説明

光ファイバケーブル分岐構造体、光ファイバケーブル分岐方法及び光ファイバケーブル用分岐具

【課題】光ファイバケーブル分岐構造体において、光ファイバケーブルの分岐作業をより容易にすることである。
【解決手段】光ファイバケーブルのシースを所定範囲にわたって除去し、スロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線に含まれる複数の光ファイバ心線を分岐した光ファイバケーブル分岐構造体70は、シースを除去した部分のケーブルコアに取り付けられた分岐具本体32と、分岐具本体の表面側を覆う保護蓋34とを備え、分岐具本体は、ケーブルコアを挿入して分岐具本体を取り付けるケーブルコア挿入溝と、ケーブルコア挿入溝の溝内から表面側へ複数の光ファイバ心線を誘導する誘導スリットと、表面側へ誘導された複数の光ファイバ心線を個別に区分けする光ファイバ隔壁を並列して配置した区画部と、誘導スリットから区画部へ複数の光ファイバ心線を誘導し、区画部側が次第に広くなる誘導部と、を有する分岐具30を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルの中間後分岐に用いられる光ファイバケーブル分岐構造体、光ファイバケーブル分岐方法及び光ファイバケーブル用分岐具に関し、特に、屋内に敷設される光ファイバケーブルの分岐に用いられる光ファイバケーブル分岐構造体、光ファイバケーブル分岐方法及び光ファイバケーブル用分岐具に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた光伝送線路において、例えば、光ファイバネットワークの構築には、光ファイバケーブルを敷設した後、この光ファイバケーブルを途中から分岐させる中間後分岐の技術が用いられている(例えば、特許文献1から5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−220390号公報
【特許文献2】特表2008−501151号公報
【特許文献3】特表2008−501152号公報
【特許文献4】特表2008−501153号公報
【特許文献5】特表2008−501154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような光ファイバケーブルの分岐方法では、光ファイバケーブル用分岐具のサイズが大きいことなどから、特に、多種多様な多数の光ファイバケーブルが密集して配設されている場合において光ファイバケーブルの分岐作業が容易ではなかった。
【0005】
そこで本発明の目的は、光ファイバケーブルの分岐作業をより容易にして、中間分岐配線時の作業性を向上させる光ファイバケーブル分岐構造体、光ファイバケーブル分岐方法及び光ファイバケーブル用分岐具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光ファイバケーブル分岐構造体は、光ファイバケーブルのシースを所定範囲にわたって除去し、前記シースを除去した部分のケーブルコアにケーブル方向に形成されたスロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線に含まれる複数の光ファイバ心線を分岐した光ファイバケーブル分岐構造体であって、前記シースを除去した部分のケーブルコアに取り付けられ、表面側を凹状に形成した分岐具本体と、前記分岐具本体に着脱可能に設けられ、前記分岐具本体の表面側を覆う保護蓋と、を備え、前記分岐具本体は、背面側に設けられ、前記シースを除去した部分のケーブルコアを挿入して前記分岐具本体を取り付けるケーブルコア挿入溝と、前記表面側の一端に設けられ、前記ケーブルコア挿入溝の溝内から前記表面側へ前記複数の光ファイバ心線を誘導する誘導スリットと、前記表面側に設けられ、前記表面側へ誘導された複数の光ファイバ心線を個別に区分けする光ファイバ隔壁を並列して配置した区画部と、前記誘導スリットから前記区画部へ複数の光ファイバ心線を誘導し、前記区画部側が次第に広くなる誘導部と、を有する光ファイバケーブル用分岐具を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る光ファイバケーブル分岐構造体は、前記スロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線から分岐され、前記ケーブルコア挿入溝の溝内から表面側へ前記誘導スリットで誘導され、前記誘導部で前記区画部へ誘導され、前記区画部で個別に区分けされた後、前記分岐具本体の外側へ引き出された複数の光ファイバ心線と、前記分岐具本体の外側へ引き出された複数の光ファイバ心線を被覆して保護する保護チューブと、前記保護チューブを被覆した複数の光ファイバ心線の先端に取り付けられる外皮把持コネクタと、を有する複数の分岐光ファイバ線と、を備えることが好ましい。
