説明

光ファイバケーブル

【課題】P−クランプによってクランプした場合であっても光ファイバ心線にマイクロベンドを生じることのない光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】一対の抗張力体3の間に光ファイバ心線5を配置して備えたケーブル本体7の一側に、連結部9を介してケーブル支持部13を備えた光ファイバケーブル1の長手方向をZ軸方向、前記抗張力体3、光ファイバ心線5及びケーブル支持部13の配列方向をY軸方向、上記Z軸方向及びY軸方向に対して直交する方向をX軸方向としたとき、前記ケーブル本体7のX軸方向の両側面で前記光ファイバ心線5に対応した位置に、前記光ファイバ心線5の直径よりも幅の広い溝25A,25BをZ軸方向に長く備え、前記光ファイバ心線5の軸心から前記溝25A,25Bの底部29A,29Bまでの離隔寸法は、前記光ファイバ心線5の半径より大きく、前記ケーブル支持部13に備えた支持線11の半径より小さく設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加入者宅への光回線引き込み用の光ファイバケーブルに係り、さらに詳細には、日本国内は勿論のこと海外においても共通に使用することのできる光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FTTH(Fiber to the Home)すなわち家庭またはオフィスでも超高速データ等の高速広帯域情報を送受できるようにするために、電話局から延線された光ファイバケーブルが一般住宅などの加入者宅へ光ファイバケーブル心線が引き落とされて、これを配線するために好適な光ファイバドロップケーブルが用いられている(例えば、特許文献1、2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−39057号公報
【特許文献2】特開2000−171673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1、2に記載の光ファイバケーブル1は、図1(A)に示すように、一対の抗張力体3の間に光ファイバ心線5を配置して備えたケーブル本体7のY軸方向の一側に、連結部(首部)9を介して大径の支持線11を備えたケーブル支持部13が一体に備えられている。より詳細には、前記一対の抗張力体3、光ファイバ心線5、支持線11はY軸方向(図1(A)において上下方向)に一列に配列してあり、かつ適宜の熱可塑性樹脂によって一体に被覆してある。そして、前記ケーブル本体7のX軸方向(図1(A)において左右方向)の両側面には、ノッチ部15が形成してある。
【0005】
上記構成の光ファイバケーブル1を各家庭に引き落とす場合には、前記光ファイバケーブル1の両端部の連結部9の一部を切り裂いて、ケーブル本体7とケーブル支持部13とを分離する。そして、前記ケーブル支持部13の一端部を電柱(図示省略)の屋外線引き留め具(図示省略)に連結固定し、ケーブル支持部13の他端部を、家屋の一部に備えた引き留め具(図示省略)に連結固定するものである。なお、光ファイバ心線5の一端部は電柱に備えられたケーブル分岐箱(図示省略)に接続され、他端部は屋内のOE変換器(図示省略)に接続されるものである。
【0006】
ところで、海外で使用されている光ファイバケーブル1Aは、図1(B)に示すように、光ファイバ心線5Aの両側方に大径の抗張力体3Aを配置し、上記一対の抗張力体3A及び光ファイバ心線5Aを熱可塑性樹脂によって被覆した構成である。そして、上記光ファイバケーブル1Aを、例えば電柱などのポールに引き留めるための引き留め具は、WO 2009/070200においてP−クランプと称されるものが使用されている。上記P−クランプ17は、図2に概念的、概略的に示すごとき構成である。
【0007】
すなわち、屋外線引き留め金具としてのP−クランプ17は、クランプ本体19と、グリッパ21と、楔部材23とを備えている。前記クランプ本体19は金属板を折曲げ加工することによって、天井面部19Aの両側に側壁面部19Bを備えて、断面形状をほぼC形状に形成してある。前記クランプ本体19における前記天井面部19Aには、適宜範囲に亘って凹凸部19Cが形成してある。前記側壁面部19Bは、一端側の高さ寸法よりも他端側の高さ寸法を小さくして楔形状に形成してある。そして、前記側壁面部19Bの下端縁には内側へ屈曲した屈曲部19Dが備えられている。
【0008】
前記グリッパ21は、プラスチックなどによって板状に形成してあり、中央部分21Aの幅は前記クランプ本体19における両側壁面部19Bの間に入り得る幅であり、この中央部分21Aの両端部には、前記クランプ本体19の両端部から外側へ突出した状態に保持される拡張部21Bを備えている。そして、前記グリッパ21の前記中央部分21Aには、複数の凸状部21Cが適宜間隔に備えられている。
【0009】
前記楔部材23は、前記クランプ本体19内に配置された前記グリッパ21を、前記天井面部19A側へ押圧する押圧面23Aを備えている。そして上記押圧面23Aの両側部には、前記クランプ本体19の前記側壁面部19Bと前記屈曲部19Dとの間のガイド溝19Eに係合する楔状の側壁部23Bを備えている。当該楔部材23の前記押圧面23Aには半球状の複数の凸状部23Cが備えられており、前記側壁部23Bの高さ寸法が小さな一端側には、吊り具23Dが備えられている。
【0010】
