説明

光ポインティング装置およびそれを備えた電子機器

【課題】光路変換手段及び結像反射部を含んで一体的に形成され、かつ内部を反射により導光していく導光板型光学部材を用いる場合に、簡単な方法で組立時のポインティング装置の性能低下を無くし、製造歩留りの高い光ポインティング装置を提供する。
【解決手段】カバー部24には、被写体10が接触する接触面11と、導光される光を撮像素子15に導く結像素子14と、被写体10からの反射光の方向を変換させて結像素子14に導くプリズム等の折り曲げ素子12とが一体に形成されている。撮像素子15は、透明樹脂20にて封止され、カバー部24における結像素子14よりも光源16側の下側に配設されている。透明樹脂20とカバー部24との隙間には、透光性接着層30Bが設けられている。また、この接着層の厚みは、撮像素子15の最小画素寸法以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の携帯情報端末に搭載可能な光ポインティング装置及びそれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPDA(Personal Digital Assistants)等の携帯情報端末に代表される小型の電子機器では、一般的に、情報を入力するユーザーインターフェースとしてキーパッドが採用されている。キーパッドは、通常、数字及び文字を入力するための複数個のボタンと方向ボタン(十字キー)とで構成されている。また、近年では携帯情報端末のディスプレイ部にグラフィック等の表現が可能となることに伴い、ユーザに対する情報の表示方式として、主に、ディスプレイ部を2次元で用いるGUI(Graphical User Interface)が採用されるようになってきている。
【0003】
このように、携帯情報端末が高機能化し、コンピュータと同等の表示機能を備えることになったが、キーパッドの方向キー等を用いる従来の携帯情報端末の入力手段では、GUIで表現されたアイコン等の選択には適しておらず、不便であった。そのため、携帯情報端末においても、コンピュータに用いられているボール式マウス若しくは光学式マウス等のマウスや、タッチパッド又はタブレットのように、直感的な操作を可能とするポインティング装置が求められるようになってきている。
【0004】
そこで、携帯情報端末に搭載可能なポインティング装置として、下記のようなポインティング装置が提案されている。このポインティング装置は、接触する被写体としての指の指紋を撮像素子で観察し、接触面における被写体の指紋の移動変化を抽出することによって、被写体の動きを検知する。
【0005】
例えば、特許文献1および特許文献2に開示された光学式ジョイスティックは、接触面上の被写体の動きを電気信号として出力する光ポインティング装置として用いられる。この光学式ジョイスティックでは、接触面上の被写体をLED等の光源によって照射し、被写体から散乱された光を集光レンズにて撮像素子に集光する。集光された被写体の像は、イメージセンサ等の撮像素子で連続的に撮像され、撮像した画像データにおける直前の撮影画像データに対する変化量を抽出する。こうして抽出された変化量に基づいて被写体の動きが算出される。このような光ポインティング装置を用いることによって、ディスプレイ上に示されたカーソル等を被写体の動きに合わせて移動させることができる。
【0006】
上記特許文献1および特許文献2に開示された光学式ジョイスティックでは、その光学系は、装置の小型化・薄型化を図るため、LED及び反射ミラーを含む光源部と、第1反射面及び第1平凸レンズ部を有する第1導波管と、第2反射面及び第2平凸レンズ部を有する第2導波管と、イメージセンサとを含んでいる。この光学式ジョイスティックでは、第1導波管及び第2導波管が反射面及びレンズ部を含み、光学系は水平方向に折り曲げて配置されるため、装置の垂直方向の長さ(厚み)を小さく(約2mm以下)することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−510248号公報(2008年4月3日公表)
【特許文献2】特開2008−226224号公報(2008年9月25日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1および2における光ポインティング装置では、製造工程において部品の組み立て工程数が多く、検知精度を高く維持することが困難である、という問題があった。
【0009】
これらの問題を解決しうる薄型の光ポインティング装置を提供するために、本願出願人は、特願2009−227526号の出願を行なっている。尚、上記先行出願は本願出願時において未公開である。
【0010】
上記先行出願では、光学部材としてプリズム及び集光レンズ等の光学要素が一体化されかつ部材内部を反射により導光していく薄型の導光板型光学部材を用いた構成の光ポインティング装置が開示されている。具体的には、上記光ポインティング装置は、図8に示すように、基板部100と導光板型光学部材であるカバー部110とを備えている。基板部100は、主に回路基板101、光源102、撮像素子104を含むセンサ基板103、及び透明樹脂105A,105Bからなっている。また、カバー部110は、プリズム及び集光レンズ等の光学要素が一体化されかつ部材内部を反射により導光していく導光板型光学部材であり、反射傾斜面111、反射光を撮像素子104に結像させる結像反射面112、及び反射面113,114を含んでいる。反射面112〜114は、カバー部110の表面に金属反射膜を蒸着させて形成されている。
【0011】
上記光ポインティング装置では、カバー部110の表面に被写体(例えば指)が接触している時、光源102から照射される光が被写体によって反射され、その反射光がカバー部110内を導光される。導光された光は、最終的に撮像素子104によって検知される。
【0012】
しかしながら、上記光ポインティング装置では、撮像素子104によって検出される光は、カバー部110と撮像素子104を被覆する透明樹脂105Bとの境界を透過する必要があり、かつ、その境界に対して斜めに入射される。このため、カバー部110と撮像素子104を被覆する透明樹脂105Bとの境界に空気層があれば、上記境界での反射が生じやすく、撮像素子104に対して検出光が十分に届かなくなり、検出精度が低下するといった問題がある。また、上記光ポインティング装置を薄型化しようとするほど、上記境界への入射角が大きくならざるを得ず、全反射条件に近づいて上記問題はより顕著となる。
