説明

光信号分岐装置、光信号伝送システム及び光信号伝送方法

【課題】本発明は、伝送距離を拡大し、またはより多くの光信号受信装置を接続する光伝送システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、光伝送システムの幹線側光伝送路70に挿入して伝送される変調光信号を光信号受信装置20へ分岐する光信号分岐装置100において、前記変調光信号と光信号処理デバイス又は光信号受信装置20からのプローブ光信号との相互作用により前記変調光信号を情報複製して、前記伝送光信号を受信装置20で受信し、同時に変調光信号を後段の光信号受信装置20へ伝送することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号の伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信の技術の進歩により、光ファイバーネットワークは、基幹ネットワークから企業内ネットワーク、さらには家庭内ネットワークへと広く利用されている。これらの光ファイバ伝送路を用いた光信号伝送システムの一形態としてバス型接続の光信号伝送システムがある。添付の図を参照して従来技術について説明する。
【0003】
図23に従来のバス型接続の光信号伝送システムの一例を示す。図23は1の光信号送信装置から1以上のNの光信号受信装置へ光信号を伝送する場合の例を示している。
【0004】
図23において、光信号分岐装置は光信号送信装置910に近い方から順に、光信号分岐装置940a、光信号分岐装置940b、・・・と表示し、総数は(n−1)であるが、図面の煩雑さをさけるために光信号分岐装置940(n−1)は図示していない。以下の説明において、光信号分岐装置940a、光信号分岐装置940b、・・・光信号分岐装置940(n−1)の全体を示す場合は光信号分岐装置940と表記する。
【0005】
図23において、幹線側光伝送路は光信号送信装置910に近い方から順に、幹線側光伝送路970a、幹線側光伝送路970b、・・・幹線側光伝送路970nと表示し、総数はnである。以下の説明において、幹線側光伝送路970a、幹線側光伝送路970b、・・・幹線側光伝送路970nの全体を示す場合は幹線側光伝送路970と表記する。
【0006】
図23において、支線側光伝送路は光信号送信装置910に近い方から順に、支線側光伝送路971a、支線側光伝送路971b、・・・と表示し、総数は(n−1)であるが、図面の煩雑さをさけるために支線側光伝送路971(n−1)は図示していない。以下の説明において、支線側光伝送路971a、支線側光伝送路971b、・・・支線側光伝送路971(n−1)の全体を示す場合は支線側光伝送路971と表記する。
【0007】
光信号受信装置は光信号送信装置910に近い方から順に、光信号受信装置920a、光信号受信装置920b、・・・光信号受信装置920nと表示し、総数はnである。以下の説明において、光信号受信装置920a、光信号受信装置920b、・・・光信号受信装置920nの全体を示す場合は光信号受信装置920と表記する。
【0008】
光信号受信器は光信号送信装置910に近い方から順に、光信号受信器921a、光信号受信器921b、・・・光信号受信器921nと表示している。以下の説明において、光信号受信器921a、光信号受信器921b、・・・光信号受信器921nの全体を示す場合は光信号受信器921と表記する。
【0009】
図23において、光信号送信装置910に備える光信号送信器911の出力は幹線側光伝送路970aを介して光信号分岐装置940aに入力され、光信号分岐装置940aの出力は幹線側光伝送路970bを介して光信号分岐装置940bに入力され、以後同様に、図示していない(n−1)番目の幹線側光伝送路970(n−1)を介して図示していない光信号分岐装置940(n−1)に入力される。さらに最後の幹線側光伝送路970nは光信号分岐装置を介することなく光信号受信装置920nに接続される。
【0010】
一方、前記光信号分岐装置940aの分岐出力は支線側光伝送路971aを介して受信装置920aに備える受信器921aに入力され、前記光信号分岐装置940bの分岐出力は支線側光伝送路971bを介して受信装置920bに備える受信器921bに入力され、以後同様に図示していない(n−1)番目の光信号分岐装置940(n−1)の分岐出力は、図示していない受信器921(n−1)に入力される。
【0011】
さらに、n番目の光信号受信器921nには幹線側光伝送路970nにより、図示していない前記光信号分岐装置940(n−1)の出力が入力される。
【0012】
図23に示す従来技術の第一例として、前記光信号分岐装置940に3dBカプラを使用する場合を説明する。前記3dBカプラを使用する場合、前記光信号分岐装置940の分岐損失が累積され、後段の前記光信号受信装置920に入力される前記分岐出力または前記光信号が減衰するので、前記光信号受信装置920における受信光信号の信号対雑音比が劣化し、接続可能な前記光信号受信装置920の総数が限られる。
【0013】
そこで、前記光信号送信器911の出力を高めることにより、接続可能な前記光信号受信装置920の数を増加させることは可能であるが、前記光信号送信器911の出力にも上限があるので、接続可能な前記光信号受信装置920の総数は前記3dBカプラの損失で制限される。ここで、前記光信号送信装置910から最も遠方に接続される前記光信号受信器921nに入力される前記光信号は3(n−1)dBの分岐損失を受けることになる。
【0014】
非特許文献1を参照すると、前記光信号送信装置10をIEEE802.3ahにより定められた1000BASE−PX20−D規格とした場合、送信光強度の最大値は7dBmであり、光信号の伝送速度を1.25Gbpsとして、前記光信号受信器921nをIEEE802.3ahにより定められた1000BASE−PX20−U規格とした場合、前記光信号受信器921nにおける信号誤り率を10−12以下とするために、前記光信号受信器921nの最小受光強度は−7dBmと規定されている。
【0015】
前記のIEEE802.3ahの規格に従い、図23に示すバス型光信号伝送システムにおいて前記3dBカプラの過剰損失及び前記幹線側光伝送路970及び支線側光伝送路971の損失を無視した場合、前記光信号受信装置の総数nは11となる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0016】
以上説明したように、前記第一例は前記3dBカプラの損失と前記支線側光伝送路971の光損失により、接続可能な前記光信号受信装置920の総数が少ないという欠点があった。
【0017】
次に、図23により従来技術の第二例を説明する。従来技術の第二例においては、図23に示す前記光信号分岐装置940として非対称カプラを使用する場合である。図24は前記非対称カプラの原理図である。図24において、非対称カプラ941は端子A942、端子B943、端子C944、端子D945を備え、端子A942から入力された光信号を1とすると、Xが前記端子C944へ出力され、残りの(1−X)が前記端子D945へ出力されるように、前記端子C944と前記端子D945へ出力される光信号の比を非対称に調節した光カプラである。ここで、0<X<1であり、分岐比と呼ぶ。
【0018】
図23において、光信号送信装置910に近い前記光信号分岐装置940aから、光信号分岐装置940(n−1)の方向へ、前記光信号分岐装置の分岐比を、1/n、1/(n−1)、・・・1/(n−(i−1))、・・・1/2とした時に、前記光信号送信装置910と前記光信号受信装置920nの間の光信号損失を最小にすることができる。ここで、前記iは前記光信号送信装置910からi番目を意味する。nを20とすると、前記光信号受信器921の各々は全て前記光信号送信器911の出力の1/20の光強度、すなわち光強度が13dB減衰した光信号を受信することになる。前記IEEE802.3ahにより定められた標準規格の値の場合、前記光信号受信器921の各々の受信する光強度は−8dBmとなり、伝送速度が1.25Gbpsの場合は十分な強度の光信号を受信できることになる(例えば、特許文献1参照。)。
【0019】
しかし、前記第二例には以下の2つの課題がある。第一は前記光信号分岐装置940の各々の分岐比を異なる値に設定する必要があり、価格が高くなるという課題がある。第二は前記光信号分岐装置940の総数nの増加に従って、前記非対称カプラ941の分岐比の設定が困難になるという課題がある。
【0020】
以下に上記の第二の課題について説明する。前記第二例において、前記光信号受信装置920の総数nと前記非対称カプラ941の前記端子C944と前記端子D945の前記分岐比は次の式で与えられる。
C:D=1/(1−i+n):(1−1/(1−i+n)) (1)
ここで、iは前記光信号送信装置910の方から数えた前記光信号分岐装置940の番号であり、i≦nである。
【0021】
図25に前記光信号受信装置920の総数nを5、10、15、20とした時の最適分岐比を示す。図25において、上側の曲線群は前記非対称カプラ941の前記端子D945への分岐比を示し、下側の曲線群は前記非対称カプラ941の前記端子C944への分岐比を示している。光信号受信装置920の総数nが増加すると、前記光信号送信装置910に近い前記光信号分岐装置940の分岐比ほど後段への影響が大きいために、正確な分岐比の設定が必要となる。例えば、nが20の場合、光信号送信装置910から1番目の光信号分岐装置940aと2番目の光信号分岐装置940bの各々の支線側光伝送路971a及び支線側光伝送路971bへの分岐装比は0.2dB程度となる。
【0022】
