光伝送構造体
【課題】 信頼性の高い光導波路を有する光伝送構造体を提供する。
【解決手段】 発光伝送構造体20は、一方主面35に第1開口35a,他方主面36に第2開口36aを備える第1貫通孔30aを有する基板30と、第1貫通孔30aの内部に位置し、基板30よりも熱膨張係数の大きい材料からなるとともに、第1開口35aの側から第2開口36aの側まで貫通する第2貫通孔40bを有する第1光学部材40と、第2貫通孔40bの内部に位置し、第1光学部材40の屈折率よりも大きい屈折率を有する第2光学部材50とを有し、第1貫通孔30aは、基板30の厚み方向において、第1開口35aから続く第1領域37と、第1領域37から第2開口36a側に続き、第1領域37よりも断面積が小さい第2領域38とを有する。
【解決手段】 発光伝送構造体20は、一方主面35に第1開口35a,他方主面36に第2開口36aを備える第1貫通孔30aを有する基板30と、第1貫通孔30aの内部に位置し、基板30よりも熱膨張係数の大きい材料からなるとともに、第1開口35aの側から第2開口36aの側まで貫通する第2貫通孔40bを有する第1光学部材40と、第2貫通孔40bの内部に位置し、第1光学部材40の屈折率よりも大きい屈折率を有する第2光学部材50とを有し、第1貫通孔30aは、基板30の厚み方向において、第1開口35aから続く第1領域37と、第1領域37から第2開口36a側に続き、第1領域37よりも断面積が小さい第2領域38とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の厚み方向に延びる光導波路を有する光伝送構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理能力の向上を図るべく、集積回路素子などの電気素子の間の電気通信を光伝送に変更することが検討されている。例えば、特許文献1には、基板の厚み方向に延びる複数の光導波路を有する光伝送構造体に、複数の発光素子などの光電変換素子を実装した光伝送モジュールが開示されている。この光導波路は、基板を厚み方向に貫通する複数の貫通孔の各々に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−294857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された光伝送構造体では、周囲の温度変動によって生じる熱応力が貫通孔の開口に集中し、基板から光導波路が剥離してしまう場合があった。
【0005】
本発明は、上述の事情のもとで考え出されたものであって、信頼性の高い光導波路を有する光伝送構造体および光伝送モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る光伝送構造体は、一方主面に第1開口および他方主面に第2開口を備える第1貫通孔を有する基板と、前記第1貫通孔の内部に位置し、前記基板よりも熱膨張係数の大きい材料からなるとともに、前記第1開口の側から前記第2開口の側まで貫通する第2貫通孔を有する第1光学部材と、前記第2貫通孔の内部に位置し、前記第1光学部材の屈折率よりも大きい屈折率を有する第2光学部材とを有し、前記第1貫通孔は、前記基板の厚み方向において、前記第1開口から続く第1領域と、前記第1領域から前記第2開口側に続き、前記第1領域よりも断面積が小さい第2領域とを有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、信頼性の高い光導波路を有する光伝送構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る光伝送モジュールの1つの実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係る光伝送構造体の1つの実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図3】図2に示したIII−III線に沿った要部断面図である。
【図4】本発明に係る光伝送構造体の製造工程の1つの実施形態を示す要部断面図である。
【図5】図4に示した光伝送構造体の製造工程の続きの工程を示す要部断面図である。
【図6】図5に示した光伝送構造体の製造工程の続きの工程を示す要部断面図である。
【図7】本発明に係る光伝送構造体の他の実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図8】図7に示したVIII−VIII線に沿った要部断面図である。
【図9】本発明に係る光伝送構造体の他の実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図10】図9に示したX−X線に沿った要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<光伝送構造体および光伝送モジュールの第1の実施形態>
以下、本発明に係る光伝送構造体および光伝送モジュールの一実施形態として光伝送構造体20および光伝送モジュール10を例示し、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1に示した光伝送モジュール10は、光伝送構造体20と、光素子としての光電変換素子11と、回路素子12とを備えている。
【0011】
図2,3に示した光伝送構造体20は、主基板30と、第1光学部材40と、複数の第2光学部材50と、電気配線60とを備えている。
【0012】
主基板30は、第1光学部材40、第2光学部材50、および電気配線60を支持する機能を担っている。この主基板30の厚みとしては、例えば0.1〜2〔mm〕の範囲が挙げられる。この主基板30としては、例えばガラス基材エポキシ樹脂基板、ガラス基材銅張基板、ポリイミド樹脂基板、セラミック基板などが使用される。この主基板30は、単層の基板、または複数の基板を積層した積層体として形成される。本実施形態では、複層のセラミック基板を採用している。本実施形態の主基板30は、複数の副基板31が積層されて構成されている。
【0013】
この主基板30は、厚み方向に貫通している貫通孔を有している。ここでは、この貫通孔を第1貫通孔30aとしている。この第1貫通孔30aは、主基板30の2つの主面35,36で開口している。一方側の主面35における開口を第1開口35aとし,他方主面36における開口を第2開口36aとする。この第1開口35aと第2開口36aとが、第1貫通孔30aの上面と下面とを構成する。この第1貫通孔30aは、副基板31に設けられている副貫通孔31aが連通して構成されている。この副貫通孔31aは、副基板31の各々に設けられており、副基板31を厚み方向に貫通している。この厚み方向を図3ではD1,D2方向として示している。
