説明

光ファイバユニットの製造方法及び製造装置

【課題】並列に並べられた複数の光ファイバと隣接する光ファイバ同士を接着固定する接着固定材とを備え、接着固定材が光ファイバの長手方向に間欠的に設けられることで中間分岐の作業性を改善した構成の光ファイバユニットを製造する製造方法及び製造装置において、複数の供給装置を高い位置決め精度で配置してオン・オフ制御を行う必要がなく、高速で且つ安定して光ファイバを接着固定することを可能にする。
【解決手段】光ファイバユニットの製造に際し、複数の光ファイバ1を円筒状の治具41の周囲に互いに平行に整列させ、複数の光ファイバ1を整列後の治具41の周囲に、接着性を有する長尺線状体2を、らせん状に巻き付け、長尺線状体2を光ファイバ1に接着させる。その後、長尺線状体2を例えば切断刃35aにより所定の間隔で切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列された複数の光ファイバと隣接する光ファイバ同士を接着固定する接着固定材とを備えた光ファイバユニットを製造するための製造方法及び製造装置、並びにその光ファイバユニットを複数有する光ファイバユニット集合体を製造するための製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光ファイバを並列配置し、これら複数の光ファイバをテープ材で被覆して一体化したものとして光ファイバテープ心線が知られている。このような光ファイバテープ心線を使用するに際しては、光ファイバテープ心線の端部ではなく、光ファイバテープ心線の中間部で単心分離を行うことが必要となる場合がある。
【0003】
このような中間部における単心分離時の作業において、伝送損失の悪化を抑制しながら分岐作業性を改善させることが求められる。中間部における単心分離の作業性の改善に関し、例えば特許文献1には、並列した光ファイバを全長にわたって外被で一体化した光ファイバテープ心線において、光ファイバ間の窪みに応じて外被に凹部を形成した構成が開示されている。この光ファイバテープ心線は、T≦d+40μm(Tは光ファイバテープ心線の厚さの最大値、dは光ファイバ心線の外径)で、且つg≦d(gは凹部における光ファイバテープ心線の厚さ)を満足し、且つ光ファイバを活線分岐するときの損失増加が1.0dB以下の特性を有する。これにより、光ファイバの分岐作業時に、伝送損失の増加を抑制しながら容易に外被を剥離させることができるとされている。
【0004】
しかしながら、中間部で単心分離を行う際に、光ファイバテープ心線に含まれる複数の光ファイバのうち、すでに通信に使用されている活線の光ファイバがある場合には、単心分離を行う作業によってその活線の光ファイバに通信障害が生じる可能性がある。
【0005】
このような課題に対して、例えば特許文献2には、複数の光ファイバを並列配置してその周囲をテープ材で被覆した構成において、テープ材で被覆した部分を光ファイバの長手方向に間欠的に設けた構成が開示されている。この構成によれば、テープ材で被覆されている部分とテープ材の被覆がない部分とが光ファイバの長手方向で交互に配置されるため、光ファイバテープの中間部で単心分離を行う場合には、テープ材のない部分で容易に分離作業を行うことができる。また、テープ材が被覆された部分を利用すれば、複数の光ファイバがテープ材で一体化された状態で、コネクタ等への一括接続を行うことができる。
【0006】
テープ材による被覆を光ファイバの長手方向に間欠的に施した光ファイバテープ心線については、例えば特許文献3など、種々の構造の発明が開示されている。特許文献3に記載された光ファイバテープ心線では、単心の光ファイバを並列させ、隣接する光ファイバ間にその長手方向に間欠的に接着性樹脂を付与し、接着性樹脂を硬化させることで光ファイバテープ心線を得るようにしている。接着性樹脂としては、紫外線硬化型樹脂などが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3664254号公報
【特許文献2】特許第4049154号公報
【特許文献3】特開2003−232972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7は、従来技術による、並列した単心の光ファイバ間に接着性樹脂を付与するための構成例を概略的に示す図である。例えば、上記特許文献3に記載の構成のように、隣接する光ファイバ1間に長手方向に間欠的に接着性樹脂72を付与してテープ心線70とする方法を用いることができる。この方法では、ディスペンサなどの接着性樹脂の供給装置71を複数使用し、そのディスペンサのノズル先端が光ファイバ1の間に位置するように配置する。そして、並列に並べた光ファイバ1をその長手方向に進行させ、供給装置71のオン・オフ(つまり、接着性樹脂の供給・非供給)を制御することで、光ファイバ1間に間欠的に接着性樹脂72を付与することができる。
