説明

光偏向器、光走査装置および画像形成装置

【課題】 回転多面鏡をカバーで覆った光偏向器は、カバー内部の回転多面鏡にビームを入射し、入射されたビームを偏向反射してカバー外部に出射するための窓が設けられている。この窓はカバーの側面に設けられているので、樹脂を用いてカバーを成形する場合、窓がアンダーカット部になり、金型が高価になるという問題があった。
【解決手段】天板と、天板の周縁部から下方に延びた側板とを有し、側板に窓が形成されたカバーを備えた光偏向器において、カバーの天板に窓の幅以上の幅の開口部を形成し、この開口部は窓に連通すると共にカバーの外側からシートで塞ぎ、透明プレートはシートに当接してカバーに取り付けたので、カバーを成形するに当たりアンダーカット部が無くなり、安価な光偏向器を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームを偏向反射するポリゴンミラーを備えた光偏向器、光走査装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタや複写機等の画像形成装置では、例えばレーザ素子などの発光素子(光源)から出射(出力)された光ビームをポリゴンミラーの各反射面で偏向反射する光偏向器が用いられている。光偏向器としては、図30に示したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図30に示した光偏向器105は、アルミニウム合金製のハウジング100に固定配設された円柱形状のセラミック製または金属製の固定軸101と、この固定軸101に回転自在に支持される回転体110とを有している。低振動が要求される光偏向器を製造する場合は、ハウジング100の材質をアルミニウム合金よりも比重が大きい亜鉛合金とすることが望ましい。
【0004】
この回転体110は、固定軸101との間にわずかの隙間をもって配設されるセラミック製または金属製の回転軸111と、この回転軸111の上部内側に固定配設されるリング状のマグネット112と、回転軸111の中央部外側に固定配設されるポリゴンミラー113と、回転軸111の下部外側にフランジ114を介して固定配設されるリング状の駆動マグネット115とを備えている。尚、回転軸111の下端部には、回転体110の重量の偏心を修正するためのバランスウエイト117が取り付けられる円環状の溝116が形成されている。
【0005】
また、固定軸101の上端には、回転体110に設けられたリング状マグネット112と対向するようにリング状のマグネット102が固定配設されており、これらリング状のマグネット102及び112によって回転体110をスラスト方向に軸受けするスラスト磁気軸受Sが構成されている。
【0006】
さらに、ハウジング100には、回転体110に設けられたリング状の駆動マグネット115と対向するように鉄心コイル103が固定配設されており、これらリング状の駆動マグネット115と鉄心コイル103によって回転体110を回転させるブラシレスモータMが構成されている。
【0007】
また、回転体110の回転軸111のうち、固定軸101の外周面101aと対向する内周面111aは、高精度な軸受面仕上げが施されている。そして、この回転軸111の内周面111aと対向する固定軸101の外周面101aには図中破線で示すようにヘリングボーン状の溝104が形成され、これら回転軸111の内周面111aと、固定軸101の外周面101aに設けられた溝104によって、回転体110をラジアル方向に支持するラジアル動圧軸受Rが構成されている。
【0008】
この光偏向器105は、ブラシレスモータMにより回転体110を回転させると、回転体110が、ラジアル動圧軸受Rにより固定軸101に対して一定距離(隙間)をもって非接触に支持されると共に、スラスト磁気軸受Sにより固定軸101に対して一定高さに支持される。また、回転体110の重心の位置を回転体110の略中心の位置にすることができるので、回転体110を安定して回転させることができる。
【0009】
前記した光偏向器105は、近年、高速化が進み、回転中の風切り音による騒音等が問題となってきたため、ポリゴンミラー113の周囲をカバーで覆う光偏向器が採用されている(例えば、特許文献2〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平05−071532号公報
【特許文献2】特開平11−264949号公報
【特許文献3】特開平11−183836号公報
【特許文献4】特開2008−181029号公報
【特許文献5】特開2008−197295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、前記した特許文献2〜5に記載された光偏向器は、光ビームが通過する窓がカバーの側板に形成されたものであるため、このカバーを射出成形金型を用いて射出成形して製造する場合、窓がアンダーカット部になるという問題がある。ここで、アンダーカット部とは、カバーを射出成形金型から取り出す際に型開き方向に対して引っ掛かりとなる部分をいう。
【0012】
この点について図31を用いて具体的に説明する。
図31は、従来のカバー付き光偏向器780の斜視図である。この光偏向器780は、前記した光偏向器105と同様の構成の光偏向器をカバー719で覆ったものである。
【0013】
カバー719は、天板760と、この天板719の周縁部から下向き(Z軸のマイナスの向き)に伸びた側板769を有しており、側板769には、窓720が形成されている。
【0014】
図31に示したカバー719を射出成形金型を用いて射出成形する場合は、射出成形金型を構成する可動型および固定型の型開き方向は、一般にZ軸方向となる。こうすることにより、カバー719の主要な構成要素である天板760、射出成形金型769等の外壁部が一体成形できると共に、粉塵捕捉フィルタ724の下にある空気吸引孔(図示せず)および空気排出孔723も同時に成形できる。
【0015】