【0014】
そして、基板30の厚み方向において、第1貫通孔30aは、第1領域37と第2領域38とを有する。第1領域37は、第1開口35a側に位置している。第1領域37の側壁は主面35側に向かうにつれて徐々に広がる形状となっている。言い換えると、第1領域37は、基板30の主面35に平行な断面でみたときの断面積が、主面35側から、主面36側に向かうにつれ、連続的に小さくなっている。第2領域38は、基板30の厚み方向において、第1領域37から第2開口36a側に続くように形成され、第1領域37よりも、基板30の主面35に平行な断面における断面積が小さくなっている。
【0015】
なお、この例では第1開口35aは細長い形状であり、第1領域37の第1開口35aの長手方向(長軸方向、図2におけるD3,D4方向)に伸びる仮想線(図2におけるIII−III線)を含む厚み方向(D1,D2方向)の断面をみたときに、側面が第1開口35側に向けて広がるよう傾斜している。すなわち、基板30の厚み方向における断面でみたときに、第1貫通孔30aの幅が、第2領域38よりも大きく、かつ、1開口35aに向けて徐々に広がっている。
【0016】
このように、第1領域37を設けることにより、主基板30の主面35側において第1光学部材40との接触する部位に集中していた大きな応力を低減することができる。すなわち、従来は、第1光学部材40が熱収縮する際に、熱膨張係数の大きく異なる主基板30と第1光学部材40とが接触していることから、第1光学部材40に主基板30に比べて大きく収縮するような力が働くが、主基板30と接していることにより変位することができずにクラック等が発生してしまっていた。しかしながら、第1貫通孔30aに第1領域37を設けたことにより、最も応力のかかる第1開口35a側に位置する表面、端部において、その部位に存在する第1光学部材40を引っ張る第1光学部材40の量を減らすことができる。これにより、主基板30の第1貫通孔30aの開口との接触部に集中していた応力の一部を減らすことができる。
【0017】
この第1貫通孔30aの内には、第1光学部材40が設けられている。
【0018】
第1光学部材40は、第1貫通孔30aの内部に設けられている。
【0019】
この第1光学部材40には、第1開口35aの側から他方の主面36に向かって貫通している貫通孔が設けられている。ここでは、この複数の貫通孔を第2貫通孔40bとしている。この第2貫通孔40bは、第1貫通孔30aの内側に位置している。この第2貫通孔40bは、複数設けられており、厚み方向と直交する1つの方向に沿って並んでいる。この1つの方向を本実施形態では配列方向としている。この配列方向を図1〜3ではD3,D4方向として示している。この配列方向は、主基板30の面方向のうち1方向に延びている。
【0020】
この第2貫通孔40bの各々の内には、第2光学部材50が設けられている。この第2光学部材50は、複数が配列方向に沿って配列され、各々が厚み方向に沿って延びている。この第2光学部材50の配列方向における間隔としては、例えば62.5〜250〔μm〕の範囲が挙げられる。また、配列方向に沿った第2光学部材50の径としては、例えば10〜100〔μm〕の範囲が挙げられる。
【0021】
第2光学部材50は、光伝送構造体20の光導波路20aとしての機能を有している。この第2光学部材50の屈折率は、第1光学部材40の屈折率に比べて大きくなっている。このように、第1光学部材40の屈折率に比べて第2光学部材50の屈折率を大きくすることで、第2光学部材50が光導波路20aとして機能することができるようになる。つまり、この第1光学部材40は光導波路20aのいわゆるクラッドとして機能し、第2光学部材50は光導波路20aのいわゆるコアとして機能している。この第2光学部材50の屈折率としては、第1光学部材40の屈折率に対しての比屈折率差としては、例えば0.8〜4〔%〕の範囲が挙げられる。
【0022】
この第2光学部材50は、1つの第1貫通孔30aの内に複数設けられている。この第2光学部材50は、1つの第1貫通孔の内に1つの第2光学部材を設ける場合に比べて、中心間の間隔を狭くすることができる。つまり、本実施形態の光伝送構造体20では、2つの第2貫通孔40bの間に第1光学部材40が介在するだけでよいので、中心間の間隔を狭くすることができる。さらに、本実施形態のように、主基板30として積層型セラミック基板を採用する際には、複数の副基板31を積層する際の積層ズレに対する許容誤差を大きくすることができる。
【0023】
この第1光学部材40を形成する材料としては、種々の樹脂が挙げられ、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などが含まれる。本実施形態では、第1光学部材40を形成する材料として、感光性を有する樹脂を採用している。このように感光性を有する樹脂を採用することで、フォトリソグラフィ技術を採用して第2貫通孔40bを形成することができる。
【0024】
フォトリソグラフィ技術を採用して第2貫通孔40bを形成する場合、次の利点がある。第1に、複数の第2貫通孔40bの間での相対的な位置ズレを極めて小さくすることができる点が挙げられる。複数の第2貫通孔40bを一度の露光によって一括形成することができるからである。第2貫通孔40bの位置ズレを小さくすると、他の光導波路に光学的に接続する際に、当該他の光導波路に対して第2貫通孔40bの内部を伝わる光を良好に伝送することができる。当業者の間では、複数の光導波路の間の相対的なズレが5〔μm〕以下であることが好ましいとされている。フォトリソグラフィ技術を採用する場合のズレは、第2貫通孔40bに相当するフォトマスクにおけるマスク部分の位置ズレに依存することになる。このフォトマスクの製造誤差は、一般的に1〔μm〕未満とされているので、第2貫通孔40bの位置ズレを5〔μm〕以下に抑えることが容易に可能である。
【0025】
第2に、第2貫通孔40bの内壁を滑らかにすることができる点が挙げられる。直進性の高い光を利用して第2貫通孔40bを形成するからである。内壁面を滑らかにすることで、第2貫通孔40bの内部を伝わる光の損失を小さくすることができる。当業者の間では、内部を伝わる光の波長に対して、内壁面の粗さが十分に小さいことが好ましいとされている。
【0026】
