説明

光半導体素子

【課題】 容易にゼロチャープ変調と負チャープ変調とを行うことが可能な光半導体素子を提供する。
【解決手段】 光分波器が、第1及び第2の入力ポートと、第1及び第2の出力ポートとを含む。第1の入力ポートに信号光が入力されると、第1の出力ポートに出力される信号光と、第2の出力ポートに出力される信号光との強度が等しくなり、第2の入力ポートに信号光が入力されると、第1の出力ポートに出力される信号光の強度が、第2の出力ポートに出力される信号光の強度より大きくなる。光合波器が、第3及び第4の入力ポートと、第3及び第4の出力ポートとを含む。第1の光導波路が、第1の出力ポートと第3の入力ポートとを接続し、第2の光導波路が、第2の出力ポートと第4の入力ポートとを接続する。第1の変調電極及び第2の変調電極に印加される電圧により、第1の光導波路及び第2の光導波路の光路長が変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッハツェンダ光変調器を有する光半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システム用の送信器に、チャープ制御が可能なLiNbOを用いたマッハツェンダ光変調器(LN−MZ変調器)が広く用いられている。近年、半導体を用いたマッハツェンダ光変調器(半導体MZ変調器)の開発が進められている。半導体MZ変調器は、光源となる半導体レーザに用いられるInPやGaAs等の半導体基板上に作製することができる。このため、光源と光変調器とを同一基板上に集積化することが可能になる。また、量子井戸構造に電界を印加したときに量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)により生じる屈折率変化は、LiNbOの電気光学効果による屈折率変化よりも大きい。このため、変調器の小型化、及び駆動電圧の低電圧化に有利である。
【0003】
MZ変調器の2本のアームのコア層の厚さを異ならせることにより、負チャープ特性及びゼロチャープ特性のいずれでも動作させることが可能なマッハツェンダ光変調器が提案されている。コア層が薄い方のアームに印加するバイアス電圧の絶対値を相対的に大きくすることにより、負チャープ動作を行うことができる。逆に、コア層が薄い方のアームに印加するバイアス電圧の絶対値を相対的に小さくすることにより、ゼロチャープ動作を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−204884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体MZ変調器は、小型化及び低電圧化の点で、LN−MZ変調器より有利であるが、チャープ制御の点では、LN−MZ変調器に比べて不利である。LiNbOが持つ電気光学効果では、屈折率は印加電圧に対してほぼ線型に変化するが、QCSEでは、屈折率は印加電圧に対して非線形、具体的には二次関数的に変化する。また、LiNbOが持つ電気光学効果では、印加電圧が変化しても光学損失はほとんど変化しないが、QCSEでは、印加電圧が大きくなるにしたがって光学損失が大きくなってしまう。
【0006】
光通信用のMZ変調器には、αパラメータが0となる変調(ゼロチャープ変調)、またはαパラメータが−0.7程度となる変調(負チャープ変調)が要求される。上記従来技術による素子では、1つの半導体MZ変調器でゼロチャープ変調と負チャープ変調を行うために、2本のアームのコア層の厚さを異ならせなければならない。このため、製造工程が複雑になる。
【0007】
2本のアームを構成する光導波路の積層構造が同一の半導体MZ変調器においては、2本のアームに、同一の位相変化量を発生させることにより、ゼロチャープ変調を行うことができる。具体的には、2本のアームに印加する変調信号の振幅と、中心電圧とを等しくすればよい。2本のアームに印加する信号の中心電圧が等しいため、2本のアームを伝搬する光信号の損失も等しくなる。このため、良好な消光特性を得ることができる。
【0008】
2本のアームに異なる位相変化量を生じさせることにより、負チャープ変調を行うことができる。2本のアームに印加する変調信号の振幅を異ならせることにより、異なる位相変化量を生じさせることができる。ところが、この方法では、ゼロチャープ変調用のドライバ回路と、負チャープ変調用のドライバ回路とを別々に準備しなければならない。2本のアームの長さを異ならせることによっても、異なる位相変化量を生じさせることができる。この方法では、1つの素子で、ゼロチャープ変調と負チャープ変調との両方の変調動作を行うことができない。
【0009】
容易にゼロチャープ変調と負チャープ変調とを行うことが可能な光半導体素子が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によると、
第1及び第2の入力ポートと、第1及び第2の出力ポートとを含み、前記第1の入力ポートに信号光が入力されると、前記第1の出力ポートに出力される信号光と、第2の出力ポートに出力される信号光との強度が等しくなり、前記第2の入力ポートに信号光が入力されると、前記第1の出力ポートに出力される信号光の強度が、前記第2の出力ポートに出力される信号光の強度より大きくなる光分波器と、
第3及び第4の入力ポートと、第3及び第4の出力ポートとを含む光合波器と、
前記第1の出力ポートと前記第3の入力ポートとを接続し、半導体で形成された第1の光導波路と、
前記第2の出力ポートと前記第4の入力ポートとを接続し、半導体で形成された第2の光導波路と、
前記第1の光導波路に電界を印加することにより該第1の光導波路の光路長を変化させる第1の変調電極と、
前記第2の光導波路に電界を印加することにより該第2の光導波路の光路長を変化させる第2の変調電極と
を有する光半導体素子が提供される。
【発明の効果】
【0011】