しかし、側板769に形成された窓720は、型開き方向(Z方向)とは垂直方向(Y方向)に形成されており、アンダーカット部となる。このように、カバーにアンダーカット部がある場合には、型開き時に窓720を形成した入れ子を逃がすために射出成形金型にスライド構造を設ける必要があるため、射出成形金型が高価になるという問題がある。このため、光偏向器等の製品の製造コストが大幅にアップすることになる。また、スライド構造という可動部があるため、射出成形金型の構造が複雑でメンテナンスに時間がかかるだけではなく、射出成形金型および入れ子の摩耗も発生するので、メンテナンス頻度が増えるという問題もある。
【0016】
本発明は、かかる問題を解決するためにさなれたものであって、窓がアンダーカット部にならず、射出成形金型にスライド構造が不必要な安価な光偏向器等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(第1発明)
第1発明は、光ビームを偏向反射するポリゴンミラーと、天板および天板の周縁部から下向きに延びた側板を有すると共に、少なくともポリゴンミラーを覆い、光ビームが通過する窓が側板に形成された樹脂製のカバーと、窓を覆う透明プレートとを備えた光偏向器に関するものである。そして、この光偏向器は、カバーの天板に窓の光ビームの主走査方向の幅以上の幅の開口部が形成されており、開口部は、窓と連通すると共に、カバーの外側からシートで塞がれており、透明プレートは、シートに当接されてカバーに取り付けられたものである。
【0018】
ここで、主走査方向とは、光偏向器が光ビームを偏向した際の光ビームの移動方向をいう。また、主走査方向が感光体ドラムの長手方向(軸方向)である場合、副走査方向とは、感光体ドラムの表面の移動方向である。これら主走査方向と副走査方向は、互いに直交する関係にある。また、連通とは隔絶された2つの空間(窓、開口部)を連続状態にすることをいい、当接とは突き当たった状態に接触させることをいう。
【0019】
かかる構成により、側板に窓が付いたカバーを射出成形金型を用いて射出成形して製造するに際し、射出成形金型を構成する可動型または固定型のキャビティ内に、窓および開口部を形成する突起を設ければ良く、可動型および固定型にスライド構造(機構)を設ける必要が無い。
【0020】
つまり、側板に窓が付いたカバーは、可動型と固定型が型閉じした際に形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出し、キャビティ内が溶融樹脂で満たされた後、溶融樹脂を冷却固化させ、その後、可動型を固定型から離れる方向に型開きさえすれば、製造することができる。
【0021】
このため、側板に窓が付いたカバーを製造するために、射出成形金型にスライド構造(機構)を持たせる必要が無いので、射出成形金型を安価に製造できる。すなわち、カバーの製造コストを安価にすることができ、ひいては光偏向器のコストを安価にできる。
【0022】
(第2発明)
第2発明は、第1発明の光偏向器において、透明プレートは、カバーに接着剤により取り付けられており、この接着剤は、固化後も弾性を有するものである。
【0023】
かかる構成により、前記した第1発明の効果を奏するのみならず、透明プレートはカバーに取り付けられている状態であっても自由に伸び縮みできるという効果がある。つまり、透明プレートは、カバーの内部および/または外部の温度変化に応じて、自由に伸びたり縮んだりすることができるので、カバーの内部または外部の温度変化により透明プレートに歪みが生じない。このため、透明プレートを通過する光ビームが透明プレートの歪みの影響を受けて曲がる等することが無い。
(第3発明)
第3発明は、第1発明または第2発明の光偏向器において、シートの少なくとも一面は、粘着性を有する粘着面であり、この粘着面は、カバーの内部に面したものである。
【0024】
第1発明および第2発明の光偏向器は、天板に形成された開口部をカバーの外側からシートにより塞いでいるので、開口部とシートによってカバー内面に凹部が形成される。そうすると、かかる凹部は、ポリゴンミラーの回転により発生する空気流により飛ばされたカバー内部の埃等の吹き溜まり部になる。
ここで、吹き溜まり部とは、カバー内部の埃等がポリゴンミラーの回転に伴い発生する空気流により流れて溜まっている場所をいう。
【0025】
そして、第3発明のシートは、粘着面がカバーの内側に面する(向く)ようにして貼り付けられ、この粘着面が凹部の一面を構成しているので、埃等の吹き溜まり部に粘着面が面していることになる。このため、シートの粘着面にカバー内部の埃等が付着し易い。また、凹部内は、ポリゴンミラーの高速回転により発生した空気流が直接当たり難いので、一旦シートの粘着面に付着した埃等は、ポリゴンミラーの高速回転による空気流によって再度飛ばされ(剥がれ)難い。
【0026】
また、開口部は、シートによってカバーの外側から塞がれているので、カバーに対して着脱が容易である。すなわち、光走査装置の使用頻度に応じて定期的にシートを交換すれば、カバーの内部を常に埃等の無いきれいな状態に保つことができる。
【0027】
(第4発明)
第4発明の光走査装置は、光ビームを出射する発光素子と、この発光素子から出射された光ビームを整形する第1の光学素子と、該第1の光学素子により整形された光ビームを偏向反射するポリゴンミラーを備えた第1発明〜第3発明のいずれか1つに記載の光偏向器と、このポリゴンミラーにより偏向反射された光ビームを再整形する第2の光学素子とを備えたものである。
かかる構成により、前記した第1発明、第2発明または第3発明の効果を奏する光走査装置を提供できる。
【0028】
ここで、光学素子とは、少なくともレンズを含んだ光学部品群をいう。つまり、レンズのみならず、ミラーを含んでいても良い。レンズとしては、シリンダーレンズ(シリンドリカルレンズ)、コリメータレンズ、Fθレンズ等が例示される。また、ミラーとしては、反射ミラー(折り返しミラー)等が例示される。
また、光ビームを整形するとは、ミラー等により光ビームの進む向きを所望の向きに変えたり、レンズ等により光ビームの形を所望の形に変えたりすることをいう。
【0029】
(第5発明)
第5発明の画像形成装置は、感光体と、この感光体上を光ビームにより走査する第4発明の光走査装置を備えたものである。かかる構成により、前記した第4発明の効果を奏する画像形成装置を提供できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る光偏向器は、カバーの窓がアンダーカット部にならないので、カバーに窓を形成するに際して、射出成形金型にスライド構造が不要である。このため、安価な光偏向器、光走査装置および画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】光偏向器の斜視図である(実施例1)