【0009】
しかしながら、図7に示すような方法の場合、複数の単心の光ファイバ1を並列させた状態で、隣接する光ファイバ1間に精度よく接着性樹脂72を付与することは難しい。また、このときに製造工程を効率化するために製造線速を上げていくと、接着性樹脂72を付与する位置精度が悪化するため、例えば、長手方向全長に光ファイバを一括被覆するテープ心線の製造線速と同程度まで増速することは難しい。
さらに、図7に示すような装置では、接着性樹脂72を付与する位置に相当する数だけ供給装置71が必要となり、それぞれの供給装置71を精度良く配置する必要が生じ、その構成が複雑となる。また、これらの供給装置71から接着性樹脂72を供給するときのオン・オフ制御も高精度に行う必要がある。
【0010】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、その目的は、並列に並べられた複数の光ファイバと隣接する光ファイバ同士を接着固定する接着固定材とを備え、接着固定材が光ファイバの長手方向に間欠的に設けられることで中間分岐の作業性を改善した構成の光ファイバユニットを製造する製造方法及び製造装置において、複数の供給装置を高い位置決め精度で配置してオン・オフ制御を行う必要がなく、高速で且つ安定して光ファイバを接着固定することを可能にすることにある。
本発明の他の目的は、その光ファイバユニットを同様にして複数並べた光ファイバユニット集合体を製造するための製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による、光ファイバユニットの製造方法及び製造装置は、複数の光ファイバを並列させて一体化させた光ファイバユニットを製造するに際し、複数の光ファイバを円筒状の治具の周囲に互いに平行に整列させ、上記複数の光ファイバを整列後の上記円筒状の治具の周囲に、接着性を有する長尺線状体をらせん状に巻き付け、その長尺線状体を上記光ファイバに接着させ、その長尺線状体を所定の間隔で切断して短尺にする。
【0012】
また、本発明による、光ファイバユニット集合体の製造方法及び製造装置は、上述した方法と同様の方法を用いて、上述した光ファイバユニットを複数並列に並べるとともに、それら複数の光ファイバユニットに対して別の長尺線状体を巻き付けて接着させて切断する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光ファイバユニットの製造方法及び製造装置によれば、隣接する光ファイバ同士を接着固定するための接着固定材が光ファイバの長手方向に間欠的に設けられているため、中間分岐の作業性を改善することができ、また光ファイバの接着固定を高速に且つ安定して施すことができる。
また、本発明の光ファイバユニット集合体の製造方法及び製造装置によれば、光ファイバユニットを同様の方法で複数並列に並べて一体化しているため、同様に、中間分岐の作業性を改善することができ、また光ファイバユニットの接着固定を高速に且つ安定して施すことができ、さらにユニット全体の光ファイバの心数を多くしても心線を特定するのが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の製造方法で製造される光ファイバユニットの一構成例を示す図である。
【図2】本発明の製造方法で製造される光ファイバユニット集合体の一構成例を示す図である。
【図3】本発明による、光ファイバユニット集合体を製造するための製造装置の一構成例を示す図である。
【図4】図3の製造装置における各製造工程での製造物の断面の一例を示す図である。
【図5】図3の製造装置で製造した光ファイバユニット集合体の一例を示す図である。
【図6】図3の製造装置で製造した光ファイバユニット集合体の他の例を示す図である。
【図7】従来技術による、並列した単心の光ファイバ間に接着性樹脂を付与するための構成例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の製造方法で製造される光ファイバユニットの一構成例を示す図で、図1(A)はその斜視図、図1(B)は図1(A)の矢視の方向(つまり、光ファイバの長手方向)の断面図である。