第1の変調電極と第2の変調電極とに印加する直流バイアス電圧を調整することにより、ゼロチャープ変調及び負チャープ変調のどちらで動作させることも可能である。第1の光導波路による光学損失が、第2の光導波路による光学損失より大きい場合でも、光分波器の第2の入力ポートに信号光を入力することにより、光合波器の2つの入力ポートに入力される信号光の強度を等しくすることができる。これにより、消光比の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1による光半導体素子の平面図である。
【図2−1】実施例1による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図2−2】実施例1による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図2−3】実施例1による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図2−4】実施例1による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図2−5】実施例1による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図3】光分波器の平面形状を示す図である。
【図4】光分波器の2つの出力ポートから出力される信号光の強度比の波長依存性を示すグラフである。
【図5】実施例1による光半導体素子をゼロチャープ変調で動作させるときの信号光の伝搬の様子を示す平面図である。
【図6】実施例1による光半導体素子をゼロチャープ変調で動作させるときの変調信号及び信号光のタイミングチャートである。
【図7】(7A)は、ゼロチャープ変調で動作させているときの第1及び第2の光導波路の位相変化量の電圧依存性を示すグラフであり、(7B)は、光学損失の電圧依存性を示すグラフである。
【図8】実施例1による光半導体素子を負チャープ変調で動作させるときの信号光の伝搬の様子を示す平面図である。
【図9】実施例1による光半導体素子を負チャープ変調で動作させるときの変調信号及び信号光のタイミングチャートである。
【図10】(10A)は、負チャープ変調で動作させているときの第1及び第2の光導波路の位相変化量の電圧依存性を示すグラフであり、(10B)は、光学損失の電圧依存性を示すグラフである。
【図11】負チャープ変調で動作しているときの消光比の波長依存性を示すグラフである。
【図12】実施例2による光半導体素子の平面図である。
【図13】実施例3による光半導体素子の平面図である。
【図14−1】実施例3による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図14−2】実施例3による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図14−3】実施例3による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図14−4】実施例3による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図14−5】実施例3による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図14−6】実施例3による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図14−7】実施例3による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図14−8】実施例3による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図14−9】実施例3による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図14−10】実施例3による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図14−11】実施例3による光半導体素子の製造途中段階における断面図である。
【図15】実施例4による光半導体素子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照しながら、実施例1〜実施例4による光半導体素子について説明する。
【0014】
[実施例1]
図1に、実施例1による光半導体素子の平面図を示す。基板20の上に、光分波器21及び光合波器22が形成されている。光分波器21及び光合波器22は、2入力2出力の多モード干渉(MMI)導波路で構成される。光分波器21に、第1の入力ポートIPa、第2の入力ポートIPb、第1の出力ポートOP1a、及び第2の出力ポートOP1bが画定されている。光合波器22に、第3の入力ポートIP2a、第4の入力ポートIP2b、第3の出力ポートOP2a、及び第4の出力ポートOP2bが画定されている。
【0015】
基板20の上に、さらに、第1の光導波路23及び第2の光導波路24が形成されている。第1の光導波路23は、第1の出力ポートOP1aと第3の入力ポートIP2aとを接続し、第2の光導波路24は、第2の出力ポートOP1bと第4の入力ポートIP2bとを接続する。第1の入力導波路25及び第2の入力導波路26が、それぞれ第1の入力ポートIPa及び第2の入力ポートIPbに接続されている。第1の出力導波路27及び第2の出力導波路28が、それぞれ第3の出力ポートOP2a及び第4の出力ポートOP2bに接続されている。第1の光導波路23及び第2の光導波路24は、マッハツェンダ変調器の2本のアームを構成する。
【0016】
これらの導波路、及び多モード干渉導波路は、同一の積層構造により構成される。また、第1の光導波路23の物理的な導波路長は、第2の光導波路24の物理的な導波路長と等しい。
【0017】
第1の光導波路23及び第2の光導波路24の上に、それぞれ第1の変調電極31及び第2の変調電極32が形成されている。第1のドライバ回路35及び第2のドライバ回路36が、それぞれ第1の変調電極31及び第2の変調電極32に変調信号を印加する。第1のドライバ回路35により印加される変調信号は、直流バイアス電圧Vaに変調電圧Vsigaを重畳させたものである。第2のドライバ回路36により印加される変調信号は、直流バイアス電圧Vbに変調電圧Vsigbを重畳させたものである。
