説明

光半導体装置及びその製造方法

【課題】十分に高い生産性を有する光半導体装置の製造方法及びその製造方法により得られる光半導体装置を提供すること。
【解決手段】発光素子305と、発光素子305を封止する封止材510と、封止材510に接着された所定形状の表面を有する光学素子580と、を備える光半導体装置500の製造方法であって、光重合性化合物を含有し発光素子305を浸漬した光の照射のみで硬化可能な樹脂組成物315の表面上に光学素子580を載置した状態で、光学素子580を介して樹脂組成物315を露光することによって、樹脂組成物315の光学的に透明な硬化物であり、光学素子580における所定形状の表面とは反対側の面が封止材510における発光素子580から発せられる光の出射面に密着してなる封止材510を得る工程を有する、光半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光半導体装置として、発光ダイオード(LED)素子、フォトトランジスタ素子、フォトダイオード素子、固体撮像素子等の光半導体素子を備えたものが知られている。光半導体装置としては、例えば、図1に示す砲弾型の発光ダイオードが挙げられる。この発光ダイオード100は、リードフレーム101a、bと、リードフレーム101aに実装された発光ダイオード素子105と、リードフレーム101a、bを接続するワイヤー108と、発光ダイオード素子105及びワイヤー108を封止するようにリードフレーム101a、bの一部を被覆する封止材110とを備えている。封止材110は、透明樹脂からなる砲弾型のものである。発光ダイオード100は、封止材110の砲弾型曲面による屈折作用を利用して、発光ダイオード素子105からの光をその外部に集光した形で取り出している。
【0003】
一方、近年の電子機器等の小型化や配線の高密度化に伴い、砲弾型よりも小型化が可能であり、しかも光を多様な態様で取り出し可能なチップ型又は表面実装型と呼ばれる発光ダイオードが重用されている。そのチップ型の発光ダイオードの例を図2の模式断面図に示す。(a)に示す発光ダイオード200は、発光ダイオード素子205と、発光ダイオード素子205を封止するように設けられた透明な封止材210とを備えている。発光ダイオード素子205は、ケース部材207により形成されたキャビティ部202の底部に配置されている。発光ダイオード素子205は、接続層220を介してリードフレーム201aに電気的に接続されており、ワイヤー208を介してリードフレーム201bと電気的に接続されている。この発光ダイオード200において封止材210は、発光ダイオード素子205を外気から保護すると共に、蛍光体を含有(担持)する役割を主に担っている。しかし、その表面S1は平坦であるため、封止材210は、発光ダイオード素子205から発せられる光を取り出す以外に光学的な機能を有していない。
【0004】
そこで、発光ダイオードに例えば集光機能を付す場合には、図2の(b)に示すように、発光ダイオード200における封止材210の表面上に集光機能を有する光学素子230が設けられる。光学素子230は、例えば熱可塑性樹脂の射出成形によって形成され、その後封止材210に接着される。しかしながら、この場合、封止材210と光学素子230とはその材料が異なり、かつ別々に形成されるため、屈折率の差異や界面の存在に起因して、界面における反射による光損失が生じる。また、光学素子230を成形する工程、及び成形された光学素子230を位置合わせして封止材210に接着する工程が必要となる。したがって、この方法は煩雑であり、製造に要する時間も長時間に亘るため、生産性の問題が生じる。
【0005】
かかる問題を解決するために、例えば、熱硬化性樹脂を用いたトランスファー成形によって、封止材と光学部材とを一体成形する手段が検討されている。しかしながら、この手段ではトランスファー成形における成形時間及び硬化時間が冗長となり、やはり生産性の問題が残ってしまう。
【0006】
ところで、特許文献1には、発光ダイオード素子の封止に際して、紫外線硬化型樹脂組成物を用いる手法が開示されている。この文献によると、紫外線硬化型樹脂組成物は発光ダイオード素子の封止材の原料として用いられている。
【0007】
さらには、発光ダイオード素子を封止した状態で、その封止材上に光硬化性樹脂を用いたマイクロレンズ等の光学素子を形成する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。この文献には、封止材上に光硬化性樹脂組成物をディスペンス法又はインクジェット法により塗布して、光硬化することによってマイクロレンズを形成する手段が記載されている。
【0008】
また、特許文献3では、オプトエレクトロニクス素子における送光器又は受光器をカチオン性透過性材料からなる充填剤によって埋め込む手法が開示されている。この特許文献3によると、充填剤をUV照射によって部分硬化(半硬化)した後、100℃以上の熱を加えて完全硬化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−198845号公報
【特許文献2】特開2002−57372号公報
【特許文献3】特表2004−532533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の手段では、発光ダイオード素子からの光の取り出し以外に、封止材に光学機能が付されない。また、特許文献2に開示された手段によっても、生産性の問題や光損失の問題が残存する。さらに、特許文献3で提案された手法では、UV等の光の照射による部分硬化と、加熱による完全硬化の2段階の工程が必要となるため、生産性が十分とはいえない。
【0011】
したがって、発光素子の封止材が、その素子を封止する保護機能と、所定の表面形状を有することによる光学機能とを併せ持った光半導体装置及びそのような光半導体装置を十分に高い生産性で製造できる製造方法が望まれている。
【0012】
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、十分に高い生産性を有する光半導体装置の製造方法及びその製造方法により得られる光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するために、本発明は、発光素子とその発光素子を封止する封止材とを備える光半導体装置の製造方法であって、光重合性化合物を含有し発光素子を浸漬した光の照射のみで硬化可能な樹脂組成物と所定形状の表面を有する透明原盤とを樹脂組成物の表面と所定形状の表面とが密着するように配置した状態で、透明原盤を介して樹脂組成物を露光することによって、樹脂組成物の光学的に透明な硬化物であり、所定形状の表面と密着した面が発光素子から発せられる光の出射面となる封止材を得る工程を有する光半導体装置の製造方法を提供する。ここで、「光の照射のみで硬化可能な樹脂組成物」とは、加熱しなくても光の照射のみによって所望の硬化度が得られる樹脂組成物を意味する。
【0014】
