説明

光ヘッド及び光情報記録媒体の再生方法

【課題】
光ディスクに照射される信号光と参照ミラーに照射される参照光の干渉を利用する光ヘッドでは、信号光と参照光の光軸の角度を高精度に一致させ、光路差を高精度に調整することが必要となる。
【解決手段】
上記の課題に対し、光学系の小型化に適した、光源と光を信号光と参照光に合分割する分割部材と、信号光を光情報媒体に集光・回収する対物レンズと、参照光を反射する参照光ミラー系を有する。参照光ミラー系として、反射ミラー124上を焦点とし、波面を球面波として集光する集光レンズ123を用いる。反射ミラー124が傾いても焦点を波源とする球面波として反射され、集光レンズで平面波に変換されるため、参照ミラー系への入射角と反射角を高精度に一致させ、さらに光路差を高精度に調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置の再生信号の高S/N化に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクは、青色半導体レーザと、高開口数(NA)対物レンズを用いるブルーレイディスクの製品化に至って、光学系の分解能としてはほぼ限界に達し、さらなる大容量化に向けては、今後、多層化が有力となると考えられる。多層光ディスクにおいては各層からの検出光量がほぼ同等となる必要性から、特定の層からの反射率は小さくせざるを得ない。ところが光ディスクは大容量化とともにビデオなどのダビング速度の高速化の必要性から、転送速度の高速化も続いており、そのままでは再生信号のS/N比が十分確保できなくなりつつある。したがって今後の多層化と高速化を同時に進めていくためには、検出信号の高S/N化が必須となる。
【0003】
光ディスクの再生信号の高S/N化に関する技術は、たとえば特許文献1,特許文献2などに述べられている。いずれも光磁気ディスクの再生信号の高S/N化に関して、半導体レーザからの光を光ディスクに照射する前に分岐して、光ディスクに照射しない光を、光ディスクからの反射光と合波して干渉させることにより、微弱な信号の振幅を、光ディスクに照射しない光の光量を大きくすることによって増幅することを狙ったものである。光磁気ディスクの信号検出で従来用いられている偏光ビームスプリッタの透過光と反射光の差動検出では、本質的にはもとの入射偏光成分と光磁気ディスクによる偏光回転によって生じる入射偏光方向と直交する偏光成分を干渉させて、入射偏光で直交偏光成分を増幅して検出を行うことになっている。したがって、もとの入射偏光成分を増大させれば信号を増大させることができるが、光ディスクに入射させる光強度は、データを消去したり上書きしたりしないようにするために、ある程度以下に抑える必要がある。これに対して上記従来の技術では、予め信号光と干渉させる光を分離しておいて、これをディスクに集光せずに信号光と干渉させ、信号増幅のため干渉させる光の強度を、ディスク表面の光強度と関係なく強くできるようにしているのである。これにより原理的には光強度の許す範囲で、強度を強くすればするほど、光検出器からの光電流を電圧変換するアンプのノイズや、光検出器で生じるショットノイズなどに比べたS/N比を高めることができる。
【0004】
特許文献1では、2つの光を干渉させて干渉強度を検出している。この際、干渉させるディスク非反射光の光路長を可変とし、干渉信号振幅の確保を狙っている。特許文献2では干渉強度検出に加えて、差動検出も行っている。これにより信号に寄与しない各光の強度成分をキャンセルし、これらの光の持つノイズ成分をキャンセルして高S/N化を図っている。この場合の差動検出には、無偏光のビームスプリッタを用いている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−342678号公報