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、簡単な方法でポインティング装置の性能低下を無くし、製造歩留りの高い光ポインティング装置及びそれを備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、被写体に光を照射する光源と、該被写体からの反射光を反射させて導光すると共に、反射光を撮像素子に結像させる結像反射部を有する光学部材と、該光学部材によって導光された光を受光する撮像素子とを備えた光ポインティング装置であって、上記光学部材によって導光される上記反射光の結像反射部光軸中心は、上記光学部材から出射され上記撮像素子に結像される前の光路において、上記光学部材からの出射面に対して斜めに入射されるものであり、上記光学部材と上記撮像素子との間には、透光性樹脂層が形成されていることを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、上記光学部材によって導光される上記反射光は上記撮像素子に結像される前の光路において上記光学部材からの出射面に対して斜めに入射されるが、上記光学部材と上記撮像素子との間には、透光性樹脂層が形成されていることによって、空気層が存在する場合に比べて上記出射面での反射が生じにくい。
【0016】
また、上記出射面での反射が生じにくくなることによって、上記反射光が出射面に対して入射する際の入射角を大きくとることができ、光ポインティング装置をより薄型化するための設計が容易となる。
【0017】
また、上記光ポインティング装置では、上記透光性樹脂層は、上記撮像素子における最小画素寸法以下の厚みであることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、上記透光性樹脂層において気泡が発生したとしても、その寸法は上記撮像素子における最小画素寸法以下となり、たとえ気泡が反射光の一部を遮光してしまっても、最小画素エリア1つに入る光をすべて遮光してしまうわけではないので、その部分の映像データは得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上のように、被写体に光を照射する光源と、該被写体からの反射光を反射させて導光すると共に、反射光を撮像素子に結像させる結像反射部を有する光学部材と、該光学部材によって導光された光を受光する撮像素子とを備えた光ポインティング装置であって、上記光学部材によって導光される上記反射光の結像反射部光軸中心は、上記光学部材から出射され上記撮像素子に結像される前の光路において、上記光学部材からの出射面に対して斜めに入射されるものであり、上記光学部材と上記撮像素子との間には、透光性樹脂層が形成されているる構成である。
【0020】
それゆえ、上記光学部材と上記封止樹脂との境界面における反射を防止でき、簡単な方法で組立時のポインティング装置の性能低下を無くし、製造歩留りの高い光ポインティング装置及びそれを備えた電子機器を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明における光ポインティング装置の実施の一形態を示す断面図である。
【図2】本発明におけるポインティング装置を構成する2つの部品を説明する図であり、(a)は基板部を示す斜視図であり、(b)はカバー部を示す斜視図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明におけるポインティング装置の組立手順を説明する図である。
【図4】本発明が解決しようとする課題を説明する図であり、(a)は図3(c)の状態における撮像素子近傍の断面図であり、(b)は図3(d)の状態における撮像素子近傍の断面図であり、(c)は透光性接着剤として熱硬化性の樹脂を用いた場合に撮像素子近傍に起こる状態を示す断面図である。
【図5】上記課題の解決手法を説明する図であり、(a)は図3(c)の状態における撮像素子近傍の断面図であり、(c)は図3(d)の状態における撮像素子近傍の断面図であり、(b)は(a)と(c)との中間位置における撮像素子近傍の断面図である。
【図6】本発明における効果を説明する図であり、(a)は撮像素子近傍の俯瞰図であり、(b)は図4(c)の状態に対応する断面図であり、(c)は図5(c)の状態に対応する断面図である。
【図7】(a)は本発明における光ポインティング装置を備えた電子機器の実施の一形態を示すものであり、光ポインティング装置を搭載する電子機器としての外観を示す正面図であり、(b)は同背面図であり、(c)は同側面図である。
【図8】本発明で解決しようとする課題が生じうる光ポインティング装置の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の各実施形態について、光源としてLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を用いた光ポインティング装置を例として説明する。本発明の光ポインティング装置は、指先等の被写体に対して光を照射し、該被写体から反射された光を受光することによって、被写体の動きを検知するものである。以下、各実施形態の光ポインティング装置の構成について具体的に説明する。尚、同一の機能及び作用を示す部材については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0023】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施の形態を示す光ポインティング装置について、図1〜図6に基づいて説明する。まず、図1は、本実施の形態にかかる光ポインティング装置1の概略構造を示す断面図である。また、図2(a),(b)は、光ポインティング装置1の主要構成部をそれぞれ示す斜視図である。光ポインティング装置1は、主要構成部として、基板部26と導光板型光学部材であるカバー部24とを備えている。図2(a)は基板部26の斜視図であり、図2(b)はカバー部24の斜視図である。
