説明

光ピックアップ装置

【課題】 トラッキング制御動作に使用されるメインビーム及びサブビームを分離生成する回折格子を備えた光ピックアップ装置に関する。
【解決手段】 レーザーダイオード1から放射されるレーザー光を回折格子及びコリメートレンズ5を介して平行光として対物レンズに導くように構成された光ピックアップ装置において、回折格子が形成されていない光学部材14を光ピックアップ装置のハウジングに固定した状態にて紫外線を前記光学部材14に照射することによって該光学部材14に回折格子を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されている信号の読み出し動作や光ディスクに信号の記録動作を行うことが出来るように構成された光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクの信号記録層に照射することによって信号の読み出し動作や信号の記録動作を行うことが出来る光ディスク装置が普及している。
【0003】
光ディスク装置としては、CDやDVDと呼ばれる光ディスクを使用するものが一般に普及しているが、最近では記録密度を向上させた光ディスク、即ちBlu−ray規格の光ディスクを使用するものが開発されている。
【0004】
光ディスク装置に組み込まれる光ピックアップ装置では、レーザーダイオードから放射されるレーザー光を対物レンズに導き、該対物レンズの集光動作によってレーザー光を光ディスクに設けられている信号記録層にレーザースポットとして照射させるように構成されている。
【0005】
そして、光ピックアップ装置では、信号記録層にレーザー光を集光させるフォーカス制御動作及び該信号記録層に設けられている信号トラックにレーザースポットを追従させるトラッキング制御動作を行うように構成されている。
【0006】
フォーカス制御動作やトラッキング制御動作は、光ディスクに設けられている信号記録層から反射されるレーザー光、即ち戻り光と呼ばれるレーザー光を光検出器に導き、該光検出器に組み込まれている受光部から得られる信号に基づいて生成されるフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を利用するように構成されている。
【0007】
光ピックアップ装置は、前述したトラッキング制御動作やフォーカス制御動作を行うためのトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号を生成するためにレーザーダイオードから放射されるレーザー光をメインビーム及びサブビームを分離生成する回折格子と呼ばれる光学部材が組み込まれている。
【0008】
図3は一般に普及している光ピックアップ装置の光学系を示すものであり、斯かる図面を参照して光ピックアップ装置の構成について説明する。同図において、1は、例えばBlu−ray規格である光ディスクDに設けられている信号記録層Lに記録されている信号を読み出す場合及び該信号記録層Lに信号を記録する場合に適した波長のレーザー光を放射するレーザーダイオードである。
【0009】
2は前記レーザーダイオード1から放射されるレーザー光が入射されるとともに該レーザー光をメインビームとサブビームに分離させる回折格子、3は前記回折格子2を透過したレーザー光が入射される偏光ビームスプリッタであり、例えばP偏光光を反射させるとともにS偏光光を透過させる制御膜3aが設けられている。
【0010】
4は前記偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aにて反射されたレーザー光が入射される1/4波長板であり、入射されるレーザー光を直線偏光光から円偏光光へ、また反対に円偏光光から直線偏光光に変換する作用を成すものである。5は前記1/4波長板4を透過したレーザー光が入射されるとともに入射光を発散光から平行光に、反対に平行光から収束光に変換するコリメートレンズであり、球面収差を補正するためにモーター等(図示せず)の回転駆動力によって光軸方向、即ち矢印A及びB方向へ変位せしめられるように構成されている。
【0011】
6は前記コリメートレンズ5を透過したレーザー光が入射される位置に設けられている立ち上げミラーであり、入射されるレーザー光を対物レンズ7方向へ反射させるように構成されている。前記対物レンズ7は、入射されるレーザー光を光ディスクDに設けられている信号記録層Lに集光させる作用を成すものである。
【0012】
前述した光学部品にて構成された光路を通してレーザーダイオード1から放射されるレーザー光が前記対物レンズ7に入射されるので、光ディスクDに設けられている信号記録層Lに対物レンズ7の集光動作によってレーザー光が集光されて前記信号記録層Lに記録されている信号を読み出すために適したレーザースポット及び該信号記録層Lに信号を記録するために適したレーザースポットが生成される。
【0013】
斯かる動作によって光ディスクDに設けられている信号記録層L上にレーザースポットが生成されるが、同時に前記信号記録層Lからレーザー光が戻り光として反射されることになる。
【0014】
このようにして光ディスクDの信号記録層Lから反射されるレーザー光である戻り光は、対物レンズ7、立ち上げミラー6、コリメートレンズ5及び1/4波長板4を通して偏光ビームスプリッタ3に入射されることになる。斯かる戻り光は、周知のように1/4波長板4による位相変更動作によって異なる方向の直線偏光光、即ちS偏光光に変換されているので、前記偏光ビームスプリッタ3の制御膜3aにて反射されることなく該制御膜3aを透過することになる。
【0015】
8は制御膜3aを透過した戻り光が入射される位置に設けられているセンサーレンズであり、非点収差を発生させるとともに光検出器9に設けられている受光部に戻り光を照射する作用を成すものである。
