剤塗布箇所とされると共に、ホルダ本体33Aの下面(半導体レーザ側表面)から凹部33aに貫通する接着剤塗布用の孔部33bを有している。この孔部33bは、幅方向の一部が凹部33aの側面に開口している。
【0038】
対物レンズ4がホルダ33に取り付けられた状態において、光ディスク側の接着剤7および遮光片35aは、実施の形態3と同様に配置されているため、遮光片35aによって覆われた領域が、外光による光触媒作用の及ばない領域とされている。
【0039】
一方、半導体レーザ側においては、ホルダ本体33Aの孔部33bに充填された接着剤7は、対物レンズ4の外周面の下部から底面の光触媒膜8の一部にかけて接し、その接着剤7により遮光片35bがホルダ本体33Aの下面に接着されている。この遮光片35bは、半導体レーザ側から見て、接着剤7に接触する部分およびその近傍部分の光触媒膜8を覆っている。つまり、その接着剤7と接触する部分およびその近傍部分の光触媒膜8が存在する領域は、清浄用レーザ光による光触媒作用の及ばない領域とされている。
【0040】
実施の形態4は上記のような対物レンズ保持構造であるため、外光および清浄用レーザ光が対物レンズ4を透過することにより、対物レンズ4の両面の光触媒膜8に光が当たって光触媒作用が発生し、光触媒膜8に付着した汚れが分解され除去される。このとき、外光および清浄用レーザ光は遮光片35a、35bによって遮光されるため、接着剤7と接触している部分およびその近傍部分の光触媒膜8には光が当たらず、よって光触媒作用が発生して接着剤7が分解されるということがない。
この実施の形態4の対物レンズ保持構造は、外光とレーザ光の両方で対物レンズの自己清浄化を行なわせる構造の光ピックアップ装置に好適である。
【0041】
(実施の形態5)
図6は実施の形態5のホルダによる対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。この場合、実施の形態4の光ディスク側の遮光片の代わりに、黒色系に着色された遮光ブロック35cが用いられている。実施の形態5において、その他の構成は実施の形態4と同様であり、同一の要素には同一の符号を付している。
【0042】
(実施の形態6)
図7は実施の形態6のホルダによる対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。この場合、上述の遮光部材は用いることなく、接着剤に対して光触媒作用が及ばない領域を形成する。
詳しく説明すると、実施の形態6の対向レンズ44は、凸状湾曲面および平坦面を有し、半導体レーザのレーザ光を通過させる本体部44aと、本体部44aの周囲に配置された対向する一対の突起部44bとからなる。突起部44bは、接着剤7との光触媒膜を有さない接着面を得るためのものであり、本体部44aの外周面の厚み方向略中間位置に配置されている。ホルダ43は、実施の形態1と同様の凹部43aおよび光通過用孔43cを有すると共に、上面から凹部43aの底面まで達しない深さで形成された一対の溝部43bを対向する位置に有している。この溝43bの底面が接着剤の塗布箇所とされており、溝部43bの幅は上記突起部44bの幅と略等しく設定されている。
【0043】
対物レンズ44がホルダ43に取り付けられた状態において、接着剤7は、対物レンズ4の突起部44bとホルダ43の溝部43bの底面の間に配置されている。よって、接着剤7は各光触媒膜8とは全く接触しないため、突起部44bの溝部43bの間の領域が光による光触媒作用の及ばない領域とされている。
【0044】
実施の形態6は上記のような対物レンズ保持構造であるため、外光または清浄用レーザ光が対物レンズ44を透過することにより、対物レンズ44の両面の光触媒膜8に光が当たって光触媒作用が発生し、光触媒膜8に付着した汚れが分解され除去される。このとき、接着剤7は光触媒膜とは非接触であるため、光触媒作用によって接着剤7が分解されるということがない。
この実施の形態6の対物レンズ保持構造は、外光とレーザ光の両方で対物レンズの自己清浄化を行なわせる構造の光ピックアップ装置に好適である。
【0045】
(実施の形態7)
図8は実施の形態7のホルダによる対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。この場合も遮光部材は用いることなく、接着剤に対して光触媒作用が及ばない領域を形成する。
詳しく説明すると、光触媒膜を有する対物レンズは実施の形態1と同様のものが用いられる。ホルダ53は、実施の形態1と同様の凹部53aおよび光通過用孔53cを有すると共に、凹部53aの開口端縁に一対の凹窪部53bを対向する位置に有している。この凹窪部53bが接着剤塗布箇所とされている。
【0046】
対物レンズ4がホルダ53に取り付けられた状態において、凹窪部53bに塗布された接着剤7は、対物レンズ4の凸状湾曲面の光触媒膜8と平坦面の光触媒膜8との間の高さ位置に配置されており、各光触媒膜8とは全く接触していない。よって、この凹窪部53bの領域が光による光触媒作用の及ばない領域とされている。
【0047】
実施の形態7は上記のような対物レンズ保持構造であるため、外光またはレーザ光が対物レンズ4を透過することにより、対物レンズ4の両面の光触媒膜8に光が当たって光触媒作用が発生し、光触媒膜8に付着した汚れが分解され除去される。このとき、接着剤7は光触媒膜とは非接触であるため、光触媒作用によって接着剤7が分解されるということがない。
この実施の形態7の対物レンズ保持構造も、外光とレーザ光の両方で対物レンズの自己清浄化を行なわせる構造の光ピックアップ装置に好適である。
【0048】
(実施の形態8)
図9は実施の形態8のホルダによる対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。この場合も遮光部材は用いることなく、接着剤に対して光触媒作用が及ばない領域を形成する。
詳しく説明すると、対物レンズは実施の形態1と同様のものが用いられるが、凸状湾曲面側の光触媒膜8は対物レンズ4の有効径の領域を僅かに越える程度の範囲に形成され、凸状湾曲面の外周部には形成されない。一方、対物レンズ4の平坦面には略全面に光触媒膜8が形成されている。ホルダ63は、実施の形態1と同様の凹部63aおよび光通過用孔63cを有するのみの簡素な構造であり、上面が接着剤塗布箇所とされている。
【0049】
対物レンズ4がホルダ63に取り付けられた状態において、接着剤7は、対物レンズ4の凸状湾曲面の光触媒膜8を有しない外周部からホルダ63の上面にかけて塗布されており、各光触媒膜8とは全く接触していない。よって、対物レンズ4の凸状湾曲面からホルダ63の上面にかけての領域が、光による光触媒作用の及ばない領域とされている。
【0050】
実施の形態8は上記のような対物レンズ保持構造であるため、外光またはレーザ光が対物レンズ4を透過することにより、対物レンズ4の両面の光触媒膜8に光が当たって光触媒作用が発生し、光触媒膜8に付着した汚れが分解され除去される。このとき、接着剤7は光触媒膜とは非接触であるため、光触媒作用によって接着剤7が分解されるということがない。
この実施の形態8の対物レンズ保持構造も、外光とレーザ光の両方で対物レンズの自己清浄化を行なわせる構造の光ピックアップ装置に好適である。