【0024】
基板部26は、主に回路基板21、光源16、撮像素子15を含むセンサ基板22、及び透明樹脂(構造体)20,20’からなっている。
【0025】
カバー部24は、接触面11、傾斜面13を形成する光路変換手段及びプリズムとしての折り曲げ素子12、結像反射部としての結像素子14及び反射面17・18を含んでいる。カバー部24の接触面11に接触している被写体10は、指先等の被写体であり、光ポインティング装置1が指の指紋の動きを検知する対象物である。尚、ここでは光ポインティング装置1に対する被写体10の状態を分かり易くするために、被写体10を光ポインティング装置1に対して便宜的に小さく記載している。
【0026】
ここで、光ポインティング装置1の厚み方向(図1の縦方向)をZ軸とし、光ポインティング装置1の幅方向(図1の横方向)をY軸とする。光ポインティング装置1の下部から上部に向かう方向をZ軸の正方向とし、光源16から撮像素子15に向かう方向をY軸の正方向とする。また、Z軸の正方向を垂直方向、Y軸の正方向を水平方向とも称する。また、光ポインティング装置1の奥行き方向をX軸とし、図1に示す光ポインティング装置1の奥側から手前側に向く方向をX軸の正方向とする。
【0027】
まず、カバー部24の構成について説明する。カバー部24は、光源16及び撮像素子15等の光ポインティング装置1を構成する各部・各素子を保護するものである。カバー部24は、基板部26の上側に位置し、基板部26の透明樹脂20の側面20Aおよび透明樹脂20,20’の側面20Cに直接密着し、かつ、接着層(透光性樹脂層)30A・Bを介して基板部26の上表面20Bに密着して接している。尚、本実施の形態において、カバー部24におけるZ軸の負側の表面であって、基板部26上に搭載され光ポインティング装置1として形成されているときの外部に露出していない表面部分を、カバー部24の裏面と称する。
【0028】
カバー部24の底面24B・24B’は、同一平面を形成している。また、カバー部24の上表面と、カバー部24の底面24B・24B’と、基板部26中の回路基板21の底面とは互いに平行となっており、カバー部24の両側面がカバー部24の上表面、及びカバー部24における接触面11並びに回路基板21の底面及びカバー部24の底面24Bに対してある角度を持つ面で形成されている。つまり、図1に示すように、光ポインティング装置1の断面図において、カバー部24は台形状となっている。ただし、カバー部24は、この形状に限るものではなく前記側面が底面24Bに対して垂直になっていても構わない。
【0029】
カバー部24における側面の底部の付近にはフランジ25が設けられており、本実施の形態の光ポインティング装置1が電子機器に搭載され、指等の被写体10によりカバー部24の接触面11からZ軸の負方向側に押された場合に、回路基板21の底面に設けられる図示しない板バネ状の接点スイッチによるZ軸の正方向側へ生じる力をある位置で規制して、押ボタンスイッチとして必要な一定のストローク量を確保するために使用される。
【0030】
カバー部24における接触面11は、被写体10が光ポインティング装置1と接する面である。接触面11は、カバー部24の上表面における光源16の上方に位置する。
【0031】
上記折り曲げ素子12は、プリズムになっており、光源16の上方、かつ接触面11の下方に位置し、カバー部24の裏面の基板部26と接しない部分に位置する、カバー部24の裏面の凹部を形成している。折り曲げ素子12には、傾斜面13が形成されており、該傾斜面13とカバー部24の上表面とがなす狭角を傾斜角度θとする。折り曲げ素子12は、光源16から照射された照射光Mを傾斜面13で屈折させて、被写体10に向かうように照射光Mの経路を変換するものである。また、折り曲げ素子12は、被写体10から反射された反射光L1を傾斜面13で全反射させて、カバー部24の内部におけるY軸の正方向に反射光L1の経路を変換するものである。傾斜面13にて全反射された、被写体10から反射された反射光L1は、後述する反射面17に向かう。このように、折り曲げ素子12の傾斜面13は、照射光Mを透過し、反射光Lを全反射するものである。そのため、カバー部24には、光源16の上方における、カバー部24と基板部26との間の空間の屈折率よりも大きい屈折率を有する材質が用いられる。例えば、カバー部24には屈折率が1.5程度の可視光吸収タイプのポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂を用いると共に、上記空間は空気層とすればよい。
【0032】
結像素子14は、被写体10からの反射光L1を反射して反射光L2に経路を変換し、撮像素子15上に被写体10の像を結像するものである。結像素子14は、撮像素子15の上方、かつ撮像素子15よりもY軸の正方向側に位置し、カバー部24の裏面における基板部26とは接しない部分に位置する、カバー部24の裏面の凹部を形成している。結像素子14には、直交する2方向の曲率が異なる例えばトロイダル面が形成されている。結像素子14は、このトロイダル面で反射光L1を反射して反射光L2と成し、かつ撮像素子15に結像するような機能を持つ。結像素子14において効率的に反射光L1を反射させるために、結像素子14のトロイダル面には、例えば、アルミ、ニッケル、金、銀、誘電体ダイクロ膜等の金属の反射膜を蒸着させる。
【0033】
尚、上記の説明では、結像素子14には例えばトロイダル面が形成されているとしているが、必ずしもこれに限らず、例えば、球面、非球面等の反射体であって、撮像素子15に結像できるものであれば使用することが可能である。
【0034】
反射面17は、傾斜面13で全反射された反射光L1を結像素子14に入射させ、結像素子14から反射された反射光L2を撮像素子15に入射させるためのものである。反射面17は、撮像素子15の上方であって、カバー部24の上表面に位置する。反射面17は、カバー部24の上表面に反射膜を蒸着させて形成される。反射面17を形成する反射膜は、外部に露出しており使用者によく見えるため、外観上、できるだけ目立たない膜とすることが望ましい。例えば、光源16が照射する光の波長が可視波長外の赤外波長(例えば、800nm以上)の場合、反射面17を形成する反射膜は、光源16から照射された800nm以上の波長帯の赤外光を反射し、800nm以下の可視波長帯の光を透過するものであればよい。このように、光源16が照射する光の波長と、反射面17を形成する反射膜の反射率及び透過率の特性を適宜設定することによって、被写体10からの反射光Lを効率的に反射し、かつ外観上は目立たない反射面17を形成することができる。
