説明

光受信器、及び光受信方法

【課題】光軸がずれた場合にのみ光信号の一部を分岐し光軸検出を行うことで、高い受信信号のS/N比を実現する光受信器を提供する。
【解決手段】集光部100は、入射された光信号を集光する。光学素子110は、透過領域111と分岐領域112とを有し、集光部100で集光された光信号が入射される。信号用受光部120は、透過領域111を透過した透過光を受光する。検出用受光部130は、分岐領域112にて分岐された分岐光を受光し、光電気変換することで分岐光の強度を示す検出用強度信号を出力する。光軸検出部140は、検出用受光部130から出力された検出用強度信号に基づき光軸ずれを検出し、光軸検出信号を出力する。光軸調整部150は、光軸検出信号に基づき光軸調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光空間伝送で用いられる光受信器に関し、より特定的には、光軸がずれた場合にのみ光信号の一部を分岐し光軸検出を行うことで、高い受信信号のS/N比を実現する光受信器、及び光受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPDAといった携帯情報端末でのデータ通信方法として、配線の不要な無線伝送が盛んになっている。特に、搬送波として2.4/5.2Hz帯の電波を用いる無線LAN等が広く普及しているが、その利便性に反して、電波漏洩によるチャネル間干渉やセキュリティの低下、伝送速度の限界(数10Mbps)などといったデメリットも生じる。
【0003】
そのため、電波に比べて様々な利点を持つ赤外線を用いた光空間伝送が注目され始めている。搬送波に赤外線を用いるメリットとしては、光の直進性/遮光性によるセキュリティ性、光搬送波のもつ広帯域性を利用した高速伝送の可能性などが挙げられる。ただし、光搬送波では、その直進性のため、送受信器を、ある程度、対向させて設置する必要がある。そのため、光受信器においては、受光可能範囲が広いほど設置の柔軟性が高まることになる。
【0004】
従来、光受信器の受光範囲を拡大する手段としては、高開口数のレンズを用いるといった光学系を工夫して受光範囲を広げる光学式と、光送信器から出力された光信号の光軸を検出し、光受信器自体、もしくはレンズやミラー、受光素子などを動かすことで光軸調整を行う機械式とがあった。後者の機械式の場合、前者の光学式の場合ほど光学系の受光角は広くないが、光軸調整を行うことで、光軸付近の光信号のみを受光することができ、前者の光学式に比べて不要光の影響を低減し、受信信号のS/Nを高めることが可能であった。
【0005】
ここで、機械式の手段を用いた従来の光受信器としては、例えば、特許文献1に記載されたものがあった。図11は、特許文献1に記載の従来の光受信器の構成を示すブロック図である。図11において、従来の光受信器は、全反射ミラー900と、分岐ミラー910と、信号用受光素子920と、光軸検出用受光素子930と、集光レンズ901、902と、光軸検出回路部940と、光軸調整部950とを備える。
【0006】
光受信器に到達した光信号は、全反射ミラー900において分岐ミラー910に向け反射され、分岐ミラー910において光信号の一部が集光レンズ901に向けて反射された後、集光レンズ901において集光され、光軸検出用受光素子930と結合する。また、分岐ミラー910を透過した光信号は、集光レンズ902において集光され信号用受光素子920と結合する。
【0007】
図12は、従来の光受信器で用いられる光軸検出用受光素子930の概要構成の一例を示す図である。光軸検出用受光素子930は、図12に示すように受光面が領域931、領域932、領域933、及び領域934に多分割された受光素子であって、各領域931〜934に結合するビームスポット935の割合に応じた電気信号を出力する。光軸検出回路部940は、光軸検出用受光素子930から出力された電気信号に基づいて光軸ずれを検出し、光軸調整部950へ光軸検出信号を出力する。光軸調整部950は、光軸検出信号に基づいて、全反射ミラー900の角度を調整する。
【特許文献1】特開平5−133716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の光受信器では、受信した光信号の一部を分岐ミラー910によって分岐するので、光軸ずれが生じていない場合においても、常に光信号の一部を光軸検出用に分岐しているので、信号用受光素子920と結合する光信号のパワーが低下し、受信信号のS/Nが劣化してしまうという課題があった。
【0009】
