説明

光ヘッド装置

【課題】有機材料からなる光学部材の劣化のない光ヘッド装置を提供する。
【解決手段】380nmから450nmの波長λの第1の光源と、600nmから900nmの波長λの第2の光源と、第1の光源からの光と第2の光源からの光を合波するための光学部材と、第1の光源からの光及び第2の光源からの光を光ディスクに照射するための対物レンズと、光ディスクに照射された光の反射光を検出する受光素子と、一部が有機材料からなるレーザ用光学部材と、青色光を吸収する青色光吸収部材を有し、第2の光源からの光の光路であって、かつ、第1の光源からの光の光路とはならない位置に、レーザ用光学部材及び青色光吸収部材が配置されており、青色光吸収部材は、波長λの光の吸収率が90%以上であり、波長λの光の吸収率が10%以下であって、酸化ビスマスを含む材料により構成されていることを特徴とする光ヘッド装置を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ヘッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Blu−rayを代表とする青色半導体レーザによる再生又は記録等を行なう次世代DVD(以下「BD」と称する。)、DVD、CD等の異なる規格の光記録媒体において、情報の再生或いは記録又は情報の再生及び記録(以下「記録・再生」と記載する。)を行なうための互換光ヘッド装置の小型化、軽量化の開発がなされている。
【0003】
即ち、規格が異なるBD、DVD、CDにおいては、記録・再生に用いられるレーザ光の波長が異なっており、BDでは405nmの波長帯のレーザ光が用いられ、DVDでは660nmの波長帯のレーザ光が用いられ、CDでは785nmの波長帯のレーザ光が用いられている。このため、光ヘッド装置の小型化、軽量化の観点からこれらの規格に互換性を有する光ヘッド装置が開発されており、更には、3つの波長帯のレーザ光を出力するモノシリック型の3波長半導体レーザ等が開発されている。
【0004】
このような互換性を有する光ヘッド装置においては、CD、DVDを記録・再生する際に用いられる赤外光、赤色光のレーザ光と、BDを記録・再生する際に用いられる青色光のレーザ光との波長が大きく異なることから、CD、DVDを記録・再生する際に用いられるレーザ光の光路に配置される光学部品と、BDを記録再生する際に用いられるレーザ光の光路に配置される光学部品とは異なるものが用いられている。
【0005】
具体的には、これら光学部材としては、CD、DVDに用いられる赤外光、赤色光のレーザ光に対し耐久性に優れる高性能な光学部材であっても、BDに用いられる青色光のレーザ光に対しては、耐久性が充分でない場合があり、逆に、BDに用いられる青色光のレーザ光に対し耐久性に優れる光学部材であっても、CD、DVDに用いられる赤外光、赤色光のレーザ光に対しては、充分な性能を得ることができない場合がある。
【0006】
特許文献1では、CD、DVDの用途において耐久性と性能とを両立させた材料が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、特に光学多層膜により青色光を反射する機能を有する光学素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−220583号公報
【特許文献2】国際公開第2008/001636号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されているCD、DVDの記録再生を行なう赤外光、赤色光のレーザ光において耐久性等が最適化された光学部材であっても、CD、DVD、BDの3波長に対応した互換性を有する光ヘッド装置において、CD、DVDの記録・再生を行なうレーザ光の光路に用いると耐久性が低下する場合がある。即ち、BDに用いられるレーザ光が迷光となって、これら光学部材を照射し、この光学部材の耐久性を低下させる場合がある。
【0010】
また、特許文献2に記載されているように、光学多層膜を構成する場合、青色光の透過率を小さくするためには、光学多層膜全体の厚さを厚くする必要があり、このため、光学多層膜等を構成する材料の物性の違いなどにより生じる応力により光学素子が変形し、また、波面収差が変化して所望の特性を得ることができなくなるといった問題点がある。
【0011】
更に、このような光学多層膜は、光の入射角度に依存して特性が変化するものである。例えば、光学多層膜面の法線方向から入射する光に対して、低い透過率となるように設計されている場合であっても、迷光は法線方向から入射するとは限らず、法線方向から一定の角度(入射角度)で入射する迷光に対し、光学多層膜における見かけ上の膜厚が異なることにより、入射角度に対して透過率特性が変化するため、すべての入射角度において青色光を完全に遮断することは困難である。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、BD等に用いられる青色光の半導体レーザ光と、DVD、CD等に用いられる赤外光、赤色光の半導体レーザ光とを用いた光ヘッド装置において、DVD、CD等に用いられる赤外光、赤色光の半導体レーザ光の光路に設置された光学部材の劣化及び耐久性の低下を防止することが可能な光ヘッド装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、380nmから450nmの波長λの第1の光源と、600nmから900nmの波長λの第2の光源と、前記第1の光源からの光と前記第2の光源からの光を合波するための光学部材と、前記第1の光源からの光及び前記第2の光源からの光を光ディスクに照射するための対物レンズと、前記光ディスクに照射された光の反射光を検出する受光素子と、少なくとも一部が有機材料からなるレーザ用光学部材と、青色光を吸収する青色光吸収部材と、を有し、前記第2の光源からの光の光路であって、かつ、前記第1の光源からの光の光路とはならない位置に、前記レーザ用光学部材及び前記青色光吸収部材が配置されており、前記青色光吸収部材は、前記波長λの光の吸収率が90%以上であり、前記波長λの光の吸収率が10%以下であって、かつ、酸化ビスマス(Bi)を含む材料により構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記対物レンズは、前記第1の光源からの光を前記光ディスクに照射するための第1の対物レンズと、前記第2の光源からの光を前記光ディスクに照射するための第2の対物レンズと、を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記レーザ用光学部材には、前記青色光吸収部材が積層形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記青色光吸収部材は、無機材料により構成されているものであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記青色光吸収部材は、酸化ビスマス(Bi)を含むガラスであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記青色光吸収部材に含まれる酸化ビスマスは、酸化物基準のモル%表示で実質的に、25〜70%であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記青色光吸収部材は、カドミウム及び鉛を実質的に含有せず、酸化物基準のモル%表示で実質的に、Bi 25〜70%、B+SiO 5〜75%、CeO 0〜10%、Al 0〜20%、Ga 0〜20%、Al+Ga 0〜30%、ZnO+TeO+BaO+WO 0〜40%、からなるガラスにより構成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記青色光吸収部材の厚さは、80μm以上であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、前記レーザ用光学部材の表面又は内部には、光学多層膜が形成されていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記レーザ用光学部材の表面又は内部には、反射防止膜が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、BD等に用いられる青色光の半導体レーザ光と、DVD、CD等に用いられる赤外光、赤色光の半導体レーザ光とを用いた光ヘッド装置において、DVD、CD等に用いられる赤外光、赤色光の半導体レーザ光の光路に設置された光学部材の劣化及び耐久性の低下を防止することが可能な光ヘッド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】レーザ用光学部材を用いた光学素子の形態に係る波長選択回折素子の構成図
【図2】波長選択回折素子における波長と透過率の相関図
【図3】レーザ用光学部材を用いた光学素子の形態に係る波長選択回折素子の変形例の構成図
【図4】第1の実施の形態に係る光ヘッド装置の構成図
【図5】第2の実施の形態に係る光ヘッド装置の構成図
【図6】第3の実施の形態に係る光ヘッド装置の構成図
【図7】比較例1に係る波長選択回折素子の構成図
【図8】波長選択回折素子における青色光照射エネルギーと透過率の相関図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。
【0026】
〔レーザ用光学部材を用いた光学素子の実施の形態〕
本実施の形態は、レーザ用光学部材を用いた光学素子である。本発明に至った経緯を含め本実施の形態について説明する。
【0027】
有機材料は、一般に、光学設計をする際にそれが持つ光学特性から設計の自由度が高いという特徴を有している。よって、少なくとも一部が有機材料から構成されている光学部材は、光学装置に対応した最適な光学特性を得やすいという特徴を有している。
【0028】
このような有機材料のうち、特に、液晶材料は、一般に複屈折性を有すること、また電界、磁界等により複屈折性つまり、入射する光に対する屈折率異方性(異常光屈折率と常光屈折率との差)の大きさや方向を制御することができることから、光学部材における用途は広い。また、液晶性を有するモノマー、オリゴマーを重合した高分子液晶材料は、重合の際の液晶の配向方向を制御することにより、高分子液晶材料の屈折率異方性の方向を自由に制御できるため、光学部材を構成する材料としては非常に有用である。更に、波長選択性の回折格子等では、有機色素や顔料を有機材料に混合したものも有用なものとなる。
【0029】
このような材料の中には、DVD用の光源(640〜680nm帯の波長)とCD用の光源(760〜810nm帯の波長)との2種類の波長を含む600〜900nmの光に対しては、優れた光学特性を有するものがあり、DVD用とCD用とを兼用する光学部材には、このような材料が用いられている。
【0030】
ところで、DVDとCDの他、BDにも対応させる場合には、同じ光ヘッド装置に、BD用の光源(395〜415nm帯の波長)を搭載する必要がある。光学部材においてもDVD用、CD用及びBD用に共通して用いることができれば、光ヘッド装置における部品点数を削減することができ、コストを低下させることが可能となる。
【0031】
このようなBD用、DVD用及びCD用に共通する光学部材を用いた光ヘッド装置においては、波長選択ビームスプリッタ、ダイクロイックプリズム等により、青色光である380〜450nmの光に含まれるBD用の光と、赤色光及び赤外光であるDVD用及びCD用の光とを分岐しているが、波長選択ビームスプリッタにより完全に分離することは困難であり、DVD用及びCD用の光にのみ用いられる光学部材に、青色光であるBD用の光が入り込む場合、例えば、青色光であるBD用の光が光学部材の界面において散乱等することにより迷光となり、DVD用及びCD用の光のみに用いられる光学部材を照射する場合がある。特に、DVD用及びCD用の光に対応して用いられる光学部材において、有機材料が用いられている場合には、僅かであっても青色光であるBD用の短波長の光を照射し続けると劣化し、光の透過率が低下する場合や、所望の屈折率から特性が変化する場合がある。
【0032】
有機材料からなるレーザ用光学部材を使用する光学素子の例として、波長が異なる複数の光が入射したとき、一方の波長の光を選択的に回折し、他方の波長の光を直進透過させる波長選択回折素子について説明する。光学素子としては、380nmから450nmの波長λの光と、600から900nmの波長λの光を利用する光ヘッド装置に用いられる有機材料からなるレーザ用光学部材を用いる光学素子であれば、波長選択回折素子に限らず適用することができる。また、「光路」は光源から発射された各波長の光が光ディスクで反射されて受光素子に到達するまでの道筋であって、有機材料からなるレーザ用光学部材を使用する光学素子は、波長λの光路と重複しない波長λの光路中に配置する。
【0033】
