説明

光ファイバケーブル

【課題】本発明の課題は、抗張力体を設けなくても、光ファイバケーブルに所定の張力を加えた場合に光ファイバ心線の破断を防止できると共に、抗張力体に要する作業を削減でき、作業の効率化が図れる光ファイバケーブルを提供することにある。
【解決手段】本発明は、光ファイバ心線1が外被3内に挿入された光ファイバケーブルであって、前記光ファイバ心線1が、前記光ファイバケーブルの長さと、前記光ファイバケーブルに所定の張力が加わった場合に前記外被3が伸びる長さとを加えた長さ以上の長さを有し、前記光ファイバ心線1が、前記外被3内に余長をもたせるように弛ませて収容されたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビル外または住宅外から屋内へ配線施工される情報通信のための光ファイバケーブルに係り、特に抗張力体を持たない光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信の高度化、高速化に伴い、ビル内や住宅内への光配線の必要性が増大している。この際、主な配線方法として、(1)壁面にステップルなどを設置し光ファイバケーブルを布設するもの、(2)壁面にワイヤプロテクタなどを設置しその内部に光ファイバケーブルを布設するもの、そして(3)壁裏に配管を設置しその内部に光ファイバケーブルを通線するものの3つがある。光配線を想定した配管が予め布設してないケースでは(1),(2)の配線形態が採用されているが、美観と光ファイバケーブル保護の観点では(3)の配線形態が優れている。
【0003】
このような光配線を行なう際に特許文献1及び特許文献2にあるような構内配線用の光ファイバケーブルが用いられるのが一般的であるが、光ファイバケーブルに掛かる張力により光ファイバに大きな変位が加わることが無いよう、張力方向に十分に高い剛性を持つ抗張力体としてテンションメンバが使用される。
【0004】
【特許文献1】特開2000−121839号公報
【特許文献2】特開平9−80276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記技術を用いて屋内配線する際には、テンションメンバの剛性が高いため光ファイバケーブルが扱いにくい上、キンクなどの変形をするとテンションメンバの剛性により内部の光ファイバに無理な応力が掛かり、切断や破損を起こす恐れがあるという課題や、成端などの配線施工を行なう際に光ファイバケーブルを切断した場合、抗張力体を適正に処理する必要があり、この作業が施工を煩雑化している。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、抗張力体を設けなくても、光ファイバケーブルに所定の張力を加えた場合に光ファイバ心線の破断を防止できると共に、抗張力体に要する作業を削減でき、作業の効率化が図れる光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、光ファイバ心線が外被内に挿入された光ファイバケーブルであって、前記光ファイバ心線が、前記光ファイバケーブルの長さと、前記光ファイバケーブルに所定の張力が加わった場合に前記外被が伸びる長さとを加えた長さ以上の長さを有し、前記光ファイバ心線が、前記外被内に余長をもたせるように弛ませて収容されたことを特徴とするものである。
【0008】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、光ファイバ心線が、前記光ファイバケーブルの長さと、光ファイバケーブルの長さの10%の長さとを加えた長さ以下の長さを有することを特徴とするものである。
【0009】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、光ファイバ心線が外被に光ファイバ貼付剤により所定箇所固定されたことを特徴とするものである。
【0010】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、外被の内面に潤滑剤が設けられたことを特徴とするものである。
【0011】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、光ファイバ心線として、ホーリーファイバを用いることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明は、前記光ファイバケーブルにおいて、外被として、PVCもしくはアラミド樹脂よりなる外被を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光ファイバケーブルは、抗張力体を設けなくても、光ファイバ心線が、光ファイバケーブルの伸び量以上の伸びしろを持つように外被内に余長をもたせるように弛ませて収容されることにより、光ファイバ心線に無理な応力が生じる形状に光ファイバケーブルが変形しても、光ファイバ心線の長さにはゆとりがあるため、光ファイバに過度の張力が加わることはなく、破断する可能性が低くなる。また、抗張力体がないため、光ファイバケーブルの取扱い性を向上させることが出来、屋内における光ファイバケーブル布設の施工時間、コストを縮小する効果が期待できる。さらに、コネクタ付けなどの成端作業を行なう際に、抗張力体の処理作業が無くなり、施工の煩雑さが軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1(a),(b),(c)は本発明の第1の実施形態に係る光ファイバケーブルを示す一部切欠斜視図である。図1(a),(b),(c)において、1は光ファイバ心線、2は潤滑剤、3は例えばPVCもしくはアラミド樹脂等の樹脂よりなる2次被覆(外被)、4は例えばエポキシ系接着剤等の光ファイバ貼付剤である。
【0015】
図1(a)に示すように、円筒状の外被3の内面には潤滑剤2が塗布して設けられる。前記外被3内には光ファイバ心線1が挿入され、前記光ファイバ心線1は外被3に光ファイバ貼付剤4により適宜間隔をおいた所定箇所に貼り付けられて部分的に固定される。この場合、前記光ファイバ心線1は、光ファイバケーブルの長さと、前記光ファイバケーブルに所定の張力が加わった場合に前記外被3が伸びる長さ(伸びしろ)とを加えた長さ以上の長さを有すると共に、前記光ファイバケーブルの長さと、光ファイバケーブルの長さの10%の長さ(伸びしろ)とを加えた長さ以下の長さを有する。前記光ファイバ心線1は、前記外被3内に余長をもたせるように波型に弛ませて収容される。尚、光ファイバ心線1と外被3の間に十分な滑り性が確保されるならば潤滑剤2は無くとも良い。また、外被3内に緩衝材を設けるようにしても良い。
【0016】
