説明

光ファイバコード

【課題】機械特性、柔軟性、難燃性、耐薬品性、コード相互の耐接着性、環境調和性にともに優れた光ファイバコードを提供する。
【解決手段】光ファイバ心線の外周に抗張力繊維を配し、(a−1)エチレン酢酸ビニル共重合体および/または(a−2)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体35〜70質量%、(b−1)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィンおよび/または(b−2)エチレン−(メタ)アクリル酸0〜20質量%、(c)ポリプロピレン3〜20質量%、(d)スチレン系エラストマー20〜50%を含有する(A)樹脂成分100質量部に対して、(B)金属水和物100〜250質量部を含有する難燃性樹脂組成物からなる外部被覆層を前記抗張力繊維の外周に被覆した光ファイバコード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバコードに関し、特に光ファイバ心線の外周に抗張力繊維を設け
た光ファイバコードに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ心線の外周に抗張力繊維を備え、さらにその外周に熱可塑性樹脂からなる外被を備えた光ファイバコードが一般的に使用されている。
このような光ファイバコードは光ファイバケーブルとも呼ばれ、このような光ファイバコードは、金属等からなる抗張力体を備えていないため、折り、曲げ、結びが自在であり、フレキシブルな配線が可能で宅内の配線等に用いられる。そのためで、専門業者ではなく、一般人が宅内で取り扱う場合が多いものである。そのため、光ファイバコードには、専門知識が十分ではない一般人が取り扱っても、その性能を低下させないような、機械特性、柔軟性、難燃性、耐薬品性、コード相互の耐接着性が要求されると共に、一般のゴミとして廃棄しても、環境に悪影響を及ぼさない環境調和性が求められている。しかし、従来の光ファイバコードではこれらの特性の全てを十分に満足するものなかった。
【特許文献1】特開2007−33791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、機械特性、柔軟性、難燃性、耐薬品性、コード相互の耐接着性、環境調和性にともに優れた光ファイバコードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の発明者らは鋭意検討した結果、(a−1)エチレン酢酸ビニル共重合体および/または(a−2)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(b−1)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィンおよび/または(b−2)エチレン−(メタ)アクリル酸、(c)ポリプロピレン、(d)スチレン系エラストマーを特定量含有する(A)樹脂成分に対して、(B)金属水和物を所定量含有することにより、機械特性、柔軟性、難燃性、耐薬品性、相互の耐接着性をバランスよく有する難燃性樹脂組成物が得られることを見い出した。本発明はこれらの知見に基くものである。
すなわち、本発明は、
(1)光ファイバ心線の外周に抗張力繊維を配し、(a−1)エチレン酢酸ビニル共重合体および/または(a−2)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体35〜70質量%、(b−1)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィンおよび/または(b−2)エチレン−(メタ)アクリル酸0〜20質量%、(c)ポリプロピレン3〜20質量%、(d)スチレン系エラストマー20〜50%を含有する(A)樹脂成分100質量部に対して、(B)金属水和物100〜250質量部を含有する難燃性樹脂組成物からなる外部被覆層を前記抗張力繊維の外周に被覆した光ファイバコード、
(2)前記(A)樹脂成分の酸および/または酸エステル成分含有量が25〜70質量%であることを特徴とする(1)項に記載の光ファイバコード、
(3)前記(A)樹脂成分の酸および/または酸エステル成分含有量が25〜60質量%であることを特徴とする(1)項に記載の光ファイバコード、および
(4)前記(B)金属水和物が水酸化マグネシウムであり、(A)樹脂成分100質量部に対して135〜225質量部を含有してなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の光ファイバコード
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の光ファイバコードは、被覆材料として、ベース樹脂にエチレン酢酸ビニル共重合体および/またはエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィンおよび/またはエチレン−(メタ)アクリル酸と、ポリプロピレンと、スチレン系エラストマーを導入し、さらに金属水和物を添加することにより得られた難燃性組成物で光ファイバの外側に被覆したものであり、それにより、機械特性、難燃性、柔軟性、耐薬品性、相互コードの耐接着性がいずれも優れるものである。また、本発明の光ファイバコードは、ノンハロゲン難燃材料で構成されており、埋立や燃焼等の廃棄時において、有害な重金属化合物の流出や、多量の煙、有害ガスの発生が無い。