【図2】図1に示した光偏向器の断面図である(実施例1)
【図3】図1に示したカバーおよび透明プレートの断面図である(実施例1)
【図4】図3に示したカバーおよび透明プレートの断面図の部分拡大図である(実施例1)
【図5】透明プレートの斜視図である(実施例1)
【図6】カバーの斜視図である(実施例1)
【図7】シートの平面図である(実施例1)
【図8】光偏向器の断面図(部分拡大図)である(実施例1)
【図9】光偏向器の断面図(部分拡大図)である(実施例1)
【図10】光偏向器の斜視図である(実施例2)
【図11】図10に示したカバーおよび透明プレートの断面図である(実施例2)
【図12】図11に示したカバーおよび透明プレートの断面図の部分拡大図である(実施例2)
【図13】カバーの斜視図である(実施例2)
【図14】透明プレートの斜視図である(実施例2)
【図15】カバーおよび透明プレートの断面図(部分拡大図)である(実施例2)
【図16】カバーおよび透明プレートの断面図(部分拡大図)である(実施例2)
【図17】光偏向器の斜視図である(実施例3)
【図18】光偏向器の断面図(部分拡大図)である(実施例3)
【図19】光偏向器の断面図(部分拡大図)である(実施例3)
【図20】画像形成装置の模式図である(実施例4)
【図21】光走査装置の模式図である(実施例4)
【図22】光偏向器の斜視図である(実施例4)
【図23】カバーを上方から見た図である(実施例4)
【図24】カバーの斜視図である(実施例4)
【図25】シートの平面図である(実施例4)
【図26】カバーを開口部のある側から見た斜視図である(実施例4)
【図27】カバーの内側の斜視図である(実施例4)
【図28】カバーの内側の斜視図である(実施例4)
【図29】光偏向器の斜視図である
【図30】従来の光偏向器の断面図である
【図31】従来の光偏向器の斜視図である
【図32】透明プレートの斜視図である
【図33】光偏向器の斜視図である
【図34】カバーの斜視図である
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を用いて、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0033】
図1は本発明に係る光偏向器1の斜視図、図2は図1の光偏向器1の短手方向(Y方向)の略中央部を垂直方向(Z方向)に輪切りにした断面図、図3は図1の光偏向器1をポリゴンミラー7の回転平面(XY平面)で切った場合のカバー19および透明プレート21の断面図である。そして、図4は図3における窓20の近傍の部分拡大図、図5は透明プレート21の斜視図、図6はカバー19の斜視図、図7(a)はシートの表面の平面図、図7(b)はシートの裏面の平面図、図8は窓20および開口部55の近傍の光偏向器の断面図(部分拡大図)である。
【0034】
本実施例2に係る光偏向器1は、図1および図2に示すように、亜鉛合金製のベース2と、複数の電子部品12〜14が実装され、ベース2に固定された基板15と、この基板15に形成された貫通穴16を貫くようにして図示しないネジ等でベース2に固定された円柱形状でかつ金属製の固定軸3と、この固定軸3に回転自在に支持された回転体4と、複数の電子部品12〜14、固定軸3、および回転体4を覆い、ベース2に固定されたカバー19とを備えている。
【0035】
回転体4は、固定軸3との間に僅かの隙間をもって外挿された円筒形状で、かつ金属製のスリーブ5と、このスリーブ5に固定されたアルミニウム製のフランジ6と、このフランジ6の上に置かれ、外周面に多数の偏向反射面7aが形成されたアルミニウム製のポリゴンミラー7と、このポリゴンミラー7の上に置かれたリング状の板バネ部材8と、この板バネ部材8の上に置かれ、ポリゴンミラー7をフランジ6に押し付けるようにしてスリーブ5の上部で圧入又は焼嵌め等により強制的に嵌入されたアルミニウム製の押圧部材9と、フランジ6の内周面に接着剤等で固定された駆動マグネット10と、スリーブ5の上端に固定された蓋25とから構成されている。
【0036】
また、基板15には、駆動マグネット10と対向するようにコイル17が固定され、駆動マグネット10とコイル17によりブラシレスモータ18が形成されている。そして、駆動マグネット10とコイル17の間で働く磁気吸引力により回転体は常に浮いた状態に保たれている。また、ポリゴンミラー7およびブラシレスモータ18等は、回転により生じる騒音の発生防止と、防塵のため、図6に示した樹脂製のカバー19によりその全体が覆われている。
【0037】
このカバー19は、図3および図6に示すように、天板60の周縁部から下向き(Z軸のマイナスの向き)に延びた側板69を有している。そして、天板60および側板69により囲まれた空間にはポリゴンミラー7が位置しており、側板69には光ビームが出入り(入出射する)位置に窓20が形成されている。また、天板60には窓20の光ビームの主走査方向(X方向)の幅よりも広い幅開口部55が形成されており、これら窓20および開口部55は連通している。
【0038】
かかる構成により、図6に示したカバー19を射出成形するに当たり使用する射出成形金型を安価にすることができる。すなわち、可動型(図6の下方に位置する)と固定型(図6の上方に位置する)からなる射出成形金型のキャビティは、図6に示したカバー19の形になるが、この形のキャビティを作るに当たり、固定型に突起(入れ子)を設け、この突起により開口部55および窓20を同時に成形できる。
【0039】
そして、かかるキャビティに溶融樹脂を射出し、冷却固化させた後、固定型から可動型が離れる方向に可動型を移動(型開き)させれば、図6に示したカバー19が可動型側にできる。つまり、カバー19は、可動型および固定型の型開きのみで射出成形金型のキャビティから取り出せるので、型開き方向(Z方向)とは垂直な方向(Y方向)にスライドさせる入れ子が必要ない。このため、カバー19の1個当たりの単価を安価にできる。
【0040】
