説明

光ファイバ素線の製造装置

【課題】非接触光学式の外径測定器を用い、光ファイバ裸線の外径を測定しながら光ファイバ素線を製造するようにした光ファイバ素線製造装置において、冷却装置から漏出する冷却用ガスの影響によって外径測定誤差が生じたり、高温による熱揺らぎによって測定誤差が生じたりすることを防止して、外径を正確に測定し、光ファイバ素線の引取速度の制御を正しく行ない得るようにしたものを提供する。
【解決手段】紡糸用加熱炉から下方に引き出された光ファイバ裸線を冷却するための冷却装置と、光ファイバ裸線の外径を測定するための光学式の外径測定器とを一体化して、冷却装置内の光ファイバ裸線が通過する空間(冷却空間)と外径測定器の測定空間とを連続一体化し、これにより冷却空間内に導入されるHeなどの冷却用ガスが、冷却空間内と同時に外径測定器の測定空間にも満たされるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石英ガラス系光ファイバで代表される光ファイバの製造工程のうち、石英系ガラスなどからなる光ファイバ母材から光ファイバ裸線を線引きしてさらに保護用樹脂により被覆して光ファイバ素線を製造するための光ファイバ素線製造装置に関するものであり、とりわけ光ファイバ素線の製造過程中において光ファイバ裸線の外径を光学式の非接触方式で測定するための外径測定器を備えた光ファイバ素線の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に石英ガラス系光ファイバ素線の製造装置としては、図10に示すような装置が広く使用されている。この光ファイバ素線製造装置10は、石英系ガラスからなる光ファイバ母材12を加熱溶融させるための紡糸用加熱炉14と、紡糸用加熱炉14から下方に向けて線状に引き出された光ファイバ裸線16を強制冷却するための冷却装置18と、冷却された光ファイバ裸線を保護被覆用の樹脂により被覆するためのコーティング装置20と、そのコーティング装置により被覆された樹脂を硬化させるために必要に応じて設けられる硬化装置22と、保護被覆用の樹脂が硬化された状態の光ファイバ素線24を引き取るための引取装置26とを備えた構成とされている。
【0003】
このような光ファイバ素線製造装置によって光ファイバ素線を製造するにあたっては、光ファイバ裸線の原料となる光ファイバ母材(石英系ガラス母材)12を紡糸用加熱炉14において2000℃以上の高温に加熱して溶融させ、その紡糸用加熱炉14の下部から、高温状態で光ファイバ裸線16として伸長させながら下方に引き出し、その光ファイバ裸線16を、樹脂によりコーティング可能となる温度まで冷却装置18により冷却する。ここで、冷却装置18は、通常は2重壁構造(ジャケット構造)とされて、冷却水などの冷却媒体により壁部から冷却されるとともに、内側の光ファイバ裸線16が通過する空間(冷却空間)内に、熱伝導性が良くかつ光ファイバ裸線16の材質に悪影響を及ぼさないガス、例えばHeガスなどの冷却ガスが導入される。このような冷却装置18により所要の温度まで冷却された光ファイバ裸線16には、コーティング装置20において保護のための樹脂が未硬化状態で被覆され、さらにその被覆樹脂が、硬化装置22において加熱硬化あるいは紫外線硬化などの樹脂の種類に応じた適宜の硬化手段により硬化され、保護被覆層を備えた光ファイバ素線24となって、ターンプーリ28を経て引取装置26によって所定速度で引き取られる。
【0004】
ところで光ファイバ素線の製造にあたっては、光ファイバ裸線の外径が一定となるように制御する必要がある。ここで、ガラス母材が紡糸用加熱炉14で加熱溶融されてその紡糸用加熱炉14から引き出された状態では、未だ高温で未硬化状態であるから、ガラスがある程度硬化するまでは伸長しながら(従って外径が減少しながら)下方に引かれることになる。したがって、最終的な光ファイバ裸線の外径には、線引き速度(引取装置26による引取速度)が大きな影響を与える。そこで一般には、常時光ファイバ裸線の外径を測定しながら、その外径が目標の径となるように引取装置26の引取速度を制御することが行なわれている。そしてこのような目的の外径測定器としては、レーザ外径測定器で代表される非接触、光学式の外径測定器が使用されている。
【0005】
ここで、外径測定によって引取速度を制御する場合の応答性を良好にして、例えば、外径に異常があった際にそれを検出して引取速度を変更し、外径を正常に戻すまでに要する時間を短縮して外径異常の不良部分を短くするためには、外径測定器は、紡糸用加熱炉にできるだけ近い位置に設置することが望まれる。また例えば、連続操業の中途において製造すべき製品のサイズ(光ファイバ裸線の外径)を変えたい場合、外径を監視しながら変更前のサイズから変更後のサイズとなるまでの間の時間およびその間のファイバ長を短縮させるためにも、外径測定器を紡糸用加熱炉に近い位置に設置することが望まれる。そこで一般に外径測定器は、図10における紡糸用加熱炉14の直下(冷却装置の上方)の位置Pに配置することが多かった。
【0006】
ところで最近では、光ファイバ素線製造における生産性を向上させるため、線引き速度を高速化する傾向が強まっており、1000m/min以上の高速で運転することも多くなっている。このように線引き速度を高速化した場合、それ以上外径が細くならない程度まで硬化する位置(光ファイバ裸線の外径が定まる位置)が下方に下がってしまって、紡糸用加熱炉14の直下の位置Pでは未だ外径が減少する状態(すなわちネックダウンの状態)にあることが多くなり、そのため上記の位置Pで外径を測定しても、正確に製品の外径を制御することができなくなり、それに加えて、上記の位置Pではガラスが未だ高温となっているため、熱揺らぎにより、光学式の外径測定器では正確な外径測定が困難となるおそれもあった。
【0007】
このように、高速の線引き速度で光ファイバ素線を製造した場合の問題を解決するための手段としては、既に特許文献1に示すものが提案されている。この特許文献1においては、2台の外径測定器を用い、第1の外径測定器は冷却装置の前(上側:図10の位置P)に設置する一方、第2の外径測定器は冷却装置の後ろ(下側:図10の位置Q)に設置しておき、線引き速度が所定の速度より低い場合には、冷却装置の上側の第1の外径測定器により測定した光ファイバ裸線の外径によって引取り速度を制御し、線引き速度が所定の速度より高い場合には、冷却装置の下側の第2の外径測定器により測定した光ファイバ裸線の外径によって引取り速度を制御するように構成している。この特許文献1の装置によれば、線引き速度が低い場合も、高い場合も、線引き速度制御の良好な応答性を確保しつつ、正確な制御が可能とされている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に示される装置には、次のような問題がある。
