光ファイバ素線及びその製造方法
【課題】 光ファイバ素線の残留応力の径方向分布差が小さく、レーリ散乱も低く抑えられる光ファイバ素線と、このような光ファイバ素線を高速で線引した場合でも、長い徐冷長を要することなく、光ファイバ裸線に対して適切な徐冷温度を施すことが可能な製造方法とを提供する。
【解決手段】 本発明に係る光ファイバ素線は、コア部、及び、その周囲をなす少なくとも一層以上のクラッド層からなるクラッド部、から構成されてなる光ファイバ素線であって、前記クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、その半径方向のほぼ全域において引張応力であり、内周側から外周側に向けて減少していることを特徴とする。
【解決手段】 本発明に係る光ファイバ素線は、コア部、及び、その周囲をなす少なくとも一層以上のクラッド層からなるクラッド部、から構成されてなる光ファイバ素線であって、前記クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、その半径方向のほぼ全域において引張応力であり、内周側から外周側に向けて減少していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ素線及びその製造方法に係る。より詳細には、伝送損失とともにレーリ散乱係数も低く、シングルモード光ファイバとして好適な光ファイバ素線及びその製造方法に関する。本発明に係る光ファイバ素線は、長距離伝送システムや光増幅システム、光ラマン増幅システムに用いられる。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ファイバ素線は、以下のようにして製造されている。
図25は、光ファイバ素線の製造方法で用いられる光ファイバ素線の製造装置の概略構成を示す模式図である。
【0003】
光ファイバ素線の製造においては、まず、石英系ガラスを主成分とする光ファイバ母材11を紡糸炉12内に収容し、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などの不活性ガス雰囲気中で、その先端部分を約2000℃に高温加熱し、溶融紡糸して、光ファイバ裸線13とする。
【0004】
次に、光ファイバ裸線13を冷却筒14内に送り込む。冷却筒14内には、ヘリウムや窒素などの冷却用ガスが供給されており、冷却筒14において光ファイバ裸線13を次工程である一次被覆層の形成に好適な温度まで急冷する。
【0005】
次いで、冷却筒14で冷却された光ファイバ裸線13は、被覆層形成用の被覆材塗布装置15およびUVランプ16により、紫外線硬化型樹脂などからなる被覆層で被覆され、光ファイバ素線17となる。
【0006】
さらに、紡糸中の光ファイバ素線17は、ターンプーリ18によって別方向に向きを変えられ、引取機19、ダンサーロール20を経て、巻取ドラム21に巻き取られる。
【0007】
近年、このような製法により形成される光ファイバの生産においては、生産効率の向上やコストダウンを図ることが強く求められており、この要望に応えるため、前述した紡糸工程では従来より高速度で溶融紡糸する製法が各研究機関において鋭意検討されている。
【0008】
しかしながら、紡糸線速が100m/minを越えるような高速度で紡糸を行う場合には、従来の低速紡糸(紡糸線速が100m/min未満)とは異なり、様々な技術的な課題が生じる。例えば、このように光ファイバ裸線の移動速度が速くなると、紡糸工程における光ファイバ裸線は、紡糸炉の加熱空間内、または、徐冷炉等の熱処理空間内を、従来より極めて短い時間のうちに通過してしまうことから、熱処理工程に施す設備の長さを従来に比べて延長する必要があった。つまり、従来と同様に、光ファイバ裸線の温度をAからB(A>B)まで減温しようとすると、紡糸線速を2倍にすると、熱処理工程を施す設備の長さを従来の2倍にする必要があった。
【0009】
逆に、熱処理工程に施す設備の長さを変更することなく紡糸線速を2倍にすると、光ファイバ裸線は従来の半分の時間で熱処理工程の域外に出てしまうことになる。そして、一旦、熱処理工程の域外に出た光ファイバ裸線は、その冷却速度が急に速くなることから、仮想温度が高くなってしまう傾向にある。
【0010】
ここで対象とする光ファイバ裸線はガラス母材から形成されるものである。一方、ガラスは、熱力学的に非平衡な系であり、その構造は液体からの凍結過程で決まることが知られており、この凍結温度は仮想温度と呼ばれる。
つまり、仮想温度が高くなるということは、ガラス構造が凍結されたときの密度揺らぎや濃度揺らぎが大きいことを意味し、これにより、レーリ散乱が大きくなり、最終的に損失増加を引き起こすことが公知である(例えば、非特許文献1を参照)。
【0011】
このレーリ散乱起因の損失増加を低減するために、光ファイバ裸線を徐冷する方法が各所において研究・開発がなされており、数々の手法が提案されている(例えば、特許文献1〜16を参照)。
【0012】
しかしながら、これらの方法は、徐冷する温度域、徐冷時間、徐冷炉設置位置、徐冷炉設置温度、徐冷炉構造などについて、数々の提案がされているが、主に線引線速が遅い場合について考えられており、そのまま高速線引に当てはめると、とても長い徐冷長が必要になり、設備の高さや長い熱処理工程が必要になるなどコストが嵩み、現実的ではない。また、母材の組成や、屈折率分布などにより、適切な徐冷温度が異なっており、一概に同一条件で製造しても、すべてにおいて良好な損失が得られない問題がある。
【0013】
また、徐冷された光ファイバの温度履歴は、徐冷炉入線温度や、出線温度を測定し、その温度データ、および徐冷炉温度から、実際の温度履歴を計算するか、または、平均的な徐冷速度を算出するしかなく、不確実性があった。
【0014】
さらに、上述した光ファイバ素線の製造にあっては、光ファイバ裸線の冷却速度の増加に伴い、光ファイバ裸線がその外周から急冷される傾向が強まる。そのため、最終的に得られる光ファイバ素線に残留する光軸方向の応力(以下、残留応力と略す。)の径方向分布差が大きくなり、その結果として、光ファイバ素線内のガラス構造に起因する構造不整損失が増加するという問題がある。なお、線引き速度が遅い(1000m/min未満)の場合には、光ファイバ裸線の冷却速度が遅いため、残留応力の径方向分布が大きくならず、構造不整損失の増加は見られなかった。
【0015】
したがって、光ファイバ裸線を高速で線引した場合でも、長い徐冷長を要することなく、適切な徐冷温度が施され、光ファイバ素線の残留応力の径方向分布差が小さく、レーリ散乱も低く抑えられる、光ファイバ素線及びその製造方法の開発が期待されていた。
【特許文献1】特開平4−059631号公報
【特許文献2】特開2000−335933号公報
【特許文献3】特開2000−335934号公報
【特許文献4】特開2000−335935号公報
【特許文献5】特開2001−114525号公報
【特許文献6】特開2001−114526号公報
【特許文献7】特開2002−321936号公報
【特許文献8】特開2003−048743号公報
【特許文献9】特開2003−054978号公報
【特許文献10】特開2003−335545号公報
【特許文献11】特開2001−192228号公報
【特許文献12】特開2001−192230号公報
【特許文献13】特許第2944534号公報
【特許文献14】特開2002−160946号公報
【特許文献15】特開2002−234751号公報
【特許文献16】特開2003−267745号公報
【非特許文献1】R. Olshansky : "Propagetion in Glass Optical Waveguides", Rev. Mod. Phys., 51(1979)341-367
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、光ファイバ素線の残留応力の径方向分布差が小さく、レーリ散乱も低く抑えられる光ファイバ素線と、このような光ファイバ素線を高速で線引した場合でも、長い徐冷長を要することなく、光ファイバ裸線に対して適切な徐冷温度を施すことが可能な製造方法とを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る光ファイバ素線は、コア部、及び、その周囲をなす少なくとも一層以上のクラッド層からなるクラッド部、から構成されてなる光ファイバ素線であって、前記クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、その半径方向のほぼ全域において引張応力であり、内周側から外周側に向けて減少していることを特徴としている。
【0018】
かかる構成の光ファイバ素線におけるクラッド部は、その最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)が、その半径方向のほぼ全域において引張応力をもつことから、この領域では圧縮応力が混在せず引張応力のみ存在するので、残留応力の変化を極めて小さく抑えることが可能となり、ひいては構造不整損失の低減が図れる。
これに加えて、残留応力の半径方向分布S(r)は、内周側から外周側に向けて減少しているので、内周側に比べて外周側の残留応力がより小さな形態となる。この形態は、主に引き出された光ファイバ裸線の温度分布が、熱処理過程により、光ファイバ裸線の外側より内側の方が低くなり、内側の方が早く凍結された結果、もたらされるものである。つまり、光ファイバ裸線の熱処理の程度を表している。
【0019】
上記S(r)は、最外周端部において引張応力から圧縮応力に反転している形態が好ましい。この最外周端部におけるS(r)の引張応力から圧縮応力への反転は、光ファイバ素線の表面に傷が付いた際に、光ファイバ素線が破断し易くなるという問題を解消することから、光ファイバ素線の耐久性の向上に寄与する。
【0020】
かかる構成の光ファイバ素線は、波長1550nmにおける伝送損失が0.18dB/km以下である。
光ファイバを線引する上で、1.55μm損失の低減するために利用される。この方法によって製造された光ファイバは、低損失であることから、長距離伝送システムへの適用が有利であり、中継点を従来の光ファイバを用いた長距離システム(損失0.25dB/kmの光ファイバを使用した場合)と比較すると約40%減少することができ、低コスト化へ利点がある。
【0021】
かかる構成の光ファイバ素線は、0.92dB/km/μm4 以下のレーリ散乱係数を有する。
低レーリ散乱係数であることから、波長による損失依存性(損失傾斜)が小さいために、WDM伝送後のピークパワーのばらつきを小さくでき、それにより光増幅システム、光ラマン増幅システムに適用が有利であり、増幅器への入力パワーの平坦化や、増幅後の出力パワーの平坦化などを容易にできる利点がある。
【0022】
本発明に係る光ファイバ素線の製造方法は、光ファイバ母材を加熱し、溶融する工程Aと、前記工程Aにより溶融された光ファイバ母材を引出し、光ファイバ裸線とする工程Bと、を少なくとも備えてなる光ファイバ素線の製造方法であって、前記工程Bにおける母材の外径減少率dD/dXが、0以上(18.3×106 ×D2 −1.2×103 ×D)以下であることを特徴としている。ただし、母材の外径=D[m]、母材を引出す方向の距離=X[m]、外径減少率=dD/dX、とする。
【0023】
かかる構成によれば、前記工程Bにおける母材の外径減少率dD/dXを、0以上(18.3×106 ×D2 −1.2×103 ×D)以下の範囲とすることにより、光ファイバ裸線は最適な徐冷温度履歴となり、仮想温度を低下させることにより、波長1550nmにおける伝送損失が0.18dB/km以下である光ファイバ素線や、レーリ散乱係数が0.92dB/km/μm4 以下である光ファイバ素線を安定して製造することが可能となる。
