説明

光ファイバ測定方法及び装置、及び電動ジャイロスコープ

【課題】 回転を測定してそこから干渉計出力において利用可能なパワーについての、即ち、干渉計がゼロ位相シフト状態にあるときに干渉計の検出パワーPについての一片の情報を抽出するのに役立つ検出系と同じ検出系を用いた、その設計と動作手順が単純な光ファイバ測定装置を提案すること。
【解決手段】 発明は光パワーPを有する光源と、二つの逆伝搬波が中を伝搬するサニャックリング干渉計と、干渉計から光束を受光し、それを逆伝搬波間の位相差合計δφを表す電気信号に変換する検出器とを含む光ファイバ測定方法及び装置に関する。それはまた、検出器から電気信号を受信し、測定されるパラメータの関数である第1の信号Sを供給する電子手段を備える。前記電子手段は測定されるパラメータの関数である第1の信号を供給するのに寄与する復調器を備え、検出器により測定された光束のパワーPの関数である第2の信号Sを供給する。発明によれば、光位相変調器は位相差δφ=δφ+δφcrに加算される外乱成分δφcpを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサニャックリング干渉計において不可逆外乱を発生させるパラメータ変動の測定を可能にする光ファイバ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サニャック干渉計とそれが暗示する物理現象は周知である。そのような干渉計において、ビーム分割板又は他のビーム分割装置が入射波を分割する。このように作り出された二つの逆伝搬波は閉光路に沿って反対方向に伝搬し、一緒に再結合し、それらの再結合の間に両波間の位相差に依存する干渉を生じる。
【0003】
光の可逆性原理によれば、光波が移動する光路は、その伝搬条件が時間的に定常であれば、この光路上の波の移動方向と独立である。その結果、サニャック干渉計により測定された位相シフトは、逆伝搬波、即ち光路に沿ってある方向又は他の方向に移動する波に同様に影響を与える何れのいわゆる可逆性外乱にも鈍感となる。従って、可逆性原理は同相除去と同様に働き、その時定数が干渉計における光伝搬時間に比較して大きいほとんどの伝搬条件変化の効果を打ち消す。
【0004】
元々、サニャック干渉計の閉光路はミラーにより定められた。それが単一モードの光ファイバ多重巻きコイルで構成できることが今や知られている。
【0005】
一定の物理現象が、逆伝搬波に対して外乱、詳細には、それらの再結合の間にその干渉状態を変更するこれらの波間の相対位相差を発生させる不可逆位相シフト、を生じ易いことも知られている。
【0006】
相対位相差の測定はそれを発生させた現象の定量化を可能にする。
【0007】
不可逆外乱を生じ易い主な物理現象はその閉光路の平面に垂直な軸に対する干渉計の回転により生じるサニャック効果である。ファラデー効果又はコリニア磁気光学効果もそのような不可逆効果を生じるものとして知られている。
【0008】
他の効果もまた一定の条件において不可逆位相差を生じ得る。
【0009】
それと反対に、しばしば測定外乱の原因である環境を表す多数のパラメータの変動はサニャック干渉計に対して可逆性効果のみを有し、逆伝搬波間の相対位相差を乱さず、従って、検討されるパラメータ測定にいかなる影響も持たない。以上は、波が移動する光路を変更するが、可逆的にそれを変更する温度、屈折率等の緩やかな変動の実情である。
【0010】
そのような測定装置で行える測定の感度と精度を改善する多数の研究が行われてきた。この課題についてさらに読むために、例えば

を参照のこと。
【0011】
種々の信号処理モードが提案されてきた。まず、サニャック干渉計により与えられる応答はP=P(1+ cosδφ)の形式をしており、従って、位相差δφ=0近傍のこの信号の感度が低いことが指摘された。位相差変調δφを導入し、2乗してπ/2程度の振幅で変調することが提案されたが、これは動作点をシフトし、その振幅が測定されるパラメータの正弦関数である周期信号を生じ、これは従ってより大きい感度と安定性で使用できる。この位相差はバイアス位相差δφと呼ばれる。
【0012】
この位相差δφは、干渉計多重巻きコイルの一端に配置されかつ制御信号Vにより制御される位相変調器により作り出される。この制御信号Vは逆伝搬波間に位相差を生じる以下の位相シフトφを各波に対して生成する。


ただし、tは時間、τはコイル内の波の一つの移行時間である。
【0013】
測定精度が閉ループ動作とも呼ばれる零位法の使用により改善されることが次に示された。この方法によれば、さらなるいわゆるフィードバック位相差δφcrが適用され、測定されるパラメータにより生じる位相差δφを補償するのに役立つ。この二つの位相差δφcrとδφの和はゼロに保たれ、これは干渉計が最大の感度で動作するようにする。測定はフィードバック位相差δφcrを生じるのに必要な信号を使用して行われる。測定は従って安定しており、線形である。
【0014】
この位相差δφcrは、バイアス変調Vに加えられて合計信号Vを与える信号Vcrにより制御される位相変調器により作られる。この信号Vcrは逆伝搬波間に位相差δφcrを生じる位相シフトφcrを各波に対して生成する。

【0015】
いわゆるセロダイン法の実施は、そのステップが持続時間τと、適用したい位相差δφcrに等しい高さとを有する階段時間信号を与えることにある。信号φcrがプラスマイナス無限大まで増加するのを避けるために2πの倍数に対応する位相飛びを作ることが必要であり、それに対し干渉計は、その応答がP=P(1+cos(δφ))=P(1+cos(δφ+k・2π))(ただし、kは何れかの正又は負の整数)であるので鈍感である。そのようなセロダイン変調は鋸歯状特有波形を有する。
【0016】
さらに、仏国特許第2654827A号において、干渉計の閉ループ動作を与えるいわゆる「4状態」信号処理が提案された。この技術によれば、バイアス位相差δφは4つの相次ぐ値α、2π−α、−α、−(2π−α)について変調される。この特定の変調は上記の位相シフトδφ+δφcrのゼロサーボ制御に加えて、変調器に与えられる信号と最終位相シフトの比の変動に追随することを可能にする。実際、変調器に与えられる信号と最終位相シフトのこの比はVπ=π・V/φで示される値により定義され、これは環境、例えば温度により変化する。従って、「4状態」変調は同時に位相シフトδφ+δφcrのゼロサーボ制御とVπの設定のサーボ制御を可能にし、いくつかの特有の利点を有する。
【0017】
図1はフィードバック閉ループを用いた先行技術の装置を示し、そこでは測定されるパラメータはサニャック干渉計の回転速度である。この光ファイバジャイロスコープはサニャック干渉計1を備え、これは前記干渉計1の回転が測定される回転軸の周りに多重巻きコイル2として巻かれた光ファーバーを含む。干渉計1内を反対方向に伝搬する二つの電磁波は光源3により発せられる。この光源は広帯域スペクトル光源、例えばスーパールミネッセント固体光源である。光源3と干渉計1の間には第1の光ファイバ4を含む光学装置が配置され、その端部5は光源3の最大発光点に位置し、他端は前記光源3により発せられる光を光ビームカプラ6に送る。このカプラ6は光を透過する媒体7と、この媒体7の各端部において対として設けられた4つのゲート8〜11とを備える。第1のゲート8が、光源3から伸びる第1の光ファイバ4により発せられる光を受光する。カプラ6の同じ側に位置する他のゲート9には光検出器13に接続された第2の光ファイバ12が配置される。カプラ6の他端において、ゲート10が第3の光ファイバを介してサニャック干渉計1に接続される。カプラ6と同じ側に配置された第4のゲート11は例えば光ファイバの一部を用いた非反射性端末14を備える。ジャイロスコープはまた干渉計1の多重巻きファイバコイルの一端に配置された位相変調器15を備える。この光位相変調器15はデジタル−アナログ変換器16により発せられる制御信号を受信する。
【0018】
サニャック干渉計1から出る光信号は第2の光ファイバ12を介して光検出器13に送られ、これはそれらを前記受信された光信号を表す電気信号に変換する。一方の側において光検出器13に接続され、他方の側において位相変調器のデジタル−アナログ変換器16に接続された閉ループ回路は光検出器13により作られた電気信号を増幅する増幅器17と、増幅された電気信号をデジタル化するアナログ−デジタル変換器18と、デジタル電子ループバック手段19とを備える。このデジタル電子ループバック手段19は、サニャック干渉計の回転により導入される位相差δφを補償しかつバイアス成分δφを加えるフィードバック位相差δφcrを決定する。
【0019】
デジタル電子ループバック手段19は位相変調器20を備え、その後にPID型レギュレータ21(「PID」−プロポーショナル、インテグラルアンドデリバティブアクション)と、変調動作中のφのδφだけの変化により形成された微分を補償するさらなる積分器22が続く。さらにそれはバイアス変調器23を備え、この出力は加算器24においてフィードバックに加算されて合計信号を形成し、これはデジタル−アナログ変換器16に送られる。
【0020】
位相変調器20は回転方向を表す測定信号がもつ符号をバイアス変調と同期して考慮に入れる。従って、例えば二つの相次ぐ値π/2と−π/2についての「2状態」バイアス変調と仮定して、位相変調器20は受信信号にそれぞれ値+1と−1を掛ける。
【0021】
レギュレータ21はしばしば簡単な積分器を備え、この場合、サーボ制御は1次系である。位相変調器20の出力とレギュレータ21の入力における変調信号はゼロサーボ制御誤差信号を表す。レギュレータ21の出力信号はδVcrで示される。それはδφcr=−δφの尺度であり、従って、回転速度に比例する値である。
【0022】
積分器22はさらなる積分を実行して光位相変調器15において生じる逆変調による微分を補償する。
【0023】
バイアス変調器23は、一旦逆変調により微分されれば所望の値へのバイアスを実行する信号を生成する。例えば、相次ぐ値δφb1=π/2とδφb2=−π/2に対する「2状態」変調に対し、バイアス変調器23は周期2τを有する矩形波周期信号を生成して、時間τの間の値Vb1=Vπ/2と、周期の後半の間のVb2=0とを交互に繰り返す。