図1は、波長λの光と波長λの光とを利用する光ヘッド装置において、波長λの光路中であり、かつ、波長λの光路と重複しない光路中に用いられる有機材料からなるレーザ用光学部材を使用する光学素子の一例として、波長選択回折素子10を示す断面模式図である。この波長選択回折素子10は、青色光吸収部材となる青色光吸収基板11と通常のガラス基板12との間に、入射する光の波長に対する屈折率が異なる性質である屈折率分散特性が異なる2種類の材料を格子状に組み合わせて構成したものを有している。このように、屈折率分散が異なる2種類の有機材料13、有機材料14を格子状に組み合わせることにより、DVD用の波長の光とCD用の波長の光がともに入射した場合に、DVD用の波長の光は回折することなく直進させ、CD用の波長の光のみ選択的に回折させるように設計することができる。尚、青色光吸収基板11は、波長選択回折素子10において、DVD用の波長の光及びCD用の波長の光が入射する側に設けられている。これは、後述するように青色光吸収基板11が、DVD用の波長の光及びCD用の波長の光の光路に侵入したBD用の波長の光を効率よく吸収し、2種類の有機材料13、有機材料14内への侵入を防ぐためである。
【0034】
この2種類の有機材料13及び14は、DVD用の波長の光に対しては、屈折率はほぼ等しく、CD用の波長の光に対しては屈折率が異なる材料であり、よって、DVD用の光とCD用の光が入射した場合、CD用の光のみ回折することができる。このような、有機材料の組み合わせとしては、有機材料14には、顔料や色素、染料等を含有し、例えば、使用する波長帯域内に光の吸収帯を有する(光吸収性を有する)材料を用い、有機材料13には、使用する波長帯域において光の吸収帯を有しない(光の吸収の少ない)材料を用いたものが挙げられる。有機材料14に用いられる顔料や色素、染料等の光吸収性を有する材料は、吸収波長付近において屈折率分散特性が異常分散となる特性を示すので、波長の変化に対する屈折率の変化量が大きい。一方、有機材料13に用いられる光の吸収の少ない材料は、屈折率分散特性が通常の分散となる特性を示すので、波長の変化に対する屈折率の変化量は上記の光吸収性を有する材料に比べて小さい。このように、有機材料13と有機材料14とを組み合わせることにより、DVD用の波長の光に対するこれらの有機材料間の屈折率の差と、CD用の波長の光に対するこれらの有機材料間の屈折率の差と、が大きく異なる特性を得ることができる。
【0035】
このように、波長帯640〜680nmのDVD用の波長の光に対するこれらの有機材料間の屈折率の差と、波長帯750〜810nmのCD用の波長の光に対するこれらの有機材料間の屈折率の差と、を大きく異ならせるためには、有機材料14に用いられる光吸収性を有する材料は、640〜810nmの波長の光に対しては吸収が少なく、640nm以下の光を吸収する材料であることが好ましい。
【0036】
また、青色光吸収基板11の外側の面には、反射防止膜15が形成されており、ガラス基板12の外側の面には、反射防止膜16が形成されている。このような反射防止膜15及び16を形成することにより、波長選択回折素子10において、赤色光及び赤外光であるDVD用及びCD用の光の透過率を高めることができる。
【0037】
更に、後述するように青色光吸収基板11は、酸化ビスマスを含むガラス基板であることから、屈折率は2以上である。一方、有機材料13の屈折率は、1.5〜1.65であり、有機材料13と青色光吸収基板11との界面において反射する光量が大きくならないように、青色光吸収基板11と有機材料13との間には、内面反射防止膜17を設けることが好ましい。この内面反射防止膜17は、好ましくは光学多層膜又は、青色光吸収基板11の屈折率と有機材料13の屈折率との間の屈折率を有する材料からなる単層膜により構成されており、DVD用の光及びCD用の光の反射によって発生する大きな透過率の低減を防止することができる。
【0038】
上記において波長選択回折素子10は、一方の面に青色光吸収基板11を用い、他方の面にガラス基板12を用いた構成のものであるが、ガラス基板12に代えて、青色光吸収基板を用いてもよい。青色光吸収部材となる青色光吸収基板を両面に用いることにより、裏面からの青色光であるBD用の光の侵入も防ぐことができ、更には、両面に青色光吸収基板を用いることにより熱膨張率を同一のものとすることができるので、波長選択回折素子の反りや変形を防止することができる。尚、酸化ビスマスを含まない2枚のガラス基板の内側に、有機材料13及び14を格子状に組み合わせたものを形成し、2枚のガラス基板の外側となる両面に青色光を反射させるための多層膜を設けた構成の波長選択回折素子の場合では、多層膜を透過した青色光が両面に設けられた多層膜間において多重反射し、この多重反射により有機材料13、14の劣化が促進されてしまうという問題が生じてしまう。一方、本実施の形態における波長選択回折素子の場合では、青色光を吸収する青色光吸収部材が設けられており、このためこのような問題は生じない。
【0039】
次に、青色光吸収部材として用いる青色光吸収基板11について説明する。青色光吸収基板11における光透過特性は、波長380〜450nmとなる波長λの光においては、光吸収率が90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上である。これにより、青色光に対し劣化の生じる光学部材を青色光の侵入から保護することができ、有機材料13、14等を含む光学部材の劣化を防ぐことができ、更には、光ヘッド装置を長寿命化させることが可能となる。また、波長600〜900nmとなる波長λの光においては、光吸収率は10%以下、好ましくは5%以下、更に好ましくは1%以下である。波長λの光の吸収を少なくすることにより、波長λの光の透過率を高くすることができ、DVD用の光やCD用の光の光量損失を抑えることができ、DVDやCDの記録・再生特性を向上させることができる。
【0040】
尚、ここでいう「光吸収率」は、青色光吸収部材に入射する光の全光量(I)のうち界面で反射する光量(I)を差し引いた光量(I−I)を基準とするものである。例えば、青色光吸収部材を透過する光の光量をIとすると、光吸収率は、(I−I−I)/(I−I)で与えることができる。また、反射光量は青色光吸収部材の1つの界面だけに限らず複数の界面で起きる全ての反射の光量である。例えば、青色光吸収部材の界面に反射防止膜が施され、反射光量が無視(I=0)できれば、入射光量Iと透過光量Iにより青色光吸収部材の光吸収率を得ることができる。
【0041】