【0024】
前記工程Bは、光ファイバ母材を引出す際に熱処理を施すことが好ましい。
工程Bにおいて、光ファイバ母材の引出す際に熱処理を施すことにより、光ファイバ裸線が最適な徐冷温度履歴をとり、仮想温度を低下させることが可能となる。
【0025】
前記熱処理は、仮想温度を略一定の数値に保つまでに要する時間が1秒より短い温度で行うことが望ましい。
仮想温度を略一定の数値に保つことにより、その略一定とした温度にて単位時間あたり定まった熱量を光ファイバ裸線に与えることが可能となる。また、この略一定の温度に達する迄に要する時間が1秒より短いので、光ファイバ裸線は工程Bの熱処理を施す空間に入ると直ちに安定した加熱雰囲気中を進行することになる。ここで、仮想温度を保つ場合の略一定の数値とは、保持する温度に対して±1%以内を意味する。
したがって、仮想温度を略一定の数値に保つまでに要する時間が1秒より短い温度にて、光ファイバ裸線の熱処理を行うことにより、ネックダウン形状を所望の形状にするまでに要する熱処理工程の長さが不必要に延びるのを抑制できる。
【0026】
前記温度は、1400℃以上1600℃以下が好ましい。
前記温度が1400℃以上あれば、引き出された光ファイバ裸線は、溶融変形しているため、ネックダウン形状が形成される。1300℃以下にあると、実質外径(or外形)上の溶融変形は終了しているので、このようなネックダウン形状は期待できない。1300℃以上ではあるが1400℃より低い温度では、溶融変形している温度と、溶融変形が実質終了している温度の境界であり、光ファイバ外径測定器誤差や、光ファイバ母材製造工程の不安定性に起因したガラス粘度(組成)のバラツキの影響を受け、ネックダウン形状が光ファイバ母材毎に安定しないため芳しくない。よって、この1400℃という温度は、短時間の熱処理で仮想温度を下げることができる最低温度に相当する。
【0027】
また、低レーリ散乱係数(0.92dB/km/μm4 以下)が得られる仮想温度は、およそ1570℃であるが、これを実現するには、熱処理過程において、最終熱処理温度が1570℃以下の温度による熱処理が有効である。したがって、より短い熱処理時間で実現するには高くとも1600℃程度から1570℃へ勾配をもつ熱処理温度履歴が適切である。1600℃を越える温度で熱処理した場合には、仮想温度は熱処理温度より低くはならず芳しくない。また、1600℃を越える温度から1570℃へ勾配をもつ熱処理温度履歴の場合においても、温度変化が急であったり、実質仮想温度を略一定の数値に保つまでに要する時間も百分の一秒オーダーでよく、熱処理過程のヒートゾーンの長さの点から、不必要な熱処理を含むことになり好ましくない。
したがって、工程Bの熱処理において、仮想温度を略一定の数値に保つまでに要する時間が1秒より短い温度とする際には、この温度を1400℃以上1600℃以下とすればよい。
【0028】
本発明に係る光ファイバ素線の製造方法は、上述した工程Aと工程Bに加えて、前記工程Bにより形成された光ファイバ裸線をコーティングに必要な温度にまで冷却する工程Cと、前記工程Cにより冷却された光ファイバ裸線に被覆部材を塗布する工程Dと、前記工程Dにより塗布された被覆部材を架橋・硬化する工程Eと、を備えてもよい。
前述した工程Bは、あくまで光ファイバ裸線の諸特性(外径、残留応力、伝送損失、レーリ散乱係数)を整えるために熱処理を施すのに対し、工程Cは工程Bにより形成された光ファイバ裸線をコーティングに必要な温度にまで冷却するものである。
【0029】
つまり、工程Cにとって前処理工程に相当する工程Bにおいて既に、光ファイバ裸線の諸特性はほぼ決定されているので、工程Cはこの諸特性の整った光ファイバ裸線に被覆部材を設けるために光ファイバ裸線を適切な温度まで冷却するものである。
次の工程Dでは、工程Cにより適切に冷却された光ファイバ裸線に対して、被覆部材を塗布するものである。これに続く工程Eにおいては、この塗布された被覆部材を架橋してから、硬化させることにより、所望の光ファイバ素線を得る。
この一連の処理工程を施すことにより、前述した本発明に係る光ファイバ素線を高速で線引した場合でも、長い徐冷長を要することなく、光ファイバ裸線に対して適切な徐冷温度を施すことが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明に係る光ファイバ素線は、クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、その半径方向のほぼ全域において引張応力であり、内周側から外周側に向けて減少してなる構成を有することにより、光ファイバ素線の残留応力の径方向分布差が小さく、波長1550nmにおける伝送損失が小さく、かつ、レーリ散乱も低く抑えられる光ファイバ素線の提供が可能となる。
【0031】
この光ファイバ素線は低損失であることから長距離伝送システムに適用した場合には、中継点の大幅な削減をもたらすので、低コスト化が図れる。また、低レーリ散乱係数であることから、光増幅システムや光ラマン増幅システムに適用した場合には、損失の波長依存性が小さいので、広い波長域において高品質な信号の伝送に寄与する。
【0032】
本発明に係る光ファイバ素線の製造方法は、特に、溶融された光ファイバ母材を引出し、光ファイバ裸線とする工程Bにおいて、母材の外径減少率dD/dXが、0以上(18.3×106 ×D2 −1.2×103 ×D)以下とする構成を採用したことにより、上記光ファイバ素線を高速で線引した場合でも、長い徐冷長を要することなく、光ファイバ裸線に対して適切な徐冷温度を施すことが可能となる。
【0033】
したがって、この製造方法は、適切かつ最低限の熱処理を施すことにより、上記光ファイバ素線を作製できるので、光ファイバ裸線の母材組成による粘度の違いを吸収し、低損失な光ファイバ素線を得るための線引条件を容易にもたらす。また、光ファイバ裸線の線引タワーの高さを増加させることなく、既存設備を改良することにより、上記光ファイバ素線の作製を可能とするので、本発明は光ファイバ素線の低コスト化に貢献する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下では、本発明に係る光ファイバ素線の一実施形態を図面に基づき説明するが、本発明は上述した作用と効果を満たす構成であればよく、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0035】
図1は、本発明に係る光ファイバ素線を構成する光ファイバ裸線部分に生じた残留応力を示すグラフであり、光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)を表している。横軸は光ファイバ裸線の中心から半径方向の距離rを、縦軸は残留応力(引張応力および圧縮応力)を表す。図1においては、引張応力を正、圧縮応力を負としている。
なお、引張応力は、主に線引張力負担(光軸方向)に起因する応力である。また、圧縮応力は、主にガラス粘度差により、線引張力負担より(光軸方向)低粘度部分に起因する応力である。
また、引張応力、圧縮応力それぞれ、ガラス組成(例えばSiやGe、Fの濃度)に起因する線膨張係数差によって生じる熱応力も含んでいる。
【0036】
図1には本発明に係る製法で作製した光ファイバ裸線の結果(a)〜(e)とともに、熱処理を行っているが、本発明に係る製法まで至らない光ファイバ裸線の結果(f)、従来の製法で作製した光ファイバ裸線の結果(g)〜(i)も併せて示した。
各光ファイバ裸線(a)〜(i)は、表1に示すように、線引速度[m/min]と線引張力[gf]の組合せを変更して作製した。なお、これらの光ファイバ裸線(a)〜(i)については、後段において実施例1〜5および比較例1〜4として詳細に述べるが、この実施例等の番号も表1の最右欄に併せて示した。
【0037】
【表1】
【0038】
図1において、領域αはコア部を、領域β、領域γ及び領域δはクラッド部である。特に、領域γと領域δはクラッド部のうち最も外側に位置するクラッド層であり、領域δは最外周端部(後述する被覆部材と接する部分)をなす。領域βは領域γより内周側にあるクラッド部を構成するクラッド層を表す。
【0039】
図1のグラフより、以下の点が明らかとなった。
(1)光ファイバ裸線(a)〜(e)においては、クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、その半径方向のほぼ全域(すなわち、領域γ)において引張応力を有する。
(2)光ファイバ裸線(a)〜(e)の領域γにおける残留応力である引張応力は、線分Aおよび線分Bとほぼ重なることから、領域γの内周側から外周側に向けて減少する傾向をもつことが分かる。
【0040】
(3)光ファイバ裸線(a)〜(e)の前記S(r)は、最外周端部(領域δ)において引張応力から圧縮応力に反転する傾向を示す。
(4)光ファイバ裸線(f)〜(i)においては、クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、領域γにおいて引張応力を有する。
【0041】
(5)光ファイバ裸線(f)〜(i)の領域γにおける残留応力は、領域γの内周側から外周側に向けて、引張応力であり、さらに増加する傾向をもつことが分かる。
(6)光ファイバ裸線(g)〜(i)の前記S(r)は、最外周端部(領域δ)において引張応力から圧縮応力に反転することなく、残留応力はほぼ零となる。これに対し、光ファイバ裸線(f)においては、引張応力から圧縮応力に反転する傾向を示す。
【0042】
以上の結果より、本発明に係る光ファイバ素線を構成する光ファイバ裸線は、コア部、及び、その周囲をなす少なくとも一層以上のクラッド層からなるクラッド部、から構成されてなる光ファイバ素線であって、前記クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、その半径方向のほぼ全域において引張応力であり、内周側から外周側に向けて減少している構成からなることが分かった。ここで、ほぼ全領域とは、最も外側に位置するクラッド層のうち、領域δ(最外周端部)を除いた領域γを意味する。
【0043】
また、後述するように、光ファイバ裸線(a)〜(e)は、波長1550nmにおける伝送損失が0.18dB/km以下であり、かつ、レーリ散乱係数が0.92dB/km/μm4 以下であることが確認された。一方、比較にために示した光ファイバ裸線(f)〜(i)においては、上記伝送損失が0.18dB/km以下のものに混在して、この数値を超えるものも製造されることが確認された。そして、この伝送損失が0.18dB/kmを超えるものについてレーリ散乱係数を測定したところ0.92dB/km/μm4 を上回る数値をもつことが分かった。
【0044】
したがって、コア部、及び、その周囲をなす少なくとも一層以上のクラッド層からなるクラッド部、から構成されてなる光ファイバ素線であって、前記クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、その半径方向のほぼ全域において引張応力であり、内周側から外周側に向けて減少している構成を採ることにより、光ファイバ素線の残留応力の径方向分布差が小さく、波長1550nmにおける伝送損失が小さく、かつ、レーリ散乱も低く抑えられる光ファイバ素線の提供が可能となる。
【0045】
上述した光ファイバ素線を構成する光ファイバ裸線は、光ファイバ母材を加熱し、溶融する工程Aと、前記工程Aにより溶融された光ファイバ母材を引出し、光ファイバ裸線とする工程Bと、を少なくとも備えてなる光ファイバ素線の製造方法であって、前記工程Bにおける母材の外径減少率dD/dXが、0以上(18.3×106 ×D2 −1.2×103 ×D)以下であることを特徴とする製造方法により得られる。ただし、母材の外径=D[m]、母材を引出す方向の距離=X[m]、外径減少率=dD/dX、とする。