すなわち、光ファイバ素線製造のための実際の量産的設備においては、設置スペースなどの点から、いずれの外径測定器も冷却装置に近接して配設せざるを得ない場合がほとんどであるが、このように外径測定器を冷却装置に近接して配置した場合、冷却装置における光ファイバ裸線の入口あるいは出口から漏出したHeガスなどの冷却用ガスが、外径測定器の測定部付近に漂い、そのため外部の空気と冷却用ガスの屈折率の違いによって、正確に外径を測定できず、それに伴って、外径測定結果に基づく線引き速度の制御も正しく行えなくなる事態が発生する、という問題がある。すなわち、レーザ外径測定器などの光学式外径測定器では、投光部と受光部との間の測定空間における雰囲気物質の屈折率が一定であることが、正確な外径測定を行なうために必須であるが、前述のように冷却装置から漏れ出た冷却用ガスが漂う空間では、外部空気に対して冷却用ガスが混入した雰囲気となり、しかもその冷却用ガスの混合割合が変動するため、雰囲気の屈折率が一定せず、そのため光学式測定における外径測定の正確性に欠け、測定誤差が生じる結果、線引き速度制御の正確性にも欠け、外径不良が生じやすくなってしまう、という問題があったのである。また前記特許文献1に示される光ファイバ製造装置においては、高温の光ファイバ裸線による熱揺らぎによる測定誤差については、特に配慮がなされておらず、熱揺らぎによる外径測定誤差の発生を避け得なかったのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−319129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたもので、非接触光学式の外径測定器を用いて、光ファイバ裸線の外径を常時測定しながら光ファイバ素線を製造するようにした光ファイバ素線製造装置において、冷却装置から漏出するHeガスなどの冷却用ガスの影響によって外径の測定誤差が生じたり、光ファイバ裸線の高温による熱揺らぎによって測定誤差が生じたりすることを、確実かつ有効に防止して、外径を常に正確に測定し、これにより光ファイバ素線の引取速度の制御を正しく行ない得るようにした光ファイバ素線製造装置、特に、生産性を高めるべく高速で線引きを行なう場合に適した製造装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前述の課題を解決するべく種々実験、検討を重ねた結果、紡糸用加熱炉から下方に引き出された光ファイバ裸線を冷却するための冷却装置と、光ファイバ裸線の外径を測定するための光学式の外径測定器とを一体化して、冷却装置内の光ファイバ裸線が通過する空間(冷却空間)と外径測定器の測定空間とを連続一体化し、これにより冷却空間内に導入されるHeなどの冷却用ガスが、冷却空間内と同時に外径測定器の測定空間にも満たされるようにすることが、前記課題の解決に有効であることを見い出し、本発明をなすに至った。
【0012】
具体的には、本発明の基本的な形態(第1の形態)による光ファイバ素線の製造装置は、
光ファイバ母材を加熱溶融させるための紡糸用加熱炉と、
この紡糸用加熱炉から下方に向けて線状に引き出された光ファイバ裸線を強制冷却するための冷却装置と、
冷却された光ファイバ裸線を樹脂により被覆するためのコーティング装置と、
そのコーティング装置により被覆された樹脂が硬化された状態の光ファイバ素線を引き取るための引取装置と、
光ファイバ裸線の外径を測定するための非接触光学式の外径測定器、
とを有してなる光ファイバ素線製造装置において;
前記冷却装置は、光ファイバ裸線が通線されかつ外部から冷却用ガスが導入される冷却空間を備えており、
前記外径測定器は、投光部と受光部とを備えており、前記投光部は、出射面を有する出射側光学部材を備え、前記受光部は、入射面を有する入射側光学部材を備えていて、前記出射面と前記入射面とは、所定間隔を置いて対向しており、かつ少なくともその出射面と入射面との間の空間が外径測定空間とされており、
さらに前記外径測定器は、前記冷却装置に一体化されて、前記外径測定空間を光ファイバ裸線が通過するように構成されるとともに、外径測定空間は、ファイバ入口部とファイバ出口部を除き気密に密閉された構成とされ、しかもその外径測定空間が冷却装置内の冷却空間に連続一体化されていて、その外径測定空間内が、冷却装置内の冷却空間とともに前記冷却用ガスによって満たされるように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
このような形態の光ファイバ素線の製造装置においては、外径測定空間が冷却装置の冷却空間に連続一体化されていて、その外径測定空間内が、冷却装置の冷却空間とともに前記冷却用ガス(例えばHeガス)によって満たされるため、外径測定空間内の雰囲気の屈折率は常に安定して一定の値を保ち、そのため安定して正確に光ファイバ裸線の外径を測定、監視することができる。また外径測定対象の光ファイバ裸線の周囲が常に冷却用ガスによって取り囲まれて、ほぼ一定の低い温度が保たれるため、熱揺らぎにより外径の測定誤差が生じるおそれも少なく、このことも、安定して正確に光ファイバ裸線の外径を測定、監視することができる一因となっている。
【0014】
また本発明の第2の形態による光ファイバ素線の製造装置は、前記第1の形態の光ファイバ素線の製造装置において、
前記外径測定器が、前記冷却装置の下部に配設されて、前記外径測定空間が前記冷却空間の下部に連続一体化されていることを特徴とするものである。
【0015】
このような第2の形態の光ファイバ素線の製造装置では、外部から外径測定空間に導入したHeガスなどの冷却用ガスが、さらにその外径測定空間の上方の冷却装置内の冷却空間に導かれることになる。この場合、外径測定空間には、十分に冷却された光ファイバ裸線が通過するから、線引き速度を高めた場合でも、ガラスが十分に硬化して外径が一定となった状態で光ファイバ裸線の外径を測定することができ、従って高速で光ファイバ素線を製造する場合でも、確実かつ安定してその線径を制御することができる。
【0016】
また本発明の第3の形態による光ファイバ素線の製造装置は、前記第1もしくは第2の形態の光ファイバ素線の製造装置において、