この本発明の光半導体装置の製造方法によると、樹脂組成物の表面と透明原盤における所定形状の表面とが密着された状態で樹脂組成物が硬化される。これにより、樹脂組成物の硬化物である封止材の表面が、透明原盤表面の所定形状を忠実に転写した形状を有する。したがって、例えば屈折や回折による集光機能や散光機能、配光機能などの光学機能を封止材に付与する場合、その光学機能に応じた封止材の所望の表面形状を決定し、その表面形状を転写した形状を透明原盤表面の所定形状とすればよい。こうすることにより、封止材における発光素子から発せられる光の出射面が上述の所望の表面形状を有することができ、封止材は発光素子を封止する保護機能と、所定の表面形状を有することによる光学機能とを併せ持った封止材を備えるものとなる。
【0015】
また、この本発明では、樹脂組成物の光硬化により、封止材に発光素子の保護機能を付与する工程及び封止材に光学機能を付与する工程が同時に行われる。したがって、本発明は、封止材と光学素子とを別々に形成する必要はなく、それらの間の位置合わせも不要となり、従来よりも工程数を減少することができる。また、光重合性化合物の硬化時間は、概して熱重合性化合物の硬化時間よりも短い。さらには、樹脂組成物が光の照射のみで硬化可能なものであるため、熱による完全硬化の工程を設ける必要がなく量産性(生産効率)に優れている。これらの結果、本発明の光半導体装置の製造方法は、十分に高い生産性を有する製造方法となる。
【0016】
さらには、この本発明に係る封止材は集光機能等の光学機能を発揮する光学素子と一体成形されていることになるため、封止材と光学素子とが別々に形成されている場合に生じる光損失を十分に防止することが可能となる。また、光硬化性樹脂の表面形状の転写性は熱硬化性樹脂よりも一般的に良好であるため、所望の表面形状を有する封止材を一層容易に得ることができる。
【0017】
本発明の光半導体装置の製造方法において、樹脂組成物は発光素子を内包するキャビティ部内に充填されていると好ましい。これにより、チップ型の光半導体装置をより効率的に作製することが可能となる。また、透明原盤が光半導体装置に不要である場合には、本発明が、封止材を得る工程の後に透明原盤を硬化物の表面から剥離する工程を更に有していてもよい。
【0018】
本発明の光半導体装置の製造方法は、封止材を得る工程の前に、キャビティ部に樹脂組成物を流し込む工程と、流し込まれた樹脂組成物の表面に透明原盤が有する所定形状の表面を密着する工程とを更に有していてもよい。あるいは、本発明の光半導体装置の製造方法は、透明原盤が流路を備えており、封止材を得る工程の前に、所定形状の表面をキャビティ部に対向させて、透明原盤をキャビティ部の開口部上に配置する工程と、樹脂組成物の表面が透明原盤における所定形状の表面と密着するまで流路からキャビティ部に樹脂組成物を流し込む工程とを更に有していてもよい。
【0019】
本発明の光半導体装置の製造方法において、発光素子が発光ダイオード素子であると好ましい。これにより、本発明による上述の作用及び効果がより有効かつ確実に発揮される。
【0020】
また、本発明の光半導体装置の製造方法において、光重合性化合物が(メタ)アクリレート系光重合性化合物であると好ましい。(メタ)アクリレート系光重合性化合物は、その硬化物の着色のし難さ及び機械的特性のバランスが良好であるため、発光素子からの光の透過性及び耐久性等、光学機能を併せ持つ封止材としての特性により優れたものとなる。
【0021】
本発明は、発光素子と、その発光素子を封止する封止材と、その封止材に接着された所定形状の表面を有する光学素子とを備える光半導体装置であって、光学素子における所定形状の表面とは反対側の面は、封止材における発光素子から発せられる光の出射面に密着してなり、封止材は光重合性化合物を含有し光の照射のみで硬化可能な樹脂組成物の光学的に透明な硬化物である光半導体装置を提供する。
【0022】
この本発明の光半導体装置は、封止材と光学素子との間の密着性が十分に高く、それらの間の空隙を十分に低減することができる。その結果、十分効率的に発光素子からの光を取り出すことができる。また、熱重合性化合物よりも迅速に硬化が進行する光重合性化合物が封止材の材料に採用されているため、光学機能を有する光半導体装置が十分に高い生産性で製造される。
【0023】
この本発明の光半導体装置は、樹脂組成物の露光による硬化によって、封止材を得ると同時に封止材と光学素子とを接着してなるものであると好ましい。これによって、従来よりも光半導体装置の製造における工程数を少なくすることができる。さらに、光重合性化合物の硬化時間は、概して熱重合性化合物の硬化時間よりも短い。したがって、この本発明による光半導体装置は、従来よりも十分簡易に製造することができ、生産性を向上することができる。
【0024】
また、樹脂組成物の硬化によって封止材と光学素子との接着が施されていることから、それらの間の密着性がより十分に高く、空隙の発生が十分に抑制されている。したがって、更に十分効率的に発光素子からの光を取り出すことができる。
【0025】
本発明は、発光素子と、その発光素子を封止する封止材と、所定形状の表面を有する光学素子と、封止材と光学素子とを接着した接着層とを備える光半導体装置であって、光学素子における所定形状の表面とは反対側の面は、接着層における発光素子から発せられる光の出射面に密着してなり、接着層は光重合性化合物を含有し光の照射のみで硬化可能な樹脂組成物の光学的に透明な硬化物である光半導体装置を提供する。
【0026】
この本発明の光半導体装置は、封止材と接着層との間の密着性、並びに接着層と光学素子との間の密着性が十分に高く、それらの間の空隙を十分に低減することができる。その結果、十分効率的に発光素子からの光を取り出すことができる。また、熱重合性化合物よりも迅速に硬化が進行する光重合性化合物が接着層の材料に採用されているため、光学機能を有する光半導体装置が十分に高い生産性で製造される。
【0027】
この本発明の光半導体装置は、上記樹脂組成物の露光による硬化によって、接着層を介して封止材と光学素子とを接着してなるものであると好ましい。光重合性化合物の硬化時間は、概して熱重合性化合物の硬化時間よりも短いため、この本発明による光半導体装置は、従来よりも十分簡易に製造することができ、生産性を向上することができる。
【0028】
また、接着層における樹脂組成物の硬化によって、接着層を介して封止材と光学素子との接着が施されていることから、それらの間の密着性がより十分に高く、空隙の発生が十分に抑制されている。したがって、更に十分効率的に発光素子からの光を取り出すことができる。
【0029】
この本発明の光半導体装置において、封止材及び接着層は互いに同一種類の材料を主成分とすることが好ましい。これにより、屈折率の差異に基づく封止材と接着層との界面における光損失をより防止することができる。
【0030】
また、本発明の光半導体装置において、封止材及び光学素子は互いに同一種類の材料を主成分とすることが好適である。こうすることで、屈折率の差異に基づく封止材と光学素子との界面における光損失、並びに、上記接着層を備え、かつ封止材及び接着層が互いに同一種類の材料を主成分とする場合の接着層と光学素子との界面における光損失を更に抑制することができる。
