説明

光伝送システムおよび光伝送方法

【課題】多値変調方式の光信号を送受信する光伝送システムについて、受信データに発生するビットの論理反転および入れ替わりを早期に検出して確実に補償する。
【解決手段】光伝送システムは、OTUkフレームのデータ列を複数の論理レーンに並び替えてフレーム分割すると共に、OTUkフレームのデータ列の先頭が配置される論理レーンを識別可能にするレーンIDをOTUkフレームのFASの一部に挿入し、フレーム分割後のデータ列を多重化したデータ信号に従って多値変調した光信号を伝送路に送信する。そして、受信データに含まれるレーンIDを識別し、該識別結果に基づいて、受信データに発生したビットの反転およびレーンの入れ替わりを検出して補償する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーム分割したデータを多値変調方式の光信号に載せて送受信する光伝送システムおよび光伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、40ギガビット毎秒(Gbps)や100Gbpsに対応した光伝送システムへの要求が高まっている。該光伝送システムの実現手段として、周波数利用効率や信号対雑音比(Signal-to-Noise Ratio:SNR)耐力などに優れた様々な変調方式の採用が模索されており、特に、1シンボル時間(一通報)で多ビットの情報を伝送可能な多値変調方式が注目されている。例えば、多値の位相変調と偏波多重とを組み合わせた方式や、位相と振幅の組み合わせにより多値の直交振幅変調を行う方式などの検討が盛んである。
【0003】
上記のような多値変調方式を採用した光伝送システムでは、伝送路の状態などのシステムの動作環境に依存して、受信側で復号される信号が、送信側で変調された原信号とは異なる状態で受信される場合がある。このため、1シンボル時間内でのビットの論理反転および入れ替わりが発生して、送信データを正常に受信できない可能性があることが知られている。
【0004】
上記のようなビットの論理反転および入れ替わりを検出して補償する技術として、例えば、特許文献1には、偏波多重を用いた多値変調方式の光伝送システムについて、1シンボル時間に伝送するビット数に応じて設定した特定のパターンを有する検出用ビットを送信信号に付与し、該送信信号に従って変調した光信号を光送信器から伝送路に送信し、光受信器において、受信信号に含まれる検出用ビットを用いて、受信データの論理反転またはビットスワップ(ビットの入れ替わり)を検出して補償する方式が開示されている。
【0005】
また、上記のような送信信号および受信信号の各処理を高速に行うための関連技術として、所要のフレームに格納されたデータを複数の論理レーンに並べ替えてフレーム分割し、それぞれの論理レーン毎に信号処理を行う技術が知られている。このフレーム分割に関して、例えば特許文献2には、複数のフレームのデータを各論理レーンに分割する際に、論理レーンを回転させながらデータの並べ替えを行う手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−89194号公報
【特許文献2】米国特許第7362779号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に示された従来の補償方式において、検出用ビットのパターンは、論理反転およびビットスワップに依存しないように工夫されており、論理反転に依存しないパターンを受信側で識別することで、ビットスワップの発生状態が検出可能になる。また、ビットスワップに依存しないパターンを受信側で識別することで、論理反転の発生状態が検出可能になる。しかしながら、このような受信側での検出用ビットの処理、つまり、論理反転およびビットスワップのうちの一方に依存しないパターンを識別して、他方の発生状態を検出するという処理は、検出用ビット自体について論理反転およびビットスワップが発生し得るため、処理時間が長くなる。処理時間を短縮するために前述したフレーム分割による信号処理を適用することは有効ではあるが、これにより検出用ビット自体の論理反転およびビットスワップが発生しなくなる訳ではない。このため、従来の補償方式は、受信データに発生した論理反転およびビットスワップを早期に検出して補償することに限界があるという課題がある。
【0008】
なお、上記従来の補償方式は偏波多重を用いた多値変調方式の光伝送システムを対象としているが、前述したような伝送路の状態などのシステムの動作環境に依存して受信データに発生するビットの論理反転および入れ替わりは、偏波多重を用いていない多値変調方式の光信号を送受信する場合にも発生する可能性があり、それを早期に検出して確実に補償することは、偏波多重が適用されるか否かに関係なく、多値変調方式に対応した光伝送システムに共通する課題である。
【0009】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、1シンボル時間で多ビットの情報を伝送可能な多値変調方式の光信号を送受信する光伝送システムについて、システムの動作環境に依存して受信データに発生するビットの論理反転および入れ替わりを早期に検出して確実に補償できる伝送技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため本発明の一態様は、1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能な多値変調方式の光信号を伝送路に送信する送信ユニットと、前記伝送路を伝搬した前記光信号を受信処理する受信ユニットと、を備えた光伝送システムを提供する。前記送信ユニットは、所定のフレームに格納されたデータ列を、複数の論理レーンに並び替えてフレーム分割すると共に、前記フレームのデータ列の先頭が前記フレーム分割後に前記複数の論理レーンのうちのいずれの論理レーンに配置されるかを識別可能にするレーンIDを、前記フレームのオーバーヘッド部内の非スクランブル領域に挿入するフレーム分割手段と、前記フレーム分割手段で複数の論理レーンに並び替えられたデータ列を前記多値変調方式に応じて多重化し、該多重化したデータ信号に従って光を変調して前記多値変調方式の光信号を生成して前記伝送路に送信する光送信手段と、を備える。また、前記受信ユニットは、前記伝送路を伝搬した前記光信号を受信して電気信号に変換し、該電気信号の復号処理を行って受信データを再生した後、該受信データのビット列を前記複数の論理レーンと同数の物理レーンに分割する光受信手段と、前記光受信手段で分割された前記各物理レーンのデータ列に含まれる前記レーンIDをそれぞれ識別し、該識別結果に基づいて、前記物理レーン毎にビットの反転およびレーンの入れ替わりを検出して前記各物理レーンのデータ列が前記各論理レーンのデータ列と同じ状態になるように補償し、該補償後の各論理レーンのデータ列を並べ替えて前記フレームを再生すると共に、前記レーンIDを前記非スクランブル領域から取り除くフレーム再生手段と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
上記のような光伝送システムによれば、所定のフレームに格納されたデータを複数の論理レーンに並べ替えて、フレーム分割により信号処理の高速化を図ると共に、前記フレームのオーバーヘッド部内の非スクランブル領域にレーンIDを挿入して、多値変調方式の光信号の伝送を行うようにしたことにより、システムの動作環境に依存して受信データに発生するビットの反転およびレーンの入れ替わりを、上記レーンIDを利用して早期に検出し、それを確実に補償することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】光伝送システムの一実施形態における全体構成を示す図である。
【図2】上記実施形態におけるOTUk伝送装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】OTUkフレームの具体的な構造を示す図である。
【図4】上記実施形態における送信ユニット内のOTL処理部および光送信部の構成例を示すブロック図である。
【図5】上記実施形態においてレーンIDの置き換えが行われたオーバーヘッド部の一例を示す図である。
【図6】上記実施形態におけるOTUkフレームの分割方法の一例を示した図である。
【図7】上記実施形態において分割したOTUkフレームを20個の論理レーンに並べ替える方法を示した図である。
【図8】上記実施形態において各論理レーンのデータ列を多重化する方法を示す図である。
【図9】上記実施形態において各論理レーンのデータ列を多重化する他の方法を示す図である。
【図10】上記実施形態におけるDP−QPSK方式に対応した光送信機の構成例を示すブロック図である。
【図11】上記実施形態における受信ユニット内の光受信部およびOTL処理部の構成例を示すブロック図である。