【0035】
また、光源16が照射する光の波長が可視波長外の赤外波長(例えば、800nm以上)の場合、カバー部24の材質は赤外光のみを透過する可視光吸収型のポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂にすればよい。このような材質でカバー部24を形成することによって、カバー部24の外部から進入してくる不要光のうち、可視光成分をカバー部24で遮断することができる。そして、上述のように、赤外光を反射する反射面17を形成することによって、上記不要光のうち、赤外光成分を反射面17で遮断することができる。光ポインティング装置1に入射する不要光を遮断することによって、該不要光による誤動作を防ぐことができる。
【0036】
反射面18は、結像素子14から反射されて反射面17で反射された光L2を再度反射面17に向けて反射するものである。反射面18は、撮像素子15の上方、かつ撮像素子15よりY軸の正方向側に位置し、カバー部24の裏面に位置する。反射面18は、カバー部24の裏面に反射膜を蒸着させて形成される。反射面18を形成する反射膜は、効率的に光を反射するものが好ましい。例えば、反射面18は、アルミ、ニッケル、金、銀、誘電体ダイクロ膜などの金属を蒸着して形成される。
【0037】
次に、上記基板部26の構成について説明する。
【0038】
本実施の形態の基板部26においては、1つの回路基板21上に光源16と撮像素子15とを搭載している。光源16及び撮像素子15は、ワイヤボンド又はフリップチップ実装にて回路基板21と電気的に接続されている。回路基板21には、回路が形成されている。当該回路は、光源16の発光タイミングを制御したり、撮像素子15から出力された電気信号を受けて、被写体10の動きを検知したりするものである。回路基板21は、同一材料からなる平面状のものであり、例えば、プリント基板やリードフレーム等からなっている。
【0039】
光源16は、カバー部24の接触面11に向けて光を照射するものである。光源16から照射された照射光Mは、透明樹脂20’を介してカバー部24の折り曲げ素子12により屈折され進行方向が変換されて接触面11に到達する。すなわち、照射光Mは、接触面11に対して斜め方向から、つまり接触面に対して或る入射角で入射する。ただし、光源16から撮像素子15に対して、カバー部24を通らず直接伝播される光が存在する。この光は、カバー部24中を通る反射光L1およびL2として撮像素子15に入射する光に対して、迷光として作用するため、撮像品質が劣化する。従ってこの迷光は、基板部26の透明樹脂20’に隣接して設けられた遮光樹脂19により遮光を行うことで、撮像品質の劣化を防いでいる。
【0040】
カバー部24は、後述するように、空気よりも屈折率が大きい材質であるため、接触面11に到達した照射光Mは、接触面11上に被写体10が無い場合、その一部が接触面11を透過し、残りの一部が接触面11で反射する。このとき、照射光Mの接触面11に対する入射角が全反射の条件を満たす場合、照射光Mは、接触面11を透過せず、全て接触面11で反射してカバー部24内に向かう。一方、接触面11上に被写体10がある場合、照射光Mは、接触面11と接している被写体10の表面で反射し、カバー部24に入射される。光源16は、例えばLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の光源で実現され、特に高輝度の赤外発光ダイオードで実現されることが好ましい。
【0041】
撮像素子15は、光源16が照射した、被写体10で反射された反射光を受光し、受光した光に基づいて接触面11上の像を結像し、画像データに変換するものである。具体的には、撮像素子15は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補形金属酸化膜半導体)やCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)等のイメージセンサからなっている。センサ基板22は、撮像素子15および図示しないDSP(Digital Signal Processor:算出部)を含み、受光した照射光MをDSPに画像データとして取り込む。撮像素子15は、センサ基板22の指示にしたがって、接触面11上の像を一定の間隔で撮影し続ける。
【0042】
接触面11上に接している被写体10が移動した場合、撮像素子15が撮影する画像は、その直前に撮影した画像とは異なる画像となる。センサ基板22は、DSPにおいて、撮影した画像データとその直前の画像データとの同一箇所の値をそれぞれ比較し、被写体10の移動量及び移動方向を算出する。すなわち、接触面11上の被写体10が移動した場合、撮影した画像データは、その直前に撮影した画像データに対して所定量ずれた値を示す画像データである。センサ基板22は、DSPにおいて、該所定量に基づいて被写体10の移動量及び移動方向を算出する。センサ基板22は、算出した移動量及び移動方向を電気信号として回路基板21に出力する。尚、DSPは、センサ基板22内ではなく、回路基板21に含まれるものであってもよい。その場合、センサ基板22は、撮像素子15にて撮像した画像データを順番に回路基板21に送信する。
【0043】
センサ基板22の処理をまとめると、センサ基板22は、接触面11上に被写体10が無い場合、接触面11の像を撮像素子15にて撮像する。次に、接触面11上に被写体10が接触すると、センサ基板22は、接触面11と接している被写体10の表面の像を撮像素子15にて撮像する。例えば、被写体10が指先の場合、センサ基板22は、指先の指紋の像を撮像素子15にて撮像する。ここで、撮像素子15により撮像された画像データは、接触面11上に被写体10が無いときの画像データと異なる画像データとなっているため、センサ基板22のDSPは、接触面11上に被写体10が接触していることを示す信号を回路基板21に送信する。そして、被写体10が移動すると、DSPが直前に撮像した画像データと比較して、被写体10の移動量及び移動方向を算出し、算出した移動量及び移動方向を示す信号を回路基板21に送信する。
