説明

光ファイバ上に屈曲波を励起するアクチュエータ

【課題】
光ファイバ(102)上に屈曲波を励起するシステムを提供する。
【解決手段】
システムは、基板(114、118)、アクチュエータ(106)、及び機械的光ファイバ結合材(104)を有する。アクチュエータは電気機械トランスデューサ材料で形成され、基板に搭載されている。機械的光ファイバ結合材(例えば、接着性媒体)はアクチュエータと光ファイバとの間に固定的な機械的接続を形成する。この機械的光ファイバ結合材はアクチュエータから光ファイバに機械的振動を伝えるように構成されている。しかしながら、この機械的光ファイバ結合材はテーパー状のホーンを含んでいない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音響光学デバイスに関し、より具体的には、光ファイバ上に屈曲波を励起するアクチュエータを有する音響光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
音響屈曲波を用いる数多くの種類の光ファイバデバイスが技術的に知られている。このようなデバイスには、光スイッチ、音響光学帯域通過フィルタ、音響光学帯域阻止フィルタ、可調光ファイバ結合器、光ファイバ周波数シフター、及び光ファイバ偏光アナライザが含まれる。これらのデバイスは、典型的に、光ファイバのモード間で光を結合させるために音響屈曲波を用いている。光ファイバデバイスの動作は、しばしば、屈曲波の周波数を広い周波数範囲で同調させることによって調整されている。
【0003】
特許文献1に全ファイバ型音響光学可変フィルタが記載されている。音響光学可変フィルタは音響波の生成と、この音響波を光ファイバ上の屈曲波に結合させることとを必要とする。これは、圧電アクチュエータと、光ファイバと同軸のホーン(horn)とを用いて実現される。圧電アクチュエータは、予め選択された周波数成分を有する電気信号が印加されると音響振動を生成する。ホーンは圧電アクチュエータと光ファイバとの間に配置される。これに関連し、ホーンは音響振動(又はその増幅された振動)を光ファイバへと伝達する。実質的に、音響波は光ファイバの一部にそって伝播する。
【0004】
先述のシステムにおいては、アクチュエータと光ファイバとの間に置かれたホーンは特定の機能を果たす。具体的には、ホーンは生成された屈曲音響波をその伝播方向へと導く。ホーンはまた、生成された屈曲音響波を所定の位置に集中させることによって屈曲音響波の振幅を増大させる。通常、この所定の位置はホーンの先端である。
【0005】
上述の構成はその利点をよそに、ある欠点に悩まされる。例えば、光ファイバデバイスは定められた入力信号周波数で動作するように設計されている。そのようなものとして、ホーン構造の機械的共振周波数が励起周波数(すなわち、固有の圧電効果を誘起させるためにアクチュエータに印加される電気信号の周波数)の関数としてアクチュエータの圧電効率を大きく揺動させる。その結果、光ファイバデバイスの音響又は光学応答を用いた励起周波数の連続的な同調は実現が困難であった。また、圧電アクチュエータはその温度変動によって影響を受け、その性能特性は不安定、且つ/或いは予測不可能になる。さらに、アクチュエータの大きさ及びホーンの大きさは、典型的に、光ファイバの断面サイズより遙かに大きい。これに関連し、光ファイバデバイスの小型化はアクチュエータ−ホーン構成によって制限されてしまっていた。
【0006】
上述の点から、入力信号周波数の範囲全体で動作するように設計された音響光学デバイスが望まれる。音響光学デバイスは、光ファイバデバイスの音響又は光学応答への圧電アクチュエータ励起周波数の連続的な同調を提供する必要がある。また、広い温度範囲にわたって安定且つ予測可能な性能特性を有する音響光学デバイスが望まれる。さらに、小型化が可能な音響光学デバイスが望まれる。
【特許文献1】米国特許第6021237号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光ファイバ上に屈曲波を励起するシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシステムは、基板、アクチュエータ、及び機械的光ファイバ結合材を有する。アクチュエータは例えば圧電材料、電歪材料、及び磁歪材料などの電気機械トランスデューサ材料で形成されている。このアクチュエータは基板に搭載されている。機械的光ファイバ結合材(例えば、接着性媒体)はアクチュエータと1つ又は複数の光ファイバとの間に固定的な機械的接続を形成する。この機械的光ファイバ結合材はアクチュエータから光ファイバに機械的振動を伝えるように構成されている。しかしながら、この機械的光ファイバ結合材はテーパー状のホーンを含んでいないことは理解されるべきである。
【0009】