一方、前記非対称カプラ941の過剰損失は分岐比率及び製造プロセスにより大きく異なり、0.1〜1dB程度のばらつきを生じる。さらに、前記非対称カプラ941の各端子と幹線側光伝送路970a及び支線側光伝送路971aとの接続における光ファイバ同士の突合せの位置ずれによって0.1〜1dB程度のばらつきを生じる。従って、上記の分岐装比0.2dB程度という値を実現するのは非常に難しいという課題がある。
【0023】
次に、図23に示す従来技術の第三例を説明する。第三例は前記光信号分岐装置940を前記3dBカプラとし、かつ光増幅器を使用することにより、接続可能な前記光信号受信装置920の数を増加させる方法である。第三例は図23に示す幹線側光伝送路970の各々の光損失を前記光増幅器により補償することにより、前記光信号受信装置920の総数を前記第一の例及び前記第二の例よりも増加させることができる(例えば、特許文献2参照。)。
【0024】
上記の第三例においては、光信号受信装置920の総数と同数の光増幅器を必要とするので価格が高くなり、経済的なネットワークを構築するのは困難という課題がある。
【0025】
【特許文献1】特開平6−268654号公報
【特許文献2】特開平5−160473号公報
【非特許文献1】IEEE std 802.3−2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
上記のように、従来の光バス型ネットワークは伝送路の構成が簡易であるという利点があるが、光カプラのような光信号の分岐デバイスを前記幹線側光伝送路970と前記支線側光伝送路971の接続点に設置し、前記光信号送信装置910から送信された光信号の一部を前記光信号受信装置920の各々へ分岐するために正確な分岐損失を考慮しなければならず、伝送距離の拡大及び接続可能な前記光信号受信装置920の総数の増加が困難であった。
【0027】
本発明は、上記の課題を解決し、伝送距離の拡大、あるいは接続可能な光信号受信装置の総数の増加を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、上記目的を達成するため、光信号送信装置から送信する光信号と光信号分岐装置内の光信号処理デバイスとの相互作用、または光信号受信装置から送信するプローブ光と光信号分岐装置内の光信号処理デバイスとの相互作用、により前記光信号送信装置から送信する前記光信号を分岐することなく、前記光信号の情報を前記光信号受信装置へ取得することを可能にすることにより前記光信号分岐装置の分岐損失を考慮することなく伝送距離の拡大、及び前記光信号受信装置の総数の増加を可能にする光信号分岐装置及び光信号伝送システム及び光信号伝送方法である。
【0029】
具体的には、本発明に係る光信号分岐装置は、入出力ポートとして第一入力ポート、第二入力ポート、第一出力ポート及び第二出力ポート、及び光との相互作用により光信号処理する光信号処理デバイスを備える光信号分岐装置であって、前記第一入力ポートから入力される変調された変調光信号に前記光信号処理デバイスを通過させて前記第一出力ポートから出力し、前記第一入力ポートから入力される変調された変調光信号と前記光信号処理デバイスとの相互作用又は前記第二入力ポートから入力されるプローブ光信号と前記光信号処理デバイスとの相互作用により前記変調光信号を情報複製した複製光信号を前記第二出力ポートから出力する。
【0030】
本発明に係る光信号分岐装置は、光伝送路を経由して入力される変調された変調光信号を分岐して減衰させることなく後段の光伝送路へ向けて出力するとともに、前記変調光信号を情報複製した複製光信号を別途出力し光信号受信装置へ送信することができるので、変調光信号をより遠隔の、多くの光信号受信装置へ伝送することができる。
【0031】
本発明に係る前記光信号処理デバイスは、異なる波長の前記第一入力ポートからの前記変調光信号と前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号を波長合波する波長合波回路と、前記第一入力ポートからの前記変調光信号の角周波数をwとし、前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の角周波数をwとした場合、4光波混合により、前記変調光信号を情報複製した角周波数w=2w―w、およびw=2w―wの前記複製光信号を発生する4光波混合波発生素子と、前記4光波混合波発生素子からの合波された前記変調光信号と前記複製光信号のうち、前記変調光信号を第一出力ポートに、前記複製光信号のうちの少なくとも1を第二出力ポートに波長分波する波長分波回路と、を備える。
【0032】
本発明に係る光信号分岐装置は、4光波混合波発生素子を備えることにより、前記変調光信号を容易に情報複製し、前記複製光信号を出力することができる。
【0033】
本発明に係る前記光信号処理デバイスは、異なる波長の前記第一入力ポートからの前記変調光信号と前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号を波長合波する波長合波回路と、前記第一入力ポートからの前記変調光信号がマークレベルのとき前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の光増幅度が減少し、スペースレベルのとき前記第二入力ポートからのプローブ光信号の光増幅度が増大することによって、前記変調光信号の前記マークレベルと前記スペースレベルが前記プローブ光信号の光レベルの変化に情報複製された複製光信号を発生する半導体光増幅器と、前記半導体光増幅器からの合波された前記変調光信号と前記複製光信号のうち、前記変調光信号を第一出力ポートに、前記複製光信号を第二出力ポートに波長分波する波長分波回路と、を備える。
【0034】
本発明に係る光信号分岐装置は、前記半導体光増幅器を備えることにより、前記変調光信号を容易に情報複製し、前記複製光信号を出力することができる。
【0035】
本発明に係る前記光信号処理デバイスは、異なる波長の前記第一入力ポートからの前記変調光信号と前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号を波長合波する波長合波回路と、前記第一入力ポートからの前記変調光信号がマークレベルのとき前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の透過度が増大し、スペースレベルのとき前記第二入力ポートからのプローブ光信号の透過度が減少することによって、前記変調光信号の前記マークレベルと前記スペースレベルが前記プローブ光信号の光レベルの変化に情報複製された複製光信号を発生する可飽和光吸収素子と、前記可飽和光吸収素子からの合波された前記変調光信号と前記複製光信号のうち、前記変調光信号を第一出力ポートに、前記複製光信号を第二出力ポートに波長分波する波長分波回路と、を備える。
【0036】
本発明に係る光信号分岐装置は、前記可飽和光吸収素子を備えることにより、前記変調光信号を容易に情報複製し、前記複製光信号を出力することができる。
【0037】
本発明に係る前記光信号処理デバイスは、異なる波長の前記第一入力ポートからの前記変調光信号と前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の各々の前記光信号処理デバイスへの入射角度及び位置を所定の関係に保って入力する入力部と、前記第一入力ポートからの変調光信号がマークレベルのとき屈折率分布が変化し前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の光路を屈折率が大きくなった方向へ変化させ、スペースレベルのとき前記屈折率分布が変化することなく前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の光路を変化させないことによって、前記変調光信号のマークとスペースが前記光路の変化した前記プローブ光信号又は前記光路の変化しない前記プローブ光信号の切換わりに情報複製された複製光信号を発生する屈折率変化素子と、前記屈折率変化素子からの前記変調光信号と前記複製光信号の中から光路の差により分離した1の前記複製光信号のうち、前記変調光信号を第一出力ポートに、前記複製光信号を第二出力ポートに出力する出力部と、を備える。
【0038】
本発明に係る光信号分岐装置は、屈折率変化素子を備えることにより、前記変調光信号を容易に情報複製し、前記複製光信号を出力することができる。
【0039】
本発明に係る前記光信号処理デバイスは、異なる波長の前記第一入力ポートからの前記変調光信号と前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の各々の前記光信号処理デバイスへの入射角度及び位置を所定の関係に保って入力する入力部と、前記第一入力ポートからの前記変調光信号がマークレベルのとき光を吸収して発生した熱により屈折率分布が変化し、前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の光路を前記屈折率が大きくなった方向へ切換え、スペースレベルのとき屈折率分布が変化することなく前記第二入力ポートからのプローブ光信号の光路を切換えないことによって、前記変調光信号のマークとスペースが前記光路の切換わった前記プローブ光信号又は前記光路の切換わっていない前記プローブ光信号の切換わりに情報複製された複製光信号を発生する熱光学素子と、前記熱光学素子からの前記変調光信号と前記複製光信号の中から光路の切換わりにより分離した1の前記複製光信号のうち、前記変調光信号を第一出力ポートに、複製光信号を第二出力ポートに出力する出力部と、を備える。
【0040】
本発明に係る光信号分岐装置は、前記熱光学素子を備えることにより、前記変調光信号を容易に情報複製し、前記複製光信号を出力することができる。
【0041】