このカバー19の開口部55は、図8等に示すように、カバー19の外側からシート56が取り付けられ、塞がれている。そして、図5に示すプラスチック製またはガラス製の透明プレート21は、カバー19の内側において、その上端がカバー19に当接(接触)され、かつカバー19の内面の取付部39において接着剤40を用いて固定されている(図3、図4、図8)。
【0041】
ここで、取付部とは、窓20を取り囲むようにしてカバー19の内面に設けられた一定の領域をいう。例えば、カバー19の内面における窓20の端部(周縁部)から5mmの領域である。このような領域に透明プレート21を接着剤40を用いて取り付ければ、窓20を透明プレート21で完全に覆うことができる。
【0042】
また、本発明で用いる接着剤40は、固化後も弾性を有するものであることが望ましい。つまり、図4に示すように、カバー19の取付面39と透明プレート21の表面との間に介在する接着剤40は、塗布した直後は流動性および弾性を有するものであるが、時間が経過して固化した後であっても当初の弾性と同一の弾性である必要はないが、少なくとも透明プレート21が温度変化によって伸び縮みしても透明プレート21自体に歪みが発生しない程度の弾性を有していることが望ましい。ここで、弾性とは、応力が加えられた場合に変形し、変形した後、かかる応力を除くと反発して元に戻る物理的な性質をいう。
【0043】
本実施例1においては、弾性部材としての接着剤40として、セメダイン社のスーパーX(ヤング率=20MPa)を用いた。また、透明プレート21の材料としてオハラ社製BSL7(ヤング率=80000MPa)、カバー19の材料としてUMGABS社製ABS樹脂サイコラックVD200(ヤング率=2850MPa)を用いた。
【0044】
つまり、接着剤40のヤング率は、カバー19を構成する材料であるABS樹脂および透明プレート21を構成するガラス材料のヤング率よりも低いものを用いた。別言すると、本実施例1においては、ヤング率が透明プレート21を構成する材料、カバー19を構成する材料、接着剤40を構成する材料(アクリル変性シリコン樹脂)の順に低いものを用いた。
【0045】
前記したように、カバー19の天板60に形成された開口部55は、カバー19からアンダーカット部を無くすことによりカバー19の製造コストを安価にするという主目的があるが、他に2つの目的がある。すなわち、窓20に接着剤40により取り付けられた透明プレート21をカバー19の内部からクリーニングする第2の目的と、カバー19の内部に入り込んだ埃等を除去する第3の目的である。
【0046】
まず、第2の目的について説明する。
開口部55は、図1に示したように、カバー19の外側からシート56を貼り付けることにより塞がれる。このシート56は、厚さ0.5mm程度の樹脂製の薄肉シートであり、図7に示したように、表面57は粘着性が無く、裏面58は粘着剤59が塗布されていて粘着性を有するものである。このシート56は、粘着性を有する粘着面がカバー19の内部に向くようにカバー19の外側から貼り付けることにより、カバー19に対して容易に着脱できる。
【0047】
このため、カバー19の外からカバー19の内部に固定された透明プレート21の内面を、カバー19を剥がすことにより容易にクリーニングできる。尚、シート56は、表面57にも粘着性を有していても良い。通常、光偏向器は、光走査装置の密閉された光学箱の中に固定されるものであるが、シート56の表面も粘着性を有していれば、この光学箱の中の埃も粘着面に貼り付けることができるからである。
【0048】
また、開口部55の大きさは、第1の目的を達成できるものであれば良く、例えば、綿棒を挿入して左右に動作させる等して、カバー19の内部に面した透明プレート21の一面(内面)をクリーニングできる大きさであれば良い。
【0049】
次に、第3の目的について説明する。
前記したように、カバー56の粘着性がある裏面58は、カバー19の開口部55を塞ぐように貼り付けられているので、シート56における粘着性を有する裏面58の一部は、開口部55を介してカバー19の内部に面している。
【0050】
そして、カバー19の内部から見れば、開口部55とシート56の裏面58によって凹部74が形成されているので、ポリゴンミラー7の回転に伴い発生し、カバー19の内周面に沿って流れる空気流の一部は、凹部74に流れ込み、空気流の中に含まれる埃等の吹き溜まり部となる。このため、カバー19内部の埃等は、この吹き溜まり部において粘着剤59が塗布された粘着性を有する面(粘着面)に貼り付くため、従来技術と比較して集塵効果が高い。
【0051】
また、凹部74の一つの面を構成するシート56の粘着面は、ポリゴンミラー7の回転に伴い発生した強い空気流が当たり難いので、一旦粘着面に貼り付いた埃等が剥がれ難い。このため、カバー19の内部は、埃等の無いきれいな状態に保つことができる。
【0052】
さらに、薄肉のシート56は、カバー19の外側に貼り付けられているだけなので、光偏向器1の外部から簡単に交換ができる。このため、使用頻度に応じて、シート56を交換することにより、カバー19の内部を常に埃等の無いきれいな状態に保つことができる。
【0053】
また、カバー19には、ポリゴンミラー7を覆う部位であるポリゴンミラー7の上部に空気吸引穴22と、電子部品12〜14を覆う部位に空気排出穴23が設けられている。そして、空気吸引穴22には、粉塵捕捉フィルタ24が設けられ、ポリゴンミラー7の回転によりカバー19内に吸引される空気に含まれる埃等がカバー19内に侵入するのを阻止している。
【0054】
次に、光偏向器1の作用について説明する。
ブラシレスモータ18によりポリゴンミラー7が回転すると、カバー19の空気吸引穴22に設けられた粉塵捕捉フィルタ24からカバー19の外側にある空気がカバー19の内部に流入する。そして、空気流は、図8に示すように、ポリゴンミラー7の上方から下方に向かって流れ、電子部品12、電子部品13、電子部品14の順に、基板15に実装された複数の電子部品に当たる、またはその近傍を通ってカバー19内を流れ、空気排出穴23から排出される。
【0055】