また、本実施の形態においては、波長λの光は、1つの波長に限られるものではなく、上記において説明したように、波長が600nm〜900nmの範囲に含まれる光であれば2つの波長を含んでいてもよい。例えば、DVD用として用いられる640nm〜680nm帯の波長の光と、CD用として用いられる760nm〜810nm帯の波長の光とを含む場合であってもよい。これにより、後述するDVD用、CD用、BD用の3種類の光ディスクに対応した光ヘッド装置を構成することができる。
【0042】
本実施の形態では、青色光吸収部材である青色光吸収基板11としては、酸化ビスマスを含むガラス基板を用いている。これは、酸化ビスマスは波長が600nm〜900nmである波長λの光を吸収することなく、波長が380〜450nmである波長λの光を吸収することができる材料であるからである。また、青色光吸収部材としてガラスの他に、樹脂に酸化ビスマスの微粒子を混入したコンポジット材料を用いることもできる。
【0043】
次に、青色光吸収部材である青色光吸収基板11について、具体的に説明する。青色光吸収基板11は、カドミウム及び鉛を実質的に含有せず、酸化物基準のモル%表示で実質的に、Bi 25〜70%、B+SiO 5〜75%、CeO 0〜10%、Al 0〜20%、Ga 0〜20%、Al+Ga 0〜30%、ZnO+TeO+BaO+WO 0〜40%からなるガラスである。尚、カドミウムや鉛を含有しないものとするのは、これらの材料が赤色光を吸収してしまい青色光吸収部材を構成する材料に含めるのは不適であること、また、これら材料を含むガラスは環境上好ましくないことによるものである。
【0044】
この青色光吸収基板11は、Biを酸化物基準のモル%表示で実質的に、25〜70%含むものである。これは、Biが25%未満では、所望の青色光吸収の特性を得ることができないからである。
従って、好ましくは30%以上、より好ましくは38%以上である。一方、Biが70%を超える場合ではガラス化が困難になるため、70%以下であることが青色光吸収基板11をガラスにより形成する場合の条件となる。
【0045】
また、B及びSiOはネットワークフォーマであり、これらのうち少なくともいずれか一種を含有する。この含有量が5%未満では、ガラス化が困難になり、また、成形時に失透する場合がある。従って、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、更に好ましくは30%以上、最も好ましいのは40%以上である。一方、この含有量が75%を超える場合では、成形時に失透してしまう場合があり、好ましくは、70%以下、より好ましくは65%以下、更に好ましくは60%以下である。
【0046】
また、SiOを含有させることにより、化学的安定性を向上させることができる。即ち、耐湿性を向上させ、ヤケに対して強いガラスを得ることができる。このため、上述したネットワークフォーマにおいては、SiOを含有させることが好ましく、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。
【0047】
また、CeOは必須ではないが、ガラス組成中のBiがガラス溶融中に金属ビスマスとして析出しガラスの透過率が低下させることを抑制する効果を有している。このため、CeOは、10%以下の範囲で含有させることが好ましい。CeOが10%を超えた場合では、ガラス化が困難になる可能性があるからである。よって、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下である。また、金属ビスマスの析出を抑制する観点から、CeOの含有量は0.01%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05%以上であり、更に好ましくは0.1%以上である。
【0048】
一方、CeOを含有させた場合、黄色またはオレンジ色の着色が強くなり、600n以上の帯域の波長における光の透過率を低下させてしまう場合がある。このため、高い光の透過率が要求される場合には、CeOの含有量は0.15%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下である。
【0049】
また、Alは必須ではないが、成形時の失透を抑制する効果があり、20%以下の範囲であれば含有してもよい。20%を超える場合では失透により600n以上の帯域の波長における光の透過率が低下する場合があるからである。より好ましくは15%以下、さらに好ましくは11%以下である。Alの含有量は、成形時の失透を抑制する観点から0.1%以上であることが好ましく、より好ましくは1%以上であり、更に好ましくは2%以上である。
【0050】
また、Gaは必須ではないが、成形時の失透を抑制する効果があり、20%以下の範囲であれば含有してもよい。20%を超える場合では失透により600n以上の帯域の波長における光の透過率が低下する場合があるからである。より好ましくは18%以下、さらに好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下である。Gaの含有量は、成形時の失透を抑制する観点から、0.1%以上であることが好ましく、より好ましくは1%以上であり、更に好ましくは2%以上である。
【0051】
また、AlとGaとの含有量の合計は、30%以下である。30%を超える場合では失透により600n以上の帯域の波長における光の透過率が低下する場合があるからである。より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下である。AlとGaとの含有量の合計は、成形時の失透を抑制する観点から、2%以上であることが好ましく、より好ましくは4%以上である。
【0052】
また、ZnO、TeO、BaO、WOはいずれも必須ではないが、屈折率、熱膨張係数等の物性値を調整するため、また、ガラス化を容易にするために、これらの含有量は合計が40%以下の範囲で含有しても良い。より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。
【0053】
本実施の形態における青色光吸収基板11においては、本発明の効果を損なわない限り、上記以外の成分を合計で10%以下の範囲で含有してもよい。例えば、成形時の失透を抑制するため、また、ガラス化を容易にするために、BeO、MgO、CaO、SrO、LiO、NaO、KO、CsO、La、TiO、GeO、ZrO、In等を含有してもよい。