本発明に係る前記光信号処理デバイスは、異なる波長の前記第一入力ポートからの前記変調光信号と前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の各々の前記光信号処理デバイスへの入射角度及び位置を所定の関係に保って入力する入力部と、前記第一入力ポートからの前記変調光信号がマークレベルのとき光カー効果により屈折率異方性を生じ前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号を楕円偏光状態に変化させ、スペースレベルのとき屈折率異方性を生じず前記第二入力ポートからのプローブ光信号の偏光状態を変化させないことにより前記変調光信号の前記マークレベルと前記変調光信号の前記スペースレベルが前記プローブ光信号の偏光状態の変化として情報複製された複製光信号を発生するカー効果素子と、前記カー効果素子からの前記変調光信号と偏光状態により分離した複製光信号のうち、前記変調光信号を第一出力ポートに、前記複製光信号として第二出力ポートに出力する出力部と、を備える。
【0042】
前記カー効果素子を備えることにより、前記変調光信号を容易に情報複製し、前記複製光信号を出力することができる。
【0043】
本発明に係る光信号伝送システムは、変調された変調光信号を幹線側光伝送路に向けて送信する光信号送信装置と、前記幹線側光伝送路の途中に前記第一入力ポート及び前記第一出力ポートを介在させることによって前記光信号送信装置に縦続接続された1以上の請求項1から7のいずれかに記載の光信号分岐装置と、前記第二入力ポート及び前記第二出力ポートを介して支線側光伝送路によって前記光信号分岐装置のそれぞれに接続され、前記プローブ光信号を第二入力ポートに送信し、前記第二出力ポートからの複製光信号を受信する1以上の光信号受信装置と、を備えることを特徴とする。
【0044】
前記光信号分岐装置を備えることにより、前記変調光信号を容易に情報複製し受信し、かつ前記変調光信号を後段へ送信し、伝送距離の拡大または前記変調光信号をより多くの前記光信号受信装置へ送信することが可能になる。
【0045】
本発明に係る光信号伝送方法は光信号送信装置に変調された変調光信号を縦続接続された1以上の請求項1から7のいずれかに記載の光信号分岐装置へ送信させ、光信号受信装置にプローブ光信号を前記光信号分岐装置へ送信させ、前記変調光信号と前記光信号分岐装置に備える光信号処理デバイスとの相互作用又は前記変調光信号を制御するためのプローブ光信号と前記光信号処理デバイスとの相互作用により前記光信号分岐装置に前記変調光信号を情報複製させ、情報複製した複製光信号を前記光信号分岐装置に各々の前記光信号受信装置へ送信させることを特徴とする。
【0046】
前記光信号伝送方法により、前記変調光信号を容易に情報複製し受信し、かつ前記変調光信号を後段へ送信し、伝送距離の拡大または前記変調光信号をより多くの前記光信号受信装置へ送信することが可能になる。
【発明の効果】
【0047】
本発明により、光伝送システムの伝送距離の拡大又は光信号受信装置の接続可能台数の増加を達成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。
【0049】
(実施形態1)
本発明の第一の実施形態について説明する。図1により本実施形態の前記光信号分岐装置の構成を説明する。図1において前記光信号分岐装置100は外部への入出力ポートとして、第一入力ポート101、第二入力ポート102、第一出力ポート103、第二出力ポート104を備えている。前記光信号分岐装置100の内部には、波長合波回路120、波長分波回路130、光信号処理デバイス140を備えている。
【0050】
前記光信号分岐装置100の内部において、前記第一入力ポート101は光伝達手段により前記波長合波回路120の入力端子121に接続され、第二入力ポート102は光伝達手段により波長合波回路120の入力端子122に接続されている。波長合波回路120の出力端子123は光伝達手段により光信号処理デバイス140の入力端子141に接続されている。光信号処理デバイス140の出力端子142は光伝達手段により波長分波回路130の入力端子131に接続されている。波長分波回路130の出力端子132は光伝達手段により第一出力ポート103に接続され、波長分波回路130の出力端子133は第二出力ポート104に接続されている。ここで前記光伝達手段は例えば光ファイバで構成する。
【0051】
次に、図1により本実施の形態の光信号分岐装置100を構成する各部の動作を説明する。前記波長合波回路120は前記入力端子121及び前記入力端子122から入力される波長の異なる光信号を合波して、前記出力端子123へ出力する機能を有する。前記波長分波回路130は前記入力端子131へ入力される波長合波された光信号を波長毎に分波して前記出力端子132及び前記出力端子133の各々へ出力する機能を有する。前記光信号処理デバイス140は4光波混合を発生するχ(3)媒質により構成する。χ(3)媒質とは3次非線形光学効果を起こすことができる媒質のことである。
【0052】
図1に示す前記光信号処理デバイス140の前記入力端子141に各周波数w及び各周波数wの異なる波長の2波の光信号を入力した場合、前記出力端子142には各周波数w及び各周波数wの異なる波長の2波の光信号に加えて、各周波数w及び各周波数wの2波の光が混在して出力される。ここで、
=2w−w (2)
=2w−w (3)
の関係がある。上記の数1と数2の関係を波長領域に変換すれば次のようになる。前記各周波数wの光信号の波長をλ、前記各周波数wの光信号の波長をλ、前記各周波数wの光信号の波長をλ、前記各周波数wの光信号の波長をλとした場合、次波長λと波長λは次の式で表される。
λ=1/(1/(2/λ−1/λ)) (4)
λ=1/(1/(2/λ−1/λ)) (5)
図2にλ=1546nm、λ=1550nmとして、前記光信号処理デバイス140としてのχ(3)媒質に非線形ファイバを使用した場合の前記光信号処理デバイス140の出力端子142の出力スペクトルを示す。λ=1546nm、λ=1550nmを数3及び数4に代入すると、λ=1554nm、λ=1542nmとなり、4光波混合が起きていることが確認できる。ここで、4光波混合の発生効率は入力する光信号の強度に依存するので、4光波混合により発生する前記波長λの光信号及び前記波長λの光信号は入力される前記波長λの光信号及び前記波長λの光信号の強度に対応して変化する。従って、前記波長λの光信号及び前記波長λの光信号のいずれか、あるいは両方が情報信号により変調されていた場合、前記波長λの光信号及び前記波長λの光信号に情報複製される。
【0053】
光信号処理デバイス140の入力端子141にマークとスペースにより構成されるディジタル情報信号により変調された変調光信号を前記波長λの光信号として入力し、変調されていない光信号を前記波長λの光信号として入力した場合、出力端子142から前記波長λの変調光信号及び前記波長λの光信号とともに、前記波長λの光信号のマークとスペースにより構成されるディジタル情報信号が情報複製された複製光信号としての前記波長λの光信号及び前記波長λの光信号が出力される。従って、前記光信号処理デバイス140は前記変調光信号を分岐することなく、情報複製された複製光信号としての前記波長λの光信号及び前記波長λの光信号を抽出することができる。
【0054】
前記波長λの光信号及び前記波長λの光信号が前記光信号処理デバイス140としての前記χ(3)媒質に入力された場合に、前記χ(3)媒質から出力される前記波長λの光信号及び前記波長λの光信号及び前記波長λの光信号及び前記波長λの光信号の様子を図3に模式的に示す。
【0055】
図3においては、合波器151の合波入力端子161及び合波入力端子162の各々に波長λの光信号171及び波長λの光信号172を入力した場合、前記波長λの光信号171及び前記波長λの光信号172は合波されて、χ(3)媒質150に入力され、前記χ(3)媒質150からは波長λの光信号及び波長λの光信号及び波長λの光信号及び波長λの光信号が出力され、分波器152により分波され、分波出力端子163へ波長λの光信号173が出力され、分波出力端子164へ波長λの光信号174が出力され、分波出力端子165へ波長λの光信号175が出力され、分波出力端子166へ波長λの光信号176が出力され、前記波長λの光信号174及び前記波長λの光信号175には前記波長λの光信号171のマークとスペースの変調光信号が情報複製されていることを示している。
【0056】
上記の図3により説明した原理により、図1に示す光信号処理デバイス140は入力される変調光信号を分岐することなく前記変調光信号の情報を他の波長の光信号に情報複製した複製光信号を出力する機能を有する。
【0057】
次に図1に示す前記光信号分岐装置100の動作を説明する。図1に示す前記第一入力ポート101に、例えば前記波長λの変調光信号を入力し、第二入力ポート102に変調されていない例えば前記波長λのプローブ光信号を入力する。前記変調光信号は波長合波回路120の入力端子121へ入力され、前記プローブ光信号は前記波長合波回路120の入力端子122へ入力される。入力端子121へ入力された前記変調光信号と入力端子122へ入力された前記プローブ光信号は前記波長合波回路120により合波されて、前記出力端子121に出力され、さらに前記光伝達手段により、入力端子141を経由して前記光信号処理デバイス140に入力される。前記光信号処理デバイス140に入力された前記変調光信号と前記プローブ光信号は前述の4光混合の原理により発生した波長λの光信号及び波長λの光信号とともに、前記光伝達手段により、入力端子131を経由して前記波長分波回路130に入力される。前記波長分波回路130に入力された前記変調光信号及び前記プローブ光信号及び前記波長λの光信号及び前記波長λの光信号は前記波長分波回路130により分波され、前記変調光信号は出力端子132を経由して前記第一出力ポート103へ出力され、前記波長λの光信号又は前記波長λの光信号は前述の原理により前記変調光信号が情報複製された複製光信号として出力端子133を経由して前記第二出力ポート104へ出力される。