本発明の一態様に従って、アクチュエータは基板に固定された第1の端面を有している。アクチュエータはまた光ファイバに固定された第2の端面を有している。トランスデューサ材料の上記第1及び第2の端面との電気的接続を形成する1つ以上の導電体が設けられている。これら導電体は、エネルギー刺激を用いてトランスデューサ材料を励起するために使用される。例えば、エネルギー刺激は所望の周波数の電気信号とすることができる。
【0010】
当該システムはまた、アクチュエータと基板との間に配置された接合媒体を有している。この接合媒体は、はんだ又は接着剤とすることができる。はんだが使用される場合、はんだはアクチュエータによって生成された振動を基板へと伝達する。接着剤が使用される場合、導電性接着剤、エネルギー吸収材料、及び/又はエネルギー反射材料がこの目的で選択され得る。エネルギー反射材料が使用される場合、この材料は有利には、音響エネルギーがこの材料を介して基板に伝播しないように、アクチュエータに対して十分に異なる機械的インピーダンスを有する軟らかい材料で形成される。エネルギー吸収又は反射材料はアクチュエータによって生成される振動から基板を分離するように構成される。エネルギー反射材料は、音響エネルギーが該エネルギー反射材料を介して基板に伝播しないように、トランスデューサ材料とは十分に異なるインピーダンスを有する軟らかい材料として構成される。
【0011】
上記の接合媒体としてはんだが使用される場合、当該システムは更に、例えばタングステン充填エポキシ等のダンピング材料を有する。ダンピング材料は、基板に自然に備わった振動周波数での基板の運動を抑制する。本発明の一実施形態によれば、ダンピング材料は、多層基板の一部として基板の少なくとも一部に組み込まれ、あるいは基板の少なくとも一部内に埋め込まれる。本発明の他の一実施形態によれば、ダンピング材料は少なくともアクチュエータの周囲を囲むように基板上に配置される。本発明の更に他の一実施形態によれば、ダンピング材料はアクチュエータの1つ以上の表面に接触するように基板上に配置される。
【0012】
本発明の他の一態様に従って、アクチュエータの機械的共振周波数は、当該システムが励起するように設計された屈曲波の所定範囲の周波数を含まない。アクチュエータは、故に、典型的に1つ又は複数の比較的低い周波数でのアクチュエータの機械的共振の間の周波数帯域、又は最も低い周波数でのアクチュエータの機械的共振より低い周波数帯域で動作する。本発明の更に他の一態様に従って、アクチュエータの少なくとも1つの機械的共振周波数は、屈曲波の上記の所定範囲の周波数と周波数的に少なくとも1オクターブ異なる。本発明の他の一態様に従って、アクチュエータは、当該システムが励起するように設計された屈曲波の所定周波数に等しい機械的共振周波数を有する。
【0013】
本発明はまた、光ファイバに屈曲波を励起する方法を含む。当該方法は、基板上に搭載されたアクチュエータを用い、電気機械トランスデューサ材料を励起することによって機械的振動を生成することを含む。電気機械トランスデューサ材料は、圧電材料、電歪材料、及び磁歪材料から成るグループから選択される。当該方法はまた、テーパー状ホーンを含まない機械的光ファイバ結合材(例えば、接着性媒体)を介して機械的振動を光ファイバに伝えることによって、光ファイバ上に屈曲波を形成することを含む。
【0014】
本発明の一態様に従って、当該方法はアクチュエータの第1の端面を基板に固定することを含む。導電性接着剤、エネルギー吸収材料、及び/又はエネルギー反射材料がこの目的で使用され得る。エネルギー吸収材料はアクチュエータによって生成される振動から基板を分離するように構成される。エネルギー反射材料は、音響エネルギーが該エネルギー反射材料を介して基板に伝播しないように、トランスデューサ材料とは十分に異なるインピーダンスを有する軟らかい材料として構成される。アクチュエータの第2の端面が光ファイバに固定される。接着剤がこの目的で使用され得る。
【0015】
トランスデューサ材料の上記の第1及び第2の端面との電気的接続が形成される。例えば、第1の端面は基板上に配置された第1の導電性配線にはんだで結合される。第2の端面は基板上に配置された第2の導電性配線にワイヤ接合で結合される。第1及び第2の導電性配線は外部ソースに電気的に結合される。例えば、交流信号源がこの目的で使用され得る。交流信号源はトランスデューサ材料を固有の周波数で励起する励起信号を生成するために使用される。トランスデューサ材料の機械的振動は1つ又は複数の光ファイバに伝えられる。
【0016】
アクチュエータの第1の端面と第1の導電性配線との間の電気的接続を形成するために硬い材料(例えば、はんだ等)が使用される場合、当該方法は更に、ダンピング材料(例えば、タングステン充填エポキシ)を基板に配置することを含む。本発明の一実施形態によれば、ダンピング材料は、多層基板の一部として基板に組み込まれ、あるいは基板の少なくとも一部内に埋め込まれる。本発明の他の一実施形態によれば、ダンピング材料は少なくともアクチュエータの周囲を囲むように基板上に配置される。本発明の更に他の一実施形態によれば、ダンピング材料はアクチュエータの1つ以上の表面に接触するように基板上に配置される。