図1で例示するように、本発明の製造方法で製造される光ファイバユニット10は、上述した従来のテープ心線と同じ用途に使用するテープ状ユニットであって、並列された複数の単心の光ファイバ1と、隣接する光ファイバ1同士を接着固定するための接着固定材2とを備えている。この接着固定材2により、複数の光ファイバ1全体を接着固定することができる。また、この例では、4心の光ファイバユニットを挙げて説明するが、光ファイバ1の本数は複数であればよい。
【0016】
そして、接着固定材2は、接着性を有する長尺の線状体を、並列した複数の光ファイバ1の片面から当接させて接着させ、接着させた後に切断して短尺にしたものである。この接着固定材2は、光ファイバ1の長手方向に間欠的に施されている。
このような構成により、接着固定材2で被覆されている部分と接着固定材2がない部分とが、光ファイバ1の長手方向で交互に配置される。このため、光ファイバユニット10の中間部で単心分離を行う場合には、接着固定材2のない部分で容易に分離作業を行うことができる。つまり、隣接する光ファイバ1同士を接着固定するための接着固定材2が光ファイバ1の長手方向に間欠的に設けられているため、中間分岐の作業性を改善することができる。
【0017】
ここで、接着固定材2は、並列した複数の光ファイバ1の長手方向に垂直に(つまり光ファイバ1の並列方向に平行に)当接・接着させてもよいが、後述する本発明に係る製造方法して製造上の利点を得るために、図1(A)で例示するように光ファイバ1の並列方向に対して斜めに当接・接着させる。
【0018】
接着固定材2の材料は、例えば、熱可塑性樹脂で形成された長尺の線状体を用いることができ、その場合、この長尺の線状体を複数の光ファイバ1に当接させた状態で加熱して溶融させ、その後、冷却して固化させ、その後、切断して短尺の線状体にすればよい。熱可塑性樹脂で形成された長尺線状体を用いれば、巻き付け後加熱するだけで溶融、接着させることができ、簡便な装置で製造できるため、製造設備費を低減することができる。
【0019】
また、接着固定材2の材料は、紫外線硬化樹脂を含浸させた繊維束で形成された長尺の線状体を用いることもできる。その場合、この長尺の線状体を複数の光ファイバ1に当接させた状態で紫外線を照射して硬化させ、その後、切断して短尺の線状体にすればよい。紫外線硬化樹脂を含浸させた繊維束を用いれば、巻き付け後紫外線を照射するだけで硬化、接着させることができるため、高線速化によって製造性を向上させることができる。
但し、接着固定材2の材料は、熱可塑性樹脂や紫外線硬化樹脂を含浸させた繊維束に限らず複数の光ファイバ1を接着により固定できるものであればよい。
【0020】
また、接着固定材2は、図1(B)の余剰部2aで例示するように、複数の光ファイバ1を並列させた幅(複数の光ファイバ1の列の幅)に対して、余剰をもって切断されている。無論、余剰部2aが無く、例えば、接着境界線2bの位置で切断されてもよいが、余剰部2aを持たせる方が次の点から好ましい。すなわち、余剰部2aをもたせることで、容易に且つ光ファイバ1を傷つけることなくに切断作業が可能になるうえに、その余剰部2aを指でつまむことができ、光ファイバユニット10を複数、光ケーブルに組み込んだ場合、多数の光ファイバユニット10の中から所望の光ファイバユニット10を選んで取り上げる作業が容易になり、作業性の向上に寄与することができる。
【0021】
図2で例示するように、本発明の製造方法で製造される光ファイバユニット集合体20は、上述した光ファイバユニット10を複数、並列に並べた集合体であって、それら複数の光ファイバユニット10に対して、隣接する複数の光ファイバユニット10同士を接着固定するための接着固定材3を具備させたものである。接着固定材3は、接着固定材2とは別の接着固定材であって、この接着固定材3により、複数の光ファイバユニット10全体が接着固定される。
【0022】
また、この例では、4心の光ファイバユニット10を5つ並列に並べて20心とした光ファイバユニット集合体20を挙げて説明する。しかし、光ファイバユニット10中の光ファイバ1の本数は複数であればよく、また光ファイバユニット集合体20中の光ファイバユニット10の数は複数であればよい。
なお、光ファイバユニット集合体20は、複数の光ファイバユニット10を複数の「光ファイバサブユニット」として並列に並べ、複数の「光ファイバサブユニット」全体を接着固定する接着固定材3を備えた「光ファイバユニット」であるとも言える。