【0058】
以上説明したように、本発明の前記光信号分岐装置100は第一入力ポート101から入力される前記変調光信号を分岐することなく、前記変調光信号を情報複製した複製光信号を出力することができるので、後述する光伝送システムの伝送距離の拡大又は接続する光信号受信装置の増加に有効である。
【0059】
(実施形態2)
本発明の第二の実施形態について説明する。本発明の第二の実施形態に係る光信号分岐装置は、図1により説明した第一の実施形態一の前記光信号分岐装置100の前記光信号処理デバイス140として光増幅器を使用する場合である。
【0060】
本実施の形態の前記光信号分岐装置の構成は、図1に示す前記第一の実施形態一の前記光信号分岐装置100の構成において、前記光信号処理デバイス140として前記光増幅器を使用する以外は、前記第一の実施形態一の前記光信号分岐装置100と同様である。従って、本実施の形態の前記光信号分岐装置を図1に示す前記光信号分岐装置100として説明する。
【0061】
前記光信号処理デバイス140として使用する前記半導体光増幅器は入力した光信号の光強度により増幅利得が変化するため、入力した前記変調光信号と前記プローブ光信号を同時に入力した場合、前記プローブ光信号に前記変調光信号が情報複製され、複製光信号を発生する。
【0062】
図4及び図5に前記半導体光増幅器による情報複製の原理を模式的に示す。図4において、波長λの光信号191を、合波器181の合波入力端子183に入力し、半導体光増幅器180により増幅し、分波器182により分波した場合、分波出力端子185に前記波長λの光信号191が増幅された波長λの光信号193が出力され、この増幅過程における半導体光増幅器180の利得は半導体増幅器の利得190のように変化するが、前記波長λの光信号193は波長λの光信号191が増幅された状態である。ここで、合波器181の合波入力端子184には波長λの光信号192は入力されていないので、分波出力端子186には波長λの光信号194は出力しない。
【0063】
次に、図5において、前記波長λの光信号191及び前記波長λの光信号192をそれぞれ前記合波器181の前記合波入力端子183及びに前記合波入力端子184に入力して合波し、前記半導体光増幅器180により増幅し、前記分波器182により分波した場合、前記分波出力端子185に前記波長λの光信号191が増幅された前記波長λの光信号193が出力され、前記分波出力端子186には前記波長λの光信号194が出力されるが、この増幅過程における半導体光増幅器180の利得は前記半導体増幅器の利得190のように変化するので、前記波長λの光信号194は前記波長λの光信号191が反転して情報複製された光信号となって増幅された状態となる。
【0064】
以上説明した原理により、前記光信号分岐装置100は前記変調光信号のマークとスペースが反転した状態で前記プローブ光信号に情報複製し出力する。このように前記変調光信号のマークとスペースが反転した状態で情報複製された前記プローブ光信号からは容易にマークとスペースを再度反転して、前記変調光信号のマークとスペースの情報を再現することができる。
【0065】
以上説明したように、本発明の前記光信号分岐装置100は第一入力ポート101から入力される前記変調光信号を分岐することなく、前記変調光信号の情報を複製した複製光信号を出力することができるので、後述する光伝送システムの伝送距離の拡大又は接続する光信号受信装置の増加に有効である。
【0066】
(実施形態3)
本発明の第三の実施形態について説明する。本発明の第三の実施形態に係る光信号分岐装置は、図1により説明した第一の実施形態の前記光信号分岐装置100の前記光信号処理デバイス140として可飽和吸収素子を使用する場合である。
【0067】
本実施の形態の前記光信号分岐装置の構成は、図1に示す前記第一の実施形態の前記光信号分岐装置100の構成において、前記光信号処理デバイス140として前記可飽和吸収素子を使用する以外は、前記第一の実施形態一の前記光信号分岐装置100と同様である。従って、本実施の形態の前記光信号分岐装置を図2に示す前記光信号分岐装置100として説明する。
【0068】
前記光信号処理デバイス140として使用する前記可飽和吸収素子はある光強度(以下においては閾値レベルという)以上の光信号が入力されると、入力された光信号の強度に応じて吸収係数が減少し光吸収率が飽和するために、透明領域となるか飽和吸収効果を利用した素子である。可飽和吸収素子としてはカーボンナノチューブや可飽和吸収ミラー等があげられる(非特許文献6)
【0069】
図6に可飽和吸収ミラーの光吸収特性の波長特性を示す。図6において縦軸が光反射率であり、横軸が波長である。図6に実線で示すように、光強度が−20dBmと弱い場合には1550nm付近の波長において反射率が減少し、強い吸収が現れていることが分かる。また、図6に破線で示すように、光強度を強くした場合、1550nm吸収率が変化し、可飽和吸収効果が現れているのが確認できる。
【0070】
前記可飽和吸収ミラーに励起光として波長λ=1540nm、プローブ光として波長λ=1551nm、光強度0dBmの光を入力した時の反射率の前記励起光の強度及び前記プローブ光の強度への依存性のグラフを図7に示す。
【0071】
図7において、前記励起光の強度を強くしても反射率はほとんど変化しないが、前記プローブ光の強度を強くした場合は反射率が上昇することが分かる。
【0072】
以上の結果から、前記波長λ=1540nmの光信号が前記可飽和吸収ミラーに与えるエネルギーをON/OFF動作させることにより、前記波長λ=1551nm前記プローブ光の反射率、あるいは透過率を変化させることが可能である。
【0073】
従って、上記可飽和吸収素子の反射率が大きく変化する前記波長λ=1540nmの光信号の強度を閾値レベルPthとした場合、前記波長λ=1540nmの光信号の強度がPthを超える範囲では前記可飽和吸収素子は透明化し、前記波長λ=1551nmの前記プローブ光が通過し、前記波長λ=1540nmの光信号の強度がPthを超えない範囲では上記可飽和吸収素子は不透明であり、前記波長λ=1551nm前記プローブ光が通過できないことになる。
【0074】
上記の原理により、前記波長λ=1540nmの光信号の強度を、例えばマークとスペースで変調された変調光信号として、マークの光強度をPaとし、スペースの光高度をPbとして、一方、前記波長λ=1551nmの前記プローブ光の光信号強度をPcとし場合に、
Pa>Pth>Pb+Pc (6)
と設定することにより、前記変調光信号のマークとスペースの情報を前記プローブ光に情報複製し、複製光信号として出力することができる。上記の情報複製の過程を図8及び図9に示す。
【0075】
図8は前記可飽和吸収素子に前記波長λ=1540nmの光信号を前記変調光信号として入力した場合であり、図8(A)に示す前記変調光信号のマーク部分で前記閾値Pthを越えて、前記可飽和吸収素子が透過領域にあり、図8(B)に示すようにマークが出力され、図8(A)に示す前記変調光信号のスペース部分では前記閾値Pthを越えていないので吸収領域にあり、図8(B)に示すようにスペース部分のレベルが低下して出力されることを示している。
【0076】
図9(A)は前記波長λ=1540nmの光信号を前記変調光信号として、前記波長λ=1551nmの光信号を前記プローブ光信号として、前記変調光信号と前記プローブ光信号を合波して前記可飽和吸収素子に入力した状態を示し、図9(B)は前記可飽和吸収素子の出力を示し、前記変調光信号のスペース部分が減衰している様子を示している。図9(C)は前記可飽和吸収素子の出力を前記波長λ=1540nmの前記変調光信号及び前記波長λ=1551nmの前記プローブ光信号に分波した状態を示し、前記変調光信号は前記可飽和吸収素子に入力される前の状態の情報を保持し、前記波長λ=1551nmの前記プローブ光には前記変調光信号が情報複製された複製光信号となっていることを示している。
【0077】
本実施の形態の前記光信号分岐装置100においては、前記変調光を例えば前記波長λ=1540nmの光信号として前記第一入力ポート101から入力し、前記プローブ光信号を例えば前記波長λ=1551nmの光信号として前記第二入力ポート102から入力すると、上述の前記可飽和吸収の原理により、前記第二出力ポート104から、前記変調光信号を情報複製した前記複製光信号を出力する。
【0078】
以上説明したように、本発明の前記光信号分岐装置100は第一入力ポート101から入力される前記変調光信号を分岐することなく、前記変調光信号を情報複製した複製光信号を出力することができるので、後述する光伝送システムの伝送距離の拡大又は接続する光信号受信装置の増加に有効である。
【0079】
(実施形態4)
本発明の第四の実施形態について説明する。本発明の第四の実施形態に係る光信号分岐装置は、図1により説明した第一の実施形態一の前記光信号分岐装置100と同様な動作を熱光学素子により実現する場合である。
【0080】
熱光学素子は、熱レンズ効果を利用した素子のことであり、温度上昇に伴って屈折率が低くなる媒質を、入力する光に対して透明となる媒質で挟んだ構造となっている。ここで、温度上昇に伴って屈折率が低くなる媒質としては、水などの液体やフッ素芳香族ポリイミドなどが挙げられる(例えば、非特許文献2、3、4参照。)。
【非特許文献2】Eduard Wyss,Michell Roth,Thomas Graf, Heinz P Weber,“Thermooptical Compensation Methods For High−Power Lasers”IEEE Journal of Wuantum Electronics, Vol.38,No12,2002