【特許文献2】特開平6−223433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術に用いられている干渉計の光学系は、いずれもマッハツェンダー型の光学系であり、光学部品の点数が多く、光学系の小型化に不向きである。マッハツェンダー型の干渉計の光学系とは、最初に光を信号光と参照光に分割する分割手段と、信号光に信号としての何らかの変調が加えられたのち、参照光と再び合波させて干渉させるための手段が異なる干渉計である。これに対して、最初に分割する手段に再び信号光と参照光を戻すことによって干渉させるのが、トワイマングリーンあるいはマイケルソン型の干渉計の光学系である。上記従来例においてマッハツェンダー型の光学系を用いる理由について、上記文献には詳しく述べられていないが、光磁気ディスクの信号光が偏光回転により生じるため、干渉させる光の偏光方向の調整のため、回転調整のできるλ/2板(λ:波長)を干渉させる光路中に、往復でなく、片道方向だけ透過させるように配置させる必要があったため、と推測される。さらに他の問題として、2つの光の光路差の調整方法が特に述べられておらず、実用には難があることが挙げられる。特許文献2には、この問題に対して、干渉させる光を得るための参照ミラーをディスク上に記録膜と離して設置することが述べられているが、これは新規格のディスクを提案するものであり、既存のディスクを高S/N化するものではない。
【0007】
さらに上記従来技術ではいずれも信号増幅のため、干渉強度が最大となるように信号光と参照光の光路差を高精度に調整することが必要となる。また、参照光を反射する反射ミラーは全反射ミラー面で反射した光の光路長を均一にする為、ミラーの傾き角を高精度に調整することが必要となる。
【0008】
この問題に対して、ミラーの傾き角を高精度に調整し、かつ光路長を高精度に調整するのは実際上極めて困難となる。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、2つの光の光路差の高精度調整が容易で、ミラーの傾き角が信号増幅に対して感度が低く、信号増幅効果が高く、光学系の小型化に適した、干渉型の光ヘッドおよび光ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を達成するために以下の手段を用いた。
【0011】
本発明の光ヘッドは基本的に、半導体レーザなどの光源と、この光源からの光を第1と第2の光束に分割する偏光プリズムなどの第1の分割手段と、第1の光束を光情報記録媒体上に集光して照射する対物レンズなどの集光手段と、前記第2の光束を参照光として反射させる反射ミラーと、光情報記録媒体から反射した信号光と前記参照光を再び第1の分割手段に導いて重ね合わせて干渉させた光を分割するとともに、分割されたそれぞれの光に含まれる信号光と参照光の位相関係を互いに異ならしめる第2の分割手段と、分割された光を検出する複数の検出器と、から構成される。
【0012】
さらに前記反射ミラーを集光レンズと反射ミラーで構成される系で置き換える。集光レンズに入射された平面な波面はレンズ透過後、焦点で点波源となる球面に変換される。球面波は対物レンズの焦点面に配置した反射ミラーで反射され、レンズに回帰した光はレンズ通過後に再び平面な波面に変換される特徴を持つ。
【0013】
信号光と参照光を干渉させるときに参照光が傾くと干渉によって生じる干渉縞が多数発生して干渉強度が平均化されて低下する。ところが上記の光学系では反射ミラーが傾いても入射波面と反射波面は平行となり、光の干渉強度の低下が低減される特徴を持つ。
【0014】
さらに反射ミラーと集光レンズを一体とし、光軸方向に可動する1次元アクチュエータに搭載することにより、ミラーを焦点位置に固定した状態で光路長を精密に制御が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
信号光と参照光の光路差の調整が容易で、信号増幅効果が高く、さらに反射ミラーの傾きに対して信号光強度劣化が小さい、小型化に適した光学系の干渉型の光ヘッドおよび光ディスク装置を提供することができる。
【0016】
これにより、参照光ミラーによる高精度の光路長調整が簡易に可能となり、多層光ディスクなど、信号に対して相対的なノイズが増加する場合などに、信号増幅によって再生信号品質を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図を用いて本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の基本的な実施形態である。半導体レーザ101からの光をコリメートレンズ102によって平行光として、λ/2板103を透過させて偏光プリズム104に入射させる。偏光プリズム104は分離面に入射するP偏光をほぼ100%透過し、S偏光をほぼ100%反射させる機能を有している。