説明

光反応性ホットメルト接着剤組成物及びそれを用いた塗装、接着物品

【課題】 加熱溶融塗工により容易に被着体に適用することができ、光の照射により硬化が進行する反応性ホットメルト接着剤組成物であって、PETフィルム等の平滑な被着体同士を接着し硬化が完了した後に、100℃以上の高温での剥離接着力が発現する反応性ホットメルト接着剤組成物を提供することにある。
【解決手段】 ポリエステルと多官能エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤とを含有する光反応性接着剤組成物であって、ポリエステル末端のヒドロキシル基:エポキシ基=1:5〜1:20の比率であり、かつ反応硬化後の150μm厚みでの破断伸度が100℃で15%以上であることを特徴とする光反応性ホットメルト接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱溶融塗工により適用され、光の照射により硬化が進行する光反応性ホットメルト接着剤組成物に関し、より詳細には、100℃以上の高温においても剥離接着力に優れた光反応性ホットメルト接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶剤を含まず耐環境性に優れているので、ホットメルト接着剤は様々な被着体を接着するのに幅広く用いられている。また、近年、加熱溶融塗工により適用された後、光を照射することにより硬化が進行する光反応性ホットメルト接着剤が種々提案されている。この種の光反応性ホットメルト接着剤では、光の照射により硬化が進行し、最終的に高い接着強度が得られる。
【0003】
これらの光反応性ホットメルト接着剤として、エポキシ樹脂の開環重合を利用した反応性ホットメルト接着剤組成物が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、エポキシ化合物のようなカチオン重合性化合物及び光カチオン重合開始剤を含む反応性ホットメルト接着剤組成物等が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、1分子当たり、特定の構造を平均2以上有する化合物であって、脂環式エポキシ基以外のエポキシ基と、脂環式エポキシ基とを有するカチオン重合性化合物と、フェノール性OH基を有する化合物と、光カチオン重合開始剤とを含む反応性ホットメルト接着剤組成物等が開示されている。
【0005】
これらの光反応性ホットメルト接着剤は、いずれも、エポキシ基の開環重合を利用することにより、高い接着強度を発現するものであり、さらにエポキシ化合物を選択したり、フェノール基を有する化合物などを含有させたりすることにより、接着強度や硬化後の耐熱性の向上等が図られている。
【0006】
さらに、特許文献3には、ポリエステルとエポキシ含有材料と光開始剤とヒドロキシル含有材料を含む室温で固体のホットメルト組成物が開示されており、ここでは、常温で固体のポリエステルを配合することにより、貼合わせ直後から接着剤の強度が高いため、硬化完了に至るまでクランプ等の仮固定作業を必要としない旨が記載されている。
【0007】
しかしながら、これら従来の光反応性ホットメルト接着剤により、PETフィルム等の平滑な被着体同士を接着し硬化が完了した後に、100℃以上の高温での剥離接着力が、
ほとんど無いという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平11−5964号公報
【特許文献2】特開2000−8015号公報
【特許文献3】特開平6−306346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、加熱溶融塗工により容易に被着体に適用することができ、光の照射により硬化が進行する反応性ホットメルト接着剤組成物であって、PETフィルム等の平滑な被着体同士を接着し硬化が完了した後に、100℃以上の高温での剥離接着力が発現する反応性ホットメルト接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による反応性ホットメルト接着剤組成物は、ポリエステルと多官能エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤とを含有する光反応性接着剤組成物であって、ポリエステル末端のヒドロキシル基:エポキシ基=1:5〜1:20の比率であり、かつ反応硬化後の150μm厚みでの破断伸度が100℃で15%以上であることを特徴とする。
【0011】
本願発明者は、高温での剥離接着力が発現しないのは、高温で接着剤が伸びないため、剥離応力の分散がうまくいかず、界面破壊が起こっていることを見出し、本発明をなすに至った。
以下、本発明の詳細を説明する。
【0012】
本発明による光反応性ホットメルト接着剤組成物では、光の照射により光カチオン重合開始剤が活性化され、それによってエポキシ樹脂の開環重合が進行し硬化が促進される。同時に、ポリエステル末端ヒドロキシル(OH)基とエポキシ基も連鎖移動で反応する。この際、ポリエステルの量が少なすぎると、十分に分子鎖が延びないため、高温で伸びず、剥離接着力が発現しない。逆に、ポリエステルの量が多過ぎても、連鎖移動で反応しないポリエステルが残り、このものが高温では凝集力が発現しないため、剥離接着力が発現しない。それゆえ、本発明においては、ポリエステル末端のヒドロキシル基:エポキシ基=1:5〜1:20の比率に限定される。
【0013】
また、本発明による反応性ホットメルト接着剤組成物は、多官能エポキシ樹脂が、3官能以上のエポキシ樹脂であることが好ましい。
これにより、エポキシ樹脂の開環重合の際の、ポリエステル末端OH基とエポキシ基の連鎖移動が起こりやすくなり、分子鎖が延び、結果として、高温での剥離接着力が発現されやすくなる。
【0014】
本発明によるポリエステルとしては、主鎖がポリエステル結合からなり、少なくともその両末端にヒドロキシル基を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ジカルボン酸又はそのジエステル等価物と、ジオールとの重縮合生成物等が挙げられる。
【0015】