【非特許文献3】J.Kobayashi,Y.Inoue,T.Matsuura,and T.Marruno, IEICE Trans.Electron.,E81−C,pp.1020−1026 1998
【非特許文献4】Yoshiharu Terui and Shinji Ando,“Anisotropy in thermo−optic coefficients of polyimide films formed on Si substrate” Applied Physics Lrtters,Vol.83,No.23,2003
【0081】
図10は熱光学素子200に対して、波長の異なる2波の光が入力されている状況を示している。図10において、比較的ビーム幅の広い所定の光強度、すなわち閾値Pth以上の励起光210が前記熱光学素子200に入力されると前記励起光210の強度分布によって光軸を中心とした温度勾配が形成され、前記熱光学素子200の屈折率は温度上昇に伴い低下するため、励起光の強い光軸の中心ほど屈折率が低く、周辺部ほど屈折率が高い状態の熱レンズ201が形成される。前記熱レンズ201の屈折率分布は凹レンズと等価であるため、前記励起光210と波長が異なり、かつ比較的ビーム幅の狭いプローブ光220を励起光の光軸からずらして入力すると、凹レンズを通過した状態となり前記プローブ光220の熱レンズ光軸211と異なる方向へ光路を切換えることができる。
【0082】
図11に前記熱光学素子200を使用した場合の本実施形態に係る光信号分岐装置の構成を示す。図11において、光信号分岐装置100は第一入力ポート101、第二入力ポート102、第一出力ポート103、第二出力ポート104、光信号処理デバイスとしての前記熱光学素子200、入力部としてのミラー230、出力部としてのハーフミラー231、ミラー232、ミラー233、フィルター234により構成し、前記光信号分岐装置100内は空間光学系で構成されている場合を示している。
【0083】
図11に示す前記光信号分岐装置100の構成と動作を、変調光信号のみが入力される場合により説明する。図11において前記変調光信号は第一入力ポート101から入力し、ミラー230により反射され、ハーフミラー231を介して熱光学素子200に入力する。ここで、前記熱光学素子200の前記閾値Pthを以下のように設定する。
Pa+Pc>Pth>Pa (7)
かつ
Pth>Pb+Pc (8)
ここで、Paは前記変調光信号のマークの光強度、Pbは前記変調光信号のスペースの光強度、Pcはプローブ光信号の光強度である。
【0084】
図11は前記プローブ光信号が入力されていない状態であり、前記変調光信号は前記閾値以下であるので前記熱光学素子200の屈折率は変化しないために、前記熱光学素子200を通過した前記変調光信号はフィルター234を通過し、第一出力ポート103から出力される。ここで、フィルター234は前記変調光信号を通過させ、前記プローブ光信号を通過させない波長特性を有している。図11において前記変調光信号は実線により示している。
【0085】
次に、図12により、前記変調光信号及び前記プローブ光信号の両方が入力される場合を説明する。図12において、前記プローブ光信号は破線で示しており、第二入力ポート102から入力され、前記ハーフミラー231を通過し、前記変調光信号の光軸から所定の間隔を隔てた位置の光軸に従って前記熱光学素子200に入力される。
【0086】
ここで、図13に数7及び数8で示した前記変調光信号の光強度及び前記プローブ光信号の光強度の関係を模式的に示す。図13において、図13(A)は前記変調光信号の光強度であり、マークの光強度でも前記閾値以下である。図13(B)は前記プローブ光信号であり、変調されていない一定の強度を持っている。図13(C)は前記変調光信号と前記プローブ光信号を合波した光信号の光強度であり、前記変調光信号の前記スペースに相当する部分では前記閾値以下であるが、前記変調光信号の前記マークに相当する部分で前記閾値を越えている。
【0087】
従って、数7及び数8の条件が成立した状態では、前記熱光学素子200は前記変調光信号の前記マークに相当する部分で前記屈折率が変化し、前記熱レンズ効果により、前記変調光信号の光軸と異なる光軸をもって入力する前記プローブ光信号の光路を切換える。
【0088】
図12において、前記変調光信号のスペースに相当する時間の前記プローブ光信号の光路をプローブ光信号光路A235と示し、前記変調光信号のマークに相当する時間の前記プローブ光信号の光路をプローブ光信号光路B236と示している。前記変調光信号のスペースに相当する時間には前記プローブ光信号は前記熱光学素子200を通過した後、前記フィルター234に達し、ここで阻止される。一方、前記変調光信号のマークに相当する時間には前記プローブ光信号は前記熱光学素子200を通過した後、光路を曲げられて、前記ミラー232に反射され、さらにミラー233に再度反射され、第二出力ポート104から出力される。
【0089】
上記の過程において、前記プローブ光信号は前記変調光信号の前記マークに相当する時間のみ第二出力ポート104から出力されるので、前記変調光信号を情報複製した前記複製光信号となって出力されている。
【0090】
上記の例においては、図10に示すように、前記熱光学素子200に形成させた前記熱レンズ201の光軸と平行に前記プローブ光信号を入力した場合を説明したが、図14に示すように、前記プローブ光信号を前記熱レンズ201に対して、所定の角度を持って入力することもできる。
【0091】
図14に前記熱光学素子200に対して前記励起光を斜め方向から入力する場合の原理を示す。図14において、前記励起光210は熱光学素子200の水平軸(X)に対しに対してθの角度で入射した場合、空気の屈折率をn、dn/dT≒0、(但し、Tは温度)の時の前記熱光学素子200の屈折率をn、屈折角をθとすると、X軸に対して、
θ=sin−1((n/n)sinθ) (9)
数9で示す角度だけ回転した新たな座標系X´軸が光軸となるため、前記励起光によって形成される前記熱レンズもX軸からθ回転することになる。さらに、形成された前記熱レンズ201の焦点位置からX軸上に延長線を引いた位置から前記プローブ光信号221を入力することによって、前記熱レンズ201通過後は光軸に対して平行になる。
【0092】
図15に、図14により説明した前記熱光学素子200に対して前記励起光を斜め方向から入力する場合の光信号分岐装置100の構成を示す。図15において、光信号分岐装置100は第一入力ポート101、第二入力ポート102、第一出力ポート103、第二出力ポート104を備えることは図11により説明した光信号分岐装置100と同様である。図15において、光信号分岐装置100は、光信号処理デバイスとしての熱光学素子200、入力部としてのミラー230、出力部としてのミラー237、フィルター234を備える。
【0093】
図15に示す光信号分岐装置100の構成と動作を説明する。図15において、前記変調光信号及び前記プローブ光信号は図11及び図12で説明した光信号分岐装置100の場合と同様に設定する。図15において、前記変調光信号は第一入力ポート101から入力され、ミラー230により反射され熱光学素子200を通過し、さらにミラー237により反射され、フィルター234を通過し、第一出力ポート103から出力される。一方、前記プローブ光信号は第二入力ポート102から入力され、前記熱光学素子200に入力されるが、前記変調光信号がマークの時間は前記プローブ光信号の光路が切換わり、前記プローブ光信号の一部はプローブ光信号光路A235を通り、ミラー237により反射され、フィルター234により阻止される。また、前記変調光信号がスペースの時間には、前記熱光学素子200に入力された前記プローブ光信号はプローブ光信号の光路B236を通り、第二出力ポート104から出力される。従って、前記プローブ光信号の一部は前記変調光信号の前記マーク及び前記スペースが逆転して情報複製された前記複製光信号となって出力される。前記マーク及び前記スペースが逆転して情報複製された前記複製光信号から既存の技術により容易に前記変調光信号の前記マーク及び前記スペースを再現することができる。
【0094】
ここで、前記変調光信号の波長をλとし、前記プローブ光信号の波長をλ10として、前記変調光信号及び前記プローブ光信号の第一出力ポート103及び第二出力ポート104から出力される光信号波形を図16に示す。図16(A)に示すように、第一出力ポート103からは前記変調光信号が出力され、かつ前記プローブ光信号は出力されず、一方、図16(B)に示すように、第二出力ポート104からは、前記変調光信号は出力されず、前記プローブ光信号に前記変調光信号の前記マーク及び前記スペースが逆転して情報複製された複製光信号が出力される。
【0095】
以上の説明においては前記光路が切換わり前記プローブ光を前記複製光信号として、前記第二出力ポート104から出力する場合を説明した。しかし、前記光路が切換わっていない前記プローブ光には前記変調光信号の前記マーク及び前記スペースが逆転して複製されているので、前記光路が切換わっていない前記プローブ光を前記複製光信号として出力することもできる。具体的には、図11及び図12、及び図15に示す前記フィルター234を波長分波回路に置き換えることにより、前記変調光信号と前記光路が切換わっていない前記プローブ光を分波して、別途用意する光伝達手段により、前記変調光信号を第一出力ポート103から出力し、前記光路が切換わっていない前記プローブ光を前記複製光信号として前記第二出力ポート104から出力することもできる。
【0096】
以上説明したように、本発明の前記光信号分岐装置100は第一入力ポート101から入力される前記変調光信号を分岐することなく、前記変調光信号を情報複製した複製光信号を出力することができるので、後述する光伝送システムの伝送距離の拡大又は接続する光信号受信装置の増加に有効である。