このときλ/2板103の光軸周りの回転角度を調整することにより、一部の光をS偏光として偏光プリズム104を反射させ、一部の光をP偏光として透過させるようにすることができる。反射する光はλ/4板105を透過して円偏光に変換され、2次元アクチュエータ106に搭載された対物レンズ107により、光ディスク108上の記録膜に集光される。光ディスクからの反射光は同じ光路を戻り、対物レンズ107によって平行光とされ、λ/4板105により最初に入射したときとは90°偏光方向が回転した直線偏光となって偏光プリズム104に入射する。すると偏光が回転しているため、この光ディスク108からの反射光はP偏光となって偏光プリズム104を透過し、偏光プリズム113に入射する。一方、半導体レーザ101からの光のうち、偏光プリズム104を透過したP偏光はλ/4板110により円偏光に変換され、光軸方向に可動する1次元アクチュエータ122に搭載された集光レンズ123に入射する。集光レンズで集光された光は、焦点に配置した反射ミラー124によって反射され、逆周り円偏光に変換される。反射光は光軸を同じくして同じ光路を戻り、λ/4板110により入射時と偏光方向が90°回転した直線偏光となって偏光プリズム104に入射する。すると偏光が回転しているため、この集光レンズと反射ミラー124からの反射光はS偏光となって偏光プリズム104を反射し、光ディスク108からの反射光と重なり合って偏光プリズム113に入射する。ただし光ディスク108からの反射光と反射ミラー124からの反射光は互いに直交する直線偏光となっている。偏光プリズム113は偏光プリズム104と異なり、P偏光の一部を透過させ、S偏光をほぼ100%反射させる機能を有する。これにより反射ミラー124からの反射光はほぼ100%反射され、ディスクからの反射光は一部が偏光プリズム113を透過し、一部が反射される。反射された光は偏光位相変換分離素子114に入射し、光ディスク108からの反射光と反射ミラー124からの反射光を重ねたまま、2つの光の干渉の位相差が異なる4つの光に分割されて、集光レンズ115により4分割光検出器116上に設けられた4つの受光部でそれぞれ別々に検出される。図では簡略化して2本の集光光束に分離集光されているように示しているが、実際は4本の集光光束となる。検出された信号からRF信号演算回路120により、再生RF信号(RFS)を出力する。一方、偏光プリズム113を透過した光ディスク108からの反射光は、集光レンズ117,シリンドリカルレンズ118により非点収差を与えられて4分割光検出器119に集光され、その出力信号からサーボ信号演算回路121により焦点ずれ信号(FES)とトラッキング誤差信号(TES)を出力する。焦点ずれ信号は対物レンズ107を搭載した2次元アクチュエータ106のフォーカス駆動端子にフィードバックされ焦点位置が閉ループ制御される。さらに同じ信号が反射ミラー124を搭載した1次元アクチュエータ122にもフィードバックされ対物レンズ
107と連動して反射ミラー124も駆動される。これにより光ディスク108を反射した信号光と、反射ミラー124を反射した参照光との光路差をほぼ0に保つことができる。通常の半導体レーザのコヒーレンス長は数10μmであるため、光路差の調整精度はこの範囲以下になっていればよい。トラッキング誤差信号は対物レンズ107を搭載した2次元アクチュエータのトラッキング駆動端子にフィードバックされ閉ループ制御される。
【0019】
図2は図1の4分割光検出器116の受光部配置とRF信号演算回路120の配置と機能を示す図である。4分割光検出器116は図2に示した4つの光を受光するための4つの受光部301,302,303,304を有し、それぞれ位相差0°,90°,270°,180°の干渉位相差差の干渉強度を受光する。それぞれの出力を差動増幅器305,306によって差動演算を行ったのち、2乗加算平方根演算回路307によりRF信号を検出する。
【0020】
さらにこれらを数式で示し、図2に示した演算により再生RF信号が参照光によって増幅されることを説明する。PD1,PD2,PD3,PD4に入射する光の干渉強度はそれぞれ
【0021】
【数1】

【0022】
【数2】

【0023】
【数3】

【0024】
【数4】

【0025】
のように表せる。これらから、図2における差動増幅器305,306の出力信号Sig1,Sig2は、