上記ジカルボン酸としては、具体的には、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イタコン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられる。
【0016】
上記ジオールとしては、分枝鎖を有する脂肪族ジオール、分枝鎖のない脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール等が挙げられ、脂肪族ジオールのアルキレン基は、炭素数の少ない短鎖のジオールであってもよいが、長鎖のジオールであってもよい。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂肪族ジオールや脂環式ジオール;カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン
、2,5−ジヒドロキシトルエン、2,6−ジヒドロキシトルエン、3,4−ジヒドロキシトルエン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ジヒドロキシジフェニル、2,3−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、4−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルヒドロキノン、フルログリシノール等の芳香族ジオール等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0017】
上記ジオール成分の一部は、3官能以上の、例えば、グリセリン等の脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール等に置き換えられてもよい。
【0018】
上記ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合は、特に限定されるものではなく、常法に従って行われる。
【0019】
本発明による多官能エポキシ樹脂としては、カチオン重合により重合可能な少なくとも2個のオキシラン環を有する有機化合物からなり、モノマー、オリゴマー又はポリマーであってもよく、芳香族、脂肪族又は脂環式のいずれの構造を有するものであってもよい。また、上記多官能エポキシ樹脂は、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、リンなどの有機化合物構成原子を適宜含むものであり、その構造は特に限定されない。
ここで、1分子当たりの「平均」のエポキシ基の数は、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数を、存在するエポキシ分子の総数により除算することにより求められる。
【0020】
上記多官能エポキシ樹脂がポリマーの場合には、特に限定されるわけではないが、末端エポキシ基を有する直鎖状ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格中にオキシラン単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)又は側鎖にエポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートポリマーあるいはコポリマー)のいずれであってもよい。
【0021】
上記多官能エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などの芳香族エポキシ樹脂;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ビス〔4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル〕プロパンなどの脂肪族エポキシ樹脂;グリシジル(メタ)アクリレートのような分子中にオキシラン環を有する(メタ)アクリレートの重合体もしくは共重合体;エポキシ化ポリブタジエン及びブタジエンと他のモノマーとの共重合体のエポキシ化物;これらのエポキシ化合物の各種変成物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
上記多官能エポキシ樹脂の分子量としては特に限定されないが、58〜100000の範囲に渡り好ましい。
また、上記多官能エポキシ樹脂は、公知の方法により製造されるものである。
【0023】
本発明による光カチオン重合開始剤としては、光を照射されることにより活性化し、エポキシ樹脂の開環重合を引き起し得る限り特に限定されないが、好ましくは、芳香族スルホニウム塩が用いられる。この芳香族スルホニウム塩としては、例えば、米国特許第4256828号に開示されている芳香族スルホニウム塩を用いることができる。
【0024】
上記光カチオン重合開始剤の配合量は、光の種類や強度、エポキシ樹脂の種類や量、カチオン重合開始剤の種類等によって異なるが、好ましくは、光反応性ホットメルト接着剤組成物100重量部に対し、0.01〜10重量部の割合で配合される。
【0025】
本発明による光反応性ホットメルト接着剤組成物には、本発明の目的を阻害しない限り、必要に応じて他の成分を含有させることができる。このような他の成分としては、密着性向上剤、増感剤、脱水剤、老化防止剤、安定剤、可塑剤、ワックス、充填剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、防かび剤、粘度調整剤などを挙げることができる。また、添加し得る他の成分は2種以上添加されてもよい。
【0026】
本発明による光反応性ホットメルト接着剤組成物の製造方法については、配合する各成分を混合し、均一に分散し得る限り、特に限定されないが、使用材料が溶融し得る適度な加熱条件下で各成分を混合し、また硬化開始に有効な光を遮断した状態で行うことが必要である。また、製造に際しての各成分の混合分散は無溶媒で行ってもよく、不活性溶媒中で行ってもよい。更に、各成分を混合する場合、カチオン重合を阻害する成分である水分の混入が少なくなるため、無水条件下で混合することが望ましい。
【0027】
