説明

光ピックアップ

【課題】
本発明は、組立ての簡素化とゲルの塗布状態のばらつき低減を両立して、性能ばらつきの小さい光ピックアップを安価に提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、光ディスクの記録面にレーザスポットを形成する対物レンズと、対物レンズとコイルとを取付けたレンズホルダを備える可動部と、可動部のトラッキング方向の両側面のそれぞれに一端が取付けられたフォーカシング方向に複数本並ぶ支持部材と、支持部材の他端を固定する固定部と、コイルに対向して配置される磁石と、磁石を取付けたヨークと、トラッキング方向の両側に配置された支持部材をそれぞれトラッキング方向に挟んだ両側に壁を有するゲル保持部と、を有する光ピックアップにおいて、ゲル保持部はフォーカシング方向の光ディスク側の一端に開口と、トラッキング方向の対物レンズから遠い側の壁に、開口の縁から伸びる切欠きを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの記録面上に記録された情報を再生、または光ディスクの記録面上に情報を記録するために、対物レンズをフォーカシング方向とトラッキング方向へ駆動して、対物レンズの焦点位置を光ディスクの記録面上の目標トラックに合わせる光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2003−346367号公報(特許文献1)がある。この公報には、ヨークのトラッキング方向の両端をフォーカシング方向に立ち曲げて、その立ち曲げ部と支持部材を取り付ける固定部との間にダンパ用のゲルを注入するゲル保持部を形成した対物レンズアクチュエータが開示されている。
【0003】
これによると、ゲルを注入するゲル保持部の形成が容易な対物レンズアクチュエータ装置を提供できると記載されている(要約参照)。
【0004】
また、特開平11−265516号公報(特許文献2)がある。この公報には、支持部材を取り付ける固定部に、テーパー部と溝部とからなる開口部を、各支持部材に対して形成し、各溝部に隣接した位置に、ダンパ用のゲルを注入するゲル保持部を形成した光ピックアップが開示されている。
【0005】
これによると、ゲルの注入を容易にし、注入のばらつきを防止しうる光ピックアップを提供できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−346367号公報
【特許文献2】特開平11−265516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の技術では、ゲル保持部の内部を目視できるのがフォーカシング方向の光ディスク側からのみであるため、フォーカシング方向に複数本並ぶ支持部材の最下段までゲルが到達していない不具合が生じても、それを目視で確認することが困難である。この場合、支持部材の剛性と可動部の質量で決まる可動部の並進モードの振幅が十分に減衰されず、対物レンズの位置を光ディスクの面ぶれや偏芯に追従させるためのサーボゲインの設定が困難になる可能性があった。
【0008】
一方、上記特許文献2の技術では、ゲルを注入するゲル保持部が支持部材1本ごとに設けられているため、各ゲルはゲル保持部を形成する壁で仕切られている。この場合、少なくとも支持部材の本数分だけのゲルの塗布工程と、ゲル表面の硬化のためのトラッキング方向の両側からの紫外光照射、または固定部の姿勢を変えて片側ずつ少なくとも2回の紫外光照射が必要になるため、組立に時間がかかる可能性があった。
【0009】
本発明の目的は、組立ての簡素化とゲルの塗布状態のばらつき低減を両立させることでコスト低減を図り、性能のばらつきを小さくした光ピックアップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、光ディスクの記録面にレーザスポットを形成する対物レンズと、この対物レンズとコイルとを取付けたレンズホルダを備える可動部と、この可動部のトラッキング方向の両側面のそれぞれに一端が取付けられたフォーカシング方向に複数本並ぶ支持部材と、この支持部材の他端を固定する固定部と、前記コイルに対向して配置される磁石と、この磁石を取付けたヨークと、前記トラッキング方向の両側に配置された前記支持部材をそれぞれ前記トラッキング方向に挟んだ両側に壁を有するゲル保持部とを備えた光ピックアップにおいて、前記ゲル保持部はフォーカシング方向の前記光ディスク側の一端に開口と、トラッキング方向の前記対物レンズから遠い側の壁に前記開口の縁から伸びる切欠きを有することにより達成される。
【0011】
また上記目的を達成するために好ましくは、前記ゲル保持部は前記ヨークのトラッキング方向両端に前記ヨークと一体に設けると良い。
