説明

光出力装置

【課題】 光路の調整や偏光光面の合わせなどの調整機構を用いずに、光透過・反射ミラーを用いることで、3波長以上の複数のレーザ光を合成することなく同一の光軸上にそれぞれ出射可能にする。
【解決手段】 複数の半導体レーザ11、12、13が出射するレーザ光の中から光透過・反射ミラー14、15によって特定波長のレーザ光を選択的に取り出し、これらの光透過・反射ミラー14、15を通して取り出された特定波長のレーザ光の焦点を焦点合わせレンズ16、17によって合わせ、そのレーザ光を同一光軸上に導出するようにして、同一光軸上に波長が異なる複数のレーザ光をシリアル出力するという構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象に複数の特定波長のレーザ光を照射することによって検査対象の性状等を測定するのに利用する光出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、異なる波長のレーザ光を同一光軸上に集めて出力する光出力装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。この光出力装置は、レーザ光の合成光を記録媒体上に走査させながら情報を記録したり読み取ったりするというものであり、図5に示すような構成を持つ。
【0003】
この光出力装置は、レーザビームを発振する第1の半導体レーザ21および第2の半導体レーザ22と、これらの半導体レーザ21、22の発振側に配置され、レーザービームの偏光面を変化させる波長板23、24と、波長板23、24を通過したレーザービームを合成する偏光光スプリッタ25と、偏光光スプリッタ25によって合成されたレーザービームを走査する走査光学系26と、を備えたレーザービーム記録装置を構成している。
【0004】
このレーザービーム記録装置は、各レーザービームの断面形状におけるそれぞれの長軸が略中心部で交差してレーザービームが合成されるように、半導体レーザ21、22および波長板23、24を配置した構成である。なお、符号27、28は半導体レーザ21、22が発振するレーザービームを平行光線束にするコリメータレンズ、符号29は光収束レンズ、符号30はレーザービームを受けて記録が行われる記録媒体である。
【0005】
この光出力装置によれば、前記各半導体レーザ21、22から発振されたレーザービームはP偏光またはS偏光とされて偏光光スプリッタ25に入射する。また、この偏光光スプリッタ25によって各レーザービームの断面形状におけるそれぞれの長軸が中心部で交差して合成される。合成されたレーザービームの重ね合わせ部分の光エネルギは高強度となる。この重ね合わせの合成光は、走査光学系である光偏向器26で偏向された後、集束レンズ29で光スポットに収束されて記録媒体30に入射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−146748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の光出力装置にあっては、レーザービームを合成することによって高強度の光エネルギを得ることを主眼とするものであり、また、合成可能なレーザービームは二つの半導体レーザが発振する2波長のみであり、3波長以上のレーザービームを合成することができない。更に、集光レンズを含む光路の調整や偏光光面を合わせるために波長板23、24を光軸上に配置しなければならず、構成が複雑になり光出力システムの全体が大掛かりで、消費電力およびコストが嵩むこととなる。
【0008】
本発明はかかる従来の不都合に着目してなされたものであり、光路の調整や偏光光面の合わせなどの調整機構を用いずに、光透過・反射ミラーを用いることで、異なる3波長以上の複数のレーザ光を、合成するのではなく同一の光軸上に時分割出射可能にする光出力装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的達成のために、本発明に係る光出力装置は、それぞれが特定波長のレーザ光を出射する複数の半導体レーザと、これらの半導体レーザが出射する特定波長のレーザ光を他の波長のレーザ光とは分離して一つの光軸上に取り出す複数の光透過・反射ミラーと、これらの光透過・反射ミラーのそれぞれを通して取り出された特定波長のレーザ光の焦点位置を合わせ、前記光軸上に導出する焦点合わせレンズと、を備え、前記光軸上に波長が異なる複数のレーザ光をシリアル出力することを特徴とする。