【0024】
加算器24はバイアス信号Vとフィードバック信号Vcrを加算する。加算器24の出力は光位相変調器15を制御するデジタル−アナログ変換器16に接続される。
【0025】
そのような先行技術のデジタル閉ループ装置は特に回転速度測定に関連する解像力とノイズについて優れた性能が得られるのを可能にし、このノイズは角ランダムウォーク(ARW)とも呼ばれる。ARWはサニャック干渉計1から出力された信号の光検出の信号対ノイズ比から生じる。従って、ARWは受動部品光損失と能動部品効率の変動により変化する。
【0026】
前記装置の光パワーを安定化するために、そのときしばしば使用される解決策はタップカプラ26の後に接続された光検出器25により行われる単純な測定により光源3のパワーをサーボ制御することにある。このタップカプラ26は光源3から伸びる第1の光ファイバ4とカプラ6の第1のゲート8の間に配置される。光検出器25により得られた測定値から、光源のパワー−ループバック電子ブロック27が光源3を制御する。従って、例えば光検出器27により測定されたパワーが所望値より低ければ、ブロック27は、光検出器27により得られた測定値がこの所望値に対応するまで光源の制御を増加する(図2)。
【0027】
この解決策は光源3の後におかれた光学部品の損失の進行を補償できず、前記進行は、例えば宇宙用途に使用されるジャイロスコープに対する放射による、あるいは光減衰の温度依存性による曇りから生じる。検出レベルにおけるパワー測定点の単純なずれは敏感である。なぜなら、光は光学位相変調器15とコイルを通って進行し、その結果、干渉計1の位相シフト状態、従って回転、フィードバック及びバイアスに依存するからである。測定されるレベルは、変調状態と2πの位相飛びの間の過渡状態の間に生じるパワーピークに特に依存するであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
従って、発明の目的は、回転を測定してそこから干渉計出力において利用可能なパワーについての、即ち、干渉計がゼロ位相シフト状態にあるときに干渉計の検出パワーPについての一片の情報を抽出するのに役立つ検出系と同じ検出系を用いた、その設計と動作手順が単純な光ファイバ測定装置を提案することである。
【0029】
もう一つの目的は動作ループゲインを測定して主ループ帯域幅内の外乱の閉ループ内への導入による主ループの良好な動作の自己試験を提供することである。
【0030】
この測定装置は好都合にも放射に曝された光ファイバ多重巻きコイルの減衰変動を補償することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
その目的で、発明は測定されるパラメータの変動が二つの波間の位相差を発生させる光ファイバ測定装置であって、
光パワーPを有する広帯域スペクトル光源と、
二つの逆伝搬波が中を伝搬し、それらの分離と再結合の間の波の伝搬時間がτである好ましくは単一モードのサニャックリング干渉計と、
前記干渉計から光束を受光し、それを前記逆伝搬波間の位相差合計δφを表す電気信号に変換する検出器と、
バイアス成分δφとフィードバック成分δφcrを含む位相差δφ=δφ+δφcrを生成する光位相変調器と、
前記検出器から前記電気信号を受信し、前記測定されるパラメータの関数である第1の信号Sを供給する電子手段と
を含み、
前記測定されるパラメータの関数である前記第1の信号が、前記逆伝搬波間に生じた前記位相差δφcrが前記測定されるパラメータにより導入された前記位相差δφを補償するように決定された光位相変調器の第1の制御信号Vcrを生じ、
前記電子手段が前記測定されるパラメータの関数である前記第1の信号を供給するのに寄与する復調器を含み、
前記電子手段が前記光源の前記光パワーPの関数である第2の信号Sを供給する
光ファイバ測定装置
に関する。
【0032】
発明によれば、光位相変調器は位相差δφ=δφ+δφcrに加算される外乱成分δφcpを生成する。
【0033】
光ファイバ測定装置の種々の特定の実施例において、それぞれは個々の特定の利点を有し、以下の多数のあり得る技術的組合せが可能である。
−電子手段は光源の光パワーPをサーボ制御する電子手段を備える閉ループフィードバック回路を含み、
−装置は検出器により生じた電気信号を増幅する増幅器と、増幅された電気信号をデジタル化するアナログ−デジタル変換器とを備え、この増幅器とこの変換器は検出器と電子手段の間に配置され、
−電子手段は光位相変調器の第2の制御信号Vを生じてバイアス成分δφを生成するバイアス変調器を備え、
●電子手段は二つの入力と一つの出力を備える加算器を備え、加算器の第1の入力は光位相変調器の第1の制御信号Vcrを受信し、その他方の入力は光位相変調器の第2の制御信号Vを受信し、
●装置は、加算器の出力信号を受信し、光位相変調器を制御するデジタル−アナログ変換器を備え、
電子手段は以下を備える。
●変調器の後に配置された、第1の積分器であるレギュレータと、
●第1の積分器の後に配置された第2の積分器と、
●光位相変調器の第3の制御信号Vcpを生成する周波数外乱fcpを導入する外乱源であって、第3の制御信号Vcpが逆伝搬波間の位相差δφcpを生じ、第1の制御信号Vcpに加算される外乱源。
●この外乱はレギュレータの直前又は直後にある外乱注入回路を介して注入され、
−外乱はゼロ平均値を有し、
−外乱は非周期的であり、
−外乱の周波数fcpは測定されるパラメータ信号の周波数より大きく、
−外乱信号は擬似ランダムランプを含み、
−バイアス成分δφは、逆伝搬波間に生じた位相差δφが、α及びe(ただし、0≦e<α≦π)により、