【0046】
図2は、工程Bにおいて熱処理する際の温度保持時間と仮想温度との関係を、各熱処理温度毎に調べたグラフである。仮想温度は、ラマン散乱分光計にて測定し、波数605cm−1における吸収ピークから算出した。図2には、6種類の熱処理温度、すなわち1100℃(太い実線)、1200℃(太い一点鎖線)、1300℃(太い二点鎖線)、1400℃(細い実線)、1500℃(細い一点鎖線)、1600℃(細い二点鎖線)の結果を纏めて示した。
【0047】
ここで、温度保持時間とは、各熱処理温度毎の処理時間、すなわち熱処理が開始されてからの時間「光ファイバ裸線が熱処理される空間(以下、熱処理工程とも呼称する)に滞在を開始してから時間」を意味する。なお、本発明において熱処理工程とは、加熱溶融炉そのものであってもよいし、熱処理専用の加熱炉、もしくは対流熱伝導率の悪い雰囲気で満たされた容器、管などであり特に限定されるものではないが、各種温度の光ファイバ裸線の熱履歴を調整する工程を指すものとする。
【0048】
図2のグラフより、以下の点が明らかとなった。
(1)1300℃以下の温度での熱処理では、仮想温度が下がりきるまで数秒オーダーの時間が必要であり、これは同時に線引きにおける必要な熱処理時間となり、結局は従来のように、線引線速を遅くしないと現実的ではないと言える。例えば、2秒熱処理、線引速度300m/minでは、熱処理長10m必要となり現実的ではないが、100m/minでは、熱処理長3.3mなら、低速のため、熱処理後の冷却長が短尺でも可能なため、実現することができるということになるが、あまりに低速のため生産性が悪い。
【0049】
(2)また、1400℃以上であれば、0.5秒以内の処理で、熱処理温度付近まで仮想温度を下げることが可能であるといえる。同様に、0.5秒処理、線速200m/minでは、熱処理長1.6mで、十分に仮想温度を下げることができることがわかり、これは、1300℃以下で熱処理の100m/minにおける熱処理長の半分以下である。さらに、生産性を向上させるには、熱処理温度を上げるか、処理温度に勾配をつけることなどを行えば良い。換言すると、熱処理温度を1400℃以上とすれば、仮想温度を所定の数値に安定化するために要する時間を1秒以内とすることができる。
【0050】
次に、この仮想温度とレーリ散乱係数との関係について説明する。図3に示すグラフは、数々の熱処理条件(温度、時間)を変えたサンプルについて、仮想温度とレーリ散乱係数を測定した結果について纏めて示す。図3にプロットしたレーリ散乱係数は、図4に示すように、カットバック法にて試料の損失波長特性を測定し、次いで図5に示すように、波長の4乗分の1に対してプロットし、直線近似することにより算出した数値である。
【0051】
図3のグラフより、以下の点が明らかとなった。
(1)図3の各プロットは直線で近似(点線)されることから、仮想温度とレーリ散乱係数には、比例関係が成り立つ。
(2)図3において近似した直線から、レーリ散乱係数が0.92dB/km/μm4 となるには、仮想温度をおよそ1570℃とすれば良いことが読みとれる。
【0052】
換言すると、この仮想温度を得るためには、最終的な熱処理温度が1570℃以下でなければならないことを示し、最低限の温度履歴とするためには、高くとも1600℃以下の徐冷温度とすることが望ましいといえる。
レーリ散乱係数0.92dB/km/μm4 ということは、これは、レーリ散乱損失以外の構造不整損失、赤外吸収損失、OH基吸収損失などの損失合計を約0.02dB/kmとした場合、1.55μmでの損失に換算する(0.92÷1.554 +0.02)と、約0.1794dB/kmになることが見積もれる。
【0053】
以上から、線速200m/min以上で、波長1.55μmでの損失0.18dB/km以下を実現するためには、1400℃以上1600℃以下の温度にて、1sec以下、より好ましくは0.5sec以下の時間熱処理し、それにより仮想温度1570℃以下、レーリ散乱係数0.92dB/km/μm4 とすれば良いことがわかる。
【0054】
しかしながら、1400℃以上1600℃以下の温度で0.5sec以下の時間という条件のみでは、温度勾配の最適化や、母材の組成の違いによる粘性、構造緩和時間などの違いから、線引条件検討においての最適化が難しく、より高速線引時などへの最適化が難しく、必要以上の熱処理炉を導入したためコストがかかったり、予想される損失を安定して得ることが難しかった。
【0055】
上記状況を受け、本筆者らが、線引条件を鋭意検討した結果、次のことと直接結びつけられることが判明した。光ファイバ線引の加熱溶融されて引き出される光ファイバ母材から光ファイバ裸線になるまでに、ネックダウン形状が形成される。このネックダウン形状は、光ファイバ裸線の熱処理温度履歴により変化する。逆にいえば、このネックダウン形状を所望な形状とすれば、その熱処理工程の温度履歴も最適なものとなる。
【0056】
これは今回、熱処理温度域が1400℃以上の光ファイバ温度で成り立ち、この温度域では、引き出された光ファイバ裸線は、溶融変形しているために、ネックダウン形状が形成される。1300℃以下の温度では、実質外径上の溶融変形は終了しているため、上記ネックダウン形状での議論はできない。また、この1400℃という温度は、短時間の熱処理で仮想温度を下げることができる最低温度にも相当する。さらに、低レーリ散乱係数0.92dB/km/μm4 以下が得られる仮想温度1570℃以下をより短熱処理時間で実現するには、実質1600℃以下の温度での熱処理が有効であり、この温度でのネックダウン形状外径は、一般的なGe添加コア、純石英クラッド組成の光ファイバ母材の場合、約φ0.5mmであった。
【0057】
以上より、検討されたネックダウン形状外径変化率が、0.5mmから、外径変化が実質上無くなるまでの領域について、母材外径をD[m]、母材引出す方向の距離をX[m]とした場合、外径減少率をdD/dXで表し、これが、外径Dに対し0≦[外径減少率]≦18.3×106 ×D2 −1.2×103 ×Dを満たすことで、最適な徐冷温度履歴となり、仮想温度が低下するので、小さなレーリ散乱係数(0.92dB/km/μm4 以下)と、波長1550nmにおける低い伝送損失(0.18dB/km以下)が得られることが分かった。
【0058】
換言すると、工程Bにおける母材の外径減少率dD/dXを、0以上(18.3×106 ×D2 −1.2×103 ×D)以下の範囲とすることにより、光ファイバ裸線は最適な徐冷温度履歴となり、仮想温度を低下させることにより、波長1550nmにおける伝送損失が0.18dB/km以下である光ファイバ素線や、レーリ散乱係数が0.92dB/km/μm4 以下である光ファイバ素線を安定して製造することが確認された。
【0059】
ここまでは外径減少率というファクターに基づき説明してきたが、この外径減少率に代えて断面積減少率や体積減少率を用いても、同様に説明できることは言うまでもない。また、外径変化が実質上なくなるまでの領域として、外径測定器の誤差の影響受けにくくするため、目標外径+0.8%以下の領域(目標外径125μmの場合、126μm以下)は、実質上外径変化は無いものとみなした。
【0060】
(実施例および比較例)
以下では、2種類の母材(LWP−SM母材、SM母材)を用いた。ここで、LWP−SM母材とは、Ge添加コアCl含有シリカクラッド−シングルモードファイバ母材を、SM母材とは、Ge添加コアOH含有シリカクラッド−シングルモードファイバ母材をそれぞれ意味する。
作製した光ファイバ素線の主な構成と製造条件は、光ファイバ(外径φ125μm)、被覆材(ウレタン=アクリレート系紫外線硬化型樹脂:プライマリ、セカンダリ共)、コート径(φ250μm)、紡糸線速(200〜2000m/min)である。
【0061】
(実施例1)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速200m/min、張力100gf、熱処理温度を1400℃一定、熱処理長0.6mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。約5000m程度の光ファイバ素線を線引きしたところで、線引き中のネックダウン形状を維持するために、意図的に光ファイバ素線を断線させ、線引きを中断した。その後、残留光ファイバ母材を、加熱溶融炉、および熱処理炉から、上方へ引き上げ、外径1mm以下のネックダウンサンプルを取り出し、形状を外径測定器にて測定し、外径減少率を算出した。
【0062】
また、5000m試料を側圧などによるマイクロベンド損失の影響などを排除するために、束状態にし、OTDRによる1.55μm損失測定、および、カットバック法による損失波長特性を測定し、波長の4乗分の1に対する損失変化の傾きから、レーリ散乱係数を算出した。また、ラマン分光計にて、ラマン散乱スペクトルを測定し、仮想温度を算出した。
各種測定の結果を表2、図6および図7に、○印にて示した。図6は位置とネックダウン外径との関係を、図7は外径と外径減少率との関係を示すグラフである。併せて、本発明に係る外径変化率となるネックダウン形状は、各図の中に実線で示した。
【0063】
【表2】
【0064】
(実施例2)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速600m/min、張力120gf、熱処理温度を1500℃一定、熱処理長0.8mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表2、図6および図7に、△印にて示した。
【0065】
(実施例3)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速1000m/min、J張力150gf、熱処理温度を1500℃一定、熱処理長1.0mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表2、図6および図7に、◆印にて示した。
【0066】
(実施例4)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速1500m/min、張力180gf、熱処理温度を1600℃〜1500℃へ勾配をつけ、熱処理長1.2mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表2、図6および図7に、●印にて示した。
【0067】
(実施例5)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速2000m/min、張力200gf、熱処理温度を1600℃〜1500℃へ勾配をつけ、熱処理長1.2mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表2、図6および図7に、*印にて示した。
【0068】
以上、実施例1〜5を見てみると、図7から、ネックダウン形状の外径減少率が規定の範囲内に入っているため、表1から、仮想温度が低く、レーリ散乱係数も0.92dB/km/μm4 以下、1.55μm損失も0.18dB/kmであることが分かった。
また、実施例1〜5の残留応力分布(図21〜図17)から、最外層クラッドにおける残留応力の径方向分布が、引張応力で、かつ、内側から外側に向けて、増加傾向を示した。さらに、最外周端部を含む残留応力が引張応力から圧縮応力へ転じていることも確認された。
【0069】
(比較例1)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速600m/min、張力120gf、熱処理炉を取り外して線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表3、図8および図9に、○印にて示した。
【0070】
