光ピックアップ
【課題】 可動部と回転中の光ディスクとが接触したとき両者間に働く摩擦力を小さくして、光ディスクの表面が損傷することのない光ピックアップを提供する。
【解決手段】 光ピックアップ1は、対物レンズ3の位置を調整可能な可動部4と、可動部を移動可能に支持する複数の支持ワイヤ5と、支持ワイヤを支持する支持台6と、支持台が取付けられたヨーク部7とを備えている。光ピックアップは、移動動作可能な緩衝装置10を可動部4に設け、可動部と回転中の光ディスクとが接近したときに、緩衝装置10は光ディスクの表面に接触しながら光ディスクの移動動作に追従して移動動作を行う。
【解決手段】 光ピックアップ1は、対物レンズ3の位置を調整可能な可動部4と、可動部を移動可能に支持する複数の支持ワイヤ5と、支持ワイヤを支持する支持台6と、支持台が取付けられたヨーク部7とを備えている。光ピックアップは、移動動作可能な緩衝装置10を可動部4に設け、可動部と回転中の光ディスクとが接近したときに、緩衝装置10は光ディスクの表面に接触しながら光ディスクの移動動作に追従して移動動作を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの記録面上に対物レンズで光を集光させて情報の記録,再生などを行う光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップは、光ディスク再生装置および光ディスク記録再生装置などの光ディスク装置に使用される。光ピックアップは、記録媒体である光ディスクの記録面上に光たとえばレーザー光を集光させて情報の記録,再生などを行う装置である。
光ピックアップは可動部を有しており、この可動部は、複数の支持ワイヤを介して支持台に支持されて移動可能である。可動部は、レーザー光を集光させるための対物レンズと、光ディスクに対する対物レンズの位置を調整するためのフォーカスコイルおよびトラッキングコイルとを有している。
【0003】
光ディスクと可動部の対物レンズは、接触しないように一定の間隔を設けて配置されている。ところが、可動部と光ディスクの一方または両方の相対的な傾き,光ディスクを載せるテーブルの傾き,光ディスクの歪み,光ディスク再生装置全体の振動などがあると、これが原因となって、光ディスクと可動部の対物レンズとが接触して一方または両方が破損したり傷付く恐れがある。
【0004】
そこで、特許文献1(特開2002−237071号公報)には、対物レンズ衝突防止装置が提案されている。この対物レンズ衝突防止装置では、光ディスクの表面に近づいた場合にレンズ有効面より先に光ディスクの表面に接触するための緩衝層が設けられている。この緩衝層は、対物レンズのレンズ有効面の周縁から対物レンズの外縁または外側まで積層されている。
【特許文献1】特開2002−237071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の対物レンズ衝突防止装置では、対物レンズの有効径内部と光ディスク表面との衝突を緩衝層で軽減している。
しかしながら、緩衝層は対物レンズに固定されて動かないので、この緩衝層と光ディスクが接触したときの両者間に働く衝撃力は全て摩擦エネルギーに変わる。その結果、摩擦力を小さくすることができず、光ディスクの表面に傷が付いてしまう恐れがあった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、可動部と回転中の光ディスクとが接触したとき両者間に働く摩擦力を小さくして、光ディスクの表面が損傷することのない光ピックアップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる光ピックアップは、光ディスクの記録面上に光を集光させるための対物レンズが設けられ前記光ディスクに対する前記対物レンズの位置を調整可能な可動部と、この可動部を移動可能に支持する複数の支持ワイヤと、この支持ワイヤを支持する支持台と、この支持台が取付けられたヨーク部とを備えた光ピックアップであって、移動動作可能な緩衝装置を前記可動部に設け、この可動部と回転中の前記光ディスクとが接近したときに、前記緩衝装置はこの光ディスクの表面に接触しながらこの光ディスクの移動動作に追従して移動動作を行うようにしている。
前記緩衝装置は、前記可動部の本体部に回転自在に支持されるとともに前記対物レンズより先に前記光ディスクと接触するように設けられ前記光ディスクの表面上を転動可能な回転輪またはローラを有しているのが好ましい。
他の好ましい実施態様として、前記緩衝装置は、前記可動部の本体部に球面運動自在に支持されるとともに前記対物レンズより先に前記光ディスクと接触するように設けられ前記光ディスクの表面上を転動可能な球形のボール玉を有している。
さらに他の好ましい実施態様として、前記緩衝装置は、突出側に付勢されて前記可動部の本体部に進退移動可能に支持されるとともに前記対物レンズより先に前記光ディスクと接触するように設けられた移動部材を有し、この移動部材は、前記光ディスクに当接すると付勢力に抗して後退可能で且つこの光ディスクの表面に相対的に摺接可能である。
前記緩衝装置は、前記対物レンズをはさんでその両側に一対設けられているのが好ましい。
好ましくは、前記緩衝装置における少なくとも前記光ディスク表面に接触する接触部位には、弾性を有する素材が使用されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光ピックアップは、上述のように構成したので、可動部と回転中の光ディスクとが接触したとき両者間に働く摩擦力を小さくして、光ディスクの表面が損傷しないように保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
近年、DVDなどの光ディスクでは情報の記録密度が向上してきており、光ピックアップの対物レンズのNA(開口数)を高くする必要があるので、光ディスクと対物レンズとの間の距離が短くなってきている。その結果、光ディスクと可動部とが接触する可能性が高くなり、両者が接触したときの光ディスクと対物レンズの損傷を防止する対策が求められている。
そこで、下記の実施例では、移動動作可能な緩衝装置を可動部に設け、この可動部と回転中の光ディスクとが接近したときに、緩衝装置は、光ディスクの表面に接触しながらこの光ディスクの移動動作に追従して移動動作を行うようにしている。
これにより、可動部と回転中の光ディスクとが接触しても、両者(光ディスクと緩衝装置)の接触による衝撃力のエネルギーの大部分は、緩衝装置を移動させるためのエネルギーに変わる。したがって、衝撃力は緩和されて両者(光ディスクと緩衝装置)間に働く摩擦力は小さくなるので、光ディスクの表面が損傷する恐れはなくなる。
【0010】
下記の実施例および各種変形例にかかる光ピックアップは、永久磁石が固定側に配置され、可動部にコイルが取付けられているので、「コイル移動(moving coil)タイプ(いわゆる、MCタイプ)」と呼ばれている。
なお、本発明は、コイルが固定側に配置され、永久磁石が可動部に取付けられた、永久磁石移動(moving magnet)タイプ(いわゆる、MMタイプ)の光ピックアップにも適用可能である。
【実施例】
【0011】
以下、本発明にかかる実施例を、図1ないし図11を参照して説明する。
図1ないし図4は本発明の一実施例を示す図で、図1,図2はそれぞれ光ピックアップの平面図,斜視図、図3は可動部の斜視図、図4は、可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
図5は、本実施例の第1の変形例にかかる可動部の斜視図、図6は、図5に示す可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
図7は、本実施例の第2の変形例にかかる可動部の斜視図、図8は、図7に示す可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
図9は、本実施例の第3の変形例にかかる可動部の斜視図、図10(A)は図9に示す緩衝装置の拡大断面図、図10(B)は移動部材の斜視図、図11は、図9に示す可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
【0012】
図1ないし図11に示す本発明の光ピックアップ1は、可動部4,4a,4b,4cを備えている。可動部4,4a〜4cには、フォーカスコイル8およびトラッキングコイル9と、光ディスク2の記録面(表面2a)上にレーザー光などの光を集光させるための対物レンズ3とが設けられている。可動部4,4a〜4cのフォーカスコイル8とトラッキングコイル9にそれぞれ電流を流すことにより、光ディスク2に対する対物レンズ3の位置を調整可能である。
光ピックアップ1は、可動部4,4a〜4cを移動可能に支持する複数の支持ワイヤ5と、支持ワイヤ5を支持する支持台6と、支持台6が取付けられたヨーク部(継鉄部)7とを備えている。
【0013】