となるように定められた少なくとも6つの状態(δφ,δφ,...)を取るように決定された光位相変調器の第2の制御信号Vにより生成され、電子手段は式(x+ x)−(x+ x)に従って制御信号の周期に応じて与えられた6つの値x、x、x、x、x、xを用いて検出器により測定された光束のパワーPの関数である第2の信号Sを生じる。
【0034】
発明はまた上記の測定装置によるジャイロスコープに関し、測定されるパラメータは干渉計の回転速度である。
【0035】
発明はまた以下のような、その変動が二つの波間の位相差を発生させるパラメータを測定する方法に関する。
−光パワーPを有する広帯域スペクトル光源により発せられる二つの逆伝搬波が好ましくは単一モードでサニャックリング干渉計内を伝搬し、それらの分離と再結合間の波の伝搬時間がτであり、
−干渉計から出力された光束が検出され、逆伝搬波間の位相差合計δφを表す電気信号に変換され、
−逆伝搬波間の位相差δφ=δφ+δφcrが生成され、位相差δφはバイアス成分δφとフィードバック成分δφcrを含み、
−検出器から出力された電気信号が電子手段に送られ、電子手段は測定されるパラメータの関数である第1の信号Sを決定し、
−測定されるパラメータの関数であるこの第1の信号は、逆伝搬波間に生じた位相差δφcrが測定されるパラメータにより導入された位相差δφを補償するように決定された光位相変調器の第1の制御信号Vcrを生じ、
−電子手段は検出器から出力された電気信号から光源の光パワーPの関数である第2の信号Sを決定する。
【0036】
発明によれば、光位相変調器は位相差δφ=δφ+δφcrに加算される外乱成分δφcpを生成する。
【0037】
発明は以下の添付図を参照してより詳細に述べられる。
−図1は先行技術の第1の実施例による光ファイバジャイロスコープの模式図である。
−図2は先行技術の第2の実施例による光ファイバジャイロスコープの模式図である。
−図3は発明の実施例による光ファイバ測定装置の模式図である。
−図4は入力信号e(t)と出力信号s(t)の差、即ち位相誤差(δφ+δφcr)がゼロにサーボ制御される先行技術のサニャックループの模式図である。
−図5は発明の実施例による、入力信号e(t)と出力信号s(t)の差がゼロにサーボ制御され、不変の位相シフトがレギュレータの直前に挿入されるサニャックループの模式図である。
−図6は先行技術のいわゆる「4状態」変調の場合のその干渉状態の関数として干渉計の出力において検出されるパワーレベルを示す。
−図7は発明の実施例によるいわゆる「6状態」変調の場合のその干渉状態の関数として干渉計の出力において検出されるパワーレベルを示す。
−図8は発明の実施例によるいわゆる「8状態」変調の場合のその干渉状態の関数として干渉計の出力において検出されるパワーレベルを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図3は測定されるパラメータの変動が二つの波間の位相差を発生させる発明による光ファイバ測定装置を示す。この装置は、平均波長がλの光パワーPを有する広帯域光源3を含む。それはまた、二つの逆伝搬波が中を伝搬する好ましくは単一モードのサニャックリング干渉計1を備える。それらの分離と再結合間の波伝搬時間はτである。サニャック干渉計1は多重巻きコイル2として巻かれた光ファイバを含む。光源3と干渉計1の間には光学装置が配置され、そこでは図1のものと同じ参照番号で示される要素は同じ物を表す。測定装置はまた、干渉計から光束を受光し、それを逆伝搬波間の位相差合計δφを表す電気信号に変換する検出器13を備える。検出器13により発せられた電気信号は電子手段19に送られ、これは測定されるパラメータの関数である第1の信号Sを供給する。これらの電子手段19は第1の信号Sを供給するのに寄与する位相変調器20を備える。
【0039】
第1の信号Sはデジタル−アナログ変換器16を介して干渉計1のファイバ多重巻きコイルの一端に配置された光位相変調器15に送られる第1の制御信号Vcrを生成する。この第1の制御信号Vcrは、逆伝搬波間に生じた位相差δφcrが測定されるパラメータにより導入される位相差δφを補償するように決定される。位相変調器15はフィードバック成分δφcrとバイアス成分δφを含む位相差δφ=δφ+δφcrを生成する。
【0040】
発明によれば、電子手段19はさらに光源の光パワーPの関数である第2の信号Sを供給する。
【0041】
好ましくは、これらの電子手段19は一方の側において光検出器13に接続され、他方の側においてデジタル−アナログ変換器16に接続された閉ループ回路上に配置される。この閉回路はまた検出器13により生じた電気信号を増幅する増幅器17と、増幅された電気信号をデジタル化するアナログ−デジタル変換器18とを備え、これらは検出器13と電子手段19の間に配置される。
【0042】
発明の実施例において、この第2の信号Sを得るために一様な定数Aの位相シフトによりフィードバックをシフトすることが探究される。光位相変調器15は従って第1と第2の制御信号VcrとVに加算される第3の制御信号Vcpを受信して位相差δφ=δφ+δφcrに加算される外乱成分δφcpを生成する。周波数外乱fcpを導入する外乱源がこの光位相変調器の第3制御信号Vcpを生成する。
【0043】
注入回路を介するこの外乱の注入はレギュレータの直前において行われると好都合である(図3)。
【0044】
そのように注入された外乱は非ゼロ角加速度に相当する。干渉計が最大の動作感度で動作するように、サニャックループの入力信号e(t)と出力信号s(t)の差に対して(図4)、即ち、位相誤差(δφ+δφcr)に対して行われようするゼロサーボ制御はそのとき非ゼロのドラッグ誤差を有する。このドラッグ誤差はその入力と出力間のループの非ゼロ反応時間のためである。ループ出力は加速度x遅延時間に等しい誤差を生じる。さて、1次系において、遅延時間はそのループに特有の時間であり、ゲイン係数Kの逆数に等しい。従って、角加速度は