【0097】
(実施形態5)
本発明の第五の実施形態について説明する。本発明の第五の実施形態に係る光信号分岐装置は、図1により説明した第一の実施形態一の前記光信号分岐装置100と同様な動作をカー媒質により実現する場合である。
【0098】
本実施の形態の前記光信号分岐装置においては、前記カー媒質に前記変調光信号を入力して、入力した光強度に応じて屈折率異方性を生じさせ、異方性が生じた時のみ前記プローブ光信号を透過させる構成としている。
【0099】
図17に本実施の形態の前記光信号分岐装置の構成を示す。図17において、本実施の形態の前記光信号分岐装置100は、第一入力ポート101、第二入力ポート102、第一出力ポート103、第二出力ポート104、光信号処理デバイスとしてのカー媒質300、入力部としてのミラー311、偏光子312、偏光子313、出力部としてのミラー314、検光子315により構成し、前記光信号分岐装置100内は空間光学系で構成されている場合を示している。ここで、偏光子313の偏光方向と検光子315の偏光方向は直交するクロスニコルに配置され、また、偏光子312の偏光方向は偏光子313の偏光方向に対して45°傾けた状態に設置してある。
【0100】
図17は本実施の形態の前記光信号分岐装置100に第一入力ポート101から前記変調光信号のみが入力される場合を示し、前記変調光信号を実線で示している。図17において、前記変調光信号は第一入力ポート101から入力され、ミラー311で反射され、偏光子312を通過し、さらにカー媒質300を通過し、ミラー314で反射され、第一出力ポート103から出力される。
【0101】
次に、図18は本実施の形態の前記光信号分岐装置100に第一入力ポート101から前記変調光信号及び第二入力ポート102から前記プローブ光信号が入力される場合を示し、前記プローブ光信号の光路を破線で示している。
【0102】
図18において、最初に前記プローブ光信号のみが入力された状態では、前記プローブ光信号は偏光子313を通過し、カー媒質300を通過し、検光子315に達するが、ここで偏光子313と検光子315は偏光軸が直交するクロスニコルに配置されているので、前記プローブ光信号は検光子315を通過できないので、第二出力ポート104には光信号は出力しない。次に、前記変調光信号が入力されている状態では、前記変調光信号のマークの部分により、前記カー媒質300の屈折率は前記変調光信号の偏光方向と、その垂直方向に異方性を生じるために、偏光子313を通過した直線偏波の前記プローブ光信号は前記カー媒質300を通過すると楕円偏波に変わり、前記プローブ光信号の一部は検光子315を通過し第二出力ポート104から出力される。
【0103】
図19は偏光子313、カー媒質300、検光子315、前記変調光信号及び前記プローブ光信号の偏光状態を示している。
【0104】
以上説明したように、本実施の形態の前記光信号分岐装置100は前記変調光信号の前記マークの部分で前記プローブ光信号の一部を前記第二出力ポート104から出力し、前記変調光信号の前記スペースの部分で前記プローブ光信号を前記第二出力ポート104から出力しないので、前記第二出力ポート104からは前記変調光信号を情報複製した複製光信号が出力される。
【0105】
以上説明したように、本発明の前記光信号分岐装置100は第一入力ポート101から入力される前記変調光信号を分岐することなく、前記変調光信号を情報複製した複製光信号を出力することができるので、後述する光伝送システムの伝送距離の拡大又は接続する光信号受信装置の増加に有効である。
【0106】
(実施形態6)
本発明の第六の実施形態について説明する。本発明の第六の実施形態に係る光信号伝送システムは請求項1から7のいずれかに記載の前記光信号分岐装置100を使用した光信号伝送システム及び光伝送方法である。
【0107】
図20は本発明の第六の実施形態に係る光信号伝送システムの構成例である。図20においては、光信号分岐装置100について、光信号送信装置10に近い方から順に光信号分岐装置100a、光信号分岐装置100b、・・・と表記しており、さらに第一入力ポート101、第二入力ポート102、第一出力ポート103、第二出力ポート104、幹線側光伝送路70、支線側光伝送路71、支線側光伝送路72、光信号受信装置20、光信号発生器21、光信号受信器22についても同様の方法で表記している。
【0108】
図20において、光信号送信装置10の備える光信号送信器11の出力端子は第一の伝送区間を構成する幹線側光伝送路70aにより光信号分岐装置100aの第一入力ポート101aに接続されている。前記光信号分岐装置100aの第一出力ポート103aは第二の伝送区間を構成する幹線側光伝送路70bにより光信号分岐装置100bの第一入力ポート101bへ接続されている。前記光信号分岐装置100bの第二出力ポート104bは第三の伝送区間を構成する幹線側光伝送路70cに接続され、さらに同様に繰り返して所定の数の前記光信号分岐装置100が接続されている。図20においては前記光信号分岐装置100を2台のみ図示しているが、所定の台数を接続することができる。
【0109】
一方、前記光信号分岐装置100aの第二入力ポート102aは支線側光伝送路71aにより光信号受信装置20aの光信号発生器21aに接続され、前記光信号分岐装置100aの第二出力ポート104aは支線側光伝送路72aにより前記光信号受信装置20aの光信号受信器22aに接続されている。さらに前記光信号分岐装置100bの第二入力ポート102bは支線側光伝送路71bにより光信号受信装置20bの光信号発生器21bに接続され、前記光信号分岐装置100bの第二出力ポート104bは支線側光伝送路72bにより前記光信号受信装置20bの光信号受信器22bに接続されている。
【0110】
本光信号伝送システムをn区間の前記幹線側光伝送路70で構成する場合は、前記光信号分岐装置100及び前記光信号受信器20をn−1台接続し、n区間目の幹線側光伝送路の終端部分は前記光信号分岐装置100を経由することなく、図示していない終端光信号受信装置を接続することになるが、前記終端光信号受信装置は前記光信号受信器20と類似の構成で容易に実現できるので説明は省略する。
【0111】
図20に示す前記光信号伝送システムの動作を説明する。前記光信号送信装置10から送信される前記変調光信号は、幹線側光伝送路70a及び前記第一入力ポート101aを経由して前記光信号分岐装置100aに入力される。前記光信号分岐装置100aに入力された前記変調光信号は前述の原理に従って第二出力ポート104aへ出力され、さらに幹線側光伝送路70bを経由して、光信号分岐装置100bへ入力される。
【0112】
一方、光信号受信装置20aの光信号発生器21aから前記プローブ光信号を出力した場合、出力された前記プローブ光信号は支線側光伝送路71a及び光信号分岐装置100aの第二入力ポート102aを経由して光信号分岐装置100aに入力され、前述の原理により、前記変調光信号を情報複製した前記複製光信号が前記第二出力ポート104aから出力される。前記第二出力ポート104aから出力された前記複製光信号は支線側光伝送路72aを経由して前記光信号受信装置20aの光信号受信器22aに入力され受信される。
【0113】
上記の図20においては、前記光信号分岐装置100と前記光信号受信装置20の間を前記支線側光伝送路71及び前記支線側光伝送路72の2条の支線側光伝送路により接続する場合を示しているが、前記光信号分岐装置100と前記光信号受信装置20の間を1条の伝送路により接続する場合を図21及び図22に示す。
【0114】
図21及び図22においては前記光信号分岐装置100と前記光信号受信装置20の間の接続関係のみを示して説明するが、他の部分の構成及び動作は図20の場合と同様である。
【0115】
図21により、前記光信号分岐装置100及び光信号受信装置20にそれぞれサーキュレータを備えて、前記光信号分岐装置100と光信号受信装置20の間を1条の支線側光伝送路73で接続する場合を説明する。
【0116】
図21において、前記光信号分岐装置100aの第二入力ポート102aは光伝達手段によりサーキュレータ30aの第三端子33aに接続され、第二出力ポート104aは光伝達手段により前記サーキュレータ30aの第一端子31aに接続されている。前記サーキュレータ30aの第二端子32aは支線側光伝送路73aにより光信号受信装置20aの備えるサーキュレータ40aの第一端子41aに接続されている。前記光信号受信装置20aにおいて前記サーキュレータ40aの第二端子42aは光信号受信器22aに接続され、第三端子43aは光伝達手段により光信号発生器21aに接続されている。前記サーキュレータ30aは前記第一端子31aに入力された光信号を前記第二端子32aに出力し、前記第二端子32aに入力された光信号を前記第三端子33aに出力し、前記第三端子33aを入力された光信号は前記第一端子31aに出力する機能を有する。前記サーキュレータ40aは前記第一端子41aに入力された光信号を前記第二端子32aに出力し、前記第二端子42aに入力された光信号は前記第三端子43aに出力し、前記第三端子43aに入力された光信号を前記第一端子41aに出力する機能を有する。
【0117】
図21に示す前記光信号分岐装置100a及び光信号受信装置20aの動作について、図20により説明した動作と異なる部分を説明する。幹線側光伝送路70aから伝送されて来る前記変調光信号は光信号分岐装置100aの第一入力ポート101aを介して光信号分岐装置100aに入力され、さらに前述と同様に第二出力ポート104aを介して幹線側光伝送路70bへ伝送される。
【0118】