それ故に、本発明の目的は、上記従来の課題を解決するもので、光軸がずれた場合にのみ光信号の一部を分岐し光軸検出を行うことで、高い受信信号のS/Nを実現する光受信器、及び光受信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、空間を媒体に伝送された光信号を受信する光受信器に向けられている。そして、上記目的を達成するために、本発明の光受信器は、入射された光信号を集光する集光部と、透過領域と分岐領域とを有し、集光部で集光された光信号が入射される光学素子と、透過領域を透過した透過光を受光し、光電気変換する信号用受光部と、分岐領域にて分岐された分岐光を受光し、光電気変換することで分岐光の強度を示す検出用強度信号を出力する検出用受光部と、検出用受光部から出力された検出用強度信号に基づき光軸ずれを検出し、光軸検出信号を出力する光軸検出部と、光軸検出信号に基づき光軸調整を行う光軸調整部とを備える。光学素子は、集光部と信号用受光部との間の位置に、信号用受光部の中心軸と透過領域の中心軸とが略一致するように配置される。分岐領域は、光信号の一部であり光軸ずれによって生じる漏れ光が入射され、検出用受光部に向けて分岐光を出射する。
【0011】
これによれば、光軸ずれが生じた場合に、光信号の一部を光軸検出に利用し、光軸ずれが無い場合は、集光部で集光された光信号の殆どが、透過領域を通り信号用受光部と結合するため、効率的に光信号を受信することができる。
【0012】
好ましくは、光学素子は、透過領域と分岐領域との境界の形状が環状であり、境界の径が、光学素子の位置における集光された光信号の光束の断面の径よりも大きいものである。これによれば、透過領域の中心軸を中心とした回転の法線方向に対し、どの方向に光軸がずれても、集光された光信号の一部を分岐領域に入射することができる。
【0013】
また、光学素子は、透過領域と分岐領域との境界の形状が環状であり、境界の径が、光学素子の位置における集光された光信号の光束断面の径よりも大きく、かつ境界の形状が、光学素子の位置における集光された光信号の光束断面と略相似であってもよい。これによれば、透過領域の中心軸を中心とした回転の法線方向に対し、どの方向に光軸がずれても、均一に集光された光信号の一部を分岐領域に入射することができる。
【0014】
好ましくは、透過領域は、光学素子に開けられた集光された光信号の光束断面の径よりも大きい径をもつ穴である。これによれば、光信号が透過領域を通過する際の損失を低減することができる。
【0015】
好ましくは、検出用受光部は、信号用受光部と同心円状に配置されている。これによれば、透過領域の中心軸を中心とした回転の法線方向に対し、どの方向に光軸がずれても分岐光を受光することができる。
【0016】
また、検出用受光部は、信号用受光部と同心円状に配置され、光電気変換を行う領域を複数有するものであってもよい。これによれば、透過領域の中心軸を中心とした回転の法線方向に対し、どの方向に光軸がずれても分岐光を受光でき、複数の光電変換を行う領域で分岐を受光することで、より詳細な光軸ずれを検出することができる。
【0017】
分岐領域は、負の焦点距離を有し、検出用受光部に向け入射光を広げて出射する。これによれば、検出用受光部の複数の受光領域に対して分岐光を出射することができる。
【0018】
好ましくは、分岐領域は、フレネルレンズや回折レンズで構成される。これによれば、光学素子を薄型にすることができる。
【0019】
また、検出用受光部は、信号用受光部と同一基板上に作成されている。これによれば、検出用受光部と信号用受光部とを一体化し部品点数を少なくすることができる。
【0020】
好ましくは、光受信器は、信号用受信部が透過光を光電気変換した信号に基づいて、透過光の受信強度を示す受信用強度信号を出力する受信回路部をさらに備える。この場合、光軸調整部は、光軸検出信号、及び受信用強度信号に基づいて、光軸調整を行う。これによれば、光軸調整部は、光軸ずれの程度を判断しながら、光軸調整することができる。
【0021】
好ましくは、光軸調整部は、受信用強度信号が第1のしきい値よりも大きく、かつ光軸検出信号が第2のしきい値よりも小さいという第1の条件を満たす場合に光軸を維持し、第1の条件を満たさない場合に、受信用強度信号が第1のしきい値よりも大きく、かつ光軸検出信号が第2のしきい値よりも大きいという第2の条件を満たすか否かを判定し、第2の条件を満たす場合に、光軸調整の変化幅を小さくして光軸調整を行い、第2の条件を満たさない場合に、受信用強度信号が第1のしきい値よりも小さく、かつ光軸検出信号が第2のしきい値よりも大きいという第3の条件を満たすか否かを判定し、第3の条件を満たす場合に、光軸調整の変化幅を中程度にして光軸調整を行い、第3の条件を満たさない場合に、光軸調整の変化幅を大きくして、光軸調整可能な全方位に光軸検索を行い、その際に受信用強度信号が第1のしきい値よりも大きいか、あるいは光軸検出信号が第2のしきい値よりも大きいという第4の条件を満たすか否かを判定し、第4の条件を満たす場合に、第1の条件を満たすか否かを再度判定し、第4の条件を満たさない場合に、光軸調整を中断する。