電気配線60は、第2光学部材50に光学的に結合している光電変換素子11に電気的に接続されている。この電気配線60は、主基板30のD1方向側の表面に設けられている表面配線層61を含んでいる。この電気配線60は、副基板31を貫通して形成されている貫通導体、および2つの副基板31の間に形成される中間配線層が含まれていてもよい。この貫通導体としては、中央が中空となった形状でも、また中央が導電ペーストなどにより埋められた構成でもかまわない。この貫通導体は、めっき法、金属膜の蒸着法、導電性樹脂の注入法などの方法を用いて形成できる。
【0027】
上述のように、電気配線60の表面配線層61には、光電変換素子11が電気的に接続されている。本実施形態の光電変換素子11は、電気配線60の表面配線層61に金属バンプ、導電性接着剤などによって実装される。この光電変換素子11と表面配線層61との接続部を除く他の部位は、保護層で覆われていてもよい。
【0028】
この光電変換素子11は、入力された電気信号に応じて光を発する機能、または入射された光に応じて電気信号に変換する機能を有している。この光電変換素子11は、光導波路20aに光学的に結合している。本実施形態の光電変換素子11は、電気配線60を介して入力された電気信号に応じて光導波路20aに光信号を伝送する機能、または光導波路20aを介して入力された光信号に応じて電気配線60に電気信号を伝送する機能を担っている。
【0029】
上述の光を発する光電変換素子11としては、種々の発光素子が適用できる。この光電変換素子11としては、例えば垂直共振器面発光レーザ(VCSEL;Vertical Cavity Surface Emitting Laser)が好ましい。光を受ける光電変換素子11としては、例えばフォトダイオード(PD;Photo Diode)など種々の受光素子が適用できる。この受光素子としてPDを採用する場合は、応答速度の速い素子が好ましく、例えばPIN−PDなどが挙げられる。
【0030】
光電変換素子11は、1つの素子に1つの光電変換部を有していても、1つの素子に複数の光電変換部を有していてもよい。本実施形態の光電変換素子11は、1つの素子に1つの光電変換部を有している。1つの光電変換部は、1つの第2光学部材50に対応して配置されている。この1つの光電変換部は、1つの光導波路20aに対応して配置されている。
【0031】
回路素子12は、電気配線60を介して光電変換素子11と電気的に接続されている。この回路素子12は、光電変換素子11の担う機能によって、担う機能が異なっている。光電変換素子11が光を発する場合、回路素子12は、光電変換素子11に変調された電気信号(変調電圧)を入力して、光電変換素子11の発光強度を制御している。また、光電変換素子11が光を受ける場合、回路素子12は、光電変換素子11で受光する光信号強度に応じて出力される電流信号を電圧信号に変換して出力している。また、この回路素子12は、信号の波形を制御したり、ノイズ成分を除去したりする機能を併せ持っていてもよい。なお、光電変換素子11で発する電気信号の出力が小さい場合、信号を増幅する機能を担っていても良い。この信号増幅機能は、光電変換素子11自体が有していてもよい。また、この回路素子12は、論理演算および数値計算を行う機能を有していてもよい。
【0032】
<光伝送構造体の製造方法の実施形態>
以下、本発明に係る光伝送構造体の製造方法の一実施形態として光伝送構造体20の製造方法を例示し、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
まず、主基板30を準備する。本実施形態の主基板30は、次の工程を経て製造される。まず、図4(a)に示したように、焼成することで副基板31となる複数のグリーンシート31Xを準備する。次に、図4(b)に示したように、このグリーンシート31Xに副貫通孔31aとなるシート孔31Xaを開ける。このときに、最上層のグリーンシート31Xxのシート孔31Xxaに、シートの主面と平行な面でみた断面積が他のシート孔31Xaよりも大きい領域を有するように加工する。このシート孔31Xa,31Xxaの形成と併せて、電気配線60の貫通導体に用いられる貫通孔が必要に応じて形成される。これらの孔開けは、種々の方法で形成でき、例えば、ピンおよび金型でシートを打ち抜いたり、レーザ光で削ったりして形成できる。次に、このグリーンシート31X、31Xxに電気配線60となる金属ペーストを配置する。この金属ペーストは、例えばスクリーン印刷技術を利用したり、インクジェット印刷技術を採用したりして形成することができる。この電気配線60となる金属ペーストとしては、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銀(Ag)、および銅(Cu)などの金属を含有させたものが挙げられる。次に、図4(c)に示したように、シート孔31Xa,31Xxaが連通するようにグリーンシート31Xを積層する。次に、積層したグリーンシート31Xを焼成して、図5(a)に示したように、第1貫通孔30aを有する主基板30を形成する。このグリーンシート31Xの焼成と併せて金属ペーストを焼成し、電気配線60を形成する。
【0034】
次に、図5(b)に示したように、主基板30の第1貫通孔30aに、硬化することによって第1光学部材40となる感光性材料40Xを充填する。この感光性材料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、およびポリイミド樹脂などを基材としたものが挙げられる。本実施形態では、露光することで現像液に対しての溶解性が低下するネガ型のフォトレジストを採用する。次に、感光性材料40Xをプリベークをする。このプリベーク後に感光性材料40Xを露光する。この露光の際には、第2貫通孔40bとなる領域に光が照射されないようにしたフォトマスクを採用する。このようなフォトマスクを採用することによって、第2貫通孔40bとなる領域を一括して形成することができる。この露光の際の光源としては、例えば、各種ランプ、レーザ、および電子線などの種々のものが採用できる。次に、露光した感光性材料40Xをポストベークする。次に、ポストベークした感光性材料40Xを現像液で現像して、図6(a)に示したように、第2貫通孔40bを有する第1光学部材40を形成する。
【0035】
次に、第1光学部材40の第2貫通孔40bに第2光学部材50となる透光性材料を充填する。次にこの透光性材料を硬化して、図6(b)に示したように、第2光学部材50を形成する。
【0036】
上述の工程を経て、図6(b)に示した光伝送構造体20を製造することができる。
【0037】
<光伝送構造体の第2の実施形態>
以下、本発明に係る光伝送構造体および光伝送モジュールの他の実施形態として光伝送構造体20Aを例示し、図面を参照しつつ説明する。