【0031】
本発明の光半導体装置において、発光素子が発光ダイオード素子であると好適である。これにより、本発明による上述の作用及び効果をより有効かつ確実に発揮できる。
【0032】
また、本発明の光半導体装置は、光重合性化合物が(メタ)アクリレート系光重合性化合物であると好ましい。(メタ)アクリレート系光重合性化合物は、その硬化物の着色のし難さ及び機械的特性のバランスが良好であるため、発光素子からの光の透過性及び耐久性等、光学機能を併せ持つ封止材としての特性により優れたものとなる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、発光素子を封止する保護機能と、所定の表面形状を有することによる光学機能とを併せ持った封止材を備える光半導体装置及びその十分簡易な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来の砲弾型の発光ダイオードの一例を示す模式正面図である。
【図2】従来のチップ型の発光ダイオードの一例を示す模式断面図である。
【図3】実施形態に係る光半導体装置の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
【図4】別の実施形態に係る光半導体装置の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
【図5】更に別の実施形態に係る光半導体装置の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
【図6】なおも別の実施形態に係る光半導体装置の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0036】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
【0037】
図3は、本発明の光半導体装置の製造方法に係る第1実施形態を模式的に示す工程断面図である。まず、工程(a)では、組立部材350が準備される。組立部材350は、キャビティ部302を形成するケース部材307と、キャビティ部302に内包されるように、その底部に配置された発光ダイオード素子305と、ケース部材307に組み込まれた一対のリードフレーム301a、bとを備えている。ケース部材307は、キャビティ部302に、後述する光重合性化合物を含み光の照射のみで硬化可能な樹脂組成物315を保持できるような形状を有しており、キャビティ部302はその開口部分が円形になっている。発光ダイオード素子305は、導電ペースト等から形成される接続層320を介してリードフレーム301aの一端に電気的に接続されている。また、導電材料からなるワイヤー308を介して発光ダイオード素子305とリードフレーム301bの一端(端子)とが電気的に接続されている。
【0038】
次に工程(b)では、キャビティ部302内に液状又はペースト状の樹脂組成物315が流し込まれ、キャビティ部302を樹脂組成物315で充填すると共に、透明原盤370が準備される。発光ダイオード素子305は、キャビティ部302への樹脂組成物315の充填により、樹脂組成物315に浸漬された状態となる。
【0039】
透明原盤370は、平板状の基板部370bと、その基板部370bの主面に形成されてなる転写部370aとから構成されており、これらは一体成形されている。転写部370aの表面形状は凸レンズ状になっており、その基板部370bとの接続部分は、キャビティ部302の開口部分と同じ直径、又はそれよりもやや大きな直径を有する円形をなしている。このような透明原盤370の形状は、化学的エッチング、物理的エッチング、切削等によって形成可能である。透明原盤370の材料としては、樹脂組成物315を硬化するための光を透過可能なものであればよく、石英ガラス等の透明性及び機械特性に優れた原盤が好ましい。また、透明原盤370は、後述する封止材310からの剥離を容易にするため、転写部370aの表面に離型処理が施されたものであることが好ましい。
【0040】
続いて、工程(c)では、透明原盤370を組立部材350上に配置して、透明原盤370を介して樹脂組成物315に光Pを照射して露光する。透明原盤370の配置の際は、その転写部370aがキャビティ部302の開口部分を覆うようにして、基板部370bとケース部材307の上端とを、又はキャビティ部302の開口部分の周縁と転写部370aとを当接させて配置する。これにより、樹脂組成物315は組立部材350及び透明原盤370により封入されると共に、転写部370aの表面が樹脂組成物315の表面に密着した状態となる。
【0041】
樹脂組成物315は、露光によって硬化し、封止材310をなす。この際、封止材310の表面S3と、透明原盤370の転写部370a表面とは密着した状態にあり、界面をなしているため、封止材310の表面S3は、転写部370aの凸レンズ状の表面形状に対して転写した形状である凹レンズ状の形状をなす。露光に用いられる光Pの光源としては、樹脂組成物315を硬化可能なものであれば特に限定されない。好適な光源としては、例えば、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、スーパーメタルハライドランプ等の樹脂組成物に含まれる光ラジカル重合開始剤の吸収波長に対応する、近紫外光線の光源が挙げられる。
【0042】
好適な露光の条件は、光源、光ラジカル重合開始剤の添加量や樹脂組成等に依存するため、一義的に決定されない。例えば、光源として超高圧水銀ランプを適用した場合、照度11.6mW/cmで積算露光量としては1000〜4000mJ/cmであると好ましく、2000〜3000mJ/cmであるとより好ましい。
【0043】
また、露光によって硬化する樹脂組成物315の硬化度は、所望とする封止材310の物性、例えば弾性率やガラス転移温度が得られる程度であればよい。この硬化度は、硬化物である封止材310中に残存する光重合性化合物の含有量から導出される。例えば、光重合性化合物が(メタ)アクリレートである場合、赤外吸収スペクトルにおける(メタ)アクリレートの二重結合に基づく吸収ピークの強度から、硬化物中の(メタ)アクリレートの含有量を規格化して、硬化度を導出することができる。この硬化物中の(メタ)アクリレートの含有量は、硬化前の(メタ)アクリレートの全量に対して5%以下であると好ましく、3%以下であるとより好ましい。
【0044】
そして、工程(d)では、透明原盤370を封止材310から剥離して、組立部材350におけるキャビティ部302に封止材310が充填されてなる発光ダイオード300が得られる。
【0045】
この第1実施形態の製造方法によると、樹脂組成物315の表面と透明原盤370の転写部370aの表面とが密着された状態で樹脂組成物315が硬化される。これにより、封止材310の表面S3は、転写部370a表面の形状(凸レンズ状)を忠実に転写されて形成されるため、所望通りの形状(凹レンズ状)を有することができる。したがって、封止材310の光学機能(散光機能)は設計通りのものとなる。