【0012】
また上記目的を達成するために好ましくは、前記ゲル保持部は前記固定部のトラッキング方向両端に前記固定部と一体に設けると良い。
【0013】
また上記目的を達成するために好ましくは、前記切欠きの底面と前記光ディスクとの距離は、前記光ディスクからフォーカシング方向に最も離れた前記支持部材と前記光ディスクとの距離よりも長くすると良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、組立ての簡素化とゲルの塗布状態のばらつき低減を両立させることでコスト低減を図り、性能のばらつきを小さくした光ピックアップを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る光ピックアップの対物レンズ駆動手段の構成図である。
【図2】本発明に係る光ピックアップの対物レンズ駆動手段の側面図である。
【図3】本発明に係る光ピックアップの対物レンズ駆動手段の断面図である。
【図4】本発明に係る光ピックアップの対物レンズ駆動手段の構成図である。
【図5】本発明に係る光ピックアップの対物レンズ駆動手段の側面図である。
【図6】本発明に係る光ピックアップの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【実施例1】
【0017】
本実施例では、光ディスクの記録面上に記録された情報を再生、または光ディスクの記録面上に情報を記録するために、対物レンズをフォーカシング方向とトラッキング方向へ駆動して、対物レンズの焦点位置を光ディスクの記録面上の目標トラックに合わせる光ピックアップを説明する。
【0018】
まず、光ピックアップについて図6を用いて説明する。
図6は、本発明に係る光ピックアップの構成図である。
図6において、図示されていない光ディスクへ対物レンズ1が近づく方向を上、遠ざかる方向を下と定義する。この上下方向がフォーカシング方向となる。また、図中に左、右と記した方向がトラッキング方向となる。
【0019】
光ピックアップは、主に光学系と、対物レンズ駆動手段100と、フレキシブルプリント基板10を備えている。光学系は、光源となる半導体レーザ3と、出射光を光ディスクの記録面上に絞り込むための対物レンズ1と、制御用の誤差信号を検出・生成するための光学素子と、光ディスクからの反射光の変化を電気信号に変換する光検出器5などから構成される。
【0020】
対物レンズ駆動手段100は、対物レンズ1の焦点位置を光ディスクの記録面上の目標トラックに合わせる機構(詳細は後述する)である。フレキシブルプリンの基板10は、光学系や対物レンズ駆動手段100を外部の制御回路と電気的に接続する基板で、半導体レーザ3や光検出器5などが取り付けられている。
【0021】
この対物レンズ駆動手段100について図1を用いて説明する。
図1は、本発明に係る光ピックアップの対物レンズ駆動手段100の構成図である。
図1において、対物レンズ駆動手段100は、ヨーク15と磁石6とからなる磁気回路と、対物レンズ1とコイル7とを取付けたレンズホルダ2からなる可動部と、可動部のトラッキング方向の両側面のそれぞれに一端が取付けられたフォーカシング方向に複数本並ぶ支持部材4と、この支持部材4の他端を固定する固定部13とで構成されている。
【0022】
ヨーク15は固定部13の方向へ支持部材4の長手方向Lに沿って延長され、その延長された部分のトラッキング方向の両側にゲル保持部150を有する。ゲル保持部150はフォーカシング方向の光ディスク側の面に開口152を有するU字型で、ヨーク15と一体に形成されており、ゲル8が溜まりやすい形状となっている。
【0023】
このゲル保持部150の詳細について図2と図3を用いて説明する。
図2は、本発明に係る光ピックアップの対物レンズ駆動手段100の側面図である。
図3は、本発明に係る光ピックアップの対物レンズ駆動手段100の、図2中に一点鎖線で示すA-A断面図である。
図2または図3に示すように、ゲル保持部150は、フォーカシング方向の光ディスク9側の面に開口152と、トラッキング方向の両側に配置された支持部材4をそれぞれトラッキング方向に挟んだ両側に壁153、154と、そして、トラッキング方向の対物レンズ1から遠い側の壁154に、開口152の縁から伸びる切欠き151を有している。このゲル保持部150に塗布されたゲル8は、両壁153、154に密着し、支持部材4を包み込むことで、可動部の質量と支持部材4の剛性で決まる可動部の並進モードの振幅を減衰している。
【0024】
次に、このゲル保持部150の壁154に設けた切欠き151の深さについて図2を用いて説明する。なお、図2では、支持部材4のフォーカシング方向の位置を明示するために、ゲル8は図示されていない。