【0016】
前述したように光ピックアップ装置は構成されているが、斯かる光ピックアップ装置に組み込まれる回折格子2は、その表面に凹凸状の周期格子パターンが形成されている。そして、斯かる周期格子パターンが形成されている回折格子は、例えば紫外線を利用して製造されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平10−253811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
図2の(A)及び(B)は特許文献1に記載された回折格子の製造方法を説明するものである。同図において、10は厚さが一定の硝子基板であり、レーザーダイオードから放射されるレーザー光の出射面10aにポリエチレンテレフタレート(PETと称す)膜11が一定の厚さになるように塗布される。12は前記PET膜11の表面に真空蒸着された薄膜であり、例えばポレジアセチレン誘導体にて構成されている。
【0019】
13はポレジアセチレン誘導体より成る薄膜12の表面に微細な周期格子パターンを形成するために配置された遮光マスクであり、紫外線を透過させる透孔13aが形成されている。斯かる遮光マスク13に対して、図示したように上方から紫外線Rを平行になるように照射させる動作が行われる。
【0020】
斯かる紫外線Rの照射動作が遮光マスク13に対して行われると、該遮光マスク13に形成されている透孔13aを通して紫外線がポレジアセチレン誘導体より成る薄膜12に照射されることになる。その結果、前記薄膜12の紫外線が照射される部分が収縮し、図2の(B)に示すように凹部12aが形成される。また、ポレジアセチレン誘導体より成る薄膜12の紫外線が照射されない部分は収縮することなく、そのままの状態を保持するので、全体として図2の(B)に示すように凹凸状の周期格子が形成されることになる。
【0021】
前述したように硝子基板10の出射面10aにPET膜11を介して真空蒸着されたポレジアセチレン誘導体より成る薄膜12が設けられた光学部材に対して透孔13aが形成されている遮光マスク13を介して紫外線を照射させることによって、表面に凹凸状の周期格子が形成された回折格子を製造することが出来る。
【0022】
光ピックアップ装置では、前述した製造方法等にて製造された回折格子を光ピックアップ装置の基台であるハウジングに接着固定するようにされているが、レーザーダイオードから放射されるレーザー光の光軸に対する角度を調整することが出来るように構成されている。斯かる角度の調整は、回折格子に形成されている格子の角度をレーザー光の光軸に対して最適な位置になるように調整する必要があるので、高額な設備や組立作業員に高い熟練度が要求されるという問題がある。
【0023】
本発明は、前述した問題を解決することが出来る光ピックアップ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、レーザーダイオードから放射されるレーザー光を回折格子及びコリメートレンズを介して平行光として対物レンズに導くように構成された光ピックアップ装置において、回折格子が形成されていない光学部材を光ピックアップ装置のハウジングに固定した状態にて紫外線を前記光学部材に照射することによって該光学部材に回折格子を形成するようにしたことを特徴するものである。
【0025】
また、本発明は、光学部材の紫外線が照射される位置を決定する遮光マスクを通して紫外線を光学部材に照射させるようにしたことを特徴とするものである。
【0026】
そして、本発明は、遮光マスクを平行光が通過する光路内に設けたことを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明は、遮光マスクの角度を調整することによって回折格子の位相差を設定するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、回折格子が形成されていない光学部材を光ピックアップ装置のハウジングに固定した状態にて紫外線を前記光学部材に照射することによって該光学部材に回折格子を形成するようにしたので、回折格子のレーザー光の光軸に対する角度を正確に設定することが出来る。即ち、本発明によれば回折格子の角度調整機構を必要としないので、部品の削減や組立調整工程を削減することが出来る、従って、組立作業者による位置調整作業等が不要になるので、調整におけるバラツキが無くなるだけでなく、信号観測装置や調整を行うための機械が不要となるので、設備に要する費用を低く抑えることが出来るという効果を本発明は有している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る光ピックアップ装置を説明するための図である。
【図2】回折格子の製造方法を説明するための図である。
【図3】光ピックアップ装置の光学系を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
レーザーダイオードから放射されるレーザー光をメインビームとサブビームに分離させる回折格子を備えた光ピックアップ装置に関する。
【実施例1】
【0031】
図1は本発明に係る光ピックアップ装置の光学系を示すものであり、図3に示した概略図と同一の部材には同一の符号を付している。
【0032】
図1において、14は回折格子が形成されていない光学部材であり、例えば図2に示した硝子基板10、該硝子基板10の出射面10aに塗布されたPET膜11及び該PET膜11の表面に真空蒸着されたポレジアセチレン誘導体より成る薄膜12にて構成されている。斯かる構成の光学部材14が光学式ピックアップ装置を構成する基台であるハウジングに設けられている回折格子の固定部に接着固定されている。