の時間単位のさらなる位相シフトと

の角ドラッグ誤差を作り出す効果を有し、従って、位相シフトは

に等しい。
【0045】
このように、システムのゲインに逆比例するバイアスを発生させるドラッグ誤差がシミュレーションされた。
【0046】
最後に、実際の回転から偽りのドラッグ誤差を分離するために、例えば定数Aに対して正と負の値を交互に繰り返すことが可能である。
【0047】
図5はKに反比例する値を測定できるそのような装置を示す。矩形波形信号30は時間の関数として、フィードバックにより加算される仮想の角加速度A(t)を表す。信号31は時間の関数としての位相シフトS(t)を表す。仮想の角加速度A(t)は測定値に加算されるS(t)に対する効果を生み出す。
【0048】
出力に加えられる、矩形波形の高いレベルと低いレベルの間の差の平均は2A/Kに等しい。さて、Kの変動はもっぱらアナログゲインの変動、主として検出光パワーPの変動による。
【0049】
外乱を導入するときの光ファイバ測定装置の応答を、測定されるパラメータの関数である第1の信号Sと混同しないように、外乱の周波数fもまた例えば、非周期的となるように、あるいは測定されるパラメータ信号の周波数より大きくなるように調整できる。以下の何れの信号波形も使用できる。即ち、擬似ランダムランプ、半放物、正弦、三角波形その他である。
【0050】
この処理は光源3をサーボ制御するために使用できる。この処理はまたサニャックループ閉ループのゲインの手段であり、光ファイバジャイロスコープの自己試験として使用できる。得られた結果を説明するために理論的取組が展開された。
【0051】
レギュレータ21が実際は積分係数Kを有する単純な積分器である図4によるサニャックループ設計を考えれば、サニャックループは1次のサーボ制御ループであり、これはδφcrで示されるフィードバック位相シフトが以下の微分方程式により律せられることを意味する。


ただし、■ tは時間であり、
■ δφはサニャック効果による回転による位相シフトであり、システムの入力関数e(t)=δφとして働き、
■ Kはこの1次系の積分ゲイン係数であり、
■ δφcrは、δφを補償し、その符号を除いてはシステムの出力関数s(t)=−δφcrとして働くフィードバック位相シフトである。
【0052】
この系が、サニャックループフィードバックにおける二つの積分器(レギュレータ21と積分器22)と微分器(光変調器15)の存在のために1次系であることも確証できる。
【0053】
図4のサニャックループの図解を思い出そう。このループでは、位相誤差(δφ+δφcr)=e(t)−s(t)はゼロにサーボ制御される。
【0054】
発明のこの実施例において、一様な定数Aの位相シフトによりフィードバックをシフトすることが探究される。この定数は数値的に加算され、Vπの値が良くサーボ制御されれば、定数Aは、光パワーPと、変化し易いゲインのアナログ寄与とに特に独立な、干渉計における不変の位相シフトに対応する。
【0055】
そして以下が得られる。

【0056】
S(p)及びE(p)をそれぞれ信号s(t)及びe(t)のラプラス変換とすれば、以下を得る。

【0057】
逆ラプラス変換を適用すれば出力信号


を得る。
■ s(t)は

の逆ラプラス変換であり、図4による1次系の通常応答に対応し、
■ s(t)は

の逆ラプラス変換であり、シフトAの導入の効果に対応する。
【0058】
逆ラプラス変換表から以下が分かる。

【0059】
定数Aによるサーボ制御のシフトが結局、そのループのものに等しい特有の時間の指数関数的立ち上り後に、サニャックループの1次ゲイン係数に反比例する値を有するバイアスを出力において生じることが演繹される。
【0060】
発明のもう一つの実施例において、特定の変調後に主検出器で受光されたパワーレベルの測定を可能にする新しい変調状態を作り出すことが探究される。
【0061】
まず、仏国特許第2654827A号に述べられる「4状態」変調は以下の4つの位相シフト値によるバイアス変調から成ることを思い出そう。


ただし、αは一定の位相シフトである。バイアス位相シフトは測定されるパラメータにより生じる位相差δφとフィードバック位相シフトデルタφcrに加算される。干渉計から光束を受光する検出器13で測定されるパワー値は従ってそれぞれ状態i=1ないし4に対して

【0062】
光ファイバ測定装置の動作中に、信号(δφ+δφcr)はゼロにサーボ制御され、これは干渉計を最大感度で動作させる。信号(δφ+δφcr)は従って1に比べて非常に小さく、値cos(δφbi/2)付近のcos関数の線形近似を行うことができる。従って、

【0063】
たいていの場合、同期検出にはアナログ−デジタル変換器18によるサンプリングの前に連続成分を除去するハイパスフィルタが伴う(図4)。
【0064】
興味深いことに、三角法によれば


であることに気づく。
【0065】
そこから、光ファイバ測定装置、従ってサニャックループがサーボ制御されるときに、連続成分が以下となることが演繹される。

【0066】
4つの変調状態は図6に示されるように同じパワーレベルを有し、これはその干渉状態の関数として干渉計の出力において検出されたパワーレベルを表す。
【0067】
図6において、縦軸は検出器13により測定された信号を表し、横軸は位相シフト値を表す。
【0068】
サニャックループに使用される誤差信号は以下により計算される。