前記外径測定器の下方に前記コーティング装置が配設されており、
そのコーティング装置は、冷却された光ファイバ裸線が上方から未硬化のコーティング用樹脂中に連続的に浸漬されるように構成されており、
前記外径測定器の外径測定空間は、その下方が、コーティング装置の未硬化のコーティング用樹脂のメニスカスによって閉じられており、
前記冷却用ガスが、コーティング装置の未硬化のコーティング用樹脂のメニスカスよりも上方において前記外径測定空間および前記冷却空間内に導入されるように構成されたことを特徴とするものである。
【0017】
このような第3の形態の光ファイバ素線の製造装置においては、外径測定器の外径測定空間の下方が、コーティング装置の未硬化のコーティング用樹脂のメニスカスによって閉じられているため、そのメニスカスにより外径測定空間の気密性を確保することができ、そのため、外径測定空間内の雰囲気の急激な濃度変化を抑えることができる。
【0018】
さらに本発明の第4の形態による光ファイバ素線の製造装置は、前記第1〜第3の形態のうちのいずれかの形態の光ファイバ素線の製造装置において、
前記外径測定器における投光器と受光器との間に測定空間密閉容器が配設されており、その測定空間密閉容器は、その上面にファイバ入口部が形成されるとともに、その下面にファイバ出口部が形成され、
さらに測定空間密閉容器における、水平方向に対向する壁部の一方の側に投光側開口部が形成され、他方の側には受光側開口部が形成され、
前記投光側開口部に、外径測定器の投光部が第1のシール部材を介して気密に取り付けられ、前記受光側開口部に、外径測定器の受光部が第2のシール部材を介して気密に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0019】
このような第4の形態の光ファイバ素線の製造装置においては、外径測定器における投光器と受光器との間の領域(測定空間密閉容器によって囲まれる空間)が外径測定空間となり、その外径測定空間の容積が小さくてすむため、外径測定空間に充満させるに要する冷却用ガスの量を少なくすることができ、その結果、装置全体としても高価なHeガスなどの冷却用ガスの使用量を少なくすることができるとともに、運転開始時において、その空間の雰囲気を空気から冷却用ガスに置換するために要する時間を短縮することができ、さらに運転中において線引き速度を大きくする(増速する)際にも、速やかに冷却空間に導かれる冷却用ガスを増量することができるため、冷却不足によって光ファイバ素線径が小さくなってしまうような事態の発生をも有効に防止できる。
【0020】
そしてまた本発明の第5の形態による光ファイバ素線の製造装置は、前記第4の形態の光ファイバ素線の製造装置において、
前記外径測定器の投光部のうち、前記出射側光学部材の外周縁部と投光側開口部の内周縁部との間が前記第1のシール部材により気密にシールされ、また前記外径測定器の受光部のうち、前記入射側光学部材の外周縁部と受光側開口部の内周縁部との間が前記第2のシール部材により気密にシールされていることを特徴とするものである。
【0021】
このような第5の形態の光ファイバ素線の製造装置においては、外径測定器の投光部、受光部のそれぞれの先端に位置する出射側光学部材、入射側光学部材の間の領域の空間のみが密閉された外径測定空間となるため、外径測定空間の容積を確実に小さくすることができる。
【0022】
また本発明の第6の形態の光ファイバ素線の製造装置は、前記第1〜第3の形態のうちのいずれかの形態の光ファイバ素線の製造装置において、
前記外径測定器は、
光源を内臓しかつ前記投光部が取り付けられた投光側筐体部と、
受光素子を内臓しかつ前記受光部が取り付けられた受光側筐体部と、
前記投光側筐体部の側方の部分と前記受光側筐体部の側方の部分とを連結する連結枠部とを備え、
前記投光側筐体部と前記受光側筐体部と前記連結枠部とが、全体としてコ字状をなし、かつこれらの投光側筐体部と受光側筐体部と連結枠部とによって三方を取り囲まれる空間が前記外径測定空間とされ、
その外径測定空間が、前記投光側筐体部、前記受光側筐体部および前記連結枠部のそれぞれの外面に第3のシール部材を介して気密に接合された断面コ字状のカバー部材により取り囲まれており、かつそのカバー部材の上面に前記ファイバ入口部が形成されるとともに、カバー部材の下面にファイバ出口部が形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
このような第6の形態の光ファイバ素線の製造装置においては、断面コ字状のカバー部材を、第3のシール部材を介して外径測定器の外面に嵌め合わせるだけで外径測定空間を密閉できるため、装置の組み立てを容易に行なうことができる。
【0024】
さらに本発明の第7の形態の光ファイバ素線の製造装置は、前記第1〜第3の形態のうちのいずれかの形態の光ファイバ素線の製造装置において、
前記外径測定器の全体が密閉容器内に配置されており、かつその密閉容器の上面に前記ファイバ入口部が形成されるとともに、密閉容器の下面にファイバ出口部が形成されており、その密閉容器内の全体に前記冷却用ガスが満たされるように構成したことを特徴とするものである。
【0025】
このような第7の形態の光ファイバ素線の製造装置においては、外径測定器の全体をそっくり密閉容器内に収納すればよいため、市販の外径測定器にほとんど手を加える必要がなく、そのため装置組み立てコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、非接触光学式の外径測定器によって外径を測定すべき光ファイバ裸線が通過する外径測定空間が、冷却装置内の冷却空間に連続一体化されていて、その外径測定空間内が、冷却装置内の冷却空間とともに冷却用ガス(例えばHeガス)によって満たされるため、外径測定空間内の雰囲気の屈折率変動が小さくなり、また外径測定対象の光ファイバ裸線の周囲が常に冷却用ガスによって取り囲まれて、ほぼ一定の低い温度が保たれるため、熱揺らぎの発生も防止され、そのため安定して正確に光ファイバ裸線の外径を測定、監視することができるから、外径測定結果に基づいて線引き速度を制御するにあたっても、優れた応答性をもって正確に線引き速度を制御することができ、したがって外径不良の発生が少なく、特に線引き速度を高めて高い生産性で光ファイバ素線を製造するために好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態による光ファイバ素線製造装置の全体構成を示す略解図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による光ファイバ素線製造装置における外径測定器の部分について原理的に示す略解図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による光ファイバ素線製造装置の要部(外径測定器付近)を示す縦断面図である。