【表3】
【0071】
(比較例2)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速1500m/min、張力180gf、熱処理炉を取り外して線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表3、図8および図9に、△印にて示した。
【0072】
(比較例3)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速2000m/min、張力200gf、熱処理炉を取り外して線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表3および図8、図9に、◆印にて示した。
【0073】
(比較例4)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速200m/min、張力100gf、熱処理温度を1300℃一定、熱処理長0.6mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表3および図8、図9に、*印にて示した。
【0074】
以上、比較例1〜3では、いずれも熱処理炉を取り外して線引をしている。その結果、図8に示すようにネックダウン形状が短くなり、結果として、図9に示すように、外径減少率が速くなっているのがわかる。その結果、レーリ散乱係数は0.96〜0.97dB/km/μm4 となり、1.55μm損失は、0.186〜0.188dB/kmとなり、0.180dB/kmを超えていることがわかる。
【0075】
また、比較例4では、熱処理炉は使用しているものの、ネックダウン形状が、請求範囲外になっているために、外径減少率も大きく、その影響でレーリ散乱係数が0.932dB/km/μm4 、(1.55μm)損失は0.181dB/kmと、0.92、0.180以上となっていることがわかる。
【0076】
さらに、比較例1〜4の残留応力分布(図22〜図24、図16)から、最外層クラッドにおける残留応力の径方向分布が、引張応力だが、内側から外側に向けて、増加傾向を示した。また、熱処理をしていない比較例1〜3については、最外周端部を含む残留応力も引張応力から圧縮応力へ転じていないことも確認された。比較例4については、熱処理を施しているため、引張応力から圧縮応力へ転じているが、熱処理が不十分なため、最外層クラッドにおける引張応力が、内側から外側に向けて、増加傾向を示した。
【0077】
(実施例6)
本例では、SM母材を使用し、紡糸線速300m/min、張力100gf、熱処理温度を1400℃一定とし、熱処理長0.8mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表4、図10および図11に、○印にて示した。
【0078】
【表4】
【0079】
(実施例7)
本例では、SM母材を使用し、紡糸線速1000m/min、張力150gf、熱処理温度を1600℃〜1500℃へ勾配をつけ、熱処理長1.0mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表4、図10および図11に、◆印にて示した。
【0080】
(実施例8)
本例では、SM母材を使用し、紡糸線速1500m/min、張力180gf、熱処理温度を1600℃〜1500℃へ勾配をつけ、熱処理長1.2mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表4、図10および図11に、●印にて示した。
【0081】
以上、実施例6〜8は、母材をOH含有のSM母材に変更した場合について検討した例である。図10より、OH含有により若干粘度が下がったためか、ネックダウン形状が若干長くなっており、それに伴い図11より、外径減少率も緩やかになっていることが分かった。レーリ散乱係数も実施例2〜4と比較すると、若干下がっている。1.55μm損失も、同程度か若干下がる結果となっている。
残留応力分布についても、実施例1〜5同様、最外周クラッドにおいて、ほぼ全域で引張応力であり、かつ、内側から外側に向けて、減少傾向を示した。さらに、最外周端部を含む残留応力は、引張応力から圧縮応力へ転じていた(図示せず)。
【0082】
図12は、実施例3と実施例7における位置とネックダウン外径との関係を示すグラフである。実施例3は●印、実施例7は◆印で示した。
図13は、実施例3と実施例7における外径と外径減少率との関係を示すグラフである。実施例3は●印、実施例7は◆印で示した。
図14は、実施例4と実施例8における位置とネックダウン外径との関係を示すグラフである。実施例4は◆印、実施例8は□印で示した。
図15は、実施例4と実施例8における外径と外径減少率との関係を示すグラフである。実施例4は◆印、実施例8は□印で示した。
【0083】
図12〜図15のグラフより、同じ熱処理温度でも母材の組成によりネックダウン形状が若干変化することが分かった。この実験結果は、熱処理温度、時間のみで線引条件を決定すると、母材組成によりネックダウン形状が異なった場合、同一の損失特性が得られないことを示唆している。
以上より、温度で規程するより、組成を反映しているネックダウン形状外径減少率が同一になるようにすることで、組成による差を無視することができるようになり、より応用が効くことが明らかとなった。
【0084】
(比較例5)
本例では、SM母材を使用し、紡糸線速1500m/min、張力180gf、熱処理炉を取り外して線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表5、図10および図11に、*印にて示した。
【0085】
【表5】
【0086】
表5からも、熱処理炉を使用しなければ、損失を0.18dB/km以下にすることは難しいことが分かった。
残留応力分布についても、比較例1〜3同様、最外周クラッドにおいて、ほぼ全域で引張応力であるが、内側から外側に向けて、増加傾向を示した。さらに、最外周端部を含む残留応力は、圧縮応力へ転じていなかった(図示せず)。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る光ファイバ素線は、光ファイバ素線の残留応力の径方向分布差が小さく、レーリ散乱も低く抑えられるので、シングルモードファイバ、分散シフトファイバ、カットオフシフトファイバ、分散補償ファイバのみならず、いかなる種類の光ファイバとしても好適に利用できる。
本発明の光ファイバ素線は、例えば、低損失な光ファイバであるから、長距離伝送システム用途として有用であるとともに、レーリ散乱係数が小さいことから損失の波長依存性も小さくなるので、光増幅システムや光ラマン増幅システムへの適用に好適である。
【0088】
本発明に係る光ファイバ素線の製造方法は、最低限な熱処理を施すだけでよいので、必要以上の線引タワー高さが必要なく、従来の設備の改良で十分に対応可能であることから、多大な低コスト化が図れる。また、母材組成による粘度の違いを吸収できるので、低損失な線引条件を簡単に得ることができ、高い制御性において上述した光ファイバ素線を安定して作製できることから、光ファイバ素線を高い歩留まりで大量に生産する製造ラインが構築できる。さらには、幅広い線引速度に適応した生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係る光ファイバ素線を構成する光ファイバ裸線部分に生じた残留応力(以下、残留応力分布とも呼ぶ)を示すグラフである。
【図2】工程Bにおける温度保持時間と仮想温度との関係を示すグラフである。
【図3】仮想温度とレーリ散乱係数との関係を示すグラフである。
【図4】損失と波長との関係を示すグラフである。
【図5】損失を波長の4乗分の1に対してプロットしたグラフである。
【図6】位置とネックダウン外径との関係を示す第一のグラフである。
【図7】外径と外径減少率との関係を示す第一のグラフである。
【図8】位置とネックダウン外径との関係を示す第二のグラフである。
【図9】外径と外径減少率との関係を示す第二のグラフである。
【図10】位置とネックダウン外径との関係を示す第三のグラフである。
【図11】外径と外径減少率との関係を示す第三のグラフである。
【図12】位置とネックダウン外径との関係を示す第四のグラフである。
【図13】外径と外径減少率との関係を示す第四のグラフである。
【図14】位置とネックダウン外径との関係を示す第五のグラフである。
【図15】外径と外径減少率との関係を示す第五のグラフである。
【図16】比較例4の残留応力分布を示すグラフである。
【図17】実施例5の残留応力分布を示すグラフである。
【図18】実施例4の残留応力分布を示すグラフである。
【図19】実施例3の残留応力分布を示すグラフである。
【図20】実施例2の残留応力分布を示すグラフである。
【図21】実施例1の残留応力分布を示すグラフである。
【図22】比較例1の残留応力分布を示すグラフである。
【図23】比較例2の残留応力分布を示すグラフである。
【図24】比較例3の残留応力分布を示すグラフである。
【図25】光ファイバ素線の製造装置の概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0090】
11 光ファイバ母材、12 紡糸炉、13 光ファイバ裸線、14 冷却筒、15 被覆材塗布装置、16 UVランプ、17 光ファイバ素線、18 ターンプーリ、19 引取機、20 ダンサーロール、21 巻取ドラム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ素線及びその製造方法に係る。より詳細には、伝送損失とともにレーリ散乱係数も低く、シングルモード光ファイバとして好適な光ファイバ素線及びその製造方法に関する。本発明に係る光ファイバ素線は、長距離伝送システムや光増幅システム、光ラマン増幅システムに用いられる。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ファイバ素線は、以下のようにして製造されている。
図25は、光ファイバ素線の製造方法で用いられる光ファイバ素線の製造装置の概略構成を示す模式図である。
【0003】
光ファイバ素線の製造においては、まず、石英系ガラスを主成分とする光ファイバ母材11を紡糸炉12内に収容し、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などの不活性ガス雰囲気中で、その先端部分を約2000℃に高温加熱し、溶融紡糸して、光ファイバ裸線13とする。
【0004】
次に、光ファイバ裸線13を冷却筒14内に送り込む。冷却筒14内には、ヘリウムや窒素などの冷却用ガスが供給されており、冷却筒14において光ファイバ裸線13を次工程である一次被覆層の形成に好適な温度まで急冷する。
【0005】
次いで、冷却筒14で冷却された光ファイバ裸線13は、被覆層形成用の被覆材塗布装置15およびUVランプ16により、紫外線硬化型樹脂などからなる被覆層で被覆され、光ファイバ素線17となる。
【0006】
さらに、紡糸中の光ファイバ素線17は、ターンプーリ18によって別方向に向きを変えられ、引取機19、ダンサーロール20を経て、巻取ドラム21に巻き取られる。
【0007】
近年、このような製法により形成される光ファイバの生産においては、生産効率の向上やコストダウンを図ることが強く求められており、この要望に応えるため、前述した紡糸工程では従来より高速度で溶融紡糸する製法が各研究機関において鋭意検討されている。
【0008】