【0018】
第1の変調電極31及び第2の変調電極32に変調信号が印加されると、それぞれ第1の光導波路23及び第2の光導波路24の屈折率が、量子閉じ込め電気光学効果によって変化し、それらの光路長が変化する。
【0019】
図2A〜図2Lを参照して、実施例1による光半導体素子の製造方法について説明する。図2A〜図2Lは、図1の一点鎖線2A−2Aにおける断面図に対応する。
【0020】
図2Aに示すように、n型InPからなる基板20の上に、厚さ200nmの下部クラッド層40をエピタキシャル成長させる。その上に、コア層41、厚さ100nmの上部第1クラッド層42、厚さ1500nmの上部第2クラッド層43、及び厚さ300nmのコンタクト層44を、順番にエピタキシャル成長させる。これらの半導体層の形成には、例えば有機金属化学気相成長(MO−CVD)が適用される。
【0021】
下部クラッド層40は、例えばn型InPで形成され、その不純物濃度は5×1017cm−3である。コア層41は、基板側から順番に、厚さ50nmのアンドープInP層、多重量子井戸(MQW)層、及び厚さ100nmのアンドープInP層が積層された積層構造を有する。MQW層は、各々の厚さが5nmの14層のInPバリア層と、各々の厚さが10nmの13層のInGaAsP井戸層とが交互に積層された積層構造を有する。井戸層の組成は、バンド間遷移波長が1400nmになるように選択されている。MQW層の厚さは200nmである。
【0022】
上部第1クラッド層42は、例えばp型InPで形成され、その不純物濃度は6.5×1017cm−3である。上部第2クラッド層43は、例えばp型InPで形成され、その不純物濃度は1.6×1018cm−3である。コンタクト層44は、例えばp型InGaAsで形成され、その不純物濃度は1.5×1019cm−3である。
【0023】
コンタクト層44の一部の領域上に、酸化シリコン等からなるマスクパターン47を形成する。マスクパターン47は、図1に示した第1及び第2の入力導波路25、26、光分波器21、第1及び第2の光導波路23、24、光合波器22、第1及び第2の出力導波路27、28の平面形状に整合する。
【0024】
図2Bに示すように、マスクパターン47をエッチングマスクとして、コンタクト層44から基板20の表層部までエッチングする。このエッチングには、例えば誘導結合プラズマを用いた反応性イオンエッチング(ICP−RIE)が適用される。これにより、高さ約3μmのメサ構造50が形成される。メサ構造50を形成した後、マスクパターン47を、フッ酸系のエッチャントを用いて除去する。
【0025】
図2Cに示すように、基板20及びメサ構造50の表面を、酸化シリコン等のパッシベーション膜52で覆う。パッシベーション膜52の形成には、例えば化学気相成長(CVD)が適用される。パッシベーション膜52の上に、スピンコート等により、埋込部材53を形成する。メサ構造50の側方が、埋込部材53で埋め込まれる。なお、メサ構造50の上にも埋込部材53が堆積される。埋込部材53には、半導体よりも誘電率の低い低誘電率材料、例えばベンゾシクロブテン(BCB)、ポリイミド系有機化合物、エポキシ系有機化合物、アクリル系有機化合物等が用いられる。コア層41を含むメサ構造50及びその側方に埋め込まれた低誘電率の埋込部材53により、ハイメサ構造の光導波路が構成される。なお、メサ構造50の側方に埋込部材を配置せず、空気が満たされた状態にしてもよい。
【0026】
図2Dに示すように、埋込部材53をRIE等でエッチバックすることにより、メサ構造50の上面を覆うパッシベーション膜52を露出させる。メサ構造50の側方には、埋込部材53が残存する。
【0027】
図2Eに示すように、埋込部材53及び露出しているパッシベーション膜52(図2D)の上に、レジスト膜55を形成する。レジスト膜55に、開口55Aを形成する。開口55Aは、図1に示した第1及び第2の変調電極31、32の平面形状に整合する。開口55Aの底面に露出したパッシベーション膜52を、ウェットエッチングにより除去する。これにより、メサ構造50の最上層であるコンタクト層44が露出する。
【0028】
図2Fに示すように、レジスト膜55の上、及び開口55Aの底面の上に、導電膜57を形成する。導電膜57は、例えばAu/Zn/Auの3層構造を有し、真空蒸着法により形成される。
【0029】
図2Gに示すように、レジスト膜55(図2F)を、その上に形成されている導電膜57と共に除去する。メサ構造50の上に、導電膜57が残る。
【0030】
図2Hに示すように、埋込部材53及び導電膜57の上に、シード層58を形成する。シード層58は、例えばTi/Pt/Auの3層構造を有し、スパッタリングにより形成される。シード層58の上に、レジスト膜59を形成し、このレジスト膜59に開口59Aを形成する。開口59Aは、図1に示した第1及び第2の変調電極31、32の平面形状に整合する。
【0031】
図2Iに示すように、開口59Aの底面に金メッキを施すことにより、Au膜60を形成する。
【0032】
図2Jに示すように、レジスト膜59(図2I)を除去する。Au膜60が形成されていない領域に、シード層58が露出する。
【0033】
図2Kに示すように、全面をドライエッチングすることにより、露出していたシード層58(図2J)を除去する。これにより、埋込部材53が露出する。メサ構造50の上に、導電膜57、シード層58、及びAu膜60を含む第1の変調電極31が形成される。同時に、第2の変調電極32(図1)も形成される。
【0034】
図2Lに示すように、素子の厚さが150μmになるように、基板20の背面を研磨する。研磨された基板20の背面に、AuGe/Auの2層構造を有する導電膜65を形成する。導電膜65をパターニングした後、金メッキを施すことにより、Au膜66を形成する。導電膜65及びAu膜66が、背面電極を構成する。
【0035】
図3Aに、光分波器21の平面図の一例を示す。光分波器21の平面形状は、頂角が直角ではない平行四辺形である。この平行四辺形の短辺の長さは11.0μmであり、一方の短辺から他方の短辺までの高さは169.6μmである。
【0036】