可動部4,4a〜4cには、移動動作可能な緩衝装置10,10a,10b,10cがそれぞれ設けられている。可動部4,4a〜4cと回転中の光ディスク2とが接近したときに、緩衝装置10,10a〜10cは、光ディスク2の表面2aに接触しながら、この光ディスク2の移動動作(たとえば、回転動作,上下方向への移動動作)に追従して移動動作(たとえば、回転動作,球面動作,上下方向への移動動作)を行うことができる。
すなわち、光ディスク2の表面2aは回転面であるが、可動部4,4a〜4cに緩衝装置10,10a〜10cの移動面を設けて、光ディスク2の回転面を、これに追従する移動面で受けている。
したがって、可動部4,4a〜4cと回転中の光ディスク2とが接触したとき、両者(可動部と光ディスク)間に働く摩擦力を小さくして、光ディスク2の表面2aの損傷を防止することができる。
【0014】
図1ないし図4において、光ディスク装置(図示せず)に使用される光ピックアップ1は、移動機構(図示せず)により、記録媒体である光ディスク2の半径方向に制御されつつ移動可能になっている。
光ディスク装置において、光ディスク2を駆動モータで回転駆動するとともに、移動機構で所望の位置に光ピックアップ1を移動させる。そして、光ピックアップ1は、光ディスク2の記録面(表面2a)上に対物レンズ3で光(たとえば、レーザー光)を集光させて、光ディスク2に対して情報の記録,再生などを行う。
光ディスク2としては、CD,CD−ROM,CD−R,CD−RW,MD,MO,DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−R,DVD−RWなどがある。
【0015】
なお、説明の便宜上、対物レンズ3の光軸Bと平行な方向すなわちフォーカス方向をX方向とし、特に、光ディスク2側,反光ディスク側をそれぞれ上方向,下方向とする。
このX方向と直交する方向(光ディスクの半径方向)すなわちトラッキング方向をZ方向とし、X方向およびZ方向と直交する方向をY方向とする。特に、図1の左右方向を光ピックアップ1の左右方向(Z方向)とする。
本実施例では、対物レンズ3が可動部4,4a〜4cのほぼ中央部に配置された「レンズセンタータイプ」の光ピックアップ1の場合を示している。なお、本発明は、対物レンズが可動部の中央部より一方側に偏心して配置された「レンズオフセットタイプ」の光ピックアップにも適用可能である。
【0016】
磁性体からなるヨーク部7には、支持台6が取付けられている。支持台6は、複数(ここでは、四本)の支持ワイヤ5を支持しており、この四本の支持ワイヤ5は、可動部4を移動可能に支持している。
フォーカスコイル8およびトラッキングコイル9との間でそれぞれ磁気回路を構成する永久磁石(ここでは、第1の永久磁石15aと第2の永久磁石15b)が、ヨーク部7の所定位置に取付けられている。なお、本発明の実施例においては、第1の永久磁石15aと第2の永久磁石15bとして、部位によって磁極の極性を異ならせた多磁極型の永久磁石を用いている。
可動部4に設けられたフォーカスコイル8とトラッキングコイル9には、支持ワイヤ5を介してそれぞれ電流が供給される。フォーカスコイル8に電流を流せば、可動部4をフォーカス方向(対物レンズ3の光軸Bと平行な方向(X方向))に移動させることができる。トラッキングコイル9に電流を流せば、可動部4をトラッキング方向(光ディスク2の半径方向(Z方向))に移動させることができる。
【0017】
可動部4は、平面視で矩形をなす所定形状の本体部16を有しており、本体部16は、絶縁性を有する樹脂材料などにより一体的に形成されている。対物レンズ3,フォーカスコイル8およびトラッキングコイル9などは、本体部16の所定位置に設けられている。
本体部16は、対物レンズ3が取付けられるレンズ支持部17と、平面視で矩形に形成されたコイル支持部18とを有している。レンズ支持部17の中心軸線が対物レンズ3の光軸Bと一致するように、対物レンズ3はレンズ支持部17に取付けられている。
【0018】
コイル支持部18のトラッキング方向(Z方向)を向く一方の側面19には、一つのフォーカスコイル8と、その両側に配置された一対のトラッキングコイル9とが設けられている。側面19と平行な反対側の側面19にも、一つのフォーカスコイル8と、その両側に配置された一対のトラッキングコイル9とが設けられている。
各側面19において、一つのフォーカスコイル8と二つのトラッキングコイル9は、Z方向に並んで配置されており、それぞれの巻軸の方向がY方向と平行になっている。
【0019】
緩衝装置10は回転輪30を有している。回転輪30は、本体部16に回転自在に支持されるとともに、対物レンズ3より先に光ディスク2と接触するように設けられ、光ディスク2の表面2a上を転動可能である。
本体部16には、一対の矩形状の中空部20が形成されている。二つの中空部20は、トラッキング方向(Z方向)に並んで配置され、本体部16の上面から下面まで貫通形成されている。
回転輪30は、本体部16に支持された回転軸31を中心として、矢印Dに示すように回転自在になっており、緩衝装置10をコンパクトにするために回転輪30のほぼ下半分は中空部20内に配置されている。
回転輪30は、光ディスク2の表面2aに接触したときには、光ディスク2の回転動作に追従して回転動作を行うことができる。回転輪30の外周面のうち最も上方の位置H1は、対物レンズ3の最も上方の位置H2より上方に位置している。したがって、光ディスク2は、可動部4に接近したとき、対物レンズ3より先に回転輪30に接触することになる。
【0020】
回転輪30は、光ディスク2の表面2aに接触しながら、この光ディスク2の移動動作(この場合には、回転動作)に追従して移動動作(この場合には、回転動作)を行うことができる。
光ディスク2と回転輪30との間の摩擦は転がり摩擦なので、光ディスク2と回転輪30との間に働く摩擦力が小さくなって、光ディスク2の表面2aが損傷することがなくなる。
また、可動部4と回転中の光ディスク2とが接近したときに、対物レンズ3より先に回転輪30が光ディスク2と接触するので、対物レンズ3の損傷を防止することができる。
本実施例の緩衝装置10は、対物レンズ3をはさんでその両側に一対設けられている。これにより、光ディスク2が二つの回転輪30のうち一方の回転輪30側に傾いていても、光ディスク2が可動部4に接近して対物レンズ3より先にいずれか一方の回転輪30と接触する。よって、光ディスク2と対物レンズ3の直接的な接触を防止して、光ディスク2と対物レンズ3の損傷を防止することができる。
【0021】
ヨーク部7は、光ディスク装置のケースまたはベース部材などの固定側に固定され、所定形状(ここでは、矩形)に形成されている。ヨーク部7は、平面視でほぼ矩形に形成された板状の本体部21と、本体部21にほぼ直角に一体形成され(または、別体で固定され)、且つ可動部4より外方側に配置された第1のヨーク22と、本体部21にほぼ直角に固定され(または、一体形成され)、且つ可動部4より外方側に配置された第2のヨーク23とを有している。
第1のヨーク22と第2のヨーク23は、ほぼ矩形状を有し突出して本体部21に設けられ、互いに平行に配置されている。
第1の永久磁石15aと第2の永久磁石15bは、可動部4の合計二個のフォーカスコイル8および合計四個のトラッキングコイル9に対応して、ヨーク部7の所定位置に取付けられている。
【0022】
第1の永久磁石15aと第2の永久磁石15bは、それぞれ部位によって磁極の極性を異ならせた多磁極型の永久磁石である。
第1の永久磁石15aは、第1のヨーク22(および/または、直接本体部21)に接着剤などで固着され、一つのフォーカスコイル8と二つのトラッキングコイル9に対向して配置されている。
第2の永久磁石15bは、第2のヨーク23(および/または、直接本体部21)に接着剤などで固着され、一つのフォーカスコイル8と二つのトラッキングコイル9に対向して配置されている。
【0023】
二つのフォーカスコイル8と、これに対向して配置された第1のヨーク22および第1の永久磁石15aと、第2のヨーク23および第2の永久磁石15bとの間で、磁気回路が構成されている。各フォーカスコイル8は、永久磁石の磁束が鎖交するように配置されている。
四つのトラッキングコイル9は、第1の永久磁石15aと第2の永久磁石15bとが形成する磁界中に配置されて磁気回路を形成している。各トラッキングコイル9は、永久磁石の磁束が鎖交するように配置されている。
【0024】
支持ワイヤ5は、可動部4の両端にY方向とほぼ平行にそれぞれ二本ずつ合計四本設けられている。支持ワイヤ5は、その一端部(支持台6から遠い方の端部)が可動部4側に固定され、他端部が支持台6側に固定されている。
可動部4は、四本の支持ワイヤ5を介して、支持台6とヨーク部7との間の空間に浮いている格好で取付けられている。したがって、可動部4は、移動や揺動などの動作を行なって、可動部4の状態(可動部4の位置,姿勢など)を自在に変化させることができる。
可動部4は、フォーカスコイル8とトラッキングコイル9に電流が供給されていないときの基本位置から、フォーカスコイル8とトラッキングコイル9の一方または両方に電流を供給することにより、上下方向(X方向)や左右方向(Z方向)にシフト(移動)することができる。