しかしながら、紡糸線速が100m/minを越えるような高速度で紡糸を行う場合には、従来の低速紡糸(紡糸線速が100m/min未満)とは異なり、様々な技術的な課題が生じる。例えば、このように光ファイバ裸線の移動速度が速くなると、紡糸工程における光ファイバ裸線は、紡糸炉の加熱空間内、または、徐冷炉等の熱処理空間内を、従来より極めて短い時間のうちに通過してしまうことから、熱処理工程に施す設備の長さを従来に比べて延長する必要があった。つまり、従来と同様に、光ファイバ裸線の温度をAからB(A>B)まで減温しようとすると、紡糸線速を2倍にすると、熱処理工程を施す設備の長さを従来の2倍にする必要があった。
【0009】
逆に、熱処理工程に施す設備の長さを変更することなく紡糸線速を2倍にすると、光ファイバ裸線は従来の半分の時間で熱処理工程の域外に出てしまうことになる。そして、一旦、熱処理工程の域外に出た光ファイバ裸線は、その冷却速度が急に速くなることから、仮想温度が高くなってしまう傾向にある。
【0010】
ここで対象とする光ファイバ裸線はガラス母材から形成されるものである。一方、ガラスは、熱力学的に非平衡な系であり、その構造は液体からの凍結過程で決まることが知られており、この凍結温度は仮想温度と呼ばれる。
つまり、仮想温度が高くなるということは、ガラス構造が凍結されたときの密度揺らぎや濃度揺らぎが大きいことを意味し、これにより、レーリ散乱が大きくなり、最終的に損失増加を引き起こすことが公知である(例えば、非特許文献1を参照)。
【0011】
このレーリ散乱起因の損失増加を低減するために、光ファイバ裸線を徐冷する方法が各所において研究・開発がなされており、数々の手法が提案されている(例えば、特許文献1〜16を参照)。
【0012】
しかしながら、これらの方法は、徐冷する温度域、徐冷時間、徐冷炉設置位置、徐冷炉設置温度、徐冷炉構造などについて、数々の提案がされているが、主に線引線速が遅い場合について考えられており、そのまま高速線引に当てはめると、とても長い徐冷長が必要になり、設備の高さや長い熱処理工程が必要になるなどコストが嵩み、現実的ではない。また、母材の組成や、屈折率分布などにより、適切な徐冷温度が異なっており、一概に同一条件で製造しても、すべてにおいて良好な損失が得られない問題がある。
【0013】
また、徐冷された光ファイバの温度履歴は、徐冷炉入線温度や、出線温度を測定し、その温度データ、および徐冷炉温度から、実際の温度履歴を計算するか、または、平均的な徐冷速度を算出するしかなく、不確実性があった。
【0014】
さらに、上述した光ファイバ素線の製造にあっては、光ファイバ裸線の冷却速度の増加に伴い、光ファイバ裸線がその外周から急冷される傾向が強まる。そのため、最終的に得られる光ファイバ素線に残留する光軸方向の応力(以下、残留応力と略す。)の径方向分布差が大きくなり、その結果として、光ファイバ素線内のガラス構造に起因する構造不整損失が増加するという問題がある。なお、線引き速度が遅い(1000m/min未満)の場合には、光ファイバ裸線の冷却速度が遅いため、残留応力の径方向分布が大きくならず、構造不整損失の増加は見られなかった。
【0015】
したがって、光ファイバ裸線を高速で線引した場合でも、長い徐冷長を要することなく、適切な徐冷温度が施され、光ファイバ素線の残留応力の径方向分布差が小さく、レーリ散乱も低く抑えられる、光ファイバ素線及びその製造方法の開発が期待されていた。
【特許文献1】特開平4−059631号公報
【特許文献2】特開2000−335933号公報
【特許文献3】特開2000−335934号公報
【特許文献4】特開2000−335935号公報
【特許文献5】特開2001−114525号公報
【特許文献6】特開2001−114526号公報
【特許文献7】特開2002−321936号公報
【特許文献8】特開2003−048743号公報
【特許文献9】特開2003−054978号公報
【特許文献10】特開2003−335545号公報
【特許文献11】特開2001−192228号公報
【特許文献12】特開2001−192230号公報
【特許文献13】特許第2944534号公報
【特許文献14】特開2002−160946号公報
【特許文献15】特開2002−234751号公報
【特許文献16】特開2003−267745号公報
【非特許文献1】R. Olshansky : "Propagetion in Glass Optical Waveguides", Rev. Mod. Phys., 51(1979)341-367
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、光ファイバ素線の残留応力の径方向分布差が小さく、レーリ散乱も低く抑えられる光ファイバ素線と、このような光ファイバ素線を高速で線引した場合でも、長い徐冷長を要することなく、光ファイバ裸線に対して適切な徐冷温度を施すことが可能な製造方法とを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る光ファイバ素線は、コア部、及び、その周囲をなす少なくとも一層以上のクラッド層からなるクラッド部、から構成されてなる光ファイバ素線であって、前記クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、その半径方向のほぼ全域において引張応力であり、内周側から外周側に向けて減少していることを特徴としている。
【0018】
かかる構成の光ファイバ素線におけるクラッド部は、その最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)が、その半径方向のほぼ全域において引張応力をもつことから、この領域では圧縮応力が混在せず引張応力のみ存在するので、残留応力の変化を極めて小さく抑えることが可能となり、ひいては構造不整損失の低減が図れる。
これに加えて、残留応力の半径方向分布S(r)は、内周側から外周側に向けて減少しているので、内周側に比べて外周側の残留応力がより小さな形態となる。この形態は、主に引き出された光ファイバ裸線の温度分布が、熱処理過程により、光ファイバ裸線の外側より内側の方が低くなり、内側の方が早く凍結された結果、もたらされるものである。つまり、光ファイバ裸線の熱処理の程度を表している。
【0019】
上記S(r)は、最外周端部において引張応力から圧縮応力に反転している形態が好ましい。この最外周端部におけるS(r)の引張応力から圧縮応力への反転は、光ファイバ素線の表面に傷が付いた際に、光ファイバ素線が破断し易くなるという問題を解消することから、光ファイバ素線の耐久性の向上に寄与する。
【0020】
かかる構成の光ファイバ素線は、波長1550nmにおける伝送損失が0.18dB/km以下である。
光ファイバを線引する上で、1.55μm損失の低減するために利用される。この方法によって製造された光ファイバは、低損失であることから、長距離伝送システムへの適用が有利であり、中継点を従来の光ファイバを用いた長距離システム(損失0.25dB/kmの光ファイバを使用した場合)と比較すると約40%減少することができ、低コスト化へ利点がある。
【0021】
かかる構成の光ファイバ素線は、0.92dB/km/μm4 以下のレーリ散乱係数を有する。
低レーリ散乱係数であることから、波長による損失依存性(損失傾斜)が小さいために、WDM伝送後のピークパワーのばらつきを小さくでき、それにより光増幅システム、光ラマン増幅システムに適用が有利であり、増幅器への入力パワーの平坦化や、増幅後の出力パワーの平坦化などを容易にできる利点がある。
【0022】
本発明に係る光ファイバ素線の製造方法は、光ファイバ母材を加熱し、溶融する工程Aと、前記工程Aにより溶融された光ファイバ母材を引出し、光ファイバ裸線とする工程Bと、を少なくとも備えてなる光ファイバ素線の製造方法であって、前記工程Bにおける母材の外径減少率dD/dXが、0以上(18.3×106 ×D2 −1.2×103 ×D)以下であることを特徴としている。ただし、母材の外径=D[m]、母材を引出す方向の距離=X[m]、外径減少率=dD/dX、とする。
【0023】
かかる構成によれば、前記工程Bにおける母材の外径減少率dD/dXを、0以上(18.3×106 ×D2 −1.2×103 ×D)以下の範囲とすることにより、光ファイバ裸線は最適な徐冷温度履歴となり、仮想温度を低下させることにより、波長1550nmにおける伝送損失が0.18dB/km以下である光ファイバ素線や、レーリ散乱係数が0.92dB/km/μm4 以下である光ファイバ素線を安定して製造することが可能となる。
【0024】
前記工程Bは、光ファイバ母材を引出す際に熱処理を施すことが好ましい。
工程Bにおいて、光ファイバ母材の引出す際に熱処理を施すことにより、光ファイバ裸線が最適な徐冷温度履歴をとり、仮想温度を低下させることが可能となる。
【0025】
前記熱処理は、仮想温度を略一定の数値に保つまでに要する時間が1秒より短い温度で行うことが望ましい。
仮想温度を略一定の数値に保つことにより、その略一定とした温度にて単位時間あたり定まった熱量を光ファイバ裸線に与えることが可能となる。また、この略一定の温度に達する迄に要する時間が1秒より短いので、光ファイバ裸線は工程Bの熱処理を施す空間に入ると直ちに安定した加熱雰囲気中を進行することになる。ここで、仮想温度を保つ場合の略一定の数値とは、保持する温度に対して±1%以内を意味する。
したがって、仮想温度を略一定の数値に保つまでに要する時間が1秒より短い温度にて、光ファイバ裸線の熱処理を行うことにより、ネックダウン形状を所望の形状にするまでに要する熱処理工程の長さが不必要に延びるのを抑制できる。
【0026】
前記温度は、1400℃以上1600℃以下が好ましい。
前記温度が1400℃以上あれば、引き出された光ファイバ裸線は、溶融変形しているため、ネックダウン形状が形成される。1300℃以下にあると、実質外径(or外形)上の溶融変形は終了しているので、このようなネックダウン形状は期待できない。1300℃以上ではあるが1400℃より低い温度では、溶融変形している温度と、溶融変形が実質終了している温度の境界であり、光ファイバ外径測定器誤差や、光ファイバ母材製造工程の不安定性に起因したガラス粘度(組成)のバラツキの影響を受け、ネックダウン形状が光ファイバ母材毎に安定しないため芳しくない。よって、この1400℃という温度は、短時間の熱処理で仮想温度を下げることができる最低温度に相当する。
【0027】
また、低レーリ散乱係数(0.92dB/km/μm4 以下)が得られる仮想温度は、およそ1570℃であるが、これを実現するには、熱処理過程において、最終熱処理温度が1570℃以下の温度による熱処理が有効である。したがって、より短い熱処理時間で実現するには高くとも1600℃程度から1570℃へ勾配をもつ熱処理温度履歴が適切である。1600℃を越える温度で熱処理した場合には、仮想温度は熱処理温度より低くはならず芳しくない。また、1600℃を越える温度から1570℃へ勾配をもつ熱処理温度履歴の場合においても、温度変化が急であったり、実質仮想温度を略一定の数値に保つまでに要する時間も百分の一秒オーダーでよく、熱処理過程のヒートゾーンの長さの点から、不必要な熱処理を含むことになり好ましくない。
したがって、工程Bの熱処理において、仮想温度を略一定の数値に保つまでに要する時間が1秒より短い温度とする際には、この温度を1400℃以上1600℃以下とすればよい。
【0028】
本発明に係る光ファイバ素線の製造方法は、上述した工程Aと工程Bに加えて、前記工程Bにより形成された光ファイバ裸線をコーティングに必要な温度にまで冷却する工程Cと、前記工程Cにより冷却された光ファイバ裸線に被覆部材を塗布する工程Dと、前記工程Dにより塗布された被覆部材を架橋・硬化する工程Eと、を備えてもよい。
前述した工程Bは、あくまで光ファイバ裸線の諸特性(外径、残留応力、伝送損失、レーリ散乱係数)を整えるために熱処理を施すのに対し、工程Cは工程Bにより形成された光ファイバ裸線をコーティングに必要な温度にまで冷却するものである。
【0029】