【0038】
図7,8に示した光伝送構造体20Aは、主基板30Aと、第1光学部材40と、複数の第2光学部材50と、電気配線60とを備えている。この光伝送構造体20Aは、主基板30Aを備える点において光伝送構造体20の構成と異なっている。この光伝送構造体20Aは、光電変換素子11を例示した光素子、および回路素子12を実装して光伝送モジュールとすることが可能である。
【0039】
主基板30Aは、第1貫通孔Aaを有している点において主基板30の構成と異なっている。この第1貫通孔30Aaは、主基板30Aの厚み方向において、第1領域37A,第2領域38A,第3領域39Aを有する。第1領域37A,第2領域38Aは、第1領域37,第2領域38と同様である。第3領域39Aは、主基板30Aの厚み方向において、第2領域38Aから第2開口36Aaまで続くように位置している。そして、第3領域39Aの基板30Aの一方主面35Aと平行な面における断面積が、第2領域38Aに比べ大きくなっている。このような形状とすることにより、主基板30Aの両主面35A,36Aにおいて、その開口35Aa,36Aa付近に集中する熱膨張係数の差に起因する応力を減少させることができる。
【0040】
<光伝送構造体の第3の実施形態>
以下、本発明に係る光伝送構造体および光伝送モジュールの他の実施形態として光伝送構造体2Bを例示し、図面を参照しつつ説明する。
【0041】
図9,10に示した光伝送構造体20Bは、主基板30と、第1光学部材40Bと、複数の第2光学部材50と、電気配線60とを備えている。この光伝送構造体20Bは、第1光学部材40Bを備える点において光伝送構造体20の構成と異なっている。この光伝送構造体20Bは、光電変換素子11を例示した光素子、および回路素子12を実装して光伝送モジュールとすることが可能である。
【0042】
第1光学部材40Bは、一部が第1貫通孔30aの第1開口35aの側の表面に窪み部40Baが設けられている点で、第1光学部材40と異なる。この窪み部40Baは、他の主面36側に窪んでいる。この窪み部40Baを設けることによって、主基板30の第1貫通孔30aの第1開口35aとの接触部に集中していた応力の一部を当該窪み部40Baに分散することができる。この窪み部40Baは、第1貫通孔30aの内に窪んでおり、底面が主基板30の一方の主面35よりも窪んでいる。この光伝送構造体20Bでは、第1貫通孔30aの開口35aよりも窪んだ位置にも応力を分散することができる。なお、このような窪み部40Baは、例えば図5(b)において、感光性材料をプリベークする際に第1主面35側から押圧することにより形成することができる。
【0043】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。
【0044】
上述の光伝送構造体20の製造方法では、ネガ型のフォトレジストを採用しているが、露光することで現像液に対しての溶解性が増加するポジ型のフォトレジストを採用してもよい。ポジ型を採用する場合には、露光する領域も併せて変更する。
【0045】
上述の光伝送構造体20の製造方法では、主基板30としてセラミック基板を採用した製造方法を記載しているが、有機基板を採用して光伝送構造体を製造してもよい。有機基板を採用して光伝送構造体を製造する場合は、副基板の積層後に、基体を打ち抜き加工して、第1貫通孔を形成してもよい。このようにして、副基板を一括で打ち抜く場合は副貫通孔の位置ズレを低減することができる。
【0046】
前述の光伝送構造体20の第1領域37は、基板30の厚み方向において、主面35と平行な面における断面積が徐々に変化する構成としたが、第1領域37において一定でもよいし、段階的に変化するものとしてもよい。
【0047】
さらに、前述の光伝送構造体20の第1領域37は、基板30の厚み方向において、側面が傾斜面となっていたが、第1領域37の全てにおいて傾斜面となっていなくてもよい。具体的には、第1貫通孔30aが細長い形状である場合には、その長手方向の両端部において特に応力が集中するため、長手方向のみにおいて側壁を傾斜面としてもよい。言い換えると、図2のD5、D6方向における断面をみたときには、第1貫通孔30aの側面(内壁面)は垂直であってもよい。
【0048】
また、第1光学部材40は、一部が第1貫通孔30aの第1開口35aの一方から突出してもよいし、当該突出した部位が第1貫通孔30aの開口の周囲に延在していてもよい。このような構成により、周囲の温度変化による熱応力を分散することができるので好ましい。
【符号の説明】
【0049】
10・・・光伝送モジュール
11・・・光電変換素子
12・・・回路素子
20・・・光伝送構造体
20a・・・光導波路
21・・・光配線基板
30・・・主基板(基板)
30a・・・第1貫通孔
31・・・副基板
31X・・・グリーンシート
31a・・・副貫通孔
31Xa・・・シート孔
35・・・一方主面
35a・・・第1開口
36・・・他方主面
36a・・・第2開口
37・・・第1領域
38・・・第2領域
40・・・第1光学部材
40X・・・感光性材料
40a・・・窪み部
40b・・・第2貫通孔
50・・・第2光学部材
60・・・電気配線
61・・・表面配線層
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の厚み方向に延びる光導波路を有する光伝送構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理能力の向上を図るべく、集積回路素子などの電気素子の間の電気通信を光伝送に変更することが検討されている。例えば、特許文献1には、基板の厚み方向に延びる複数の光導波路を有する光伝送構造体に、複数の発光素子などの光電変換素子を実装した光伝送モジュールが開示されている。この光導波路は、基板を厚み方向に貫通する複数の貫通孔の各々に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−294857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された光伝送構造体では、周囲の温度変動によって生じる熱応力が貫通孔の開口に集中し、基板から光導波路が剥離してしまう場合があった。
【0005】