このため、ポリゴンミラー7の回転により生じた空気流は、必ず電子部品12〜14に当たるまたはその近傍を通るので、電子部品12〜14は、ヒートシンク等の放熱部材を設けることなく、効率的に冷却される。また、空気排出穴23は、ポリゴンミラー7から離れた基板15の端部11に位置する電子部品14を覆う部位である電子部品14の上部に設けられているので、ポリゴンミラー7の停止時には、埃等が空気排出穴23からカバー19内に入り込み、埃等が電子部品14に積もることが考えられる。しかし、ポリゴンミラー7の回転によりカバー15内の空気は、空気排出穴23から排出されるので、空気排出穴23に特に粉塵捕捉フィルタを設ける必要はない。
【0056】
また、ポリゴンミラー7の回転により、カバー19の内部に空気流が発生するため、カバー19の内部にある少量の埃等がカバー19内に散乱する場合があるが、前記したように、開口部55およびシート56の粘着面の一部により埃等の吹き溜まり部(凹部)が構成され、かつシート56の粘着面の一部がこの吹き溜まり部に面しているので、埃等は、この粘着面に貼り付く。
【0057】
このため、光ビームが埃等の影響を受けて乱されることは無い。また、この吹き溜まり部は、カバー19の天板60に形成されており、天板60に沿って流れる空気流は流速が遅いため、一旦粘着面に貼り付いた埃は剥がれ難い。さらに、この吹き溜まり部は、窓20の近傍に形成されているので、窓20に取り付けられた透明プレートのクリーナーとしても機能する。
【0058】
尚、透明プレート21のカバー19への固定は、図8に示すようにシート56の裏面に透明プレート21を当接させると共に、図9に示すように、カバー19の開口部20を塞ぐように透明プレート21をカバー19の内周面に押し付けた後、透明プレート21の端部(周縁部)に接着剤40を塗布しても良い。かかる構成であっても、接着材40は硬化後も弾性を有するので、透明プレート21の端部はフリーになるため、カバー19の内外で温度変化があっても透明プレート21に歪みが生じることが無い。
【実施例2】
【0059】
本発明の他の実施例を図10乃至図14を用いて詳細に説明する。
図10は本実施例2にかかる光偏向器90の斜視図、図11は図10におけるポリゴンミラー7の回転平面でカバー91を切った場合のカバー91および透明プレート93の断面図、図12は図11における窓92の近傍の部分拡大図、図13はカバーの斜視図、図14は透明プレート93の斜視図である。
尚、実施例1に係る光偏向器1と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
本実施例2の実施例1との主な相違点は、カバー91の側板95に形成した窓92の周辺を平面にすることにより取付部39も平面にした点、この取付部39に取り付ける透明プレート93を平板形状にした点、シート82を矩形形状にした点、および主走査方向における窓92および開口部82の幅を同一にした点のみである。
【0061】
かかる構成により、実施例1と同一の効果を得ることができるだけではなく、図13に示すように、透明プレート93を平板形状にすることができるので、透明プレート93の加工が容易となり、透明プレート93のコストを安価にでき、ひいては、光偏向器90のコストをさらに安価にすることができる。
【0062】
尚、透明プレート93のカバー91への固定は、まず、図13に示したカバー91の天板94に形成された開口部82を、図10に示したようにシート82で塞いだ後、図14に示した透明プレート93の上端部96をシート82の裏面に当接させると共に、透明プレート93を側板95に取り付ける。その際、図12に示したように、透明プレート93と側板95の間に接着剤40を介在させる。
【0063】
尚、図15に示したように、カバー91の窓92を塞ぐように透明プレート93をシート83の裏面およびカバー91の内面に押し付けた後、透明プレート93の端部(周縁部)に接着剤40を塗布しても良い。かかる構成であっても、接着剤40は固化後も弾性を有するので、透明プレート93の端部はフリーになるため、カバー91の内外で温度変化があっても透明プレート93に歪みが生じることが無い。
【0064】
また、図16に示すように、透明プレート93は、カバー91の内面にネジ66等で固定されたブラケット64によって保持されたウレタンシート65でカバー91の内面に押圧して、カバー91に固定しても良い。かかる構成であっても、透明プレート93は、弾性が低い(ヤング率が小さい)ウレタンシート65を用いてカバー91の内面に押し付けられているだけなので、透明プレート93の端部はフリーになっている。このため、カバー91の内外で温度変化があっても透明プレート93に歪みが生じることが無い。
【実施例3】
【0065】
本発明の他の実施例を図17および図18を用いて詳細に説明する。
図17は光偏向器81の斜視図であり、図18は図17の光偏向器81のカバー19をポリゴンミラー7の回転平面で切った場合のカバー19および透明プレート82の断面図の部分拡大図である。
尚、実施例1に係る光偏向器1と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
本実施例3の実施例1との主な相違点は、カバー19の外面に透明プレート82を接着剤40で取り付けた点と、透明プレート82の上端部がシート84の裏面に当接できるように、シート84の一部をカバー19の側板95の外周面から突出させた点のみである。
【0067】
かかる構成であっても、実施例1と同様の効果を奏する、つまり射出成形金型を安価にできるので、光偏向器81を安価にすることができる。また、カバー19の内部または外部の温度変化により透明プレート82が伸びたり縮んだりしても、カバー19の外面の透明プレート82の外面取付部と、透明プレート82の間には、固化後も弾性を有する接着剤40が存在するので、透明プレート82は、自由に伸び縮みすることができる。このため、透明プレート82に歪みが生じることがないので、透明プレート82の歪みに起因して光ビームが曲げられたりすることが無い。
【0068】
尚、透明プレート82のカバー19への固定は、図19に示したように、カバー19の窓20を塞ぐように透明プレート82をシート84の裏面およびカバー19の外周面に押し付けた後、透明プレート82の端部(周縁部)に接着剤40を塗布しても良い。かかる構成であっても、透明プレート82の端部はフリーになるので、カバー19の内外で温度変化があっても透明プレート82に歪みが生じることが無い。
【実施例4】
【0069】
本発明の他の実施例を図20〜図28を用いて詳細に説明する。