【0026】
【数5】

【0027】
【数6】

【0028】
のように表せる。したがってこれらの2乗和をとって平方根をとる演算を行うと、
【0029】
【数7】

【0030】
のように、再生信号の電界振幅が参照光の電界振幅で増幅された信号が検出できることになる。ここでこの2乗加算の演算を行うことにより、参照光と信号光に位相差が最終的に得られる信号に影響しないことがわかる。したがって従来技術に述べられていたような、波長の数分の1という光路差調整が不要となるのである。
【0031】
図3は別の実施形態として、トラッキング信号検出方式として差動プッシュプル法を用いる場合である。差動プッシュプル法ではディスクに入射する光を、回折格子801を用いて3ビームとする。そしてディスク上のメインスポットを情報トラックに配置する場合、2つのサブスポットが隣接するトラック間に配置されるように回折格子801の回転調整を行う。ここでは参照光も3ビームとなるが、これも信号光のそれぞれ対応するビーム同士で干渉させて、トラッキング誤差信号も差動演算により増幅する。また焦点ずれ信号も回折格子801による0次光を4つの各干渉位相差でそれぞれ4分割検出することにより、非点収差法の焦点ずれ信号をやはり干渉差動検出により増幅する。これを1つにパッケージ化された光検出器802により受光し、信号演算回路803により信号演算を行う。
【0032】
図4は図3に対応して、信号光と参照光の干渉位相差0°,180°,90°,270°の4つの干渉光に対してそれぞれメインビーム用の4分割光検出器902,サブビーム用の2分割光検出器901,903、加算アンプ904,差動増幅器905,906を用い、各4つのRF信号(RFS1,RFS2,RFS3,RFS4),焦点ずれ信号(FES1,FES2,FES3,FES4),トラッキング誤差信号(TES1,TES2,TES3,TES4)を検出する回路構成を示している。これらの差動増幅回路などは図3の信号演算回路803の中に内蔵されている。
【0033】
図5はこれらの各干渉位相差の信号から、それぞれ差動検出と2乗加算平方根演算により増幅信号を検出する回路構成を示す図である。これも差動アンプ1001により0°と180°、90°と270°の差動信号を求めた後、二乗加算平方根演算回路1002により、それぞれRF信号,焦点ずれ信号,トラッキング誤差信号を求めることができる。このような構成とすると、多層ディスクなどの場合に、焦点が大きくずれた多層からの信号もれ込みに対して、検出すべき層からの光による信号を選択的に増幅でき、クロストーク低減に有利となる。
【0034】
図6(a)は前記反射ミラー124を集光レンズ123と反射ミラー124で構成される系で置き換えた時の入射光と反射光の光路と、その同位相となる波面を示している。平面波で集光レンズ123に入射された光束は、レンズ透過によりレンズの焦点を波源とする球面波に波面が変換される。この焦点に配置された反射ミラー124で反射された光は、焦点を波源としている球面波となるので、集光レンズ123で、再び平面波として変換される。
【0035】
一方、図6(b)に示すように、反射ミラー124が傾いた時でも、反射光は集光レンズの焦点からの光であるので、反射光の光軸はずれるが同一波面で反射される。ここで、信号光と参照光の干渉はそれぞれの光線の位相が同位相となる時、偏光プリズム104において信号光干渉強度は最大となる。その為、信号光と参照光の光軸の傾きが同一でありかつ平面波である時、同位相となる面積最大となり干渉強度最大となる。なおこの時、反射ミラー傾きにより光軸が平行に多少ずれても干渉面積減少は小さく、干渉強度劣化は小さくなる。一方、信号光か参照光のどちらか一方でも平面波で無い場合は、同一位相となる面積が極端に減少するため、干渉強度が大きく劣化する。従って、本実施例においては、反射ミラーが傾いた場合でも、光軸は多少ずれるが参照光の入射角と反射角がともに平面波として高精度に一致し、干渉強度劣化が小さく信号劣化低減に有効となる。
【実施例2】
【0036】
図7は別の実施形態として、参照光を反射ミラー124に集光する集光レンズ123直前に、ビームエキスパンダ125,126を配置する場合である。ビームエキスパンダを構成するレンズ群、例えば平凸レンズ125と平凹レンズ126は、λ/4板110から反射ミラー124の方向に進行する参照光を波面を保存し、光束径のみを任意の倍率で縮小、一方反射ミラー124からλ/4板110へ反射された参照光の光束径を前記同一の倍率で拡大されることを特徴とする。