【0046】
また、この第1実施形態の製造方法によると、樹脂組成物315の光硬化により、封止材310に発光ダイオード素子305の保護機能を付与する工程、並びに封止材310に光学機能を付与する工程が同時に行われる。したがって、この実施形態では、封止材310は光学素子としての機能も兼ね備えており、光学素子を別に形成する必要はないため、位置合わせの工程が不要となり、従来よりも工程数を減少することができる。また、光重合性化合物の硬化時間は、概して熱重合性化合物の硬化時間よりも短い。これらの結果、第1実施形態の製造方法は、十分に生産性の高い製造方法となる。
【0047】
さらには、この実施形態に係る封止材310は光学素子と一体成形されていることになるため、封止材と光学素子とが別々に形成されている場合に生じる光損失を十分に防止することが可能となる。また、樹脂組成物315が発光ダイオード素子305を内包するキャビティ部302内に直接充填されて、その状態で硬化して封止材310をなすので、チップ型の発光ダイオード300をより効率的に作製することが可能となる。
【0048】
この第1実施形態の製造方法は、封止材の表面形状が凹レンズ状の場合のみでなく、封止材に屈折格子や回折格子の機能を付与したい場合、あるいは、凹レンズ状以外の凹面を形成する場合に、特に好適に用いられる。
【0049】
図4は、本発明の光半導体装置の製造方法に係る第2実施形態を模式的に示す工程断面図である。まず、工程(a)では、第1実施形態と同様の組立部材350が準備される。
次に工程(b)では、透明原盤470が準備される。透明原盤470は、平板状の基板部470bに円形凹レンズ状の表面を有する窪みである転写部470aを設けたものである。また基板部470bには、その側面から転写部470aに亘る流路470cが設けられている。透明原盤470の材料及び形成方法は、第1実施形態の透明原盤370と同様のものを採用できる。
【0050】
続いて、工程(c)では、透明原盤470を組立部材350上に配置して、後述する光重合性化合物を含み光の照射のみで硬化可能な樹脂組成物315を流し込む。透明原盤470の配置の際は、その転写部470aがキャビティ部302の開口部分を覆うようにして、基板部470bとケース部材307の上端とを当接させて配置する。
【0051】
樹脂組成物315の流し込みにおいては、液状又はペースト状の樹脂組成物315が、流路470cを通じてキャビティ部302及び転写部470aにより包囲された空間内に流し込まれ、その空間を樹脂組成物315で充填する。これにより、樹脂組成物315は組立部材350及び透明原盤470により封入され、発光ダイオード素子305を浸漬すると共に、転写部470aの表面が樹脂組成物315の表面に密着した状態となる。
【0052】
次いで工程(d)では、透明原盤470を介して樹脂組成物315に光Pを照射して露光する。樹脂組成物315は、露光によって硬化し、封止材410をなす。この際、封止材410の表面S4と、透明原盤470の転写部470a表面とは密着した状態にあり、界面をなしているため、封止材410の表面S4は、転写部470aの凹レンズ状の表面形状に対して転写した形状である凸レンズ状の形状をなす。露光に用いられる光Pの光源としては、第1実施形態におけるものと同様の光源を採用することができる。
【0053】
そして、工程(e)では、透明原盤470を封止材410から剥離して、組立部材350におけるキャビティ部302に封止材410が充填されてなる発光ダイオード400が得られる。
【0054】
この第2実施形態の製造方法によると、樹脂組成物315の表面と透明原盤470の転写部470aの表面とが密着された状態で樹脂組成物315が硬化される。これにより、封止材410の表面S4は、転写部470a表面の形状(凹レンズ状)を忠実に転写されて形成されるため、所望通りの形状(凸レンズ状)を有することができる。したがって、封止材410の光学機能(散光機能)は設計通りのものとなる。
【0055】
また、この第2実施形態の製造方法によると、樹脂組成物315の光硬化により、封止材410に発光ダイオード素子305の保護機能を付与する工程、並びに封止材410に光学機能を付与する工程が同時に行われる。したがって、この実施形態では、封止材410は光学素子としての機能も兼ね備えており、光学素子を別に形成する必要はないため、位置合わせの工程が不要となり、従来よりも工程数を減少することができる。また、光重合性化合物の硬化時間は、概して熱重合性化合物の硬化時間よりも短い。これらの結果、第2実施形態の製造方法は、十分に生産性の高い製造方法となる。
【0056】
さらには、この実施形態に係る封止材410は光学素子と一体成形されていることになるため、封止材と光学素子とが別々に形成されている場合に生じる光損失を十分に防止することが可能となる。また、樹脂組成物315は発光ダイオード素子305を内包するキャビティ部302内に充填されるので、チップ型の発光ダイオード400をより効率的に作製することが可能となる。
【0057】
この第2実施形態の製造方法は、封止材の表面形状が凸レンズ状の場合のみでなく、凸レンズ状以外の凸面を形成する場合に、特に好適に用いられる。
【0058】
以上説明した第1及び第2実施形態は、光半導体素子としての発光ダイオード素子の封止と光学素子の作製とを同時に行うものである。
【0059】
図5は、本発明の光半導体装置の製造方法に係る第3実施形態を模式的に示す工程断面図である。まず、工程(a)では、第1実施形態と同様の組立部材350が準備される。
【0060】
次に工程(b)では、キャビティ部302内に、後述する光重合性化合物を含み光の照射のみで硬化可能な液状又はペースト状の樹脂組成物315が流し込まれ、キャビティ部302を樹脂組成物315で充填する。
【0061】
続いて工程(c)では、キャビティ部302内に充填された樹脂組成物315の表面上に光学素子580を載置する。光学素子580としては、従来の光半導体装置に用いられているものであれば特に限定されず、例えば、凹レンズ、凸レンズ、マイクロレンズ、並びにフレネルレンズのような屈折又は回折格子が設けられたものが挙げられる。また、光学素子580は、その端部をケース部材307に載置できるような寸法を有すると好ましい。
【0062】
光学素子580の材料は、樹脂組成物315の露光に用いられる光Pを透過可能であり、かつ所望の光学機能を有効に発揮できるものであれば特に限定されない。光学素子580の材料が硬化性樹脂組成物である場合、光硬化によって作製されたものであってもよく、熱硬化によって作製されたものであってもよい。ただし、光学素子580は、後述する封止材510と同一種類の材料を主成分とすることが好適である。こうすることで、屈折率の差異に基づく封止材510と光学素子580との界面における光損失を更に有効に抑制することができる。
【0063】
光学素子580の材料としては、例えば、PMMAのような(メタ)アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0064】