【0008】
本発明に係る光ファイバケーブル分岐方法は、光ファイバケーブルを光ファイバケーブル用分岐具で分岐する光ファイバケーブル分岐方法であって、光ファイバケーブルのシースを剥がした後、剥がしたシースの所定範囲を除去し、前記シースを剥がした部分のケーブルコアにケーブル方向に形成されたスロット溝の溝内から光ファイバ集合心線を取り出し、前記剥がしたシースの所定範囲を除去した残部を前記シースを剥がした部分のケーブルコアに被せ、前記光ファイバ集合心線に含まれる複数の光ファイバ心線を分岐する工程と、前記光ファイバケーブル用分岐具は、表面側を凹状に形成した分岐具本体と、前記分岐具本体に着脱可能に設けられ、前記分岐具本体の表面側を覆う保護蓋と、を備え、前記分岐具本体は、背面側に設けられ、前記シースを剥がした部分のケーブルコアを挿入して前記分岐具本体を取り付けるケーブルコア挿入溝と、前記表面側の一端に設けられ、前記ケーブルコア挿入溝の溝内から前記表面側へ前記複数の光ファイバ心線を誘導する誘導スリットと、前記表面側に設けられ、前記表面側へ誘導された複数の光ファイバ心線を個別に区分けする複数の光ファイバ隔壁を並列して配置した区画部と、前記誘導スリットから前記区画部へ複数の光ファイバ心線を誘導し、前記区画部側が次第に広くなる誘導部と、を有し、前記シースを除去した部分のケーブルコアを前記ケーブルコア挿入溝に挿入して前記分岐具本体を取り付け、前記複数の光ファイバ心線を前記ケーブルコア挿入溝の溝内から表面側へ前記誘導スリットで誘導し、表面側へ誘導された複数の光ファイバ心線を前記誘導部で前記区画部へ誘導し、前記区画部へ誘導された光ファイバ心線を前記光ファイバ隔壁で個別に区分けした後、前記分岐具本体の外側へ引き出す工程と、前記分岐具本体の外側へ引き出された複数の光ファイバ心線に保護チューブを被覆する工程と、前記分岐具本体の表面側に、前記保護蓋を取り付ける工程と、前記保護チューブを被覆した複数の光ファイバ心線の先端に外皮把持コネクタを取り付ける工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る光ファイバケーブル用分岐具は、光ファイバケーブルのシースを所定範囲にわたって除去し、前記シースを除去した部分のケーブルコアにケーブル方向に形成されたスロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線に含まれる複数の光ファイバ心線を分岐する光ファイバケーブル用分岐具であって、表面側を凹状に形成した分岐具本体と、前記分岐具本体に着脱可能に設けられ、前記分岐具本体の表面側を覆う保護蓋と、を備え、前記分岐具本体は、背面側に設けられ、前記シースを除去した部分のケーブルコアを挿入して前記分岐具本体を取り付けるケーブルコア挿入溝と、前記表面側の一端に設けられ、前記ケーブルコア挿入溝の溝内から前記表面側へ前記複数の光ファイバ心線を誘導する誘導スリットと、前記表面側に設けられ、前記表面側へ誘導された複数の光ファイバ心線を個別に区分けする光ファイバ隔壁を並列して配置した区画部と、前記誘導スリットから前記区画部へ複数の光ファイバ心線を誘導し、前記区画部側が次第に広くなる誘導部と、を有していることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る光ファイバケーブル用分岐具において、前記ケーブルコア挿入溝は、前記ケーブルコア挿入溝内に凸状に形成され、前記スロット溝に挿入されて前記分岐具本体を位置決めする位置決め凸部を有することが好ましい。
【0011】