【0037】
以下の式に示すように、ビームエキスパンダ125,126により反射ミラー124に集光する集光レンズ123での光束径(D)を縮小することにより、レンズの開口数
(NA)は光束径に比例して小さくなる。
【0038】
【数8】

【0039】
なお、fはレンズの焦点距離である。反射ミラー124の位置が集光レンズ123の焦点からずれる時、反射ミラー124からの反射光が集光レンズ123を通過したとき、波面は完全な平面波に復元されず、前記焦点と反射ミラーの位置ずれ距離に依存した信号強度劣化を引き起こす。
【0040】
一方、通常集光レンズの開口数を小さくすると、上記位置ずれによる波面の歪みも小さくなる傾向がある。これは、開口数が小さくなるに従い、レンズの焦点深度が深くなり、反射ミラーの位置と集光レンズの焦点の位置とのずれに対してピントが合い易くなる為である。
【0041】
図8は反射ミラー124の焦点と反射ミラーの位置ずれにより信号強度が2分の1に劣化する距離とレンズの開口径との関係を解析した一例である。これより、信号強度が2分の1に劣化する距離は、開口数が小さいほど大きくなることがわかる。従って、ビームエキスパンダ125,126を用いることにより、参照光の光束径の縮小化による開口数低減が、反射ミラー124の焦点位置からのずれに対する信号劣化低減に有効である。また、上記信号強度劣化低減は、ほぼ開口数の2乗に反比例する。
【実施例3】
【0042】
集光レンズ123を用い反射ミラー127に集光する手法では、反射ミラー127を集光レンズ123の焦点面近傍に保持しておく必要がある。しかし、光ディスク装置の温度変化による熱膨張により、集光レンズ123と反射ミラー127の光路長は変動し、位置ずれ距離に依存した信号強度劣化を引き起こす。
【0043】
図9は別の実施形態として、図1または図3の反射ミラー124に、例えば珪素とアルミニウムなどの熱膨張係数の異なる2種の材料を張り合わせた反射ミラー127を置き換えた場合である。反射ミラー127は一部を固定された、例えば片持ち梁構造となっており、反射ミラーの一部が、温度変化により2種材料の積層方向に反ることを特徴とする。例えば、外気の温度変化により、集光レンズ123と反射ミラー127を固定している1次元アクチュエータが熱膨張を起こしたとき、反射ミラー127が入射方向に反るようにして、反射ミラー127と集光レンズ123の焦点の位置ずれを抑えることができる。反射ミラー127が反る量については、参照光が照射される反射ミラー127面が、前記の伸びた距離と同一の距離となるように、反射ミラー127の膜厚や材質などを最適化することが望ましい。また、逆に1次元アクチュエータが温度変化により縮むときには、反射ミラー127は集光レンズ123とは逆側に反るようにするように反射ミラー127の材質を選択するとよい。このようにすると、温度変化による集光レンズ123の焦点と反射ミラー127の距離を一定に保つことができ、温度変化による信号強度劣化の低減に有効である。なお、反射ミラー127を片持ちとして反らせたため、温度変化したときに反射ミラー127が傾くが、前述したように本発明では反射ミラー127が集光レンズ123の焦点上にあれば、反射した球面波が集光レンズ123を通過して平面波となるので、偏光プリズム104では問題なく光を干渉することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により、大容量多層高速光ディスクの再生信号が安定に、高品質で検出することが可能となり、大容量ビデオレコーダや、ハードディスクデータバックアップ装置,保存情報アーカイブ装置など、幅広い産業応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例に係る断面図である。
【図2】RF信号受光部と演算回路説明図である。
【図3】差動プッシュプル法によるトラッキング検出を行う実施例に係る断面図である。
【図4】各干渉位相差でのRF信号,焦点ずれ信号,トラッキング誤差信号を検出する構成を示す図である。
【図5】差動検出による信号増幅を行う回路構成を示す図である。