そして、工程(d)では、光学素子580を介して樹脂組成物315に光Pを照射して露光することによって、樹脂組成物315は硬化し、封止材510をなす。こうして、組立部材350におけるキャビティ部302に封止材510が充填されてなり、更に封止材上に光学素子580が設けられた発光ダイオード500が得られる。露光に用いられる光Pの光源としては、第1実施形態におけるものと同様の光源を採用することができる。
【0065】
この第3実施形態の製造方法により得られた発光ダイオード500は、封止材510と光学素子580との間の密着性が十分に高く、それらの間の空隙を十分に低減することができる。さらには、樹脂組成物315の硬化によって封止材510と光学素子580との接着が施されていることから、それらの間の密着性が特に高く、空隙の発生が特に十分に抑制されている。その結果、極めて十分効率的に発光ダイオード素子305からの光を取り出すことができる。
【0066】
また、発光ダイオード500は、樹脂組成物315の硬化によって、封止材510を得ると同時に封止材510と光学素子580との接着がなされている。これによって、従来よりも発光ダイオードの製造における工程数を少なくすることができる。さらに、光重合性化合物の硬化時間は、概して熱重合性化合物の硬化時間よりも短い。したがって、この実施形態による発光ダイオード500は、従来よりも十分簡易に製造することができ、生産性を十分に向上することができる。
【0067】
以上説明した第3実施形態は、光半導体素子としての発光ダイオード素子の封止と光学素子及び封止材間の接着とを同時に行うものである。
【0068】
図6は、本発明の光半導体装置の製造方法に係る第4実施形態を模式的に示す工程断面図である。まず、工程(a)では、第1実施形態と同様の組立部材350が準備される。次に工程(b)では、第3実施形態と同様にキャビティ部302を、光重合性化合物を含み光の照射のみで硬化可能な樹脂組成物315で充填した後、その樹脂組成物315を露光して封止材610を得る。この露光に用いられる光の光源としては、第1実施形態における光Pと同様の光源を採用することができる。
【0069】
続いて工程(c)では、キャビティ部302内に充填された封止材610の表面上に液状の接着層690を形成した後、更にその上に光学素子680をこの順で載置する。光学素子680としては、第3実施形態における光学素子580と同様のものを採用できる。
【0070】
接着層690の材料は光重合性化合物を含有し光の照射のみで硬化可能な樹脂組成物であって、かつ露光前後に関わらず光Pを透過可能であれば特に限定されない。ただし、接着層690の材料は、後述する封止材610の材料すなわち樹脂組成物315、あるいは光学素子680の材料と同一種類の材料を主成分とすると好ましい。これにより、屈折率の差異に基づく封止材610と硬化後の接着層695との間、あるいは光学素子680と硬化後の接着層695との界面における光損失をより有効に防止することができる。同様の観点から、硬化後の接着層695、封止材610及び光学素子680が互いに同一種類の材料を主成分とすることがより好適である。
【0071】
接着層690の材料としては、例えば、樹脂組成物315の材料と同じ材料が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0072】
そして、工程(d)では、光学素子680を介して液状の接着層690に光Pを照射して露光する。これによって、液状の接着層690は硬化して硬化後の接着層695をなし、接着層695は封止材610及び光学素子680間を接着する。こうして、組立部材350におけるキャビティ部302に封止材610が充填されてなり、更に封止材610上に接着層695及び光学素子680がこの順で設けられた発光ダイオード600が得られる。露光に用いられる光Pの光源としては、第1実施形態におけるものと同様の光源を採用することができる。
【0073】
この第4実施形態の製造方法により得られた発光ダイオード600は、封止材610と接着層695との間の密着性、並びに接着層695と光学素子680との間の密着性が十分に高く、それらの間の空隙を十分に低減することができる。さらには、接着層690における樹脂組成物の硬化によって、硬化後の接着層695を介して封止材610と光学素子680との接着が施されていることから、それらの間の密着性が特に高く、空隙の発生が特に十分に抑制されている。その結果、極めて十分効率的に発光ダイオード素子305からの光を取り出すことができる。
【0074】
また、光重合性化合物の硬化時間は、概して熱重合性化合物の硬化時間よりも短いため、この発光ダイオード600の製造方法によると、従来よりも十分簡易に製造することができ、生産性を十分に向上することができる。
【0075】
上述の第1、第2、第3及び第4実施形態において用いられる樹脂組成物315は、光の照射のみで硬化して樹脂を形成するものであり、下記の樹脂組成物であると好ましい。すなわち、本発明の好適な実施形態に係る樹脂組成物は、光重合性化合物とその硬化剤である光ラジカル重合開始剤とを含有する。
【0076】
光重合性化合物は、光重合による硬化が可能であって、硬化後に優れた透光性及び機械特性を有するものであれば特に限定されない。かかる光重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート系光重合性化合物及びエポキシ系光重合性化合物が挙げられる。これらの中では、光学特性に優れている観点から、(メタ)アクリレート系光重合性化合物が好ましい。(メタ)アクリレート系光重合性化合物としては、(メタ)アクリレート単量体及び(メタ)アクリレート系の重合反応性オリゴマー、並びにそれらの混合物が好ましい。
【0077】
(メタ)アクリレート単量体としては、単官能の(メタ)アクリレート、多官能の(メタ)アクリレート、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリレート化合物、及びエステル末端にシロキサン構造を含む置換基を有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0078】
また、本発明の別の好適な実施形態に係る樹脂組成物は、(A)エステル末端にシロキサン構造を含む置換基を有するモノ(メタ)アクリレート(以下、場合により「(A)成分」という)と、(B)ポリオルガノシロキサン骨格を有する多官能(メタ)アクリレート(以下、場合により「(B)成分」という)と、(C)非シリコーン系(メタ)アクリレート(以下、場合により「(C)成分」という)と、(D)ラジカル重合開始剤(以下、場合により「(D)成分」という)と、を含有するものであると好ましい。このような樹脂組成物は光照射によって十分硬化する樹脂組成物である。
【0079】
(A)成分であるエステル末端にシロキサン構造を含む置換基を有するモノ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【化1】