【図12】上記実施形態におけるDP−QPSK方式に対応した光受信機の構成例を示すブロック図である。
【図13】上記実施形態におけるDP−QPSK方式に対応した受信信号処理部の構成例を示すブロック図である。
【図14】DP−QPSK方式の光信号の送信状態および正常な受信状態を例示した図である。
【図15】DP−QPSK方式の光信号についてビットの反転および入れ替わりが発生した場合の受信状態を例示した図である。
【図16】DP−QPSK方式の光信号の伝送時に発生し得る受信状態の組み合わせ纏めた図である。
【図17】上記実施形態における識別補償部の回路構成の一例を示すブロック図である。
【図18】上記実施形態の識別補償部における具体的な処理の一例を示すフローチャートである。
【図19】図8の多重化方法におけるビットの反転およびレーンの入れ替わりの一例を纏めて示した図である。
【図20】図19における物理レーンと論理レーンの対応表を示す図である。
【図21】図9の多重化方法におけるビットの反転およびレーンの入れ替わりの一例を纏めて示した図である。
【図22】図21における物理レーンと論理レーンの対応表を示す図である。
【図23】16QAM方式の光信号の送信状態および受信状態の一例を示す図である。
【図24】16QAM方式の光信号の他の受信状態を示す図である。
【図25】16QAM方式に対応した受信信号処理部の構成例を示すブロック図である。
【図26】上記実施形態の応用例におけるOTUkフレームの一例を示す図である。
【図27】上記応用例における識別補償部の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明による光伝送システムの一実施形態における全体構成を示す図である。
図1において、本実施形態の光伝送システムは、例えば、複数のクライアント装置CLが接続される2つのOTUk伝送装置1,1と、該各OTUk伝送装置の間を互いに接続する伝送路2とを備える。
【0014】
OTUk伝送装置1は、各々に接続されたクライアント装置CLから送られてくるクライアント信号に対して、複数のオーバーヘッド情報等を付加することで、OTN(Optical Transport Network)規格のOTU(Optical channel Transport Unit)kに対応したフレーム構造にする。そして、OTUk伝送装置1は、OTUkフレームに格納したデータ列を、OTL(Optical channel Transport Line)に従って、複数の論理レーン(Logical Lane)からなるデータ列に並び替えてフレーム分割する。このとき、OTUk伝送装置1は、各論理レーンのデータ列に対して、OTUkフレームのデータ列の先頭が複数の論理レーンのうちのいずれの論理レーンに配置されているかを、受信側で当該データを処理する際に識別可能にするレーンIDを挿入する。なお、上記各論理レーンは、OTUk伝送装置1において扱う高速な送信信号をシリアル−パラレル変換したパラレル信号のそれぞれに相当する。そして、論理レーン数は、パラレル信号数に相当する。更に、OTUk伝送装置1は、各論理レーンのデータ列を、伝送路2に送信する光信号の多値変調方式に応じて多重化し、該多重化した信号を用いて多値変調した光信号を伝送路2に送信する。
【0015】
また、OTUk伝送装置1は、伝送路2を伝搬した光信号を受信して電気信号に変換し、該電気信号の復号処理を行って受信データを再生した後、該受信データのビット列を送信側におけるフレーム分割時の論理レーンと同数の物理レーンに分割する。そして、OTUk伝送装置1は、各物理レーンのデータ列に含まれるレーンIDをそれぞれ識別し、該識別結果に基づいて、物理レーン毎にビットの反転およびレーンの入れ替わりの発生状態を判定して、その補償を行う。なお、上記各物理レーンは、受信信号処理を行う回路の構造に依存して決まる物理的なレーンであり、各物理レーンの順番は、送信側における各論理レーンの順番に関係なく任意である。更に、OTUk伝送装置1は、ビットの反転およびレーンの入れ替わりを補償した各データ列を用いてOTUkフレームを再生し、該OTUkフレームに格納されたデータをクライアント信号に変換して対応するクライアント装置CLに送信する。
【0016】
なお、OTNは、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)において標準化された光ネットワーク方式である。また、OTUkは、OTNに規定された40Gbps対応のOTU3および100Gbps対応のOTU4のいずれかに該当する。さらに、OTLは、ITU−Tで策定中のG.709において定義されたレーンを利用して信号処理を行う方式である。
【0017】
図2は、上記OTUk伝送装置1の具体的な構成例を示すブロック図である。
図2において、OTUk伝送装置1は、複数のクライアント装置CLから送られてくるクライアント信号(電気または光)を受けて伝送路2に多値変調方式の光信号を送信する送信ユニット1Aと、伝送路2を伝搬した多値変調方式の光信号を受信してクライアント装置CLにクライアント信号(電気または光)を送る受信ユニット1Bとを備える。
【0018】
なお、ここでは1つのOTUk伝送装置1が、送信ユニット1Aおよび受信ユニット1Bの双方を備える一例を示したが、本発明はこれに限らず、伝送路2の一端に接続するOTUk伝送装置1が送信ユニット1Aを備え、伝送路2の他端に接続するOTUk伝送装置1が受信ユニット1Bを備えるようにしてもよい。
【0019】
送信ユニット1Aは、例えば、複数のクライアント信号受信部11、クライアント信号処理部12、OTUkフレーム処理部13、フレーム分割手段としてのOTL処理部14、および、光送信手段としての光送信部15を有する。
【0020】
各クライアント信号受信部11は、OTUk伝送装置1に接続される各クライアント装置CLにそれぞれ対応しており、各々のクライアント装置CLから送られてくるクライアント信号を受信する。各クライアント信号受信部11は、クライアント信号が電気信号の場合、該電気信号をクライアント信号処理部12に出力し、クライアント信号が光信号の場合には、該光信号を電気信号に変換してクライアント信号処理部12に出力する。
【0021】
クライアント信号処理部12は、各クライアント信号受信部11からの出力信号の終端処理を行ってOTUkフレーム処理部13に出力する。
OTUkフレーム処理部13は、OTUkフレーム処理部13で終端処理された各クライアント信号に対して、OPU(Optical channel Payload Unit)に対応したオーバーヘッド情報およびODU(Optical channel Data Unit)に対応したオーバーヘッド情報を付加し、更に、OTU(Optical channel Transport Unit)kに対応したオーバーヘッド情報および誤り訂正(Forward Error Correction:FEC)バイトを付加して、各クライアント信号をOTUkフレーム内に格納する。
【0022】
図3は、OTUkフレームの具体的な構造を示す図である。
図3の上段に示すように、OTUkフレームは、1フレームが4080バイト×4行で構成される。各行のデータ列は、先頭から順に、オーバーヘッド部、ペイロード部およびFEC部が配置される。1行目のオーバーヘッド部には、1〜6バイト目にFAS(Frame Alignment Signal)が格納され、7〜14バイト目にOTUkのオーバーヘッド情報(OTUk_OH)が格納され、15〜16バイト目にOPU(Optical channel Payload Unit)のオーバーヘッド情報(OPU_OH)が格納される。2行目以降のオーバーヘッド部には、ODU(Optical channel Data Unit)kのオーバーヘッド情報(ODUk_OH)が格納される。各行のペイロード部には、クライアント信号が格納される。
【0023】
図3の下段は、1行目のオーバーヘッド部を拡大して示したものである。先頭のFASは、フレーム同期パターンとして、1〜3バイト目が共通のOA1、4〜6バイト目が共通のOA2、つまり、先頭から順にOA1,OA1,OA1,OA2,OA2,OA2のパターンを有する。OA1は、FW(Framing Word)として16進数で「F6」の固定値(“11110110”のビット列)が設定される。また、OA2は、FWとして16進数で「28」の固定値(“00101000”のビット列)が設定される。すなわち、OTUkフレームのデータ列の先頭に配置されるFASは、「F6,F6,F6,28,28,28」の固定パターンを持つ。また、このFASは、スクランブル処理を行わない非スクランブル領域に規定されている。言い換えると、OTUkフレームにおけるFAS以外の領域は、スクランブル処理が可能である。
【0024】