【図4】図3のIV―IVにおける横断平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による光ファイバ素線製造装置の要部(外径測定器付近)を示す縦断面図である。
【図6】図5のVI―VIにおける横断平面図である。
【図7】図6のVII―VIIにおける縦断側面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態による光ファイバ素線製造装置の要部(外径測定器付近)を示す縦断面図である。
【図9】図9のIX−IX線における横断平面図である。
【図10】従来提案されている光ファイバ素線製造装置の一例の全体構成を示す略図である。
【図11】本発明の光ファイバ素線製造装置に対する参考例としての光ファイバ素線製造装置の外径測定器付近の状況を、図2に対応して示す略解図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1は本発明の第1の実施形態の光ファイバ素線製造装置10の全体的な構成を示す図である。
図1において、光ファイバ素線製造装置10は、例えば石英系ガラスなどからなる光ファイバ母材12を加熱溶融させるための紡糸用加熱炉14と、紡糸用加熱炉14から下方に向けて線状に引き出された光ファイバ裸線16を強制冷却するための冷却装置18と、冷却された光ファイバ裸線16を保護被覆用の樹脂により被覆するためのコーティング装置20と、そのコーティング装置20により被覆された樹脂を硬化させるために必要に応じて設けられる硬化装置22と、保護被覆用の樹脂が硬化された状態の光ファイバ素線24を引き取るための引取装置26とを備えた構成とされている。さらに前記冷却装置18の下部には、レーザ外径測定器で代表される非接触光学式の外径測定器30が、冷却装置18と一体化された状態で設けられており、またこの外径測定器30は、その下方のコーティング装置20にも一体化されている。そして冷却装置18の下端からコーティング装置20の上端までの間の適宜の箇所(図1の例では外径測定器30の下端とコーティング装置20の上端との間の位置)には、外部の冷却用ガス供給源21からHeガスなどの冷却用ガスを導入するためのガス導入口19が設けられている。なお、外径測定装置30によって測定された光ファイバ裸線の外径についての信号は、引取速度制御装置27に送られ、引取装置26の引取速度を制御するようになっている。
【0030】
上述の第1の実施形態における外径測定器30の部分について、その水平断面を上から見た模式的な状況を図2に示す。
図2において、外径測定器30は、基本的には、図示しないレーザ光源、例えば半導体レーザなどの光源からの光を、投光部32から光ファイバ裸線16が通過する位置に向けて投射し、その光ファイバ裸線16の位置を通過した光、すなわち投影光Lを、受光部34を経て図示しない受光素子やCCDラインセンサなどの光検出部によって受け、図示しない信号処理回路によって光検出部からの信号を処理することにより、光ファイバ裸線16の外径を測定するものである。より具体的には、外径測定器30は、図示しない光源を内臓しかつ前記投光部32が取り付けられた投光側筐体部36と、図示しない受光素子などの光検出部を内臓しかつ前記受光部34が取り付けられた受光側筐体部38と、投光側筐体部36の側方の部分と受光側筐体部38の側方の部分とを連結する連結枠部40とを備えていて、投光側筐体部36と受光側筐体部38と連結枠部40とが、平面的に見て全体としてコ字状をなす構成とされている。さらに、投光部32は、レンズなどの出射側光学部材32Aを備え、また受光部34も、レンズなどの入射側光学部材34Aを備えていて、出射側光学部材32Aの出射面32Aaと入射側光学部材34Aの入射面34Aaとは、それらの中間を外径測定対象の光ファイバ裸線16が通過するように、所定間隔を置いて対向している。
【0031】
さらに外径測定器30における投光側筐体部36と受光側筐体部38と連結枠部40とがなすコ字状の空間内には、測定空間密閉容器44が配設されている。この測定空間密閉容器44は、図示の例では、全体として直方体をなす箱状に作られており、後に改めて図3、図4を参照して説明するように、上面側のファイバ入口部分と下面側のファイバ出口部分とを除き、気密に密閉されるように作られている。そして測定空間密閉容器44における、水平方向に対向する一対の側面壁部44A、44Bのうちの一方の側面壁部44Aに投光側開口部48Aが形成され、他方の側面壁部44Bに受光側開口部48Bが形成されている。そして投光側開口部48Aに、外径測定器30の投光部32が挿入されて、その投光部32の外周面と投光側開口部48Aの内周縁との間が、全体として環状をなす第1のシール部材50Aによって気密にシールされている。一方、受光側開口部48Bに、外径測定器30の受光部34が挿入されて、その受光部34の外周面と受光側開口部46Bの内周縁との間も、全体として環状をなす第2のシール部材50Bによって気密にシールされている。そしてその密閉用壁部材44の内側の空間、特に投光部32における出射側光学部材32Aの出射面32Aaと、受光部34における入射側光学部材34Aの入射面34Aaとの間の空間が外径測定空間42とされており、その外径測定空間42を光ファイバ裸線16が通過するように構成されている。なお第1のシール部材50Aおよび第2のシール部材50Bとしては、例えばウレタンゴムや、シリコン系樹脂などの弾性材によって作られていればよく、特に限定されるものではない。
【0032】
ここで、密閉用壁部材44の内側の空間(外径測定空間42)は、後に改めて図3、図4を参照して説明するように、冷却装置18の内部空間(冷却対象の光ファイバ裸線16が通過する冷却空間)に連通して、その冷却空間と連続一体化されており、したがってこの外径測定空間にも、冷却装置18の冷却空間に導入されるHeガスなどの冷却用ガスが満たされることになる。そのため外径測定空間42内の雰囲気の急激な濃度変化を抑えることができ、したがって外径測定空間42内の雰囲気の屈折率変動が小さくなるから、従来技術のように空気と冷却用ガスとの屈折率の差に起因して、光ファイバ裸線16の外径測定値に誤差が生じてしまうことを防止することができる。また、その外径測定空間42を通過する光ファイバ裸線16の周囲は、低温の冷却用ガスによって取り囲まれるため、熱揺らぎにより測定誤差が生じることも防止できる。