上記光反応性ホットメルト接着剤組成物を用いた接着に際しては、該光反応性ホットメルト接着剤組成物を加熱溶融し、被着体の一方または双方に溶融状態で塗布する。被着体を貼り合わせる前、または貼り合わせた後に該光反応性ホットメルト接着剤組成物に光を照射する。光の照射により速やかにエポキシ樹脂の開環重合が進行し、最終的に硬化が完了すると、得られた接合体の接着強度が発現する。なお、この光カチオン重合は、暗反応でも進行するため、光の照射を停止した後においても硬化が進行し、硬化が完了する。
【0028】
上記光反応性ホットメルト接着剤組成物を加熱溶融して被着体に塗布する方法についても特に限定されず、通常のホットメルトアプリケータやホットメルトコータなどを用いる方法、加熱溶融した光反応性ホットメルト接着剤組成物中に被着体を浸漬する方法、ホットメルトエアガンなどにより被着体に加熱溶融状態にある光反応性ホットメルト接着剤組成物を噴霧する方法、押出機などにより加熱溶融した光反応性ホットメルト接着剤組成物を被着体表面に押出する方法などが挙げられる。
【0029】
上述した照射される光については、光カチオン重合開始剤からカチオンを生成し得る限り、用いられるカチオン重合開始剤の種類に応じて適宜の光が用いられる。好ましくは、紫外線又は200〜600nmの波長の光が用いられる。特に、カチオン重合開始剤として芳香族スルホニウム塩を用いる場合には、200〜400nmの波長を含む光を用いることが好ましい。
【0030】
上記光の照射量についても、カチオン重合開始剤の種類や光反応性ホットメルト接着剤組成物が塗布されている部分の厚みや量によっても異なるため、一義的には定め得ないが、0.001J/cm2〜10J/cm2の範囲とすることが好ましい。
【0031】
上記光の光源としては、光として紫外線を用いる場合には、蛍光ランプや高圧水銀灯な
どの紫外線照射源として一般的に用いられているものを用いることができる。
なお、本発明による光反応性ホットメルト接着剤組成物は、常態条件下において、光の照射により十分硬化し良好な接着力が得られるが、被着体の変形や劣化が発生しない範囲で加熱すると非常に高い接着力が得られるので好ましい。
【0032】
本発明による光反応性ホットメルト接着剤組成物が適用される被着体は特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレートなどのポリエステル樹脂、アクリル樹脂などのプラスチックからなる被着体の接着に好適に用いることができる。また、他のプラスチック、エチレンプロピレンラバーなどのゴム、あるいは鉄、アルミニウムなどの金属もしくは合金;木材や紙などのセルロース系材料;皮革など広範な材料からの被着体にも適用することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明による光反応性ホットメルト接着剤組成物は、上述の通りの構成であるので、加熱溶融塗工により容易に被着体に適用することができ、光の照射により硬化が進行する反応性ホットメルト接着剤組成物であって、ポリエステルと多官能エポキシ樹脂が、分子鎖が2次元的により伸びる方向で反応し、高温での破断伸度が向上し、結果として、PETフィルム等の平滑な被着体同士を接着し硬化が完了した後に、100℃以上の高温での剥離接着力を発現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の具体的な実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
ポリエステル(東洋紡社製、バイロンGM920:分子量30000、2官能末端OH)100重量部と、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エピコート152:分子量525、3官能エポキシ)5.2重量部とを溶融混練機にて180℃で混練し、溶融混合が十分なことを目視で確認してから、110℃に温度を下げ、光カチオン重合開始剤(旭電化工業社製、オプトマーSP−170)2.9重量部を加え混練し、光反応性ホットメルト接着剤組成物を調製した。
【0036】
(実施例2)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エピコート152:分子量525、3官能エポキシ)の配合量を8.8重量部、及び光カチオン重合開始剤(旭電化工業社製、オプトマーSP−170)の配合量を3重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、光反応性 ホットメルト接着剤組成物を調製した。
【0037】
(実施例3)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エピコート152:分子量525、3官能エポキシ)の配合量を23.4重量部、及び光カチオン重合開始剤(旭電化工業社製、オプトマーSP−170)の配合量を3.4重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、光反応性ホットメルト接着剤組成物を調製した。
【0038】
(実施例4)
ポリエステル(東洋紡社製、バイロンGM920:分子量30000、2官能末端OH)100重量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エピコート1001:分子量950、2官能エポキシ)16重量部と、光カチオン重合開始剤(旭電化工業社製、オプトマーSP−170)3.2重量部とを、溶融混練機にて混練し、光反応性ホットメルト接着剤組成物を調製した。
【0039】
(実施例5)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エピコート1001:分子量950、2官能エポキシ)の配合量を24重量部、及び光カチオン重合開始剤(旭電化工業社製、オプトマーSP−170)の配合量を3.4重量部に変更したこと以外は実施例4と同様にして、光反応性 ホットメルト接着剤組成物を調製した。
【0040】
(実施例6)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エピコート1001:分子量950、2官能エポキシ)の配合量を64重量部、及び光カチオン重合開始剤(旭電化工業社製、オプトマーSP−170)の配合量を4.5重量部に変更したこと以外は実施例4と同様にして、光反応性 ホットメルト接着剤組成物を調製した。