【0017】
本発明の他の一態様に従って、当該方法は、アクチュエータの機械的共振周波数を、システムが励起するように設計された屈曲波の所定範囲の周波数を含まないように選択することを含む。なお、この段階は、システムが励起するように設計された屈曲波の所定範囲の周波数を含まない機械的共振周波数をもたらすように、アクチュエータの大きさ及び形状を選定することを伴う。アクチュエータは、故に、典型的に1つ又は複数の比較的低い周波数でのアクチュエータの機械的共振の間の周波数帯域、又は最も低い周波数でのアクチュエータの機械的共振より低い周波数帯域で動作する。本発明の更に他の一態様に従って、当該方法は、アクチュエータの少なくとも1つの比較的低い、あるいは最も低い機械的共振周波数を、屈曲波の上記所定範囲の周波数より周波数的に少なくとも1オクターブ高くなるように選択することを含む。本発明の他の一態様に従って、当該方法は、アクチュエータの機械的共振周波数を、システムが励起するように設計された屈曲波の所定周波数に等しく選択することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図面においては、全体を通して、似通った参照符号は似通った要素を表している。
【0019】
図1は光ファイバデバイス100の上面図を示している。図2は、図1の直線2−2で取られた光ファイバデバイス100の断面図を示している。光ファイバデバイス100は、光ファイバ102、機械的光ファイバ結合材104、アクチュエータ106、接合媒体108、及び基板120を有している。光ファイバ102は、ガラス光ファイバ、プラスチック光ファイバ、及び/又は石英光ファイバから成る。ガラス光ファイバは、シリカガラス、フルオロジルコン酸塩ガラス、フルオロアルミン酸塩ガラス、カルコゲナイドガラス、及び/又は技術的に知られた他の好適なガラスで形成され得る。プラスチック光ファイバは、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)ポリマー等の、透明なプラスチック材料で形成され得る。光ファイバ102が具体的な光ファイバデバイス100の用途に従って選択されることは認識されるべきである。例えば、帯域通過フィルタ用途、帯域阻止フィルタ用途、可変結合器用途、及び/又は波長選択式スイッチ用途には相異なる種類の光ファイバが使用され得る。ここでは光ファイバ102は単一の光ファイバとして説明されている。しかしながら、本発明はこの点で限定されるものではない。光ファイバ102は、実際には、ファイバアレイとして構成された複数の光ファイバを有することができる。光ファイバは当業者に周知である。故に、ここでは光ファイバについて詳細には説明しないこととする。
【0020】
少なくとも1つの光ファイバ102が、機械的光ファイバ結合材104を用いてアクチュエータ106に機械的に固定されている。機械的光ファイバ結合材104は、この機能を果たすことが可能な如何なる好適材料から成っていてもよい。好適な一実施形態に従って、光ファイバ102をアクチュエータに固定するために接着性の媒体が使用される。このような接着性媒体は、天然接着剤、合成接着剤、及び/又は技術的に広く使用されている他の如何なる接着剤をも含む。合成接着剤は、エポキシベースの接着剤、ポリエステルベースの接着剤、及び/又はウレタンベースの接着剤を含む。なお、当業者に認識されるように、機械的光ファイバ結合材は様々な代替構成を有することが可能である。例えば、小型の機械的ラッチング構造が光ファイバをアクチュエータ106上の適所にしっかりと固定するために使用可能である。機械的光ファイバ結合材104はアクチュエータ106から光ファイバ102に機械的振動を伝えるように構成される。しかしながら、機械的光ファイバ結合材104はホーン又はホーンのような構造の使用を回避するように構成されることは理解されるべきである。以下にてより詳細に説明されるように、上記の従来のホーン構造の必要性は、アクチュエータ106の機械的インピーダンスを選択的に制御することによって有利に排除される。
【0021】
アクチュエータ106は光ファイバ102内に屈曲波を生成するデバイスである。例えば、アクチュエータ106は、無線周波数(RF)信号が印加されると機械的振動を生成する材料から成る。機械的振動は機械的光ファイバ結合材104によって光ファイバ102に伝達される。その結果、屈曲波は光ファイバ102の長手方向軸に沿って伝播することになる。アクチュエータ106はまた機械的振動を電気信号に変換可能であることは認識されるべきである。
【0022】