このため、本発明の光ファイバコードは一般人が宅内で取り扱う光ファイバコードとしても好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明光ファイバコードは、光ファイバ心線の外周に抗張力繊維を配し、さらに特定の難燃性樹脂組成物からなる外部被覆層を被覆した
本発明に用いられる難燃性樹脂組成物は、(a−1)エチレン酢酸ビニル共重合体および/または(a−2)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(b−1)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィンおよび/または(b−2)エチレン−(メタ)アクリル酸、(c)ポリプロピレン、(d)スチレン系エラストマーを特定量含有する(A)樹脂成分に対して、(B)金属水和物を所定量含有するものである。
以下、難燃性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0007】
(a−1)エチレン酢酸ビニル共重合体、(a−2)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体
本発明におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレンと酢酸ビニルを共重合させたものが使用でき、例えば、エバフレックス EV(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)、VPKA(商品名、バイエル社製)、レバプレン(商品名、バイエル社製)、ウルトラセン(商品名、東ソー(株)製)などが挙げられる。
また、本発明におけるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とは、例えばエチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレンーメタクリル酸メチル共重合体(EMMA)などが挙げられる。具体的には例えば、エバフレックス−EEA(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)、エバルロイ(商品名 三井デュポンポリケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0008】
本発明においては、前記(a−1)成分および前記(a−2)成分のいずれか1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。本発明においては、難燃性および機械特性向上の点からは、エチレン−酢酸ビニル共重合体の使用が好ましい。
【0009】
本発明においては、難燃性を向上させるうえでエチレンに対し共重合させた酸エステル成分の含有量(例えばEVAでは酢酸ビニル(VA)含有量、EEAではエチルアクリレート(EA)含有量)が、30〜90質量%が好ましく、さらに好ましくは50〜90質量%、さらに好ましくは60〜90質量%である。
【0010】
本発明において(а−1)成分もしくは(a−2)成分のMFR(メルトフローレイト、JIS K 6730)は、強度の面、樹脂組成物の混練り加工性の面から0.1〜20が好ましく、さらに0.1〜10が好ましい。
本発明において(a−1)成分および/または(a−2)成分の配合量としては、(A)樹脂成分中、35〜70質量%であり、40〜70質量%が好ましく、40〜65 質量%がさらに好ましい。配合量が多すぎると力学的強度が低下する場合がある。また、少なすぎると難燃性に問題が発生する。
【0011】
(b−1)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン、(b−2)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体
本発明における不飽和カルボン酸またはその誘導体(以下、これらを併せて不飽和カルボン酸等ともいう)で変性されたポリオレフィンとは、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性することにより、不飽和カルボン酸またはその誘導体が、ポリオレフィンにグラフトした樹脂のことである。
【0012】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸の誘導体としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸などを挙げることができる。
【0013】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン(直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体や、プロピレンと他の少量のαオレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体)、エチレンとαオレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン系共重合体等が挙げられる。
【0014】