一方の短辺(入力辺)21Aに、第1の入力ポートIPa及び第2の入力ポートIPbが画定されており、他方の短辺(出力辺)21Bに、第1の出力ポートOP1a及び第2の出力ポートOP1bが画定されている。第1の入力ポートIPaから第2の入力ポートIPbに向かう方向と、第1の出力ポートOP1aから第2の出力ポートOP1bに向かう方向とは、同一方向である。
【0037】
出力辺21Bの中心は、入力辺21Aの中心に対して、第1の出力ポートOP1aから第2の出力ポートOP1bに向かう方向にずれており、そのずれ量は5.0μmである。第1の入力ポートIPa及び第2の入力ポートIPbは、入力辺21Aの中心に関して相互に反対側に画定されており、中心から第1の入力ポートIPaまでの距離は1.89μmであり、中心から第2の入力ポートIPbまでの距離は2.04μmである。第1の出力ポートOP1a及び第2の出力ポートOP1bは、出力辺21Bの中心に関して相互に反対側に画定されており、中心から第1の出力ポートOP1aまでの距離、及び中心から第2の出力ポートOP1bまでの距離は、共に1.86μmである。このように、第1の出力ポートOP1a及び第2の出力ポートOP1bは、第1の入力ポートIPa及び第2の入力ポートIPbから、入力辺21Aに対して垂直な方向に延ばした直線のいずれからも外れた位置に画定されている。
【0038】
図3Bに示すように、光分波器21に第1の入力ポートIPaから信号光Siaを入力したときに、第1の出力ポートOP1aに出力される信号光Soaの強度と、第2の出力ポートOP1bに出力される信号光Sobの強度とは、ほぼ等しい。
【0039】
図3Cに示すように、光分波器21に第2の入力ポートIPbから信号光Sibを入力したときに、第1の出力ポートOP1aに出力される信号光Soaの強度は、第2の出力ポートOP1bに出力される信号光Sobの強度よりも大きくなる。図3Cに示した例では、信号光Soaの強度と信号光Sobの強度との比は、52.5:47.5である。すなわち、信号光Sobの強度を基準としたときの信号光Soaの強度(強度比)は、約0.4dBになる。
【0040】
図4に、信号光Sobに対する信号光Soaの強度比の波長依存性を示す。横軸は、波長を単位「μm」で表し、縦軸は、信号光Sobの強度を基準としたときの信号光Soaの強度(強度比)を単位「dB」で表す。四角記号及び丸記号は、それぞれ第1の入力ポートIPa及び第2の入力ポートIPbに信号光を入力したときの強度比を示す。
【0041】
第2の入力ポートIPbに信号光を入力したとき、波長1.53μm〜1.57μmの範囲内で、信号光の強度比がほぼ0.4dBになっている。また、第1の入力ポートIPaに信号光を入力したときには、波長1.53μm〜1.57μmの範囲内で、強度比が−0.05dB〜0.15dBの範囲内に納まっている。このように、cバンドの範囲内で、ほぼ所望の強度比が実現されている。
【0042】
図3Aに示した光分波器21の平面形状は一例であり、図4に示した強度比の波長依存性と同等の特性を有する他の形状を採用してもよい。
【0043】
図5に、ゼロチャープ変調時の信号光の伝搬の様子を示し、図6に、信号光及び変調信号のタイミングチャートを示す。第1の入力導波路25を介して、第1の入力ポートIPaに信号光Siaが入力される。第2の入力ポートIPbには、信号光が入力されない。信号光Siaの強度をIとする。
【0044】
第1の出力ポートOP1a及び第2の出力ポートOP1bに、それぞれ強度I/2の信号光が出力される。直流バイアス電圧Va及びVbは等しく、共にVである。変調電圧VsigaとVsigbとは、相互に逆位相の交流電圧であり、その振幅は等しく、共にVppである。
【0045】
第2の出力ポートOP2bから、信号光DATAが出力される。第1の出力ポートOP2aからは、信号光DATAの反転信号が出力される。
【0046】
図7Aに、電圧無印加時の位相変化量を基準として、第1の光導波路23及び第2の光導波路24による位相変化量の一例を示す。図7Bに、第1の光導波路23及び第2の光導波路24による光学損失の一例を示す。位相変化量は、印加電圧が増加するに従って、2次関数的に増大する。また、印加電圧が大きくなるにしたがって、光学損失も増大する。
【0047】
第1の変調電極31に印加される直流バイアス電圧Va及び第2の変調電極32に印加される直流バイアス電圧Vbが、共にVである。直流バイアス電圧Vが印加されたときの位相変化量をφとする。この直流バイアス電圧Vに、変調電圧VsigaまたはVsigbが重畳される。このため、第1の光導波路23を伝搬する信号光の位相変化量と、第2の光導波路24を伝搬する信号光の位相変化量とは、φを含む範囲内で変動する。
【0048】
第1の光導波路23を伝搬する信号光の光学損失と、第2の光導波路24を伝搬する信号光の光学損失とは等しく、共にLである。このため、光合波器22の2つの入力ポートIP2a、IP2bに入力される信号光の強度が等しくなり、良好な消光比を得ることができる。
【0049】
図8に、負チャープ変調時の信号光の伝搬の様子を示し、図9に、信号光及び変調信号のタイミングチャートを示す。第2の入力導波路26を介して、第2の入力ポートIPbに信号光Sibが入力される。第1の入力ポートIPaには、信号光が入力されない。信号光Sibの強度をIとする。
【0050】
第1の出力ポートOP1a及び第2の出力ポートOP1bに、それぞれ強度Ia、及びIbの信号光が出力される。ここで、Ia>Ibが成り立つ。直流バイアス電圧Va及びVbは、それぞれVa及びVbである。ここで、Va>Vbが成り立つ。変調信号電圧VsigaとVsigbとは、逆位相の交流電圧であり、その振幅は等しく、共にVppである。
【0051】
第1の出力ポートOP2aから、信号光DATAが出力される。第2の出力ポートOP2bからは、信号光DATAの反転信号が出力される。
【0052】
図10Aに、電圧無印加時の位相変化量を基準として、第1の光導波路23及び第2の光導波路24による位相変化量の一例を示す。図10Bに、第1の光導波路23及び第2の光導波路24による光学損失の一例を示す。第1の変調電極31に印加される直流バイアス電圧Vaが、第2の変調電極32に印加される直流バイアス電圧Vbよりも大きい。直流バイアス電圧Va及びVbが印加されたときの位相変化量を、それぞれφa及びφbとする。φaはφbよりも大きい。