本発明は、上述の事情のもとで考え出されたものであって、信頼性の高い光導波路を有する光伝送構造体および光伝送モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る光伝送構造体は、一方主面に第1開口および他方主面に第2開口を備える第1貫通孔を有する基板と、前記第1貫通孔の内部に位置し、前記基板よりも熱膨張係数の大きい材料からなるとともに、前記第1開口の側から前記第2開口の側まで貫通する第2貫通孔を有する第1光学部材と、前記第2貫通孔の内部に位置し、前記第1光学部材の屈折率よりも大きい屈折率を有する第2光学部材とを有し、前記第1貫通孔は、前記基板の厚み方向において、前記第1開口から続く第1領域と、前記第1領域から前記第2開口側に続き、前記第1領域よりも断面積が小さい第2領域とを有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、信頼性の高い光導波路を有する光伝送構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る光伝送モジュールの1つの実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係る光伝送構造体の1つの実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図3】図2に示したIII−III線に沿った要部断面図である。
【図4】本発明に係る光伝送構造体の製造工程の1つの実施形態を示す要部断面図である。
【図5】図4に示した光伝送構造体の製造工程の続きの工程を示す要部断面図である。
【図6】図5に示した光伝送構造体の製造工程の続きの工程を示す要部断面図である。
【図7】本発明に係る光伝送構造体の他の実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図8】図7に示したVIII−VIII線に沿った要部断面図である。
【図9】本発明に係る光伝送構造体の他の実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図10】図9に示したX−X線に沿った要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<光伝送構造体および光伝送モジュールの第1の実施形態>
以下、本発明に係る光伝送構造体および光伝送モジュールの一実施形態として光伝送構造体20および光伝送モジュール10を例示し、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1に示した光伝送モジュール10は、光伝送構造体20と、光素子としての光電変換素子11と、回路素子12とを備えている。
【0011】
図2,3に示した光伝送構造体20は、主基板30と、第1光学部材40と、複数の第2光学部材50と、電気配線60とを備えている。
【0012】
主基板30は、第1光学部材40、第2光学部材50、および電気配線60を支持する機能を担っている。この主基板30の厚みとしては、例えば0.1〜2〔mm〕の範囲が挙げられる。この主基板30としては、例えばガラス基材エポキシ樹脂基板、ガラス基材銅張基板、ポリイミド樹脂基板、セラミック基板などが使用される。この主基板30は、単層の基板、または複数の基板を積層した積層体として形成される。本実施形態では、複層のセラミック基板を採用している。本実施形態の主基板30は、複数の副基板31が積層されて構成されている。
【0013】
この主基板30は、厚み方向に貫通している貫通孔を有している。ここでは、この貫通孔を第1貫通孔30aとしている。この第1貫通孔30aは、主基板30の2つの主面35,36で開口している。一方側の主面35における開口を第1開口35aとし,他方主面36における開口を第2開口36aとする。この第1開口35aと第2開口36aとが、第1貫通孔30aの上面と下面とを構成する。この第1貫通孔30aは、副基板31に設けられている副貫通孔31aが連通して構成されている。この副貫通孔31aは、副基板31の各々に設けられており、副基板31を厚み方向に貫通している。この厚み方向を図3ではD1,D2方向として示している。
【0014】
そして、基板30の厚み方向において、第1貫通孔30aは、第1領域37と第2領域38とを有する。第1領域37は、第1開口35a側に位置している。第1領域37の側壁は主面35側に向かうにつれて徐々に広がる形状となっている。言い換えると、第1領域37は、基板30の主面35に平行な断面でみたときの断面積が、主面35側から、主面36側に向かうにつれ、連続的に小さくなっている。第2領域38は、基板30の厚み方向において、第1領域37から第2開口36a側に続くように形成され、第1領域37よりも、基板30の主面35に平行な断面における断面積が小さくなっている。
【0015】
なお、この例では第1開口35aは細長い形状であり、第1領域37の第1開口35aの長手方向(長軸方向、図2におけるD3,D4方向)に伸びる仮想線(図2におけるIII−III線)を含む厚み方向(D1,D2方向)の断面をみたときに、側面が第1開口35側に向けて広がるよう傾斜している。すなわち、基板30の厚み方向における断面でみたときに、第1貫通孔30aの幅が、第2領域38よりも大きく、かつ、1開口35aに向けて徐々に広がっている。
【0016】
このように、第1領域37を設けることにより、主基板30の主面35側において第1光学部材40との接触する部位に集中していた大きな応力を低減することができる。すなわち、従来は、第1光学部材40が熱収縮する際に、熱膨張係数の大きく異なる主基板30と第1光学部材40とが接触していることから、第1光学部材40に主基板30に比べて大きく収縮するような力が働くが、主基板30と接していることにより変位することができずにクラック等が発生してしまっていた。しかしながら、第1貫通孔30aに第1領域37を設けたことにより、最も応力のかかる第1開口35a側に位置する表面、端部において、その部位に存在する第1光学部材40を引っ張る第1光学部材40の量を減らすことができる。これにより、主基板30の第1貫通孔30aの開口との接触部に集中していた応力の一部を減らすことができる。
【0017】
この第1貫通孔30aの内には、第1光学部材40が設けられている。
【0018】
第1光学部材40は、第1貫通孔30aの内部に設けられている。
【0019】
この第1光学部材40には、第1開口35aの側から他方の主面36に向かって貫通している貫通孔が設けられている。ここでは、この複数の貫通孔を第2貫通孔40bとしている。この第2貫通孔40bは、第1貫通孔30aの内側に位置している。この第2貫通孔40bは、複数設けられており、厚み方向と直交する1つの方向に沿って並んでいる。この1つの方向を本実施形態では配列方向としている。この配列方向を図1〜3ではD3,D4方向として示している。この配列方向は、主基板30の面方向のうち1方向に延びている。