ポリオレフィンの変性は、例えば、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸等を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。不飽和カルボン酸等による変性量は、通常0.5〜15質量%である。
【0015】
不飽和カルボン酸等により変性されたポリオレフィンとしては、具体的には例えば、ポリボンド(商品名、クロンプトン(株)製)、アドテックス(商品名、日本ポリエチレン(株)製)、アドマー(商品名、三井化学(株)製)などが挙げられる。
【0016】
本発明におけるエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体とは、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体を挙げることが出来る。具体的には例えば、ニュクレル(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)を挙げることが出来る。
【0017】
本発明において(b−1)成分および/または(b−2)成分は、何れか1種を使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明において、(b−1)成分および(b−2)成分は、後述する水酸化マグネシウムと成形時に化学的に結合することにより、高い難燃性、機械特性、耐摩耗性を得ることができる。前記すぐれた効果は、アクリル酸もしくはメタクリル酸で変性されたポリオレフィンやエチレン(メタ)アクリル酸共重合体を使用したときに特に顕著である。よって本発明においては、(b−1)および/または(b−2)成分として、アクリル酸もしくはメタクリル酸で変性されたポリオレフィンやエチレン(メタ)アクリル酸共重合体を使用するか、併用したほうが好ましい。
【0018】
本発明において、(b−1)および(b−2)は任意成分であり、(b−1)成分および/または(b−2)成分の配合量は、(A)樹脂成分中、0〜20質量%であり、好ましくは0〜17質量%、更に好ましくは0〜12質量%である。配合量が少なすぎると、実質的な効果が薄れ、難燃性、機械特性が低下する恐れがある。また、多すぎると著しく伸びが低下する場合がある。
【0019】
本発明において、(b−2)成分を使用する場合は、その配合量は(A)樹脂成分中、好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。(b−2)成分をあまり大量に配合すると、伸びの低下や耐寒性を低下させる恐れがある。
【0020】
(c)ポリプロピレン
本発明におけるポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレンブロック共重合体や、プロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体が挙げられる。
【0021】
ここでエチレン・プロピレンランダム共重合体はエチレン成分含量が1〜4質量%程度のものをいい、エチレン・プロピレンブロック共重合体はエチレン成分含量が5〜20質量%程度のものをいう。
【0022】
本発明のポリプロピレンとしては具体的には例えば、BC3HFサンアロマー(商品名、日本ポリプロピレン(株)製)、FTX0154(商品名、日本ポリプロピレン(株)製)、BC6DR(商品名、日本ポリプロピレン(株)製)、サンアロマー(商品名、サンアロマー(株)製)等が挙げられる。
【0023】
本発明におけるポリプロピレン樹脂のMFR(ASTM‐D‐1238、L条件、230℃)は、好ましくは0.1〜60g/10分、より好ましくは0.1〜25g/10分、さらに好ましくは0.5〜15g/10分である。MFRが0.1g/10分未満では、熱処理後でもポリプロピレン樹脂の分子量が低下せず、得られる樹脂組成物の成形性が悪くなることがあり、一方、MFRが25g/10分を越えると、力学的強度が十分発揮されない。
【0024】
本発明の(c)成分の配合量は、(A)樹脂成分中、3〜20質量%であり、好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは7〜20質量%である。配合量が多すぎると、難燃性が低下したり、伸びが著しく低下する。また、少なすぎると耐薬品性が低下する。
【0025】
(d)スチレン系エラストマー
本発明におけるスチレン系エラストマーとしては、HSBR(水素化スチレンブタジエンエラストマー)、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)、SEBS(スチレン−エチレン・ブタジエン−スチレンブロックコポリマー)、SEPS(スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロックコポリマー)等を挙げられ、それらを変性したものを用いてもよい。
【0026】
本発明のスチレン系エラストマーとしては具体的には例えばダイナロン(商品名、JSR(株)製)、タフテック(商品名、旭化成ケミカルズ(株)製)、セプトン(商品名、(株)クラレ製)等があげられる。不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマーとしては、例えば、クレイトン1901FG(クレイトンポリマージャパン(株)製)をあげることができる。