(画像形成装置)
図20は、本発明に係る画像形成装置501の構成の一例を示した図である。
図20に示した画像形成装置501は、電子写真方式を用いたいわゆるタンデム型のデジタルカラープリンタである。この画像形成装置501は、各色の画像データに対応して画像形成を行う画像形成プロセス部570と、画像形成装置501全体の動作を制御する制御部580と、例えばパーソナルコンピュータ(PC)503やスキャナ等の画像読取装置504等から受信した画像データに所定の画像処理を施す画像処理部581とを備えている。
【0070】
画像形成プロセス部570は、4つの画像形成ユニット510Y、510M、510C、510K(以下、まとめて「画像形成ユニット510」と総称することがある。)が上下方向(略鉛直方向)に一定の間隔で並列配置されている。この画像形成ユニット510は、像保持体としての感光体ドラム511、帯電ロール512、現像器513、ドラムクリーナ514とを備えている。
【0071】
ここで、帯電ロール512は、感光体ドラム511の表面を所定電位で一様に帯電するものである。また、現像器513は、画像形成ユニット10それぞれにおいて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色トナーと磁性キャリアとからなる二成分現像剤を保持して、感光体ドラム511上に形成された静電潜像を各色トナーで現像するものである。また、ドラムクリーナ514は、例えば板状部材を感光体ドラム11表面に接触させて、感光体ドラム511上に付着したトナーや紙粉等を除去するものである。
【0072】
さらに、画像形成装置501には、画像形成ユニット510それぞれに配設された感光体ドラム511を露光する光走査装置の一例としてのレーザ露光器520が設けられている。レーザ露光器520は、各色毎の画像データを画像処理部581から取得し、取得した画像データに基づいて点灯制御された光ビーム(レーザ光)により、各画像形成ユニット510の感光体ドラム511上をそれぞれ走査露光する。
【0073】
また、各画像形成ユニット510の感光体ドラム511と接触しながら移動するように、用紙590を搬送する用紙搬送ベルト530が配置されている。この用紙搬送ベルト530は、用紙590を静電吸着するフィルム状の無端ベルトであって、駆動ロール532とアイドルロール533とに掛け渡されて循環移動するものである。
【0074】
また、用紙搬送ベルト530の内側であって各感光体ドラム511と対向する位置には、それぞれ転写ロール531が配置され、感光体ドラム511との間に転写電界を形成し、用紙590上に、各画像形成ユニット510で形成された各色トナー像を順次転写する。
【0075】
さらに、各転写ロール531の下流側には、転写後の感光体ドラム511を除電する除電ランプ515が設けられている。また、用紙搬送ベルト530の用紙搬送方向の下流側には、用紙590上の未定着トナー像に対して熱および圧力による定着処理を施す定着器540が設けられている。
【0076】
また、用紙搬送系として、用紙590を収容する用紙収容部550、用紙収容部550に収容された用紙590を所定のタイミングで取り出して搬送するピックアップロール551、繰り出された用紙590を搬送する搬送ロール552、画像形成動作に合わせて用紙590を用紙搬送ベルト530に送り出すレジストロール553が設けられている。
【0077】
また、定着器540にて定着処理された用紙590を搬送する排紙ロール554、片面プリントの場合には用紙590を装置本体上部に設けられた排紙積載部591に向けて排出し、両面プリントの場合には排紙積載部591に向けた回転方向から逆方向に反転することで、定着器540にて片面が定着された用紙590を両面搬送路592に向けて送り出す反転ロール555等が配設されている。
【0078】
画像形成装置501において、画像形成プロセス部570は、制御部580による制御の下で画像形成動作を行う。すなわち、パーソナルコンピュータ503や画像読取装置504等から入力された画像データは、画像処理部581によって所定の画像処理が施され、光走査装置としてのレーザ露光器520に供給される。そして、各画像形成ユニット510にて、帯電ロール512により所定電位で一様に帯電された感光体ドラム511の表面が、レーザ露光器520により画像処理部581からの画像データに基づいて点灯制御された光ビーム(レーザ光)で走査露光され、感光体ドラム511上に静電潜像が形成される。
【0079】
形成された静電潜像は現像器513により現像され、感光体ドラム511上に各色のトナー像が形成される。各画像形成ユニット510での各色トナー像の形成が開始されると、用紙収容部550から取り出された用紙590は、用紙搬送ベルト530により搬送され、転写ロール531により形成される転写電界によって各色トナー像が用紙590上に順次転写される。その後、定着器540に搬送され、未定着トナー像が用紙590に定着された後、用紙590は排紙積載部591に積載される。
【0080】
(光走査装置)
次に、本発明に係る光走査装置について説明する。
図21は、光走査装置としてのレーザ露光器520の側断面図である。図21に示したように、レーザ露光器520は、光ビーム(レーザ光)を出射する発光素子としての半導体レーザを4個有する光源521を備えている。そして、この光源521からの各光ビームに対応して設けられた第1の光学素子としての4つのコリメータレンズ522と、シリンダーレンズ(シリンドリカルレンズ)523を備えている。
【0081】
さらに、例えば正六角面体で構成されたポリゴンミラー(回転多面鏡)7を備えた後述する光偏向器63と、第2の光学素子としての各光ビームが共通に通過する共通レンズのfθレンズ525および複数の折り返しミラー526を備えている。そして、これらのレーザ露光器520を構成する各部品は、樹脂製または金属製のハウジング528内に固定されている。ハウジング528は、フタ73により密閉されており、光ビームの外部への漏洩や各光学部材への埃等の付着が防止される。
【0082】
