説明

光分解方法

【課題】分解能力が高い光分解方法を提供する。
【解決手段】酸化剤及び被分解物を含む水溶液中に浸漬された光触媒に光を照射することにより、被分解物を光分解する工程を有する。光触媒は、二酸化チタンを含んでいる。水溶液のpHは6以上である。酸化剤として、オゾンを水溶液に対して10重量ppm以上50重量ppm以下、酸素を水溶液に対して5重量ppm以上30重量ppm以下、過酸化水素を水溶液に対して200重量ppm以上25000重量ppm以下含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を用いて被分解物を分解する光分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンを含む光触媒を酸化剤中で使用することにより、被分解物を分解する技術がある。例えば特許文献1には、被処理水に酸化剤として、過酸化水素、オゾン、及び酸素の少なくとも一種を添加することが開示されている。
【特許文献1】特開2000−117271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、酸化剤として過酸化水素、オゾン、又は酸素を用いるのみでは、難分解性の物質は分解できない。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、分解能力が高い光分解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、酸化剤及び被分解物を含む水溶液中に浸漬された光触媒に光を照射することにより、前記被分解物を光分解する工程を有し、
前記光触媒は、二酸化チタンを含んでおり、
前記水溶液のpHは6以上であり、
前記酸化剤として、オゾンを前記水溶液に対して10重量ppm以上50重量ppm以下、酸素を前記水溶液に対して5重量ppm以上30重量ppm以下、過酸化水素を前記水溶液に対して200重量ppm以上25000重量ppm以下含有している光分解方法が提供される。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、分解能力が高い光分解方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態にかかる光分解方法は、酸化剤及び被分解物を含む水溶液中に浸漬された光触媒に光を照射することにより、被分解物を光分解する工程を有する。本発明者らが鋭意検討を行った結果、光触媒として二酸化チタンを用いた場合、酸化剤として過酸化水素、オゾン、及び酸素の3種類を同時に使用し、これらの濃度を適切な範囲に制御し、かつ水溶液のpHを適切な範囲に制御することにより、光分解法の分解能力が高まることを見出した。
【0007】
オゾンの濃度は水溶液に対して10重量ppm以上50重量ppm以下であり、好ましくは25重量ppm以上40重量ppm以下である。酸素の濃度は水溶液に対して5重量ppm以上30重量ppm以下であり、好ましくは7重量ppm以上30重量ppm以下である。過酸化水素の濃度は水溶液に対して200重量ppm以上25000重量ppm以下であり、好ましくは300重量ppm以上5000重量ppm以下である。
【0008】
水溶液のpHは、6以上であり、好ましくは6以上13以下である。pHが13超になると、反応装置の腐食が問題になるため、好ましくない。
【0009】
また、水溶液に含まれる二酸化チタンの量は、0.5g/リットル以上8g/リットル以下であるのが好ましい。なお二酸化チタンは、修飾改質されていてもよい。光源としては、例えば水銀灯、キセノンランプ、重水素ランプ、蛍光灯、ブラックライト、及び太陽光の少なくとも一つを用いることができる。
【0010】
本実施形態によれば、光分解法の分解能力を高めることができる。このため、例えば被分解物がトリアジン系農薬であったとしても、トリアジン系農薬をシアヌル酸、水、二酸化炭素、硝酸イオン及びアンモニウムイオンに分解し、さらに難分解性の中間生成物であるシアヌル酸を水、二酸化炭素、硝酸イオン及びアンモニウムイオンに分解することができる。その結果、トリアジン系農薬の有機炭素を、すべて無機化合物である二酸化炭素に変えることができる。
【0011】
なお、トリアジン系農薬は、下記一般式(1)