【0033】
図3、図4には、さらに上記の第1の実施形態の光ファイバ素線の製造装置10における外径測定器30付近の構造(冷却装置18から外径測定器30を経てコーティング装置20に至るまでの構造)を、より具体化した例を示す。
図3、図4において、冷却装置18は、内側に冷却空間18Dを形成するように、全体として円筒状に作られており、かつその円筒状壁部18Aは、2重壁のジャケット構造とされて、冷却水などの冷却媒体により冷却されるようになっている。その冷却装置18の上端面にはファイバ入口18Bが形成され、下端面にはファイバ出口18Cが形成されており、そのファイバ出口18Cの下方には、連結用筒部18Caが延出されている。そして連結用筒部18Caの下方には、測定空間密閉容器44および外径測定器30が配設されている。
測定空間密閉容器44は、前述のように全体として直方体をなす箱状に作られている。また外径測定器30も、前述のように投光側筐体部36と受光側筐体部38と連結枠部40とが、平面的に見て全体としてコ字状をなす構成とされていて、その投光側筐体部36と受光側筐体部38と連結枠部40とによって三方が取り囲まれる空間内に測定空間密閉容器44が配設されている。
【0034】
一方、測定空間密閉容器44の上面壁部44Cには、ファイバ入口部46Aが開口形成され、下面壁部44Dには、ファイバ出口部46Bが開口形成されている。そしてファイバ入口部46Aには、その上方に延出する連結用筒部46Aaが形成されていて、前述の冷却装置18の側の連結用筒部18Caと、測定空間密閉容器44の側の連結用筒部46Aaとが、中空円筒状の第1の連結部材54Aによって気密に連結されている。そして測定空間密閉容器44の水平方向に対向する一対の側面壁部44A、44Bのうちの一方の側面壁部44Aに形成された投光側開口部48Aに、外径測定器30の投光部32の先端のレンズなどの出射側光学部材32Aが挿入されて、その出射側光学部材32Aの外周面と投光側開口部48Aの内周縁との間が、第1のシール部材50Aによって気密にシールされている。また測定空間密閉容器44の他方の側面壁部44Bに形成された受光側開口部48Bに、外径測定器30の受光部34の先端のレンズなどの入射側光学部材34Aが挿入されて、その入射側光学部材34Aの外周面と受光側開口部48Bの内周縁との間が、第2のシール部材50Bによって気密にシールされている。
【0035】
さらに測定空間密閉容器44の下面壁部44Dのファイバ出口部46Bからは、下方に延出する連結用筒部46Baが形成されていて、その連結用筒部46Baは、測定空間密閉容器44の下方に配設されたコーティング装置20に、中空円筒状の第2の連結部材54Bによって気密に連結されている。そしてこの第2の連結部材54Bには、冷却用ガス供給源21(図1参照)からHeガスなどの冷却用ガスを導入するためのガス導入口19が設けられている。
【0036】
ここでコーティング装置20は、上部のニップル部20Aと下部のダイス部20Bとを一体化したもので、ニップル部20Aに、光ファイバ裸線16が上方から鉛直に挿入されるファイバ挿入口部20Aaが形成されるとともに、そのファイバ挿入口部20Aaの開口端から上方に延出する連結筒部20Abが形成され、一方ダイス部20Bには、コーティング用の未硬化の樹脂56を受容するための樹脂受容部20Baが、ファイバ挿入口部20Aaの下方に連続するように形成されるとともに、その樹脂受容部20Baの中央部から下方に連続するダイス孔20Bbが形成され、さらに樹脂受容部20Baの上部の側方には、コーティング用の未硬化の樹脂56を樹脂受容部20Baに導入するための樹脂導入口20Bcが形成されている。そしてこのコーティング装置20の上端の連結筒部20Abと、前述の測定空間密閉容器44の下端の連結用筒部46Baとが、前記第2の連結部材54Bによって気密に連結されているのである。なおコーティング装置20のダイス孔20Bbの下方には、硬化装置22およびターンプーリ28が配設されている(図1参照)。
【0037】
以上のような第1の実施形態において、紡糸用加熱炉14(図1参照)の下端から下方に引き出された光ファイバ裸線16は、冷却装置18を通過して冷却されるに引き続いて外径測定器30において外径が測定され、引き続いてコーティング装置20において外周面上に保護被覆用の樹脂が未硬化の状態でコーティングされる。このコーティング装置20では、光ファイバ裸線16は、上方から樹脂受容部20Ba内の未硬化樹脂56中に連続的に浸漬され、ダイス孔20Bbから、表面に所定の厚みで未硬化の樹脂が付着した状態で下方に引き出される。このとき樹脂受容部20Ba内は未硬化の樹脂56で満たされているため、その未硬化の樹脂56のメニスカス(液面)56Aの上面側の空間は、その下方がメニスカス56Aによって閉じられていることになる。
【0038】
一方、測定空間密閉容器44内の外径測定空間42は、その上方において冷却装置18内の冷却空間18Dに連続一体化されており、かつその外径測定空間42は、コーティング装置20の樹脂受容部20Ba内の未硬化の樹脂56のメニスカス(液面)56Aの上面まで連続している。したがって測定空間密閉容器44内の外径測定空間42の下側は、上述のメニスカス20Cによって閉じられていることになる。そのため、外径測定空間42に外部から空気が侵入することが防止されて、第2の連結部材54Bに設けられたガス導入口19から導入されたHeガスなどの冷却用ガスが、コーティング装置20の樹脂受容部20Baのメニスカス56Aの上方から測定空間密閉容器44内の外径測定空間42に一定濃度で充満される。したがって既に述べたように、外径測定空間42内において光ファイバ裸線16の外径が正確に測定される。またその外径測定空間42内の冷却用ガスは、さらに測定空間密閉容器44のファイバ入口部46Aから、連結筒部46Aa、第1の連結部材54A、連結筒部18Caを経て冷却装置18のファイバ出口18Cから冷却装置18内の冷却空間18D内に導入され、冷却空間18Dを通過する光ファイバ裸線16の冷却に寄与する。
【0039】