【0022】
これによれば、光軸調整部は、受信用強度信号、及び光軸検出信号のそれぞれの大きさに応じて、光軸調整幅を変化させることがことで、より効率的な光軸調整が可能となる。
【0023】
また、光軸調整部は、光軸検出信号が所定のしきい値よりも大きいという第1の条件を満たす場合に、光軸検出信号に基づいて光軸を調整し、第1の条件を満たさない場合に、受信用強度信号が、信号用受光部が誤りなく通信可能な最小受信信号強度よりも大きいという第2の条件を満たすか否かを判定し、第2の条件を満たす場合に、光軸を維持し、第2の満たさない場合に、光軸調整可能な全方位に光軸検索を行い、その際に光軸検出信号が所定のしきい値よりも大きいという第3の条件を満たすか否かを判定し、第3の条件を満たす場合に、光軸検出信号に基づいて光軸を調整し、第3の条件を満たさない場合に、光軸調整を中断してもよい。
【0024】
これによれば、光軸調整部は、より簡素な手順で光軸ずれの検出及び調整が可能となる。
【0025】
また、本発明は、空間を媒体に伝送された光信号を受信する光受信器が実行する光受信方法にも向けられている。そして、上記目的を達成するために、本発明の方法は、入射された光信号を集光する集光ステップと、集光された光信号のうち、光軸と一致した光信号を透過光として透過し、光軸と一致しなかった光信号を分岐光として分岐するステップと、透過光を受光し、光電気変換する信号用受光ステップと、分岐光を受光し、光電気変換することで分岐光の強度を示す検出用強度信号を出力する検出用受光ステップと、検出用強度信号に基づき光軸ずれを検出し、光軸検出信号を出力する光軸検出ステップと、光軸検出信号に基づき光軸調整を行う光軸調整ステップとを備える。
【0026】
これによれば、光軸ずれが生じた場合に、光信号の一部を光軸検出に利用し、光軸ずれが無い場合は、集光部で集光された光信号の殆どが、透過領域を通り信号用受光部と結合するため、効率的に光信号を受信することができる。
【0027】
また、本発明は、空間を媒体に伝送された光信号を受信する光受信器が実行する光軸ずれ検出方法にも向けられている。そして上記目的を達成するために、本発明の光軸ずれ検出方法は、入射された光信号を集光する集光ステップと、集光された光信号のうち、光軸と一致した光信号を透過光として透過し、光軸ずれによって生じる漏れ光を分岐光として分岐するステップと、透過光を受光し、光電気変換する信号用受光ステップと、分岐光を受光し、光電気変換することで分岐光の強度を示す検出用強度信号を出力する検出用受光ステップと、検出用強度信号に基づき光軸ずれを検出し、光軸検出信号を出力する光軸検出ステップとを備える。
【0028】
これによれば、光軸ずれが生じた場合に、光信号の一部を光軸検出に利用し、光軸ずれが無い場合は、集光部で集光された光信号の殆どが、透過領域を通り信号用受光部と結合するため、高い受信信号のS/N比を実現しながら、光軸ずれを検出することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明によれば、光学素子の透過領域と分岐領域との境界が環状で、その境界径が光学素子の位置における集光された光信号の光束径よりも大きくなる。そのため、光軸ずれが無い場合には、集光された光信号の全てが透過領域を通過して信号用受光部に結合することができ、光軸ずれが生じた場合には、集光された光信号の一部だけが分岐領域に入射し、検出用受光部で光軸検出行うことができる。これにより、光信号の損失を低減しながら光軸調整を実現することが可能となる。
【0030】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の各実施形態について図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態に係る光受信器1の概要構成の一例を示すブロック図である。また、図3は、本発明の第1の実施形態に係る光受信器1の概要構成を示す斜視図である。ただし、図1及び図3は光軸ずれが無い場合、図2は光軸ずれが生じた場合の光受信器1の様子を示している。
【0032】
図1〜図3において、光受信器1は、集光部100、光学素子110、信号用受光部120、検出用受光部130、光軸検出部140、及び光軸調整部150を備える。
【0033】