ここで「可動部4の基本位置」とは、たとえば、フォーカスコイル8とトラッキングコイル9に電流を供給しないで可動部4が静止している状態のとき、可動部4の上下,左右の中心線がともに基準線(図示せず)と一致しているときの、可動部4の位置をいう。好ましくは、対物レンズ3の光軸Bが、水平面に対して直角になるとともに、Z方向(左右)の基準線(中心線)と一致する位置にあるときに、可動部4が基本位置にあることになる。
【0025】
支持ワイヤ5が接続されるプリント配線板が、支持台6に接着剤などで固着されている。プリント配線板には、支持ワイヤ5を係合させるための複数(ここでは、四つ)の孔が所定位置に穿設されている。
支持台6には、支持ワイヤ5を貫通させるための複数(ここでは、四つ)の貫通孔が所定位置に穿設されている。支持ワイヤ5の他端部またはその近傍は、プリント配線板の孔を通してプリント配線板に電気的に接続されるとともに、支持台6側に固定されている。支持ワイヤ5の一端部またはその近傍は、フォーカスコイル8またはトラッキングコイル9に電気的に接続されるとともに、可動部4側に固定されている。
フォーカスコイル8とトラッキングコイル9は、支持ワイヤ5と、この支持ワイヤ5が電気的に接続されたプリント配線板とによって、制御部(図示せず)に電気的に接続されている。
【0026】
光ピックアップ1は、図示しない光学系を有している。この光学系は、レーザー光を発生する半導体レーザーなど光源,光検出器,反射ミラー,レンズおよび回折格子などを有している。対物レンズ3もこの光学系に含まれる。
光検出器は、光ディスク2の記録面で反射したレーザー光を受光し、再生信号を検出するとともに、フォーカスエラー信号,トラッキングエラー信号なども検出する。
【0027】
次に、光ピックアップ1の動作について説明する。
まず、光ディスク装置において、光ディスク2が駆動モータにより回転駆動されている状態で、移動機構により光ピックアップ1を所望の位置に移動させる。そして、光学系で発生したレーザー光を対物レンズ3で記録面上に集光させて、光ディスク2に対して情報の記録,再生などを行う。
光ピックアップ1の状態(可動部4の位置,姿勢など)を制御する場合には、光検出器で検出された光ディスク2の傾きなどの姿勢制御に関する情報を変換部で電気信号に変換し、制御部に電気信号(フォーカスエラー信号,トラッキングエラー信号など)として出力する。
制御部では、変換部から出力された電気信号(フォーカスエラー信号,トラッキングエラー信号など)に基づいて、フォーカスコイル8に流す電流とトラッキングコイル9に流す電流をそれぞれ制御する。
【0028】
対物レンズ3をフォーカス方向(X方向)に移動させる場合には、制御部は、移動すべき方向および移動量に応じた制御電流を、支持ワイヤ5を介して二つのフォーカスコイル8に供給する。すると、フォーカスコイル8により生じる電磁力により、可動部4が光ディスク2に対してフォーカス方向(X方向)に移動(シフト)して、対物レンズ3の位置を調整する。
同様に、支持ワイヤ5を介して四つのトラッキングコイル9に供給する電流を制御すれば、トラッキングコイル9により生じる電磁力により、可動部4が光ディスク2のトラッキング方向(Z方向)に移動(シフト)して、対物レンズ3の位置を調整する。
このようにして、可動部4は、フォーカス方向,トラッキング方向にそれぞれ移動するようにその位置が制御される。
【0029】
図4(A)に示すように、正常時には、光ディスク2が可動部4から離れた状態で、光ピックアップ1により光ディスク2に対して情報の記録,再生などが行われる。ところが、図4(B)に示すように、ターンテーブルに対して光ディスク2のセットが不十分であったり、光ディスク2自体が歪んだりしていると、回転中の光ディスク2と可動部4とが接近することがある。
このような場合、緩衝装置10の回転輪30は、回転中の光ディスク2の表面2aに接触しながら光ディスク2の回転動作に追従して、矢印Dに示すように回転動作を行う。回転輪30は光ディスク2と転がり摩擦により接触し、両者30,2間に働く摩擦力は小さいので、光ディスク2の表面2aに傷が付く恐れはない。
また、可動部4と回転中の光ディスク2が接近したときは、回転輪30は、対物レンズ3より先に光ディスク2と接触してその表面2a上を転動するので、対物レンズ3が光ディスク2と直接接触することはなく、対物レンズ3の損傷を防止することができる。
【0030】
次に、第1の変形例ないし第3の変形例について説明する。なお、上述の本実施例と同一または相当部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
図5,図6に示す第1の変形例にかかる光ピックアップの可動部4aは、移動動作可能な緩衝装置10aを有している。そして、可動部4aと回転中の光ディスク2とが接近したときに、緩衝装置10aは、光ディスク2の表面2aに接触しながら光ディスク2の移動動作(ここでは、回転動作)に追従して、矢印Dに示すように移動動作(ここでは、回転動作)を行うことができる。
そのために、緩衝装置10aはローラ30aを有している。ローラ30aは、可動部4aの本体部16に回転自在に支持されるとともに、対物レンズ3より先に光ディスク2と接触するように設けられ、光ディスク2の表面2a上を転動可能になっている。これにより、ローラ30aは前記回転輪30と同じ作用効果を奏する。
【0031】
本体部16の上面には、軸受部35が一体的にまたは別体で固定されている。軸受部35は、レンズ支持部17の一方側と他方側にそれぞれ一対ずつ対向配置されている。ローラ30aの回転軸31の両端部は、一対の軸受部35により軸支されており、ローラ30aは、軸受部35に支持されて自在に回転することができる。
ローラ30aは、トラッキング方向(Z方向)に延びた円筒状をなしているので、光ディスク2とはトラッキング方向に長く延びた線接触を行う。ローラ30aと光ディスク2は線接触で接触面積が大きくなるので、接触面での圧力が軽減されて、光ディスク表面2aの損傷の可能性をさらに良好に防止することができる。
【0032】
緩衝装置10aは、対物レンズ3をはさんでその両側に一対設けられているので、前記実施例の緩衝装置10と同じ作用効果を奏する。
二つのローラ0aは、対物レンズ3の両側に且つY方向に並んで配置されている。ローラ30aの外周面のうち最も上方の位置H1は、対物レンズ3の最も上方の位置H2より上方に位置している。
したがって、光ディスク2は、可動部4aに接近しても対物レンズ3より先にローラ30aに接触するので、対物レンズ3が損傷する恐れはない。また、ローラ30aは、前記回転輪30と同じ作用効果を奏する。
【0033】
図7,図8に示す第2の変形例にかかる光ピックアップは、移動動作可能な緩衝装置10bが設けられた可動部4bを備えている。
可動部4bと回転中の光ディスク2とが接近したときに、緩衝装置10bは、光ディスク2の表面2aに接触しながら光ディスク2の移動動作(この場合には、回転動作)に追従して移動動作(この場合には、回転動作)を行うことができる。
緩衝装置10bは、光ディスク2の表面2a上を転動可能な球形のボール玉30bを有している。ボール玉30bは、可動部4bの本体部16に球面運動自在に支持されるとともに、対物レンズ3より先に光ディスク2と接触するように設けられている。
これにより、可動部4bと回転中の光ディスク2とが接近したときに、ボール玉30bが、光ディスク2の表面2aに接触しながら光ディスク2の回転動作に追従して回転動作を行う。
【0034】
光ディスク2とボール玉30bは、転がり接触で且つ点接触を行なっているので、両者2,30b間に働く摩擦力は小さくなっており、光ディスク2の表面が損傷する恐れをなくすることができる。
また、光ディスク2と可動部4bとが接近したときに、光ディスク2は、対物レンズ3より先にボール玉30bに接触するので、対物レンズ3が損傷する恐れはない。
緩衝装置10bは、対物レンズ3をはさんでその両側に一対設けられているので、前記実施例の緩衝装置10と同じ作用効果を奏する。
【0035】
可動部4bの本体部16の上面には、筒状のボール玉保持部40が一体的にまたは別体で固定されている。ボール玉保持部40は、対物レンズ3をはさんでその両側に一対設けられている。
ボール玉保持部40は、その上部内方にボール玉30bを保持している。ボール玉30bの一部がボール玉保持部40の上端面より上方に突出しており、ボール玉30bは、外方に飛び出ないように拘束された状態で球面運動のみを行なう。
ボール玉30bの最も上方の位置H1は、対物レンズ3の最も上方の位置H2より上方に位置している。これにより、光ディスク2が可動部4bに接近したとき、対物レンズ3より先にボール玉30bが光ディスク2と接触するので、対物レンズ3が保護される。
【0036】
図9ないし図11に示す第3の変形例にかかる光ピックアップは、移動動作可能な緩衝装置10cが設けられた可動部4cを備えている。
可動部4cと回転中の光ディスク2とが接近したときに、緩衝装置10cは、光ディスク2の表面2aに接触しながら光ディスク2の移動動作(この場合には、上下方向(X方向)への移動動作)に追従して、移動動作(この場合には、上下方向(X方向)への移動動作)を行うようになっている。
緩衝装置10cは移動部材45を有しており、移動部材45は、付勢部材としての圧縮ばね46で突出側(上方側)に付勢されている。移動部材45は、可動部4cの本体部16に上下方向に進退移動可能に支持されるとともに、対物レンズ3より先に光ディスク2と接触するように設けられている。