【0044】
光源16及び撮像素子15を含むセンサ基板22は、透光性樹脂である透明樹脂20・20’によって周囲が樹脂封止されている。透明樹脂20・20’の形状については後述する。透明樹脂20・20’の底面は、回路基板21の上表面と密着して接しており、光源16及びセンサ基板22にそれぞれ密着する凹部が形成されている。透明樹脂20・20’を構成する透光性樹脂として、例えば、シリコーン樹脂若しくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂又はアクリルやポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が用いられる。
【0045】
このように、回路基板21上に搭載された光源16及び撮像素子15を含むセンサ基板22がそれぞれ透明樹脂20によって樹脂封止されているため、回路基板21、光源16、撮像素子15、センサ基板及び透明樹脂20が一体となっている基板部26が形成されている。そのため、光ポインティング装置1の部品点数を減らすことができ、組み立て工程数も減らすことができる。よって、光ポインティング装置1の製造コストを削減することができると共に、被写体10の検知精度の高い光ポインティング装置1を実現することができる。
【0046】
このように、本実施の形態の光ポインティング装置1では、基板部26の透明樹脂20・20’側面及び上表面を基準として、基板部26の上方に、カバー部24を組み立てている。そして、カバー部24には、基板部26の透明樹脂20・20’に当て決めを行うための基準となる当接面24A・24A’・24B・24Cが、接触面11、折り曲げ素子12や結像素子14及びフランジ25と一体的に形成されている。そのため、当接面24A・24A’・24B・24Cと、各接触面11、折り曲げ素子12や結像素子14及びフランジ25とが、金型公差で高精度に配置されている。したがって、カバー部24の当接面を、基板部26の透明樹脂20の側面及び上面にコンタクトさせることによって、カバー部24との位置関係を高精度に配置することができる。したがって、光ポインティング装置1を構成する各部・各素子を精度良く配置することができるため、被写体10の検知精度の高い光ポインティング装置1を実現することができるものとなっている。
【0047】
上記構成の光ポインティング装置1において、整理して、光源16から照射された光が被写体10を反射して撮像素子15に入射する経路を図1に基づいて説明する。
【0048】
図1に示すように、まず、光源16から照射された照射光Mが、折り曲げ素子12の傾斜面13で屈折透過されて、接触面11に到達する。接触面11上に被写体10がある場合、被写体10の接触面11に接している表面上で、光源16から照射された照射光Mが散乱反射する。被写体10の表面で反射された反射光L1は、折り曲げ素子12の傾斜面13で全反射されて、進路がY軸の正方向に変わる。傾斜面13で全反射された反射光L1は、反射面17で反射し、結像素子14に到達する。そして、反射光L1は、結像素子14にて折り返し反射されて反射光L2となり、反射面17、反射面18、及び反射面17にて次々と反射されて最終的に撮像素子15に入射する。
【0049】
ここで、反射光L2はカバー部24から撮像素子15に対して斜めから入射するが、この入射の角度はカバー部24のZ方向の厚みを薄くすればするほどZ軸に対して大きくなる。そしてこの角度が、カバー部24の材質の持つ屈折率から算出される全反射角度よりも大きくなった場合、反射光L2の一部または全部がカバー部24の当接面24Bで全反射されて、撮像素子15に入射されなくなる。この課題を解決するために、光ポインティング装置1では、カバー部24の当接面24Bと基板部26の透明樹脂20の当接面20Bの間の隙間に透光性樹脂30からなる透光性接着層30Bが設けられている。
【0050】
この透光性接着層30Bの屈折率と、カバー部24および基板部26の透明樹脂20の屈折率との差を小さくすることによって、反射光L2のZ軸に対する入射角が大きくなっても、全反射条件が満たされなくなるため、反射光L2は撮像素子15に入射することが出来る。
【0051】
例えばカバー部24の材質をポリカーボネートやアクリルにした場合、その屈折は1.4〜1.6である。また透明樹脂20・20’の材質としてエポキシ系樹脂とした場合、その屈折率は1.5〜1.65である。従って、この透光性接着層の材質としては、屈折率が1.4〜1.6辺りの材料が望ましく、例えばアクリル系やシリコーン系(または変性シリコーン系)もしくはエポキシ樹脂等の熱硬化性または常温硬化性の接着剤が挙げられる。
【0052】
次に図3(a)〜(d)を用いて、本発明の光ポインティング装置の組立工程を説明する。
【0053】
まず、基板部26に対して、図示しない外部基板との接続を行うためのFPC(Flexible_Print_Circuit)23を、無鉛半田リフロー処理等を用いてハンダ付けする。
【0054】
その後、基板部26の透明樹脂20・20’表面およびFPC23表面の油や樹脂バリ等汚損物をプラズマ処理により清浄する。この時、透明樹脂20・20’表面は清浄されるだけでなく数μ以下の粗さに粗化(微小な凹凸が形成)されるため、硬化前の流動性をもつ透光性接着剤30の濡れ性が向上しかつ接触面積が大きくなるだけでなく、上記微小な凹凸が透光性接着層30A・30Bを構成する樹脂に対するアンカーの役割を果たすため、物理的な接着力も向上する。
【0055】
すなわち、小型化および薄型化を達成し、かつ高い信頼性(耐環境性)および性能を有する光ポインティング装置1を提供することができる。
【0056】