集光部100は、光信号を入射し光学素子110へ向けて集光された光信号を出射する凸レンズである。光学素子110は、透過領域111と分岐領域112とを有しており、集光部100と信号用受光部120との間の位置に、信号用受光部120の中心軸と透過領域111の中心軸とが一致するように配置される。また、透過領域111と分岐領域112との境界の形状が環状で、その境界の径は、光学素子110が配置されている位置における集光された光信号の光束の径よりも大きい。また、その境界の形状は、光学素子110が配置されている位置における集光された光信号の光束断面と略相似であることが望ましい。
【0034】
図4は、光学素子110の概要構成の一例を示す模式図である。図4において、斜線部分が分岐領域112を示している。透過領域111は、光学素子110に開けられ、集光された光信号の光束の径よりも大きい径をもつ穴であり、集光された光信号を透過光として出射する。
【0035】
図4(a)に示す分岐領域112は、フレネルレンズで構成されており、負の焦点距離、つまり光線の入射方向とは逆向きの焦点を有し、入射された光信号の光束を広げて出射する。すなわち、分岐領域112に集光された光信号が入射されると、入射された光信号の光束を広げて分岐光として出射される。分岐領域112は、光信号の波長に対して屈折率が高く、吸収損失の低い材質で構成されていることが望ましい。
【0036】
分岐領域112の形状は、図4(a)に示すようなフレネルレンズに限定されるものではなく、回折レンズや、図4(c)に示すようなプリズム形状であっても構わない。また、透過領域111は、図4(b)や、図4(d)に示すように、光学素子110と同じ材質で構成されていても構わない。
【0037】
信号用受光部120は、透過光を受光し、光電気変換することで電気信号を出力する。検出用受光部130は、分岐光を受光し、光電気変換することで分岐光の強度を示す検出用強度信号を出力する。光軸検出部140は、検出用受光部130から出力された検出用強度信号に基づいて光軸ずれを検出し、光軸検出信号を出力する。光軸調整部150は、光軸検出部140から出力された光軸検出信号に基づき光軸調整を行う。なお、本実施形態に示す光受信器は、集光部100を移動させることで光軸調整を行う構成を示している。
【0038】
図1及び図3に示すように光軸ずれが生じない場合、光信号は集光部100で集光された後、透過領域111を通過して信号用受光部120に結合する。その際、透過領域111と分岐領域112との境界は環状で、その境界の径が、光学素子110が配置されている位置における集光された光信号の光束断面113の径よりも大きいため、集光された光信号の大部分が透過領域111を通過し、分岐領域112へは殆ど入射しない。そのため、常に受信した光信号の一部を分岐する従来の光受信器に比べ、光信号の損失を大幅に低減することが可能となる。
【0039】
一方、図2のように光軸ずれが生じる場合、光信号は集光部100で集光された後、その一部が透過領域111を通過して信号用受光部120に結合し、残りの一部である漏れ光が分岐領域112へ入射する。ここで、漏れ光とは、仮に光学素子110が無い場合、集光された光信号のうち信号用受光部120とは結合しない光のことである。分岐領域112へ入射した漏れ光は、図2の破線で示すように、検出用受光部130へ向け光束が広がるように出射される。
【0040】
ここで、図5を用いて、光受信器1が光軸ずれを検出する方法を具体的に説明する。図5は、検出用受光部130の概要構成を示す模式図である。図5において、検出用受光部130は、信号用受光部120と同一基板上に作製されており、面積が略等しくなるように分割された各光電気変換領域131〜134が信号用受光部120に同心円状に配置されている。検出用受光部130は、各光電気変換領域131〜134が受光する分岐光の割合に応じた検出用強度信号を出力する。
【0041】
図5に示す斜線部は、検出用受光部130での透過光の像160と、分岐光の像161とをそれぞれ示している。光軸がずれると、分岐光の像161が検出用受光部130の複数の光電気変換領域131〜134で受光される。例えば、光電気変換領域131と光電気変換領域133とから出力される検出用強度信号の大きさが等しければX軸方向へ光軸がずれていることが検出できる。また、光電気変換領域131と光電気変換領域133とから出力される検出用強度信号の大きさが異なる場合、光電気変換領域131と光電気変換領域133とから出力される検出用強度信号の大きさの比率によって、例えば、矢印aの方向に光軸がずれていることを検出することができる。
【0042】
このように、分岐領域112で光信号を広げて出射すると、検出用受光部130では、複数の光電気変換領域131〜134で光信号を受光することができるため、光束を広げない場合よりも詳細な光軸ずれ方向を検出可能となる。
