説明

光ファイバジャイロのケース構造

【課題】本発明は、ケースの一部を含鉛樹脂で成形することにより、光ファイバコイルの耐放射線性を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明による光ファイバジャイロのケース構造は、光ファイバコイル(4)を有するボビン体(2)と、前記ボビン体(2)及び光ファイバコイル(4)を覆うための第1蓋体(6)及び外筒体(5)及び第2蓋体(7)と、を備え、少なくとも前記第1蓋体(6)は含鉛樹脂で形成されている構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバジャイロのケース構造に関し、特に、ケースの少なくとも表側の第1蓋体の材料を含鉛樹脂とすることにより、外部からの放射線による光ファイバコイルの耐放射線性を向上させ、光ファイバジャイロの寿命を向上させるための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の光ファイバジャイロとしては、例えば、特許文献1に開示された構成を挙げることができるが、このように、特許文献1に開示された光ファイバジャイロのケース構造としては、例えば、図2に示される構成が採用されていた。
すなわち、図2において符号1で示されるものは全体形状が箱型をなすケースであり、このケース1の内部には全体形状が筒形をなすと共に縦断面形状でほぼH型をなすボビン体2が設けられている。
【0003】
前記ボビン体2の外縁に形成された筒部3の外周には、センシングコイルとしての光ファイバコイル4が複数回巻回して設けられており、このボビン体2の前記光ファイバコイル4の外周には筒状の外筒体5が配設され、この外筒体5は前記ボビン体2の表側に設けられた第1蓋体6と接続されている。
【0004】
前記ボビン体2の裏側に設けられた第2蓋体7は前記外筒体5と接続され、前記第1蓋体6、外筒体5及び第2蓋体7は互いに別体として構成されている。
前記ボビン体2の中央位置にはねじ孔8が形成され、前記第2蓋体7に設けられたねじ9が前記ねじ孔8を貫通して上方へ突出することにより、第2蓋体7は前記ボビン体2に固定されている。
【0005】
前記ねじ9の先端には、ねじ穴9aが形成されており、このねじ穴9aには、カラー10及び取付ねじ11を介して回路基板12が固定されている。
また、前記ボビン体2の裏面には第1、第2カプラ13,24及びポラライザ23が設けられており、前記ケース1は前記第1蓋体6、外筒体5及び第2蓋体7によって構成されている。
また、前記ケース1内は、前記ボビン体2によって、表側が電気系の第1室1A、裏側が機械系の第2室1Bに構成されている。
【0006】
前述の図2の構成による光ファイバジャイロ20は、一例として、図3に示される周知(前述の特許文献1に開示)の光サニャック効果を用いた位相変調方式の光学系21及び信号処理回路36によって構成されている。
すなわち、図3において符号21で示されるものは光ファイバで形成されたセンシングコイル4を有する光学系であり、このセンシングコイル4は、第1カプラ13、ボラライザ23及び第2カプラ24を介して光源モジュール25及び検出器26に光ファイバ27で接続されている。
【0007】
前記センシングコイル4と第1カプラ13との間には、この光ファイバ27に接しかつセンシングコイル2の近傍に位置する状態で周知のピエゾ素子(PZT)からなる位相変調器28が設けられている。
この位相変調器28を所定の周波数の交流信号で駆動することにより、角速度により発生する光の位相差を干渉させて周知の光サニャック効果により信号処理回路36を経てジャイロ出力36aを得ている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−191239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の光ファイバジャイロのケース構造は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、ケースを構成する第1蓋体、外筒体、第2蓋体等は、いずれもアルミニウム合金もしくは樹脂のみで形成されているため、光ファイバジャイロを宇宙空間、放射線管理区域等の放射線環境下で使用する場合、外部の放射線源30からケースを透過して放射線30aが光ファイバコイルに入射し、光ファイバコイルの寿命を短縮化することになっていた。
【0010】
また、前述のような光ファイバコイルを外部からの放射線から守るための手段としては、例えば、鉛の板をケースの内側に設けて放射線の遮蔽を行う方法、あるいは、光ファイバコイルのガラス中のリン(P)を極限まで予め除去し、光ファイバコイル自体の耐放射線性を向上させる方法があるが、前者の場合、鉛板による遮蔽では鉛の大きい比重のために光ファイバジャイロの質量が大幅に増加することになっていた。
また、後者の場合、光ファイバコイル自体のコストが大幅高となり、低価格化へのニーズに対応することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による光ファイバジャイロのケース構造は、周縁に巻回して設けられた光ファイバコイルを有するボビン体と、前記ボビン体及び光ファイバコイルを覆うための第1蓋体及び外筒体と、を備え、少なくとも前記第1蓋体は、含鉛樹脂で形成されている構成であり、また、前記ボビン体と第1蓋体及び外筒体は、互いに独立した別体よりなる構成であり、また、前記第1蓋体と外筒体は、互いに一体成形で、前記光ファイバコイルは前記ボビン体にインサート成形されている構成であり、また、前記ボビン体の前記第1蓋体の対向側には第2蓋体が設けられている構成であり、また、前記ボビン体を貫通するねじにより前記第2蓋体が前記ボビン体に固定されている構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明による光ファイバジャイロのケース構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ケースのうち、少なくとも第1蓋体を含鉛樹脂で形成しているため、外部からの放射線はケースの外側で遮蔽され、光ファイバコイルへの放射線の入射を防止することができ、軽量かつ低コストで光ファイバジャイロの放射線耐性を向上させることができる。