【0023】
そして、接着固定材3は、接着性を有する長尺の線状体を、並列した複数の光ファイバユニット10の片面から当接させて接着させ、接着させた後に切断して短尺にしたものである。この接着固定材3は、光ファイバ1の長手方向(つまり光ファイバユニット10の長手方向)に間欠的に施されている。
【0024】
このような構成により、接着固定材3で被覆されている部分と接着固定材3がない部分とが、光ファイバユニット10の長手方向で交互に配置される。このため、光ファイバユニット集合体20の中間部で単心分離を行う場合には、接着固定材3のない部分で容易に分離作業を行うことができる。つまり、隣接する光ファイバユニット10同士を接着固定するための接着固定材3が光ファイバユニット10の長手方向に間欠的に設けられているため、中間分岐の作業性を改善することができる。
【0025】
ここで、接着固定材3は、並列した複数の光ファイバユニット10の長手方向に垂直に(つまり光ファイバユニット10の並列方向に平行に)当接・接着させてもよいが、後述する本発明に係る製造方法して製造上の利点を得るために、図2で例示するように光ファイバユニット10の並列方向に対して斜めに当接・接着させる。さらに、接着固定材3は、接着固定材2と識別可能で且つ別々に除去が可能なように、色、上記並列方向に対する設置の角度(施工角度)、設けるピッチ、のいずれか1又は複数を、接着固定材2と異ならせておけばよい。
【0026】
また、接着固定材3の材料は、接着固定材2の材料と同様に、熱可塑性樹脂や紫外線硬化樹脂を含浸させた繊維束などが挙げられるが、これに限らず複数の光ファイバユニット10を接着により固定できるものであればよい。
【0027】
また、接着固定材3は特に図示しないが、接着固定材2について図1(B)の余剰部2aで例示したのと同様に、複数の光ファイバユニット10を並列させた幅に対して、余剰をもって切断されている。無論、余剰部が無いように切断されてもよいが、余剰部を持たせる方が次の点から好ましい。すなわち、容易に且つ光ファイバユニット10における光ファイバ1を傷つけることなくに切断作業が可能になるうえに、その余剰部を指でつまむことができ、光ファイバユニット集合体20を複数、光ケーブルに組み込んだ場合、多数の光ファイバユニット集合体20の中から所望の光ファイバユニット集合体20を選んで取り上げる作業が容易になり、作業性の向上に寄与することができる。
【0028】
以上、光ファイバユニット及び光ファイバユニット集合体について説明したが、次に本発明に係るそれらの製造方法について説明する。
本発明に係る製造方法(以下、光ファイバユニット製造方法という)は、上述したような光ファイバユニットが製造できる方法であって、複数の光ファイバを円筒状の治具の周囲に配列させた状態で、接着固定材としての接着性を有する長尺線状体を、光ファイバの周囲に巻き付け、その状態で長尺線状体を光ファイバに接着させ、その後で所望する光ファイバの本数の間隔でその長尺線状体を切断する。この光ファイバユニット製造方法であれば、従来技術のように紫外線硬化樹脂を間欠的に塗布するといった制御が必要なく、連続的な動作で製造できるため、製造線速を上げることができ、製造性を向上させることができる。つまり、この光ファイバユニット製造方法によれば、複数の供給装置を高い位置決め精度で配置してオン・オフ制御を行う必要もなく、光ファイバの接着固定を高速に且つ安定して施すことができる。
【0029】
また、上述したような光ファイバユニット集合体であれば、上述の光ファイバユニット製造方法と同様の製造方法(以下、集合体製造方法という)を採用することができ、その製造過程においても、光ファイバユニット製造方法について説明したものと同様の効果が得られる。また、ここで製造される光ファイバユニット集合体によれば、光ファイバユニット集合体全体の光ファイバの心数を多くしても心線を特定するのが容易になることから、さらに中間分岐の作業性を向上させることができる。
【0030】
本発明に係る光ファイバユニット製造方法及び集合体製造方法について、並びに、光ファイバユニット製造方法を実現するための製造装置(以下、光ファイバユニット製造装置という)及び集合体製造方法を実現するための製造装置(以下、集合体製造装置という)について、図3〜図6を参照しながら具体的に説明する。