【0043】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る光受信器1によれば、光学素子110の透過領域111と分岐領域112との境界が環状で、その境界径が光学素子110の位置における集光された光信号の光束径よりも大きくなる。そのため、光軸ずれが無い場合には、集光された光信号の全てが透過領域111を通過して信号用受光部120に結合することができ、光軸ずれが生じた場合には、集光された光信号の一部だけが分岐領域112に入射し、検出用受光部130で光軸検出行うことができる。これにより、光信号の損失を低減しながら光軸調整を実現することが可能となる。
【0044】
なお、集光部100は、入射光を集光する機能を有していればよく、その形態は、凸レンズや回折レンズ、凹面鏡であっても構わない。また、より開口数の高いレンズであれば、光学系の小型化が望める。
【0045】
また、検出用受光部130は、4分割された光電気変換領域を有していたが、分割数はこれに限定されるものではなく、より複数に分割された光電気変換領域を有することにより、正確な光軸ずれ方向を検出することが可能となる。
【0046】
また、検出用受光部130は、複数の受光素子を信号用受光部120の周囲に同心円状となるよう配置する構成でも構わない。
【0047】
また、光軸調整部150は、集光部100を移動させる構成に限定されるものではなく、反射ミラーなどにより光受信器1の光軸そのものを変化させる等、これと同等の機能を有する手段であればよい。
【0048】
(第2の実施形態)
図6及び図7は、本発明の第2の実施形態に係る光受信器2の概要構成の一例を示すブロック図である。ただし、図6は光軸ずれが無い場合、図7は光軸ずれが生じた場合の光受信器2を示している。ここで、本発明の第1の実施形態に係る光受信器1と同一の構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0049】
図6及び図7において、光受信器2は、受信回路部121をさらに備える。受信回路部121は、信号用受光部120が光電気変換した電気信号に基づいて、受信用強度信号Paを出力する。光軸調整部151は、受信回路部121が出力した受信用強度信号Pa、及び光軸検出部140が出力した光軸検出信号Pbに基づいて光軸調整を行う。
【0050】
ここで、図8を用いて、光軸調整部151の動作について具体的に説明する。図8は、光軸調整部151の動作の一例を示すフローチャートである。図8を参照して、光軸調整部151は、光軸ずれの有無を判定するために、受信用強度信号Paが所定のしきい値P1よりも大きく、かつ光軸検出信号Pbが所定のしきい値P2よりも小さいという条件(すなわち、Pa>P1かつPb<P2)を満たすか否かを判定する(ステップS101)。この条件を満たす場合、信号用受光部120に殆どの光信号が結合している状態であるため、光軸調整部151は、光軸を維持し、一定期間後再びステップS101の条件を判定する(ステップS111)。
【0051】
ステップS101の条件を満たさない場合、光軸調整部151は、光軸ずれの程度を判定するため、受信用強度信号Paが所定のしきい値P1よりも大きく、かつ光軸検出信号Pbが所定のしきい値P2よりも大きいという条件(すなわち、Pa>P1かつPb>P2)を満たすか否かを判定する(ステップS102)。この条件を満たす場合、信号用受光部120にある程度の光信号が結合し、一部の光信号が検出用受光部130と結合している状態であるため、光軸調整部151は、光軸調整の変化幅を小さくして光軸調整を行い、一定期間後再びステップS101の条件を判定する(ステップS112)。
【0052】
ステップS102の条件を満たさない場合、光軸調整部151は、光軸ずれの程度を更に判定するため、受信用強度信号Paが所定のしきい値P1よりも小さく、かつ光軸検出信号Pbが所定のしきい値P2よりも大きいという条件(すなわち、Pa<P1かつPb>P2)を満たすか否かを判定する(ステップS103)。この条件を満たす場合、受信用受光部120には光信号が結合せず、殆どの光信号が検出用受光部130と結合している状態であるため、光軸調整部151は、光軸調整の変化幅を中程度にして光軸調整を行い、一定時間後再びステップS101の条件を判定する(ステップS113)。
【0053】
ステップS103の条件を満たさない場合、検出用受光部130と結合できない範囲まで光軸がずれている可能性があるため、光軸調整部151は、光軸調整の変化幅を大きくし、光軸調整可能な全方位に光軸検索を行い(ステップS114)、その際に受信用強度信号Paが所定のしきい値P1よりも大きいか、あるいは光軸検出信号Pbが所定のしきい値P2よりも大きいという条件(すなわち、Pa>P1あるいはPb>P2)を満たすか否かを判定する(ステップS104)。この条件を満たす場合、光軸調整部151は、再びステップS101の判定を行う。
【0054】