なお、移動部材45を付勢する付勢部材として、コイル状の圧縮ばね46の場合を示したが、板ばねやその他のばねであってもよい。これらのばねや圧縮ばね46は軽量で応答速度が速いので、移動部材45は光ディスク2と接触したらすぐに後退(下方に移動)することができ、光ディスク2が移動部材45に接触しても損傷する恐れがない。
【0037】
移動部材45は、光ディスク2に接触すると圧縮ばね46の付勢力(ばね力)に抗して後退可能で、且つ光ディスク2の表面2aに相対的に摺接可能になっている。
したがって、可動部4cと回転中の光ディスク2とが接近したときに、移動部材45は、光ディスク2の表面2aに接触しながら光ディスク2の移動動作(ここでは、上下方向への移動動作)に追従して移動動作(ここでは、上下方向への移動動作)を行う。
このように、移動部材45は、矢印Eaに示すように移動して光ディスク2の表面2aに相対的に摺接することができる。このとき、移動部材45と回転中の光ディスク2との間には滑り摩擦が働くが、移動部材45は光ディスク2に追従して移動可能なので、両者45,2間に働く摩擦力は小さくなり、光ディスク2の表面2aの損傷を防止することができる。
【0038】
緩衝装置10cは、対物レンズ3をはさんでその両側に一対設けられている。これにより、光ディスク2が二つの移動部材45のうち一方の移動部材45側に傾いていても、光ディスク2が可動部4cに接近して対物レンズ3より先にいずれか一方の移動部材45と接触する。よって、光ディスク2と対物レンズ3の直接的な接触を防止して、光ディスク2と対物レンズ3の損傷を防止することができる。
本体部16の上面には、円筒状の移動部材保持部47が、上方に突出して一体的にまたは別体で固定されている。移動部材保持部47は、対物レンズ3の両側に一対設けられ、トラッキング方向(Z方向)に並んで配置されている。
移動部材保持部47の内部には中空部48が形成されている。本体部16の上面には、中空部48と連通する凹部49が形成されている。中空部48の上部には円形孔50が連通している。円形孔50は、移動部材保持部47の上板51に貫通形成されている。
【0039】
移動部材45は、円筒状をなして途中にフランジ部52が一体的にまたは別体で形成されている。移動部材45は、移動部材保持部47の内部に保持されて、矢印Eaに示すように上下方向に移動可能である。
フランジ部52は、上板51の下面に当接して位置決め保持される。フランジ部52より上方の円筒部が円形孔50に係合している。圧縮ばね46は、凹部49内に装着されるとともにフランジ部52に係合して、移動部材45を常に上方に付勢している。したがって、移動部材45は、フランジ部52が上板51の下面に当接しているときに最も上方に突出した状態になっている。
なお、図示するように、円形孔50の径を、移動部材45のフランジ部52が移動部材保持部47の上方から飛び出さない程度に大きくすれば、移動部材45は、光ディスク2が接触したとき、上下方向(矢印Ea)だけでなく、光ディスク2の回転方向にも移動可能(この場合には、矢印Ebに示すように傾斜動作可能)である。
【0040】
光ディスク2が可動部4cに接近して移動部材45に当接すると、移動部材45は圧縮ばね46の付勢力に抗して下方に移動(後退)するので、移動部材45と光ディスク2との間に働く滑り摩擦の摩擦力が小さくなる。これにより、光ディスク2の表面2aが損傷しないようにしている。
対物レンズ3の最も上方の位置H2の方が、移動部材45が最下端位置まで下降したときの移動部材45の上端部の位置H1より低くなっている。その結果、光ディスク2と可動部4cが接近したとき、対物レンズ3より先に移動部材45が光ディスク2に当接するので、対物レンズ3は直接光ディスク2に接触することはなく、対物レンズ3の損傷を防止することができる。
【0041】
上述の実施例,第1ないし第3の変形例にかかる緩衝装置10,10a〜10cにおいて、少なくとも光ディスク表面2aに接触する接触部位には、弾性を有する素材が使用されている。
この接触部位としては、回転輪30の外周面,ローラ30aの外周面,ボール玉30bの外表面全体,移動部材45の上端面などである。弾性を有する素材としては、ゴム,合成樹脂,UV塗料など、接触部における摩擦力を低下させる作用を有するものが好ましい。
こうして、弾性を有する素材を少なくとも接触部位に使用すれば、緩衝装置10,10a〜10cの接触部位と光ディスク2とが接触しても、接触部位の弾性により両者(接触部位と光ディスク2)間に働く摩擦力が小さくなるので、光ディスク2の表面2aの損傷をより効果的に防止することができる。
なお、緩衝装置10,10a〜10cを、対物レンズ3をはさんでその両側に一対設けた場合を示したが、対物レンズ3の片側にのみ設けた場合であってもよい。
【0042】
以上、本発明の実施例(各種変形例を含む。以下同じ)を説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形,付加などが可能である。
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、DVD,CDなどの記録面上に対物レンズでレーザー光などを集光させて情報の記録,再生などを行う光ディスク装置に取付けられる光ピックアップに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1ないし図11は本発明の実施例を示す図である。図1ないし図4は一実施例を示す図で、図1は光ピックアップの平面図である。
【図2】光ピックアップの斜視図である。
【図3】可動部の斜視図である。
【図4】可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
【図5】本実施例の第1の変形例にかかる可動部の斜視図である。
【図6】図5に示す可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
【図7】本実施例の第2の変形例にかかる可動部の斜視図である。
【図8】図7に示す可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
【図9】本実施例の第3の変形例にかかる可動部の斜視図である。
【図10】図10(A)は図9に示す緩衝装置の拡大断面図、図10(B)は移動部材の斜視図である。
【図11】図9に示す可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 光ピックアップ
2 光ディスク
2a 光ディスクの表面
3 対物レンズ
4,4a〜4c 可動部
5 支持ワイヤ
6 支持台
7 ヨーク部
10,10a〜10c 緩衝装置
16 本体部
30 回転輪
30a ローラ
30b ボール玉
45 移動部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの記録面上に対物レンズで光を集光させて情報の記録,再生などを行う光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップは、光ディスク再生装置および光ディスク記録再生装置などの光ディスク装置に使用される。光ピックアップは、記録媒体である光ディスクの記録面上に光たとえばレーザー光を集光させて情報の記録,再生などを行う装置である。
光ピックアップは可動部を有しており、この可動部は、複数の支持ワイヤを介して支持台に支持されて移動可能である。可動部は、レーザー光を集光させるための対物レンズと、光ディスクに対する対物レンズの位置を調整するためのフォーカスコイルおよびトラッキングコイルとを有している。
【0003】
光ディスクと可動部の対物レンズは、接触しないように一定の間隔を設けて配置されている。ところが、可動部と光ディスクの一方または両方の相対的な傾き,光ディスクを載せるテーブルの傾き,光ディスクの歪み,光ディスク再生装置全体の振動などがあると、これが原因となって、光ディスクと可動部の対物レンズとが接触して一方または両方が破損したり傷付く恐れがある。
【0004】
そこで、特許文献1(特開2002−237071号公報)には、対物レンズ衝突防止装置が提案されている。この対物レンズ衝突防止装置では、光ディスクの表面に近づいた場合にレンズ有効面より先に光ディスクの表面に接触するための緩衝層が設けられている。この緩衝層は、対物レンズのレンズ有効面の周縁から対物レンズの外縁または外側まで積層されている。
【特許文献1】特開2002−237071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の対物レンズ衝突防止装置では、対物レンズの有効径内部と光ディスク表面との衝突を緩衝層で軽減している。