【0010】
この構成により、各光透過・反射ミラーはそれぞれ波長が異なる複数のレーザ光のみを同一光軸上にシリアル出力し、このシリアル出力された波長が異なるそれぞれのレーザ光を検査対象に照射することにより、この検査対象から各波長対応の測定データを得ることができる。従って、この測定データを解析することで、その検査対象の性状等を判定することができる。
【0011】
また、本発明に係る光出力装置は、矩形板状の2枚の光透過・反射ミラー部材を中央部で交差一体的に組み付けた構成または一体成形した構成を持つことを特徴とする。
【0012】
この構成により、1個の光透過・反射ミラー18を用意して光学系に設置するだけでよいため、光出力装置の組み付け作業の効率化および装置全体の小型化が図れるほか、占有空間の狭小化並びにコストダウンを実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光路の調整や偏光光面の合わせなどの調整機構を用いずに、光透過・反射ミラーおよび焦点合わせレンズを用いる簡単な構成で、3波長以上の複数のレーザ光を、同一の光軸上にそれぞれシリアル出力させることができ、この波長が異なるレーザ光を検査対象に照射することで、検査対象の性状等のデータ収集が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による光出力装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の他の実施形態による光出力装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態による光出力装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明における更に別の実施形態による光出力装置の要部を示す概略構成図である。
【図5】従来のビーム出力装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる光出力装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
ここで、図1は、本実施形態による光出力装置を示す概略構成図、図2は、他の実施形態による光出力装置を示す概略構成図、図3は、更に他の実施形態による光出力装置を示す概略構成図である。
【0016】
本実施形態による光出力装置は、複数の半導体レーザと、光透過・反射ミラーと、焦点合わせレンズまたはコリメートレンズと、を備えて構成される。なお、焦点合わせレンズまたはコリメートレンズは、光路長が短いとレーザー光の放射角度により光の広がりが少ないので不要となる場合も存在する。具体的には、複数の半導体レーザが第1の半導体レーザ11、第2の半導体レーザ12、第3の半導体レーザ13を含む。また、複数の光透過・反射ミラーが第1の光透過・反射ミラー14および第2の光透過・反射ミラー15を含む。更に、複数の焦点合わせレンズが第1の焦点合わせレンズ16(焦点位置f1)および第2の焦点合わせレンズ17(焦点位置f2)を含む。
【0017】
第1〜第3の半導体レーザ11〜13は半導体のPN接合に電流を流して励起させることによりそれぞれ所定波長領域(周波数領域)のレーザ光を発生する。これらの半導体レーザ11〜13は小形、軽量であり、発振波長が青色から赤外まで広範囲であるが、他のレーザに比べて指向性が低く拡散しやすい。
【0018】
第1および第2の光透過・反射ミラー14、15は透明ガラスの片面に金属蒸着膜によるレーザ光の反射面が設けられ、他の片面がレーザ光の透過面とされている。これらの第1および第2の光透過・反射ミラー14、15は検査対象への照射に適する特定波長のレーザ光を透過または反射させて、所定の光軸へ導出する波長フィルタ機能を有する。従って、前記反射面は入射光のうち特定波長のレーザ光を選別して透過または反射するように機能する。
第1および第2の焦点合わせレンズ16、17は光透過・反射ミラー14、15で透過または反射された波長が異なるレーザ光の焦点を合わせて、同一光軸上へ導出する。
【0019】
次に、本実施形態の作用を説明する。各半導体レーザ11〜13は発振波長が異なり、かつ位相が同一または異なるレーザ光を出射する。これらの発振波長は、それぞれ検査対象の検査目的に応じて決められた値である。まず、第1の半導体レーザ11から出射された発振波長がλ1付近のレーザ光を、第1の光透過・反射ミラー14に入射する。この光透過・反射ミラー14は自身が有するフィルタ特性によって、透過させたい特定波長λ1以外の波長のレーザ光を反射させ、一方この特定波長λ1のレーザ光を透過させる。第1の光透過・反射ミラー14は不要な波長領域のレーザ光を反射によって除去する。