【0054】
尚、LiO、NaO、KO等のアルカリ金属成分を多く含むと結晶化しやすくなり失透性が増し、ガラス成形が困難になる傾向にある。また、これらアルカリ金属成分を含ませることにより屈折率が低下する傾向がある。よって、LiO、NaO、KOを合計した含有量は、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下であり、実質的にはアルカリ金属成分を含まないことが特に好ましい。
【0055】
このようにして形成された青色光吸収基板11の厚さは、0.08mm以上であることが好ましい。青色光を吸収するためには、一定以上の厚さが必要となるからである。また、厚さの上限は特に制限はないが、素子の大型化や透過する波長の光の透過率を低減しないように1.0mm以下であることが好ましい。
【0056】
表1に酸化ビスマスを含有するガラスの一例の組成を示す。この組成に基づき0.3mmの厚さの青色光吸収基板11である青色光吸収ガラスを作製した場合、633nm波長の光における屈折率は2.18である。この青色光吸収ガラスの透過率を測定した結果を図2に示す。尚、実線はこの青色光吸収ガラスに反射防止膜を形成したものであり、破線は反射防止膜を形成していないものである。図に示されるように、BD用の光の波長帯である395〜415nm帯の波長の光の透過率は、0.1%以下である。一方、DVD用の光の波長帯である640〜680nm帯の波長の光及び、CD用の光の波長帯である760〜810nm帯の波長の光における透過率は、反射防止膜を形成していないものであっても70%以上有り、反射防止膜を形成したものでは、ほぼ100%の透過率を有している。この青色光吸収ガラスに、波長が405nmの半導体レーザの光を照射したところ、光の透過率及び波面収差の変化は共に確認されなかった。このように、表1に示す組成により、380nmから450nmの波長λの光の吸収は90%以上であり、600nmから900nmの波長λの光の吸収は10%以下である酸化ビスマスを含む青色光吸収ガラスを得ることができる。
【0057】
尚、この青色光吸収ガラスは、青色光を吸収するものであるため、青色光吸収ガラス面の法線方向を基準として斜め方向からの入射光に対しても、より高い吸収効果を得ることができる。
【0058】
【表1】

次に、表2に、表1における組成の酸化ビスマスを含有するガラスの組成とは異なる組成で構成される、酸化ビスマスを含有するガラスの組成を示す。この青色光吸収ガラスにおいても、表1における組成の青色光吸収ガラスと同様に、BD用の波長帯の光を充分に吸収し、また、DVD用の波長帯の光及びCD用の波長帯の光における透過率は高いものであった。
【0059】
【表2】

次に、図3に基づき本実施の形態に係るレーザ用光学部材を用いた波長選択回折素子の構成例について説明する。尚、図3において、図1と同じものには同じ番号を付して説明を省略する。
【0060】
図3(a)に示す波長選択回折素子30aは、前述した屈折率分散の異なる2種類の有機材料13、有機材料14を格子状に組み合わせて構成される有機材料部40において、一方の側に青色光吸収基板50を形成し、更にその上に、反射防止膜60を形成し、他方の側には、透明なガラス基板70を設け、更に反射防止膜61を設けた構成の断面模式図である。尚、青色光吸収基板50は前述の青色光吸収基板11と同様のものである。また、波長選択回折素子30aおよび後述する波長選択回折素子30b〜30fに含まれる有機材料部40と青色光吸収基板50との界面、または有機材料部40と青色光吸収基板51との界面には、前述した図1に示す内面反射防止膜17と同等の機能を有する不図示の内面反射防止膜が形成されていてもよい。
【0061】
また、反射防止膜60及び61は、低屈折率材料としてSiO、MgF等の材料を用い、高屈折率材料として、TiO、Ta、Nb、Al等の材料を用いた単層膜又は多層膜により構成されている。尚、反射防止膜60及び61を構成する低屈折率材料及び高屈折率材料の各々の膜厚は、赤色光となるDVD用の光源(640〜680nm帯の波長)と赤外線光となるCD用の光源(760〜810nm帯の波長)との2種類の波長の光に対し、界面による反射をできるだけ防止することができるよう所定の膜厚により形成されている。このような構成の波長選択回折素子30aにおいては、前述した波長選択回折素子10と同様、赤色光および赤外光の反射による透過率の低減を抑え、BD用の光源(395〜415nm帯の波長)の光である青色光の有機材料部40への侵入を防ぐことができる。尚、波長選択回折素子30aを構成する部材において、以下、同一の番号は同じものを示す。
【0062】
図3(b)に示す波長選択回折素子30bは、前述の有機材料部40において、一方の側に青色光吸収基板50を形成し、更にその上に、青色光反射膜62を形成し、他方の側には、透明なガラス基板70を設け、更に反射防止膜61を設けた構成の断面模式図である。青色光反射膜62は、低屈折率材料としてSiO、MgF等の材料を用い、高屈折率材料として、TiO、Ta、Nb、Al等の材料を用いた単層膜又は多層膜により構成されている。尚、青色光反射膜62を構成する低屈折率材料及び高屈折率材料の各々の膜厚は、赤色光となるDVD用の光源(640〜680nm帯の波長)と赤外光となるCD用の光源(760〜810nm帯の波長)との2種類の波長の光をできる限り透過し、青色光であるBD用の光源(395〜415nm帯の波長)の光をできる限り反射することができるように所定の膜厚により形成されている。このような構成の波長選択回折素子30bにおいては、有機材料部40への青色光の侵入をより一層防ぐことができる。
【0063】
図3(c)に示す波長選択回折素子30cは、前述の有機材料部40において、一方の側に青色光吸収基板50を形成し、更にその上に、反射防止膜60を形成し、他方の側には、透明なガラス基板70を設け、更に青色光反射膜63を設けた構成の断面模式図を示すものである。尚、青色光反射膜63は、前述した青色光反射膜62と同様の構成を有する。このような構成の波長選択回折素子30cにおいては、光ヘッド装置内で生じた青色光について、一方の面だけでなく他方の面からも有機材料部40へ侵入することを防ぐことができる。
【0064】