FASに続くOTUk_OHは、7バイト目にMFAS(Multi Frame Alignment Signal)が格納され、8〜10バイト目にSM(Section Monitoring)情報が格納され、11〜12バイト目にGCC(General Communication Channel)情報が格納される。なお、13〜14バイト目は、RSE(Reserved for future international standardization)であり、未使用である。
【0025】
図2のOTL処理部14は、例えば図4の左上に示すように、レーンID挿入部141、レーン分配部142および光送信部インターフェース143を有する。
レーンID挿入部141は、OTUkフレーム処理部13から出力される信号の各OTUkフレームについて、オーバーヘッド部のFASに含まれる少なくとも1つのバイトをレーンIDに置き換える。このレーンIDは、後段のレーン分配部142でフレームデータを複数の論理レーンに並べ替えた後に、OTUkフレームのデータ列の先頭が配置される論理レーンを識別可能とする情報である。上記レーンIDとしては、例えば、複数のOTUkフレームの配列順に付されたフレーム番号に対応する連続値を所要の範囲(具体的には、10進数で0〜239の範囲など)で割り当てることが可能である。この場合、後述するレーン分配部142での並べ替えの規則性に従うことで、レーンIDの連続値に対応するOTUkフレームのデータ列の先頭が何番目の論理レーンに配置されているかが一意に決まる。
【0026】
図5は、上記レーンIDの置き換えが行われたオーバーヘッド部の一例を示す図である。図5の例では、OTUkフレームのオーバーヘッド部におけるFASの6バイト目の固定値「28」がレーンIDに置き換えられる。前述したようにFASは非スクランブル領域に規定されているので、受信側において、FASを構成する各ビットの入れ替わりが発生することはない。ただし、システムの動作環境により論理反転が発生する可能性はある。このため、後で詳しく説明するように、受信側で上記レーンIDの識別処理を行うことにより、レーン分配部142での並べ替え処理後にOTUkフレームのデータ列の先頭が何番目の論理レーンに位置しているかが識別可能になる。
【0027】
なお、図5には、FASの6バイト目の固定値「28」をレーンIDに置き換える一例を示したが、FASを構成する6個のバイトのうちのいずれをレーンIDに置き換えるかは任意である。また、受信側でFASのビットパターンを検出することが可能であれば、FASを構成する6個のバイトのうちの2つ以上のバイトをレーンIDに置き換えてもよい。
【0028】
図4のレーン分配部142は、上記レーンID挿入部141でFASにレーンIDが挿入されたOTUkフレームを、OTLに従って、予め定められたバイト数毎に分割し、複数の論理レーンに並び替える。このレーン分配部142で複数の論理レーンに並び替えられたデータ列は、光送信部インターフェース143を介して、光送信部15に送られる。
【0029】
図6は、レーン分配部142におけるOTUkフレームの分割方法の一例を示した図である。この図6の例では、OTUkの1つのフレーム(1〜16320バイト)が、16バイト毎に分割されることにより、255ブロック×4行の形に変換される。図中の「1:16」〜「16305:16320」の表記は、各々のブロックにおける(開始バイトの位置):(終了バイトの位置)を示している。例えば、左上の「1:16」と表記されたブロックには、OTUkフレームの1バイト目から16バイト目までが格納されている。なお、ここではOTUkフレームを16バイト毎に分割する一例を示したが、OTUkフレームを何バイト毎に分割するかは設計事項として任意に決めることが可能である。
【0030】
図7は、16バイト毎に分割したOTUkフレーム(図6)の各ブロックを、20個の論理レーンに並び替える方法を示した図である。まず、n番目に位置するOTUkフレームFR_nについて、先頭の「1:16(FAS)」ブロックが、第1論理レーンLL1の第1列#1に配置され、続く「17:32」ブロックが、第2論理レーンLL2の第1列#1に配置される。以降同様にして、20番目のブロックである「305:320」ブロックが、第20論理レーンLL20の第1列#1に配置される。各論理レーンLL1〜LL20における第1列#1の全てのブロックが埋まると、右隣の第2列に移り、上記第1列#1の場合と同様にして、後続のブロックが第1論理レーンLL1の第2列から第20論理レーンLL20の第2列まで順番に配置される。この規則に従って、n番目のOTUkフレームFR_nの全てのブロックの並び替えが行われると、最後の「16305:16320」ブロックは、第20論理レーンLL20の第51列に配置される。上記並べ替えにより、n番目のOTUkフレームFR_nは、1つの論理レーンが51ブロックを有する20個の論理レーンからなるデータ列に変換される。
【0031】
ここで、OTUkフレームは、図3に示した通り、4080バイト×4=16320バイトである。そして、これを16バイトずつのブロックとしたので、1つのOTUkフレームのブロック数は、16320を16で除した、1020である。つまり、「16305:16320」ブロックは、1020番目のブロックである。いま、論理レーン数を20としているので、1020番目のブロックは、51列に配置されることとなる。
【0032】
図7の説明を続ける。n+1番目に位置するOTUkフレームFR_n+1について、先頭の「1:16(FAS)」ブロックが、1つ前のOTUkフレームFR_nにおける先頭ブロックの位置するレーン番号を1つ進めたレーン、つまり、第2論理レーンLL2の第1列#1に配置される。続く「17:32」ブロックは、第3論理レーンLL3の第1列#1に配置され、以降同様にして、「289:304」ブロックが、第20論理レーンLL20の第1列#1に配置される。続く「305:320」ブロックは、第1列#1で空きになっている第1論理レーンLL1に配置される。各論理レーンLL1〜LL20における第1列#1の全てのブロックが埋まると、右隣の第2列に移り、上記第1列#1の場合と同様にして、後続のブロックが、第2論理レーンLL2の第2列から第20論理レーンLL20の第2列まで順番に配置された後に、第1論理レーンLL1の第2列に配置される。この規則に従い、n+1番目のOTUkフレームFR_n+1の全てのブロックを並び替えると、最後の「16305:16320」ブロックは、第1論理レーンLL1の第51列に配置される。
【0033】
上記のようにレーン分配部142によるOTUkフレームから論理レーンLL1〜LL20への並べ替え処理は、1つのOTUkフレームの並べ替えが終わり、次のOTUkフレームの並べ替えに移る際に、先頭の「1:16(FAS)」ブロック(図7中の斜線付きブロック)を配置する論理レーンを1つ先に進め、1フレーム毎に論理レーンを回転させるという規則に従って、OTUkフレームのフレーム番号順に実行される。図7の例では、n+20番目のOTUkフレームFR_n+20における先頭ブロックが、第20論理レーンLL20の第1列#1に配置されており、n番目のOTUkフレームFR_nからn+20番目のOTUkフレームFR_n+20までの並べ替えにより、第1論理レーンLL1から第20論理レーンLL20までのレーン回転が一巡することになる。
【0034】
なお、ここではOTUkフレームに格納されたデータを20個の論理レーンLL1〜LL20に分割して並列配置する一例を説明したが、論理レーンの総数(並列数)は、信号処理回路の構成および動作速度に応じて適宜に設定することが可能である。論理レーンの総数を増やせば、動作速度が比較的低速の回路により信号処理を行うことができる。一方、論理レーンの総数を減らせば、回路の簡素化を図ることができる。例えば、OTU3に対応したシステムの場合、OTUkフレームを4つの論理レーンに分割することが規定されている。OTU3では40Gbspの光信号を送受信するので、1つの論理レーンあたりの動作速度は約10Gbspとなる。これと同様にして、OTU4に対応したシステムについて、OTUkフレームを4つの論理レーンに分割した場合、OTU4では100Gbspの光信号を送受信するので、1つの論理レーンあたりの動作速度は25Gbsp以上となる。このような高速な回路は現時点では非現実的であるため、論理レーンの数を増やして1つの論理レーンあたりの動作速度を抑えるのが有効である。
【0035】