つまり、工程Cにとって前処理工程に相当する工程Bにおいて既に、光ファイバ裸線の諸特性はほぼ決定されているので、工程Cはこの諸特性の整った光ファイバ裸線に被覆部材を設けるために光ファイバ裸線を適切な温度まで冷却するものである。
次の工程Dでは、工程Cにより適切に冷却された光ファイバ裸線に対して、被覆部材を塗布するものである。これに続く工程Eにおいては、この塗布された被覆部材を架橋してから、硬化させることにより、所望の光ファイバ素線を得る。
この一連の処理工程を施すことにより、前述した本発明に係る光ファイバ素線を高速で線引した場合でも、長い徐冷長を要することなく、光ファイバ裸線に対して適切な徐冷温度を施すことが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明に係る光ファイバ素線は、クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、その半径方向のほぼ全域において引張応力であり、内周側から外周側に向けて減少してなる構成を有することにより、光ファイバ素線の残留応力の径方向分布差が小さく、波長1550nmにおける伝送損失が小さく、かつ、レーリ散乱も低く抑えられる光ファイバ素線の提供が可能となる。
【0031】
この光ファイバ素線は低損失であることから長距離伝送システムに適用した場合には、中継点の大幅な削減をもたらすので、低コスト化が図れる。また、低レーリ散乱係数であることから、光増幅システムや光ラマン増幅システムに適用した場合には、損失の波長依存性が小さいので、広い波長域において高品質な信号の伝送に寄与する。
【0032】
本発明に係る光ファイバ素線の製造方法は、特に、溶融された光ファイバ母材を引出し、光ファイバ裸線とする工程Bにおいて、母材の外径減少率dD/dXが、0以上(18.3×106 ×D2 −1.2×103 ×D)以下とする構成を採用したことにより、上記光ファイバ素線を高速で線引した場合でも、長い徐冷長を要することなく、光ファイバ裸線に対して適切な徐冷温度を施すことが可能となる。
【0033】
したがって、この製造方法は、適切かつ最低限の熱処理を施すことにより、上記光ファイバ素線を作製できるので、光ファイバ裸線の母材組成による粘度の違いを吸収し、低損失な光ファイバ素線を得るための線引条件を容易にもたらす。また、光ファイバ裸線の線引タワーの高さを増加させることなく、既存設備を改良することにより、上記光ファイバ素線の作製を可能とするので、本発明は光ファイバ素線の低コスト化に貢献する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下では、本発明に係る光ファイバ素線の一実施形態を図面に基づき説明するが、本発明は上述した作用と効果を満たす構成であればよく、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0035】
図1は、本発明に係る光ファイバ素線を構成する光ファイバ裸線部分に生じた残留応力を示すグラフであり、光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)を表している。横軸は光ファイバ裸線の中心から半径方向の距離rを、縦軸は残留応力(引張応力および圧縮応力)を表す。図1においては、引張応力を正、圧縮応力を負としている。
なお、引張応力は、主に線引張力負担(光軸方向)に起因する応力である。また、圧縮応力は、主にガラス粘度差により、線引張力負担より(光軸方向)低粘度部分に起因する応力である。
また、引張応力、圧縮応力それぞれ、ガラス組成(例えばSiやGe、Fの濃度)に起因する線膨張係数差によって生じる熱応力も含んでいる。
【0036】
図1には本発明に係る製法で作製した光ファイバ裸線の結果(a)〜(e)とともに、熱処理を行っているが、本発明に係る製法まで至らない光ファイバ裸線の結果(f)、従来の製法で作製した光ファイバ裸線の結果(g)〜(i)も併せて示した。
各光ファイバ裸線(a)〜(i)は、表1に示すように、線引速度[m/min]と線引張力[gf]の組合せを変更して作製した。なお、これらの光ファイバ裸線(a)〜(i)については、後段において実施例1〜5および比較例1〜4として詳細に述べるが、この実施例等の番号も表1の最右欄に併せて示した。
【0037】
【表1】
【0038】
図1において、領域αはコア部を、領域β、領域γ及び領域δはクラッド部である。特に、領域γと領域δはクラッド部のうち最も外側に位置するクラッド層であり、領域δは最外周端部(後述する被覆部材と接する部分)をなす。領域βは領域γより内周側にあるクラッド部を構成するクラッド層を表す。
【0039】
図1のグラフより、以下の点が明らかとなった。
(1)光ファイバ裸線(a)〜(e)においては、クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、その半径方向のほぼ全域(すなわち、領域γ)において引張応力を有する。
(2)光ファイバ裸線(a)〜(e)の領域γにおける残留応力である引張応力は、線分Aおよび線分Bとほぼ重なることから、領域γの内周側から外周側に向けて減少する傾向をもつことが分かる。
【0040】
(3)光ファイバ裸線(a)〜(e)の前記S(r)は、最外周端部(領域δ)において引張応力から圧縮応力に反転する傾向を示す。
(4)光ファイバ裸線(f)〜(i)においては、クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、領域γにおいて引張応力を有する。
【0041】
(5)光ファイバ裸線(f)〜(i)の領域γにおける残留応力は、領域γの内周側から外周側に向けて、引張応力であり、さらに増加する傾向をもつことが分かる。
(6)光ファイバ裸線(g)〜(i)の前記S(r)は、最外周端部(領域δ)において引張応力から圧縮応力に反転することなく、残留応力はほぼ零となる。これに対し、光ファイバ裸線(f)においては、引張応力から圧縮応力に反転する傾向を示す。
【0042】
以上の結果より、本発明に係る光ファイバ素線を構成する光ファイバ裸線は、コア部、及び、その周囲をなす少なくとも一層以上のクラッド層からなるクラッド部、から構成されてなる光ファイバ素線であって、前記クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、その半径方向のほぼ全域において引張応力であり、内周側から外周側に向けて減少している構成からなることが分かった。ここで、ほぼ全領域とは、最も外側に位置するクラッド層のうち、領域δ(最外周端部)を除いた領域γを意味する。
【0043】
また、後述するように、光ファイバ裸線(a)〜(e)は、波長1550nmにおける伝送損失が0.18dB/km以下であり、かつ、レーリ散乱係数が0.92dB/km/μm4 以下であることが確認された。一方、比較にために示した光ファイバ裸線(f)〜(i)においては、上記伝送損失が0.18dB/km以下のものに混在して、この数値を超えるものも製造されることが確認された。そして、この伝送損失が0.18dB/kmを超えるものについてレーリ散乱係数を測定したところ0.92dB/km/μm4 を上回る数値をもつことが分かった。
【0044】
したがって、コア部、及び、その周囲をなす少なくとも一層以上のクラッド層からなるクラッド部、から構成されてなる光ファイバ素線であって、前記クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、その半径方向のほぼ全域において引張応力であり、内周側から外周側に向けて減少している構成を採ることにより、光ファイバ素線の残留応力の径方向分布差が小さく、波長1550nmにおける伝送損失が小さく、かつ、レーリ散乱も低く抑えられる光ファイバ素線の提供が可能となる。
【0045】
上述した光ファイバ素線を構成する光ファイバ裸線は、光ファイバ母材を加熱し、溶融する工程Aと、前記工程Aにより溶融された光ファイバ母材を引出し、光ファイバ裸線とする工程Bと、を少なくとも備えてなる光ファイバ素線の製造方法であって、前記工程Bにおける母材の外径減少率dD/dXが、0以上(18.3×106 ×D2 −1.2×103 ×D)以下であることを特徴とする製造方法により得られる。ただし、母材の外径=D[m]、母材を引出す方向の距離=X[m]、外径減少率=dD/dX、とする。
【0046】
図2は、工程Bにおいて熱処理する際の温度保持時間と仮想温度との関係を、各熱処理温度毎に調べたグラフである。仮想温度は、ラマン散乱分光計にて測定し、波数605cm−1における吸収ピークから算出した。図2には、6種類の熱処理温度、すなわち1100℃(太い実線)、1200℃(太い一点鎖線)、1300℃(太い二点鎖線)、1400℃(細い実線)、1500℃(細い一点鎖線)、1600℃(細い二点鎖線)の結果を纏めて示した。
【0047】
ここで、温度保持時間とは、各熱処理温度毎の処理時間、すなわち熱処理が開始されてからの時間「光ファイバ裸線が熱処理される空間(以下、熱処理工程とも呼称する)に滞在を開始してから時間」を意味する。なお、本発明において熱処理工程とは、加熱溶融炉そのものであってもよいし、熱処理専用の加熱炉、もしくは対流熱伝導率の悪い雰囲気で満たされた容器、管などであり特に限定されるものではないが、各種温度の光ファイバ裸線の熱履歴を調整する工程を指すものとする。
【0048】
図2のグラフより、以下の点が明らかとなった。
(1)1300℃以下の温度での熱処理では、仮想温度が下がりきるまで数秒オーダーの時間が必要であり、これは同時に線引きにおける必要な熱処理時間となり、結局は従来のように、線引線速を遅くしないと現実的ではないと言える。例えば、2秒熱処理、線引速度300m/minでは、熱処理長10m必要となり現実的ではないが、100m/minでは、熱処理長3.3mなら、低速のため、熱処理後の冷却長が短尺でも可能なため、実現することができるということになるが、あまりに低速のため生産性が悪い。
【0049】
(2)また、1400℃以上であれば、0.5秒以内の処理で、熱処理温度付近まで仮想温度を下げることが可能であるといえる。同様に、0.5秒処理、線速200m/minでは、熱処理長1.6mで、十分に仮想温度を下げることができることがわかり、これは、1300℃以下で熱処理の100m/minにおける熱処理長の半分以下である。さらに、生産性を向上させるには、熱処理温度を上げるか、処理温度に勾配をつけることなどを行えば良い。換言すると、熱処理温度を1400℃以上とすれば、仮想温度を所定の数値に安定化するために要する時間を1秒以内とすることができる。
【0050】
次に、この仮想温度とレーリ散乱係数との関係について説明する。図3に示すグラフは、数々の熱処理条件(温度、時間)を変えたサンプルについて、仮想温度とレーリ散乱係数を測定した結果について纏めて示す。図3にプロットしたレーリ散乱係数は、図4に示すように、カットバック法にて試料の損失波長特性を測定し、次いで図5に示すように、波長の4乗分の1に対してプロットし、直線近似することにより算出した数値である。
【0051】
図3のグラフより、以下の点が明らかとなった。
(1)図3の各プロットは直線で近似(点線)されることから、仮想温度とレーリ散乱係数には、比例関係が成り立つ。
(2)図3において近似した直線から、レーリ散乱係数が0.92dB/km/μm4 となるには、仮想温度をおよそ1570℃とすれば良いことが読みとれる。
【0052】
換言すると、この仮想温度を得るためには、最終的な熱処理温度が1570℃以下でなければならないことを示し、最低限の温度履歴とするためには、高くとも1600℃以下の徐冷温度とすることが望ましいといえる。