ここで、式(1)中、R、R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、アリール基又はトリメチルシロキシ基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0〜10の整数を示す。なお、R、R及びRのうちの少なくとも1つはトリメチルシロキシ基を示す。
【0080】
上記一般式(1)で表されるモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、(3−アクリロキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−メタクリロキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、(3−メタクリロキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン等が挙げられ、中でも(3−メタクリロキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シランが好ましい。
【0081】
(B)成分であるポリオルガノシロキサン骨格を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、ポリオルガノシロキサン主鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有するジ(メタ)アクリレートであることが好ましく、その分子量(重量平均分子量)は200〜7000であることが好ましい。上記ジ(メタ)アクリレートの分子量が200未満であると、ポリオルガノシロキサンの導入による硬化物の機械特性の向上効果が小さい傾向があり、分子量が7000を超えると、(C)非シリコーン系(メタ)アクリレートとの相溶性が低下し、硬化物の透明性が低下する傾向がある。
【0082】
(C)成分である非シリコーン系(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、エステル末端にエポキシ基を含む置換基を有するモノ(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。エステル末端にエポキシ基を含む置換基を有するモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、1,4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられ、中でもグリシジルメタクリレートが好ましい。
【0083】
また、(C)非シリコーン系(メタ)アクリレートは、エステル末端にエポキシ基を含む置換基を有しないモノ(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。エステル末端にエポキシ基を含む置換基を有しないモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート等が挙げられる。これらは一種を単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0084】
また、(C)非シリコーン系(メタ)アクリレートは、多官能の非シリコーン系(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。多官能の非シリコーン系(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート等が挙げられる。
【0085】
更に、(C)非シリコーン系(メタ)アクリレートとして、エポキシ基、水酸基、アルコキシ基等の反応性の極性基を含む非シリコーン系(メタ)アクリレートを用いることで、樹脂組成物に優れた接着性を付与することができる。
【0086】
(D)成分であるラジカル重合開始剤としては、光照射により上記樹脂組成物を硬化できる光ラジカル重合開始剤であって、工業的なUV照射装置の紫外線を効率よく吸収して活性化し、硬化物を黄変させないものであれば特に限定されない。そのようなラジカル重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、及びオリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。2種以上を組み合わせる場合、その具体例としては、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4―(1−メチルビニル)フェニル)プロパノンとトリプロピレングリコールジアクリレートとの混合物、並びにオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−(2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ)−エチルエステルとオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチルエステルとの混合物が挙げられる。
【0087】
また、樹脂組成物には、上記光ラジカル重合開始剤に加えて、熱ラジカル重合開始剤を併用してもよい。そのような熱ラジカル重合開始剤としては、ラジカルアゾ系開始剤、過酸化物開始剤等、通常の熱ラジカル重合に使用できるものはいずれも使用することができる。アゾ系開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル、アゾジベンゾイル等が挙げられる。また、過酸化物開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0088】
この樹脂組成物には、上述した(A)〜(D)成分以外に、重合反応性アクリルオリゴマーを添加してもよい。重合反応性アクリルオリゴマーとしては、特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基を1つ以上含有するアクリルオリゴマーであることが好ましく、(メタ)アクリロイル基末端のアクリルオリゴマー(マクロモノマー)であることがより好ましい。
【0089】
この樹脂組成物において、(A)エステル末端にシロキサン構造を含む置換基を有するモノ(メタ)アクリレート、(B)ポリオルガノシロキサン骨格を有する多官能(メタ)アクリレート、(C)非シリコーン系(メタ)アクリレート、及び、(D)ラジカル重合開始剤の配合量は、使用する各種(メタ)アクリレートの構造や分子量等によるが、(A)成分及び(B)成分の合計の配合量と(C)成分の配合量との質量比((A)成分+(B)成分:(C)成分)が40:60〜90:10であることが好ましく、70:30〜90:10であることがより好ましい。(A)〜(C)成分の合計の配合量を基準とした(C)成分の配合量が60質量%を超えると、シロキサン骨格を導入する効果が少なく、また、相分離しやすい傾向がある。一方、(C)成分の配合量が10質量%未満であると、接着性付与等の非シリコーン系(メタ)アクリレートの導入効果が低下する傾向がある。