本発明に係る光ファイバケーブル用分岐具において、前記分岐具本体は、前記分岐具本体の両端に設けられ、前記シースを除去した部分のケーブルコアに前記分岐具本体を固定する締結具を取り付ける締結具取り付け部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記構成における光ファイバケーブル分岐構造体、光ファイバケーブル分岐方法及び光ファイバケーブル用分岐具によれば、光ファイバケーブル用分岐具の構造がより簡略であるので、例えば、多種多様な多数の光ファイバケーブルが密集して配設されて空きスペースが小さくなっている場合でも中間後分岐作業がより容易になり作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態において、光ファイバケーブルの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態において、光ファイバケーブルから光ファイバ集合心線を取り出す手順を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態において、光ファイバケーブル用分岐具の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態において、分岐具本体の構成を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態において、分岐具本体の構成を示す底面図である。
【図6】本発明の実施の形態において、分岐具本体の構成を示す側面図である。
【図7】本発明の実施の形態において、保護蓋の構成を示す平面図である。
【図8】本発明の実施の形態において、保護蓋の構成を示す底面図である。
【図9】本発明の実施の形態において、保護蓋の構成を示す側面図である。
【図10】本発明の実施の形態において、光ファイバケーブルのシースを切断した状態を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態において、ケーブルコアを露出させた状態を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態において、1つの光ファイバ集合心線を取り出した状態を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態において、シースを露出部分のケーブルコアに被せた状態を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態において、光ファイバ集合心線から複数の光ファイバ心線を分岐した状態を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態において、ケーブルコアに分岐具本体を取り付けた状態を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態において、4本の光ファイバ心線に保護チューブを被せる工程を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態において、分岐具本体に保護蓋を被せた状態を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態において、保護チューブに挿入された光ファイバ心線に外皮把持コネクタを取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。まず、光ファイバケーブル10の構成について説明する。図1は、光ファイバケーブル10の概略構成を示す断面図である。光ファイバケーブル10は、ケーブルコア12の外周にシース14が形成された構成を有している。ケーブルコア12は、スロット溝16が形成されたスロット部材18と、スロット溝16に収容された複数の光ファイバ集合心線20と、を備えている。スロット溝16は、ケーブル長さ方向に沿って形成されている。光ファイバ集合心線20には、複数の単心線である光ファイバ心線20aを集合させた光ファイバテープ心線や多心の光ファイバ心線等が用いられる。また、ケーブルコア12には、抗張力体22が設けられている。
【0015】
シース14の外面には、ケーブル長さ方向に沿って一対の溝状のノッチ14c(弱化部分)または薄肉部が、周方向に互いに離間して形成され、これらノッチ14cによって、シース14は周方向に第1部分14aと第2部分14bとの2つの部分に区分されている。第1部分14aは、ノッチ14c間の距離が比較的小さい部分であり、第2部分14bは、それ以外の部分であり、断面略C形になっている。
【0016】