【0020】
この第2貫通孔40bの各々の内には、第2光学部材50が設けられている。この第2光学部材50は、複数が配列方向に沿って配列され、各々が厚み方向に沿って延びている。この第2光学部材50の配列方向における間隔としては、例えば62.5〜250〔μm〕の範囲が挙げられる。また、配列方向に沿った第2光学部材50の径としては、例えば10〜100〔μm〕の範囲が挙げられる。
【0021】
第2光学部材50は、光伝送構造体20の光導波路20aとしての機能を有している。この第2光学部材50の屈折率は、第1光学部材40の屈折率に比べて大きくなっている。このように、第1光学部材40の屈折率に比べて第2光学部材50の屈折率を大きくすることで、第2光学部材50が光導波路20aとして機能することができるようになる。つまり、この第1光学部材40は光導波路20aのいわゆるクラッドとして機能し、第2光学部材50は光導波路20aのいわゆるコアとして機能している。この第2光学部材50の屈折率としては、第1光学部材40の屈折率に対しての比屈折率差としては、例えば0.8〜4〔%〕の範囲が挙げられる。
【0022】
この第2光学部材50は、1つの第1貫通孔30aの内に複数設けられている。この第2光学部材50は、1つの第1貫通孔の内に1つの第2光学部材を設ける場合に比べて、中心間の間隔を狭くすることができる。つまり、本実施形態の光伝送構造体20では、2つの第2貫通孔40bの間に第1光学部材40が介在するだけでよいので、中心間の間隔を狭くすることができる。さらに、本実施形態のように、主基板30として積層型セラミック基板を採用する際には、複数の副基板31を積層する際の積層ズレに対する許容誤差を大きくすることができる。
【0023】
この第1光学部材40を形成する材料としては、種々の樹脂が挙げられ、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などが含まれる。本実施形態では、第1光学部材40を形成する材料として、感光性を有する樹脂を採用している。このように感光性を有する樹脂を採用することで、フォトリソグラフィ技術を採用して第2貫通孔40bを形成することができる。
【0024】
フォトリソグラフィ技術を採用して第2貫通孔40bを形成する場合、次の利点がある。第1に、複数の第2貫通孔40bの間での相対的な位置ズレを極めて小さくすることができる点が挙げられる。複数の第2貫通孔40bを一度の露光によって一括形成することができるからである。第2貫通孔40bの位置ズレを小さくすると、他の光導波路に光学的に接続する際に、当該他の光導波路に対して第2貫通孔40bの内部を伝わる光を良好に伝送することができる。当業者の間では、複数の光導波路の間の相対的なズレが5〔μm〕以下であることが好ましいとされている。フォトリソグラフィ技術を採用する場合のズレは、第2貫通孔40bに相当するフォトマスクにおけるマスク部分の位置ズレに依存することになる。このフォトマスクの製造誤差は、一般的に1〔μm〕未満とされているので、第2貫通孔40bの位置ズレを5〔μm〕以下に抑えることが容易に可能である。
【0025】
第2に、第2貫通孔40bの内壁を滑らかにすることができる点が挙げられる。直進性の高い光を利用して第2貫通孔40bを形成するからである。内壁面を滑らかにすることで、第2貫通孔40bの内部を伝わる光の損失を小さくすることができる。当業者の間では、内部を伝わる光の波長に対して、内壁面の粗さが十分に小さいことが好ましいとされている。
【0026】
電気配線60は、第2光学部材50に光学的に結合している光電変換素子11に電気的に接続されている。この電気配線60は、主基板30のD1方向側の表面に設けられている表面配線層61を含んでいる。この電気配線60は、副基板31を貫通して形成されている貫通導体、および2つの副基板31の間に形成される中間配線層が含まれていてもよい。この貫通導体としては、中央が中空となった形状でも、また中央が導電ペーストなどにより埋められた構成でもかまわない。この貫通導体は、めっき法、金属膜の蒸着法、導電性樹脂の注入法などの方法を用いて形成できる。
【0027】
上述のように、電気配線60の表面配線層61には、光電変換素子11が電気的に接続されている。本実施形態の光電変換素子11は、電気配線60の表面配線層61に金属バンプ、導電性接着剤などによって実装される。この光電変換素子11と表面配線層61との接続部を除く他の部位は、保護層で覆われていてもよい。
【0028】
この光電変換素子11は、入力された電気信号に応じて光を発する機能、または入射された光に応じて電気信号に変換する機能を有している。この光電変換素子11は、光導波路20aに光学的に結合している。本実施形態の光電変換素子11は、電気配線60を介して入力された電気信号に応じて光導波路20aに光信号を伝送する機能、または光導波路20aを介して入力された光信号に応じて電気配線60に電気信号を伝送する機能を担っている。
【0029】
上述の光を発する光電変換素子11としては、種々の発光素子が適用できる。この光電変換素子11としては、例えば垂直共振器面発光レーザ(VCSEL;Vertical Cavity Surface Emitting Laser)が好ましい。光を受ける光電変換素子11としては、例えばフォトダイオード(PD;Photo Diode)など種々の受光素子が適用できる。この受光素子としてPDを採用する場合は、応答速度の速い素子が好ましく、例えばPIN−PDなどが挙げられる。
【0030】
光電変換素子11は、1つの素子に1つの光電変換部を有していても、1つの素子に複数の光電変換部を有していてもよい。本実施形態の光電変換素子11は、1つの素子に1つの光電変換部を有している。1つの光電変換部は、1つの第2光学部材50に対応して配置されている。この1つの光電変換部は、1つの光導波路20aに対応して配置されている。
【0031】
回路素子12は、電気配線60を介して光電変換素子11と電気的に接続されている。この回路素子12は、光電変換素子11の担う機能によって、担う機能が異なっている。光電変換素子11が光を発する場合、回路素子12は、光電変換素子11に変調された電気信号(変調電圧)を入力して、光電変換素子11の発光強度を制御している。また、光電変換素子11が光を受ける場合、回路素子12は、光電変換素子11で受光する光信号強度に応じて出力される電流信号を電圧信号に変換して出力している。また、この回路素子12は、信号の波形を制御したり、ノイズ成分を除去したりする機能を併せ持っていてもよい。なお、光電変換素子11で発する電気信号の出力が小さい場合、信号を増幅する機能を担っていても良い。この信号増幅機能は、光電変換素子11自体が有していてもよい。また、この回路素子12は、論理演算および数値計算を行う機能を有していてもよい。