【0051】
以上、各実施の形態について説明したが、これらの実施の形態においては、万が一接着剤が部分的に光触媒作用にて分解した場合でも十分な接着強度を維持する観点から、接着剤の光学部品に直接接触する接着面積を十分に確保しておくことが望ましい。
また、上記実施の形態では、接着剤の塗布箇所が周方向の180°対向する2箇所に配置した場合を例示したが、3箇所以上でもよく、あるいは接着強度が十分確保されるのなら1箇所でもよい。
また、接着剤に接触した部分の光触媒膜を遮光する遮光部材は、光を透過させない材料であれば特に限定されず、遮光片、遮光ブロック以外にも、遮光塗膜、遮光フィルム等も使用可能である。
また、上記実施の形態では、対物レンズの保持構造を例示したが、対物レンズ以外の光学部品にも本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、CD、DVD、MO等の光ピックアップ装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の光ピックアップ装置における実施の形態1のホルダによる対物レンズの保持構造を示す断面図である。
【図2】図1の判截図である。
【図3】実施の形態2の対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。
【図4】実施の形態3の対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。
【図5】実施の形態4の対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。
【図6】実施の形態5の対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。
【図7】実施の形態6の対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。
【図8】実施の形態7の対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。
【図9】実施の形態8の対物レンズの保持構造を示す判截断面図である。
【図10】本発明における光触媒膜の膜厚を説明する図である。
【図11】従来の光ピックアップ装置の概略構成図である。
【図12】図11のホルダを有するアクチュエータ部分の拡大図である。
【図13】図12のホルダ部分の拡大側面断面図である。
【符号の説明】
【0054】
3、13、23、33、43、53、63 ホルダ
3A、13A、23A、33A、43A、53A、63A ホルダ本体
3a、13a、23a、33a、43a、53a、63a 凹部
3b、13b、33b、43b、53b 凹窪部
3c、13c、23c、33c、43c、53c、63c 孔部
4 対物レンズ(光学部品)
5、15、25、35a、35b 遮光片
7 接着剤
8 光触媒膜
101 半導体レーザ(光源)
102 コリメートレンズ(光学部品)
103 ホルダ
103a 凹部
103b 切欠き部
104 対物レンズ(光学部品)
106 支持制御用ワイヤ
107 接着剤
108 酸化チタン膜(光触媒膜)
109 光ディスク(情報記憶媒体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射し得る光源と、少なくとも一面の一領域に光触媒膜を有する光学部品と、この光学部品を保持するためのホルダとを備え、
光学部品は、光学部品とホルダの間であって前記光源からのレーザ光および/または外光によって生じる前記光触媒膜の光触媒作用が及ばない領域に塗布された接着剤によって、ホルダに固定されたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
ホルダが、光源からのレーザ光および/または外光から接着剤を遮光するための遮光部材をさらに有する請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
光学部品が、光触媒膜が存在しない接着剤塗布用の突起部を有する請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
光触媒膜の膜厚が、式(1)
λ/4n (1)
(式中、λは光源の光の波長、nは光触媒膜の屈折率である)で表される請求項1〜3の何れか1つに記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
光触媒膜がアナターゼ型酸化チタンからなる請求項1〜4の何れか1つに記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
アナターゼ型酸化チタンが窒素原子を含有する請求項5に記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
光源の光の波長が780nm以下である請求項6に記載の光ピックアップ装置。
【請求項1】
レーザ光を出射し得る光源と、少なくとも一面の一領域に光触媒膜を有する光学部品と、この光学部品を保持するためのホルダとを備え、
光学部品は、光学部品とホルダの間であって前記光源からのレーザ光および/または外光によって生じる前記光触媒膜の光触媒作用が及ばない領域に塗布された接着剤によって、ホルダに固定されたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
ホルダが、光源からのレーザ光および/または外光から接着剤を遮光するための遮光部材をさらに有する請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
光学部品が、光触媒膜が存在しない接着剤塗布用の突起部を有する請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
光触媒膜の膜厚が、式(1)
λ/4n (1)
(式中、λは光源の光の波長、nは光触媒膜の屈折率である)で表される請求項1〜3の何れか1つに記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
光触媒膜がアナターゼ型酸化チタンからなる請求項1〜4の何れか1つに記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
アナターゼ型酸化チタンが窒素原子を含有する請求項5に記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
光源の光の波長が780nm以下である請求項6に記載の光ピックアップ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−318549(P2006−318549A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138433(P2005−138433)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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