上記構成のP−クランプ17によって前記光ファイバケーブル1をクランプする場合は、図3に概念的、概略的に示す構成となる。すなわち、クランプ本体19内へ光ファイバケーブル1を挿入配置した後、グリッパ21を前記クランプ本体19内に配置すると共に、楔部材23をクランプ本体19内に係合する(図3に示す状態)。そして、吊り具23Dを引くことにより、楔部材23等の楔作用によってグリッパ21がクランプ本体19の天井面部19A側へ押圧されて、上記天井面部19Aとグリッパ21との間に、前記光ファイバケーブル1が強固にクランプされることになる。
【0011】
この際、図3に概略的に示すように、光ファイバケーブル1のケーブル支持部13及びケーブル本体7の全体がクランプ本体19の天井面部19Aとグリッパ21との間に強固に挟持されることになる。そして、図2に示すように、前記クランプ本体19の天井面部19Aには適宜範囲に亘って凹凸部19Cが形成してあること、及びグリッパ21の中央部分21には複数の凸状部21Cが適宜間隔に形成されていることにより、被覆した熱可塑性樹脂の部分が加圧されて大きく変形されることとなる。したがって、前記光ファイバケーブル1における光ファイバ心線5に、図3において上下方向の側圧荷重が掛かり、深さの浅いノッチ部15が変形し、このノッチ部15の底部にも側圧が掛かることになる。よって前記光ファイバ心線5に微小な曲がり(マイクロベンド)が生じ、伝送損失が増加するという問題がある。
【0012】
すなわち、日本国内で使用されている従来の光ファイバケーブル1をP−クランプ17でもってクランプすることには問題がある。したがって、国内において使用されている屋外線引き留め具及び前述したP−クランプ17の両方に適用可能な光ファイバケーブルが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、一対の抗張力体の間に光ファイバ心線を配置して備えたケーブル本体の一側に、連結部を介してケーブル支持部を備えた光ファイバケーブルの長手方向をZ軸方向、前記抗張力体、光ファイバ心線及びケーブル支持部の配列方向をY軸方向、上記Z軸方向及びY軸方向に対して直交する方向をX軸方向としたとき、前記ケーブル本体のX軸方向の両側面で前記光ファイバ心線に対応した位置に、前記光ファイバ心線の直径よりも幅の広い溝をZ軸方向に長く備え、前記光ファイバ心線の軸心から前記溝の底部までの離隔寸法は、前記光ファイバ心線の半径より大きく、前記ケーブル支持部に備えた支持線の半径より小さく設けてあることを特徴とするものである。
【0014】
また、前記光ファイバケーブルにおいて、前記溝の底部は、V字形状に形成してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光ファイバケーブルを前記P−クランプによって強固に挟持した場合であっても、ケーブル本体部分の変形は溝の部分において吸収されることとなる。したがって、光ファイバ心線に大きな側圧が作用することがなく、マイクロベンドを生じることがないものであり、前述したごとき従来の問題を解消し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の一般的な光ファイバケーブルの構成を示す説明図である。
【図2】P−クランプの構成を概略的に示した分解斜視説明図である。
【図3】P−クランプに光ファイバケーブルをクランプして強固に挟持する前の状態の説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る光ファイバケーブルの構成について詳細に説明するに、前述した従来の光ファイバケーブル1と同一機能を奏する構成要素には同一符号を付することとして重複した説明は省略する。
【0018】
図4を参照するに、本発明の実施形態に係る光ファイバケーブル1の全体的構成は、図1(A)に示した従来の光ファイバケーブルに類似した構成である。なお、光ファイバケーブル1の構成を理解し易くするために、光ファイバケーブル1の長手方向(図4(A)において紙面に垂直な方向)をZ軸方向とし、抗張力体3、光ファイバ心線5、支持線11すなわちケーブル支持部13の配列方向(図4(A)において上下方向)をY軸方向とする。そして、前記Z軸方向及びY軸方向に対して直交する方向(図4(A)において左右方向)をX軸方向とする。
【0019】
前記光ファイバケーブル1におけるケーブル本体7のX軸方向の幅寸法は前記ケーブル支持部13のX軸方向の寸法にほぼ等しく形成してある。
【0020】
前記光ファイバケーブル1において、前記ケーブル本体7のX軸方向の両側面で前記光ファイバ心線5に対応した位置には、当該光ファイバ心線5の軸心を通るX軸方向の中心線を中心としてY軸方向に対称形の変形吸収溝25A,25BがX軸方向に対称形に形成してある。すなわち、前記ケーブル本体7は、光ファイバ心線5を中心として、X軸方向及びY軸方向に対称に構成してある。
【0021】
より詳細には、本実施形態においては、前記変形吸収溝25A,25Bは円弧状に形成してあって、前記ケーブル本体7のX軸方向の両面との交差部27A,27B,27C,27DのY軸方向の間隔寸法は、前記抗張力体3の間隔寸法より大きく設けてあり、かつ前記交差部27A,27B,27C,27Dは、前記抗張力体3のX軸方向の両側方に位置してある。そして、前記変形吸収溝25A,25Bの底部29A,29Bは前記光ファイバ心線5のX軸方向の両側方に位置しており、この光ファイバ心線5の軸心から前記底部29A,29Bまでの間隔寸法Lは、前記光ファイバ心線5の半径よりは大きく、前記ケーブル支持部13に備えた支持線11の半径Rよりは小さく形成してある。