【0027】
本発明の(d)成分の配合量は、20〜50質量%であり、好ましくは20〜45質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。配合量が多すぎると、強度、耐薬品性が低下する怖れがある。また、少なすぎると柔軟性を得ることができない。
【0028】
本発明の(A)樹脂成分は、前記した(a−1)成分および/または(a−2)成分、(b−1)および/または(b−2)成分、(c)成分並びに(d)成分を所定量配合し、酸および/または酸エステル含有成分が好ましくは25〜70質量%、さらに好ましくは25〜60質量%含有するものである。
【0029】
ここで、酸成分もしくは酸エステル成分とは(a−1)、(a−2)に含有されている酸エステル成分、または(b−1)、(b−2)、(d)に含有されている酸成分もしくは酸エステル成分のことである。具体的には(a−1)、(a−2)においては、酢酸ビニルや(メタ)アクリル酸エステルなどの共重合成分であり、(b−1)、(b−2)、(d)においては、マレイン酸や無水マレイン酸等の変性成分や、酢酸ビニルなどの樹脂に共重合されている成分である。本発明においては、全樹脂成分中の酸および/または酸エステル成分含有量は以下の式により求めることができる。

全樹脂成分中の酸および/または酸エステル成分含有量(%)=Σ(Ai×Bi)/100
Ai=各樹脂の配合量(%)
Bi=各樹脂の酸および/または酸エステル成分含有量(%)

全樹脂成分中の酸および/または酸エステル成分含有量が少なすぎると、難燃性が劣り、またこれが高すぎると機械的特性が低下したり、低温性が低下する場合がある。
本発明においては、さらに(а−1)および/または(a−2)、(b−1)および/または(b−2)、(c)および(d)の各成分を所定量配合したものを使用することにより、機械特性、柔軟性、難燃性、耐薬品性、コード相互の耐接着性にバランスの取れた難燃性樹脂組成物を得ることが可能となる。
【0030】
特に、(b−1)成分および/または(b−2)成分を特定量配合することにより、後述する金属水和物と強固なイオン結合を形成し、難燃性を高めると共に柔軟性を保持しつつ、優れた端末加工性を得ることができる。また、高い加熱変形性も得られるため、通常大量に入れなければならなかったポリプロピレンの配合量を少なくすることが可能となり、柔軟性、難燃性をも満足させることができる。
【0031】
(B)金属水和物
本発明において、金属水和物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、オルト珪酸アルミニウム、ハイドロタルサイドなどの水酸基あるいは結晶水を有する金属化合物が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても良いし、2種以上を併用して用いても良い。本発明における金属水和物としては、水酸化マグネシウムが好ましい。
本発明においては、通常市販されている水酸化マグネシウムを使用することが可能である。本発明において、水酸化マグネシウムは、無処理のままでも、表面処理を施されていてもよい。表面処理としてはたとえば、脂肪酸処理、リン酸処理、チタネート処理、シランカップリング剤による処理などがあげられる。樹脂成分(A)との反応性の点から、本発明においては、無処理のものか、シランカップリング剤を用いたものを使用するのが好ましい。
【0032】
本発明におけるシランカップリング剤は末端にビニル基、メタクロキシ基、グリシジル基、アミノ基を有するものが好ましい。具体的にはたとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ―アミノプロピルトリプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ―アミノプロピルトリプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でもビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が好ましい。シランカップリング剤による表面処理の方法としては、通常使用される方法で処理を行うことが可能であるが、たとえば、表面処理をしていない水酸化マグネシウムをあらかじめドライブレンドしたり、湿式処理を行ったり、混練り時にシランカップリング剤をブレンドすることなどにより得ることが可能である。使用するシランカップリング剤の配合量は、表面処理するに十分な量が適宜加えられるが、具体的には水酸化マグネシウムに対し0.1〜2.5質量%、好ましくは0.2〜1.8質量%、さらに好ましくは0.3〜1.0質量%である。
【0033】
また、すでにシランカップリング剤処理をおこなった水酸化マグネシウム入手することも可能である。シランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムとしては、具体的には、キスマ5L、キスマ5N、キスマ5P(いずれも商品名、協和化学(株)製)や、ファインマグMO−E(商品名、(株)TMG)などがあげられる。
【0034】
また、無処理の水酸化マグネシウムとしては、たとえばキスマ5(商品名、協和化学(株))、マグニフィンH5(商品名、アルベマール(株))などがあげられる。