図3(d)に示す波長選択回折素子30dは、前述の有機材料部40において、一方の側に青色光吸収基板50を形成し、更にその上に、青色光反射膜62を形成し、他方の側には、透明なガラス基板70を設け、更に青色光反射膜63を設けた構成の断面模式図を示すものである。このような構成の波長選択回折素子30dにおいては、有機材料部40の両面から侵入する青色光を防ぐことができる。また、波長選択回折素子30dの両側に青色反射膜62、63を設けた場合でも、これらの間に青色光吸収基板50があるので、青色光が入っても吸収され、内部で多重反射が発生せず劣化を大きく抑制することができる。
【0065】
図3(e)に示す波長選択回折素子30eは、前述の有機材料部40において、一方の側に青色光吸収基板50を形成し、更にその上に、反射防止膜60を形成し、他方の側には、青色光吸収基板51を設け、更に反射防止膜61を設けた構成の断面模式図を示すものである。尚、青色光吸収基板51は、青色光吸収基板50と同様のものである。このような構成の波長選択回折素子30eにおいても、有機材料部40の両面から侵入する青色光を防ぐことができる。
【0066】
図3(f)に示す波長選択回折素子30fは、前述の有機材料部40において、一方の側に青色光吸収基板50を形成し、更にその上に、青色光反射膜62を形成し、他方の側には、青色光吸収基板51を設け、更に青色光反射膜63を設けた構成のものである。尚、青色光吸収基板51は、青色光吸収基板50と同様のものである。このような構成の波長選択回折素子30fにおいては、有機材料部40の両面から侵入する青色光を可能な限り防ぐことができる。また、波長選択回折素子30fの両側に青色反射膜62、63を設けた場合でも、これらの間に青色光吸収基板50、51があるので、青色光が入っても吸収され、内部で多重反射が発生せず劣化を大きく抑制することができる。
【0067】
〔第1の実施の形態〕
次に、本実施の形態に係る光ヘッド装置について説明する。図4に本実施の形態に係る光ヘッド装置の構成を示す。
【0068】
本実施の形態における光ヘッド装置は、BD用の波長の光を発光する半導体レーザ121、青色用回折格子122、青色用コリメータレンズ123からなる光学系と、DVD用の波長の光及びCD用の波長の光を発光する半導体レーザ124、波長選択回折素子110、コリメータレンズ125からなる光学系と、合波プリズム126、対物レンズ127を有するものである。尚、波長選択回折素子110は、レーザ用光学部材を用いた光学素子の実施の形態で説明したものと同様のものであり、波長に対し屈折率分散特性が異なる2種類の有機材料13、有機材料14を格子状に組み合わせた構成のものと青色光吸収基板11とを含んだ構成のものである。また、本実施の形態においては、光信号を検出するための受光素子などの光学系は省略されている。
【0069】
半導体レーザ121より発せられた青色光は、回折格子122において一部回折され1つのメインビームと2つのサブビームとを発現し、これら3つのビームをコリメータレンズ123により平行光とした後、合波プリズム126に図面上、左方向から入射する。入射した青色光は、合波プリズム126において偏向され、対物レンズ127に入射し、対物レンズ127により光ディスク130の情報記録面上に集光される。集光された光は光ディスク130において反射され、不図示の受光素子に入射する。また、合波プリズム126と対物レンズ127との間に不図示の1/4波長板が配置されていてもよい。
【0070】
一方、CD用の波長の光とDVD用の波長の光を発光するモノシリック型2波長半導体レーザ124より発せられた光は、波長選択回折素子110により、CD用の波長の光のみ一部回折され1つのメインビームと2つのサブビームとを発現し、コリメータレンズ125により平行光とされた後、合波プリズム126に図面上、下方向から入射する。入射した赤色光および赤外光は、合波プリズム126において偏向されることなく直進透過し、対物レンズ127に入射し、対物レンズ127により光ディスク130の情報記録面上に集光される。集光された光は光ディスク130において反射され、不図示の受光素子に入射する。
【0071】
本実施の形態における光ヘッド装置に用いられる波長選択回折素子110は、青色光吸収基板を含む構成を有する。このため、半導体レーザ121により発せられた光が、合波プリズム126において完全には偏向されることなく漏れ光が発生する場合や合波プリズム126等の光学部材の界面における反射や光ディスク130からの反射などにより青色光の迷光が発生する場合がある。このような漏れ光や迷光が、波長選択回折素子110に入射した場合であっても、波長選択回折素子110におけるコリメータレンズ125側に配置された青色光吸収基板により青色光は吸収されるため、波長選択回折素子110における有機材料13、有機材料14を格子状に組み合わせた構成のものに、青色光が殆ど照射されることがないため、青色光による劣化は殆どない。さらに、波長選択回折素子110に含まれる青色光吸収基板は半導体レーザ124側にも配置してもよい。
【0072】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態に係る光ヘッド装置について説明する。
【0073】
本実施の形態における光ヘッド装置は、図5に示すように、BD用の波長の光を発光する半導体レーザ221、コリメータレンズ223からなる光学系と、DVD用の波長の光及びCD用の波長の光を発光するモノシリック型2波長半導体レーザ224、コリメータレンズ225からなる光学系と、合波プリズム226、プリズム227、分波プリズム228、ミラー229、対物レンズ231、青色光吸収部材からなる青色光吸収基板210、対物レンズ232、受光素子233を有する構成のものである。尚、青色光吸収基板210は、酸化ビスマスを含むガラスにより構成されており、レーザ用光学部材を用いた光学素子の実施の形態における青色光吸収部材である青色光吸収基板11と同様のものであり、酸化ビスマスを含むガラス基板を用いることができる。
【0074】
半導体レーザ221より発せられた青色光は、コリメータレンズ223により概ね平行光とされた後、合波プリズム226に図面上、左方向から入射する。入射した青色光は、合波プリズム226において偏向されることなく直進し、プリズム227及び分波プリズム228を介し、ミラー229に入射し、このミラー229において反射された青色光は、対物レンズ231により、光ディスク230の情報記録面上に集光される。集光された光は光ディスク230において反射された後、対物レンズ231を介し、ミラー229において反射され、分波プリズム228を介し、プリズム227において偏向され、受光素子233に入射し、入射した青色光は電気信号に変換される。
【0075】