【0022】
換言すれば、前記光ファイバケーブル1を、従来の光ファイバケーブルと同様に、P−クランプ17によってクランプするとき、P−クランプ17におけるクランプ本体19の天井面部19A及びグリッパ21と前記変形吸収溝25A,25Bの前記底部29A,29Bとが接触することのない構成である。すなわち、前記P−クランプ17におけるクランプ本体19の天井面部19Aとグリッパ21とによって光ファイバケーブル1をX軸方向から挟圧するとき、光ファイバ心線5に対応したX軸方向の両側から光ファイバ心線5に直接的な側圧が作用しない構成である。
【0023】
前記構成において、前述したP−クランプ17に光ファイバケーブル1をセットしてクランプすると、光ファイバケーブル1におけるケーブル支持部13およびケーブル本体7が、P−クランプ17におけるクランプ本体19の天井面部19Aとグリッパ21によってX軸方向の両面が挟圧されることになる。この際、ケーブル本体7は、変形吸収溝25A,25BとX軸方向の両側面との交差部27A,27B,27C,27DからY軸方向の端部側が挟圧されるものである。換言すれば、光ファイバ心線5のX軸方向の両側には変形吸収溝25A,25Bが存在するので、当該光ファイバ心線5のX軸方向の両側は挟圧による直接的な側圧を受けることがないものである。
【0024】
前述のごとく、ケーブル支持部13及びケーブル本体7のY軸方向の両端側が前記天井面部19Aとグリッパ21によって、X軸方向から挟み込まれて強固に挟持されると、ケーブル支持部13及びケーブル本体7における樹脂の部分が弾性変形される。この際、ケーブル本体7における樹脂の部分の変形は、変形吸収溝25A,25Bによって吸収され、かつ前記天井面部19Aとグリッパ21との近接位置は、支持線11によって規制されて、前記変形吸収溝25A,25Bの底部29A,29Bには接触し得ないものである。したがって、前記変形吸収溝25A,25Bの底部29A,29Bと前記天井面部19A、グリッパ21との間に空隙が存在するので、前記光ファイバ心線5にマイクロベンドが生じることを抑制することができ、前述したごとき従来の問題を解消することができるものである。
【0025】
ところで、前記ケーブル本体7におけるX軸方向の両側面における変形吸収溝25A,25Bは、当該ケーブル本体7のY軸方向の両端側をX軸方向から挟圧するときの、前記両端側の弾性変形を吸収し、かつ底部29A,29Bに空隙が存在可能な構成であればよく、前記交差部27A,27B,27C,27DのY軸方向の間隔を、前記光ファイバ心線5の直径より大きく保持すればよいものである。すなわち、前記変形吸収溝25A,25Bの形状は前述したごとき円弧状に限ることなく、例えば三角形状、矩形状、多角形状など種々の形状とすることも可能なものである。
【0026】
前述のごとき構成によれば、前記P−クランプ17におけるクランプ本体19の天井面部19Aとグリッパ21によってX軸方向から挟圧するとき、ケーブル支持部13及びケーブル本体7のY軸方向の両端側の複数箇所が挟圧されることとなるものであるから、前記P−クランプ17に安定的にクランプされることになるものである。
【0027】
ところで、本発明は、前述したごとき実施形態に限ることなく、適宜の変形態様でもっても実施可能である。例えば図4(B)に示すように、前記変形吸収溝25A,25Bの底部にVノッチVNを形成して底部をV字形状に形成し、ケーブル本体7を引き裂き易くすることも可能である。また、前記ケーブル本体7のY軸方向の両側に連結部9、ケーブル支持部13を備えて、光ファイバケーブル1の全体的構成をY軸方向及びX軸方向に対称的な構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 光ファイバケーブル
3 抗張力体
5 光ファイバ心線
7 ケーブル本体
9 連結部(首部)
11 支持線
13 ケーブル支持部
17 P−クランプ
19 クランプ本体
21 グリッパ
23 楔部材
25A,25B 変形吸収溝
27A〜27D 交差部
29A,29B 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の抗張力体の間に光ファイバ心線を配置して備えたケーブル本体の一側に、連結部を介してケーブル支持部を備えた光ファイバケーブルの長手方向をZ軸方向、前記抗張力体、光ファイバ心線及びケーブル支持部の配列方向をY軸方向、上記Z軸方向及びY軸方向に対して直交する方向をX軸方向としたとき、前記ケーブル本体のX軸方向の両側面で前記光ファイバ心線に対応した位置に、前記光ファイバ心線の直径よりも幅の広い溝をZ軸方向に長く備え、前記光ファイバ心線の軸心から前記溝の底部までの離隔寸法は、前記光ファイバ心線の半径より大きく、前記ケーブル支持部に備えた支持線の半径より小さく設けてあることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバケーブルにおいて、前記溝の底部は、V字形状に形成してあることを特徴とする光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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