本発明の一態様に従って、アクチュエータ106は何らかの電気機械材料で形成される。ここでは、電気機械材料という用語は、エネルギー刺激に応答して機械的な振動、屈曲又は発振を生成することが可能な任意の材料を称するものである。上記エネルギー刺激の例は、これらに限定されないが、印加された電界及び磁界を含む。例えば、圧電材料はアクチュエータ106を形成するために使用され得る電気機械材料である。圧電材料は印加された交流電気信号を、ここで説明されるように機械的振動へと変換することになる。これに関連し、アクチュエータ106は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛(PbTiO2)及び/又はチタン酸バリウム(BaTiO3)等の圧電材料を有し得る。アクチュエータ106はまた、例えばチタン酸ニオブ酸鉛マグネシウム(PMN−PT)及び/又はチタン酸ニオブ酸鉛ニッケル(PNN−PT)等の電歪材料を有し得る。アクチュエータ106は更に、例えばETREMAプロダクト社によって製造されているTerfenol−D(登録商標)といった磁歪材料を有し得る。
【0023】
アクチュエータ106の大きさは光ファイバデバイス100の特定の用途に従って選択される。例えば、アクチュエータ106は、光ファイバデバイス100が励起するように設計された所定範囲の屈曲波周波数に対して、それらを含まない機械的共振周波数を生じさせる物理的大きさ及び幾何学設計を有する電気機械トランスデューサ材料を有し得る。このアクチュエータは、故に、1つ又は複数の比較的低い周波数でのアクチュエータの機械的共振を除いた、あるいは最も低い周波数でのアクチュエータの機械的共振より低い、隙間又は周波数帯域で動作することができる。
【0024】
一実施形態に従って、アクチュエータ106は、光ファイバデバイス100が励起するように設計された所定範囲の屈曲波周波数に対して、それらより少なくとも1オクターブ高い周波数に機械的共振モードを生じさせるように選択された大きさ及び幾何学設計を有する電気機械トランスデューサ材料を有し得る。本発明の他の一態様に従って、アクチュエータ106は更に、光ファイバデバイス100が励起するように設計された屈曲波の所定周波数に対して、それにほぼ等しい機械的共振周波数を有する電気機械トランスデューサ材料を有し得る。
【0025】
アクチュエータ106の大きさは有限要素モデル化プログラムを用いて決定可能であることは理解されるべきである。例えば、電気機械トランスデューサ材料の機械的インピーダンスは構造パラメータ及び機械的特性の関数である。この構造パラメータは、トランスデューサ材料の質量、剛性、長さ、幅、及び高さを含む。この機械的特性は、印加無線周波数電圧に応じた材料の変位を含む。同様に、光ファイバ102の機械的インピーダンスは構造パラメータ及び機械的特性の関数である。有限要素モデル化プログラムは、アクチュエータ106及び光ファイバ102の理論的な機械的インピーダンスを特定のパラメータを用いて計算することができる。結果として、光ファイバデバイス100は最適な電気機械効率に設計されることが可能である。有限要素モデル化プログラムは当業者に周知である。故に、ここでは、このプログラムについては詳細に説明しないこととする。しかしながら、理解されるように、モデル化されるアクチュエータの様々な構造パラメータ及び機械的特性は、所望の機械的共振周波数及び機械的インピーダンスが得られるまで選択的に変化させられ得る。
【0026】
図1及び2を参照するに、アクチュエータ106は好適な何らかの接合媒体108を用いて基板120上に搭載されている。この接合媒体は、硬い接合媒体、軟らかい接合媒体、エネルギー吸収材料、及び/又はエネルギー反射材料を含む。硬い接合媒体は、例えば錫−鉛はんだ合金、錫−銀はんだ合金、錫−銀−銅はんだ合金、及び/又は技術的に知られた他の何らかの好適な導電性合金などの、可溶性のはんだ付け合金を含む。軟らかい接合媒体は接着剤を含む。例えば、導電性接着剤がこの目的で使用可能である。導電性接着剤は技術的に周知であり、導電性シリコーン接着剤、導電性ウレタン接着剤、銀ベースの接着剤、ニッケルベースの接着剤、及び/又は金ベースの接着剤を含み得る。当業者に認識されるように、接合媒体はエネルギー吸収材料又はエネルギー反射材料から形成されていてもよい。エネルギー吸収材料は、アクチュエータ106の振動を基板120から分離するように有利に構成され得る。エネルギー吸収材料は、アクチュエータ106によって生成される振動から基板を分離するように構成される技術的に知られた如何なる接合媒体をも含む。エネルギー吸収材料は、有利には、それ自体とアクチュエータとの間に良好な機械的インピーダンス整合をもたらすように選択され、それにより、振動エネルギーは下方にエネルギー吸収材料へと伝達されて熱として消散される。エネルギー反射材料は、音響エネルギーがエネルギー反射材料を通じて基板へと伝播しないように、アクチュエータ材料に対して十分に異なるインピーダンスを有する材料として構成され得る。エネルギー反射材料は、有利には、アクチュエータと基板との間に乏しい機械的インピーダンス整合をもたらすように選択され、それにより、振動エネルギーは下方に基板へと伝達されず、且つ基板からの振動エネルギーは上方にアクチュエータへと伝達されない。