【0053】
直流バイアス電圧Va及びVbに、それぞれ振幅Vppの変調電圧Vsiga及びVsigbが重畳される。このため、第1の光導波路23を伝搬する信号光の位相変化量は、ほぼφaを中心として変動する。変動幅(位相変調量)をΔφaとする。第2の光導波路24を伝搬する信号光の位相変化量は、ほぼφbを中心として変動する。変動幅(位相変調量)をΔφbとする。位相変調量ΔφaとΔφbとの比を0.85:0.15とすることにより、αパラメータが−0.7程度の負チャープ変調を行うことができる。
【0054】
印加電圧がVa及びVbのときの、第1の光導波路23及び第2の光導波路24を伝搬する信号光の光学損失を、それぞれLa及びLbとする。損失Laは損失Lbよりも大きい。第1の出力ポートOP1a及び第2の出力ポートOP1bに出力される信号光の強度が等しい場合には、光合波器22に入力される2つの信号光の強度の差が、損失LaとLbとの差を反映して大きくなる。このため、消光比が低下してしまう。
【0055】
実施例1においては、第1の出力ポートOP1aに出力される信号光の強度Iaが、第2の出力ポートOP1bに出力される信号光の強度Ibよりも大きい。このため、相対的に損失の大きな第1の光導波路31を伝搬した後の信号光の強度と、相対的に損失の小さな第2の光導波路32を伝搬した後の信号光の強度との差を小さくすることができる。すなわち、光合波器22に入力される2つの信号光の強度の差を小さくすることができる。これにより、良好な消光比を得ることが可能になる。
【0056】
良好な消光比を得るために、第1の出力ポートOP1aに出力される強度Iaの信号光が、第1の光導波路23によって損失Laを受けた後の強度と、第2の出力ポートOP1bに出力される強度Ibの信号光が、第2の光導波路24によって損失Lbを受けた後の強度とを等しくすることが好ましい。なお、両者が厳密に等しくなくても、光合波器22の2つの入力ポートIP2a、IP2bに入力される信号光の強度の差が、光分波器21による分波比が1:1の場合のときの両者の差よりも小さくなる場合に、消光比を改善することができる。
【0057】
αパラメータが−0.7程度の負チャープ変調を行うには、図10Aに示した位相変調量ΔφaとΔφbとの比が0.85:0.15であることが求められる。上記実施例1の光半導体素子において、信号光の波長を1.55μm、変調電圧の振幅Vppを1.0Vとした場合、直流バイアス電圧Va及びVbを、それぞれ5.17V及び1.51Vとすれば、位相変調量ΔφaとΔφbとの比が0.85:0.15になる。
【0058】
このときの第1の光導波路23の損失Laと、第2の光導波路24の損失Lbとの差を補償するように、光分波器21の第1の出力ポートOP1a及び第2の出力ポートOP1bに現れる信号光の強度に差を与えればよい。実施例1による光半導体素子においては、第1の出力ポートOP1a及び第2の出力ポートOP1bに現れる信号光の強度の比を、52.5:47.5に設定すればよい。言い換えれば、第2の出力ポートOP1bに現れる信号光の強度を基準としたとき、第1の出力ポートOP1aに現れる信号光の強度(強度比)を0.4dBにすればよい。このように、光分波器21による分岐比を1:1からずらすことにより、良好な消光比を得ることができる。
【0059】
さらに、実施例1による光半導体素子においては、ゼロチャープ変調時と、負チャープ変調時とで、変調電圧Vsiga、Vsigbの振幅を変える必要がない。このため、ゼロチャープ変調用の変調電圧発生回路と、負チャープ変調用の変調電圧発生回路とを共通化することができる。
【0060】
図11に、負チャープ動作時の消光比の波長依存性を示す。横軸は、波長を単位「μm」で表し、縦軸は、消光比を単位dBで表す。図中の四角記号は、実施例1による光半導体素子の消光比を示し、丸記号は、光分波器21の第1及び第2の出力ポートOP1a、OP1bに現れる信号光の強度が等しい場合(比較例)の消光比を示す。実施例1においては、波長が1.53μm〜1.57μmの範囲内で、33.5dB以上の消光比が得られている。これに対し、比較例においては、波長が1.53μmのときに、消光比が28dB程度まで低下してしまう。実施例1のように、光分波器21の2つの出力ポートOP1a、OP1bに現れる信号光の強度比を約0.4dBにすることにより、負チャープ変調時における消光比の低下を防止することができる。
【0061】
実施例1では、基板20にn型InPを用い、クラッド層、コア層等にInP系の半導体材料を用いたが、他の半導体材料を用いてもよい。例えば、InP基板上に、InAlGaAs系半導体材料からなるコア層を形成してもよい。また、実施例1では、コア層をMQW構造としたが、他の構造、例えば量子細線構造、量子ドット構造、またはバルク構造としてもよい。また、実施例1では、変調電極をマイクロストリップラインで構成したが、コプレーナ構造としてもよい。
【0062】
[実施例2]
図12に、実施例2による光半導体素子の平面図を示す。以下、図1に示した実施例1による光半導体素子との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0063】
光分波器21と第1の変調電極31との間の第1の光導波路23の上に、第1の初期位相調整電極70が形成されており、光分波器21と第2の変調電極32との間の第2の光導波路24の上に、第2の初期位相調整電極71が形成されている。初期位相調整用の電圧印加回路72、73が、それぞれ第1及び第2の初期位相調整電極70、71に直流電圧を印加する。
【0064】
第1及び第2の初期位相調整電極70、71に所望の直流電圧を印加することにより、第1の光導波路23及び第2の光導波路24を伝搬する信号光に初期位相差を付与することができる。例えば、第1及び第2の光導波路23、24の幅の揺らぎ、光合波器22の寸法の、設計値からのずれ等に起因する予期せぬ位相差を補償するように、初期位相差を付与することが可能である。
【0065】