しかしながら、緩衝層は対物レンズに固定されて動かないので、この緩衝層と光ディスクが接触したときの両者間に働く衝撃力は全て摩擦エネルギーに変わる。その結果、摩擦力を小さくすることができず、光ディスクの表面に傷が付いてしまう恐れがあった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、可動部と回転中の光ディスクとが接触したとき両者間に働く摩擦力を小さくして、光ディスクの表面が損傷することのない光ピックアップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる光ピックアップは、光ディスクの記録面上に光を集光させるための対物レンズが設けられ前記光ディスクに対する前記対物レンズの位置を調整可能な可動部と、この可動部を移動可能に支持する複数の支持ワイヤと、この支持ワイヤを支持する支持台と、この支持台が取付けられたヨーク部とを備えた光ピックアップであって、移動動作可能な緩衝装置を前記可動部に設け、この可動部と回転中の前記光ディスクとが接近したときに、前記緩衝装置はこの光ディスクの表面に接触しながらこの光ディスクの移動動作に追従して移動動作を行うようにしている。
前記緩衝装置は、前記可動部の本体部に回転自在に支持されるとともに前記対物レンズより先に前記光ディスクと接触するように設けられ前記光ディスクの表面上を転動可能な回転輪またはローラを有しているのが好ましい。
他の好ましい実施態様として、前記緩衝装置は、前記可動部の本体部に球面運動自在に支持されるとともに前記対物レンズより先に前記光ディスクと接触するように設けられ前記光ディスクの表面上を転動可能な球形のボール玉を有している。
さらに他の好ましい実施態様として、前記緩衝装置は、突出側に付勢されて前記可動部の本体部に進退移動可能に支持されるとともに前記対物レンズより先に前記光ディスクと接触するように設けられた移動部材を有し、この移動部材は、前記光ディスクに当接すると付勢力に抗して後退可能で且つこの光ディスクの表面に相対的に摺接可能である。
前記緩衝装置は、前記対物レンズをはさんでその両側に一対設けられているのが好ましい。
好ましくは、前記緩衝装置における少なくとも前記光ディスク表面に接触する接触部位には、弾性を有する素材が使用されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光ピックアップは、上述のように構成したので、可動部と回転中の光ディスクとが接触したとき両者間に働く摩擦力を小さくして、光ディスクの表面が損傷しないように保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
近年、DVDなどの光ディスクでは情報の記録密度が向上してきており、光ピックアップの対物レンズのNA(開口数)を高くする必要があるので、光ディスクと対物レンズとの間の距離が短くなってきている。その結果、光ディスクと可動部とが接触する可能性が高くなり、両者が接触したときの光ディスクと対物レンズの損傷を防止する対策が求められている。
そこで、下記の実施例では、移動動作可能な緩衝装置を可動部に設け、この可動部と回転中の光ディスクとが接近したときに、緩衝装置は、光ディスクの表面に接触しながらこの光ディスクの移動動作に追従して移動動作を行うようにしている。
これにより、可動部と回転中の光ディスクとが接触しても、両者(光ディスクと緩衝装置)の接触による衝撃力のエネルギーの大部分は、緩衝装置を移動させるためのエネルギーに変わる。したがって、衝撃力は緩和されて両者(光ディスクと緩衝装置)間に働く摩擦力は小さくなるので、光ディスクの表面が損傷する恐れはなくなる。
【0010】
下記の実施例および各種変形例にかかる光ピックアップは、永久磁石が固定側に配置され、可動部にコイルが取付けられているので、「コイル移動(moving coil)タイプ(いわゆる、MCタイプ)」と呼ばれている。
なお、本発明は、コイルが固定側に配置され、永久磁石が可動部に取付けられた、永久磁石移動(moving magnet)タイプ(いわゆる、MMタイプ)の光ピックアップにも適用可能である。
【実施例】
【0011】
以下、本発明にかかる実施例を、図1ないし図11を参照して説明する。
図1ないし図4は本発明の一実施例を示す図で、図1,図2はそれぞれ光ピックアップの平面図,斜視図、図3は可動部の斜視図、図4は、可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
図5は、本実施例の第1の変形例にかかる可動部の斜視図、図6は、図5に示す可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
図7は、本実施例の第2の変形例にかかる可動部の斜視図、図8は、図7に示す可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
図9は、本実施例の第3の変形例にかかる可動部の斜視図、図10(A)は図9に示す緩衝装置の拡大断面図、図10(B)は移動部材の斜視図、図11は、図9に示す可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
【0012】
図1ないし図11に示す本発明の光ピックアップ1は、可動部4,4a,4b,4cを備えている。可動部4,4a〜4cには、フォーカスコイル8およびトラッキングコイル9と、光ディスク2の記録面(表面2a)上にレーザー光などの光を集光させるための対物レンズ3とが設けられている。可動部4,4a〜4cのフォーカスコイル8とトラッキングコイル9にそれぞれ電流を流すことにより、光ディスク2に対する対物レンズ3の位置を調整可能である。
光ピックアップ1は、可動部4,4a〜4cを移動可能に支持する複数の支持ワイヤ5と、支持ワイヤ5を支持する支持台6と、支持台6が取付けられたヨーク部(継鉄部)7とを備えている。
【0013】
可動部4,4a〜4cには、移動動作可能な緩衝装置10,10a,10b,10cがそれぞれ設けられている。可動部4,4a〜4cと回転中の光ディスク2とが接近したときに、緩衝装置10,10a〜10cは、光ディスク2の表面2aに接触しながら、この光ディスク2の移動動作(たとえば、回転動作,上下方向への移動動作)に追従して移動動作(たとえば、回転動作,球面動作,上下方向への移動動作)を行うことができる。
すなわち、光ディスク2の表面2aは回転面であるが、可動部4,4a〜4cに緩衝装置10,10a〜10cの移動面を設けて、光ディスク2の回転面を、これに追従する移動面で受けている。
したがって、可動部4,4a〜4cと回転中の光ディスク2とが接触したとき、両者(可動部と光ディスク)間に働く摩擦力を小さくして、光ディスク2の表面2aの損傷を防止することができる。
【0014】
図1ないし図4において、光ディスク装置(図示せず)に使用される光ピックアップ1は、移動機構(図示せず)により、記録媒体である光ディスク2の半径方向に制御されつつ移動可能になっている。
光ディスク装置において、光ディスク2を駆動モータで回転駆動するとともに、移動機構で所望の位置に光ピックアップ1を移動させる。そして、光ピックアップ1は、光ディスク2の記録面(表面2a)上に対物レンズ3で光(たとえば、レーザー光)を集光させて、光ディスク2に対して情報の記録,再生などを行う。
光ディスク2としては、CD,CD−ROM,CD−R,CD−RW,MD,MO,DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−R,DVD−RWなどがある。
【0015】
なお、説明の便宜上、対物レンズ3の光軸Bと平行な方向すなわちフォーカス方向をX方向とし、特に、光ディスク2側,反光ディスク側をそれぞれ上方向,下方向とする。
このX方向と直交する方向(光ディスクの半径方向)すなわちトラッキング方向をZ方向とし、X方向およびZ方向と直交する方向をY方向とする。特に、図1の左右方向を光ピックアップ1の左右方向(Z方向)とする。
本実施例では、対物レンズ3が可動部4,4a〜4cのほぼ中央部に配置された「レンズセンタータイプ」の光ピックアップ1の場合を示している。なお、本発明は、対物レンズが可動部の中央部より一方側に偏心して配置された「レンズオフセットタイプ」の光ピックアップにも適用可能である。
【0016】
磁性体からなるヨーク部7には、支持台6が取付けられている。支持台6は、複数(ここでは、四本)の支持ワイヤ5を支持しており、この四本の支持ワイヤ5は、可動部4を移動可能に支持している。
フォーカスコイル8およびトラッキングコイル9との間でそれぞれ磁気回路を構成する永久磁石(ここでは、第1の永久磁石15aと第2の永久磁石15b)が、ヨーク部7の所定位置に取付けられている。なお、本発明の実施例においては、第1の永久磁石15aと第2の永久磁石15bとして、部位によって磁極の極性を異ならせた多磁極型の永久磁石を用いている。
可動部4に設けられたフォーカスコイル8とトラッキングコイル9には、支持ワイヤ5を介してそれぞれ電流が供給される。フォーカスコイル8に電流を流せば、可動部4をフォーカス方向(対物レンズ3の光軸Bと平行な方向(X方向))に移動させることができる。トラッキングコイル9に電流を流せば、可動部4をトラッキング方向(光ディスク2の半径方向(Z方向))に移動させることができる。
【0017】
可動部4は、平面視で矩形をなす所定形状の本体部16を有しており、本体部16は、絶縁性を有する樹脂材料などにより一体的に形成されている。対物レンズ3,フォーカスコイル8およびトラッキングコイル9などは、本体部16の所定位置に設けられている。