図3は、本発明による、光ファイバユニット集合体を製造するための製造装置の一構成例を示す図で、図4は、図3の集合体製造装置における各製造工程での製造物の断面の一例を示す図である。また、図5、図6は、図3の集合体製造装置で製造した光ファイバユニット集合体の例を示す図である。なお、図3及び図4においては、接着固定材2,3の材料である長尺線状体についても、それぞれ符号2,3で示している。
【0031】
図3で例示する集合体製造装置は、光ファイバユニット製造装置を備えた集合体製造装置であって、ファイバ整列治具41、それを保持するためのファイバ整列治具保持架台31a,31b、及び製造物である光ファイバユニット集合体20を巻き取るためのリール40a,40bを備え、複数の光ファイバ1を、例えば左方向から供給してリール40a,40bでの巻き取りにより進行方向に引っ張りながら、ファイバ整列治具41の周りに光ファイバ1を配設していく。そして、光ファイバ1を所定本数毎に一体化して光ファイバユニット10を複数製造し、それら複数の光ファイバユニット10を、さらに一体化した光ファイバユニット集合体20を複数製造する。
【0032】
図3及び図4の例では、上記光ファイバユニット製造装置の構成要素として、ファイバ整列治具41、ファイバ整列治具保持架台31a,31b、及びリール40a,40bに加え、集線装置32、第一巻き付け装置33、第一接着装置34、及び第一切断装置35を有する。なお、ファイバ整列治具41、ファイバ整列治具保持架台31a,31b、集線装置32、及びリール40a,40bは、光ファイバ1の一体化だけでなく、光ファイバユニット10の一体化のためにも用いられている。
【0033】
ファイバ整列治具41は、その両端をファイバ整列治具保持架台31a,31bにより固定されて、支持される。集線装置32は、次の第一整列装置を兼ねる。第一整列装置は、複数の光ファイバ1を円筒状の治具(略円筒形の治具であればよく、以下、略円筒形治具という)の周囲に互いに平行に整列させる装置である。そして、この略円筒形治具の一例が、光ファイバユニット製造装置における内筒に該当するファイバ整列治具41である。リール40a,40bは、製造物である光ファイバユニット集合体20を進行方向に引っ張って巻き取る。
【0034】
ファイバ整列治具41の表面には内筒の長手方向に沿って凸部42が複数形成されており、これら凸部42により複数の溝43が形成されている。溝43の数が、この光ファイバユニット製造装置(ここでは集合体製造装置)で一度に製造される光ファイバユニット10の数となる。さらに、集線装置32は、ファイバ整列治具41の長手方向の始端側の周囲に配設された、光ファイバ1を押さえるためのファイバ押さえ治具32aを有する。集線装置32は、このような構造により、同時に供給された複数の光ファイバ1(この例では40本の光ファイバ1)を単位数(この例では4本)毎に溝43とファイバ押さえ治具32aとで嵌め込み、移送する。
【0035】
第一巻き付け装置33は、上述のようにして複数の光ファイバ1を整列させた略円筒形治具(ファイバ整列治具41で例示)の周囲に、接着性を有する長尺線状体をらせん状に巻き付ける装置である。第一巻き付け装置33は、ファイバ整列治具41の長手方向に垂直な面内で、つまり光ファイバ1の進行方向に垂直な面内で、ファイバ整列治具41の長手方向の軸を中心として回転(例えば図示する方向で回転)することで、その周囲に長尺線状体である接着固定材2の材料を粗く巻き付ける。光ファイバ1を含む製造物はリール40a,40bにより進行方向に引っ張られているため、この接着固定材2の材料は光ファイバ1と当接しながら、らせん状に巻き付けられることになる。
【0036】
第一接着装置34は、接着固定材2に係る長尺線状体を光ファイバ1に接着させる装置である。第一接着装置34は、光ファイバ1への接着固定材2の当接・固定を行うが、接着固定材2の材料が熱可塑性樹脂で形成された長尺線状体である場合と紫外線硬化樹脂を含浸させた繊維束の長尺線状体である場合とで、その構成も異なる。
【0037】
接着固定材2の材料が熱可塑性樹脂で形成された長尺線状体である場合、第一接着装置34は、その長尺線状体を複数の光ファイバ1に当接させた状態で、加熱して溶融させ、その後、冷却して固化させる装置となる。このようにして接着を行う場合、第一接着装置34には少なくとも加熱装置及び冷却装置が設けられる。
【0038】
接着固定材2の材料が紫外線硬化樹脂を含浸させた繊維束である長尺線状体である場合、第一接着装置34は、その長尺線状体を複数の光ファイバに当接させた状態で、紫外線を照射して硬化させる装置となる。このようにして接着を行う場合、第一接着装置34には少なくとも紫外線照射装置が設けられる。