図2は、光ファイバケーブル10から光ファイバ集合心線20を取り出す手順を示す図である。図2(a)、図2(b)に示すように、シース14をカッタ26で周方向に切断した後、この切断部からノッチ14cでシース14を引裂くようにして第1部分14aを第2部分14bから分離することによって、ケーブルコア12を露出させる。
【0017】
次いで、図2(c)、図2(d)に示すように、ケーブルコア12のスロット溝16の溝内に収容された複数の光ファイバ集合心線20のうち一部を切断し、スロット溝16から取り出すことができる。他の光ファイバ集合心線20は、スロット溝16内に残す。そして、剥がした部分の第2部分14bを、再びケーブルコア12に被せてスロット溝16を覆うことによって、スロット溝16内の光ファイバ集合心線20が外に出るのを防ぐことができる。
【0018】
次に、光ファイバケーブル用分岐具30について説明する。
【0019】
図3は、光ファイバケーブル用分岐具30の構成を示す図である。光ファイバケーブル用分岐具30は、表面側を凹状に形成した分岐具本体32と、分岐具本体32に着脱可能に設けられ、分岐具本体32の表面側を覆う保護蓋34と、を備えている。図4は、分岐具本体32の構成を示す平面図であり、図5は、分岐具本体32の構成を示す底面図であり、図6は、分岐具本体32の構成を示す側面図である。また、図7は、保護蓋34の構成を示す平面図であり、図8は、保護蓋34の構成を示す底面図であり、図9は、保護蓋34の構成を示す側面図である。
【0020】
図5に示すように、分岐具本体32は、背面側に設けられ、分岐具本体32を取り付けるケーブルコア挿入溝36と、表面側に設けられ、複数の光ファイバ心線20aを誘導する誘導スリット38と、複数の光ファイバ心線20aを個別に区分けする区画部40と、誘導スリット38から区画部40へ複数の光ファイバ心線20aを誘導する誘導部42と、分岐具本体32をケーブルコア12に締結する締結具を取り付ける締結具取り付け部44と、を有している。
【0021】
ケーブルコア挿入溝36は、分岐具本体32の背面側に設けられ、シース14を除去した部分のケーブルコア12を溝内に挿入して分岐具本体32を光ファイバケーブル10に取り付ける機能を有している。ケーブルコア挿入溝36は、分岐具本体32の姿勢を安定させてケーブルコア12に取り付けるため、長尺状に形成される。ケーブルコア挿入溝36は、ケーブルコア12を挿入して挟持可能な溝幅で形成される。
【0022】
ケーブルコア挿入溝36は、溝内に凸状に形成され、スロット溝16に挿入されて分岐具本体32を位置決めする位置決め凸部46を有している。位置決め凸部46は、ケーブルコア挿入溝36の溝幅より小さく、スロット溝16の溝内に挿入可能な幅で凸状に形成される。
【0023】
位置決め凸部46の両側には、位置決め凸部46に対して略平行方向に、スロット溝16の縁部を互いに離れた状態に係合保持するスロット溝縁部保持溝48が設けられる。スロット溝縁部保持溝48は、ケーブルコア12に形成したスロット溝16の対向したスロット溝縁部を互いに離れた状態に係合保持し、互いに離して対向させて設けられる。スロット溝縁部保持溝48は、スロット溝16の縁部を挿入して挟持可能な溝幅で形成される。
【0024】
誘導スリット38は、分岐具本体32の表面側の一端に設けられ、光ファイバ集合心線20から分岐された複数の光ファイバ心線20aを、分岐具本体32の背面側に設けられたケーブルコア挿入溝36の溝内から分岐具本体32の表面側へ誘導する機能を有する。誘導スリット38は、ケーブルコア挿入溝36の溝内に複数の光ファイバ心線20aを分岐具本体32へ導入する誘導口50を有している。誘導口50は、例えば、位置決め凸部46に形成される。誘導スリット38は、例えば、所定の傾斜角度でスロープ状に形成される。誘導スリット38は、複数の光ファイバ心線20aを挿入可能なスリット幅で形成される。
【0025】
誘導部42は、誘導スリット38から区画部40へ複数の光ファイバ心線20aを誘導し、区画部40側が次第に広くなるように形成される。誘導部42は、誘導スリット38側から区画部40側へ向けて、誘導方向に対して直交方向の幅が次第に広くなるようにテーパ状に形成される。
【0026】
区画部40は、分岐具本体32の表面側に設けられ、複数の光ファイバ心線20aを個別に区分けする複数の光ファイバ隔壁52を並列して備えている。複数の光ファイバ隔壁52は、誘導方向に所定長さで形成され、誘導方向に対して略直交方向に並列に配置される。並列に配置された複数の光ファイバ隔壁52により、複数の光ファイバ心線20aは個別に区分けされる。複数の光ファイバ隔壁52は、後述するように、光ファイバ心線20aを挿入した保護チューブ62を着脱可能に挿入できる間隔で形成されることが好ましい。