【0069】
値Vπ=π・V/φのループサーボ制御に使用される誤差信号は以下により計算される。

【0070】
発明のこの実施例によれば、Pxcos(α/2)とはわずかに異なる平均パワーを有する二つの新しい変調状態が追加される。
【0071】
例えば以下を用いた6状態変調を実行することができる。


ただし、εはアナログ−デジタル変換器18の測定範囲内に留まる程度に小さい。種々の状態のパワー平均レベルは今度は図7に示されるものとわずかに異なり、その差はパワーPに比例する。
【0072】
この変調パターンでは、サニャックループに使用される誤差信号は以下により計算される。

【0073】
値Vπ=π・V/φのループサーボ制御に使用される誤差信号は以下により計算される。

【0074】
を測定するのに役立つ信号は以下により計算される。

【0075】
は場合によっては以下の誤差信号の使用により定数にサーボ制御できる。

【0076】
その場合、それはこの誤差信号を使用して光源のパワーを設定するには十分である。ループバックは従って図5及び図3に示されるように光源に対して行うことができ、その場合、ループバック電子ブロック19は提案されたデジタル処理により増強され、従って、光源3に対する付加的出力としてのパワー制御信号を有する。
【0077】
以下を用いた8状態変調を実行することもできる。


ただし、εはアナログ−デジタル変換器18の測定範囲内に留まる程度に小さい。種々の状態のパワー平均レベルもまた図8に示されるものとわずかに異なり、その差はパワーPに比例する。
【0078】
この変調パターンでは、サニャックループに使用される誤差信号は以下により計算される。

【0079】
値Vπ=π・V/φのループサーボ制御に使用される誤差信号は以下により計算される。

【0080】
8より大きい数の状態を用いた変調も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】先行技術の第1の実施例による光ファイバジャイロスコープの模式図である。
【図2】先行技術の第2の実施例による光ファイバジャイロスコープの模式図である。
【図3】発明の実施例による光ファイバ測定装置の模式図である。
【図4】入力信号e(t)と出力信号s(t)の差、即ち位相誤差(δφ+δφcr)がゼロにサーボ制御される先行技術のサニャックループの模式図である。
【図5】発明の実施例による、入力信号e(t)と出力信号s(t)の差がゼロにサーボ制御され、不変の位相シフトがレギュレータの直前に挿入されるサニャックループの模式図である。
【図6】先行技術のいわゆる「4状態」変調の場合のその干渉状態の関数として干渉計の出力において検出されるパワーレベルを示す。
【図7】発明の実施例によるいわゆる「6状態」変調の場合のその干渉状態の関数として干渉計の出力において検出されるパワーレベルを示す。
【図8】発明の実施例によるいわゆる「8状態」変調の場合のその干渉状態の関数として干渉計の出力において検出されるパワーレベルを示す。
【符号の説明】
【0082】
1 干渉計
2 多重巻きコイル
3 光源
4 光ファイバ
5 光ファイバの端部
6 カプラ
7 光透過媒体
8〜11 ゲート
12 光ファイバ
13 光検出器
14 非反射性末端
15 光位相変調器
16 デジタル−アナログ変換器
17 増幅器
18 アナログ−デジタル変換器
19 デジタル電子ループバック手段
20 位相変調器
21 PID型レギュレータ
22 積分器
23 バイアス変調器
24 加算器
25 光検出器
26 タップカプラ
27 電子ブロック
30 仮想の角加速度A(t)
31 位相シフトS(t)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定されるパラメータの変動が二つの波間の位相差を発生させる光ファイバ測定装置における、
光パワーPを有する広帯域スペクトル光源と、