本発明においては、水酸化マグネシウムをシランカップリング剤で処理をする場合には、いずれか1種のシランカップリング剤のみでも、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明においては、表面処理を行っていない水酸化マグネシウムや、表面処理を行った水酸化マグネシウムをそれぞれ単独で使用しても、併用してもよい。異なる表面処理を行った水酸化マグネシウムを併用することも可能である。
【0036】
本発明における金属水和物の配合量は、(A)樹脂成分100質量部に対し100〜250質量部であり、好ましくは135〜225質量部、さらに好ましくは140〜225質量部である。より好ましくは、水酸化マグネシウムを(A)樹脂成分100質量部に対して135〜225質量部を含有するものである。金属水和物の配合量が少なすぎると、難燃性に問題があり、多すぎると伸びが低下したり、力学的強度が著しく低下したり、低温脆性が低下する問題がある。
【0037】
本発明に用いられる難燃性樹脂組成物には、その他難燃性を向上させるためにメラミンシアヌレート化合物を加えることも出来る。本発明においては、メラミンシアヌレートは、粒径が細かい物が好ましい。本発明で用いるメラミンシアヌレート化合物の平均粒径は好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。また、分散性の面から表面処理されたメラミンシアヌレート化合物が好ましく用いられる。本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物としては、例えばMCA−0、MCA−1(いずれも商品名、三菱化学社製)や、Chemie Linz Gmbhより上市されているものがある。また脂肪酸で表面処理したメラミンシアヌレート化合物、シラン表面処理したメラミンシアヌレート化合物としては、MC640、MC860(いずれも商品名、日産化学社製)などがある。
【0038】
本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物として、例えば以下のような構造のメラミンシアヌレートがある。
【0039】
【化1】

【0040】
本発明に用いられる難燃性樹脂組成物には、必要に応じスズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛及びホウ酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種を配合させ、さらに難燃性を向上することも可能である。これらの化合物を用いることにより、燃焼時の殻形成の速度が増大し、殻形成がより強固になる。従って、燃焼時に内部よりガスを発生するメラミンシアヌレート化合物とともに、難燃性を飛躍的に向上させることができる。
【0041】
本発明で用いるホウ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛は平均粒子径が5μm以下が好ましく、3μm以下がさらに好ましい。
【0042】
本発明で用いることのできるホウ酸亜鉛として、具体的には例えば、アルカネックスFRC−500(2ZnO/3B・3.5HO)、FRC−600(いずれも商品名、水澤化学(株)製)などがある。またスズ酸亜鉛(ZnSnO)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(ZnSn(OH))として、アルカネックスZS、アルカネックスZHS(いずれも商品名、水澤化学(株)製)などがある。
【0043】
本発明に用いられる難燃性樹脂組成物には、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0044】
酸化防止剤としては、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンゾイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤などがあげられる。
【0045】
金属不活性剤としては、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’−オキサミドビス−(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などがあげられる。
難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどがあげられる。
【0046】
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系などがあげられ、なかでも、ワックスE、ワックスOP(いずれも商品名、Hoechst社製)などの内部滑性と外部滑性を同時に示すエステル系、アルコール系、金属石けん系などが挙げられる。その中でもステアリン酸亜鉛やステアリン酸マグネシウムは、目やにを防ぐ効果がある。さらに滑剤として脂肪酸アミドを併用することにより、はい潜在に使用した場合など、簡単に導体との密着性を制御することが可能となる。
【0047】
更に、耐候性や光ファイバコードの色彩を考慮する目的として、カーボン顔料、カラー顔料、紫外線吸収剤、紫外線防止剤、酸化防止剤などを適宜配合することもできる。
【0048】