【0027】
締結具取り付け部44は、分岐具本体32の一端と他端とに突出して設けられ、分岐具本体32をケーブルコア12に固定する締結具を取り付ける機能を有している。締結具取り付け部44は、例えば、表面側が略円弧状に形成される。締結具取り付け部44には、締結具が、例えばスライドして外れないように凸状の締結具外れ止め54が設けられている。
【0028】
嵌合突起56は、分岐具本体32の両側面に設けられ、保護蓋34に設けられる嵌合開口58に嵌め込まれて保護蓋34を固定する機能を有している。嵌合突起56は、例えば、分岐具本体32における両側面の一端と他端とに設けられる。
【0029】
保護蓋34は、凹状に形成され、分岐具本体32に着脱可能に設けられる。保護蓋34は、分岐具本体32の表面側を覆い、複数の光ファイバ心線20aを保護する機能を有している。保護蓋34は、誘導スリット38側から区画部40側に向かって、誘導方向に対して略直交方向の幅が次第に広くなるようにテーパ状に形成される。保護蓋34の両側面には、分岐具本体32の両側面に設けられる嵌合突起56に嵌め込まれる嵌合開口58を有している。嵌合開口58は、例えば、保護蓋34における両側面の一端と他端とに設けられる。
【0030】
分岐具本体32と保護蓋34とは、例えば、合成樹脂を用いて金型成形される。合成樹脂には、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン(ABS)共重合樹脂、PC樹脂とABS樹脂とをブレンドした合成樹脂等が用いられる。
【0031】
次に、光ファイバケーブル10の分岐方法について説明する。光ファイバケーブル10の分岐方法は、例えば、屋内に敷設された光ファイバケーブル10の分岐作業に用いられる。
【0032】
まず、光ファイバケーブル10におけるシース14の所定部分が切断される。図10は、光ファイバケーブル10のシース14を切断した状態を示す図である。光ファイバケーブル10のシース14は、カッタ26等で切断される。シース14切断後の光ファイバケーブル10には、切断部14dが形成される。
【0033】
次に、所定部位のシース14を剥離して剥がし、剥がしたシース14の所定範囲をカットして除去し、ケーブルコア12を露出させる。図11は、ケーブルコア12を露出させた状態を示す図である。シース14の切断部14dから所定長さの部分のシース14にケーブル長さ方向の切れ目を入れ、この部分のシース14を剥がしてケーブルコア12を露出させる。例えば、図1及び図2に示すように、第1部分14aをノッチ14cに沿って第2部分14bから分離することによって、シース14をケーブルコア12から剥離させ、ケーブルコア12を露出させることができる。剥がした部分のシース14は、作業の邪魔にならないように、作業に関与しない部分のシース14などに仮止めしておくことが好ましい。
【0034】
次に、ケーブルコア12から1つの光ファイバ集合心線20を取り出す。図12は、1つの光ファイバ集合心線20を取り出した状態を示す図である。図12に示すように、シース14を剥がした部分のケーブルコア12にケーブル方向に形成されたスロット溝16の溝内に収容された複数の光ファイバ集合心線20のうち一部を切断し、スロット溝16から1本の光ファイバ集合心線20を取り出す。
【0035】
1本の光ファイバ集合心線20を取り出した後、上述の剥がしたシース14の所定範囲を除去した残部を露出部分のケーブルコア12に被せる。図13は、シース14を露出部分のケーブルコア12に被せた状態を示す図である。このように、シース14の先端から所定長さの部分である所定範囲を切除することによって、シース14が光ファイバケーブル用分岐具30に接触しないようにすることができる。ケーブルコア12に被せたシース14は、テープ状固定具などによりケーブルコア12に固定することができる。後述するように、光ファイバケーブル用分岐具30は、シース14の一部削除により露出された部分のケーブルコア12に取り付けられる。
【0036】