【0041】
(比較例1)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エピコート152:分子量525、3官能エポキシ)の配合量を2.3重量部、及び光カチオン重合開始剤(旭電化工業社製、オプトマーSP−170)の配合量を2.8重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、光反応性ホットメルト接着剤組成物を調製した。
【0042】
(比較例2)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エピコート152:分子量525、3官能エポキシ)の配合量を35.1重量部、及び光カチオン重合開始剤(旭電化工業社製、オプトマーSP−170)の配合量を3.8重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、光反応性ホットメルト接着剤組成物を調製した。
【0043】
(比較例3)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エピコート1001:分子量950、2官能エポキシ)の配合量を4重量部、及び光カチオン重合開始剤(旭電化工業社製、オプトマーSP−170)の配合量を2.9重量部に変更したこと以外は実施例4と同様にして、光反応性ホットメルト接着剤組成物を調製した。
【0044】
(比較例4)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン社製、エピコート1001:分子量950、2官能エポキシ)の配合量を96重量部、及び光カチオン重合開始剤(旭電化工業社製、オプトマーSP−170)の配合量を5.4重量部に変更したこと以外は実施例4と同様にして、光反応性ホットメルト接着剤組成物を調製した。
【0045】
(比較例5)
ポリエステル(東洋紡社製、バイロンGM920:分子量30000、2官能末端OH)100重量部のみを用いてホットメルト接着剤組成物とした。
【0046】
(性能評価)
上記で得られた光反応性ホットメルト接着剤組成物の性能(150μm厚み破断伸度及、PET剥離接着力及び昇温クリープ)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示す通りであった。
【0047】
1)150μm厚み破断伸度
温度23℃及び相対湿度50%雰囲気下で、離型PET同士の間に光反応性ホットメルト接着剤組成物を挟み、200μm厚の隙間ゲージをかまし、温度120℃、圧力0.34MPaで数十秒間圧着し、150μm厚みの接着シートを作製した。この後、超高圧水銀灯からの波長365nmの光を、100mW/cmの照射強度で30秒間照射し、65℃で30秒間圧着し、温度23℃及び相対湿度50%雰囲気下で24時間静置後、3号ダンベルで打ち抜いて、表面両側の離型PETを剥がし、破断伸度測定用の試験片を得た。
これを、20℃雰囲気下、そして、100℃の恒温曹中で、引っ張り速度10mm/分で引っ張り、破断したところの伸度を、破断した長さ/引っ張り前の長さ(mm)×100(%)で測定した。
【0048】
2)PET剥離接着力
温度23℃及び相対湿度50%雰囲気下で、被着体として1cm幅、50μm厚みのPETシート(東レ社製、#S10)を2枚用意し、一方のPETシートの表面に光反応性ホットメルト接着剤組成物を150g/mの割合で加熱溶融塗工し、超高圧水銀灯からの波長365nmの光を100mW/cmの照射強度で30秒間照射した。これに、もう一方のPETシートを貼り合わせ、120℃、0.98MPaで30秒間加熱プレスを行い、23℃で48時間養生して評価用接合体を得た。この接合体について、温度20℃雰囲気下、そして、100℃の恒温曹中で、引っ張り速度50mm/分の条件でT型剥離試験を行い剥離接着力を測定した。
【0049】
3)昇温クリープ
上記2)の評価で得た接合体を、接着面積が1cm×1cmの大きさに切断し、オーブン内で剪断方向へ荷重が加わるように300gの重りをぶら下げ、室温から200℃まで0.6℃/分の昇温速度で昇温しながらクリープ試験を行った。ここで、重りが落下した温度を、その接合体の耐熱温度(℃)として評価した。温度が200℃に到達しても錘が落下しない場合は、耐熱温度が200℃以上であると見なされる。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から明らかなように、比較例1、3、5では、100℃での破断伸度が小さく、昇温クリープが低いため、100℃での高温剥離接着力は0N/cmであった。
また、比較例2、4では、100℃での破断伸度が更に小さいため、昇温クリープは高いものの、100℃での高温剥離接着力は0N/cmであった。
【0052】
これに対して、実施例1〜6では、いずれも、常態接着性に優れているだけでなく、高温時の剥離接着力、昇温クリープ(剪断耐熱強度)においても優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルと多官能エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤とを含有する光反応性接着剤組成物であって、ポリエステル末端のヒドロキシル基:エポキシ基=1:5〜1:20の比率であり、かつ反応硬化後の150μm厚みでの破断伸度が100℃で15%以上であることを特徴とする光反応性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
多官能エポキシ樹脂が、3官能以上のエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1記載の光反応性ホットメルト接着剤組成物。

【公開番号】特開2006−111698(P2006−111698A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299144(P2004−299144)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】