【0090】
また、この樹脂組成物において、(A)成分の配合量と(B)成分の配合量との質量比((A)成分:(B)成分)は、30:70〜70:30であることが好ましく、40:60〜60:40であることがより好ましい。(A)成分及び(B)成分の合計の配合量を基準とした(B)成分の配合量が70質量%を超えると、(B)成分と(C)成分との相溶性が低下し、相分離しやすい傾向がある。一方、(B)成分の配合量が30質量%未満であると、多官能成分が少なくなるため、靭性、破断強度、耐熱性等の硬化物の機械特性が低下する傾向がある。
【0091】
また、この樹脂組成物において、(D)成分の配合量は、(A)〜(C)成分の総量100質量部に対して0.01〜5質量部とすることが好ましく、0.1〜1質量部とすることがより好ましい。この配合量が5質量部を超えると、硬化物が熱や紫外線によって着色しやすくなる傾向があり、0.01質量部未満であると、樹脂組成物が硬化し難くなる傾向がある。
【0092】
樹脂組成物は、上述の光重合性化合物及び光ラジカル重合開始剤の他に、必要に応じて他の成分を含有していてもよい。例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤、フェノール系又はリン系の酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤、及び重合禁止剤を樹脂組成物に添加することができる。また、成形性の観点からは、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等を樹脂組成物に添加してもよい。
【0093】
上記各成分は、樹脂組成物の硬化物の透光性を確保する観点から液状であることが好ましい。また、上記各成分に固形のものを用いる場合は、発光素子から発せられる光の波長以下の粒径を有するものが好ましい。
【0094】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0095】
例えば、本発明に係る透明原盤における転写部の表面形状は、レンズのような単独の凹凸形状を形成するための形状に限定されず、例えば、マイクロレンズのような微細な凹凸形状の集合体、フレネルレンズのような屈折格子、回折格子等を形成するための形状であってもよい。透明原盤にこれらの表面形状を採用することにより、発光素子から封止材を通過した光が、封止材と空気との界面で反射、屈折又は回折する。こうして、その光線方向が変化し、最終的に光線をより有効に光半導体装置の外部に出射させることができる。
【0096】
また、光半導体装置は発光素子として発光ダイオード素子を備えた発光ダイオードに限定されず、フォトダイオード素子を備えるフォトダイオード、固体撮像素子を備える撮像装置等であってもよい。
【0097】
また、硬化阻害や着色防止のため、予め窒素バブリングによって樹脂組成物中の酸素濃度を低減しておくことが望ましい。
【0098】
さらに、第4実施形態において、工程(b)では、封止材610を得るために光重合性化合物を含む樹脂組成物315を用いたが、それに代えて、熱重合性化合物を含む樹脂組成物を採用してもよい。この場合、封止材は、キャビティ部302内に充填された樹脂組成物を加熱して熱硬化することにより得られる。この樹脂組成物は、熱重合性化合物とその硬化剤を含有する。熱重合性化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
(実施例1)
まず、下記のようにして図3の(a)に示すものと同様の組立部材を準備した。図3に示すものと同様の形状を有するリードフレームに、キャビティ部の開口部分の直径が2.4mmであるポリフタルイミド製のケース部材(外形寸法:幅3.2mm×奥行2.6mm×厚さ1.8mmをインサート成型により形成した。次にキャビティ部の底部に露出したリードフレーム上に、銀ペーストを介して発光ダイオード素子(発光波長:470mm)を実装した。次いで、発光ダイオード素子を実装していない方のリードフレームの端子と発光ダイオード素子とを金線を用いてワイヤーボンディングにより接続して組立部材を得た。
【0101】
続いてキャビティ部内に光重合性化合物を含有する樹脂組成物を流し込み充填した。樹脂組成物は、光重合性化合物として(3−メタクリロキシプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン(チッソ社製、商品名「サイラプレーンTM−0701T」)40質量部、両末端メタクリロキシ変性シリコーン(信越シリコーン社製、商品名「X−22−164A」、分子量:860)40質量部、及びグリシジルメタクリレート19質量部、光ラジカル重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1.0質量部を含有したものを用いた。
【0102】
次に、石英ガラス製の透明原盤を準備した。透明原盤は基板部と転写部とを一体成型されてなるものであり、転写部(表面形状領域)には30μm間隔で頂角62°のピラミッド形状型回折格子が形成されたものを用いた。次いで、透明原盤の転写部をキャビティ部に対向させた状態で、位置合わせを行いながら透明原盤の基板部をケース部材の上端に当接させて、組立部材上に透明原盤を配置した。この際、透明原盤の転写部表面と、樹脂組成物表面とは密着した状態にあった。
【0103】
続いて、その状態を保持しながら、透明原盤上から樹脂組成物を露光して、樹脂組成物の硬化物である封止材を得た。露光の光源として、超高圧水銀ランプ(照度:11.6mW/cm、積算露光量:3000mJ/cm)を用いた。
【0104】
そして、透明原盤を封止材から剥離して、光半導体装置である発光ダイオードを得た。封止材の表面形状は、透明原盤の転写部の表面形状を忠実に転写しており、ピラミッド形状型回折格子の形状であった。
【0105】
(実施例2)
樹脂組成物の充填まで実施例1と同様に行った。次いで、光学素子としてポリメチルメタクリレート製の半球形レンズを、その平坦面側をキャビティ部に対向させた状態で、キャビティ部内に充填された樹脂組成物の表面上に位置合わせをしながら載置した。この際、樹脂組成物の表面と半球形レンズの平坦面とは密着していた。
【0106】
続いて、その状態を保持しながら、半球形レンズ上から樹脂組成物を露光して、樹脂組成物の硬化物である封止材を得た。露光の光源として、超高圧水銀ランプ(照度:11.6mW/cm、積算露光量:3000mJ/cm)を用いた。こうして、光半導体装置である発光ダイオードを得た。半球形レンズは封止材に十分強力に接着されており、しかもそれらの界面に空隙は生じていなかった。
【0107】
(実施例3)
樹脂組成物の充填まで実施例1と同様に行った。それとは別に、実施例1で用いたものと同様の樹脂組成物の塗膜を形成した。次いで、その塗膜の表面に、実施例1で用いた透明原盤の転写部を密着させた状態で、樹脂組成物の露光を十分に行って硬化させ、片面にピラミッド形状型回折格子が設けられた樹脂フィルム(膜厚:約1mm)を形成した。