図2において、本実施例の対物レンズ駆動手段100では、切欠き151の底面155と光ディスク9との距離D1が、光ディスク9からフォーカシング方向に最も離れた最下端の支持部材と光ディスク9との距離dよりも長い。このため、この切欠き151からトラッキング方向にゲル保持部150の中を覗いた際、フォーカシング方向に複数本並ぶ支持部材4の全てを可視することができる。
【0025】
このように本実施例は、ゲル保持部150に関して次の3つの特徴を持つ。
【0026】
第1の特徴は、フォーカシング方向の光ディスク9側の面が開放されて開口152を有することである。
【0027】
第2の特徴は、トラッキング方向の対物レンズ1から遠い側の壁154に、開口152から伸びる切欠き151を有することである。
【0028】
第3の特徴は、その切欠き151の底面155と光ディスク9との距離D1が、光ディスク9からフォーカシング方向に最も離れた最下端の支持部材と光ディスク9との距離dよりも長いことである。
【0029】
第1と第2の特徴によって、フォーカシング方向に複数本並ぶ支持部材4のすべてを横断する形でのゲル8の一括塗布が、切欠き151に沿ってフォーカシング方向の一方向から行える。さらに、対物レンズ1を挟んでトラッキング方向の両側2か所に塗布されたゲル8の表面を硬化させるための紫外光の一括照射も、フォーカシング方向の一方向からに行える。
【0030】
すなわち、ゲル8の塗布から硬化までの作業が対物レンズ駆動手段100の姿勢を変えることなく行えるため、組立ての簡素化と作業ばらつきの低減が可能となる。したがって、ゲル8の支持部材4への塗布状態のばらつきが低減され、支持部材4の剛性と可動部の質量で決まる可動部の並進モードの振幅を確実に減衰できる。加えて、第3の特徴によって、フォーカシング方向に複数本並ぶすべての支持部材4のへのゲル8の塗布の確実性がより一層増し、ゲル8の支持部材4への塗布状態のばらつきがより一層低減される。したがって、支持部材4の剛性と可動部の質量で決まる可動部の並進モードの振幅をより確実に減衰できる。
【0031】
このように本実施例の特徴によって、性能ばらつきの小さい光ピックアップを安価に提供することができる。
【実施例2】
【0032】
本実施例では、ゲル保持部をヨークではなく固定部に一体に設けた光ピックアップを説明する。
図4は、本発明の実施例2における光ピックアップの対物レンズ駆動手段200を示す構成図である。図4の対物レンズ駆動手段200のうち、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0033】
図4において、対物レンズ駆動手段200は、固定部23の左右方向の両側が、可動部の方向へ支持部材4の長手方向Lに沿って延長され、その延長された部分にゲル保持部230が固定部23と一体に成型されている。
【0034】
ゲル保持部230は、フォーカシング方向の光ディスク側の面に開口232と、トラッキング方向の両側に配置された支持部材4をそれぞれトラッキング方向に挟んだ両側に壁233、234と、そしてトラッキング方向の対物レンズ1から遠い側の壁234に、開口232の縁から伸びる切欠き231を有している。このゲル保持部230に塗布されたゲル8は、両壁233、234に密着し、支持部材4を包み込むことで、可動部の質量と支持部材4の剛性で決まる可動部の並進モードの振幅を減衰している。
【0035】
このゲル保持部230の壁234に設けた切欠き231の深さについて図5を用いて説明する。
図5は、本発明に係る光ピックアップの対物レンズ駆動手段200の側面図である。図5では、支持部材4のフォーカシング方向の位置を明示するために、ゲル8は図示されていない。
【0036】
図5において、本実施例の対物レンズ駆動手段200では、切欠き231の底面235と光ディスク9との距離D2が、光ディスク9からフォーカシング方向に最も離れた最下端の支持部材と光ディスク9との距離dよりも長い。このため、この切欠き231からトラッキング方向にゲル保持部230の中を覗いた際、フォーカシング方向に複数本並ぶ支持部材4の全てを可視することができる。
【0037】
このように本実施例は、ゲル保持部230に関して次の3つの特徴を持つ。
【0038】
第1の特徴は、上面に開口232を有することである。
【0039】
第2の特徴は、トラッキング方向の対物レンズ1から遠い側の壁234に、開口232の縁から伸びる切欠き231を有することである。
【0040】
第3の特徴は、その切欠き231の底面235と光ディスク9との距離D2が、フォーカシング方向の最下端の支持部材と光ディスク9との距離dよりも長いことである。
【0041】