【0033】
斯かる構成の光ピックアップ装置において、レーザーダイオード1から放射されるレーザー光は、コリメートレンズ5によって平行光に変換されて対物レンズ7に入射されるように構成されている。従って、コリメートレンズ5と対物レンズ7の入射面との間の光路を通過するレーザー光は、平行光である。
【0034】
15は前記平行光が通過する光路内に設けられる遮光マスクであり、図2に示した遮光マスク13と同じ作用を成すものである。即ち、前記遮光マスク15には、前記光学部材14に回折格子として作用する周期格子を形成するための透孔が、例えばスリット状に形成されている。16は紫外線を放射する紫外線放射装置であり、平行な紫外線を前記遮光マスク15に対して上方より照射するように配置されている。
【0035】
斯かる構成において、紫外線放射装置16から放射された紫外線は、遮光マスク15に設けられている透孔を通して立ち上げミラー6方向へ出射される。このようにして立ち上げミラー6方向へ出射された紫外線は、コリメートレンズ5、1/4波長板4及び偏光ビームスプリッタ3を介して光学部材14に照射される。
【0036】
このように紫外線放射装置16から放射されるとともに遮光マスク15に形成されている透孔を透過した紫外線が光学部材14に照射されるので、前記光学部材14の表面に設けられているポレジアセチレン誘導体より成る薄膜12の紫外線照射部分が収縮することになる。その結果、図2の(B)に示すような凹凸状の周期格子が光学部材14の表面14aに形成されることになる。即ち、光学部材14に回折格子として作用する周期格子が形成されることになる。
【0037】
そして、遮光マスク15の水平方向の角度を調整することによって光学部材14の表面に形成される周期格子の位相差を任意に設定調整することが出来る。
【0038】
尚、本実施例では、1/4波長板4をハウジングに固定した状態にて光学部材14に紫外線を照射させるようにしたが、前記1/4波長板4を固定していない状態で紫外線の照射動作を行うように構成することも出来る。ハウジングに1/4波長板4を固定していない状態にて紫外線照射を行う場合には、紫外線を効率良く光学部材14に対して照射させることが出来るという利点がある。斯かる場合には、紫外線照射によって光学部材14に回折格子用の周期格子を形成した後に1/4波長板4のハウジングへの固定動作が行われることになる。
【0039】
以上に説明したように本発明に係る光ピックアップ装置に組み込まれる回折格子は、回折格として作用する光学部材をハウジングに固定した状態において、該光学部材に紫外線を照射することによって回折格子を製造するようにしたので、回折格子の固定部に角度を調整する調整機構を設ける必要がない。
【0040】
前述したように回折格子として作用する光学部材14、該光学部材14に対して紫外線放射装置16から放射される紫外線を導く立ち上げミラー6、コリメートレンズ5及び偏光ビームスプリッタ3をハウジングに設けられている固定位置に固定した状態において回折格子の製造動作が行われるが、斯かる動作によって回折格子が形成された後にレーザーダイオード1、1/4波長板4、センサーレンズ8及び光検出器9の所定位置への固定動作を行うことによって光ピックアップ装置の組立動作が行われる。更に前述した構成の光学装置に対して対物レンズ7を所定の位置に配置させることによって光ピックアップ装置の組立が完了することになる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、Blu−ray規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作及び記録動作を行うことが出来る光ピックアップ装置に実施した場合について説明したが、異なる規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作や記録動作を行うように構成された光ピックアップ装置にも応用することが出来る。
【符号の説明】
【0042】
1 レーザーダイオード
3 偏光ビームスプリッタ
4 1/4波長板
5 コリメートレンズ
7 対物レンズ
9 光検出器
14 光学部材
15 遮光マスク
16 紫外線放射装置
D 光ディスク
L 信号記録層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーダイオードから放射されるレーザー光を回折格子及びコリメートレンズを介して平行光として対物レンズに導くように構成された光ピックアップ装置であり、回折格子が形成されていない光学部材を光ピックアップ装置のハウジングに固定した状態にて紫外線を前記光学部材に照射することによって該光学部材に回折格子を形成するようにしたことを特徴する光ピックアップ装置。
【請求項2】
光学部材の紫外線が照射される位置を決定する遮光マスクを通して紫外線を光学部材に照射させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
遮光マスクを平行光が通過する光路内に設けたことを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
遮光マスクの角度を調整することによって回折格子の位相差を設定するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−97846(P2013−97846A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241760(P2011−241760)
【出願日】平成23年11月3日(2011.11.3)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】