レーリ散乱係数0.92dB/km/μm4 ということは、これは、レーリ散乱損失以外の構造不整損失、赤外吸収損失、OH基吸収損失などの損失合計を約0.02dB/kmとした場合、1.55μmでの損失に換算する(0.92÷1.554 +0.02)と、約0.1794dB/kmになることが見積もれる。
【0053】
以上から、線速200m/min以上で、波長1.55μmでの損失0.18dB/km以下を実現するためには、1400℃以上1600℃以下の温度にて、1sec以下、より好ましくは0.5sec以下の時間熱処理し、それにより仮想温度1570℃以下、レーリ散乱係数0.92dB/km/μm4 とすれば良いことがわかる。
【0054】
しかしながら、1400℃以上1600℃以下の温度で0.5sec以下の時間という条件のみでは、温度勾配の最適化や、母材の組成の違いによる粘性、構造緩和時間などの違いから、線引条件検討においての最適化が難しく、より高速線引時などへの最適化が難しく、必要以上の熱処理炉を導入したためコストがかかったり、予想される損失を安定して得ることが難しかった。
【0055】
上記状況を受け、本筆者らが、線引条件を鋭意検討した結果、次のことと直接結びつけられることが判明した。光ファイバ線引の加熱溶融されて引き出される光ファイバ母材から光ファイバ裸線になるまでに、ネックダウン形状が形成される。このネックダウン形状は、光ファイバ裸線の熱処理温度履歴により変化する。逆にいえば、このネックダウン形状を所望な形状とすれば、その熱処理工程の温度履歴も最適なものとなる。
【0056】
これは今回、熱処理温度域が1400℃以上の光ファイバ温度で成り立ち、この温度域では、引き出された光ファイバ裸線は、溶融変形しているために、ネックダウン形状が形成される。1300℃以下の温度では、実質外径上の溶融変形は終了しているため、上記ネックダウン形状での議論はできない。また、この1400℃という温度は、短時間の熱処理で仮想温度を下げることができる最低温度にも相当する。さらに、低レーリ散乱係数0.92dB/km/μm4 以下が得られる仮想温度1570℃以下をより短熱処理時間で実現するには、実質1600℃以下の温度での熱処理が有効であり、この温度でのネックダウン形状外径は、一般的なGe添加コア、純石英クラッド組成の光ファイバ母材の場合、約φ0.5mmであった。
【0057】
以上より、検討されたネックダウン形状外径変化率が、0.5mmから、外径変化が実質上無くなるまでの領域について、母材外径をD[m]、母材引出す方向の距離をX[m]とした場合、外径減少率をdD/dXで表し、これが、外径Dに対し0≦[外径減少率]≦18.3×106 ×D2 −1.2×103 ×Dを満たすことで、最適な徐冷温度履歴となり、仮想温度が低下するので、小さなレーリ散乱係数(0.92dB/km/μm4 以下)と、波長1550nmにおける低い伝送損失(0.18dB/km以下)が得られることが分かった。
【0058】
換言すると、工程Bにおける母材の外径減少率dD/dXを、0以上(18.3×106 ×D2 −1.2×103 ×D)以下の範囲とすることにより、光ファイバ裸線は最適な徐冷温度履歴となり、仮想温度を低下させることにより、波長1550nmにおける伝送損失が0.18dB/km以下である光ファイバ素線や、レーリ散乱係数が0.92dB/km/μm4 以下である光ファイバ素線を安定して製造することが確認された。
【0059】
ここまでは外径減少率というファクターに基づき説明してきたが、この外径減少率に代えて断面積減少率や体積減少率を用いても、同様に説明できることは言うまでもない。また、外径変化が実質上なくなるまでの領域として、外径測定器の誤差の影響受けにくくするため、目標外径+0.8%以下の領域(目標外径125μmの場合、126μm以下)は、実質上外径変化は無いものとみなした。
【0060】
(実施例および比較例)
以下では、2種類の母材(LWP−SM母材、SM母材)を用いた。ここで、LWP−SM母材とは、Ge添加コアCl含有シリカクラッド−シングルモードファイバ母材を、SM母材とは、Ge添加コアOH含有シリカクラッド−シングルモードファイバ母材をそれぞれ意味する。
作製した光ファイバ素線の主な構成と製造条件は、光ファイバ(外径φ125μm)、被覆材(ウレタン=アクリレート系紫外線硬化型樹脂:プライマリ、セカンダリ共)、コート径(φ250μm)、紡糸線速(200〜2000m/min)である。
【0061】
(実施例1)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速200m/min、張力100gf、熱処理温度を1400℃一定、熱処理長0.6mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。約5000m程度の光ファイバ素線を線引きしたところで、線引き中のネックダウン形状を維持するために、意図的に光ファイバ素線を断線させ、線引きを中断した。その後、残留光ファイバ母材を、加熱溶融炉、および熱処理炉から、上方へ引き上げ、外径1mm以下のネックダウンサンプルを取り出し、形状を外径測定器にて測定し、外径減少率を算出した。
【0062】
また、5000m試料を側圧などによるマイクロベンド損失の影響などを排除するために、束状態にし、OTDRによる1.55μm損失測定、および、カットバック法による損失波長特性を測定し、波長の4乗分の1に対する損失変化の傾きから、レーリ散乱係数を算出した。また、ラマン分光計にて、ラマン散乱スペクトルを測定し、仮想温度を算出した。
各種測定の結果を表2、図6および図7に、○印にて示した。図6は位置とネックダウン外径との関係を、図7は外径と外径減少率との関係を示すグラフである。併せて、本発明に係る外径変化率となるネックダウン形状は、各図の中に実線で示した。
【0063】
【表2】
【0064】
(実施例2)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速600m/min、張力120gf、熱処理温度を1500℃一定、熱処理長0.8mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表2、図6および図7に、△印にて示した。
【0065】
(実施例3)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速1000m/min、J張力150gf、熱処理温度を1500℃一定、熱処理長1.0mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表2、図6および図7に、◆印にて示した。
【0066】
(実施例4)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速1500m/min、張力180gf、熱処理温度を1600℃〜1500℃へ勾配をつけ、熱処理長1.2mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表2、図6および図7に、●印にて示した。
【0067】
(実施例5)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速2000m/min、張力200gf、熱処理温度を1600℃〜1500℃へ勾配をつけ、熱処理長1.2mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表2、図6および図7に、*印にて示した。
【0068】
以上、実施例1〜5を見てみると、図7から、ネックダウン形状の外径減少率が規定の範囲内に入っているため、表1から、仮想温度が低く、レーリ散乱係数も0.92dB/km/μm4 以下、1.55μm損失も0.18dB/kmであることが分かった。
また、実施例1〜5の残留応力分布(図21〜図17)から、最外層クラッドにおける残留応力の径方向分布が、引張応力で、かつ、内側から外側に向けて、増加傾向を示した。さらに、最外周端部を含む残留応力が引張応力から圧縮応力へ転じていることも確認された。
【0069】
(比較例1)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速600m/min、張力120gf、熱処理炉を取り外して線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表3、図8および図9に、○印にて示した。
【0070】
【表3】
【0071】
(比較例2)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速1500m/min、張力180gf、熱処理炉を取り外して線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表3、図8および図9に、△印にて示した。
【0072】
(比較例3)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速2000m/min、張力200gf、熱処理炉を取り外して線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表3および図8、図9に、◆印にて示した。
【0073】
(比較例4)
本例では、LWP−SM母材を使用し、紡糸線速200m/min、張力100gf、熱処理温度を1300℃一定、熱処理長0.6mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表3および図8、図9に、*印にて示した。
【0074】
以上、比較例1〜3では、いずれも熱処理炉を取り外して線引をしている。その結果、図8に示すようにネックダウン形状が短くなり、結果として、図9に示すように、外径減少率が速くなっているのがわかる。その結果、レーリ散乱係数は0.96〜0.97dB/km/μm4 となり、1.55μm損失は、0.186〜0.188dB/kmとなり、0.180dB/kmを超えていることがわかる。
【0075】
また、比較例4では、熱処理炉は使用しているものの、ネックダウン形状が、請求範囲外になっているために、外径減少率も大きく、その影響でレーリ散乱係数が0.932dB/km/μm4 、(1.55μm)損失は0.181dB/kmと、0.92、0.180以上となっていることがわかる。
【0076】
さらに、比較例1〜4の残留応力分布(図22〜図24、図16)から、最外層クラッドにおける残留応力の径方向分布が、引張応力だが、内側から外側に向けて、増加傾向を示した。また、熱処理をしていない比較例1〜3については、最外周端部を含む残留応力も引張応力から圧縮応力へ転じていないことも確認された。比較例4については、熱処理を施しているため、引張応力から圧縮応力へ転じているが、熱処理が不十分なため、最外層クラッドにおける引張応力が、内側から外側に向けて、増加傾向を示した。
【0077】
(実施例6)
本例では、SM母材を使用し、紡糸線速300m/min、張力100gf、熱処理温度を1400℃一定とし、熱処理長0.8mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表4、図10および図11に、○印にて示した。
【0078】
【表4】
【0079】
(実施例7)
本例では、SM母材を使用し、紡糸線速1000m/min、張力150gf、熱処理温度を1600℃〜1500℃へ勾配をつけ、熱処理長1.0mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表4、図10および図11に、◆印にて示した。
【0080】
(実施例8)
本例では、SM母材を使用し、紡糸線速1500m/min、張力180gf、熱処理温度を1600℃〜1500℃へ勾配をつけ、熱処理長1.2mとして線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表4、図10および図11に、●印にて示した。