ここで、本発明の光ファイバ素線製造装置においては、冷却用ガスを冷却装置18内の空間(冷却空間18D)のみならず、外径測定空間42内にも満たさせる必要があるため、冷却用ガスの使用量は、外径測定空間42に冷却用ガスを導入しない従来の通常の光ファイバ素線製造装置と比較して増加する可能性がある。一方、冷却用ガスとして一般に使用されているHeガスは、稀少ガスであって高価であるから、その使用量はできるだけ少ないことが望ましく、したがってHeガスを満たすべき外径測定空間42の容積はできるだけ小さいことが望まれる。また、冷却用ガスとしてのHeガスを満たすべき空間の容積が大きければ、装置の運転開始時において、その空間内の空気をパージしてHeガスに置換するために長時間を要するようになって、生産性の低下を招くから、その意味からも冷却用ガスを満たすべき外径測定空間42の容積は小さいことが望まれる。さらに、運転途中において線引き速度を高める(増速する)場合、冷却用ガスの供給量を増加させる必要が生じることがあるが、その場合、冷却用ガスを満たすべき空間の容積が大きければ、急激な増速に冷却用ガスの供給量増加が追いつかず、一時的に冷却不足が生じて、光ファイバ素線径が小さくなってしまうおそれがあり、そのような観点からも、冷却用ガスを満たすべき空間の容積は小さいことが望まれる。
【0040】
しかるに上記の第1の実施形態では、測定空間密閉容器44によって区画される、外径測定器30の投光部32の前面(出射側光学部材32Aの出射面32Aa)と受光部34の前面(入射側光学部材34Aの入射面34Aa)との間の比較的小さい領域のみが外径測定空間42とされるため、冷却用ガスの使用量の増大は少なくてすみ、また運転開始時に要するガス置換時間もさほど長くならず、かつ増速時のファイバ冷却不足も生じにくい。そしてこれらの効果は、後に改めて説明する本発明の第2の実施形態や第3の実施形態と比較して顕著に発揮されるのである。
【0041】
なお、単純に外径測定空間の容積を小さくすることだけの観点からすれば、例えば参考例として示す図11の場合の方が有利となる。すなわち図11は、本発明に対する参考例としての光ファイバ素線製造装置の外径測定器付近の構造を、前記第1の実施形態の図2に倣って示すもので、図11の場合は、外径測定器30の投光部32の出射面32Aaおよび受光部34の入射面34Aaよりも内側の位置に測定空間密閉容器44´を配設し、その測定空間密閉容器44´における投光部出射面32Aaに対応する位置、および受光部入射面34Aaに、それぞれガラスなどの透光性材料からなる窓部45A、45Bを設けておき、投光部32から窓部45Aを介して光ファイバ裸線16にレーザ光などの測定光を投射し、その投影光Lを、窓部45Bを経て受光部34に入射させるように構成している。この場合、測定空間密閉容器44は、その容積(すなわち外径測定空間42の容積)が、本発明の図1〜図4に示す第1の実施形態の場合よりも小さくなり、そのためHeガスなどの冷却用ガスの使用量低減およびガス置換時間の短縮などには有利と考えられる。
【0042】
しかしながら図11の装置の場合、外径測定器30の投光部32の出射面32Aaから測定対象の光ファイバ裸線16との間の光路、および光ファイバ裸線16から受光部34の入射面34Aaまでの間の光路に、それぞれ窓部45A、45Bが介在する。そのため外径測定器30の出射面32Aaおよび入射面34Aaに対する窓部45A、45Bの取り付け角度の正確さが、外径測定の精度に大きな影響を与えるが、実際の装置では、同種の外径測定器でも個体差があり、また光ファイバ素線製造装置の冷却装置やコーティング装置の側にも、ある程度の寸法誤差や組み立て誤差が存在するのが常であり、従って実際には窓部45A、45Bの取り付け角度の精度を高めることは極めて困難であり、そのため測定光路の変動は避けがたく、また仮に窓部45A、45Bを正しい角度で取り付けたとしても、経時変化によってその角度が変化して光路のずれが生じてしまうおそれがある。したがってこれらの理由から、図11に示す構成では、光ファイバ裸線の外径測定の正確性が劣るおそれがある。
【0043】
これに対し図1〜図4に示される本発明の第1の実施形態の場合は、測定光路中に窓部などの光路を変動させる要因となる部材が存在しないため、上述のような不都合を招くことがなく、常に正確に光ファイバ裸線の外径を測定することができるのである。
【0044】
図5〜図7には、本発明の別の実施形態の光ファイバ素線製造装置における外径測定器付近の構造を示す。
図5〜図7において、外径測定器30自体の形状は、既に述べたと同様に、投光部32を備えた投光側筐体部36と、受光部34を備えた受光側筐体部38と、これらを結ぶ連結枠部40とがコ字状をなしており、これらによって三方を囲まれる空間が外径測定空間42とされている。そしてこの外径測定空間42は、ファイバ入口の開口部分とファイバ出口の開口部分とを除き、断面がコ字状をなすカバー部材58および第3のシール部材60によって気密に密閉されている。すなわちカバー部材58は、上面部58Aと、下面部58Bと、側面部58Cとを有するように、板をコの字状に折り曲げた形状に作られており、上面部58Aのほぼ中央にはファイバ入口部62Aが、下面部58Bのほぼ中央にはファイバ出口部62Bが開口形成され、かつファイバ入口部62Aには上方に延出する連結筒部62Aaが、ファイバ出口部62Bには下方に延出する連結筒部62Baが、それぞれ一体に形成されている。そして上面部58Aの周辺部の下面が、外径測定器30における投光側筐体部36、受光側筐体部38、連結枠部40の上面の縁部を覆い、下面部58Bの周辺部の上面が、外径測定器30における投光側筐体部36、受光側筐体部38、連結枠部40の下面の縁部を覆い、さらに側面部58Cの内面縁部が、外径測定器30における投光側筐体部36、受光側筐体部38の端面縁部を覆うように配設され、そしてこれらのカバー部材58の各面と外径測定器30との間が、シート状の弾性材、たとえばウレタンゴムやシリコン系樹脂などのシート、あるいはエポキシ樹脂などのコーキング材(充填材)からなる第3のシール部材60によって気密にシールされている。したがってカバー部材58は、その上面部58Aが外径測定空間42の上方開口部分を閉じ、下面部58Bが外径測定空間42の下方開口部分を閉じ、さらに側面部58Cが外径測定空間42の側方開口部分を閉じるように、外径測定空間42を囲んでいることになる。
【0045】