二つの逆伝搬波が中を伝搬し、それらの分離と再結合の間の波の伝搬時間がτである好ましくは単一モードのサニャックリング干渉計と、
前記干渉計から光束を受光し、それを前記逆伝搬波間の位相差合計δφを表す電気信号に変換する検出器と、
バイアス成分δφとフィードバック成分δφcrを含む位相差δφ=δφ+δφcrを生成する光位相変調器と、
前記検出器から前記電気信号を受信し、前記測定されるパラメータの関数である第1の信号Sを供給する電子手段と
を含み、
前記測定されるパラメータの関数である前記第1の信号が、前記逆伝搬波間に生じた前記位相差δφcrが前記測定されるパラメータにより導入された前記位相差δφを補償するように決定された前記光位相変調器の第1の制御信号Vcrを生じ、
前記電子手段が前記測定されるパラメータの関数である前記第1の信号を供給するのに寄与する復調器を含み、
前記電子手段が前記光源の前記光パワーPの関数である第2の信号Sを供給する
光ファイバ測定装置であって、
前記光位相変調器が位相差δφ=δφ+δφcrに加算される外乱成分δφcpを生成する
ことを特徴とする光ファイバ測定装置。
【請求項2】
前記電子手段が前記光源の前記光パワーPをサーボ制御する電子手段を備える閉ループフィードバック回路を含むことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ測定装置。
【請求項3】
前記光ファイバ測定装置が前記検出器により生じた前記電気信号を増幅する増幅器と、前記増幅された電気信号をデジタル化するアナログ−デジタル変換器とを備え、前記増幅器が前記検出器と前記電子手段の間に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ測定装置。
【請求項4】
前記電子手段が前記光位相変調器の第2の制御信号Vbを生じて前記バイアス成分δφを生成するバイアス変調器を備えることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一つに記載の光ファイバ測定装置。
【請求項5】
前記電子手段が二つの入力と一つの出力を備える加算器を備え、
前記加算器の第1の入力が前記光位相変調器の前記第1の制御信号Vcrを受信し、
その他方の入力が前記光位相変調器の第2の制御信号Vを受信し、
前記装置が、前記加算器の前記出力信号を受信し、前記光位相変調器を制御するデジタル−アナログ変換器を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の光ファイバ測定装置。
【請求項6】
前記電子手段が、
前記変調器の後に配置された、第1の積分器であるレギュレータと、
前記第1の積分器の後に配置された第2の積分器と、
前記光位相変調器の第3の制御信号Vcpを生成する周波数外乱fcpを導入する外乱源であって、前記第3の制御信号Vcpが前記逆伝搬波間の位相差δφcpを生じ、前記第1の制御信号Vcpに加算される外乱源と
を備え、
前記外乱が前記レギュレータの直前又は直後にある外乱注入回路を介して注入される
ことを特徴とする請求項1ないし5の何れか一つに記載の光ファイバ測定装置。
【請求項7】
前記外乱がゼロ平均値を有することを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ測定装置。
【請求項8】
前記外乱が非周期的であることを特徴とする請求項6又は7に記載の光ファイバ測定装置。
【請求項9】
前記外乱の周波数fcpが前記測定されるパラメータ信号の周波数より大きいことを特徴とする請求項6又は7に記載の光ファイバ測定装置。
【請求項10】
前記外乱信号が擬似ランダムランプを含むことを特徴とする請求項6ないし9の何れか一つに記載の光ファイバ測定装置。
【請求項11】
前記バイアス成分δφが、前記逆伝搬波間に生じた前記位相差δφが、α及びe(ただし、0≦e<α≦π)により、