【0081】
以上、実施例6〜8は、母材をOH含有のSM母材に変更した場合について検討した例である。図10より、OH含有により若干粘度が下がったためか、ネックダウン形状が若干長くなっており、それに伴い図11より、外径減少率も緩やかになっていることが分かった。レーリ散乱係数も実施例2〜4と比較すると、若干下がっている。1.55μm損失も、同程度か若干下がる結果となっている。
残留応力分布についても、実施例1〜5同様、最外周クラッドにおいて、ほぼ全域で引張応力であり、かつ、内側から外側に向けて、減少傾向を示した。さらに、最外周端部を含む残留応力は、引張応力から圧縮応力へ転じていた(図示せず)。
【0082】
図12は、実施例3と実施例7における位置とネックダウン外径との関係を示すグラフである。実施例3は●印、実施例7は◆印で示した。
図13は、実施例3と実施例7における外径と外径減少率との関係を示すグラフである。実施例3は●印、実施例7は◆印で示した。
図14は、実施例4と実施例8における位置とネックダウン外径との関係を示すグラフである。実施例4は◆印、実施例8は□印で示した。
図15は、実施例4と実施例8における外径と外径減少率との関係を示すグラフである。実施例4は◆印、実施例8は□印で示した。
【0083】
図12〜図15のグラフより、同じ熱処理温度でも母材の組成によりネックダウン形状が若干変化することが分かった。この実験結果は、熱処理温度、時間のみで線引条件を決定すると、母材組成によりネックダウン形状が異なった場合、同一の損失特性が得られないことを示唆している。
以上より、温度で規程するより、組成を反映しているネックダウン形状外径減少率が同一になるようにすることで、組成による差を無視することができるようになり、より応用が効くことが明らかとなった。
【0084】
(比較例5)
本例では、SM母材を使用し、紡糸線速1500m/min、張力180gf、熱処理炉を取り外して線引し、その後、冷却、コーティングをして、光ファイバ素線を製造した。
その後は、実施例1同様、ネックダウン形状から外径減少率、試料は束状態にし、1.55μmOTDR損失、損失波長特性からレーリ散乱係数、ラマン散乱スペクトルから仮想温度を測定した。
各種測定の結果を表5、図10および図11に、*印にて示した。
【0085】
【表5】
【0086】
表5からも、熱処理炉を使用しなければ、損失を0.18dB/km以下にすることは難しいことが分かった。
残留応力分布についても、比較例1〜3同様、最外周クラッドにおいて、ほぼ全域で引張応力であるが、内側から外側に向けて、増加傾向を示した。さらに、最外周端部を含む残留応力は、圧縮応力へ転じていなかった(図示せず)。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る光ファイバ素線は、光ファイバ素線の残留応力の径方向分布差が小さく、レーリ散乱も低く抑えられるので、シングルモードファイバ、分散シフトファイバ、カットオフシフトファイバ、分散補償ファイバのみならず、いかなる種類の光ファイバとしても好適に利用できる。
本発明の光ファイバ素線は、例えば、低損失な光ファイバであるから、長距離伝送システム用途として有用であるとともに、レーリ散乱係数が小さいことから損失の波長依存性も小さくなるので、光増幅システムや光ラマン増幅システムへの適用に好適である。
【0088】
本発明に係る光ファイバ素線の製造方法は、最低限な熱処理を施すだけでよいので、必要以上の線引タワー高さが必要なく、従来の設備の改良で十分に対応可能であることから、多大な低コスト化が図れる。また、母材組成による粘度の違いを吸収できるので、低損失な線引条件を簡単に得ることができ、高い制御性において上述した光ファイバ素線を安定して作製できることから、光ファイバ素線を高い歩留まりで大量に生産する製造ラインが構築できる。さらには、幅広い線引速度に適応した生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係る光ファイバ素線を構成する光ファイバ裸線部分に生じた残留応力(以下、残留応力分布とも呼ぶ)を示すグラフである。
【図2】工程Bにおける温度保持時間と仮想温度との関係を示すグラフである。
【図3】仮想温度とレーリ散乱係数との関係を示すグラフである。
【図4】損失と波長との関係を示すグラフである。
【図5】損失を波長の4乗分の1に対してプロットしたグラフである。
【図6】位置とネックダウン外径との関係を示す第一のグラフである。
【図7】外径と外径減少率との関係を示す第一のグラフである。
【図8】位置とネックダウン外径との関係を示す第二のグラフである。
【図9】外径と外径減少率との関係を示す第二のグラフである。
【図10】位置とネックダウン外径との関係を示す第三のグラフである。
【図11】外径と外径減少率との関係を示す第三のグラフである。
【図12】位置とネックダウン外径との関係を示す第四のグラフである。
【図13】外径と外径減少率との関係を示す第四のグラフである。
【図14】位置とネックダウン外径との関係を示す第五のグラフである。
【図15】外径と外径減少率との関係を示す第五のグラフである。
【図16】比較例4の残留応力分布を示すグラフである。
【図17】実施例5の残留応力分布を示すグラフである。
【図18】実施例4の残留応力分布を示すグラフである。
【図19】実施例3の残留応力分布を示すグラフである。
【図20】実施例2の残留応力分布を示すグラフである。
【図21】実施例1の残留応力分布を示すグラフである。
【図22】比較例1の残留応力分布を示すグラフである。
【図23】比較例2の残留応力分布を示すグラフである。
【図24】比較例3の残留応力分布を示すグラフである。
【図25】光ファイバ素線の製造装置の概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0090】
11 光ファイバ母材、12 紡糸炉、13 光ファイバ裸線、14 冷却筒、15 被覆材塗布装置、16 UVランプ、17 光ファイバ素線、18 ターンプーリ、19 引取機、20 ダンサーロール、21 巻取ドラム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部、及び、その周囲をなす少なくとも一層以上のクラッド層からなるクラッド部、から構成されてなる光ファイバ素線であって、
前記クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、その半径方向のほぼ全域において引張応力であり、内周側から外周側に向けて減少していることを特徴とする光ファイバ素線。
【請求項2】
前記S(r)は、最外周端部において引張応力から圧縮応力に反転していることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線。
【請求項3】
波長1550nmにおける伝送損失が0.18dB/km以下であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線。
【請求項4】
レーリ散乱係数が0.92dB/km/μm4 以下であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線。
【請求項5】
光ファイバ母材を加熱し、溶融する工程Aと、
前記工程Aにより溶融された光ファイバ母材を引出し、光ファイバ裸線とする工程Bと、
を少なくとも備えてなる光ファイバ素線の製造方法であって、
前記工程Bにおける母材の外径減少率dD/dXが、0以上(18.3×106 ×D2 −1.2×103 ×D)以下であることを特徴とする光ファイバ素線の製造方法。
ただし、母材の外径=D[m]、
母材を引出す方向の距離=X[m]、
外径減少率=dD/dX。
【請求項6】
前記工程Bは、光ファイバ母材を引出す際に熱処理を施すことを特徴とする請求項5に記載の光ファイバ素線の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理は、仮想温度を略一定の数値に保つまでに要する時間が1秒より短い温度で行うことを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ素線の製造方法。
【請求項8】
前記温度は、1400℃以上1600℃以下であることを特徴とする請求項7に記載の光ファイバ素線の製造方法。
【請求項9】
前記工程Bにより形成された光ファイバ裸線をコーティングに必要な温度にまで冷却する工程Cと、
前記工程Cにより冷却された光ファイバ裸線に被覆部材を塗布する工程Dと、
前記工程Dにより塗布された被覆部材を架橋・硬化する工程Eと、
を備えてなることを特徴とする光ファイバ素線の製造方法。
【請求項1】
コア部、及び、その周囲をなす少なくとも一層以上のクラッド層からなるクラッド部、から構成されてなる光ファイバ素線であって、
前記クラッド部のうち、最も外側に位置するクラッド層における光軸方向の残留応力の半径方向分布S(r)は、その半径方向のほぼ全域において引張応力であり、内周側から外周側に向けて減少していることを特徴とする光ファイバ素線。
【請求項2】
前記S(r)は、最外周端部において引張応力から圧縮応力に反転していることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線。
【請求項3】
波長1550nmにおける伝送損失が0.18dB/km以下であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線。
【請求項4】
レーリ散乱係数が0.92dB/km/μm4 以下であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線。
【請求項5】
光ファイバ母材を加熱し、溶融する工程Aと、
前記工程Aにより溶融された光ファイバ母材を引出し、光ファイバ裸線とする工程Bと、
を少なくとも備えてなる光ファイバ素線の製造方法であって、
前記工程Bにおける母材の外径減少率dD/dXが、0以上(18.3×106 ×D2 −1.2×103 ×D)以下であることを特徴とする光ファイバ素線の製造方法。
ただし、母材の外径=D[m]、
母材を引出す方向の距離=X[m]、
外径減少率=dD/dX。
【請求項6】
前記工程Bは、光ファイバ母材を引出す際に熱処理を施すことを特徴とする請求項5に記載の光ファイバ素線の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理は、仮想温度を略一定の数値に保つまでに要する時間が1秒より短い温度で行うことを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ素線の製造方法。
【請求項8】
前記温度は、1400℃以上1600℃以下であることを特徴とする請求項7に記載の光ファイバ素線の製造方法。
【請求項9】
前記工程Bにより形成された光ファイバ裸線をコーティングに必要な温度にまで冷却する工程Cと、
前記工程Cにより冷却された光ファイバ裸線に被覆部材を塗布する工程Dと、
前記工程Dにより塗布された被覆部材を架橋・硬化する工程Eと、
を備えてなることを特徴とする光ファイバ素線の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2006−58494(P2006−58494A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238824(P2004−238824)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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