本実施形態においては、流動性を持つ透光性接着剤30と、透明樹脂20・20’との物理的な接着力を向上させるために、Arプラズマ処理によって透明樹脂20・20’表面に凹凸を形成し、かつ透明樹脂20・20’表面から離型剤を除去しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、透明樹脂20・20’表面を大気中におけるコロナ放電、OプラズマやCHプラズマで処理することによって、水酸基、カルボニル基およびカルボキシル基などの官能基を透明樹脂20・20’表面に付与してもよい。透明樹脂20・20’表面に水酸基、カルボニル基およびカルボキシル基などの官能基を付与することによって、透明樹脂20・20’と透光性接着剤30との化学的な結合力も向上させることができ、硬化後の透光性接着層30A・30Bと透明樹脂20・20’との物理的な接着力および化学的な結合力の向上を同時に行うことによって、基板部26からカバー部24が剥離することを抑制することができる。
【0057】
また、透明樹脂20・20’やカバー部24の当接面24B上に、シランカップリング剤が付与されていても良い。付与するシランカップリング剤は、化学的な接着力を向上し得るものであればよく、従来公知のシランカップリング剤から、カバー部24および透明樹脂20・20’を構成する樹脂の性質に合わせて、エポキシ系やアミノ系その他のシランカップリング剤を適宜選択すればよい。
【0058】
シランカップリング剤の付与は、以下のように行なえばよい。シランカップリング剤をイソプロピルアルコールなどの有機溶媒によって1%程度に希釈し、希釈したシランカップリング剤にカバー24部当接面24Bや透明樹脂20・20’の上面を浸漬(ディップ)する。その後乾燥させることによって、シランカップリング剤を付与することができるが、なおここで説明した方法以外にも、従来公知の方法を用いてシランカップリング剤を付与することができる。
【0059】
以上、このように処理された部分を接着力向上部とする。
【0060】
その後、図3(a)に示すように、FPC23上の回路基板21に隣接する外側の領域に、カバー部24のフランジ25と接するように黒色接着剤31を、ディスペンサシリンジ32を用いて塗布する。この黒色接着剤31は、光ポインティング装置1の外部から入ってくる迷光およびカバー部24内を伝播する迷光をも遮光するために黒色を用いることが好ましい。この黒色接着剤31の材質は、アクリル系やシリコーン系(または変性シリコーン系)もしくはエポキシ樹脂等の熱硬化性または常温硬化性の接着剤が挙げられる。ただし、黒色接着剤31を熱硬化性とする場合は、FPC23上の隙間31Aを設ける。これにより、基板部26上に、カバー部24が配置された際、フランジ25と黒色接着剤31が密着され、加熱される際に、光ポインティング装置1内部に閉じ込められた空気が加熱により体積膨張して、装置1内部で破裂するのを防ぐことが出来る。
【0061】
次に、図3(b)に示すように、基板部26の透明樹脂20の当接面20B上であって、撮像素子15直上の領域33以外の場所に、透光性樹脂30を、ディスペンサシリンジ32を用いて塗布する。上記場所に塗布する理由については、後述する。また、基板部26の透明樹脂20’の当接面20B上にも透光性樹脂30を塗布する。
【0062】
その後、図3(c)に示すように、基板部26上にカバー部24を配置する。配置する際の位置決めは、上述したように、基板部26の透明樹脂20の当接面20Aに対して、カバー部24の当接面24A・24A’が当接するように、また基板部26の透明樹脂20の当接面20Cに対して、カバー部24の当接面24Cが当接するように、さらに基板部26の透明樹脂20の当接面20Bに対して、カバー部24の当接面24Bが、基板部26の透明樹脂20’の当接面20Bに対して、カバー部24の当接面24B’が当接するように配置する(配置後は図3(d)のようになる)。
【0063】
透光性樹脂30および黒色樹脂31として熱硬化性の樹脂を選択していた場合は、加熱炉に入れて、適宜加熱を行い本発明の光ポインティング装置1の組立工程が終了する。
【0064】
次に図4〜図6を用いて、光ポインティング装置1において透光性接着層30Bを形成する場合に生じうる課題とその解決方法および効果を説明する。
【0065】
図4は、組立工程における課題を説明する図である。図4(a)は、図3(c)の状態における撮像素子15近傍のY軸方向断面図であり、図4(b)は、図3(d)の状態における撮像素子15近傍のY軸方向断面図であり、図4(c)は、透光性接着剤30として熱硬化性の樹脂を用いた場合に撮像素子15近傍に起こる状態を示すY軸方向断面図である。
【0066】
図4(a)に示すように、基板部26の透明樹脂20の当接面20B上に塗布された透光性接着剤30中には、微小な気泡34Aが含まれることが多々ある。透光性接着剤30は、製造メーカにおいてディスペンサシリンジ32に詰め込まれる際に、真空・遠心脱法等の処理を施されて、その製造工程やシリンジ32への詰め替え工程において内部に巻き込まれた気泡の大部分が脱泡はされるが、すべて脱法されるわけではなく一部はやはり内部に残ってしまう。また、透光性接着剤30を当接面20B上に塗布する塗布工程でも気泡が新たにかんでしまうこともある。
【0067】
その後、図4(b)に示すように、カバー部24が、カバー部24の当接部24Bがt1の距離からt2の距離まで近接すると、透光性接着剤30は当接面20Bと24Bにおされて、y軸方向に拡がり透光性接着層30Bのようになる。なおこの時、透光性接着剤30は、y軸のみでなくx軸方向にも拡がり接着面積が広くなるため、カバー部24とセンサ部26の接着固定強度が向上する。また、余剰の接着剤30は図2の接着壺20D・20Eに溜るため、カバー部24の折り曲げ素子12の傾斜面13に流れ込んで、傾斜面13の一部が反射しなくなるということを防いでいる。この際、内部に残っている気泡34Aの大きさが隙間t2よりも小さい場合は、気泡は透光性接着剤30の拡がりと共に移動し、場合によっては撮像素子15近傍に位置することもある。また、この透光性接着剤30が拡がる時に当接面24Bおよび20Bの表面粗さが大きいと、透光性接着剤30の濡れ性によってはさらに新たな気泡が発生することもある。
【0068】
そうして、透光性接着層30Bを硬化されるために、光ポインティング装置1を加熱した場合、図4(c)に示すように、透光性接着層30Bを形成する透光性接着剤30の粘度が加熱前に比べて一桁近く下がるため、気泡がさらに移動して撮像素子15上に位置するだけでなく、気泡34Bのように大きくなってしまう。この時の気泡の大きさは隙間t2とほぼ同等の大きさにまでなる可能性がある。