そしてカバー部材58の上部の連結筒部62Aaが、前述の第1の連結部材54Aを介して上方の冷却装置の連結用筒部18Ca(図3参照)に気密に連結されている。またカバー部材58の下部の連結筒部62Baが、前述の第2の連結部材54Bを介して、下方のコーティング装置の連結筒部20Ab(図3参照)に気密に連結されている。さらに第2の連結部材54Bには、図3に示した第1の実施形態と同様に、Heガスなどの冷却用ガスが導入されるガス導入口19が形成され、また連結筒部20Abの下方は、第1の実施形態と同様にコーティング装置内の未硬化の樹脂のメニスカスにより気密に閉じられている(図示略)。
【0046】
この第2の実施形態の装置の場合、カバー部材58の上面部58、下面部58B、および側面部58Cによって区画される外径測定空間42は、これらの各面と外径測定器30の外面との間の第3のシール部材60によって気密にシールされ、かつその下方もコーティング装置内の未硬化の樹脂のメニスカスにより閉じられているから、外径測定空間42に外部から空気が侵入することなく、ガス導入口19から導入されるHeガスなどの冷却用ガスによって一定濃度で満たされ、さらにその冷却用ガスが冷却装置18内の冷却空間18Dに導かれる。したがって外径測定空間42内において光ファイバ裸線16の外径が正確に測定される。
【0047】
ここで、図5〜図7に示す第2の実施形態の場合には、図1〜図4に示した第1の実施形態の場合よりも外径測定空間42の容積は若干大きくなるが、その増加割合はさほど大きくなく、したがってHeガスなどの冷却用ガスの使用量増加もさほど大きくはならない。またこの第2の実施形態の装置では、第3のシール部材60を介して断面コ字状のカバー部材58を外径測定器30の外面に嵌め込むだけで外径測定空間42を密閉することができ、そのため装置の組み立てが容易となる。
【0048】
図8、図9には、本発明の第3の実施形態の光ファイバ素線製造装置における外径測定器付近の構造を示す。
図8、図9において、外径測定器30は、その全体が箱状の密閉容器64内に収納されている。この密閉容器64の上面のほぼ中央にはファイバ入口部64Aが、下面のほぼ中央にはファイバ出口部64Bが、それぞれ開口形成され、かつファイバ入口部64Aには上方に延出する連結筒部64Aaが、ファイバ出口部64Bには下方に延出する連結筒部64Baが、それぞれ一体に形成されている。そして密閉容器64の上部の連結筒部64Aaが、前述の第1の連結部材54Aを介して上方の冷却装置の連結用筒部18Ca(図3参照)に気密に連結されている。また密閉容器64の下部の連結筒部64Baは、前述の第2の連結部材54Bを介して、下方のコーティング装置の連結筒部20Ab(図3参照)に気密に連結されている。さらに第2の連結部材54Bには、図3に示したものと同様に、Heガスなどの冷却用ガスが導入されるガス導入口19が形成され、また連結筒部20Abの下方は、前記同様に、コーティング装置内の未硬化の樹脂のメニスカスにより気密に閉じられている(図示略)。さらに外径測定器30に対する電源供給および制御信号の入力、測定信号の出力などを行なうためのケーブル66は、密閉容器64の壁部を貫通し、そのケーブル貫通部分はゴムや樹脂などの弾性材からなる第4のシール部材68によって気密にシールされている。
【0049】
この実施形態の装置の場合、密閉容器64によって区画される空間のうち、外径測定器30の投光部32と受光部34との間が外径測定空間42に相当するが、外径測定器30を取り囲む密閉容器64の内側全体が気密に密閉されているため、その一部を占める外径測定空間42も、密閉容器64の外側の外部空間に対して気密に密閉されていることになり、したがって前述の各実施形態と同様に、外径測定空間42に外部の空気が侵入せず、ガス導入口19から導入されるHeガスなどの冷却用ガスを、外径測定空間42に、急激な濃度変化が生じることなく充満させることができる。したがって外径測定空間42内において光ファイバ裸線16の外径が正確に測定される。
【0050】
ここで、図8、図9に示す第3の実施形態の場合には、図1〜図4に示した第1の実施形態の場合よりも外径測定空間42の容積が大きくなるため、Heガスなどの冷却用ガスの使用量は多くなる。しかしながら外径測定の正確性の点では、第1の実施形態の場合と同等となる。なおこの実施形態の場合、冷却用ガスを満たすべき空間の容積が大きいところから、装置の運転開始時などにおいて冷却用ガスを充填する際に、空間内に空気が存在している状態のまま、冷却用ガスを空間内に導入して空気をパージすれば、空間内の空気を冷却用ガスに完全に置換するまでに長時間を必要としてしまうから、一旦空間内を真空に引いて空間内の空気をほぼ完全に排除した後に、冷却用ガスを導入することが望ましい。
【0051】
なお以上の各実施形態の装置では、外径測定器30内の外径測定空間42とコーティング装置20との中間の中空筒状の第2の連結部材54に冷却ガス導入のためのガス導入口19を設けて、その位置から冷却用ガスを導入する構成としているが、冷却用ガスの導入位置は、要は冷却装置18の冷却空間18D内に導入すべき冷却用ガスによって外径測定空間42が充満されるように定めればよく、上記の位置に限られるものではない。例えば、コーティング装置20の上端の連結筒部20Abにガス導入口19を設けたり、あるいは第1の実施形態における測定空間密閉容器44の下部の連結筒部46Ba、もしくは第2の実施形態におけるカバー部材58の下部の連結筒部62Ba、あるいは第3の実施形態における密閉容器64の下部の連結筒部64Baにガス導入口19を設けたりしてもよい。さらには第1の実施形態における測定空間密閉容器44自体にガス導入口19を設けたり、また第2の実施形態におけるカバー部材58自体にガス導入口19を設けたり、あるいは第3の実施形態における密閉容器64自体にガス導入口19を設けてもよい。
【0052】
さらに、以上の各実施形態では、冷却装置18の下部に外径測定器30を配設して、外径測定装置18の外径測定空間42の上方に冷却措置18内の冷却空間18Dが連続一体化された構成としているが、場合によっては、冷却装置18の上下方向の中間を分断してその冷却装置の中間部分に外径測定器30を配設して、外径測定空間42が、その上方および下方のそれぞれの冷却空間に連続一体化された構成としてもよい。なおまた、主として低速で線引きして光ファイバ素線を製造する装置の場合においては、冷却装置18の上端に外径測定器30を配設して、外径測定空間42の下方に冷却装置18の冷却空間18Dが連続一体化された構成とすることも許容される。
【符号の説明】
【0053】
10 光ファイバ素線製造装置
12 光ファイバ母材
14 紡糸用加熱炉
16 光ファイバ裸線
18 冷却装置
19 ガス導入口
20 コーティング装置
24 光ファイバ素線
26 引取装置