なお、接着固定材2の材料としてこれら以外の材料を採用した場合にはその材料に応じた機能をもった第一接着装置を採用すればよい。
【0039】
第一切断装置35は、長尺線状体である接着固定材2の材料を所定の間隔で切断する装置である。第一切断装置35は、ファイバ整列治具41の長手方向の一部分の周囲に配設された切断刃35aを備える。切断刃35aは、光ファイバユニット10毎の境に相当する、同一面上の凸部42の中央位置に対応するように設けられている。
【0040】
上記所定の間隔とは、光ファイバユニット10に収容したい光ファイバ1の本数を過不足なく収容する間隔(正確には、収容したい本数の幅そのもので決まる間隔ではなく、図1(B)でいうところの接着境界線2b間の幅で決まる間隔)であればよい。図4の例では、接着固定材2に係る長尺線状体を、複数の光ファイバを並列させた幅に対して、余剰をもって切断しており、そのような切断方法を採用することが好ましい。
【0041】
切断刃35aは、接着固定材2の材料を上記所定の間隔で切断するための刃であり、同一面状に1又は複数箇所設けられていればよい。1箇所設けた場合には上記所定の間隔は一巻きの長さとなる。切断刃35aを複数箇所設ける場合には、同じ間隔で設けてもよいし、異なる間隔で設けてもよい。
【0042】
切断刃35aを同じ間隔で設けることは、ファイバ整列治具41の外周に配された所定本数の光ファイバ1を均等に分けることを意味するため、同じ数の光ファイバ1を有する光ファイバユニット10が複数製造できる。図4の例では、10箇所に均等に切断刃35aが設けられているため、この集合体製造装置では一度に4心の光ファイバユニット10が10本製造できる。
【0043】
また、切断刃35aを異なる間隔で設けることは、ファイバ整列治具41の外周に配された所定本数の光ファイバ1を異なる本数で分けることを意味する。従って、このような構成を採用することで、一つの光ファイバユニット製造装置で異なる心数の光ファイバ1を有する光ファイバユニット10を同時に製造することができる。
【0044】
集線装置32は、次の第二整列装置も兼ねる。この第二整列装置は、複数の光ファイバユニット10を、上記略円筒形治具(ファイバ整列治具41で例示)の周囲に互いに平行に整列させる装置である。集線装置32やファイバ整列治具41については上述した通りである。カバー36は、第一切断装置35と第二巻き付け装置37による粗巻き位置との間で光ファイバを埃などから保護するための治具であり、このカバー36は設けなくてもよい。
【0045】
第二巻き付け装置37は、上述のようにして複数の光ファイバユニット10を整列させたファイバ整列治具41の周囲に、接着固定材3に係る接着性を有する長尺線状体をらせん状に巻き付ける装置である。第二巻き付け装置37は、ファイバ整列治具41の長手方向に垂直な面内で、つまり光ファイバ1の進行方向に垂直な面内で、ファイバ整列治具41の長手方向の軸を中心として回転(例えば図示する方向で回転)することで、その周囲に長尺線状体である接着固定材3の材料を粗く巻き付ける。光ファイバユニット10を含む製造物はリール40a,40bにより進行方向に引っ張られているため、この接着固定材3の材料は光ファイバ1や接着固定材2と当接しながら、らせん状に巻き付けられることになる。
【0046】
第二接着装置38は、接着固定材3に係る長尺線状体を光ファイバに接着させる装置である。第二接着装置38は、光ファイバユニット10への接着固定材3の当接・固定を行うが、接着固定材3の材料が熱可塑性樹脂で形成された長尺線状体である場合と紫外線硬化樹脂を含浸させた繊維束の長尺線状体である場合とで、その構成も異なる。その構成については、第一接着装置34について説明したものと同様であり、その説明を省略する。また、接着固定材3の材料としてこれら以外の材料を採用した場合には採用した材料に応じた第二接着装置を採用すればよい。
【0047】
第二切断装置39は、長尺線状体である接着固定材3の材料を別の所定の間隔で切断する装置である。第二切断装置39は、ファイバ整列治具41の長手方向の一部分の周囲に配設された切断刃39aを備える。切断刃39aは、光ファイバユニット10毎の境に相当する、同一面上の凸部42の中央位置のうち、2箇所に対応するように設けられている。
【0048】