【0027】
基板120は、アクチュエータ106の機械的支持を提供するのに好適な材料から成る1つ又は複数の層を有する。図2に示された本発明の一実施形態によれば、基板120は第1の層114及び第2の層118を有している。第1の層114は非導電性基板から成る。この非導電性基板は、アルミナセラミック基板、ジルコニアセラミック基板、ジルコニア強化アルミナセラミック基板、及び/又は他の何らかの好適な非導電性基板を含む。本発明の一態様に従って、第1の層114は有利には、アクチュエータ106のトランスデューサ材料の音響インピーダンスを音響インピーダンス整合することを含むように選択される。第1の層114とアクチュエータ106との間の音響インピーダンスの不整合は、アクチュエーション周波数へのトランスデューサ材料の応答に影響を及ぼし得ることは認識されるべきである。例えば、第1の層114とアクチュエータ106との間に音響インピーダンスの不整合が存在する場合、第1の層114とアクチュエータ106との界面で音響反射が発生し得る。
【0028】
本発明の一実施形態に従って、第1の層114は有利には、その上に配置された1つ又は複数の導電性配線110、112を有する。導電性配線110、112は、例えば金、銅、及び/又はニッケル等の導電性材料で形成される。各導電性配線110、112はアクチュエータ106と例えば電源などの外部システムとの間の接続手段を提供する。導電性配線110、112は、例えば物理的エッチング法又はスパッタエッチング法などの、技術的に広く使用されている如何なる方法によっても形成されることができる。
【0029】
図1及び2に示されるように、導電性配線110は上述の接合媒体108を用いてアクチュエータ106の第1の端面126に結合されている。これに関連し、導電性配線110と第1の端面126との間に電気的接続が形成されている。さらに、導電性配線112と第2の端面124との間の電気的接続を形成するためにリードワイヤ122が設けられている。これに関連し、リードワイヤ122は、例えば、はんだ、導電性接着剤、及び/又はワイヤ接合などの好適な任意の導電性接合媒体を用いて、導電性配線112とアクチュエータ106とに電気的に結合されている。図示されていないが、無線周波数信号がアクチュエータ106に印加され得るように、各導電性配線110、112は外部装置(例えば、電源)に電気的に結合されていることは認識されるべきである。印加される無線周波数信号の周波数範囲の典型例は、100kHzから10MHzを含む。印加される信号の大きさは、アクチュエータ材料の特性に加え、多様な要因に依存することになる。このような要因は、電源がアクチュエータ106に電気的にインピーダンス整合される手法、駆動回路の電気抵抗、アクチュエータ106が光ファイバ102に機械的にインピーダンス整合される程度、その用途に要求される光ファイバ102内の屈曲波の振幅、光ファイバ102の直径(マルチファイバデバイスの場合の光ファイバ群の直径群)、及び光ファイバ102(又は、マルチファイバデバイスの場合の光ファイバ群)の剛性を含み得る。
【0030】
本発明の一実施形態に従って、入力信号の振幅は0.5Vから15Vである。しかしながら、この振幅はPZTベースの化合物で形成されたアクチュエータ106を有する一実施形態に従ったものである。この点で、入力信号の大きさはアクチュエータ106を形成するために使用される電気機械材料の種類とともに変化し得るものである。
【0031】
リードワイヤ122は、金、錫、銅、ニッケル、及び/又は技術的に知られた任意の好適な導電性材料で形成され得る。しかしながら、当業者に認識されるように、光ファイバデバイス100の特定用途がリードワイヤ122の仕様(すなわち、リードワイヤ122の直径、絶縁材料、及びワイヤ材料)を決定する。ここでは、リードワイヤ122は単一のリードワイヤとして記載されている。なお、本発明はこの点で限定されるものではなく、リードワイヤ122は実際には複数のリードワイヤを有し得る。リードワイヤは当業者に周知であるので、ここでは、リードワイヤについて詳細には説明しないこととする。
【0032】
本発明の一実施形態に従って、基板120は、光ファイバの熱膨張係数と整合する熱膨張係数を有する材料から成る第2の層118を有している。このような材料は、溶融石英(SiO2)及び/又は石英ガラスを含む。第2の層118は接合媒体116を用いて第1の層114に結合されている。なお、接合媒体116が第1の層114の側面を覆うように、第1の層114は接合媒体116に完全に埋め込まれていてもよい。この目的では、好適な如何なる接合媒体も使用され得る。図示された実施形態においては、接合媒体116はタングステン充填エポキシ、及び/又はその他の任意の好適なエポキシから成っている。本発明の一態様に従って、接合媒体116は有利には、隣接する材料114及び118の音響インピーダンスと整合する音響インピーダンスを有するように選択される。当業者に認識されるように、接合媒体116の厚さは、第1の層114、第2の層118、及び/又はアクチュエータ106との最適なインピーダンス整合のために設計され得る。本発明の他の一態様に従って、接合媒体116は有利には、機械的な高いダンピング特性、及び/又は高いインピーダンス特性を含むように選択される。