本体部16は、対物レンズ3が取付けられるレンズ支持部17と、平面視で矩形に形成されたコイル支持部18とを有している。レンズ支持部17の中心軸線が対物レンズ3の光軸Bと一致するように、対物レンズ3はレンズ支持部17に取付けられている。
【0018】
コイル支持部18のトラッキング方向(Z方向)を向く一方の側面19には、一つのフォーカスコイル8と、その両側に配置された一対のトラッキングコイル9とが設けられている。側面19と平行な反対側の側面19にも、一つのフォーカスコイル8と、その両側に配置された一対のトラッキングコイル9とが設けられている。
各側面19において、一つのフォーカスコイル8と二つのトラッキングコイル9は、Z方向に並んで配置されており、それぞれの巻軸の方向がY方向と平行になっている。
【0019】
緩衝装置10は回転輪30を有している。回転輪30は、本体部16に回転自在に支持されるとともに、対物レンズ3より先に光ディスク2と接触するように設けられ、光ディスク2の表面2a上を転動可能である。
本体部16には、一対の矩形状の中空部20が形成されている。二つの中空部20は、トラッキング方向(Z方向)に並んで配置され、本体部16の上面から下面まで貫通形成されている。
回転輪30は、本体部16に支持された回転軸31を中心として、矢印Dに示すように回転自在になっており、緩衝装置10をコンパクトにするために回転輪30のほぼ下半分は中空部20内に配置されている。
回転輪30は、光ディスク2の表面2aに接触したときには、光ディスク2の回転動作に追従して回転動作を行うことができる。回転輪30の外周面のうち最も上方の位置H1は、対物レンズ3の最も上方の位置H2より上方に位置している。したがって、光ディスク2は、可動部4に接近したとき、対物レンズ3より先に回転輪30に接触することになる。
【0020】
回転輪30は、光ディスク2の表面2aに接触しながら、この光ディスク2の移動動作(この場合には、回転動作)に追従して移動動作(この場合には、回転動作)を行うことができる。
光ディスク2と回転輪30との間の摩擦は転がり摩擦なので、光ディスク2と回転輪30との間に働く摩擦力が小さくなって、光ディスク2の表面2aが損傷することがなくなる。
また、可動部4と回転中の光ディスク2とが接近したときに、対物レンズ3より先に回転輪30が光ディスク2と接触するので、対物レンズ3の損傷を防止することができる。
本実施例の緩衝装置10は、対物レンズ3をはさんでその両側に一対設けられている。これにより、光ディスク2が二つの回転輪30のうち一方の回転輪30側に傾いていても、光ディスク2が可動部4に接近して対物レンズ3より先にいずれか一方の回転輪30と接触する。よって、光ディスク2と対物レンズ3の直接的な接触を防止して、光ディスク2と対物レンズ3の損傷を防止することができる。
【0021】
ヨーク部7は、光ディスク装置のケースまたはベース部材などの固定側に固定され、所定形状(ここでは、矩形)に形成されている。ヨーク部7は、平面視でほぼ矩形に形成された板状の本体部21と、本体部21にほぼ直角に一体形成され(または、別体で固定され)、且つ可動部4より外方側に配置された第1のヨーク22と、本体部21にほぼ直角に固定され(または、一体形成され)、且つ可動部4より外方側に配置された第2のヨーク23とを有している。
第1のヨーク22と第2のヨーク23は、ほぼ矩形状を有し突出して本体部21に設けられ、互いに平行に配置されている。
第1の永久磁石15aと第2の永久磁石15bは、可動部4の合計二個のフォーカスコイル8および合計四個のトラッキングコイル9に対応して、ヨーク部7の所定位置に取付けられている。
【0022】
第1の永久磁石15aと第2の永久磁石15bは、それぞれ部位によって磁極の極性を異ならせた多磁極型の永久磁石である。
第1の永久磁石15aは、第1のヨーク22(および/または、直接本体部21)に接着剤などで固着され、一つのフォーカスコイル8と二つのトラッキングコイル9に対向して配置されている。
第2の永久磁石15bは、第2のヨーク23(および/または、直接本体部21)に接着剤などで固着され、一つのフォーカスコイル8と二つのトラッキングコイル9に対向して配置されている。
【0023】
二つのフォーカスコイル8と、これに対向して配置された第1のヨーク22および第1の永久磁石15aと、第2のヨーク23および第2の永久磁石15bとの間で、磁気回路が構成されている。各フォーカスコイル8は、永久磁石の磁束が鎖交するように配置されている。
四つのトラッキングコイル9は、第1の永久磁石15aと第2の永久磁石15bとが形成する磁界中に配置されて磁気回路を形成している。各トラッキングコイル9は、永久磁石の磁束が鎖交するように配置されている。
【0024】
支持ワイヤ5は、可動部4の両端にY方向とほぼ平行にそれぞれ二本ずつ合計四本設けられている。支持ワイヤ5は、その一端部(支持台6から遠い方の端部)が可動部4側に固定され、他端部が支持台6側に固定されている。
可動部4は、四本の支持ワイヤ5を介して、支持台6とヨーク部7との間の空間に浮いている格好で取付けられている。したがって、可動部4は、移動や揺動などの動作を行なって、可動部4の状態(可動部4の位置,姿勢など)を自在に変化させることができる。
可動部4は、フォーカスコイル8とトラッキングコイル9に電流が供給されていないときの基本位置から、フォーカスコイル8とトラッキングコイル9の一方または両方に電流を供給することにより、上下方向(X方向)や左右方向(Z方向)にシフト(移動)することができる。
ここで「可動部4の基本位置」とは、たとえば、フォーカスコイル8とトラッキングコイル9に電流を供給しないで可動部4が静止している状態のとき、可動部4の上下,左右の中心線がともに基準線(図示せず)と一致しているときの、可動部4の位置をいう。好ましくは、対物レンズ3の光軸Bが、水平面に対して直角になるとともに、Z方向(左右)の基準線(中心線)と一致する位置にあるときに、可動部4が基本位置にあることになる。
【0025】
支持ワイヤ5が接続されるプリント配線板が、支持台6に接着剤などで固着されている。プリント配線板には、支持ワイヤ5を係合させるための複数(ここでは、四つ)の孔が所定位置に穿設されている。
支持台6には、支持ワイヤ5を貫通させるための複数(ここでは、四つ)の貫通孔が所定位置に穿設されている。支持ワイヤ5の他端部またはその近傍は、プリント配線板の孔を通してプリント配線板に電気的に接続されるとともに、支持台6側に固定されている。支持ワイヤ5の一端部またはその近傍は、フォーカスコイル8またはトラッキングコイル9に電気的に接続されるとともに、可動部4側に固定されている。
フォーカスコイル8とトラッキングコイル9は、支持ワイヤ5と、この支持ワイヤ5が電気的に接続されたプリント配線板とによって、制御部(図示せず)に電気的に接続されている。
【0026】
光ピックアップ1は、図示しない光学系を有している。この光学系は、レーザー光を発生する半導体レーザーなど光源,光検出器,反射ミラー,レンズおよび回折格子などを有している。対物レンズ3もこの光学系に含まれる。
光検出器は、光ディスク2の記録面で反射したレーザー光を受光し、再生信号を検出するとともに、フォーカスエラー信号,トラッキングエラー信号なども検出する。
【0027】
次に、光ピックアップ1の動作について説明する。
まず、光ディスク装置において、光ディスク2が駆動モータにより回転駆動されている状態で、移動機構により光ピックアップ1を所望の位置に移動させる。そして、光学系で発生したレーザー光を対物レンズ3で記録面上に集光させて、光ディスク2に対して情報の記録,再生などを行う。
光ピックアップ1の状態(可動部4の位置,姿勢など)を制御する場合には、光検出器で検出された光ディスク2の傾きなどの姿勢制御に関する情報を変換部で電気信号に変換し、制御部に電気信号(フォーカスエラー信号,トラッキングエラー信号など)として出力する。
制御部では、変換部から出力された電気信号(フォーカスエラー信号,トラッキングエラー信号など)に基づいて、フォーカスコイル8に流す電流とトラッキングコイル9に流す電流をそれぞれ制御する。
【0028】
対物レンズ3をフォーカス方向(X方向)に移動させる場合には、制御部は、移動すべき方向および移動量に応じた制御電流を、支持ワイヤ5を介して二つのフォーカスコイル8に供給する。すると、フォーカスコイル8により生じる電磁力により、可動部4が光ディスク2に対してフォーカス方向(X方向)に移動(シフト)して、対物レンズ3の位置を調整する。
同様に、支持ワイヤ5を介して四つのトラッキングコイル9に供給する電流を制御すれば、トラッキングコイル9により生じる電磁力により、可動部4が光ディスク2のトラッキング方向(Z方向)に移動(シフト)して、対物レンズ3の位置を調整する。
このようにして、可動部4は、フォーカス方向,トラッキング方向にそれぞれ移動するようにその位置が制御される。
【0029】