図1(b)に示すように、光ファイバケーブルの曲げ時や、図1(c)に示すように、光ファイバケーブルの引張時のように光ファイバケーブルを変形しても光ファイバ心線1に張力が掛からないようにすることが出来る。一般的にこの実施形態のような外被の薄い光ファイバケーブルは露出配線や機器間接続コードといった布設張力の小さい使用方法で用いられることが多く、これを考慮して例えば布設張力を5kgf以下、安全率を1.5とすれば伸びしろは光ファイバケーブルの長さの3%の長さにすることもできる。
【0017】
図2は本発明の第2の実施形態に係る光ファイバケーブルを示す斜視図である。図2において、11は光ファイバ心線、12は潤滑剤、13は例えばPVCもしくはアラミド樹脂等の樹脂よりなる2次被覆(外被)である。
【0018】
図2に示すように、外被13は直方体の中心軸部に断面円形の貫通孔14が設けられ、前記貫通孔14の内面には潤滑剤12が塗布して設けられる。前記外被13の上面中央部及び下面中央部にはそれぞれ対応してV字溝15,16が前記貫通孔14に沿って設けられる。前記外被13内には光ファイバ心線11が挿入され、前記光ファイバ心線11は外被13に光ファイバ貼付剤(図示せず)により適宜間隔をおいた所定箇所に貼り付けられて部分的に固定される。この場合、前記光ファイバ心線11は、光ファイバケーブルの長さと、前記光ファイバケーブルに所定の張力が加わった場合に前記外被13が伸びる長さ(伸びしろ)とを加えた長さ以上の長さを有すると共に、前記光ファイバケーブルの長さと、光ファイバケーブルの長さの10%の長さ(伸びしろ)とを加えた長さ以下の長さを有する。前記光ファイバ心線11は、前記貫通孔14内に余長をもたせるように波型に弛ませて収容される。尚、光ファイバ心線11と外被13の間に十分な滑り性が確保されるならば潤滑剤2は無くとも良い。また、貫通孔14内に緩衝材を設けるようにしても良い。
【0019】
光ファイバケーブルの曲げ時や、光ファイバケーブルの引張時のように光ファイバケーブルを変形しても光ファイバ心線11に張力が掛からないようにすることが出来る。
【0020】
以上のように前記実施形態では、光ファイバケーブルから例えばテンションメンバ等の抗張力体を無くし、光ファイバケーブルの内部に光ファイバ心線の伸びしろを収容する構造とすることで、光ファイバ心線が切断されないようにする。
【0021】
一般の光ファイバケーブルの構成材は、例えばテンションメンバ等の抗張力体、光ファイバ心線、それ以外の構成材の順に縦弾性係数は小さくなる。一方で光ファイバケーブルの布設、配線施工時には容易に光ファイバ心線の破断応力を超える力が光ファイバケーブルに加わるので、一般の光ファイバケーブルの構成材から例えばテンションメンバ等の抗張力体を除くと光ファイバ心線が破断する可能性が高い。しかるに、その他の構成材は主に被覆用の樹脂材であり、これのみで光ファイバ心線が破断しない範囲まで縦弾性係数を上げるのは困難である。
【0022】
そこで前記実施形態では、光ファイバケーブルの伸び量以上の伸びしろを光ファイバ心線が持つように光ファイバケーブル内に内包することで、光ファイバ心線に破断応力以上の張力が加わるのを防ぐ。一般的な屋内配線の布設張力は10kgf以下である。一方で一般的に光ファイバケーブルの外被に使用される樹脂はPVCかアラミド樹脂であり、アラミド樹脂よりPVCの方が機械強度は低く引張り弾性率は25000kgf/cm程度である。例えばPVC外被の断面積を小さく見積もって1mmであるとして、10kgfの張力が加わった場合、応力は1000kgfとなり伸び率は4%程度となる。このため安全率を2と見積もっても光ファイバ心線に10%の伸びしろを与えれば布設張力による破断を防ぐことが出来る。もちろん、安全率や外被材料、外被断面積の設計次第で必要な伸びしろを減らすことも可能である。
【0023】
尚、光ファイバ心線にはホーリーファイバを利用することで折り曲げ形状や螺旋形状による曲げ損失の発生を防ぐことができる。
【0024】
また、光ファイバ心線に無理な応力が生じる形状に光ファイバケーブルが変形しても、内部の光ファイバ心線長にはゆとりがあるため、光ファイバ心線に過度の張力が加わることはなく、破断する可能性が低くなる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a),(b),(c)は本発明の第1の実施形態に係る光ファイバケーブルを示す一部切欠斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る光ファイバケーブルを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1…光ファイバ心線、2…潤滑剤、3…例えばPVCもしくはアラミド樹脂等の樹脂よりなる2次被覆(外被)、4…光ファイバ貼付剤、11…光ファイバ心線、12…潤滑剤、13…例えばPVCもしくはアラミド樹脂等の樹脂よりなる2次被覆(外被)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線が外被内に挿入された光ファイバケーブルであって、
前記光ファイバ心線が、前記光ファイバケーブルの長さと、前記光ファイバケーブルに所定の張力が加わった場合に前記外被が伸びる長さとを加えた長さ以上の長さを有し、前記光ファイバ心線が、前記外被内に余長をもたせるように弛ませて収容されたことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバケーブルにおいて、
光ファイバ心線が、前記光ファイバケーブルの長さと、光ファイバケーブルの長さの10%の長さとを加えた長さ以下の長さを有することを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光ファイバケーブルにおいて、
光ファイバ心線が外被に光ファイバ貼付剤により所定箇所固定されたことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバケーブルにおいて、
外被の内面に潤滑剤が設けられたことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光ファイバケーブルにおいて、
光ファイバ心線として、ホーリーファイバを用いることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の光ファイバケーブルにおいて、
外被として、PVCもしくはアラミド樹脂よりなる外被を用いることを特徴とする光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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