【0033】
当業者に認識されるように、光ファイバデバイス100の構造はアクチュエータ構造の一実施形態である。しかしながら、本発明はこの点で限定されるものではなく、他の如何なる構造も限定されることなく使用され得る。例えば、基板120は上述された第1の層114及び第2の層118から成るグループから選択された単一の層を含むこともできる。その場合、光ファイバデバイス100の構造はそれに従って調整され得る。
【0034】
図3は、本発明を理解するために有用な光ファイバデバイスの第2実施形態の断面図を示している。光ファイバデバイス300は、先述されたように、光ファイバ102、機械的光ファイバ結合材104、アクチュエータ106、接合媒体108、及び基板120を有している。上述の記載は同様の構成要素に関して十分なものであることは認識されるべきである。
【0035】
再び図3を参照するに、光ファイバデバイス300は更にダンピング材料302を有している。ダンピング材料302は構造的な共振周波数(すなわち、基板120に自然に備わった振動周波数)での基板120の運動を抑制する。ダンピング材料302はまた、広範囲の共振周波数にわたるアクチュエータ106の応答の安定化に寄与する。
【0036】
ダンピング材料302は好適な何らかのエネルギー吸収材料から成っている。本発明の一実施形態に従って、ダンピング材料はタングステン充填エポキシ、及び/又はその他の任意の好適なエポキシである。本発明の一態様に従って、ダンピング材料302は有利には、アクチュエータ106のトランスデューサ材料の機械的インピーダンスと整合する機械的インピーダンスを有するように選択される。本発明の他の一態様に従って、ダンピング材料302は有利には、機械的な高いダンピング特性、及び/又は高いインピーダンス特性を含むように選択される。ダンピング材料302は基板120の運動に対して最適なダンピングをもたらす寸法(すなわち、厚さ、長さ、及び幅)を有し得ることは認識されるべきである。
【0037】
図3に示されるように、ダンピング材料302は基板120上に配置されている。ダンピング材料302は、該ダンピング材料302がアクチュエータ106の外表面304の少なくとも一部に接触するように基板120に設けられる。しかしながら、本発明はこの点で限定されるものではない。例えば、ダンピング材料302は多層基板の一部として基板120の少なくとも一部に組み込まれることができ、あるいは基板120の少なくとも一部内に埋め込まれることができる。
【0038】
当業者に認識されるように、光ファイバデバイス300の構造は光ファイバデバイス構造の一実施形態である。しかしながら、本発明はこの点で限定されるものではなく、他の如何なる光ファイバデバイス構造も限定されることなく使用され得る。例えば、基板120は(図1及び2に関して)上述された第1の層114及び第2の層118から成るグループから選択された単一の層を含むこともできる。その場合、光ファイバデバイス300の構造はそれに従って調整され得る。
【0039】
図4は、本発明を理解するために有用な光ファイバデバイスの第3実施形態の断面図を示している。光ファイバデバイス400は、(図1及び2に関して)先述されたように、光ファイバ102、機械的光ファイバ結合材104、アクチュエータ106、接合媒体108、及び基板120を有している。上述の記載は同様の構成要素に関して十分なものであることは認識されるべきである。
【0040】
次に図4を参照するに、光ファイバデバイス400は更にダンピング材料402を有している。ダンピング材料402は構造的な共振周波数での基板120の運動を抑制する。ダンピング材料402はまた、広範囲の共振周波数にわたるアクチュエータ106の応答の安定化に寄与する。
【0041】
ダンピング材料402はタングステン充填エポキシ、及び/又はその他の任意の好適なエポキシから成っている。本発明の一態様に従って、ダンピング材料402は有利には、アクチュエータ106のトランスデューサ材料の音響インピーダンスと整合する音響インピーダンスを有するように選択される。本発明の他の一態様に従って、ダンピング材料402は有利には、機械的な高いダンピング特性、及び/又は高いインピーダンス特性を含むように選択される。ダンピング材料402は基板120の運動に対して最適なダンピングをもたらす寸法(すなわち、厚さ、長さ、及び幅)を有し得ることは認識されるべきである。