図4(A)に示すように、正常時には、光ディスク2が可動部4から離れた状態で、光ピックアップ1により光ディスク2に対して情報の記録,再生などが行われる。ところが、図4(B)に示すように、ターンテーブルに対して光ディスク2のセットが不十分であったり、光ディスク2自体が歪んだりしていると、回転中の光ディスク2と可動部4とが接近することがある。
このような場合、緩衝装置10の回転輪30は、回転中の光ディスク2の表面2aに接触しながら光ディスク2の回転動作に追従して、矢印Dに示すように回転動作を行う。回転輪30は光ディスク2と転がり摩擦により接触し、両者30,2間に働く摩擦力は小さいので、光ディスク2の表面2aに傷が付く恐れはない。
また、可動部4と回転中の光ディスク2が接近したときは、回転輪30は、対物レンズ3より先に光ディスク2と接触してその表面2a上を転動するので、対物レンズ3が光ディスク2と直接接触することはなく、対物レンズ3の損傷を防止することができる。
【0030】
次に、第1の変形例ないし第3の変形例について説明する。なお、上述の本実施例と同一または相当部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
図5,図6に示す第1の変形例にかかる光ピックアップの可動部4aは、移動動作可能な緩衝装置10aを有している。そして、可動部4aと回転中の光ディスク2とが接近したときに、緩衝装置10aは、光ディスク2の表面2aに接触しながら光ディスク2の移動動作(ここでは、回転動作)に追従して、矢印Dに示すように移動動作(ここでは、回転動作)を行うことができる。
そのために、緩衝装置10aはローラ30aを有している。ローラ30aは、可動部4aの本体部16に回転自在に支持されるとともに、対物レンズ3より先に光ディスク2と接触するように設けられ、光ディスク2の表面2a上を転動可能になっている。これにより、ローラ30aは前記回転輪30と同じ作用効果を奏する。
【0031】
本体部16の上面には、軸受部35が一体的にまたは別体で固定されている。軸受部35は、レンズ支持部17の一方側と他方側にそれぞれ一対ずつ対向配置されている。ローラ30aの回転軸31の両端部は、一対の軸受部35により軸支されており、ローラ30aは、軸受部35に支持されて自在に回転することができる。
ローラ30aは、トラッキング方向(Z方向)に延びた円筒状をなしているので、光ディスク2とはトラッキング方向に長く延びた線接触を行う。ローラ30aと光ディスク2は線接触で接触面積が大きくなるので、接触面での圧力が軽減されて、光ディスク表面2aの損傷の可能性をさらに良好に防止することができる。
【0032】
緩衝装置10aは、対物レンズ3をはさんでその両側に一対設けられているので、前記実施例の緩衝装置10と同じ作用効果を奏する。
二つのローラ0aは、対物レンズ3の両側に且つY方向に並んで配置されている。ローラ30aの外周面のうち最も上方の位置H1は、対物レンズ3の最も上方の位置H2より上方に位置している。
したがって、光ディスク2は、可動部4aに接近しても対物レンズ3より先にローラ30aに接触するので、対物レンズ3が損傷する恐れはない。また、ローラ30aは、前記回転輪30と同じ作用効果を奏する。
【0033】
図7,図8に示す第2の変形例にかかる光ピックアップは、移動動作可能な緩衝装置10bが設けられた可動部4bを備えている。
可動部4bと回転中の光ディスク2とが接近したときに、緩衝装置10bは、光ディスク2の表面2aに接触しながら光ディスク2の移動動作(この場合には、回転動作)に追従して移動動作(この場合には、回転動作)を行うことができる。
緩衝装置10bは、光ディスク2の表面2a上を転動可能な球形のボール玉30bを有している。ボール玉30bは、可動部4bの本体部16に球面運動自在に支持されるとともに、対物レンズ3より先に光ディスク2と接触するように設けられている。
これにより、可動部4bと回転中の光ディスク2とが接近したときに、ボール玉30bが、光ディスク2の表面2aに接触しながら光ディスク2の回転動作に追従して回転動作を行う。
【0034】
光ディスク2とボール玉30bは、転がり接触で且つ点接触を行なっているので、両者2,30b間に働く摩擦力は小さくなっており、光ディスク2の表面が損傷する恐れをなくすることができる。
また、光ディスク2と可動部4bとが接近したときに、光ディスク2は、対物レンズ3より先にボール玉30bに接触するので、対物レンズ3が損傷する恐れはない。
緩衝装置10bは、対物レンズ3をはさんでその両側に一対設けられているので、前記実施例の緩衝装置10と同じ作用効果を奏する。
【0035】
可動部4bの本体部16の上面には、筒状のボール玉保持部40が一体的にまたは別体で固定されている。ボール玉保持部40は、対物レンズ3をはさんでその両側に一対設けられている。
ボール玉保持部40は、その上部内方にボール玉30bを保持している。ボール玉30bの一部がボール玉保持部40の上端面より上方に突出しており、ボール玉30bは、外方に飛び出ないように拘束された状態で球面運動のみを行なう。
ボール玉30bの最も上方の位置H1は、対物レンズ3の最も上方の位置H2より上方に位置している。これにより、光ディスク2が可動部4bに接近したとき、対物レンズ3より先にボール玉30bが光ディスク2と接触するので、対物レンズ3が保護される。
【0036】
図9ないし図11に示す第3の変形例にかかる光ピックアップは、移動動作可能な緩衝装置10cが設けられた可動部4cを備えている。
可動部4cと回転中の光ディスク2とが接近したときに、緩衝装置10cは、光ディスク2の表面2aに接触しながら光ディスク2の移動動作(この場合には、上下方向(X方向)への移動動作)に追従して、移動動作(この場合には、上下方向(X方向)への移動動作)を行うようになっている。
緩衝装置10cは移動部材45を有しており、移動部材45は、付勢部材としての圧縮ばね46で突出側(上方側)に付勢されている。移動部材45は、可動部4cの本体部16に上下方向に進退移動可能に支持されるとともに、対物レンズ3より先に光ディスク2と接触するように設けられている。
なお、移動部材45を付勢する付勢部材として、コイル状の圧縮ばね46の場合を示したが、板ばねやその他のばねであってもよい。これらのばねや圧縮ばね46は軽量で応答速度が速いので、移動部材45は光ディスク2と接触したらすぐに後退(下方に移動)することができ、光ディスク2が移動部材45に接触しても損傷する恐れがない。
【0037】
移動部材45は、光ディスク2に接触すると圧縮ばね46の付勢力(ばね力)に抗して後退可能で、且つ光ディスク2の表面2aに相対的に摺接可能になっている。
したがって、可動部4cと回転中の光ディスク2とが接近したときに、移動部材45は、光ディスク2の表面2aに接触しながら光ディスク2の移動動作(ここでは、上下方向への移動動作)に追従して移動動作(ここでは、上下方向への移動動作)を行う。
このように、移動部材45は、矢印Eaに示すように移動して光ディスク2の表面2aに相対的に摺接することができる。このとき、移動部材45と回転中の光ディスク2との間には滑り摩擦が働くが、移動部材45は光ディスク2に追従して移動可能なので、両者45,2間に働く摩擦力は小さくなり、光ディスク2の表面2aの損傷を防止することができる。
【0038】
緩衝装置10cは、対物レンズ3をはさんでその両側に一対設けられている。これにより、光ディスク2が二つの移動部材45のうち一方の移動部材45側に傾いていても、光ディスク2が可動部4cに接近して対物レンズ3より先にいずれか一方の移動部材45と接触する。よって、光ディスク2と対物レンズ3の直接的な接触を防止して、光ディスク2と対物レンズ3の損傷を防止することができる。
本体部16の上面には、円筒状の移動部材保持部47が、上方に突出して一体的にまたは別体で固定されている。移動部材保持部47は、対物レンズ3の両側に一対設けられ、トラッキング方向(Z方向)に並んで配置されている。
移動部材保持部47の内部には中空部48が形成されている。本体部16の上面には、中空部48と連通する凹部49が形成されている。中空部48の上部には円形孔50が連通している。円形孔50は、移動部材保持部47の上板51に貫通形成されている。
【0039】
移動部材45は、円筒状をなして途中にフランジ部52が一体的にまたは別体で形成されている。移動部材45は、移動部材保持部47の内部に保持されて、矢印Eaに示すように上下方向に移動可能である。
フランジ部52は、上板51の下面に当接して位置決め保持される。フランジ部52より上方の円筒部が円形孔50に係合している。圧縮ばね46は、凹部49内に装着されるとともにフランジ部52に係合して、移動部材45を常に上方に付勢している。したがって、移動部材45は、フランジ部52が上板51の下面に当接しているときに最も上方に突出した状態になっている。
なお、図示するように、円形孔50の径を、移動部材45のフランジ部52が移動部材保持部47の上方から飛び出さない程度に大きくすれば、移動部材45は、光ディスク2が接触したとき、上下方向(矢印Ea)だけでなく、光ディスク2の回転方向にも移動可能(この場合には、矢印Ebに示すように傾斜動作可能)である。
【0040】