このレーザ露光器520は、光源521から出射された複数の光ビームとしての発散性の4本のレーザ光LK、LC、LM、LYが、各コリメータレンズ522によって平行光に変換(整形)され、副走査方向にのみ屈折力を持つシリンダーレンズ523により、光偏向器63の内部にあるポリゴンミラー7の偏向反射面(鏡面)7a近傍にて主走査方向に長い線像として結像(整形)される。そして、各レーザ光LK、LC、LM、LYは、高速で定速回転するポリゴンミラー7の偏向反射面7aにより反射され、等角速度的に走査される。
【0083】
ポリゴンミラー7への光ビームの入射方式としては、複数の光ビームを主走査方向に角度を持たせて入射させるタンジェンシャル・オフセット入射方式や、複数の光ビームを副走査方向にそれぞれ異なる角度で入射させるサジタル・オフセット入射方式等がある。
【0084】
本実施例では、ポリゴンミラー7の偏向反射面7aに入射する各レーザ光LK、LC、LM、LYがそれぞれ副走査方向に角度を持ち、サジタル方向に互いにオフセット入射するサジタル・オフセット入射方式を採用している。そして、ポリゴンミラー7に入射する各レーザ光LK、LC、LM、LYは、偏向反射面7aにおける反射位置が副走査方向に一致するように設定される。
【0085】
ポリゴンミラー7で偏向された各レーザ光LK、LC、LM、LYは、fθレンズ525を通過し、複数の折り返しミラー526により感光体ドラム511の表面に向けて方向を変えられて(整形されて)各画像形成ユニット510の感光体ドラム511の表面を走査露光する。ここで、fθレンズ525は、レーザ光の光スポットの走査速度を感光体ドラム511上で等速化する機能を有している。
【0086】
また、上記した線像は、ポリゴンミラー7の偏向反射面7aの近傍に結像し、fθレンズ525は副走査方向に関して偏向反射面7aを物点として光スポットを感光体ドラム511の表面上に結像させるので、この走査光学系は、偏向反射面7aの面倒れを補正する機能を有している。
【0087】
ところで、本実施例1では、各レーザ光が共通に通過する共通レンズとしてのfθレンズ525を採用している。通常の走査光学装置であれば、レーザの光線1つに対して、例えばガラス部材からなる1つのレンズが用いられるが、本実施の形態では、樹脂部材を用いて4本のレーザ光に対して1つのfθレンズ525が採用されている。設計によっては、2本のレーザ光に対して1つずつ、計2つのfθレンズを採用することも可能である。このように、複数のレーザ光をfθレンズ25に入射し、被走査体(感光体ドラム511)に走査露光している。
【0088】
また、本実施例1では、第1の光学素子として、コリメータレンズ522およびシリンダーレンズ523のみを用いたものを示したが、画像形成装置の構成によっては折り返しミラー526が途中に存在していても良い。さらに、本実施例1においては、第2の光学素子として、fθレンズ525および複数の折り返しミラー526を示したが、画像形成装置の構成によってはfθレンズ525のみ用いたものであっても良い。
【0089】
(光偏向器)
前記した光偏向器63を、図22乃至図28を用いて詳細に説明する。
図22は、光偏向器63の斜視図である。尚、図示を省略するが、光偏向器63のカバー41の内部には、前記した実施例1と同様、ポリゴンミラー7等が入れられている。
【0090】
図22および図24に示すように、光偏向器63のカバー41の側板75には窓47が形成されており、天板43には窓47における光ビームの主走査方向の幅よりも広い幅の開口部48が形成されている。そして、窓47および開口部48は連通している。
【0091】
かかる構成により、図24に示したカバー41を射出成形するに当たり使用する射出成形金型を安価に製造できる。すなわち、可動型(図24の下方に位置する)と固定型(図24の上方に位置する)からなる射出成形金型のキャビティは、図24に示したカバー41の形になるが、この形のキャビティを形成するに当たり、固定型に突起(入れ子)を設け、この突起により開口部48および窓47を同時に成形できる。
【0092】
そして、かかるキャビティに溶融樹脂を射出し、冷却固化させた後、固定型から可動型が離れる方向に可動型を移動させれば、図24に示したカバー41が可動型側に形成される。つまり、射出成形金型を用いてカバー41を射出成形するためには、可動型および固定型の動作は、型開きのみで良く、型開き方向とは垂直な方向にスライドさせるような入れ子の動作は必要ない。このため、カバー41の1個当たりの単価を低くすることができ、ひいては、光偏向器63、光走査装置720および画像形成装置501のコストを安価にできる。
【0093】
また、カバー41の天板43には、略中央部に空気吸引穴45が形成されており、この空気吸引穴45には、図22に示すように粉塵捕捉フィルタ53が貼り付けられている。
【0094】
そして、図22、図26〜図28に示すように、カバー41の天板43に形成された開口部48には、シート49が貼り付けられている。このシート49は、図25に示したように厚さが0.5mm程度の樹脂製の薄肉のシートであり、その裏面51は、粘着剤52により粘着性を有している。この粘着剤52を利用して、シート49の裏面51を、図26〜図28に示したように、開口部48を塞ぐようにカバー41の外側(表面)に貼り付けると、図27に示したように、粘着剤52の一部がカバー41の内部に面することになる。
【0095】
また、シート49は、カバー41の外側から貼り付けられているので、カバー41の内部から見ると、開口部48とシート49により凹部が形成されることになる。このため、前記した実施例1等と同様、この凹部は、カバー41の内部にある埃等の吹き溜まり部になるので、カバー41の内部の粉塵は、ポリゴンミラー7の回転により発生する空気流により粘着剤52に貼り付き易い。そして、凹部の一面を構成するシート49の粘着面は、ポリゴンミラーの回転に伴い発生する強い空気流が直接当たることがないので、一旦貼り付いた粉塵等が剥がれ難い。このため、カバー41の内部を粉塵の無いきれいな状態に保つことができる。尚、凹部は、ポリゴンミラー7の回転により発生する空気流の流れが遅い天板43に形成されているので、一旦シート49の粘着面に貼り付いた埃等は、さらに剥がれにくい。また、シート49の粘着面は、透明プレートの近傍かつ上方に位置するため、透明プレートに当たる埃等を事前に貼り付ける働きをするため、透明プレートのクリーナーとして機能する。
【0096】