【0069】
こうなってしまうと、撮像素子15上に大きな気泡が位置し、カバー部24からの反射光L2の一部を遮光してしまうことになる。
【0070】
その詳細を、図6を用いて説明する。図6(a)は、基板部26の撮像素子15近傍をZ軸正方向から負方向に向かって俯瞰した図である。例えば撮像素子15の領域は、画素サイズt5×t5の最小画素エリア4×4からなるとする。図6(b)の左図は、図4(c)の状態を示しているが、図6(b)の右図で見た場合、当接面24Bと20Bの隙間t2が、撮像素子15の最小画素サイズt5以上(つまり、t2≧t5)であれば、気泡34Bのサイズはほぼt2になる可能性があるため、気泡34Bが撮像素子15上に位置していれば、気泡34Bは最小画素エリア1つに入る光を遮光してしまい、その部分の映像データは得られなくなる。これが複数個にわたって起これば、被写体10の像が撮像素子15上で鮮明に得られず、被写体の移動情報も正確に演算出来なくなる。
【0071】
発明者らの実験結果では、t2を50μmとし、透光性接着剤30の粘度を30000cP、撮像素子15の最小画素寸法を30μmとした場合、透光性接着層30Bの加熱前に撮像素子15上に気泡が無いことを確認して、透光性接着層30Bを70℃で加熱硬化させた後、撮像素子からの映像データを確認すると、撮像素子上に気泡が存在し、被写体の移動情報の演算が出来ない光ポインティング装置が22%の確立で存在した。
【0072】
そこで、この課題に対する解決方法を、図5を用いて説明する。図5(a)は、図3(c)の状態における撮像素子15近傍のY軸方向断面図であり、図5(c)は、図3(d)の状態における撮像素子15近傍のY軸方向断面図であり、図5(b)は、図5(a)と図5(c)の中間位置における撮像素子15近傍のY軸方向断面図である。
【0073】
図5(a)に示した状態は、図4(a)で説明した状態と同様である。
【0074】
その後図5(b)に示すように、カバー部24が、カバー部24の当接部24Bがt1の距離からt2の距離まで近接すると、透光性接着剤30は当接面20Bと24Bにおされて、拡がり透光性接着層30Bのようになる。この際、内部に残っている気泡34Aの大きさが隙間t2よりも小さい場合は、気泡は透光性接着剤30の拡がりと共に移動し、することも図4(b)で説明したとおりである。
【0075】
その後、図5(c)に示すように、カバー部24を、カバー部24の当接部24Bがt2の距離からt3の距離になるまでさらに近接させたとすると、気泡34Aのサイズがt3以上であった場合は、気泡34Aはその場から殆ど動くことが出来なくなる。
【0076】
こうなると、その後透光性接着層30Bを硬化させるために加熱しても、当接部24Bと20Bとの隙間が小さいため、ハーゲン・ポアズイユの式より流路抵抗が隙間の4乗に反比例する形で大きくなり、気泡がさらに移動して撮像素子15上に位置するということも、気泡34Aが気泡34Bのように大きくなってしまうといったことも無くなる。
【0077】
また、撮像素子15上に気泡があったとしても当接面24Bと当接面20Bとの隙間t3をt5以下の寸法(つまり、t3≦t5)としてしまえば、図6(c)に示すように、撮像素子15上に存在出来る気泡の大きさが撮像素子15の最小画素エリアよりも小さくなるため、たとえ気泡34Aがカバー部24からの反射光L2の一部を遮光してしまっても、最小画素エリア1つに入る光をすべて遮光してしまうわけではないので、その部分の映像データは得られる。これが複数個にわたって起こっても、被写体10の像が撮像素子15上で画素欠損しないため、被写体の移動情報も正確に演算出来る。
【0078】
発明者らの実験結果では、t3を0〜10μmとし、透光性接着剤30の粘度を30000cP、撮像素子15の最小画素寸法を30μmとした場合、透光性接着層30Bの加熱前に撮像素子15上に気泡が無いことを確認して、透光性接着層30Bを70℃で加熱硬化させた後、撮像素子からの映像データを確認すると、撮像素子上に気泡が存在し、被写体の移動情報の演算が出来ない光ポインティング装置はほぼ無くなり、気泡による歩留まり低下はほぼ0%にすることが出来た。
【0079】
ただし、透光性接着剤30の粘度を3000cPで行った場合は、やはり撮像素子上に気泡が存在し、被写体の移動情報の演算が出来ない光ポインティング装置が若干多くなることも分かった。流路抵抗は透光性接着剤の粘度に比例するため、透光性接着剤の粘度はかなり高い必要があると考えられる。
【0080】
また、当接面20Bと当接面24Bに深い傷があったりする場合は、その部分で気泡が発生しやすいのはもちろんだが、例えば当接面に粗いシボ加工がなされている場合にも気泡が発生しやすいことが、発明者らが実験した結果から分かった。発明者らの実験結果から10μm以下の粗さのシボ加工であれば気泡が発生しずらいことも分かった。
【0081】
さらに、接着層を上記のように薄くすることで、カバー部24とセンサ部26の接着固定強度も向上することが分かった。接着強度が向上する理由としては、接着層が厚い場合、発生する気泡が凝集して大きくなり欠陥となることで、接着面積が減少したり、気泡が外部から力が加わった場合に発生する応力による亀裂の発生源となっていたためと考えられる。接着層を薄くすると、気泡が発生しずらくなったため、接着面積の減少や亀裂発生源が無くなったため接着強度が向上したと考えられる。また、接着層が厚いと、接着層が硬化する時の内部応力も大きくなり、剥離を引き起こす原因ともなるが、接着層が薄い場合、硬化時の内部応力も小さくなるため、剥離が起こりにくくなる。
【0082】
尚、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、透明樹脂20の表面は透明となっているが、遮光防止を施すことも可能である。
【0083】