【化2】


(式中、XはCl、Br、OCH、又はSCHを表す。Rは、CH、C、C、又はCH(CHを表す。Rは、H、CH、C、C、又はCH(CHを表す。Rは、CH、C、C、又はCH(CHを表す。)
で示される構造を1種以上有する化合物を含有している。
【0012】
(実施例1)
水50mLに、トリアジン系農薬の分解反応の中間生成物であるシアヌル酸0.05mmolを溶解させた水溶液を準備した。この水溶液及び二酸化チタンを反応器の中にいれ、酸化剤の導入及び光の照射を行いつつ、マグネチックスターラーで攪拌することにより、24時間ほど光分解を行った。光源としては水銀灯を用いた。なお、酸化剤の組成、二酸化チタンの量、及び水溶液のpHを変えることにより、実施例及び比較例の実験を行った。表1に、各実施例及び比較例における実験条件及びシアヌル酸の分解率を示す。
【0013】
【表1】

【0014】
実施例である試料1〜6において、水溶液のpHを12とした。また、試料1〜5において二酸化チタンの量を2g/Lとして、試料6において二酸化チタンの量を0.6g/Lとした。
【0015】
そして、試料1では、シアヌル酸の分解率は100%であった。このときの酸化剤の組成は、オゾン(O)が25重量ppm、酸素(O)が7重量ppm、過酸化水素(H)が544重量ppmであった。
【0016】
また、試料2,3ではシアヌル酸の分解率は70%であった。このときの酸化剤の組成は、過酸化水素が240重量ppm、20400重量ppmであった点を除いて、試料1と同様であった。
【0017】
また、試料4,5ではシアヌル酸の分解率は80%であった。このときの酸化剤の組成は、過酸化水素が310重量ppm、4420重量ppmであった点を除いて、試料1と同様であった。
【0018】
また試料6では、二酸化チタンの量が少ないにもかかわらず、シアヌル酸の分解率は44%であった。なお酸化剤の組成は、試料1と同様である。
【0019】
一方、比較例である試料7では、酸化剤にはオゾンが25重量ppm、酸素が7重量ppm含まれていたが、過酸化水素が含まれていなかったため、他の条件が試料1と同様であったにもかかわらず、シアヌル酸の分解率は40%であった。
【0020】
また比較例である試料8では、水溶液のpHが4であったため、他の実験条件が試料1と同様であったにもかかわらず、シアヌル酸の分解率は0%であった。
【0021】
また比較例である試料9では、酸化剤には酸素が7重量ppm含まれていたが、オゾン及び過酸化水素が含まれていなかったため、他の条件が試料1と同様であったにもかかわらず、シアヌル酸の分解率は30%であった。

【0022】
(実施例2)
実施例1の試料1と同様の条件において、二酸化チタンの量を変化させることにより、ビスフェノールAの分解反応速度定数を測定した。結果を図1のグラフに示す。このグラフから、試料1と同様の条件においては、ビスフェノールAの分解速度定数は、二酸化チタンの濃度が2g/Lのときが最も大きいことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ビスフェノールAの分解速度定数の二酸化チタン濃度依存性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤及び被分解物を含む水溶液中に浸漬された光触媒に光を照射することにより、前記被分解物を光分解する工程を有し、
前記光触媒は、二酸化チタンを含んでおり、
前記水溶液のpHは6以上であり、
前記酸化剤として、オゾンを前記水溶液に対して10重量ppm以上50重量ppm以下、酸素を前記水溶液に対して5重量ppm以上30重量ppm以下、過酸化水素を前記水溶液に対して200重量ppm以上25000重量ppm以下含有している光分解方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光分解方法において、前記酸化剤は、過酸化水素を前記水溶液に対して300重量ppm以上5000重量ppm以下含有している光分解方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光分解方法において、
前記水溶液のpHは13以下である光分解方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の光分解方法において、
前記被分解物は、下記一般式(1)
【化1】


(式中、XはCl、Br、OCH、又はSCHを表す。Rは、CH、C、C、又はCH(CHを表す。Rは、H、CH、C、C、又はCH(CHを表す。Rは、CH、C、C、又はCH(CHを表す。)
で示される構造を1種以上有する化合物を含有する光分解方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−22958(P2010−22958A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188446(P2008−188446)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【Fターム(参考)】