光ディスク2が可動部4cに接近して移動部材45に当接すると、移動部材45は圧縮ばね46の付勢力に抗して下方に移動(後退)するので、移動部材45と光ディスク2との間に働く滑り摩擦の摩擦力が小さくなる。これにより、光ディスク2の表面2aが損傷しないようにしている。
対物レンズ3の最も上方の位置H2の方が、移動部材45が最下端位置まで下降したときの移動部材45の上端部の位置H1より低くなっている。その結果、光ディスク2と可動部4cが接近したとき、対物レンズ3より先に移動部材45が光ディスク2に当接するので、対物レンズ3は直接光ディスク2に接触することはなく、対物レンズ3の損傷を防止することができる。
【0041】
上述の実施例,第1ないし第3の変形例にかかる緩衝装置10,10a〜10cにおいて、少なくとも光ディスク表面2aに接触する接触部位には、弾性を有する素材が使用されている。
この接触部位としては、回転輪30の外周面,ローラ30aの外周面,ボール玉30bの外表面全体,移動部材45の上端面などである。弾性を有する素材としては、ゴム,合成樹脂,UV塗料など、接触部における摩擦力を低下させる作用を有するものが好ましい。
こうして、弾性を有する素材を少なくとも接触部位に使用すれば、緩衝装置10,10a〜10cの接触部位と光ディスク2とが接触しても、接触部位の弾性により両者(接触部位と光ディスク2)間に働く摩擦力が小さくなるので、光ディスク2の表面2aの損傷をより効果的に防止することができる。
なお、緩衝装置10,10a〜10cを、対物レンズ3をはさんでその両側に一対設けた場合を示したが、対物レンズ3の片側にのみ設けた場合であってもよい。
【0042】
以上、本発明の実施例(各種変形例を含む。以下同じ)を説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形,付加などが可能である。
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、DVD,CDなどの記録面上に対物レンズでレーザー光などを集光させて情報の記録,再生などを行う光ディスク装置に取付けられる光ピックアップに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1ないし図11は本発明の実施例を示す図である。図1ないし図4は一実施例を示す図で、図1は光ピックアップの平面図である。
【図2】光ピックアップの斜視図である。
【図3】可動部の斜視図である。
【図4】可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
【図5】本実施例の第1の変形例にかかる可動部の斜視図である。
【図6】図5に示す可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
【図7】本実施例の第2の変形例にかかる可動部の斜視図である。
【図8】図7に示す可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
【図9】本実施例の第3の変形例にかかる可動部の斜視図である。
【図10】図10(A)は図9に示す緩衝装置の拡大断面図、図10(B)は移動部材の斜視図である。
【図11】図9に示す可動部と光ディスクの関係を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 光ピックアップ
2 光ディスク
2a 光ディスクの表面
3 対物レンズ
4,4a〜4c 可動部
5 支持ワイヤ
6 支持台
7 ヨーク部
10,10a〜10c 緩衝装置
16 本体部
30 回転輪
30a ローラ
30b ボール玉
45 移動部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの記録面上に光を集光させるための対物レンズが設けられ前記光ディスクに対する前記対物レンズの位置を調整可能な可動部と、この可動部を移動可能に支持する複数の支持ワイヤと、この支持ワイヤを支持する支持台と、この支持台が取付けられたヨーク部とを備えた光ピックアップであって、
移動動作可能な緩衝装置を前記可動部に設け、
この可動部と回転中の前記光ディスクとが接近したときに、前記緩衝装置はこの光ディスクの表面に接触しながらこの光ディスクの移動動作に追従して移動動作を行うことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
前記緩衝装置は、前記可動部の本体部に回転自在に支持されるとともに前記対物レンズより先に前記光ディスクと接触するように設けられ前記光ディスクの表面上を転動可能な回転輪またはローラを有していることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項3】
前記緩衝装置は、前記可動部の本体部に球面運動自在に支持されるとともに前記対物レンズより先に前記光ディスクと接触するように設けられ前記光ディスクの表面上を転動可能な球形のボール玉を有していることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項4】
前記緩衝装置は、突出側に付勢されて前記可動部の本体部に進退移動可能に支持されるとともに前記対物レンズより先に前記光ディスクと接触するように設けられた移動部材を有し、
この移動部材は、前記光ディスクに当接すると付勢力に抗して後退可能で且つこの光ディスクの表面に相対的に摺接可能であることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項5】
前記緩衝装置は、前記対物レンズをはさんでその両側に一対設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの項に記載の光ピックアップ。
【請求項6】
前記緩衝装置における少なくとも前記光ディスク表面に接触する接触部位には、弾性を有する素材が使用されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの項に記載の光ピックアップ。
【請求項1】
光ディスクの記録面上に光を集光させるための対物レンズが設けられ前記光ディスクに対する前記対物レンズの位置を調整可能な可動部と、この可動部を移動可能に支持する複数の支持ワイヤと、この支持ワイヤを支持する支持台と、この支持台が取付けられたヨーク部とを備えた光ピックアップであって、
移動動作可能な緩衝装置を前記可動部に設け、
この可動部と回転中の前記光ディスクとが接近したときに、前記緩衝装置はこの光ディスクの表面に接触しながらこの光ディスクの移動動作に追従して移動動作を行うことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
前記緩衝装置は、前記可動部の本体部に回転自在に支持されるとともに前記対物レンズより先に前記光ディスクと接触するように設けられ前記光ディスクの表面上を転動可能な回転輪またはローラを有していることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項3】
前記緩衝装置は、前記可動部の本体部に球面運動自在に支持されるとともに前記対物レンズより先に前記光ディスクと接触するように設けられ前記光ディスクの表面上を転動可能な球形のボール玉を有していることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項4】
前記緩衝装置は、突出側に付勢されて前記可動部の本体部に進退移動可能に支持されるとともに前記対物レンズより先に前記光ディスクと接触するように設けられた移動部材を有し、
この移動部材は、前記光ディスクに当接すると付勢力に抗して後退可能で且つこの光ディスクの表面に相対的に摺接可能であることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項5】
前記緩衝装置は、前記対物レンズをはさんでその両側に一対設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの項に記載の光ピックアップ。
【請求項6】
前記緩衝装置における少なくとも前記光ディスク表面に接触する接触部位には、弾性を有する素材が使用されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの項に記載の光ピックアップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−40463(P2006−40463A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221421(P2004−221421)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000107804)スミダコーポレーション株式会社 (285)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000107804)スミダコーポレーション株式会社 (285)
【Fターム(参考)】
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