上記OTU3に対応したシステムに関連して、OTUkフレームを4つの論理レーンに分割する場合、OTUkフレームのオーバーヘッド情報に含まれるMFAS(図3参照)の下位2ビットを使用することで、OTUkフレームのデータ列の先頭が4つの論理レーンうちのいずれに論理レーンに配置されているかを識別することは可能である。つまり、上記レーンIDの代わりに、既存のMFASの下位2ビットを利用し得る。しかし、MFASの下位2ビットの利用は、論理レーンが4つの場合に限られるため、前述したような論理レーンの総数を増やして1つの論理レーンあたりの動作速度を抑えるといった措置をとることができない。FASの一部をレーンIDに置き換えるという手法は、任意数の論理レーンに対応できるという利点があり、より高速な光信号への対応という観点で非常に有効である。
【0036】
光送信部15は、例えば図4の右下に示すように、OTL処理部インターフェース151、符号化処理部152、ビット多重部153および光送信機154を有する。
符号化処理部152は、OTL処理部14から出力される各論理レーンLL1〜LL20のデータ列がOTL処理部インターフェース151を介して入力され、該データ列に対して、伝送路2に送信する光信号の多値変調方式に対応した所要の符号化処理を実行する。この符号化処理部152は、送信データをスクランブル処理する必要がある場合、FASを除いた領域のデータ列を、予め定めたスクランブリングコードを用いてスクランブルすることも可能である。
【0037】
ビット多重部153は、上記符号化処理部152で処理された各論理レーンLL1〜LL20のデータ列を、伝送路2に送信する光信号の多値変調方式に対応させて多重化する。例えば、上記光信号の多値変調方式が、2ビット(4値)の位相変調と偏波多重とを組み合わせたDP−QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)方式の場合、4値の位相変調における同相(In-phase:I)成分および直交(Quadrature-phase:Q)成分が、X偏波およびY偏波でそれぞれ伝送される。このため、ビット多重部153は、各論理レーンLL1〜LL20のデータ列を4種類のデータ列に多重化することにより、X偏波のI成分に対応したデータ信号X_Iと、X偏波のQ成分に対応したデータ信号X_Qと、Y偏波のI成分に対応したデータ信号Y_Iと、Y偏波のQ成分に対応したデータ信号Y_Qとを生成する。
【0038】
図8は、各論理レーンLL1〜LL20のデータ列を4種類のデータ列に多重化する方法を例示した図である。この図8の例では、論理レーンLL1〜LL5のデータ列が1つに多重化されてX偏波のI成分に対応したデータ信号X_Iが生成され、論理レーンLL6〜LL10のデータ列が1つに多重化されてX偏波のQ成分に対応したデータ信号X_Qが生成される。また、論理レーンLL11〜LL15のデータ列が1つに多重化されてY偏波のI成分に対応したデータ信号Y_Iが生成され、論理レーンLL16〜LL20のデータ列が1つに多重化されてY偏波のQ成分に対応したデータ信号Y_Qが生成される。このような多重化の方法は、ITU−Tで規定されているOTL4.4に対応する。
【0039】
図9は、各論理レーンLL1〜LL20のデータ列を4種類のデータ列に多重化する他の方法を例示した図である。この図9の例では、まず、20の論理レーンLL1〜LL20の前後2つずつが多重化される。そして、10個の論理レーンのデータ列が先頭から順番に4種類のデータ列に振り分けられることで、X偏波のI,Q成分およびY偏波のI,Q成分にそれぞれ対応したデータ信号が生成される。このような2段階の多重化方法は、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)100GbEに規定されているGearBoxでのビット多重に対応する。なお、各論理レーンの多重化方法は、図8および図9の例に限定されるものではなく、適用する多値変調方式に対応させた任意の多重化方法を採用することができる。
【0040】
光送信機154は、ビット多重部153から出力される各データ信号を用いて多値変調方式の光信号を生成し、該光信号を伝送路2に送信する。
図10は、DP−QPSK方式に対応した光送信機154の構成例を示すブロックである。図10の構成例において、光送信機154は、光源(LD)154A、偏波分離器154B、4つの位相変調器(PM)154C、2つの位相シフタ154Dおよび偏波合成器154Eを含む。この光送信機154では、光源154Aから出力される光が偏波分離器154Bで直交する偏波成分に分離され、X偏波およびY偏波の各光が更に2分岐されて4つの位相変調器154Cにそれぞれ与えられる。各位相変調器154Cに入力された光は、ビット多重部153から出力される各データ信号X_I,X_Q,Y_I,Y_Qにそれぞれ従って位相変調される。各位相変調器154Cで位相変調された光は、各偏波に対応した1組の光のうちの一方の光の位相が位相シフタ154Dでπ/2シフトされた後に他方の光と合成され、更に、偏波合成器154Eで各偏波の光が合成される。これによりDP−QPSK方式の光信号が光送信機154から伝送路2に送信される。
【0041】
なお、ここでは光送信機154の具体的な構成例としてDP−QPSK方式の場合を示したが、光送信機154の構成は上記に限らず、伝送路2に送信する光信号の多値変調方式に対応した公知の構成を適用することが可能である。
【0042】
受信ユニット1B(図2)は、例えば、光受信手段としての光受信部21、フレーム再生手段としてのOTL処理部22、OTUkフレーム処理部23、クライアント信号処理部24、および、複数のクライアント信号送信部25を具備する。
光受信部21は、例えば図11の右上に示すように、光受信機211、受信信号処理部212、復号処理部213およびOTL処理部インターフェース214を有する。
【0043】
光受信機211は、伝送路2を伝搬してきた光信号が入力され、該光信号を電気信号に変換して受信信号処理部212に出力する。
図12は、DP−QPSK方式に対応した光受信機211の構成例を示すブロックである。図12の構成例において、光受信機211は、局部発振光源(LD)211A、90°ハイブリッド回路211Bおよび4つの光検出器(PD)211Cを含む。この光受信機211では、伝送路2からの光信号と局部発振光源211Aから出力される局部発振光とが90°ハイブリッド回路211Bに与えられ、該ハイブリッド回路211Bの各出力光が各光検出器211Cで電気信号に変換されて、受信信号処理部212に送られる。
【0044】
受信信号処理部212は、光受信機211からの出力信号を処理することで、受信した光信号のX偏波およびY偏波の各I,Q成分に対応するデータをそれぞれ識別処理する。
図13は、DP−QPSK方式に対応した受信信号処理部212の構成例を示す機能ブロックである。図13の構成例において、受信信号処理部212は、4つのADコンバータ(ADC)212A、波形歪み補償回路212B、偏波分離回路212C、X偏波用位相同期回路212D、Y偏波用位相同期回路212E、X偏波用識別回路212FおよびY偏波用識別回路212Gを有する。
【0045】
この受信信号処理部212では、光受信機211からの各出力信号が各ADコンバータ212AでAD変換された後に、波形歪み補償回路212Bおよび偏波分離回路212Cに順次与えられ、所要のデジタルフィルタ等を用いた信号処理により、伝送路2における波長分散や偏波モード分散、非線形効果等に起因して生じた受信信号の波形歪みの補償が行われ、該受信信号のX偏波およびY偏波にそれぞれ対応する成分が分離される。上記波形歪み補償回路212Bおよび偏波分離回路212Cでのデジタル信号処理は、後述するOTL処理部22から出力される再トラッキング信号を受けて、デジタルフィルタの係数の設定等が変更される。そして、X偏波用およびY偏波用の各位相同期回路212D,212EにおいてX偏波のI,Q成分およびY偏波のI,Q成分の同期がとられ、各々の成分に対応したデータの識別処理が、X偏波用およびY偏波用の各識別回路212F,212Gで実行される。各識別回路212F,212Gでの識別結果を示す受信データは、復号処理部213(図11)に伝えられる。
【0046】
復号処理部213は、受信信号処理部212から出力されるX偏波およびY偏波の各受信データを用いて、DP−QPSK方式に対応した復号化処理を行うことにより、受信した光信号のX偏波およびY偏波の各I,Q成分にそれぞれ対応するデータ列を生成する。また、復号処理部213は、復号化した4つのデータ列を、送信側におけるフレーム分割時の論理レーンと同数の第1〜第20物理レーンPL1〜PL20に対応したデータ列に分離する。各物理レーンPL1〜PL20は、復号処理部213の回路構造により決まる物理的なレーンである。上記各物理レーンPL1〜PL20のデータ列は、OTL処理部インターフェース214を介して、OTL処理部22に出力される。
【0047】