具体的には、例えば、透明樹脂20の側面上、及び被写体10からの反射光が透過する箇所を除く透明樹脂20の上表面上に遮光性樹脂を樹脂封止してもよい。遮光性樹脂として、透光性樹脂と同様に、例えば、シリコーン樹脂若しくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂又はアクリルやポリカーボネート等の熱可塑性樹脂を用いることができる。ただし、遮光性樹脂は、透光性樹脂と異なり、カーボンブラックを含む。このように、透明樹脂20の周囲に遮光性樹脂を樹脂封止することによって、光源16から照射された光が直接、又は被写体10ではない箇所で反射して、撮像素子15に入射することを防ぐことができる。いわゆる、被写体10からの反射光ではない迷光が撮像素子15に入射することを防ぐことができる。よって、迷光による光ポインティング装置1の誤動作を防ぐことができ、高精度に被写体10を検知することができる。
【0084】
〔第2の実施形態〕
最後に、本実施の形態の光ポインティング装置1を搭載した電子機器について、図7を用いて説明する。図7は、前記光ポインティング装置1の搭載した電子機器としての携帯電話機60の外観を示す図である。図7(a)は携帯電話機60の正面図であり、(b)は携帯電話機60の背面図であり、(c)は携帯電話機60の側面図である。尚、図7(a)(b)(c)においては、電子機器として携帯電話機60である例を示しているがこれに限定されるものではない。電子機器として、例えば、PC(特にモバイルPC)、PDA(Personal Digital Assistant:携帯情報端末)、ゲーム機、テレビ等のリモコン等であってもよい。
【0085】
図7に示すように、携帯電話機60は、モニター側筐体61及び操作側筐体62を備えている。モニター側筐体61は、モニター部65及びスピーカー部66を含み、操作側筐体62は、マイク部63、テンキー64及び例えば光ポインティング装置1を含んでいる。
【0086】
なお、本実施形態において、光ポインティング装置1は、図7(a)に示すように、テンキー64の上部に配置されているが、光ポインティング装置1の配置方法及びその向きについては、これに限定されるわけではない。
【0087】
スピーカー部66は、音声情報を外部に出力するものであり、マイク部63は音声情報を携帯電話機60に入力するものである。モニター部65は、映像情報を出力するものであり、本実施形態においては、光ポインティング装置1からの入力情報を表示するものである。
【0088】
なお、本実施の形態の携帯電話機60は、図7(a)〜(c)に示すように、上部の筐体(モニター側筐体61)と下部の筐体(操作側筐体62)とがヒンジを介して接続されている、いわゆる折りたたみ式の携帯電話機60を例として挙げている。携帯電話機60として、折りたたみ式が主流であるため、本実施の形態では折りたたみ式の携帯電話機を一例として挙げているのであって、光ポインティング装置1を搭載することができる携帯電話機60は、折りたたみ式に限るものではない。
【0089】
近年、折りたたみ式の携帯電話機60において、折りたたんだ状態で厚みが10mm以下のものも登場してきている。携帯電話機60の携帯性を考慮するならば、その厚みは極めて重要な要素となっている。図7(a)(b)(c)に示す操作側筐体62において、図示されない内部の回路基板等を除いて、その厚みを決定する部品は、マイク部63、テンキー64、光ポインティング装置1である。この中で、光ポインティング装置1の厚さが最も厚く、光ポインティング装置1の薄型化は、携帯電話機60の薄型化に直接繋がる。よって、上述のように薄型化可能な本発明の光ポインティング装置は、携帯電話機60のような薄型化を必要とする電子機器に対して好適な発明である。
【0090】
このように、本実施の形態の電子機器としての携帯電話機60は、光ポインティング装置1を備えている。したがって、光路変換手段及び結像反射部が一体化されたカバー部24を用いる場合でも、ドローイング特性の劣化が少ない光ポインティング装置1を備えた携帯電話機60を提供することができる。
【0091】
尚、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、PCや携帯電話機等の入力装置に利用することができ、特に小型、薄型を要求される携帯機器に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 光ポインティング装置
10 被写体
11 接触面
12 折り曲げ素子
13 傾斜面
14 結像素子(結像反射部)
15 撮像素子
16 光源
17・18 反射面
19 遮光樹脂
20 透明樹脂(構造体)
21 回路基板
22 センサ基板
23 FPC
24 カバー部(光学部材)
25 フランジ
26 基板部
30 透光性樹脂
30A・B 透光性接着層(透光性樹脂層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に光を照射する光源と、
該被写体からの反射光を反射させて導光すると共に、反射光を撮像素子に結像させる結像反射部を有する光学部材と、
該光学部材によって導光された光を受光する撮像素子とを備えた光ポインティング装置であって、
上記光学部材によって導光される上記反射光の結像反射部光軸中心は、上記光学部材から出射され上記撮像素子に結像される前の光路において、上記光学部材からの出射面に対して斜めに入射されるものであり、
上記光学部材と上記撮像素子との間には、透光性樹脂層が形成されていることを特徴とする光ポインティング装置。
【請求項2】
上記透光性樹脂層は、上記撮像素子における最小画素寸法以下の厚みであることを特徴とする請求項1に記載の光ポインティング装置。
【請求項3】
上記撮像素子は、構造体に収容されており、上記透光性樹脂層は上記光学部材と上記構造体との間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ポインティング装置。
【請求項4】
上記請求項1から3のいずれか1項に記載の光ポインティング装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−257873(P2011−257873A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130362(P2010−130362)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】