上記別の所定の間隔とは、光ファイバユニット集合体20に含めたい光ファイバユニット10のユニット数を過不足なく収容する間隔(正確には、含めたいユニット数の幅そのもので決まる間隔ではなく、図1(B)でいうところの接着境界線2b間の幅で決まる間隔)であればよい。図4の例では、接着固定材3に係る長尺線状体を、複数の光ファイバユニット10を並列させた幅に対して、余剰をもって切断しており、そのような切断方法を採用することが好ましい。
【0049】
切断刃39aは、接着固定材3の材料を上記別の所定の間隔で切断するための刃であり、同一面状に1又は複数箇所設けられていればよい。1箇所設けた場合には上記別の所定の間隔は一巻きの長さとなる。切断刃39aを複数箇所設ける場合には、同じ間隔で設けてもよいし、異なる間隔で設けてもよい。なお、上記別の所定の間隔によっては、接着固定材3の材料だけでなく接着固定材2の材料も切断刃39aによって切断されることがあるが、基本的に接着固定材3のみが切断されるような間隔を採用すればよい。
【0050】
切断刃39aを同じ間隔で設けることは、ファイバ整列治具41の外周に配された所定ユニット数の光ファイバユニット10を均等に分けることを意味するため、同じ数の光ファイバユニット10を有する光ファイバユニット集合体20が複数製造できる。図4の例では、2箇所に均等に切断刃39aが設けられているため、この集合体製造装置では一度に同じ2つの光ファイバユニット集合体20が製造できる。
【0051】
また、切断刃39aを異なる間隔で設けることは、ファイバ整列治具41の外周に配された所定ユニット数の光ファイバユニット10を異なるユニット数で分けることを意味する。従って、このような構成を採用することで、一つの集合体製造装置で異なるユニット数の光ファイバユニット10を有する光ファイバユニット集合体20を同時に製造することができる。
【0052】
図5で例示する光ファイバユニット集合体は、図3及び図4で説明した集合体製造装置で一度に製造した2つの光ファイバユニット集合体20を示しており、第一粗巻きである接着固定材2と第二粗巻きである接着固定材3とが同方向巻きとなっている例を示している。一方で、図3及び図4で説明した集合体製造装置において、第二巻き付け装置37の配置を巻き位置より集合体進行方向側から供給するように変更することで、図6で例示する2つの光ファイバユニット集合体20のように、第一粗巻きである接着固定材2と第二粗巻きである接着固定材3とを逆方向巻きにすることができる。
【0053】
無論、図3及び図4で説明した集合体製造装置において、第一巻き付け装置33の配置を巻き位置より集合体進行方向側から供給するように変更してもよいし、第一巻き付け装置33の配置及び第二巻き付け装置37の配置を双方、巻き位置より集合体進行方向側から供給するように変更してもよい。
【0054】
なお、図4〜図6の例では10本の光ファイバユニット10を同時に製造する例を挙げたが、同時に製造する数は1つであってもまた10以外の複数の数であってもよい。また、同図では、5つの光ファイバユニット10からなる光ファイバユニット集合体20を2つ同時に製造してリール40a,40bでそれぞれを巻き取る例を挙げたが、同時に製造する光ファイバユニット集合体20の数は1つであってもまた3以上の数であってもよく、光ファイバユニット集合体20に含まれる光ファイバユニット10の数も2以上であればよい。
【0055】
以上、本発明に関し、光ファイバユニットや光ファイバユニット集合体について説明したが、光ファイバユニット10や光ファイバユニット集合体20は、図示しないが、光ケーブル内に設けることで、多心の光ケーブルとすることができる。より具体的には、この光ケーブルは、テンションメンバを中心に有するスペーサを有する。そして、このスペーサには複数の溝が設けられており、これらの溝のそれぞれに、図1で例示した光ファイバユニット10もしくは図2で例示した光ファイバユニット集合体20が収容されることになる。そして、スペーサの外周には、押さえ巻きが巻き付けられ、その外周に外被が被覆される。このような構造により、多心の光ケーブルが形成できる。
【0056】
また、以上の例では、光ファイバユニット10/光ファイバユニット集合体20における接着固定材2や接着固定材3は、光ファイバ1/光ファイバユニット10が並列してなる片面(光ファイバユニット10/光ファイバユニット集合体20の一面側)のみに接着させているが、もう片方にも施すように、つまり両面側に施すようにしてもよい。但し、図3及び図4で説明したような本発明に係る製造方法や製造装置は、基本的には片面についてしか採用できず、もう片面については別途接着固定させる必要が生じる。また、この場合、両面に線状体を接着した後に双方から施した線状体を同時に切断するようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