【図6】反射ミラーの傾きの有無による入射光と反射光の光路と、その波面を示す図である。
【図7】ビームエキスパンダにより参照光の光束径の小径化を行う実施形態に係る断面図である。
【図8】開口数と信号強度が2分の1に劣化する集光レンズの焦点と反射ミラーの距離の関係である。
【図9】熱変形する反射ミラーを備える実施形態に係る断面図である。
【符号の説明】
【0046】
101 半導体レーザ
102 コリメートレンズ
103 λ/2板
104 偏光プリズム
105,110 λ/4板
106 2次元アクチュエータ
107 対物レンズ
108 光ディスク
109 スピンドルモータ
111,122 1次元アクチュエータ
112 コーナープリズム
113 偏光プリズム(S偏光反射率100%)
114 偏光位相変換分離素子
115,117 集光レンズ
116,119,902 4分割光検出器
118 シリンドリカルレンズ
120 RF信号演算回路
121 サーボ信号演算回路
123 集光レンズ
124 反射ミラー
125,126 ビームエキスパンダ
127 2材料で構成された反射ミラー
201 信号光偏光方向
202 参照光偏光方向
203 無偏光回折格子
204 角度選択性偏光変換素子
205 偏光分離回折格子
206,207 光学軸
301,302,303,304 受光部
305,306,905,906,1001 差動増幅器
307 2乗加算平方根演算回路
801 回折格子
802 光検出器
803 信号演算回路
901,903 2分割光検出器
904 加算アンプ
1002 二乗加算平方根演算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射した光を第1と第2の光束に分割する第1の分割手段と、
第1の光束を光情報記録媒体上に集光する集光手段と、
前記第2の光束を参照光として反射させる反射ミラーと、
光を検出する複数の検出器とを備え、
前記第1の光束が前記光情報記録媒体で反射した信号光と前記第2の光束が前記反射ミラーで反射した前記参照光とを第1の分割手段に導いて重ね合わせて干渉させ、前記干渉させた光を前記検出器で検出する光ヘッドであって、
前記第2の光束を前記反射ミラー上にレンズで集光することを特徴とする光ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、
前記レンズは、前記反射ミラー上に焦点を有することを特徴とする光ヘッド。
【請求項3】
請求項1において、
前記反射した参照光は、前記レンズを通過して前記第1の分割手段に達することを特徴とする光ヘッド。
【請求項4】
請求項3において、
前記レンズを透過する前の前記第2の光束は平面波であり、
前記レンズを透過した後の前記第2の光束は球面波であり、
前記反射ミラーで反射し、前記レンズを透過する前の前記参照光は球面波であり、
前記レンズを透過した後の前記参照光は平面波であることを特徴とする光ヘッド。
【請求項5】
請求項1において前記第一の分割手段と前記レンズの間の光路上に光束径を変化させるビームエキスパンダを備えたことを特徴とする光ヘッド。
【請求項6】
請求項5において、
前記ビームエキスパンダよりも前記レンズ側の前記光束径は、前記ビームエキスパンダよりも前記第1の分割手段側の前記光束径よりも小さいことを特徴とする光ヘッド。
【請求項7】
前記反射ミラーに、複数の材料を積層した構造を用いる事を特徴とする請求項1に記載の光ヘッド。
【請求項8】
請求項7において、
温度が変化したときに、前記反射ミラーは、レンズ焦点の位置が変化する方向と同じ側に変形することを特徴とする光ヘッド。
【請求項9】
請求項1に記載の光ヘッドであって、前記反射ミラーと集光レンズは光軸方向に可動でき、前記信号光と前記参照光の光路差が調整されることを特徴とする光ヘッド。
【請求項10】
光束を第1と第2の光束に分割し、
前記第1の光束を光情報記録媒体上に集光して信号光として反射させ、
前記第2の光束を反射ミラー上にレンズで集光して参照光として反射させ、
前記信号光と前記参照光とを干渉させ、
前記干渉した光束を検出する光情報記録媒体の再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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