となるように定められた少なくとも6つの状態(δφ,δφ,...)を取るように決定された前記光位相変調器の第2の制御信号Vにより生成され、前記電子手段が式(x+ x)−(x+ x)に従って前記制御信号の周期に応じて与えられた6つの値x、x、x、x、x、xを用いて前記検出器により測定された前記光束の前記パワーPの関数である第2の信号Sを生じることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一つに記載の光ファイバ測定装置。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか一つに記載の測定装置に従い、前記測定されるパラメータが前記干渉計の回転速度であることを特徴とするジャイロスコープ。
【請求項13】
その変動が二つの波間の位相差を発生させるパラメータを測定する方法における、
光パワーPを有する広帯域スペクトル光源により発せられる二つの逆伝搬波が好ましくは単一モードでサニャックリング干渉計内を伝搬し、それらの分離と再結合間の波の伝搬時間がτであり、
前記干渉計から出力された光束が検出され、前記逆伝搬波間の位相差合計δφを表す電気信号に変換され、
前記逆伝搬波間の位相差δφ=δφ+δφcrが生成され、前記位相差δφはバイアス成分δφとフィードバック成分δφcrを含み、
前記検出器から出力された電気信号が電子手段に送られ、前記電子手段は前記測定されるパラメータの関数である第1の信号Sを決定し、
前記測定されるパラメータの関数である前記第1の信号が、前記逆伝搬波間に生じた位相差δφcrが前記測定されるパラメータにより導入された前記位相差δφを補償するように決定された光位相変調器の第1の制御信号Vcrを生じ、
前記電子手段が前記検出器から出力された前記電気信号から前記光源の前記光パワーPの関数である第2の信号Sを決定する
方法であって、
前記光位相変調器が前記位相差δφ=δφ+δφcrに加算される外乱成分δφcpを生成する
ことを特徴とする方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【公表番号】特表2009−533666(P2009−533666A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504792(P2009−504792)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051074
【国際公開番号】WO2007/116185
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508013962)
【Fターム(参考)】