上述したように多値変調方式を採用した光伝送システムでは、システムの動作環境に依存して、1シンボル時間内でのビットの反転および入れ替わりが発生する可能性があり、受信側で復号される信号が送信時の原信号とは異なる状態となる場合がある。このため、上記光受信部21からOTL処理部22に出力される各物理レーンPL1〜PL20のデータ列は、送信時における各論理レーンLL1〜LL20のデータ列とは必ずしも一致しない。これについて上記の例と同様にDP−QPSK方式の光信号を伝送する場合を想定して詳しく説明する。
【0048】
図14は、DP−QPSK方式の光信号についての1シンボルの送信状態と、該光信号がビットの論理反転および入れ替わり無く正常に伝送された場合の受信状態とを例示した図である。図14上段の送信状態において、光信号のX偏波(またはY偏波)は、I,Q成分の位相により4つの状態A〜Dをとる。状態Aは、I,Q成分の位相が共に0を示し、図中の実線矢印で示す軸Iに対して45°の方向に対応する。状態Bは、I成分の位相が1、Q成分の位相が0を示す、135°の方向に対応する。状態Cは、I,Q成分の位相が共に1を示す、225°の方向に対応する。状態Dは、I成分の位相が0、Q成分の位相が1を示す、315°の方向に対応する。図14下段の正常な受信状態においては、図中の実線矢印で示す受信時の軸Iおよび軸Qと、破線矢印で示す送信時の軸Iおよび軸Qとの関係が一致しており、送信時および受信時の4つの状態A〜Dが同一になる。
【0049】
上記図14に対して、図15は、ビットの論理反転および入れ替わりが発生した場合の受信状態を例示している。図15上段の受信状態は、受信時の軸Iおよび軸Qに対して、送信時の軸Iおよび軸Qが左回りに90°回転した関係、すなわち、送信時の軸Iおよび軸Qが入れ替わり、かつ、軸Qの方向が反転した関係になっている。このため、受信時の4つの状態α〜δは、送信時の4つの状態A〜Dとは相違する。送信時のI,Q成分に対応したデータを(I,Q)で表すと、受信時のデコード状態は(Q’,I)となる。ただし、Q’は、Qが論理反転した値を表し、以降、同様の方法により論理反転値を表記する。
【0050】
図15中段に示す受信状態は、受信時の軸Iおよび軸Qに対して、送信時の軸Iおよび軸Qが左回りに180°回転した関係、すなわち、送信時の軸Iおよび軸Qの方向が共に反転した関係になっている。このため、受信時の4つの状態α〜δは、送信時の4つの状態A〜Dとは相違し、受信時のデコード状態は(I’,Q’)となる。また、図15下段に示す受信状態は、受信時の軸Iおよび軸Qに対して、送信時の軸Iおよび軸Qが左回りに270°回転した関係、すなわち、送信時の軸Iおよび軸Qが入れ替わり、かつ、軸Iの方向が反転した関係になっている。このため、受信時の4つの状態α〜δは、送信時の4つの状態A〜Dとは相違し、受信時のデコード状態は(Q,I’)となる。
【0051】
上記のような受信状態の変化は、光送信機154内の位相変調器154Cのバイアス点、偏波分離器154Bと偏波合成器154Eの間における光路長差、伝送路2での偏波モード分散、非線形位相雑音、光受信機211内での偏波間光路長差、局部発振光源211Aの位相変動、または、受信時の偏波チャネル(X偏波、Y偏波)の入れ替わりなどが要因となって発生する。図16は、DP−QPSK方式の光信号の伝送時に発生し得る受信状態の組み合わせ纏めた図である。このように、X偏波およびY偏波の各I,Q成分について、ビットの反転および入れ替わりにより、32通りの受信状態が想定される。
【0052】
OTL処理部22は、例えば図11の左下に示すように、光受信部インターフェース221、識別補償部222およびOTUkフレーム再生部223を有し、上記光受信部22から出力される各物理レーンPL1〜PL20のデータ列が、光受信部インターフェース221を介して識別補償部222に与えられる。
【0053】
識別補償部222は、各物理レーンPL1〜PL20のデータ列について、FASの検出を行い、該FASに含まれるレーンIDを識別し、該レーンIDに基づいてビットの論理反転および入れ替わりを判定してその補償を行う。図17は、識別補償部222の具体的な回路構成の一例を示すブロック図である。
【0054】
図17において、識別補償部222は、各物理レーンPL1〜PL20のデータ列毎に、論理反転部222AおよびFAS検出部222Bをそれぞれ有する。論理反転部222Aは、対応する物理レーンのデータ列を論理反転して、FAS検出部222Bに出力する。FAS検出部222Bは、対応する物理レーンのデータ列と、論理反転部222Aで論理反転されたデータ列とが入力され、各々のデータ例についてFASの検出を行い、該FASの所定位置(上述した図5の例では6バイト目)に挿入されたレーンIDを識別する。このFAS検出部222Bは、レーンIDの識別結果をレーン同期検出部222Cに伝えると共に、入力される非反転および反転データ列のうちで、FASが検出された方のデータ列をマトリクススイッチ部222Dに出力する。
【0055】
レーン同期検出部222Cは、各FAS検出部222BでのレーンIDの識別結果を基に、後述する物理レーンと論理レーンの対応表を作成し、送信時の論理レーンの順番に入れ替わりが発生している物理レーンを判定して、該入れ替わりが補償されるようにマトリクススイッチ部222Dを切り替えるための制御信号を生成する。また、レーン同期検出部222Cは、各FAS検出部222BでレーンIDが正しく識別できない場合や、作成した対応表に論理レーンの重複が発生している場合に、受信信号処理部212に対して再トラッキングを要求する信号を出力する。
【0056】
マトリクススイッチ部222Dは、物理レーンの数(ここでは20レーン)に対応した入力ポートおよび該入力ポートと同数の出力ポートを有し、入出力ポート間の接続状態がレーン同期検出部222Cからの制御信号に従って切り替えられる。
【0057】
OTUkフレーム再生部223(図11)は、識別補償部222から出力される、ビットの反転およびレーンの入れ替わりが補償された各論理レーンLL1〜LL20のデータ列を、送信側でのOTL処理とは逆に、16バイト毎に並べ替え、レーンIDに置き換えていたFASのバイトを元に戻すことにより、OTUkフレームを再生する。このOTUkフレーム再生部223で再生されたOTUkフレームは、OTUkフレーム処理部23(図2)に出力され、OTUkフレームのオーバーヘッド情報に従ってクライアント信号が生成される。該クライアント信号は、クライアント信号処理部24およびクライアント信号送信部25を介して対応するクライアント装置CLに送信される。
【0058】
ここで、上記識別補償部222における具体的な処理の一例を図18のフローチャートを参照しながら詳しく説明する。
システムの立ち上げ時、または運用中の所要の処理サイクルにおいて、各物理レーンPL1〜PL20のデータ列が識別補償部222に与えられると、各物理レーンPL1〜PL20に対応したFAS検出部222BにおいてFASの検出処理が開始される。
【0059】
各々のFAS検出部222BでのFAS検出処理(図18中のS10)は、物理レーンのデータ列について、FASの検出を行い、FASの検出によりレーンIDを識別できたか否かの判定を行う(S11)。また、これと並行して、論理反転部222Aで論理反転されたデータ列についても、FASの検出を行い、FASの検出によりレーンIDを識別できたか否かの判定を行う(S12,S13)。FASの検出パターンは、上述の図5に示したFASの場合、「OA1,OA1,OA1,OA2,OA2,レーンID」であり、実際のデータは、「F6,F6,F6,28,28,xx」となる。なお、「xx」はレーンIDごとに異なる値をとる。このパターンが、各物理レーンPL1〜PL20において、4080×4バイト周期で現れることになる。
【0060】
論理反転部222Aにより論理反転されていないデータ列、および論理反転されたデータ列のいずれかについてレーンIDが識別されると、その識別結果がレーン同期検出部222Cに伝えられる。このとき、上記2種類のデータ列のうちのレーンIDが識別された方のデータ列が選択的にマトリクススイッチ部222Dに出力される。これにより、システムの動作環境に応じて受信データに発生するビットの反転が補償されることになる。
【0061】
一方、上記2種類のデータ列の双方について所要周期内にレーンIDが識別できなかった場合には、受信信号処理部212における検出異常が判断され、その旨がFAS検出部222Bからレーン同期検出部222Cに伝えられる(S14,S15)。各物理レーンPL1〜PL20に対応したFAS検出部222Bのいずれかで検出異常が判断されると、レーン同期検出部222Cは、波形歪み補償回路212B(図13)における処理の最適化(具体的には、デジタルフィルタの係数等の見直し)を受信信号処理部212に指示するための再トラッキング信号を生成する(S90)。受信信号処理部212では、レーン同期検出部222Cからの再トラッキング信号を受けて、波形歪み補償回路212Bの最適化が行われ、各FAS検出部222BにおけるFASの検出処理が再度行われる(S120)。