【0108】
次に、光学素子として上記樹脂フィルムを、その平坦面側をキャビティ部に対向させた状態で、キャビティ部内に充填された樹脂組成物の表面上に位置合わせをしながら載置した。この際、樹脂組成物の表面と樹脂フィルムの平坦面とは密着していた。
【0109】
続いて、その状態を保持しながら、樹脂フィルム上から樹脂組成物を露光して、樹脂組成物の硬化物である封止材を得た。露光の光源として、超高圧水銀ランプ(照度:11.6mW/cm、積算露光量:3000mJ/cm)を用いた。こうして、光半導体装置である発光ダイオードを得た。樹脂フィルムは封止材に十分強力に接着されており、しかもそれらの界面に空隙は生じていなかった。
【0110】
(実施例4)
組立部材の作製まで実施例1と同様に行った。次いで、キャビティ部内に熱重合性化合物を含有する樹脂組成物を流し込み充填した。この樹脂組成物は、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を含有していた。次に、キャビティ部内に充填された樹脂組成物を十分に加熱して硬化することにより封止材を得た。それとは別に、実施例3と同様にして、片面にピラミッド形状型回折格子が設けられた樹脂フィルム(膜厚:約1mm)を形成した。
【0111】
続いて、封止材の表面上に実施例1で用いたものと同様の樹脂組成物をポッティングした。更にその樹脂組成物の塗膜上に、光学素子として上記樹脂フィルムを、その平坦面側をキャビティ部に対向させた状態で、樹脂組成物の塗膜の表面上に位置合わせをしながら載置した。この際、樹脂組成物の塗膜表面と樹脂フィルムの平坦面とは密着していた。
【0112】
続いて、その状態を保持しながら、樹脂フィルム上から樹脂組成物の塗膜を露光して、樹脂組成物の硬化物である接着層を得た。露光の光源として、超高圧水銀ランプ(照度:11.6mW/cm、積算露光量:3000mJ/cm)を用いた。こうして、光半導体装置である発光ダイオードを得た。封止材及び樹脂フィルムは接着層を介して十分強力に接着されており、しかもそれらの界面に空隙は生じていなかった。
【0113】
実施例1〜4で得られた光半導体装置に3.2Vで20mAの電流を通電し、発光ダイオード素子を点灯させた。実施例1、3及び4の光半導体装置では、ピラミッド形状の斜面二方向に発光ダイオード素子からの出射光が曲げられていることが確認された。実施例2の光半導体装置では、発光ダイオード素子からの出射光が、半球形レンズによって中心方向に集光されていることが確認された。
【符号の説明】
【0114】
300、400、500、600…発光ダイオード、301a、b…リードフレーム、302…キャビティ部、305…発光ダイオード素子、307…ケース部材、308…ワイヤー、310、410、510、610…封止材、315…樹脂組成物、320…接続層、350…組立部材、370、470…透明原盤、400…発光ダイオード、580、680…光学素子、690…ペースト状又は液状の接着層、695…硬化後の接着層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、その発光素子を封止する封止材と、その封止材に接着された所定形状の表面を有する光学素子と、を備える光半導体装置の製造方法であって、
光重合性化合物を含有し前記発光素子を浸漬した光の照射のみで硬化可能な樹脂組成物の表面上に前記光学素子を載置した状態で、前記光学素子を介して前記樹脂組成物を露光することによって、前記樹脂組成物の光学的に透明な硬化物であり、前記光学素子における前記所定形状の表面とは反対側の面が前記封止材における前記発光素子から発せられる光の出射面に密着してなる前記封止材を得る工程を有する、光半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂組成物の露光による硬化によって、前記封止材を得ると同時に前記封止材と前記光学素子とを接着する、請求項1記載の光半導体装置の製造方法。
装置の製造方法。
【請求項3】
前記封止材及び前記光学素子は互いに同一種類の材料を主成分とする、請求項1又は2記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記発光素子が発光ダイオード素子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記光重合性化合物が(メタ)アクリレート系光重合性化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項6】
発光素子と、その発光素子を封止する封止材と、所定形状の表面を有する光学素子と、前記封止材と前記光学素子とを接着した接着層と、を備える光半導体装置であって、
前記光学素子における前記所定形状の表面とは反対側の面は、前記接着層における前記発光素子から発せられる光の出射面に密着してなり、
前記接着層は光重合性化合物及び光ラジカル重合開始剤を含有し光の照射のみで硬化可能な樹脂組成物の光学的に透明な硬化物である、光半導体装置。
【請求項7】
前記光重合性化合物が(メタ)アクリレート系光重合性化合物である、請求項6記載の光半導体装置。
【請求項8】
前記樹脂組成物が、前記光重合性化合物としての(A)エステル末端にシロキサン構造を含む置換基を有するモノ(メタ)アクリレート、(B)ポリオルガノシロキサン骨格を有する多官能(メタ)アクリレート、及び(C)非シリコーン系(メタ)アクリレートと、(D)ラジカル重合開始剤と、を含有する、請求項6又は7記載の光半導体装置。
【請求項9】
前記樹脂組成物の露光による硬化によって、前記接着層を介して前記封止材と前記光学素子とを接着してなる、請求項6〜8のいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項10】
前記封止材及び前記接着層は互いに同一種類の材料を主成分とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項11】
前記封止材及び前記光学素子は互いに同一種類の材料を主成分とする、請求項6〜10のいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項12】
前記発光素子が発光ダイオード素子である、請求項6〜11のいずれか一項に記載の光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−114474(P2012−114474A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−60333(P2012−60333)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【分割の表示】特願2007−124887(P2007−124887)の分割
【原出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】