本発明に用いられる難燃性樹脂組成物は、上記の各成分を、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど、通常用いられる混練装置で溶融混練して得ることができる。
また、本発明品においては、本発明の難燃性樹脂組成物の架橋体を外部被覆層として用いることが可能である。シランカップリング剤とポリマーを結合させるためその後架橋させても良いし、ニーダやバンバリーミキサーで樹脂組成物作成時に樹脂の一部分を架橋するとともにポリマーと金属水和物をシランカップリング剤を介して結合させても良い。
さらには押出後の被覆層を架橋させることも可能である。架橋を行う場合の方法として、常法による電子線照射架橋法や化学架橋法が採用できる。
電子線架橋法の場合は、本発明品の難燃性樹脂組成物を押出成形して被覆層とした後に常法により電子線照射することにより架橋をおこなう。電子線の線量は1〜30Mradが適当であり、効率よく架橋を行うために、被覆層を構成する難燃性樹脂組成物に、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として配合してもよい。
化学架橋法の場合は、難燃性樹脂組成物に有機パーオキサイドを架橋剤として配合し、押出成形して被覆層とした後に常法により加熱処理により架橋を行う。
【0049】
次に、図面を参照して、本発明の光ファイバコードの好ましい実施態様を詳細に説明する。
図1は、本発明の光ファイバコードの好ましい実施形態を示している斜視図である。
図2は、図1に示す光ファイバコードの断面構造を示す図である。
図1と図2に示すように、光ファイバコード10は、光ファイバ心線11と、抗張力繊維20と、樹脂組成物からなる外部被覆層30とを有している。
【0050】
図1と図2に示す光ファイバ心線11は、光ファイバコード10の中心に配置されており、コアと、このコアの外周を覆っているクラッドを有し、例えば石英ガラスからなるガラス光ファイバ12の外周に紫外線硬化樹脂等からなる被覆13を有する。
図2に示すように、抗張力繊維20は、光ファイバ心線11の外周に配置されておりたとえばアラミド繊維の束により形成されている。抗張力繊維20からなる層の直径D1は、例えば1.5mmである。
【0051】
樹脂組成物からなる外部被覆層30は、抗張力繊維20の外周に配置されており、外部被覆層30は、上述の難燃性樹脂組成物で形成される。
外被30の直径D2は、例えば4.0mmであり、外被30の肉厚D3は、1.25m
mである。
【0052】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
図示されるものでは、抗張力繊維20は、アラミド繊維の4つの束であるが、これに限らず、本発明においては、任意の形状の抗張力繊維を用いることができる。
【0053】
抗張力繊維20の周りに形成される難燃性樹脂組成物の被覆層の肉厚も特に制限はないが、0.15〜2mmが好ましい。また、絶縁層が多層構造であってもよく、上記の難燃性樹脂組成物で形成した被覆層のほかに中間層などを有するものでもよい。
【0054】
本発明においては、通常の押出被覆装置を用いて、光ファイバ心線の周囲に抗張力繊維層を形成しながら予め溶融混練した難燃性樹脂組成物を通常の押出法により被覆して、光ファイバコードを製造することができる。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
<実施例1〜8、比較例1〜8>
まず、表1および2に示す各成分を室温にてドライブレンドし、バンバリーミキサーを用いて溶融混練して、樹脂組成物を製造した。
次に、押出被覆装置を用いて、φ0.5mm光ファイバ心線の周囲に1210デニールの太さのアラミドからなる繊維であるトワロン4本を縦添えし外径1.5mmに抗張力繊維層を形成しながら予め溶融混練した樹脂組成物を押出法により被覆して、各々外径4.0mm、肉厚1.25mmの光ファイバコードを製造した。
【0057】
尚、各成分としては、下記のものを使用した。
(a−1)エチレン酢酸ビニル共重合体
商品名:エバフレックス EV180、製造元:三井デュポンポリケミカル(株)(表中では、「EV180」と表記)
酢酸ビニル含有量:33質量%
商品名:VPKA8784、製造元:バイエル社
酢酸ビニル含有量:70質量%
商品名:レバプレン800HV、製造元:バイエル社製
酢酸ビニル含有量:80質量%
商品名:レバプレン700HV、製造元:バイエル社製
酢酸ビニル含有量:70質量%
(a−2)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体
エチレン−アクリル酸エチル共重合体
商品名:エバフレックス−EEA A−714、製造元:三井デュポンポリケミカル(株)(表中では、「A−714」と表記)
アクリル酸エチル含有量:25質量%
(b−1)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン
マレイン酸変性ポリエチレン
商品名:アドマーXE070、製造元:三井化学(株)
マレイン酸変性量:1質量%
マレイン酸変性ポリエチレン
商品名:L−6100M、製造元:日本ポリエチレン(株)
酸変性量:1質量%
(b−2)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体
エチレン−メタクリル酸共重合体
商品名:ニュクレル1207C、製造元:三井デュポンポリケミカル(株)