また、ケースの樹脂を含鉛系の含鉛アクリル樹脂、含鉛メタクリル樹脂等で形成して成形しているため、ケースの製法としては、従来と同様となり、コストアップを避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ケースの少なくとも表側の第1蓋体の材料を含鉛樹脂とすることにより、外部からの放射線による光ファイバコイルの耐放射線性を向上させ、光ファイバジャイロの寿命を向上させるようにした光ファイバジャイロのケース構造を提供することを目的とする。
【実施例】
【0014】
以下、図面と共に本発明による光ファイバジャイロのケース構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を用いて説明する。
図1において符号1で示されるものは全体形状が箱型をなすケースであり、このケース1の内部には全体形状が筒形をなすと共に縦断面形状でほぼH型をなすボビン体2が設けられている。
【0015】
前記ボビン体2の外縁に形成された筒部3の外周には、センシングコイルとしての光ファイバコイル4が複数回巻回して設けられており、このボビン体2の前記光ファイバコイル4の外周には筒状の外筒体5が配設され、この外筒体5は前記ボビン体2の表側に設けられた第1蓋体6と接続されている。尚、前記ボビン体2の裏面には、第1、第2カプラ13,24及びポラライザ23が設けられている。
【0016】
前記ボビン体2の裏側に設けられた第2蓋体7は前記外筒体5と接続され、前記第1蓋体6、外筒体5及び第2蓋体7は互いに別体として構成されていると共に前記ケース1を構成している。
尚、前記第1蓋体6、外筒体5及び第2蓋体7は、前述のように、各々別体で成形される場合に限らず、前記第1蓋体6と外筒体5とを一体成形とし、前記ボビン体2に前記光ファイバコイル4をインサート成形とすることもできる。
【0017】
前記第1蓋体6、外筒体5、第2蓋体7で形成されるケース1の中、少なくとも、前記第1蓋体6のみ、又は、前記第1蓋体6と外筒体5及び第2蓋体7は、従来の材質とは異なり、含鉛アクリル樹脂又は含鉛メタクリル樹脂等からなる含鉛樹脂を用いた樹脂成形によって形成されている。また、前記ボビン体2も含鉛樹脂で成形すると、耐放射線性がより一層向上する。
【0018】
従って、前述の構成による光ファイバジャイロ20を用いる場合、前記第2蓋体7を下側として図示しない装置に取付けた場合、少なくとも、第1蓋体6のみ、又は、第1蓋体6と外筒体5が含鉛樹脂で形成されているため、例えば、放射線源30から発射した放射線30aは、前記第1蓋体6で遮蔽され、光ファイバコイル4及び電子部品へは入射されず、光ファイバジャイロコイル4の放射線耐性を従来よりも向上させることができる。
尚、前記光ファイバジャイロ20の各室1A,1Bの光学系21及び信号処理回路36については、図3と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による光ファイバジャイロのケース構造を示す断面図である。
【図2】従来の光ファイバジャイロのケース構造を示す断面図である。
【図3】従来の光ファイバジャイロの光学系及び電気系を示す構成図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ケース
1A 第1室
1B 第2室
2 ボビン体
3 筒部
4 光ファイバコイル
5 外筒体
6 第1蓋体
7 第2蓋体
8 ねじ孔
9 ねじ
9a ねじ穴
10 カラー
11 取付ねじ
12 回路基板
23 ポラライザ
13 第1カプラ
14 第2カプラ
20 光ファイバジャイロ
30 放射線源
30a 放射線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁に巻回して設けられた光ファイバコイル(4)を有するボビン体(2)と、前記ボビン体(2)及び光ファイバコイル(4)を覆うための第1蓋体(6)及び外筒体(5)と、を備え、
少なくとも前記第1蓋体(6)は、含鉛樹脂で形成されていることを特徴とする光ファイバジャイロのケース構造。
【請求項2】
前記ボビン体(2)と第1蓋体(6)及び外筒体(5)は、互いに独立した別体よりなることを特徴とする請求項1記載の光ファイバジャイロのケース構造。
【請求項3】
前記第1蓋体(6)と外筒体(5)は、互いに一体成形で、前記光ファイバコイル(4)は前記ボビン体(2)にインサート成形されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバジャイロのケース構造。
【請求項4】
前記ボビン体(2)の前記第1蓋体(6)の対向側には第2蓋体(7)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の光ファイバジャイロのケース構造。
【請求項5】
前記ボビン体(2)を貫通するねじ(9)により前記第2蓋体(7)が前記ボビン体(2)に固定されていることを特徴とする請求項4記載の光ファイバジャイロのケース構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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