【0032】
<光伝送構造体の製造方法の実施形態>
以下、本発明に係る光伝送構造体の製造方法の一実施形態として光伝送構造体20の製造方法を例示し、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
まず、主基板30を準備する。本実施形態の主基板30は、次の工程を経て製造される。まず、図4(a)に示したように、焼成することで副基板31となる複数のグリーンシート31Xを準備する。次に、図4(b)に示したように、このグリーンシート31Xに副貫通孔31aとなるシート孔31Xaを開ける。このときに、最上層のグリーンシート31Xxのシート孔31Xxaに、シートの主面と平行な面でみた断面積が他のシート孔31Xaよりも大きい領域を有するように加工する。このシート孔31Xa,31Xxaの形成と併せて、電気配線60の貫通導体に用いられる貫通孔が必要に応じて形成される。これらの孔開けは、種々の方法で形成でき、例えば、ピンおよび金型でシートを打ち抜いたり、レーザ光で削ったりして形成できる。次に、このグリーンシート31X、31Xxに電気配線60となる金属ペーストを配置する。この金属ペーストは、例えばスクリーン印刷技術を利用したり、インクジェット印刷技術を採用したりして形成することができる。この電気配線60となる金属ペーストとしては、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銀(Ag)、および銅(Cu)などの金属を含有させたものが挙げられる。次に、図4(c)に示したように、シート孔31Xa,31Xxaが連通するようにグリーンシート31Xを積層する。次に、積層したグリーンシート31Xを焼成して、図5(a)に示したように、第1貫通孔30aを有する主基板30を形成する。このグリーンシート31Xの焼成と併せて金属ペーストを焼成し、電気配線60を形成する。
【0034】
次に、図5(b)に示したように、主基板30の第1貫通孔30aに、硬化することによって第1光学部材40となる感光性材料40Xを充填する。この感光性材料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、およびポリイミド樹脂などを基材としたものが挙げられる。本実施形態では、露光することで現像液に対しての溶解性が低下するネガ型のフォトレジストを採用する。次に、感光性材料40Xをプリベークをする。このプリベーク後に感光性材料40Xを露光する。この露光の際には、第2貫通孔40bとなる領域に光が照射されないようにしたフォトマスクを採用する。このようなフォトマスクを採用することによって、第2貫通孔40bとなる領域を一括して形成することができる。この露光の際の光源としては、例えば、各種ランプ、レーザ、および電子線などの種々のものが採用できる。次に、露光した感光性材料40Xをポストベークする。次に、ポストベークした感光性材料40Xを現像液で現像して、図6(a)に示したように、第2貫通孔40bを有する第1光学部材40を形成する。
【0035】
次に、第1光学部材40の第2貫通孔40bに第2光学部材50となる透光性材料を充填する。次にこの透光性材料を硬化して、図6(b)に示したように、第2光学部材50を形成する。
【0036】
上述の工程を経て、図6(b)に示した光伝送構造体20を製造することができる。
【0037】
<光伝送構造体の第2の実施形態>
以下、本発明に係る光伝送構造体および光伝送モジュールの他の実施形態として光伝送構造体20Aを例示し、図面を参照しつつ説明する。
【0038】
図7,8に示した光伝送構造体20Aは、主基板30Aと、第1光学部材40と、複数の第2光学部材50と、電気配線60とを備えている。この光伝送構造体20Aは、主基板30Aを備える点において光伝送構造体20の構成と異なっている。この光伝送構造体20Aは、光電変換素子11を例示した光素子、および回路素子12を実装して光伝送モジュールとすることが可能である。
【0039】
主基板30Aは、第1貫通孔Aaを有している点において主基板30の構成と異なっている。この第1貫通孔30Aaは、主基板30Aの厚み方向において、第1領域37A,第2領域38A,第3領域39Aを有する。第1領域37A,第2領域38Aは、第1領域37,第2領域38と同様である。第3領域39Aは、主基板30Aの厚み方向において、第2領域38Aから第2開口36Aaまで続くように位置している。そして、第3領域39Aの基板30Aの一方主面35Aと平行な面における断面積が、第2領域38Aに比べ大きくなっている。このような形状とすることにより、主基板30Aの両主面35A,36Aにおいて、その開口35Aa,36Aa付近に集中する熱膨張係数の差に起因する応力を減少させることができる。
【0040】
<光伝送構造体の第3の実施形態>
以下、本発明に係る光伝送構造体および光伝送モジュールの他の実施形態として光伝送構造体2Bを例示し、図面を参照しつつ説明する。
【0041】
図9,10に示した光伝送構造体20Bは、主基板30と、第1光学部材40Bと、複数の第2光学部材50と、電気配線60とを備えている。この光伝送構造体20Bは、第1光学部材40Bを備える点において光伝送構造体20の構成と異なっている。この光伝送構造体20Bは、光電変換素子11を例示した光素子、および回路素子12を実装して光伝送モジュールとすることが可能である。
【0042】
第1光学部材40Bは、一部が第1貫通孔30aの第1開口35aの側の表面に窪み部40Baが設けられている点で、第1光学部材40と異なる。この窪み部40Baは、他の主面36側に窪んでいる。この窪み部40Baを設けることによって、主基板30の第1貫通孔30aの第1開口35aとの接触部に集中していた応力の一部を当該窪み部40Baに分散することができる。この窪み部40Baは、第1貫通孔30aの内に窪んでおり、底面が主基板30の一方の主面35よりも窪んでいる。この光伝送構造体20Bでは、第1貫通孔30aの開口35aよりも窪んだ位置にも応力を分散することができる。なお、このような窪み部40Baは、例えば図5(b)において、感光性材料をプリベークする際に第1主面35側から押圧することにより形成することができる。
【0043】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。
【0044】