一方、半導体レーザ224より発せられた赤色光は、コリメータレンズ225により概ね平行光とされた後、合波プリズム226に図面上、下方向から入射する。入射した赤色光および赤外光は、合波プリズム226において偏向され、プリズム227に入射する。プリズム227に入射した赤色光および赤外光は直進透過し、分波プリズム228に入射し偏向される。偏向された赤色光および赤外光は、青色光吸収基板210を介し、対物レンズ232に入射し、入射した赤色光および赤外光は対物レンズ232により、光ディスク230の情報記録面上に集光される。集光された光は光ディスク230において反射された後、対物レンズ232を介し、分波プリズム228により偏向されプリズム227に入射し、プリズム227に入射した赤色光および赤外光はプリズム227により偏向され、受光素子233に入射し、入射した赤色光および赤外光は電気信号に変換される。
【0076】
本実施の形態における光ヘッド装置では、分波プリズム228により赤色光および赤外光と、青色光と、が分岐されるが、完全に赤色光および赤外光と、青色光と、を分離することは困難であり、赤色光および赤外光の光路に青色光が漏れ光として侵入する場合がある。対物レンズ232は、DVD用の光及びCD用の光に対応するものであり、一般にコストの観点から樹脂材料により形成される樹脂レンズが用いられている。このような樹脂レンズは、環状オレフィンコポリマー又は非結晶性ポリオレフィン系等の有機材料からなるものであり、成型のしやすさ等から屈折率1.535以上の高いものを用いる場合が多い。このような、有機材料により成型された樹脂レンズの中には、400nm前後の青色光が長時間照射されると、ダメージを受け光学特性が変化し、また、素子が劣化するものがある。
【0077】
本実施の形態では、赤色光および赤外光の光路であって、かつ、青色光の光路とはならない位置、即ち、分波プリズム228と対物レンズ232との間に、青色光吸収部材からなる青色光吸収基板210を設置することにより、分波プリズム228において漏れ光となった青色光を青色光吸収基板210により吸収することができ、対物レンズ232への入射を防ぐことができる。これにより、対物レンズ232の青色光による劣化を防ぐことができる。尚、本実施の形態においては、対物レンズ231は、ガラスにより形成されているため、青色光が長時間照射されても劣化することはない。
【0078】
尚、対物レンズ232以外に有機材料を用いた光学素子としては、高分子液晶を用いて入射偏光方向により回折効率が異なる偏光回折素子、有機材料により形成された回折格子、波長板素子、コリメータレンズ、センサーレンズ、受光素子のカバー等が挙げられる。これら有機材料により形成される素子において、光の入射側に青色光吸収基板を設置することにより、これら素子における青色光によるダメージから防ぐことができる。
【0079】
更に、ガラス製のプリズム、光学多層膜からなる素子、フォトニック結晶、水晶、LiNbO等の複屈折単結晶等において接着剤として有機材料を用いている場合においても、有機材料が青色光の照射により特性変化や劣化する場合には、光の入射側に青色光吸収基板を設置することにより、これら素子において青色光による劣化を防ぐことができる。尚、青色光吸収基板は上記の素子に対して離隔して配置される場合に限らず、素子に直接積層され、一体化される形態であってもよい。さらに、青色光吸収基板は平行な平板状のものに限られず、曲面形状を有しているものであってもよい。
【0080】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態に係る光ヘッド装置について説明する。
【0081】
本実施の形態における光ヘッド装置は、図6に示すように、BD用の波長の光を発光する半導体レーザ321、コリメータレンズ323からなる光学系と、DVD用の波長の光及びCD用の波長の光を発光するモノシリック型2波長半導体レーザ324、コリメータレンズ325からなる光学系と、合波プリズム326、プリズム327、1/4波長板328、ミラー329、対物レンズ331、レンズ332、分波プリズム333、受光素子334、青色光吸収部材からなる青色光吸収基板310、受光素子335を有する構成のものである。尚、青色光吸収基板310は、酸化ビスマスを含むガラスにより構成されており、第2の実施の形態における青色光吸収基板210と同様のものであり、酸化ビスマスを含むガラス基板を用いることができる。
【0082】
半導体レーザ321より発せられた青色光は、コリメータレンズ323により概ね平行光とされた後、合波プリズム326に図面上、左方向から入射する。入射した青色光は、合波プリズム326において偏向されることなく直進し、プリズム327及び1/4波長板328を介し、ミラー329において反射され、対物レンズ331により、光ディスク330の情報記録面上に集光される。集光された光は光ディスク330において反射された後、ミラー329において反射され、1/4波長板328を介し、プリズム327において偏向され、レンズ332に入射する。レンズ332に入射した青色光は、分波プリズム333に入射し、分波プリズム333において偏向され、受光素子334に入射し、電気信号に変換される。
【0083】
一方、半導体レーザ324より発せられた赤色光および赤外光は、コリメータレンズ325により概ね平行光とされた後、合波プリズム326に図面上、下方向から入射する。入射した赤色光および赤外光は、合波プリズム326において偏向され、プリズム327に入射する。プリズム327に入射した赤色光および赤外光は直進透過し、1/4波長板328を介し、ミラー329において反射され、対物レンズ331により、光ディスク330の情報記録面上に集光される。集光された光は光ディスク330において反射された後、対物レンズ331を介し、ミラー329において反射され、1/4波長板328を介し、プリズム327において偏向され、レンズ332に入射する。レンズ332に入射した赤色光および赤外光は、分波プリズム333に入射し、分波プリズム333において偏向されることなく、青色光吸収基板310を介し、受光素子335に入射し、入射した赤色光は電気信号に変換される。
【0084】
本実施の形態では、分波プリズム333と受光素子335との間に、青色光吸収部材からなる青色光吸収基板310を設置することにより、分波プリズム333において漏れ光となった青色光を青色光吸収基板310により吸収することができ、受光素子335への入射を防ぐことができる。通常、受光素子335には、有機材料からなるカバーが設けられており、このカバーに青色光が照射されることにより、有機材料からなるカバーの透過率が低下してしまい、受光素子335の受光特性が低下してしまうが、本実施の形態における光ヘッド装置では、このような透過率の低下を防ぐことができる。