メタクリル酸含有量:12質量%
(c)ポリプロピレン
ブロックポリプロピレン
商品名:BC3HF、製造元:日本ポリプロピレン(株)
商品名:FTX0154、製造元:日本ポリプロピレン(株)
ランダムポリプロピレン
商品名:BC6DR、製造元:日本ポリプロピレン(株)
(d)スチレン系エラストマー
水添スチレン・ブタジエンゴム
商品名:ダイナロン1320P、製造元:JSR(株)
水添スチレン・エチレン・ブチレンゴム
商品名:タフテックH1221、製造元:旭化成ケミカルズ(株)
酸変性スチレン系エラストマー
商品名:クレイトンFG1901X、製造元:JSRクレイトン(株)製
酸変性量:6質量%
(B)水酸化マグネシウム
シラン処理水酸化マグネシウム
商品名:キスマ5L、製造元:協和科学(株)
シラン処理水酸化マグネシウム(A)(表中では、「水酸化マグネシウムA」と表記)
ビニルメトキシシラン0.3質量%+オレイン酸0.3質量%にて処理
【0058】
試験例
実施例1〜8、比較例1〜8の光ファイバコードに対して、以下の評価試験を行った。
結果を表1〜2に合せて示した。
(ア)引張試験
被覆した難燃性樹脂組成物をロールプレスした1.0mmのシートよりJIS K 6723に基づくダンベル3号形試験片を作成して引張試験を行った。標線間20mm、引張速度200mm/分で試験を行った。伸び100%以上、引張り強さ4.9Mpa以上が必要である。
(イ)柔軟性
曲げ直径30mmにコードを曲げて1分間放置後の荷重を測定する。1.50N未満を合格とし、測定値とともに○で示した。また1.50N以上のものは測定値とともに×で示した。
(ウ)難燃性
JIS C 3005に規定される60度傾斜燃焼試験を行い、合否を確認し、合格したものを○、不合格のものを×で示した。
(エ)耐薬品性
光コードを180度折り曲げて固定し、エタノール液に常温で1時間浸漬した。外被割れを起こさないことが必要である。外被割れを起こさな無かったものを○、外被割れを起こしたものを×で示した。
(オ)コード相互の耐接着性
コード束を100℃で1時間放置した。コード同士が強く接着しないことが必要である。コード同士が接着しなかったものを○、接着したものを×とした。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
実施例1〜8はいずれの評価項目において満足な結果が得られている。対して、比較例1〜7に示されるように、(a−1)及び/または(a−2)成分、(b−1)及び/または(b−2)成分、(c)成分、もしくは(d)成分の配合量が規定の範囲を外れた場合(比較例1、2、3、4、8)、水酸化マグネシウムの配合量が規定の範囲を外れた場合(比較例5、7)、樹脂成分中の酸および/または酸エステル成分の含有量が規定の範囲を外れた場合(比較例1、6)のいずれにおいても、引張強さ、伸び、曲げ剛性、難燃性、耐薬品性、コード相互の耐接着性のいずれかの項目を満足することができず、本発明の効果が得られないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態を示す断面構造を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
10 光ファイバケーブル
11 光ファイバ心線
20 抗張力繊維
30 外部被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線の外周に抗張力繊維を配し、(a−1)エチレン酢酸ビニル共重合体および/または(a−2)エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体35〜70質量%、(b−1)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィンおよび/または(b−2)エチレン−(メタ)アクリル酸0〜20質量%、(c)ポリプロピレン3〜20質量%、(d)スチレン系エラストマー20〜50%を含有する(A)樹脂成分100質量部に対して、(B)金属水和物100〜250質量部を含有する難燃性樹脂組成物からなる外部被覆層を前記抗張力繊維の外周に被覆した光ファイバコード。
【請求項2】
前記(A)樹脂成分の酸および/または酸エステル成分含有量が25〜70質量%であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバコード。
【請求項3】
前記(A)樹脂成分の酸および/または酸エステル成分含有量が25〜60質量%であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバコード。
【請求項4】
前記(B)金属水和物が水酸化マグネシウムであり、(A)樹脂成分100質量部に対して135〜225質量部を含有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバコード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−216836(P2009−216836A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58691(P2008−58691)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】