第1及び第2の初期位相調整電極70、71は、第1及び第2の変調電極31、32と同時に形成することができる。
【0066】
実施例1では、ゼロチャープ変調時には、図5に示したように、第2の出力導波路28から信号光が出力され、負チャープ変調時には、図8に示したように、第1の出力導波路27から信号光が出力された。初期位相差を調節することにより、負チャープ動作時にも、第2の出力導波路28から信号光を出力させることが可能である。初期位相差の調整に伴い、無視できない光学損失が発生する場合には、この光学損失を考慮して、光分波器21の分波比を設定しておけばよい。
【0067】
[実施例3]
図13に、実施例3による光半導体素子の平面図を示す。以下、図1に示した実施例1による光半導体素子との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0068】
基板20の表面がレーザ領域200と変調器領域201とに区分されている。基板20のレーザ領域200内に、第1の半導体レーザ素子80及び第2の半導体レーザ素子81が形成されている。変調器領域201内に、図1に示した実施例1の第1及び第2の入力導波路25、26、光分波器21、第1及び第2の光導波路23、24、第1及び第2の変調電極31、32、光合波器22、及び第1及び第2の出力導波路27、28が形成されている。
【0069】
第1の半導体レーザ素子80の出射端が、第1の入力導波路25を介して、光分波器21の第1の入力ポートIPaに接続され、第2の半導体レーザ素子81の出射端が、第2の入力導波路26を介して、光分波器21の第2の入力ポートIPbに接続されている。
【0070】
ドライバ回路82、83が、それぞれ第1の半導体レーザ素子80及び第2の半導体レーザ素子81を駆動する。第1の半導体レーザ素子80から信号光を出射している状態が、図3Bに示したゼロチャープ変調を行っている状態に対応し、第2の半導体レーザ素子81から信号光を出射している状態が、図3Cに示した負チャープ変調を行っている状態に対応する。
【0071】
図14A〜図14N1、図14N2を参照して、実施例3による光半導体素子の製造方法について説明する。図14A〜図14Eは、図13の一点鎖線14A−14Aにおける断面図に対応し、図14F1、図14G1、・・・図14N1は、図13の一点鎖線14F1−14F1における断面図に対応し、図14F2、図14G2、・・・図14N2は、図13の一点鎖線14F2−14F2における断面図に対応する。図2A〜図2Lに示した実施例1による製造方法と同一の工程については説明を省略する。
【0072】
図14Aに示すように、基板20の上に、n型InPからなる厚さ200nmの下部クラッド層40を形成する。下部クラッド層40の上に、回折格子層85を形成する。回折格子層85は、遷移波長1.2μmのn型InGaAsPで形成され、その厚さは70nmである。回折格子層85のうち、レーザ領域200に、周期240nmの回折格子を形成する。回折格子の形成には、電子ビーム露光とドライエッチングを適用することができる。
【0073】
回折格子層85の上に、n型InPからなる厚さ50nmのスペーサ層86を形成する。スペーサ層86の上に、活性層87を形成する。活性層87は、多重量子井戸(MQW)層を分離閉じ込めヘテロ構造(SCH)層で挟んだ積層構造を有する。SCH層は、遷移波長1.15μmのアンドープInGaAsPで形成され、その厚さは12.5nmである。MQW層は、アンドープのInGaAsPからなる厚さ15nmの9層のバリア層と、アンドープのInGaAsPからなる厚さ5nmの8層の井戸層とを、交互に積層した積層構造を有する。MQW層のフォトルミネッセンス(PL)波長は、例えば1.55μmである。
【0074】
活性層87の上に、p型InPからなる厚さ200nmの上部クラッド層88を形成する。
【0075】
上部クラッド層88の上に、酸化シリコン等からなるマスクパターン89を形成する。マスクパターン89は、レーザ領域200の上部クラッド層88を覆い、変調器領域201の上部クラッド層88を露出させる。
【0076】
図14Bに示すように、マスクパターン89をエッチングマスクとして、上部クラッド層88、活性層87、及びスペーサ層86をエッチングする。このエッチングには、例えばウェットエッチングが適用される。変調器領域201に、回折格子層85が露出する。
【0077】
図14Cに示すように、マスクパターン89を選択成長用のマスクとして用いて、変調器領域201の回折格子層85の上に、コア層41及び上部第1クラッド層42を選択成長させる。コア層41及び上部第1クラッド層42の構造は、図2Aに示した実施例1のコア層41及び上部第1クラッド層42の構造と同一である。コア層41と活性層87とは、バットジョイント構造により相互に接続される。
【0078】
図14Dに示すように、マスクパターン89(図14C)を除去する。これにより、上部クラッド層88が露出する。
【0079】
図14Eに示すように、上部クラッド層88及び上部第1クラッド層42の上に、p型InPからなる厚さ1500nmの上部第2クラッド層43を形成する。さらに、p型InGaAsからなる厚さ300nmのコンタクト層44を形成する。
【0080】
図14F1及び図14F2に示すように、コンタクト層44の上に酸化シリコン等からなるマスクパターン90を形成する。マスクパターン90は、図13に示した第1及び第2の半導体レーザ素子80、81、第1及び第2の入力導波路25、26、光分波器21、第1及び第2の光導波路23、24、光合波器22、及び第1及び第2の出力導波路27、28の平面形状に整合する。
【0081】
マスクパターン90をエッチングマスクとして、コンタクト層44から基板20の表層部までエッチングする。このエッチングには、誘導結合プラズマを用いた反応性イオンエッチング(ICP−RIE)が適用される。レーザ領域200にメサ構造100が形成され、変調器領域201にメサ構造50が形成される。メサ構造50及び100の高さは、約3μmである。
【0082】
図14G1及び図14G2に示すように、変調器領域201の基板20の表面、及びメサ構造50の表面を、窒化シリコンからなるマスクパターン103で覆う。マスクパターン103は、全面に窒化シリコン膜を堆積させた後、レーザ領域200の窒化シリコン膜を除去することにより形成される。