1…光ファイバ、2,3…接着固定材(長尺線状体)、2a…余剰部、2b…接着境界線、10…光ファイバユニット、20…光ファイバユニット集合体、31a,31b…ファイバ整列治具保持架台、32…集線装置、32a…ファイバ押さえ治具、33…第一粗巻きヘッド、34…第一粗巻き硬化装置、35…第一粗巻き切断装置、35a…粗巻き切断刃、36…整列治具、37…第二粗巻きヘッド、38…第二粗巻き硬化装置、39…第二粗巻き切断装置、39a…粗巻き切断刃、41…ファイバ整列治具、42…凸部、43…溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバを並列させて一体化させた光ファイバユニットを製造する製造方法であって、
複数の光ファイバを円筒状の治具の周囲に互いに平行に整列させる工程と、
前記複数の光ファイバを整列後の前記円筒状の治具の周囲に、接着性を有する長尺線状体をらせん状に巻き付ける工程と、
前記長尺線状体を前記光ファイバに接着させる接着工程と、
前記長尺線状体を所定の間隔で切断する切断工程と、
を有することを特徴とする光ファイバユニットの製造方法。
【請求項2】
前記長尺線状体は、熱可塑性樹脂で形成されており、
前記接着工程は、前記長尺線状体を前記複数の光ファイバに当接させた状態で加熱して溶融させ、その後、冷却して固化させる工程であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバユニットの製造方法。
【請求項3】
前記長尺線状体は、紫外線硬化樹脂を含浸させた繊維束であり、
前記接着工程は、前記長尺線状体を前記複数の光ファイバに当接させた状態で紫外線を照射して硬化させる工程であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバユニットの製造方法。
【請求項4】
前記切断工程は、前記長尺線状体を、前記複数の光ファイバを並列させた幅に対して、余剰をもって切断することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバユニットの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバユニットの製造方法を有し、前記光ファイバユニットを複数並列させて一体化させた光ファイバユニット集合体を製造する製造方法であって、
複数の前記光ファイバユニットを、前記円筒状の治具の周囲に互いに平行に整列させる工程と、
前記複数の光ファイバユニットを整列後の前記円筒状の治具の周囲に、接着性を有する別の長尺線状体をらせん状に巻き付ける工程と、
前記別の長尺線状体を前記光ファイバに接着させる工程と、
前記別の長尺線状体を別の所定の間隔で切断する工程と、
を有することを特徴とする光ファイバユニット集合体の製造方法。
【請求項6】
複数の光ファイバを並列させて一体化させた光ファイバユニットを製造する製造装置であって、
複数の光ファイバを円筒状の治具の周囲に互いに平行に整列させる装置と、
前記複数の光ファイバを整列後の前記円筒状の治具の周囲に、接着性を有する長尺線状体をらせん状に巻き付ける装置と、
前記長尺線状体を前記光ファイバに接着させる接着装置と、
前記長尺線状体を所定の間隔で切断する切断装置と、
有することを特徴とする光ファイバユニットの製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光ファイバユニットの製造装置を備え、前記光ファイバユニットを複数並列させて一体化させた光ファイバユニット集合体を製造する製造装置であって、
複数の前記光ファイバユニットを、前記円筒状の治具の周囲に互いに平行に整列させる装置と、
前記複数の光ファイバユニットを整列後の前記円筒状の治具の周囲に、接着性を有する別の長尺線状体をらせん状に巻き付ける装置と、
前記別の長尺線状体を前記光ファイバに接着させる装置と、
前記別の長尺線状体を別の所定の間隔で切断する装置と、
を備えたことを特徴とする光ファイバユニット集合体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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