次に、取り出した1本の光ファイバ集合心線20から複数の光ファイバ心線20aを分岐する。図14は、光ファイバ集合心線20から複数の光ファイバ心線20aを分岐した状態を示す図である。図14に示すように、1つの光ファイバ集合心線20から、例えば、4本の単心線である光ファイバ心線20aを分岐する。
【0037】
次に、シース14を除去したケーブルコア12に分岐具本体32を取り付ける。図15は、ケーブルコア12に分岐具本体32を取り付けた状態を示す図である。分岐具本体32は、その背面側をケーブルコア12に向けて取り付けられる。位置決め凸部46をスロット溝16に挿入し、ケーブルコア挿入溝36にケーブルコア12を挿入する。それにより、分岐具本体32は、ケーブルコア12の軸方向と略一致するように位置決めされて光ファイバケーブル10に配置される。また、位置決め凸部46をスロット溝16に挿入することにより、分岐具本体32の姿勢をより安定させることができる。
【0038】
分岐具本体32は、締結具60でケーブルコア12に締結されて固定される。締結具60には、例えば、係止穴を有する係止部がバンドの一端に設けられ、バンドを係止穴に通して任意の位置で係止可能な構造(例えば、いわゆるインシュロックタイ)などの結束具が採用できる。バンドが、分岐具本体32の締結具取り付け部44と、ケーブルコア12と、に一括して巻き付けられ、分岐具本体32がケーブルコア12に締め付け固定された状態でバンドが係止部により係止されている。この際、バンドを、締結具取り付け部44に設けられた締結具外れ止め54の内側に巻き付けることにより、バンドの鉛直方向における上下方向の移動を規制し、分岐具本体32の脱落をより確実に防止できる。
【0039】
なお、締結具60としては、分岐具本体32をケーブルコア12に締結することができるものであれば特に限定されることはなく、分岐具本体32に、ケーブルコア12を保持する機能を与えることもできる。例えば、保持片、係止爪、クリップ部などによりケーブルコア12に係止可能とすることができる。
【0040】
4本の光ファイバ心線20aは、分岐具本体32の背面側に設けられたケーブルコア挿入溝36の溝内に形成された誘導口50から分岐具本体32に導入され、分岐具本体32の表面側へ誘導スリット38で誘導される。そして、4本の光ファイバ心線20aは、誘導部42を経由して区画部40へ誘導される。区画部40に誘導された4本の光ファイバ心線20aは、誘導方向に対して略直交方向に並列に設けられた複数の光ファイバ隔壁52により個別に区分けされる。区分けされた4本の光ファイバ心線20aは、分岐具本体32の外側へ引き出される。
【0041】
次に、4本の光ファイバ心線20aに保護チューブ62を被せる。図16は、4本の光ファイバ心線20aに保護チューブ62を被せる工程を示す図である。分岐具本体32から外側に引き出され光ファイバ心線20aの露出した部位を保護するため、光ファイバ心線20aに、インドアチューブ等の保護チューブ62を被覆する。保護チューブ62は、光ファイバ心線20aを保護するものであって、合成樹脂等で形成され、可とう性を有するものが好ましい。保護チューブ62を、分岐具本体32の外側に引き出されて露出された光ファイバ心線20aの長さにわたって設けることにより、光ファイバ心線20aの光特性を良好に維持できる。保護チューブ62は、光ファイバ心線20aを挿入可能な内径を有している。光ファイバ心線20aが挿入された保護チューブ62の一方の端部は、区画部40に設けられた光ファイバ隔壁52に挟持されて保持される。なお、保護チューブ62は、その弾性により区画部40に着脱可能であることが好ましい。
【0042】
次に、分岐具本体32に保護蓋34を被せる。図17は、分岐具本体32に保護蓋34を被せた状態を示す図である。分岐具本体32の両側面に設けられた嵌合突起56と、保護蓋34の両側面に設けられた嵌合開口58と、を嵌め合せることにより、保護蓋34が分岐具本体32に取り付けられて固定される。これにより分岐具本体32の内側に位置している複数の光ファイバ心線20aの部位が保護される。
【0043】