第1と第2の特徴によって、フォーカシング方向に複数本並ぶ支持部材4のすべてを横断する形でのゲル8の一括塗布が、切欠きに沿ってフォーカシング方向の一方向からに行えることである。さらに、対物レンズ1を挟んでトラッキング方向の両側2か所に塗布されたゲル8の表面を硬化させるための紫外光の一括照射も、フォーカシング方向の一方向からに行えることである。すなわち、ゲル8の塗布から硬化までの作業が光ピックアップの姿勢を変えることなく行えるため、組立ての簡素化と作業ばらつきの低減が可能となる。
【0042】
したがって、ゲル8の支持部材4への塗布状態のばらつきが低減され、支持部材4の剛性と可動部の質量で決まる可動部の並進モードの振幅を確実に減衰できる。加えて、第3の特徴によって、上下方向に複数本並ぶすべての支持部材4のへのゲル8の塗布の確実性がより一層増し、ゲル8の支持部材4への塗布状態のばらつきがより一層低減される。したがって、支持部材4の剛性と可動部の質量で決まる可動部の並進モードの振幅をより確実に減衰できる。
【0043】
以上のごとく本発明によれば、第1に、フォーカシング方向に複数本並ぶ支持部材のすべてを横断する形でのゲルの一括塗布が、切欠きに沿ってフォーカシング方向の一方向からに行えることである。さらに、対物レンズを挟んでトラッキング方向の両側2か所に塗布されたゲルの表面を硬化させるための紫外光の一括照射も、フォーカシング方向の一方向からに行えることである。すなわち、ゲルの塗布から硬化までの作業が光ピックアップの姿勢を変えることなく行えるため、組立ての簡素化と作業ばらつきの低減が可能となることである。
【0044】
第2に、フォーカシング方向に複数本並ぶすべての支持部材へのゲルの塗布の確実性が増し、ゲルの支持部材への塗布状態のばらつきが低減されることである。すなわち、支持部材の剛性と可動部の質量で決まる可動部の並進モードの振幅を確実に減衰できることである。したがって、性能ばらつきの小さい光ピックアップを安価に提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
100、200…対物レンズ駆動手段、1…物レンズ、13、23…固定部、15、25…ヨーク、150、230…ゲル保持部、151、231…切欠き、152、232…開口、153、154、233、234…壁、155、235…底面、2…レンズホルダ、3…半導体レーザ、4…持部材、5…光検出器、6…磁石、7…コイル、8…ゲル、9…光ディスク、10…フレキシブルプリント基板、D1、D2…光ディスクから切欠きの底面までの距離、d…光ディスクから最下端の支持部材までの距離、L…支持部材の長手方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの記録面にレーザスポットを形成する対物レンズと、この対物レンズとコイルとを取付けたレンズホルダを備える可動部と、この可動部のトラッキング方向の両側面のそれぞれに一端が取付けられたフォーカシング方向に複数本並ぶ支持部材と、この支持部材の他端を固定する固定部と、前記コイルに対向して配置される磁石と、この磁石を取付けたヨークと、前記トラッキング方向の両側に配置された前記支持部材をそれぞれ前記トラッキング方向に挟んだ両側に壁を有するゲル保持部とを備えた光ピックアップにおいて、
前記ゲル保持部はフォーカシング方向の前記光ディスク側の一端に開口と、トラッキング方向の前記対物レンズから遠い側の壁に前記開口の縁から伸びる切欠きを有することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
請求項1記載の光ピックアップにおいて、
前記ゲル保持部は前記ヨークのトラッキング方向両端に前記ヨークと一体に設けられていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項3】
請求項1記載の光ピックアップにおいて、
前記ゲル保持部は前記固定部のトラッキング方向両端に前記固定部と一体に設けられていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項4】
請求項1記載の光ピックアップにおいて、
前記切欠きの底面と前記光ディスクとの距離は、前記光ディスクからフォーカシング方向に最も離れた前記支持部材と前記光ディスクとの距離よりも長いことを特徴とする光ピックアップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−77356(P2013−77356A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217587(P2011−217587)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】