【0062】
なお、ここでは各物理レーンPL1〜PL20にそれぞれ対応させて論理反転部222Aを設け、該論理反転部222Aで論理反転されたデータ列と、論理反転されていないデータ列とについて、FASの検出を行う一例を示したが、各論理反転部222Aを省略してFASの検出を行うことも可能である。この場合、各FAS検出部222Bは、FASの検出パターンとして、上記「F6,F6,F6,28,28,xx」の第1検出パターンに加え、該第1検出パターンを論理反転させた「09,09,09,D7,D7,yy」の第2検出パターンを用意し、2通りの検出パターンを用いてFASの検出を行う。そして、各FAS検出部222Bは、第1検出パターンに一致するFASを検出した場合、当該データ列をそのままマトリクススイッチ部222Dに出力し、第2検出パターンに一致するFASを検出した場合には、当該データ列を論理反転させてマトリクススイッチ部222Dに出力する。
【0063】
全ての物理レーンPL1〜PL20に対応したFAS検出部222BにおいてレーンIDが識別され、各々の識別結果がレーン同期検出部222Cに伝えられると、レーン同期検出部222Cは、物理レーンと論理レーンの対応表を作成する(S20)。物理レーンと論理レーンの対応関係は、レーンIDの識別結果より、当該FASが送信時に20の論理レーンLL1〜LL20のうちのいずれの論理レーンに配置されていたが分かるので、その論理レーンが受信側の物理レーンと対応付けられる。
【0064】
図19は、あるシステムの動作環境におけるビットの反転およびレーンの入れ替わりの様子を纏めて示した図である。この図19の例は、上述の図8に示した送信側で各論理レーンLL1〜LL20のデータ列を5:1に多重化する場合に対応する。DP−QPSK方式の光信号の伝送により、X偏波のI成分およびQ成分に対応する各データ信号X_I,X_Qが、Y偏波のQ成分およびI成分に対応する各データ信号Y_Q,Y_Iと入れ替わり、かつ、X偏波のI成分およびY偏波のQ成分にビットの反転が発生してデータ信号X_I’,Y_Q’となっている。
【0065】
図20は、上記図19の状況においてレーン同期検出部222Cで作成される物理レーンと論理レーンの対応表である。例えば、物理レーンPL1は、ビット反転したY偏波のQ成分に対応するデータ信号Y_Q’に含まれる論理レーンLL16’に該当し、論理反転部222Aを通過したデータ列の方でレーンIDが識別されるので、図20の対応表では、論理レーンLLが16、論理反転がonとなる。また例えば、物理レーンPL6は、Y偏波のI成分に対応するデータ信号Y_Iに含まれる論理レーンLL11に該当し、論理反転部222Aを通過していないデータ列の方でレーンIDが識別されるので、図20の対応表では、論理レーンLLが11、論理反転がoffとなる。
【0066】
上記図19および図20とは別の例として、図21および図22は、上述の図9に示した送信側で各論理レーンLL1〜LL20のデータ列を2:1に多重化した後に10:4に多重化する場合を示している。この場合も、図21に示すように、DP−QPSK方式の光信号の伝送により、X偏波のI成分およびQ成分に対応する各データ信号X_I,X_Qが、Y偏波のQ成分およびI成分に対応する各データ信号Y_Q,Y_Iと入れ替わり、かつ、X偏波のI成分およびY偏波のQ成分にビットの反転が発生してデータ信号X_I’,Y_Q’となっている。この状況において、例えば、物理レーンPL1は、ビット反転したY偏波のQ成分に対応するデータ信号Y_Q’に含まれる論理レーンLL7’に該当し、論理反転部222Aを通過したデータ列の方でレーンIDが識別されるので、図22の対応表では、論理レーンLLが7、論理反転がonとなる。また、物理レーンPL2は、X偏波のQ成分に対応するデータ信号X_Qに含まれる論理レーンLL19に該当し、論理反転部222Aを通過していないデータ列の方でレーンIDが識別されるので、図22の対応表では、論理レーンLLが19、論理反転がoffとなる。
【0067】
上記のようにして物理レーンと論理レーンの対応表が作成されると、レーン同期検出部222Cは、該対応表で論理レーンの重複が生じているか否かの判定を行う(図18のS30)。論理レーンの重複は、受信信号処理部212の偏波分離回路212C(図13)での処理において、同じ偏波成分のデータを異なる偏波成分のデータとした場合(同値偏波収束)に発生する可能性がある。このため、レーン同期検出部222Cは、論理レーンの重複を判定すると、同値偏波収束を検出し、異なる偏波状態への再トラッキング処理を受信信号処理部212に指示するための再トラッキング信号を生成する(S100,S110)。この再トラッキング信号を受けた受信信号処理部212では、偏波分離回路212Cの最適化が行われ、上記対応表を初期化した後に各FAS検出部222BにおけるFASの検出処理が再度行われる(S120)。
【0068】
一方、論理レーンの重複なしが判定されると、同期検出部222Cは、各物理レーンPL1〜PL20に対応したFAS検出処理を終了し、上記物理レーンと論理レーンの対応表を参照しながら、送信時の状態と異なる論理レーン間の入れ替えをマトリクススイッチ部222Dに指示する制御信号を生成する(S40)。この制御信号によりマトリクススイッチ部222Dの入出力ポート間の接続状態が切り替えられることで(S50)、送信時と同じ論理レーンLL1〜LL20に配置されたデータ列(図19および図21の右端参照)が、マトリクススイッチ部222DからOTUkフレーム再生部223に出力される。
【0069】
OTUkフレーム再生部223では、各論理レーンLL1〜LL20のデータ列が、送信側でのOTL処理とは逆の手順に従って16バイト毎に並べ替えられ(S60)、また、レーンIDに置き換えられていたFASのバイトが元に戻される(S70)。これにより、OTUkフレームの同期が確認され(S80)、該OTUkフレームに格納されたデータ信号がOTUkフレーム処理部23に出力される。
【0070】
以上説明したように本実施形態の光伝送システムによれば、OTUkフレームに格納されたデータを複数の論理レーンに並べ替えて、フレーム分割により信号処理の高速化を図ると共に、OTUkフレームのデータ列の先頭が複数の論理レーンのうちのいずれの論理レーンに配置されているかを識別可能にするレーンIDをFASの一部に挿入して、多値変調方式の光信号の伝送を行うようにしたことにより、システムの動作環境に依存して受信データに発生するビットの反転およびレーンの入れ替わりを、上記レーンIDを利用して早期に検出し、それを確実に補償することが可能になる。
【0071】
なお、上記実施形態では、多値変調方式としてDP−QPSK方式の一例を挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、偏波多重を用いない多値の位相変調方式(例えば、8PSK方式)や、位相と振幅を組み合わせた多値の直交振幅変調(Quadrature Amplitude Modulation:QAM)方式(例えば、16QAM方式)などにも適用可能である。
【0072】
図23および図24は、16QAM方式を適用した場合に、システムの動作環境に依存して受信データに発生するビットの論理反転および入れ替わりを示している。16QAM方式は、1シンボルあたり4ビット(16値)の情報を伝送可能であり、送信時のビット状態は、図23の左上に示すような配置となる。このようなビット配置の光信号が伝送路2を介して送受信されると、システムの動作環境に応じて、直交する軸I,Qの回転が生じる。図23の左下は、軸I,Qの回転がない正常な受信状態であり、受信データは送信時と同じビット配置となる。
【0073】
図23の右下は、軸I,Qが送信状態から180°回転したときの受信状態であり、受信データは全てのビットが送信時の状態から反転している。この受信状態では、上述した実施形態の場合と同様にして、識別補償部222において、論理反転部222Aにより論理反転されていないデータ列および論理反転されたデータ列のうちので、FASが検出された方のデータ列が選択的にマトリクススイッチ部222Dに出力されることにより、送信時と同じビット配置が実現される。
【0074】
図24の左側は、軸I,Qが送信状態から90°回転したときの受信状態であり、また右側は、軸I,Qが送信状態から270°回転したときの受信状態である。該各受信状態では、各ビット位置(レーン)に対してビット反転が個別に発生している。この場合、受信信号処理部212におけるI成分およびQ成分の分離処理をやり直すことが必要になる。具体的には、上述した実施形態における識別補償部222のレーン同期検出部222Cが、レーンIDの識別結果に異常を検出したときに、I,Q成分の再分離処理を受信信号処理部212に指示する制御信号を生成し、該制御信号を受けた受信信号処理部212が、図25に示すように、偏波分離回路212C、X偏波用位相同期回路212DおよびY偏波用位相同期回路212Eを最適化し、I,Q成分を再分離して90°位相をずらす処理を行うようにする。