次に、保護チューブ62で被覆した光ファイバ心線20aの他端に外皮把持コネクタが取り付けられて分岐光ファイバ線が形成される。図18は、保護チューブ62で被覆した光ファイバ心線20aに外皮把持コネクタ64を取り付けた状態を示す図である。保護チューブ62で被覆した光ファイバ心線20aの他端に外皮把持コネクタ64を取り付けることにより、4本の分岐光ファイバ線66が形成される。また、保護チューブ62で被覆した光ファイバ心線20aの他端に外皮把持コネクタ64を取り付けることにより、光ファイバ心線20aの露出が抑えられ、安全性が確保される。外皮把持コネクタ64には、例えば、コネクタ嵌合部と、メカニカルスプライス部と、ケーブル外皮把持部と、を備えた現場付けコネクタが用いられる。コネクタ嵌合部には、光ファイバが内蔵されており、メカニカルスプライス部には屈折率整合剤が入っており、内蔵光ファイバに、ケーブル外皮把持部の外皮把持部材で外皮把持された光ファイバを接続することにより外皮把持コネクタ64が組み立てられる。このような外皮把持コネクタ64を用いることにより、現場での作業性をより向上させることができる。勿論、保護チューブ62で被覆した光ファイバ心線20aの他端に取り付けられるコネクタは、外皮把持コネクタ64に限定されることはない。以上により光ファイバケーブル10の分岐作業が完了し、光ファイバケーブル分岐構造体70が形成される。
【0044】
なお、光ファイバケーブル用分岐具30の増設により分岐数を増やすこともできる。光ファイバケーブル10のケーブルの長さ方向に複数の光ファイバケーブル用分岐具30を設けることにより同様の手順で光ファイバケーブル10を分岐することができる。このように、ケーブルコア12に、長さ方向に位置を違えて複数の光ファイバケーブル用分岐具30を取り付けることにより、利用者数に応じた分岐数の増加に対してもより容易に対応することができる。
【0045】
上記構成によれば、光ファイバケーブル用分岐具の構造が簡略であり、分岐具のサイズをより小さくできるので、ケーブルシャフトの幅をより狭くでき省スペース化が可能である。そのため、多種多様な多数の光ファイバケーブルが密集して配設されて空きスペースが小さくなっている場合でも中間後分岐作業の作業性や保守性が向上する。また、分岐作業後の状態がコンパクトであり、他のケーブルの後増設にも支障が無い。
【0046】
上記構成によれば、中間後分岐作業のために剥いだシースの大部分を再利用しているので、中間後分岐作業の作業コストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 光ファイバケーブル
12 ケーブルコア
14 シース
16 スロット溝
18 スロット部材
20 光ファイバ集合心線
22 抗張力体
26 カッタ
30 光ファイバケーブル用分岐具
32 分岐具本体
34 保護蓋
36 ケーブルコア挿入溝
38 誘導スリット
40 区画部
42 誘導部
44 締結具取り付け部
46 位置決め凸部
48 スロット溝縁部保持溝
50 誘導口
52 光ファイバ隔壁
54 締結具外れ止め
56 嵌合突起
58 嵌合開口
60 締結具
62 保護チューブ
64 外皮把持コネクタ
66 分岐光ファイバ線
70 光ファイバケーブル分岐構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルのシースを所定範囲にわたって除去し、前記シースを除去した部分のケーブルコアにケーブル方向に形成されたスロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線に含まれる複数の光ファイバ心線を分岐した光ファイバケーブル分岐構造体であって、
前記シースを除去した部分のケーブルコアに取り付けられ、表面側を凹状に形成した分岐具本体と、前記分岐具本体に着脱可能に設けられ、前記分岐具本体の表面側を覆う保護蓋と、を備え、前記分岐具本体は、背面側に設けられ、前記シースを除去した部分のケーブルコアを挿入して前記分岐具本体を取り付けるケーブルコア挿入溝と、前記表面側の一端に設けられ、前記ケーブルコア挿入溝の溝内から前記表面側へ前記複数の光ファイバ心線を誘導する誘導スリットと、前記表面側に設けられ、前記表面側へ誘導された複数の光ファイバ心線を個別に区分けする光ファイバ隔壁を並列して配置した区画部と、前記誘導スリットから前記区画部へ複数の光ファイバ心線を誘導し、前記区画部側が次第に広くなる誘導部と、を有する光ファイバケーブル用分岐具を備えることを特徴とする光ファイバケーブル分岐構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバケーブル分岐構造体であって、