【0042】
図4に示されるように、ダンピング材料402は基板120上に配置されている。ダンピング材料402は、該ダンピング材料402がアクチュエータ106の外表面404に接触することなくアクチュエータ106の周囲を囲むように基板120に設けられる。しかしながら、本発明はこの点で限定されるものではない。例えば、ダンピング材料402は多層基板の一部として基板120の少なくとも一部に組み込まれることができ、あるいは基板120の少なくとも一部内に埋め込まれることができる。
【0043】
当業者に認識されるように、光ファイバデバイス400の構造は光ファイバデバイス構造の一実施形態である。しかしながら、本発明はこの点で限定されるものではなく、他の如何なる光ファイバデバイス構造も限定されることなく使用され得る。例えば、基板120は(図1及び2に関して)上述された第1の層114及び第2の層118から成るグループから選択された単一の層を含むこともできる。その場合、光ファイバデバイス400の構造はそれに従って調整され得る。
【0044】
続いて図5を参照するに、本発明を理解するために有用な平坦なアクチュエータ106応答を示すグラフが提供されている。このグラフは電気機械トランスデューサ材料の変位を印加信号の無線周波数に対してプロットしている。図5に例示されるように、駆動振幅を一定に保って印加信号の無線周波数を700kHzから1000kHzまで変化させるとき、トランスデューサ材料の変位は実質的に不変のままである。このような平坦な応答は、ある一定の用途において非常に望ましいものとなり得る。この平坦な応答は、アクチュエータ106の共振周波数を、該アクチュエータが動作するように設計された励起周波数範囲、アクチュエータが生成するように設計された機械的振動の周波数、及び光ファイバに印加されるべき屈曲波の周波数に対して、それらより高く、あるいは低く設計することによって実現される。共振周波数をこのように選択することにより、比較的平坦な周波数応答が得られる。何故なら、一般に共振動作周波数又は近共振動作周波数に関連する一層変わりやすい振幅応答が概して排除されるからである。デバイスを共振周波数から十分に離れたこの周波数範囲で動作させることの代償は効率である。一般に、ここで述べられたようにアクチュエータを設計することによって、従来のアクチュエータ設計より遙かに小さい物理的大きさを有するアクチュエータが得られることになる。
【0045】
続いて図6を参照するに、本発明を理解するために有用なピーク状のアクチュエータ106応答を示すグラフが提供されている。このグラフは電気機械トランスデューサ材料の変位を印加信号の無線周波数に対してプロットしている。図6に例示されるように、(駆動振幅を一定に保って)印加信号の無線周波数を400kHzから特定のアクチュエータデバイスの機械的共振周波数である500kHzまで変化させるとき、トランスデューサ材料の変位は大きく増大する。一部の例においては、アクチュエータをデバイスの設計動作周波数とほぼ等しい機械的共振周波数を有するように設計することが望ましくなり得る。これは、例えば、アクチュエータが広帯域の信号にわたって動作する必要がなく、故に周波数に対する材料変位の平坦な応答を必要としない状況で有用となり得る。アクチュエータを共振周波数で動作させることは、有利なことに、アクチュエータデバイスの動作効率を増大させる。何故なら、特定の機械的応答を実現するために、より小さい振幅の入力信号が使用され得るからである。
【0046】
以上の説明から認識されるように、本発明は、光ファイバ上に屈曲波を励起するために使用される従来のアクチュエータから大きく脱却したものである。従来システムはどちらかと言えば物理的に大きいアクチュエータ及びホーンを使用する。これらの構成要素の大きさは、アクチュエータが動作するように設計された動作帯域内に現れ得るアクチュエータ及びホーンの機械的共振周波数を数多く存在させることになる。動作周波数は、一般的に、特定の光学用途において有用な屈曲波の周波数範囲に相当する。しかしながら、アクチュエータに関連するこれらの共振周波数は、比較的広い周波数帯域で動作するように意図されたアクチュエータデバイスにおいて望ましくない不安定且つ大きく変動するアクチュエータ応答を生じさせる。また、従来デバイスにて使用される大型のアクチュエータ及びホーンは、そのようなデバイスの商業上の受入れを制限してしまっていた。アクチュエータ106の共振周波数が、デバイスが動作するように設計された動作帯域から十分に離れるようにアクチュエータを設計することにより、不安定且つ大きく変動する応答は回避されることが可能であり、デバイス全体の大きさが実質的に縮小され得る。
【0047】