【0083】
図14H1及び図14H2に示すように、マスクパターン90及び103を選択成長用のマスクとして用いて、基板20の上に半絶縁性のInPからなる埋込部材104を選択成長させる。メサ構造100の両側が、埋込部材104で埋め込まれる。変調器領域201には、埋込部材104が形成されない。
【0084】
図14I1及び図14I2に示すように、マスクパターン90及び103(図14H1、図14H2)を、フッ酸系のエッチャントを用いて除去する。レーザ領域200においては、コンタクト層44及び埋込部材104が露出し、変調器領域201においては、基板20及びメサ構造50が露出する。
【0085】
図14J1及び図14J2に示すように、レーザ領域200においては、埋込部材104及びコンタクト層44の表面、変調器領域201においては、基板20及びメサ構造50の表面を、酸化シリコンからなるパッシベーション膜52で覆う。さらに、パッシベーション膜52の上に、スピンコート法等を用いて、低誘電率材料からなる埋込部材53を形成する。埋込部材53には、実施例1と同様に、BCB等が用いられる。メサ構造50の側方が、埋込部材53で埋め込まれる。
【0086】
図14K1及び図14K2に示すように、埋込部材53の表層部を、RIE等によりエッチバックする。レーザ領域200においては、パッシベーション膜52が露出する。変調器領域201においては、メサ構造50の上のパッシベーション膜52が露出する。メサ構造50の側方には、埋込部材53が残る。
【0087】
図14L1及び図14L2に示すように、レーザ領域200においては、パッシベーション膜52及びコンタクト層44の上、変調器領域201においては、パッシベーション膜52(図14K2)及び埋込部材53の上に、レジスト膜110を形成する。このレジスト膜110に開口110Aを形成する。開口110Aは、図13に示した第1及び第2の半導体レーザ素子80、81の電極、第1及び第2の変調電極31、32の平面形状に整合する。開口110Aの底面に露出しているパッシベーション膜52を、ウェットエッチングにより除去する。
【0088】
図14M1及び図14M2に示すように、レジスト膜110の上、及び開口110Aの底面に、導電膜57を形成する。導電膜57は、例えばAu/Zn/Auの3層構造を有し、真空蒸着法により形成される。その後、レジスト膜110を、その上に堆積している導電膜57と共に除去する。開口110Aの底面にのみ、導電膜57が残る。
【0089】
図14N1及び図14N2に示すように、導電膜57の上に、シード層58及びAu膜60を形成する。シード層58及びAu膜60の形成方法は、図2H〜図2Kに示した実施例1による導電膜57、シード層58、及びAu膜60の形成方法と同一である。レーザ領域200においては、導電膜57、シード層58、及びAu膜60からなる第1の半導体レーザ素子80の上部電極80Aが形成される。第2の半導体レーザ素子81(図13)の上部電極も同時に形成される。変調器領域201においては、実施例1と同様に、第1の変調電極31及び第2の変調電極32(図13)が形成される。
【0090】
その後、図9Lに示した実施例1の方法と同様に、基板20の背面を研磨した後、導電膜65及びAu膜65を形成する。
【0091】
実施例3においても、実施例1と同様に、ゼロチャープ変調及び負チャープ変調を行うことが可能である。また、負チャープ変調時の消光比の低下を抑制することができる。第1の半導体レーザ素子80及び第2の半導体レーザ素子81から駆動する素子を選択することにより、ゼロチャープ変調及び負チャープ変調のどちらでも動作させることができる。
【0092】
[実施例4]
図15に、実施例4による光半導体素子の平面図を示す。以下、図13に示した実施例3との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0093】
実施例4においては、図12に示した実施例2と同様に、第1の初期位相調整電極70及び第2の初期位相調整電極71が形成されている。さらに、初期位相調整用の電圧印加回路72、73が準備されている。
【0094】
実施例4においては、実施例2と同様に、第1及び第2の光導波路23、24の幅の揺らぎ、光合波器22の寸法の、設計値からのずれ等に起因する予期せぬ位相差を補償するように、初期位相差を付与することが可能である。また、初期位相差を調節することにより、ゼロチャープ変調時と負チャープ変調時とで、第1の出力導波27及び第2の出力導波路28のうち同一の導波路から信号光を出力することができる。
【0095】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0096】
20 基板
21 光分波器
21A 入力辺
21B 出力辺
22 光合波器
23 第1の光導波路
24 第2の光導波路
25 第1の入力導波路
26 第2の入力導波路
27 第1の出力導波路
28 第2の出力導波路
31 第1の変調電極
32 第2の変調電極
35 第1のドライバ回路
36 第2のドライバ回路
40 下部クラッド層
41 コア層
42 上部第1クラッド層
43 上部第2クラッド層
44 コンタクト層
47 マスクパターン
50 メサ構造
52 パッシベーション膜
53 埋込部材
55 レジスト膜
55A 開口
57 導電膜
58 シード層
59 レジスト膜
59A 開口
60 Au膜
65 導電膜
66 Au膜
70 第1の初期位相調整電極
71 第2の初期位相調整電極
72、73 初期位相調整用の電圧印加回路
80 第1の半導体レーザ素子
81 第2の半導体レーザ素子
82、83 ドライバ回路
85 回折格子層
86 スペーサ層
87 活性層
88 上部クラッド層
89 マスクパターン
90 マスクパターン
100 メサ構造
103 マスクパターン
104 埋込部材
110 レジスト膜
110A 開口
200 レーザ領域
201 変調器領域
IPa 第1の入力ポート
IPb 第2の入力ポート
IP2a 第3の入力ポート
IP2b 第4の入力ポート