前記スロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線から分岐され、前記ケーブルコア挿入溝の溝内から表面側へ前記誘導スリットで誘導され、前記誘導部で前記区画部へ誘導され、前記区画部で個別に区分けされた後、前記分岐具本体の外側へ引き出された複数の光ファイバ心線と、前記分岐具本体の外側へ引き出された複数の光ファイバ心線を被覆して保護する保護チューブと、前記保護チューブを被覆した複数の光ファイバ心線の先端に取り付けられる外皮把持コネクタと、を有する複数の分岐光ファイバ線を備えることを特徴とする光ファイバケーブル分岐構造体。
【請求項3】
光ファイバケーブルを光ファイバケーブル用分岐具で分岐する光ファイバケーブル分岐方法であって、
光ファイバケーブルのシースを剥がした後、剥がしたシースの所定範囲を除去し、前記シースを剥がした部分のケーブルコアにケーブル方向に形成されたスロット溝の溝内から光ファイバ集合心線を取り出し、前記剥がしたシースの所定範囲を除去した残部を前記シースを剥がした部分のケーブルコアに被せ、前記光ファイバ集合心線に含まれる複数の光ファイバ心線を分岐する工程と、
前記光ファイバケーブル用分岐具は、表面側を凹状に形成した分岐具本体と、前記分岐具本体に着脱可能に設けられ、前記分岐具本体の表面側を覆う保護蓋と、を備え、前記分岐具本体は、背面側に設けられ、前記シースを剥がした部分のケーブルコアを挿入して前記分岐具本体を取り付けるケーブルコア挿入溝と、前記表面側の一端に設けられ、前記ケーブルコア挿入溝の溝内から前記表面側へ前記複数の光ファイバ心線を誘導する誘導スリットと、前記表面側に設けられ、前記表面側へ誘導された複数の光ファイバ心線を個別に区分けする複数の光ファイバ隔壁を並列して配置した区画部と、前記誘導スリットから前記区画部へ複数の光ファイバ心線を誘導し、前記区画部側が次第に広くなる誘導部と、を有し、
前記シースを除去した部分のケーブルコアを前記ケーブルコア挿入溝に挿入して前記分岐具本体を取り付け、前記複数の光ファイバ心線を前記ケーブルコア挿入溝の溝内から表面側へ前記誘導スリットで誘導し、表面側へ誘導された複数の光ファイバ心線を前記誘導部で前記区画部へ誘導し、前記区画部へ誘導された光ファイバ心線を前記光ファイバ隔壁で個別に区分けした後、前記分岐具本体の外側へ引き出す工程と、
前記分岐具本体の外側へ引き出された複数の光ファイバ心線に保護チューブを被覆する工程と、
前記分岐具本体の表面側に、前記保護蓋を取り付ける工程と、
前記保護チューブを被覆した複数の光ファイバ心線の先端に外皮把持コネクタを取り付ける工程と、
を備えることを特徴とする光ファイバケーブル分岐方法。
【請求項4】
光ファイバケーブルのシースを所定範囲にわたって除去し、前記シースを除去した部分のケーブルコアにケーブル方向に形成されたスロット溝の溝内から取り出した光ファイバ集合心線に含まれる複数の光ファイバ心線を分岐する光ファイバケーブル用分岐具であって、
表面側を凹状に形成した分岐具本体と、
前記分岐具本体に着脱可能に設けられ、前記分岐具本体の表面側を覆う保護蓋と、
を備え、
前記分岐具本体は、
背面側に設けられ、前記シースを除去した部分のケーブルコアを挿入して前記分岐具本体を取り付けるケーブルコア挿入溝と、
前記表面側の一端に設けられ、前記ケーブルコア挿入溝の溝内から前記表面側へ前記複数の光ファイバ心線を誘導する誘導スリットと、
前記表面側に設けられ、前記表面側へ誘導された複数の光ファイバ心線を個別に区分けする光ファイバ隔壁を並列して配置した区画部と、
前記誘導スリットから前記区画部へ複数の光ファイバ心線を誘導し、前記区画部側が次第に広くなる誘導部と、
を有していることを特徴とする光ファイバケーブル用分岐具。
【請求項5】
請求項4に記載の光ファイバケーブル用分岐具であって、
前記ケーブルコア挿入溝は、前記ケーブルコア挿入溝内に凸状に形成され、前記スロット溝に挿入されて前記分岐具本体を位置決めする位置決め凸部を有することを特徴とする光ファイバケーブル用分岐具。
【請求項6】
請求項4または5に記載の光ファイバケーブル用分岐具であって、
前記分岐具本体は、前記分岐具本体の両端に設けられ、前記シースを除去した部分のケーブルコアに前記分岐具本体を固定する締結具を取り付ける締結具取り付け部を有することを特徴とする光ファイバケーブル用分岐具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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