【0075】
次に、上述した実施形態の応用例について説明する。
DP−QPSK方式のように偏波多重を用いた多値変調方式では、外部からの影響等によりX偏波およびY偏波の伝送状態を安定に保つことができずに、受信側でX偏波をY偏波として誤検出する場合がある。この場合、復号されたビット列は意味をなさないため、当該受信状態の変化をより早期に検出して再トラッキングすることが望まれる。上述した実施形態では、1つのOTUkフレーム内のFASに挿入したレーンIDを識別して、物理レーンと論理レーンの対応表を作成しているので、該対応表の不一致が確認されるのは1フレーム周期に1回となる。このため、上記のような受信状態の変化を検出できるタイミングは最短で1フレーム時間となる。
【0076】
上記タイミングを短縮して受信状態の変化をより早期に検出するための応用例として、ここでは、レーンIDを使用した検出手法に加えて、トレーニングバイトを用いた検出シーケンスを併用する。図26は、上記トレーニングバイトを挿入した状態のOTUkフレームの一例である。図26の例は、OTUkフレームのRES(Reserved for future international standardization)に割り当てられるビットを使用してトレーニングバイトを生成する。具体的には、図26の上段に示す既存のOTUkフレームのオーバーヘッド部内の斜線付きの領域を並び替えて、13列および14列に該当する領域にトレーニングバイトを割り当てている。このトレーニングバイトを割り当てた領域は、FASと同様に非スクランブル領域となるように設定する。
【0077】
上記トレーニングバイトは、例えば、OTUkフレームのデータ列を複数の論理レーンに並べ替えたときに、トレーニングバイトが配置される論理レーンがX偏波およびY偏波のいずれで伝送されるのかを示す偏波情報などを含むのが好ましい。また、上述したレーンIDと同様な情報をトレーニングバイトが含んでいてもよい。上記情報は、CRC(Cyclic Redundancy Check)等のコードで保護して、トレーニングバイトの確度を向上させることも可能である。
【0078】
図27は、上記トレーニングバイトに対応した識別補償部222の構成例を示すブロック図である。この構成例では、上述した実施形態における識別補償部222の構成(図17)について、各物理レーンPL1〜PL20に対応したFAS検出部222Bに代えて、FASだけでなくトレーニングバイトの検出機能を備えたFAS・トレーニングバイト検出部222Eが設けられる。なお、FAS・トレーニングバイト検出部222E以外の識別補償部222の構成は、上述した実施形態の場合と同様である。
【0079】
上記トレーニングバイトに対応した識別補償部222による、FASおよびトレーニングバイトの検出シーケンスは、上述した実施形態の場合のFASの検出シーケンス(図18)において、各物理レーンに対応したデータ列(論理反転なし、ありの双方)に対し、FASに挿入されたレーンIDを識別する処理(S11,S13)と同時に、トレーニングバイトを識別する処理も行うようにすればよい。トレーニングバイトの識別結果が所期の情報とは相違する場合、受信状態の変化を検出して偏波再トラッキングの処理を実行する。
【0080】
上記のようにしてトレーニングバイトを付加することにより、受信状態の変化を検出するタイミングがOTUkフレームの1フレーム時間内に2回以上に増えて、検出周期が短縮されるため、X偏波およびY偏波の伝送状態が変化することによる受信状態の変化をより早期に検出して偏波再トラッキングを行うことが可能になる。また、レーンIDおよびトレーニングバイトの各識別結果を用いて物理レーンと論理レーンの対応表を作成することができ、対応表の完成までに要する処理時間をより短くすることも可能になる。
【0081】
なお、上記応用例では、OTUkフレームのオーバーヘッド部内の一部領域を並び替え、RESに割り当てられるビットを使用してトレーニングバイトを生成する一例を示したが、既存のフレームフォーマットのまま(並べ替えなし)で、RESの領域にトレーニングバイトを格納するようにしてもよい。また、RESに代えて、OTUkフレームのペイロード部に含まれるFS(Fixed Stuff)の領域にトレーニングバイトを格納することも可能である。
【0082】
以上の実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能な多値変調方式の光信号を伝送路に送信する送信ユニットと、前記伝送路を伝搬した前記光信号を受信処理する受信ユニットと、を備えた光伝送システムであって、
前記送信ユニットは、
所定のフレームに格納されたデータ列を、複数の論理レーンに並び替えてフレーム分割すると共に、前記フレームのデータ列の先頭が前記フレーム分割後に前記複数の論理レーンのうちのいずれの論理レーンに配置されるかを識別可能にするレーンIDを、前記フレームのオーバーヘッド部内の非スクランブル領域に挿入するフレーム分割手段と、
前記フレーム分割手段で複数の論理レーンに並び替えられたデータ列を前記多値変調方式に応じて多重化し、該多重化したデータ信号に従って光を変調して前記多値変調方式の光信号を生成して前記伝送路に送信する光送信手段と、を備え、
前記受信ユニットは、
前記伝送路を伝搬した前記光信号を受信して電気信号に変換し、該電気信号の復号処理を行って受信データを再生した後、該受信データのビット列を前記複数の論理レーンと同数の物理レーンに分割する光受信手段と、
前記光受信手段で分割された前記各物理レーンのデータ列に含まれる前記レーンIDをそれぞれ識別し、該識別結果に基づいて、前記物理レーン毎にビットの反転およびレーンの入れ替わりを検出して前記各物理レーンのデータ列が前記各論理レーンのデータ列と同じ状態になるように補償し、該補償後の各論理レーンのデータ列を並べ替えて前記フレームを再生すると共に、前記レーンIDを前記非スクランブル領域から取り除くフレーム再生手段と、を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【0083】
(付記2) 付記1に記載の光伝送システムであって、
前記フレーム分割手段は、ITU−Tに規定されたOTUkフレームのFASに含まれる少なくとも1つのバイトを前記レーンIDに置き換えることを特徴とする光伝送システム。
【0084】
(付記3) 付記2に記載の光伝送システムであって、
前記フレーム再生手段は、前記各物理レーンのデータ列のそれぞれについて、該データ列を論理反転させたデータ列および論理反転させていないデータ列に対して、共通の検出パターンを用いて前記FASの検出を行い、当該FASに含まれる前記レーンIDを識別することを特徴とする光伝送システム。
【0085】
(付記4) 付記2に記載の光伝送システムであって、
前記フレーム再生手段は、前記各物理レーンのデータ列のそれぞれについて、第1検出パターンおよび該第1検出パターンを論理反転させた第2検出パターンを用いて前記FASの検出を行い、当該FASに含まれる前記レーンIDを識別することを特徴とする光伝送システム。
【0086】
(付記5) 付記1〜4のいずれか1つに記載の光伝送システムであって、
前記フレーム再生手段は、前記各物理レーンのデータ列に含まれる前記レーンIDの識別結果に重複が生じているとき、前記光受信手段に対して再トラッキング処理を指示することを特徴とする光伝送システム。
【0087】
(付記6) 付記1〜5のいずれか1つに記載の光伝送システムであって、
前記フレーム分割手段は、前記複数の論理レーンへの1つのフレームデータの並べ替えが終わり、次のフレームデータの並べ替えに移る際に、前のフレームデータの先頭を配置した論理レーンの番号に対して、次のフレームデータの先頭を配置する論理レーンの番号を1つ先に進め、1フレーム毎に論理レーンを回転させることを特徴とする光伝送システム。
【0088】
(付記7) 付記6に記載の光伝送システムであって、
前記レーンIDは、前記フレームの番号に対応した連続値を割り当てることを特徴とする光伝送システム。
【0089】
(付記8) 付記1〜7のいずれか1つに記載の光伝送システムであって、
前記光送信手段は、多値の位相変調と偏波多重とを組み合わせた多値変調方式の光信号を生成することを特徴とする光伝送システム。
【0090】
(付記9) 付記8に記載の光伝送システムであって、
前記フレーム再生手段は、前記各物理レーンのデータ列に含まれる前記レーンIDの識別結果に重複が生じているとき、前記光受信手段に対して異なる偏波状態への再トラッキング処理を指示することを特徴とする光伝送システム。
【0091】
(付記10) 付記1〜7のいずれか1つに記載の光伝送システムであって、