上述の光伝送構造体20の製造方法では、ネガ型のフォトレジストを採用しているが、露光することで現像液に対しての溶解性が増加するポジ型のフォトレジストを採用してもよい。ポジ型を採用する場合には、露光する領域も併せて変更する。
【0045】
上述の光伝送構造体20の製造方法では、主基板30としてセラミック基板を採用した製造方法を記載しているが、有機基板を採用して光伝送構造体を製造してもよい。有機基板を採用して光伝送構造体を製造する場合は、副基板の積層後に、基体を打ち抜き加工して、第1貫通孔を形成してもよい。このようにして、副基板を一括で打ち抜く場合は副貫通孔の位置ズレを低減することができる。
【0046】
前述の光伝送構造体20の第1領域37は、基板30の厚み方向において、主面35と平行な面における断面積が徐々に変化する構成としたが、第1領域37において一定でもよいし、段階的に変化するものとしてもよい。
【0047】
さらに、前述の光伝送構造体20の第1領域37は、基板30の厚み方向において、側面が傾斜面となっていたが、第1領域37の全てにおいて傾斜面となっていなくてもよい。具体的には、第1貫通孔30aが細長い形状である場合には、その長手方向の両端部において特に応力が集中するため、長手方向のみにおいて側壁を傾斜面としてもよい。言い換えると、図2のD5、D6方向における断面をみたときには、第1貫通孔30aの側面(内壁面)は垂直であってもよい。
【0048】
また、第1光学部材40は、一部が第1貫通孔30aの第1開口35aの一方から突出してもよいし、当該突出した部位が第1貫通孔30aの開口の周囲に延在していてもよい。このような構成により、周囲の温度変化による熱応力を分散することができるので好ましい。
【符号の説明】
【0049】
10・・・光伝送モジュール
11・・・光電変換素子
12・・・回路素子
20・・・光伝送構造体
20a・・・光導波路
21・・・光配線基板
30・・・主基板(基板)
30a・・・第1貫通孔
31・・・副基板
31X・・・グリーンシート
31a・・・副貫通孔
31Xa・・・シート孔
35・・・一方主面
35a・・・第1開口
36・・・他方主面
36a・・・第2開口
37・・・第1領域
38・・・第2領域
40・・・第1光学部材
40X・・・感光性材料
40a・・・窪み部
40b・・・第2貫通孔
50・・・第2光学部材
60・・・電気配線
61・・・表面配線層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方主面に第1開口および他方主面に第2開口を備える第1貫通孔を有する基板と、
前記第1貫通孔の内部に位置し、前記基板よりも熱膨張係数の大きい材料からなるとともに、前記第1開口の側から前記第2開口の側まで貫通する第2貫通孔を有する第1光学部材と、
前記第2貫通孔の内部に位置し、前記第1光学部材の屈折率よりも大きい屈折率を有する第2光学部材とを有し、
前記第1貫通孔は、前記基板の厚み方向において、前記第1開口から続く第1領域と、前記第1領域から前記第2開口側に続き、前記第1領域よりも断面積が小さい第2領域とを有する光伝送構造体。
【請求項2】
前記第1貫通孔は、前記基板の前記一方主面に平行な断面で見たときの前記第1領域の断面積が前記第1開口の側から前記第2領域まで連続的に小さくなっている、請求項1に記載の光伝送構造体。
【請求項3】
前記第1開口は、細長い形状であり、
前記第1領域は、前記第1開口の長軸方向に延びる仮想線を含む前記基板の厚み方向の断面で見たときに、幅が前記第2領域の幅に比べて大きい、請求項1または2に記載の光伝送構造体。
【請求項4】
前記第1貫通孔は、前記基板の厚み方向において、前記第2領域から前記第2開口の側まで続く、前記基板の前記一方主面に平行な断面で見たときの断面積が前記第2領域よりも大きい第3領域をさらに有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の光伝送構造体。
【請求項5】
前記第1光学部材は、前記第1開口の側の面に、前記第2開口の側に窪んでいる窪み部を有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の光伝送構造体。
【請求項1】
一方主面に第1開口および他方主面に第2開口を備える第1貫通孔を有する基板と、
前記第1貫通孔の内部に位置し、前記基板よりも熱膨張係数の大きい材料からなるとともに、前記第1開口の側から前記第2開口の側まで貫通する第2貫通孔を有する第1光学部材と、
前記第2貫通孔の内部に位置し、前記第1光学部材の屈折率よりも大きい屈折率を有する第2光学部材とを有し、
前記第1貫通孔は、前記基板の厚み方向において、前記第1開口から続く第1領域と、前記第1領域から前記第2開口側に続き、前記第1領域よりも断面積が小さい第2領域とを有する光伝送構造体。
【請求項2】
前記第1貫通孔は、前記基板の前記一方主面に平行な断面で見たときの前記第1領域の断面積が前記第1開口の側から前記第2領域まで連続的に小さくなっている、請求項1に記載の光伝送構造体。
【請求項3】
前記第1開口は、細長い形状であり、
前記第1領域は、前記第1開口の長軸方向に延びる仮想線を含む前記基板の厚み方向の断面で見たときに、幅が前記第2領域の幅に比べて大きい、請求項1または2に記載の光伝送構造体。
【請求項4】
前記第1貫通孔は、前記基板の厚み方向において、前記第2領域から前記第2開口の側まで続く、前記基板の前記一方主面に平行な断面で見たときの断面積が前記第2領域よりも大きい第3領域をさらに有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の光伝送構造体。
【請求項5】
前記第1光学部材は、前記第1開口の側の面に、前記第2開口の側に窪んでいる窪み部を有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の光伝送構造体。
【図1】
【図2】
【図9】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図2】
【図9】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【公開番号】特開2013−97149(P2013−97149A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239313(P2011−239313)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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