一方、前記光信号受信装置20aの前記光信号発生器21aが前記プローブ光信号を出力した場合、前記プローブ光信号は前記光伝達手段により前記サーキュレータ40aの前記第三端子43aに入力される。前記第三端子43aに入力された前記プローブ光信号は前記端子41a及び前記支線側光伝送路73aを経由して、前記サーキュレータ30aの前記第二端子32aに入力される。前記第二端子32aに入力された前記プローブ光信号は前記サーキュレータ30aの前記第三端子33aを経由し、前記光信号分岐装置100aの前記第二入力ポート102aへ入力される。前記光信号分岐装置100aの前記第二入力ポート102aへ入力された前記プローブ光信号は前述と同様の原理により、前記変調光信号を情報複製した複製光信号を第二出力ポート104aへ出力する。
【0119】
第二出力ポート104aから出力された前記複製光信号は前記光伝達手段により前記サーキュレータ30aの前記第一端子31aに入力される。前記サーキュレータ30aの前記第一端子31aに入力された前記複製光信号は前記第二端子32aを経由し、支線側光伝送路73aにより光信号受信装置20aの前記サーキュレータ40aの前記第一端子41aに入力される。前記サーキュレータ40aの前記第一端子41aに入力された前記複製光信号は前記第二端子42aを経由し前記光伝達手段により前記光信号受信器22aに入力され、受信される。
【0120】
次に、図22により、前記光信号分岐装置100及び光信号受信装置20にそれぞれ合分波器を備えて、前記光信号分岐装置100と光信号受信装置20の間を1条の支線側光伝送路73で接続する場合を説明する。図22において、前記光信号分岐装置100aの前記第二入力ポート102aは光伝達手段により合分波器50aの第二端子52aに接続され、前記第二出力ポート104aは光伝達手段により前記合分波器50aの第三端子53aに接続されている。前記合分波器50aの第一端子51aは支線側光伝送路73aにより光信号受信装置20aの備える合分波器60aの第一端子61aに接続されている。
【0121】
前記光信号受信装置20aにおいて前記合分波器60aの第三端子63aは光信号受信器22aに接続され、第二端子62aは光伝達手段により光信号発生器21aに接続されている。
【0122】
前記合分波器50aは前記第一端子51aに異なる所定の波長を持つ2波の光信号が合波された光信号が入力された場合は分波して、前記第二端子52a及び前記第三端子53aのそれぞれに出力し、さらに、前記第二端子52a及び前記第三端子53aのそれぞれに波長の異なる所定の波長の光信号が入力された場合は合波して、前記第一端子51aに合波光信号として出力する機能を有する。
【0123】
前記合分波器60aは前記第一端子61aに異なる所定の波長を持つ2波の光信号が合波された光信号が入力された場合は分波して、前記第二端子62a及び前記第三端子63aのそれぞれに出力し、さらに、前記第二端子62a及び前記第三端子63aのそれぞれに波長の異なる所定の波長の光信号が入力された場合は合波して、前記第一端子61aに合波光信号として出力する機能を有する。
【0124】
図22に示す前記光信号分岐装置100a及び光信号受信装置20aの動作について、図20により説明した動作と異なる部分を説明する。幹線側光伝送路70aから伝送されて来る前記変調光信号は光信号分岐装置100aの第一入力ポート101aを介して光信号分岐装置100aに入力され、さらに前述と同様に第二出力ポート104aを介して幹線側光伝送路70bへ伝送される。
【0125】
一方、前記光信号受信装置20aの前記光信号発生器21aが前記プローブ光信号を出力した場合、前記プローブ光信号は前記光伝達手段により前記合分波器60aの前記第二端子62aに入力される。前記第二端子62aに入力された前記プローブ光信号は前記端子61a及び前記支線側光伝送路73aを経由して、前記合分波器50aの前記第一端子51aに入力される。前記第一端子51aに入力された前記プローブ光信号は前記合分波器50aの前記第二端子52aを経由し、前記光信号分岐装置100aの前記第二入力ポート102aへ入力される。前記光信号分岐装置100aの前記第二入力ポート102aへ入力された前記プローブ光は前述と同様の原理により、前記変調光信号を情報複製した複製光信号を第二出力ポート104aへ出力する。
【0126】
第二出力ポート104aから出力された前記複製光信号は前記光伝達手段により前記合分波器50aの前記第三端子53aに入力される。前記合分波器50aの前記第三端子53aに入力された前記複製光信号は前記合分波器50aの前記第一端子51aに出力され、支線側光伝送路73aを経由して光信号受信装置20aの前記合分波器60aの前記第一端子61aに入力される。前記合分波器60aの前記第一端子61aに入力された前記複製光信号は前記第三端子63を経由し前記光伝達手段により前記光信号受信器22aに入力され受信される。
【0127】
以上説明したように、本発明の光信号伝送システム及び光信号伝送方法は、伝送されて来る変調光信号を分岐装置において分岐することなく次の伝送区間へ送信し、同時に前記分岐装置において前記変調光信号を情報複製した複製光信号を光信号受信装置へ送信するので、光伝送システムの伝送距離の拡大又は接続する受信装置の増加に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の光信号分岐装置、光信号伝送システム及び光信号伝送方法は、簡易な装置構成により多数の光信号受信装置に情報を伝送する情報分配ネットワークなどに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】実施形態に係る光信号分岐装置の概略構成図である。
【図2】実施形態に係る4光波混合の測定例の説明図である。
【図3】実施形態に係る光信号波形の説明図である。
【図4】実施形態に係る原理の説明図である。
【図5】実施形態に係る原理の説明図である。
【図6】実施形態に係る可飽和吸収特性の説明図である。
【図7】実施形態に係る可飽和吸収特性の説明図である。
【図8】実施形態に係る情報複製の説明図である。
【図9】実施形態に係る情報複製の説明図である。
【図10】実施形態に係る熱光学素子の説明図である。
【図11】実施形態に係る光信号分岐装置の構成の説明図である。
【図12】実施形態に係る光信号分岐装置の構成の説明図である。
【図13】実施形態に係る光信号波形の説明図である。
【図14】実施形態に係る熱光学素子の説明図である。
【図15】実施形態に係る光信号分岐装置の他の構成の説明図である。
【図16】実施形態に係る光信号波形の説明図である。
【図17】実施形態に係る光信号分岐装置の構成の説明図である。
【図18】実施形態に係る光信号分岐装置の動作の説明図である。
【図19】実施形態に係る光学系の偏光の状態の説明図である。
【図20】実施形態に係る光信号分岐装置の構成の説明図である。
【図21】実施形態に係る光信号分岐装置の他の構成の説明図である。
【図22】実施形態に係る光信号分岐装置の他の構成の説明図である。
【図23】従来の光信号伝送システムの構成の説明図である。
【図24】非対称カプラの原理図を説明する図である。
【図25】従来の光信号伝送システムにおける最適分岐比を説明する図である。
【符号の説明】
【0130】
10 光信号送信装置
11 光信号送信器
20 光信号受信装置
20a 光信号受信装置
20b 光信号受信装置
21 光信号発生器
21a 光信号発生器
21b 光信号発生器
22 光信号受信器
22a 光信号受信器
22b 光信号受信器
30a サーキュレータ
31a 第一端子
32a 第二端子
33a 第三端子
40a サーキュレータ
41a 第一端子
42a 第二端子
43a 第三端子
50a 合分波器
51a 第一端子
52a 第二端子
53a 第三端子
60a 合分波器
61a 第一端子
63a 第三端子
62a 第二端子
70 幹線側光伝送路
70a 幹線側光伝送路
70b 幹線側光伝送路
70c 幹線側光伝送路
71 支線側光伝送路
71a 支線側光伝送路
71b 支線側光伝送路
72 支線側光伝送路
72a 支線側光伝送路
72b 支線側光伝送路
73a 支線側光伝送路
100 光信号分岐装置
100a 光信号分岐装置
100b 光信号分岐装置
101 第一入力ポート
101a 第一入力ポート
101b 第一入力ポート
102 第二入力ポート
102a 第二入力ポート
102b 第二入力ポート
103 第一出力ポート
103a 第一出力ポート
103b 第一出力ポート
104 第二出力ポート
104a 第二出力ポート
104b 第二出力ポート
110 光信号処理デバイス
120 波長合波回路
121 入力端子
122 入力端子
123 出力端子
130 波長分波回路
131 入力端子
132 出力端子
133 出力端子
140 光信号処理デバイス
141 入力端子
142 出力端子
150 χ(3)媒質
151 合波器
152 分波器
161 合波入力端子
162 合波入力端子
163 分波出力端子
164 分波出力端子
165 分波出力端子
166 分波出力端子
171 波長λの光信号
172 波長λの光信号
173 波長λの光信号
174 波長λの光信号
175 波長λの光信号
176 波長λの光信号
180 半導体光増幅器
181 合波器
182 分波器
183 合波入力端子
184 合波入力端子
185 分波出力端子
186 分波出力端子
190 半導体増幅器の利得
191 波長λの光信号
192 波長λの光信号
193 波長λの光信号
194 波長λの光信号
200 熱光学素子
201 熱レンズ
210 励起光
211 熱レンズの光軸
212 熱レンズの焦点
220 プローブ光
230 ミラー
231 ハーフミラー
232 ミラー
233 ミラー
234 フィルター
235 プローブ光信号光路A
236 プローブ光信号光路
237 ミラー
300 カー媒質
311 ミラー
312 偏光子
313 偏光子
314 ミラー
315 検光子
910 光信号送信装置
911 光信号送信器
920a 光信号受信装置