【実施例】
【0085】
次に、本実施の形態における波長選択回折素子と、通常の構成を有する波長選択回折素子において、青色光を照射させた場合について説明する。
【0086】
(実施例1)
レーザ用光学部材を用いた光学素子の実施の形態に係る図1に示す構成の波長選択回折素子10を作製し、405nmの波長の青色光を照射した場合の照射エネルギーと透過率の関係を測定した。尚、実施例1に係る波長選択回折素子10を構成する部材はレーザ用光学部材を用いた光学素子の実施の形態で説明したとおりである。従って、BD用の光と、DVD用の光および/またはCD用の波長の光と、を利用する光ヘッド装置において、品質の良い記録・再生をおこなう光ヘッド装置が実現できる。
【0087】
(比較例1)
図7に示す構成の波長選択回折素子410を作製し、405nmの波長の青色光を照射した場合の照射エネルギーと透過率の関係を測定した。この波長選択回折素子410は、通常の酸化ビスマスを含まない透明な2枚のガラス基板411及びガラス基板412の間に、波長に対し屈折率分散特性の異なる2種類の有機材料413、有機材料414を格子状に組み合わせて構成されたものを有している。尚、有機材料413、有機材料414は、実施例1における有機材料13、有機材料14と同一の材料である。
【0088】
また、ガラス基板411の外側の面には、反射防止膜415が形成されており、ガラス基板412の外側の面には、反射防止膜416が形成されており、また、ガラス基板411と有機材料413との間には、内面反射防止膜417が形成されている。
【0089】
実施例1と比較例1における波長選択回折素子において、青色光の照射エネルギーと透過率の関係を測定した結果を図8に示す。この結果示されるように、比較例1における波長選択回折素子410は、青色光の照射エネルギーが高くなるに従い、透過率が低下してしまうのに対し、実施例1における波長選択回折素子10は、青色光を照射しても透過率の低下はみられなかった。
【0090】
これにより、実施例1における波長選択回折素子10においては、青色光に対する劣化が殆どないことが確認された。従って、BD用の光と、DVD用の光および/またはCD用の波長の光と、を利用する光ヘッド装置において、品質の良い記録・再生をおこなう光ヘッド装置が実現できる。
【0091】
また、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0092】
10 波長選択回折素子
11 青色光吸収基板
12 ガラス基板
13 有機材料
14 有機材料
15 反射防止膜
16 反射防止膜
17 内面反射防止膜
40 有機材料部
50 青色光吸収基板
60 反射防止膜
61 反射防止膜
70 ガラス基板
110 波長選択回折素子
121 半導体レーザ、
122 青色用回折格子
123 光学系
124 半導体レーザ
125 コリメータレンズ
126 合波プリズム
127 対物レンズ
130 光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
380nmから450nmの波長λの第1の光源と、
600nmから900nmの波長λの第2の光源と、
前記第1の光源からの光と前記第2の光源からの光を合波するための光学部材と、
前記第1の光源からの光及び前記第2の光源からの光を光ディスクに照射するための対物レンズと、
前記光ディスクに照射された光の反射光を検出する受光素子と、
少なくとも一部が有機材料からなるレーザ用光学部材と、
青色光を吸収する青色光吸収部材と、を有し、
前記第2の光源からの光の光路であって、かつ、前記第1の光源からの光の光路とはならない位置に、前記レーザ用光学部材及び前記青色光吸収部材が配置されており、
前記青色光吸収部材は、前記波長λの光の吸収率が90%以上であり、前記波長λの光の吸収率が10%以下であって、かつ、酸化ビスマスを含む材料により構成されていることを特徴とする光ヘッド装置。
【請求項2】
前記対物レンズは、前記第1の光源からの光を前記光ディスクに照射するための第1の対物レンズと、前記第2の光源からの光を前記光ディスクに照射するための第2の対物レンズと、を有することを特徴とする請求項1に記載の光ヘッド装置。
【請求項3】
前記レーザ用光学部材には、前記青色光吸収部材が積層形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ヘッド装置。
【請求項4】
前記青色光吸収部材は、無機材料により構成されているものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光ヘッド装置。
【請求項5】
前記青色光吸収部材は、酸化ビスマスを含むガラスであることを特徴とする請求項4に記載の光ヘッド装置。
【請求項6】
前記青色光吸収部材に含まれる酸化ビスマスは、酸化物基準のモル%表示で実質的に、25〜70%であることを特徴とする請求項5に記載の光ヘッド装置。
【請求項7】
前記青色光吸収部材は、カドミウム及び鉛を実質的に含有せず、酸化物基準のモル%表示で実質的に、
Bi 25〜70%、
+SiO 5〜75%、
CeO 0〜10%、
Al 0〜20%、
Ga 0〜20%、
Al+Ga 0〜30%、
ZnO+TeO+BaO+WO 0〜40%、
からなるガラスにより構成されていることを特徴とする請求項5に記載の光ヘッド装置。
【請求項8】
前記青色光吸収部材の厚さは、80μm以上であることを特徴とする請求項6または7に記載の光ヘッド装置。
【請求項9】
前記レーザ用光学部材の表面又は内部には、光学多層膜が形成されていることを特徴とする請求項3から8のいずれかに記載の光ヘッド装置。
【請求項10】
前記レーザ用光学部材の表面又は内部には、反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項3から9のいずれかに記載の光ヘッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−170589(P2010−170589A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9638(P2009−9638)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】