OP1a 第1の出力ポート
OP1b 第2の出力ポート
OP2a 第3の出力ポート
OP2b 第4の出力ポート
Va、Vb 直流バイアス電圧
Vsiga、Vsigb 変調電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の入力ポートと、第1及び第2の出力ポートとを含み、前記第1の入力ポートに信号光が入力されると、前記第1の出力ポートに出力される信号光と、第2の出力ポートに出力される信号光との強度が等しくなり、前記第2の入力ポートに信号光が入力されると、前記第1の出力ポートに出力される信号光の強度が、前記第2の出力ポートに出力される信号光の強度より大きくなる光分波器と、
第3及び第4の入力ポートと、第3及び第4の出力ポートとを含む光合波器と、
前記第1の出力ポートと前記第3の入力ポートとを接続し、半導体で形成された第1の光導波路と、
前記第2の出力ポートと前記第4の入力ポートとを接続し、半導体で形成された第2の光導波路と、
前記第1の光導波路に電界を印加することにより該第1の光導波路の光路長を変化させる第1の変調電極と、
前記第2の光導波路に電界を印加することにより該第2の光導波路の光路長を変化させる第2の変調電極と
を有する光半導体素子。
【請求項2】
前記光分波器、前記光合波器、前記第1の光導波路、前記第2の光導波路が表面に形成されている基板を、さらに有し、
前記光分波器は、頂角が直角からずれた平行四辺形の平面形状を有する多モード干渉導波路で構成されており、
前記第1の入力ポート及び前記第2の入力ポートは、前記多モード干渉導波路の1つの辺である入力辺に画定されており、前記第1の出力ポート及び前記第2の出力ポートは、前記入力辺に平行な他の辺である出力辺に画定されている請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項3】
前記第1の出力ポート及び前記第2の出力ポートは、前記第1の入力ポートから前記入力辺に垂直な方向に延ばした直線、及び前記第2の入力ポートから前記入力辺に垂直な方向に延ばした直線のいずれからも外れた位置に画定されている請求項2に記載の光半導体素子。
【請求項4】
前記第1の変調電極及び前記第2の変調電極に変調信号を印加するドライバ回路を、さらに有する請求項2または3に記載の光半導体素子。
【請求項5】
前記ドライバ回路は、前記第1の入力ポートに信号光が入力されるとき、前記第1の変調電極及び前記第2の変調電極に印加する変調信号の直流成分が等しくなり、前記第2の入力ポートに信号光が入力されるとき、前記第1の変調電極に印加する変調信号の直流電圧成分が、前記第2の変調電極に印加する変調信号の直流電圧成分よりも大きくなるように、前記第1の変調電極及び前記第2の変調電極に変調信号を印加する請求項4に記載の光半導体素子。
【請求項6】
前記ドライバ回路は、電圧無印加時を基準として、前記第1の入力ポートに信号光が入力されるとき、前記第1の光導波路を伝搬する信号光の位相変化量が、前記第2の光導波路を伝搬する信号光の位相変化量と等しく、前記第2の入力ポートに信号光が入力されるとき、前記第1の光導波路を伝搬する信号光の位相変化量が、前記第2の光導波路を伝搬する信号光の位相変化量よりも大きくなるように、前記第1の変調電極及び前記第2の変調電極に変調信号を印加する請求項4または5に記載の光半導体素子。
【請求項7】
前記ドライバ回路により前記第1の変調電極及び前記第2の変調電極に印加される変調信号の交流成分は、相互に逆位相で、振幅が等しい請求項4乃至6のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項8】
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路の少なくとも一方に、初期位相調整用の電圧を印加する初期位相調整電極を、さらに有する請求項2乃至7のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項9】
前記基板の上に形成され、前記第1の入力ポートに信号光を入射させる第1の半導体レーザと、
前記基板の上に形成され、前記第2の入力ポートに信号光を入射させる第2の半導体レーザと
を、さらに有する請求項2乃至8のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項10】
前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路は、前記第1の変調電極及び前記第2の変調電極に電圧を印加すると、電気光学効果によって屈折率が変化し、その光路長が変化することで、前記光合波器における干渉状態が変化する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光半導体素子。

【図1】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図2−3】
image rotate

【図2−4】
image rotate

【図2−5】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14−1】
image rotate

【図14−2】
image rotate

【図14−3】
image rotate

【図14−4】
image rotate

【図14−5】
image rotate

【図14−6】
image rotate

【図14−7】
image rotate

【図14−8】
image rotate

【図14−9】
image rotate

【図14−10】
image rotate

【図14−11】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−198374(P2012−198374A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62290(P2011−62290)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】