920b 光信号受信装置
920n 光信号受信装置
921a 光信号受信器
921b 光信号受信器
921n 光信号受信器
940a 光信号分岐装置
940b 光信号分岐装置
940(n−1) 光信号分岐装置
941 非対称カプラ
970a 幹線側光伝送路
970b 幹線側光伝送路
970n 幹線側光伝送路
971a 支線側光伝送路
971b 支線側光伝送路
971(n−1) 支線側光伝送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出力ポートとして第一入力ポート、第二入力ポート、第一出力ポート及び第二出力ポート、及び光との相互作用により光信号処理する光信号処理デバイスを備える光信号分岐装置であって、
前記第一入力ポートから入力される変調された変調光信号に前記光信号処理デバイスを通過させて前記第一出力ポートから出力し、
前記第一入力ポートから入力される変調された変調光信号と前記光信号処理デバイスとの相互作用又は前記第二入力ポートから入力されるプローブ光信号と前記光信号処理デバイスとの相互作用により前記変調光信号を情報複製した複製光信号を前記第二出力ポートから出力することを特徴とする光信号分岐装置。
【請求項2】
前記光信号処理デバイスは、
異なる波長の前記第一入力ポートからの前記変調光信号と前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号を波長合波する波長合波回路と、
前記第一入力ポートからの前記変調光信号の角周波数をwとし、前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の角周波数をwとした場合、4光波混合により、前記変調光信号を情報複製した角周波数w=2w―w、およびw=2w―wの前記複製光信号を発生する4光波混合波発生素子と、
前記4光波混合波発生素子からの合波された前記変調光信号と前記複製光信号のうち、前記変調光信号を第一出力ポートに、前記複製光信号のうちの少なくとも1を第二出力ポートに波長分波する波長分波回路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の光信号分岐装置。
【請求項3】
前記光信号処理デバイスは、
異なる波長の前記第一入力ポートからの前記変調光信号と前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号を波長合波する波長合波回路と、
前記第一入力ポートからの前記変調光信号がマークレベルのとき前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の光増幅度が減少し、スペースレベルのとき前記第二入力ポートからのプローブ光信号の光増幅度が増大することによって、前記変調光信号の前記マークレベルと前記スペースレベルが前記プローブ光信号の光レベルの変化に情報複製された複製光信号を発生する半導体光増幅器と、
前記半導体光増幅器からの合波された前記変調光信号と前記複製光信号のうち、前記変調光信号を第一出力ポートに、前記複製光信号を第二出力ポートに波長分波する波長分波回路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の光信号分岐装置。
【請求項4】
前記光信号処理デバイスは、
異なる波長の前記第一入力ポートからの前記変調光信号と前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号を波長合波する波長合波回路と、
前記第一入力ポートからの前記変調光信号がマークレベルのとき前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の透過度が増大し、スペースレベルのとき前記第二入力ポートからのプローブ光信号の透過度が減少することによって、前記変調光信号の前記マークレベルと前記スペースレベルが前記プローブ光信号の光レベルの変化に情報複製された複製光信号を発生する可飽和光吸収素子と、
前記可飽和光吸収素子からの合波された前記変調光信号と前記複製光信号のうち、前記変調光信号を第一出力ポートに、前記複製光信号を第二出力ポートに波長分波する波長分波回路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の光信号分岐装置。
【請求項5】
前記光信号処理デバイスは、
異なる波長の前記第一入力ポートからの前記変調光信号と前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の各々の前記光信号処理デバイスへの入射角度及び位置を所定の関係に保って入力する入力部と、
前記第一入力ポートからの変調光信号がマークレベルのとき屈折率分布が変化し前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の光路を屈折率が大きくなった方向へ変化させ、スペースレベルのとき前記屈折率分布が変化することなく前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の光路を変化させないことによって、前記変調光信号のマークとスペースが前記光路の変化した前記プローブ光信号又は前記光路の変化しない前記プローブ光信号の切換わりに情報複製された複製光信号を発生する屈折率変化素子と、
前記屈折率変化素子からの前記変調光信号と前記複製光信号の中から光路の差により分離した1の前記複製光信号のうち、前記変調光信号を第一出力ポートに、前記複製光信号を第二出力ポートに出力する出力部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の光信号分岐装置。
【請求項6】
前記光信号処理デバイスは、
異なる波長の前記第一入力ポートからの前記変調光信号と前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の各々の前記光信号処理デバイスへの入射角度及び位置を所定の関係に保って入力する入力部と、
前記第一入力ポートからの前記変調光信号がマークレベルのとき光を吸収して発生した熱により屈折率分布が変化し、前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の光路を前記屈折率が大きくなった方向へ切換え、スペースレベルのとき屈折率分布が変化することなく前記第二入力ポートからのプローブ光信号の光路を切換えないことによって、前記変調光信号のマークとスペースが前記光路の切換わった前記プローブ光信号又は前記光路の切換わっていない前記プローブ光信号の切換わりに情報複製された複製光信号を発生する熱光学素子と、
前記熱光学素子からの前記変調光信号と前記複製光信号の中から光路の切換わりにより分離した1の前記複製光信号のうち、前記変調光信号を第一出力ポートに、複製光信号を第二出力ポートに出力する出力部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の光信号分岐装置。
【請求項7】
前記光信号処理デバイスは、
異なる波長の前記第一入力ポートからの前記変調光信号と前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号の各々の前記光信号処理デバイスへの入射角度及び位置を所定の関係に保って入力する入力部と、
前記第一入力ポートからの前記変調光信号がマークレベルのとき光カー効果により屈折率異方性を生じ前記第二入力ポートからの前記プローブ光信号を楕円偏光状態に変化させ、スペースレベルのとき屈折率異方性を生じず前記第二入力ポートからのプローブ光信号の偏光状態を変化させないことにより前記変調光信号の前記マークレベルと前記変調光信号の前記スペースレベルが前記プローブ光信号の偏光状態の変化として情報複製された複製光信号を発生するカー効果素子と、
前記カー効果素子からの前記変調光信号と偏光状態により分離した複製光信号のうち、前記変調光信号を第一出力ポートに、前記複製光信号として第二出力ポートに出力する出力部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の光信号分岐装置。
【請求項8】
変調された変調光信号を幹線側光伝送路に向けて送信する光信号送信装置と、
前記幹線側光伝送路の途中に前記第一入力ポート及び前記第一出力ポートを介在させることによって前記光信号送信装置に縦続接続された1以上の請求項1から7のいずれかに記載の光信号分岐装置と、
前記第二入力ポート及び前記第二出力ポートを介して支線側光伝送路によって前記光信号分岐装置のそれぞれに接続され、前記プローブ光信号を第二入力ポートに送信し、前記第二出力ポートからの複製光信号を受信する1以上の光信号受信装置と、
を備えることを特徴とする光信号伝送システム。
【請求項9】
光信号送信装置に変調された変調光信号を縦続接続された1以上の請求項1から7のいずれかに記載の光信号分岐装置へ送信させ、光信号受信装置にプローブ光信号を前記光信号分岐装置へ送信させ、前記変調光信号と前記光信号分岐装置に備える光信号処理デバイスとの相互作用又は前記変調光信号を制御するためのプローブ光信号と前記光信号処理デバイスとの相互作用により前記光信号分岐装置に前記変調光信号を情報複製させ、情報複製した複製光信号を前記光信号分岐装置に各々の前記光信号受信装置へ送信させることを特徴とする光信号伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−310069(P2008−310069A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158182(P2007−158182)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】