【0020】
一方、この第1の光透過・反射ミラー14に対しては、第2の半導体レーザ12が第1の半導体レーザ11の発振波長とは異なる発振波長がλ2付近のレーザ光を出射する。第1の光透過・反射ミラー14は、特定波長λ2以外のレーザ光を透過によって除去するとともに、その特定波長λ2のみを反射する。このため第1の半導体レーザ11と光透過・反射ミラー14とを結ぶ光透過の光軸A1上に、波長λ1および波長λ2のレーザ光が出射される。
【0021】
これらの波長λ1、λ2のレーザ光は第1の焦点合わせレンズ16により焦点合わせがなされ、前記光軸A1上にある第2の光透過・反射ミラー15に入射される。この第2の光透過・反射ミラー15は特定波長λ1、λ2のレーザ光を透過する。
【0022】
一方、第3の半導体レーザ13は第1の半導体レーザ11および第2の半導体レーザ2が出射するレーザ光の波長とは異なる波長λ3付近のレーザ光を出射する。このレーザ光は第2の光透過・反射ミラー15に入射され、特定波長λ3のレーザ光を光軸A1上へ反射するとともに、その特定波長λ3以外のレーザ光を透過させて除去する。
また、この波長λ3のレーザ光は、波長λ1、λ2のレーザ光とともに第2の焦点位置合わせレンズ17に入射され、焦点が合わされて光軸A1上に導出される。
【0023】
このようにして、第2の焦点位置合わせレンズ17を通過したレーザ光は位相が一致または不一致で、かつ波長がλ1、λ2、λ3のように異なる光であり、これらのレーザ光が測定対象の所定部位にシリアルに(時分割で)出射される。測定対象は固体、液体、気体のほか人体とすることができる。
【0024】
例えば人体頭部の複数箇所に対し、複数本の光ファイバを用いて前記波長λ1、λ2、λ3のいずれか適合するレーザ光を照射し、前記各部位における各波長ごとにレーザ光の吸収率を計測することで、脳血管における血液の流れを測定することができる。なお、このレーザ光の吸収率は、前記各部位から反射される光を捕らえることにより計測可能である。
【0025】
また、近赤外波長の分光により脳表面の酸素状態を捉えることで、視覚、聴覚、運動部位の特定や活動状態をリアルタイムで測定およびモニタリングするという分野での利用が可能になる。
【0026】
図2は、本発明に係る光出力装置の他の実施形態を示す。この実施形態では、第1の半導体レーザ11および第2の半導体レーザ12と、第1の光透過・反射ミラー14との配置は、図1に示すものと同様である。一方、第3の半導体レーザ13は、自身の出射光軸のA3方向(紙面に垂直に加わる方向)が第2の半導体レーザ11の出射光軸A2に対して垂直に加わる方向に配置されている。
【0027】
また、第2の光透過・反射ミラー15は第3の半導体レーザ13が出射する波長λ3のレーザ光を反射して、第1および第2の半導体レーザ11、12から出射される波長λ1、λ2のレーザ光とともに、第1の半導体レーザ11の光軸A1に一致する光軸に導く。なお、ここでは第1の焦点合わせレンズ16、第2の焦点合わせレンズ17を省いて説明したが、焦点合わせのためにこれらのレンズ16、17が必要となる場合がある。
【0028】
図3は、本発明にかかる光出力装置の更に他の実施形態を示す。この実施形態では、第1の半導体レーザ11の出射光軸A1を挟む位置に第2の半導体レーザ12および第3の半導体レーザ13が光軸方向にオフセット配置されている。従って、第2および第3の半導体レーザ12、13は前記出射光軸A1に一致する方向にレーザ光を導出するように、第1の光透過・反射ミラー14の向きは、図1に示したものとは逆の関係になる。
【0029】
この場合にも、第1および第2の半導体レーザ11、12から出射される波長λ1、λ2のレーザ光を共に第1の半導体レーザ11の光軸A1に一致する光軸に導くことができる。なお、前記他の実施形態において、光透過・反射ミラー14、15および各半導体レーザ11、12、13との配置によっては、第1の焦点合わせレンズ16を省くことができる。
【0030】