本発明においてホーンが存在しないことは、上述の利点に加えて別の利点をも有する。ホーンの除去は、ファイバがアクチュエータに直接的に接合され得ることを意味する。このことは、製造プロセスを有意に簡略化するとともに、デバイスパッケージが大きさ的に縮小されることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の理解のために有用な光ファイバデバイスを示す上面図である。
【図2】図1の直線2−2に沿って取られた光ファイバデバイスの断面図である。
【図3】本発明の理解のために有用な光ファイバデバイスの第2実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の理解のために有用な光ファイバデバイスの第3実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の理解のために有用な平坦なアクチュエータ応答を示すグラフである。
【図6】本発明の理解のために有用なピーク状のアクチュエータ応答を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
100、300、400 … 光ファイバデバイス
102 … 光ファイバ
104 … 機械的光ファイバ結合材
106 … アクチュエータ
108 … 接合媒体
110、112 … 導電性配線
114 … 基板の第1の層
116 … 基板の接合媒体
118 … 基板の第2の層
120 … 基板
122 … リードワイヤ
124、126 … アクチュエータの端面
302、402 … ダンピング材料
304、404 … アクチュエータの外表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ上に屈曲波を励起するシステムであって:
基板;
電気機械トランスデューサ材料で形成され、前記基板に搭載されたアクチュエータ;及び
前記アクチュエータと前記光ファイバとの間の固定的な機械的接続を形成する、テーパー状ホーンを含まない機械的光ファイバ結合材であり、前記アクチュエータから前記光ファイバに機械的振動を伝えるように構成された機械的光ファイバ結合材;
を有するシステム。
【請求項2】
前記アクチュエータの複数の機械的共振周波数は、当該システムが励起するように設計された前記屈曲波の所定範囲の周波数を含まない、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アクチュエータの少なくとも1つの機械的共振周波数は、前記屈曲波の前記所定範囲の周波数と少なくとも1オクターブ異なる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記アクチュエータは、当該システムが励起するように設計された前記屈曲波の所定周波数に等しい機械的共振周波数を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記機械的光ファイバ結合材は接着性媒体である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
光ファイバ上に屈曲波を励起する方法であって:
基板上に搭載されたアクチュエータを用い、該アクチュエータを形成する電気機械トランスデューサ材料を励起することによって、機械的振動を生成する段階;及び
テーパー状ホーンを含まない機械的光ファイバ結合材を介して前記機械的振動を前記光ファイバに伝えることによって、前記光ファイバ上に屈曲波を形成する段階;
を有する方法。
【請求項7】
前記アクチュエータの複数の機械的共振周波数を、前記屈曲波の所定範囲の周波数を含まないように選択する段階、を更に有する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アクチュエータの少なくとも1つの機械的共振周波数を、前記屈曲波の前記所定範囲の周波数と少なくとも1オクターブ異なるように選択する段階、を更に有する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アクチュエータの機械的共振周波数を、システムが励起するように設計された前記屈曲波の所定周波数に等しく選択する段階、を更に有する請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記機械的光ファイバ結合材を、接着性媒体を含むように選択する段階、を更に有する請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−9435(P2008−9435A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169480(P2007−169480)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(594071675)ハリス コーポレイション (287)
【氏名又は名称原語表記】Harris Corporation
【Fターム(参考)】