前記光送信手段は、位相と振幅を組み合わせた多値の直交振幅変調方式の光信号を生成することを特徴とする光伝送システム。
【0092】
(付記11) 付記10に記載の光伝送システムであって、
前記フレーム再生手段は、前記各物理レーンのデータ列に含まれる前記レーンIDの識別結果に異常が生じているとき、前記光受信手段に対して同相位相成分および直交位相成分の再分離処理を指示することを特徴とする光伝送システム。
【0093】
(付記12) 付記1〜11のいずれか1つに記載の光伝送システムであって、
前記フレーム分割手段は、前記フレーム内の前記レーンIDを挿入する領域とは異なる予備領域にトレーニングバイトを挿入し、
前記フレーム再生手段は、前記各物理レーンのデータ列に含まれる前記レーンIDおよび前記トレーニングバイトをそれぞれ識別し、該識別結果に基づいて、前記物理レーン毎にビットの反転およびレーンの入れ替わりを検出することを特徴とする光伝送システム。
【0094】
(付記13) 付記12に記載の光伝送システムであって、
前記フレーム分割手段は、前記フレームのオーバーヘッド部内の予備領域を同一列に並び替えて前記トレーニングバイトを挿入することを特徴とする光伝送システム。
【0095】
(付記14) 付記12または13に記載の光伝送システムであって、
前記トレーニングバイトは、前記フレーム分割後に配置される前記論理レーンが伝送される偏波情報を含むことを特徴とする光伝送システム。
【0096】
(付記15) 1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能な多値変調方式の光信号を伝送路に送信し、前記伝送路を伝搬した前記光信号を受信処理する光伝送方法であって、
所定のフレームに格納されたデータ列を、複数の論理レーンに並び替えてフレーム分割すると共に、前記フレームのデータ列の先頭が前記フレーム分割後に前記複数の論理レーンのうちのいずれの論理レーンに配置されるかを識別可能にするレーンIDを、前記フレームのオーバーヘッド部内の非スクランブル領域に挿入し、
前記複数の論理レーンに並び替えたデータ列を前記多値変調方式に応じて多重化し、該多重化したデータ信号に従って光を変調して前記多値変調方式の光信号を生成して前記伝送路に送信し、
前記伝送路を伝搬した前記光信号を受信して電気信号に変換し、該電気信号の復号処理を行って受信データを再生した後、該受信データのビット列を前記複数の論理レーンと同数の物理レーンに分割し、
前記各物理レーンのデータ列に含まれる前記レーンIDをそれぞれ識別し、該識別結果に基づいて、前記物理レーン毎にビットの反転およびレーンの入れ替わりを検出して前記各物理レーンのデータ列が前記各論理レーンのデータ列と同じ状態になるように補償し、該補償後の各論理レーンのデータ列を並べ替えて前記フレームを再生すると共に、前記レーンIDを前記非スクランブル領域から取り除くことを特徴とする光伝送方法。
【符号の説明】
【0097】
1…OTUk伝送装置
1A…送信ユニット
1B…受信ユニット
2…伝送路
11…クライアント信号受信部
12,24…クライアント信号処理部
13,23…OTUkフレーム処理部
14,22…OTL処理部
15…光送信部
21…光受信部
25…クライアント信号送信部
141…レーンID挿入部
142…レーン分配部
152…符号化処理部
153…ビット多重部
154…光送信機
211…光受信機
212…受信信号処理部
212A…ADコンバータ
212B…波形歪み補償回路
212C…偏波分離回路
212D…X偏波用位相同期回路
212E…Y偏波用位相同期回路
212F…X偏波用識別回路
212E…Y偏波用識別回路
213…復号処理部
222…識別補償部
222A…論理反転部
222B…FAS検出部
222C…レーン同期検出部
222D…マトリクススイッチ部
222E…FAS・トレーニングバイト検出部
223…OTUkフレーム再生部
CL…クライアント装置
LL1〜LL20…論理レーン
PL1〜PL20…物理レーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能な多値変調方式の光信号を伝送路に送信する送信ユニットと、前記伝送路を伝搬した前記光信号を受信処理する受信ユニットと、を備えた光伝送システムであって、
前記送信ユニットは、
所定のフレームに格納されたデータ列を、複数の論理レーンに並び替えてフレーム分割すると共に、前記フレームのデータ列の先頭が前記フレーム分割後に前記複数の論理レーンのうちのいずれの論理レーンに配置されるかを識別可能にするレーンIDを、前記フレームのオーバーヘッド部内の非スクランブル領域に挿入するフレーム分割手段と、
前記フレーム分割手段で複数の論理レーンに並び替えられたデータ列を前記多値変調方式に応じて多重化し、該多重化したデータ信号に従って光を変調して前記多値変調方式の光信号を生成して前記伝送路に送信する光送信手段と、を備え、
前記受信ユニットは、
前記伝送路を伝搬した前記光信号を受信して電気信号に変換し、該電気信号の復号処理を行って受信データを再生した後、該受信データのビット列を前記複数の論理レーンと同数の物理レーンに分割する光受信手段と、
前記光受信手段で分割された前記各物理レーンのデータ列に含まれる前記レーンIDをそれぞれ識別し、該識別結果に基づいて、前記物理レーン毎にビットの反転およびレーンの入れ替わりを検出して前記各物理レーンのデータ列が前記各論理レーンのデータ列と同じ状態になるように補償し、該補償後の各論理レーンのデータ列を並べ替えて前記フレームを再生すると共に、前記レーンIDを前記非スクランブル領域から取り除くフレーム再生手段と、を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の光伝送システムであって、
前記フレーム分割手段は、ITU−Tに規定されたOTUkフレームのFASに含まれる少なくとも1つのバイトを前記レーンIDに置き換えることを特徴とする光伝送システム。
【請求項3】
請求項2に記載の光伝送システムであって、
前記フレーム再生手段は、前記各物理レーンのデータ列のそれぞれについて、該データ列を論理反転させたデータ列および論理反転させていないデータ列に対して、共通の検出パターンを用いて前記FASの検出を行い、当該FASに含まれる前記レーンIDを識別することを特徴とする光伝送システム。
【請求項4】
請求項2に記載の光伝送システムであって、
前記フレーム再生手段は、前記各物理レーンのデータ列のそれぞれについて、第1検出パターンおよび該第1検出パターンを論理反転させた第2検出パターンを用いて前記FASの検出を行い、当該FASに含まれる前記レーンIDを識別することを特徴とする光伝送システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の光伝送システムであって、
前記フレーム再生手段は、前記各物理レーンのデータ列に含まれる前記レーンIDの識別結果に重複が生じているとき、前記光受信手段に対して再トラッキング処理を指示することを特徴とする光伝送システム。
【請求項6】
1シンボル時間に多ビットの情報を伝送可能な多値変調方式の光信号を伝送路に送信し、前記伝送路を伝搬した前記光信号を受信処理する光伝送方法であって、
所定のフレームに格納されたデータ列を、複数の論理レーンに並び替えてフレーム分割すると共に、前記フレームのデータ列の先頭が前記フレーム分割後に前記複数の論理レーンのうちのいずれの論理レーンに配置されるかを識別可能にするレーンIDを、前記フレームのオーバーヘッド部内の非スクランブル領域に挿入し、
前記複数の論理レーンに並び替えたデータ列を前記多値変調方式に応じて多重化し、該多重化したデータ信号に従って光を変調して前記多値変調方式の光信号を生成して前記伝送路に送信し、
前記伝送路を伝搬した前記光信号を受信して電気信号に変換し、該電気信号の復号処理を行って受信データを再生した後、該受信データのビット列を前記複数の論理レーンと同数の物理レーンに分割し、
前記各物理レーンのデータ列に含まれる前記レーンIDをそれぞれ識別し、該識別結果に基づいて、前記物理レーン毎にビットの反転およびレーンの入れ替わりを検出して前記各物理レーンのデータ列が前記各論理レーンのデータ列と同じ状態になるように補償し、該補償後の各論理レーンのデータ列を並べ替えて前記フレームを再生すると共に、前記レーンIDを前記非スクランブル領域から取り除くことを特徴とする光伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−4207(P2011−4207A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146056(P2009−146056)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】