図4は、本発明にかかる光出力装置の更に別の実施形態を示す。この実施形態の光出力装置は、図3に示した光出力装置の応用例である。図4の光出力装置は、図3に示した独立した2枚の光透過・反射ミラー14、15をそれぞれ所定距離をおいて配置したものとは異なる。すなわち、この実施形態の光出力装置は、矩形板状の2枚の光透過・反射ミラー部材18a、18bを中央部で交差一体的に組み付けた、または一体成形した1個の光透過・反射ミラー18を配置したものである。
【0031】
この光透過・反射ミラー18では、第1の半導体レーザ11からの特定波長λ1のレーザ光が光透過・反射ミラー部材18a、18bをそれぞれ透過し、その波長λ1以外のレーザ光は反射される。第2の半導体レーザ12からの波長λ2のレーザ光は光透過・反射ミラー部材18aに反射され、かつ波長λ1のレーザ光とともに光透過・反射ミラー18bを透過して出力される。また、第3の半導体レーザ13からの波長λ3のレーザ光は光透過・反射ミラー18aを透過し、かつ光透過・反射ミラー15bに反射されて、波長λ1、λ2のレーザ光とともに出力される。
【0032】
従って、この実施形態の光出力装置では、前記と同じく特定波長の複数のレーザ光を同一光軸上に導出して、検査対象等に効率的に照査できる点に加えて、1個の光透過・反射ミラー18を用意し、前記光学系に設置するだけでよいため、光出力装置の組み付け作業の効率化、装置全体の小型化、占有空間の狭小化並びにコストダウンを実現できるという効果が得られる。
【0033】
また、前記においては、3個の半導体レーザ11〜13を用いた例を示したが、出力させたい波長の数に応じて半導体レーザおよび光透過・反射ミラーを更に増設することは任意である。これにより測定対象物の状態、例えば脳の血管の血流状態等を、波長フィルタ特性を持つ安価な光透過・反射ミラーの増設のみで、さらに詳細かつ簡単に計測することができる。
【0034】
以上のように、本実施形態では、光出力装置が、レーザ光を出射する複数の半導体レーザ11、12、13と、これらの半導体レーザ11、12、13がそれぞれ出射する特定波長のレーザ光を他の波長のレーザ光と分離して同一光軸上に取り出す光透過・反射ミラー14、15と、これらの光透過・反射ミラー14、15のそれぞれを通して取り出された特定波長のレーザ光の焦点位置を合わせ、同一光軸上に導出する焦点合わせレンズ16、17と、を備えるものとして、同一光軸上に波長が異なる複数のレーザ光をシリアル出力するような構成とした。
【0035】
従って、各光透過・反射ミラー14、15は特定波長のレーザ光のみを同一光軸上に集めてシリアル出力し、このシリアル出力された波長が異なるレーザ光を検査対象に照射することにより、この検査対象から受けた各波長対応の検査データを解析することで、その検査対象の性状等を判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、特定波長のレーザ光のみを同一光軸上に集めてシリアル出力し、このシリアル出力された波長が異なるレーザ光を検査対象に照射することにより、この検査対象から受けた各波長対応の検査データを解析することができる。従って、その解析結果からその検査対象の性状等を判定することができるという効果を有し、広い分野の検査対象の性状等を測定するのに利用する光出力装置等に有用である。
【符号の説明】
【0037】
11 第1の半導体レーザ
12 第2の半導体レーザ
13 第3の半導体レーザ
14 第1の光透過・反射ミラー
15 第2の光透過・反射ミラー
16 第1の終点合わせレンズ
17 第2の焦点合わせレンズ
18 光透過・反射ミラー
18a、18b 光透過・反射ミラー部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが特定波長のレーザ光を出射する複数の半導体レーザと、
これらの半導体レーザが出射する特定波長のレーザ光を他の波長のレーザ光とは分離して一つの光軸上に取り出す複数の光透過・反射ミラーと、
これらの光透過・反射ミラーのそれぞれを通して取り出された特定波長のレーザ光の焦点位置を合わせ、前記光軸上に導出する焦点合わせレンズと、
を備え、
前記光軸上に波長が異なる複数のレーザ光をシリアル出力することを特徴とする光出力装置。
【請求項2】
前記光透過・反射ミラーが、矩形板状の2枚の光透過・反射ミラー部材を中央部で交差一体的に組み付けた構成または一体成形した構成を持つことを特徴とする請求項1に記載の光出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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