30 外径測定器
32 投光部
32A 出射側光学部材
32Aa 出射面
34 受光部
34A 入射側光学部材
34Aa 入射面
36 投光側筐体部
38 受光側筐体部
40 連結枠部
42 外径測定空間
44 測定空間密閉容器
44A 一方の側面壁部
44B 他方の側面壁部
46A ファイバ入口部
46B ファイバ出口部
48A 投光側開口部
48B 受光側開口部
50A 第1のシール部材
50B 第2のシール部材
56 未硬化の樹脂
56A メニスカス
58 カバー部材
60 第3のシール部材
62A ファイバ入口部
62B ファイバ出口部
64 密閉容器
64A ファイバ入口部
64B ファイバ出口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ母材を加熱溶融させるための紡糸用加熱炉と、
この紡糸用加熱炉から下方に向けて線状に引き出された光ファイバ裸線を強制冷却するための冷却装置と、
冷却された光ファイバ裸線を樹脂により被覆するためのコーティング装置と、
そのコーティング装置により被覆された樹脂が硬化された状態の光ファイバ素線を引き取るための引取装置と、
光ファイバ裸線の外径を測定するための非接触光学式の外径測定器、
とを有してなる光ファイバ素線製造装置において;
前記冷却装置は、光ファイバ裸線が通線されかつ外部から冷却用ガスが導入される冷却空間を備えており、
前記外径測定器は、投光部と受光部とを備えており、前記投光部は、出射面を有する出射側光学部材を備え、前記受光部は、入射面を有する入射側光学部材を備えていて、前記出射面と前記入射面とは、所定間隔を置いて対向しており、かつ少なくともその出射面と入射面との間の空間が外径測定空間とされており、
さらに前記外径測定器は、前記冷却装置に一体化されて、前記外径測定空間を光ファイバ裸線が通過するように構成されるとともに、外径測定空間は、ファイバ入口部とファイバ出口部を除き気密に密閉された構成とされ、しかもその外径測定空間が冷却装置内の冷却空間に連続一体化されていて、その外径測定空間内が、冷却装置内の冷却空間とともに前記冷却用ガスによって満たされるように構成されていることを特徴とする、光ファイバ素線の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ素線の製造装置において;
前記外径測定器が、前記冷却装置の下部に配設されて、前記外径測定空間が前記冷却空間の下部に連続一体化されていることを特徴とする、光ファイバ素線の製造装置。
【請求項3】
請求項1および請求項2のいずれかの請求項に記載の光ファイバ素線の製造装置において;
前記外径測定器の下方に前記コーティング装置が配設されており、
そのコーティング装置は、冷却された光ファイバ裸線が上方から未硬化のコーティング用樹脂中に連続的に浸漬されるように構成されており、
前記外径測定器の外径測定空間は、その下方が、コーティング装置の未硬化のコーティング用樹脂のメニスカスによって閉じられており、
前記冷却用ガスが、コーティング装置の未硬化のコーティング用樹脂のメニスカスよりも上方において前記外径測定空間および冷却用密閉空間内に導入されるように構成されたことを特徴とする、光ファイバ素線の製造装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか1の請求項に記載の光ファイバ素線の製造装置において;
前記外径測定器における投光器と受光器との間に測定空間密閉容器が配設されており、その測定空間密閉容器は、その上面に前記ファイバ入口部が形成されるとともに、その下面に前記ファイバ出口部が形成され、
さらに測定空間密閉容器における、水平方向に対向する壁部の一方の側に投光側開口部が形成され、他方の側には受光側開口部が形成され、
前記投光側開口部に、外径測定器の投光部が、第1のシール部材を介して気密に取り付けられ、前記受光側開口部に、外径測定器の受光部が、第2のシール部材を介して気密に取り付けられていることを特徴とする、光ファイバ素線の製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光ファイバ素線の製造装置において;
前記外径測定器の投光部のうち、前記出射側光学部材の外周縁部と投光側開口部の内周縁部との間が前記第1のシール部材により気密にシールされ、また前記外径測定器の受光部のうち、前記入射側光学部材の外周縁部と受光側開口部の内周縁部との間が前記第2のシール部材により気密にシールされていることを特徴とする、光ファイバ素線の製造装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか1の請求項に記載の光ファイバ素線の製造装置において;
前記外径測定器は、
光源を内臓しかつ前記投光部が取り付けられた投光側筐体部と、
受光素子を内臓しかつ前記受光部が取り付けられた受光側筐体部と、
前記投光側筐体部の側方の部分と前記受光側筐体部の側方の部分とを連結する連結枠部とを備え、
前記投光側筐体部と前記受光側筐体部と前記連結枠部とが、全体としてコ字状をなし、かつこれらの投光側筐体部と受光側筐体部と連結枠部とによって三方を取り囲まれる空間が前記外径測定空間とされ、
その外径測定空間が、前記投光側筐体部、前記受光側筐体部および前記連結枠部のそれぞれの外面に第3のシール部材を介して気密に接合された断面コ字状のカバー部材により取り囲まれており、かつそのカバー部材の上面に前記ファイバ入口部が形成されるとともに、カバー部材の下面にファイバ出口部が形成されていることを特徴とする、光ファイバ素線の製造装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか1の請求項に記載の光ファイバ素線の製造装置において;
前記外径測定器の全体が密閉容器内に配置されており、かつその密閉容器の上面に前記ファイバ入口部が形成されるとともに、密閉容器の下面にファイバ出口部が形成されており、その密閉容器内の全体に前記冷却用ガスが満たされるように構成したことを特徴とする、光ファイバ素線の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−121761(P2012−121761A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273713(P2010−273713)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】