また、シート49は裏面51の粘着剤52によりカバー41に貼り付けられているだけなので、容易に剥がすことができ、シート49の交換が簡単にできる。このため、光偏向器63の使用頻度に応じてシート49を交換することにより、長年使用しても常にカバー41の内部を粉塵の無い状態に保つことができる。また、薄肉シート49の交換時に、透明プレート54をカバー41の内部から綿棒等を用いてクリーニングすることもできる。
【0097】
また、図22に示した透明プレート54は、図27に示した状態において、一端(上端)がシート49の裏面51に当て付けられると共に、取付部46に当て付けられた後、透明プレート54の端部に硬化後も弾性を有する接着剤40を塗布することにより、取付部46に取り付けられている(図28)。このように、シート49の裏面51に透明プレート54の一端を当て付けることにより透明プレート54の上下方向の位置決めが容易にできる。また、シート49は、肉厚が薄いので、接着剤が固化した後においては、透明プレート54の温度変化による伸び縮みに追従して変形する。このため、シート49および接着剤40の弾性変形により、カバー46の内外で温度変化があっても透明プレート54は自由に伸び縮みできるので、透明プレート54自体に歪みが発生することが無い。
【0098】
尚、透明プレート54は、図22の窓47を見ても分かるように、窓47の上方から下方にかけてカバー41の内側に向かうように傾斜して取り付けられている。かかる構成により、透明プレート54の外面に埃が積もることを防止できる等の効果がある。
【0099】
また、図示を省略したが、空気吸引穴45に取り付けた粉塵捕捉フィルタ533から吸引した外気を排出する空気排出穴は、カバー41の任意の箇所に形成できる。
【0100】
またシート49は、表面50も粘着性を有していても良い。光偏向器63は、図21に示したように、光走査装置720の密閉された光学箱(ハウジング528とフタ73)の中に固定されるものであるが、シート63の表面も粘着性を有していれば、この光学箱の中の埃も粘着面に貼り付けることができるからである。
【0101】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明としてはこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び図面の記載から当事者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更、削除および付加が可能である。
【0102】
例えば、前記した実施例2においては、上端部の両端に切り欠きを設けた透明プレート93(図14)を用いたものを示したが、より安価な切り欠きの無い透明プレート97(図32)を用いても良い。この場合は、まず、図13に示したカバー91の窓92に、図34に示したように、透明プレート97を嵌め込む。そして、透明プレート97の周縁部において、カバー91と透明プレート97とにまたがるように、接着剤40を塗布して硬化させ、透明プレート97をカバー91に固定する。そして、透明プレート97の上端部に当接し、かつ、開口部85を塞ぐようにシート82をカバー91の外側から貼り付ける。そうすると、図33に示した光偏向器86を製造できる。
【0103】
また、前記した実施例においては、ポリゴンミラー7、ブラシレスモータ8および基板15のすべてをカバー19で覆う光偏向器1を示したが、図29に示したように、カバー19は、少なくともポリゴンミラー7を覆うものであれば良い。
【0104】
また、前記した実施例においては、透明プレートとしてガラスを用いたものを示したが、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等の透明樹脂からなる透明プレートであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、光偏向器、光走査装置および画像形成装置に適用される。
【符号の説明】
【0106】
1 光偏向器
7 ポリゴンミラー
19 カバー
20 窓
21 透明プレート
56 シート
60 天板
69 側板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを偏向反射するポリゴンミラーと、
天板および該天板の周縁部から下向きに延びた側板を有すると共に、少なくとも該ポリゴンミラーを覆い、前記側板に前記光ビームが通過する窓が形成された樹脂製のカバーと、
該窓を覆う透明プレートとを備えた光偏向器において、
前記カバーの前記天板には、前記窓の前記光ビームの主走査方向の幅以上の幅の開口部が形成されており、
該開口部は、前記窓と連通すると共に、前記カバーの外側からシートで塞がれており、
前記透明プレートは、該シートに当接されて前記カバーに取り付けられたことを特徴とする光偏向器
【請求項2】
前記透明プレートは、前記カバーに接着剤により取り付けられており、
該接着剤は、固化後も弾性を有する請求項1に記載の光偏向器
【請求項3】
前記シートの少なくとも一面は、粘着性を有する粘着面であり、
該粘着面は、前記カバーの内部に面した請求項1または請求項2に記載の光偏向器
【請求項4】
光ビームを出射する発光素子と、
該発光素子から出射された光ビームを整形する第1の光学素子と、
該第1の光学素子により整形された光ビームを偏向反射するポリゴンミラーを備えた請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の光偏向器と、
該ポリゴンミラーにより偏向反射された光ビームを再整形する第2の光学素子とを備えた光走査装置
【請求項5】
感光体と、
該感光体上を光ビームにより走査する請求項4に記載の光走査装置を備えた画像形成装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2010−256382(P2010−256382A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102548(P2009−102548)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(310010793)富士ゼロックスマニュファクチュアリング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】