ステップS104の条件を満たさない場合は、光信号が光受信器2まで到達していない可能性があるため、光軸調整部151は、光軸調整を中断する(ステップS115)。この場合、エラー表示を行う等、利用者に通信不可能状態であることを伝える。
【0055】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る光受信器2によれば、第1の実施形態に係る光受信器1の効果に加え、受信用強度信号Pa、及び光軸検出信号Pbのそれぞれの大きさに応じて、光軸調整幅を変化させることで、より効率的な光軸調整が可能となる。
【0056】
なお、光軸が一致した時に通信可能な状態を実現するため、信号用受光部120が誤りなく通信可能な最小の受信信号の強度を示す最小受信信号強度をPminとすると、しきい値P1は、Pminと同等か、あるいはPminに対して1〜2dB大きいことが望ましい。
【0057】
また、光軸ずれにより信号用受光部120から外れた光信号が検出用受光部130に結合するため、しきい値P2の値を小さくするほど、より小さな光軸ずれを検出することが可能となる。
【0058】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る光受信器3について添付図面を参照して説明する。図9は、本発明の第3の実施形態に係る光受信器3の概要構成の一例を示すブロック図である。ただし、図9は光軸ずれが無い場合の光受信器3を示している。図9において、光受信器3は、光軸調整部152の動作のみが第2の実施形態と異なる。ここで、本発明の第2の実施形態に係る光受信器2と同一の構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0059】
図10を用いて、光軸調整部152の動作について具体的に説明する。図10は、光軸調整部152の動作の一例を示すフローチャートである。図10を参照して、光軸調整部152は、光軸ずれの有無を判定するために、光軸検出信号Pbが所定のしきい値P0よりも大きいという条件(すなわち、Pb>P0)を満たすか否かを判定する(ステップS201)。この条件を満たす場合、検出用受光部130が検出可能な範囲で光軸がずれている状態であるため、光軸調整部152は、光軸検出部140が出力した光軸検出信号Pbに基づいて光軸を調整し、一定期間後再びステップS201の条件を判定する(ステップS211)。
【0060】
ステップS201の条件を満たさない場合、光軸が合っているケースと、光軸が検出用受光部130で検出できる範囲以上にずれているケースとが考えられる。そこで、これら2つのケースを区別するために、光軸調整部152は、受信用強度信号Paが最小受信信号強度Pminよりも大きいという条件(すなわち、Pa>Pmin)を満たすか否かを判定する(ステップS202)。この条件を満たす場合、光軸が合っており、かつ誤りなく通信できる受信強度が得られていることになるため、光軸調整部152は、光軸を維持し、一定期間後再びステップS201の条件を判定する(ステップS212)。
【0061】
ステップS202の条件を満たさない場合、光軸調整部152は、光軸調整可能な全方位に光軸検索を行い(ステップS213)、その際に光軸検出信号Pbが所定のしきい値P0よりも大きいという条件(すなわち、Pb>P0)を満たすか否かを判定する(ステップS203)。この条件を満たす場合、検出用受光部130が検出可能な範囲で光軸がずれている状態であるため、光軸調整部152は、光軸検出部140が出力した光軸検出信号Pbに基づいて光軸を調整し、一定期間後再びステップS201の条件を判定する(ステップS214)。
【0062】
ステップS203の条件を満たさない場合、光信号が光受信器3まで到達していない可能性があるため、光軸調整部152は、光軸調整を中断する(ステップS215)。この際、エラー表示を行う等、利用者に通信不可能状態であることを伝える。
【0063】
なお、しきい値P0は、その値が小さいほど、より小さな光軸ずれを検出することが可能となる。
【0064】
以上のように、本発明の第3の実施形態に係る光受信器3によれば、第2の実施形態に係る光受信器2と比べて、より簡素な手順で光軸ずれの検出および調整が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る光受信器は、光空間伝送装置等の受光電力の向上を図る構成として有用である。また、光センサの光受信器等の用途にも応用できる。
【0066】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光受信器1の概要構成の一例を示すブロック図(光軸ずれ無し)
【図2】本発明の第1の実施形態に係る光受信器1の概要構成の一例を示すブロック図(光軸ずれ有り)
【図3】本発明の第1の実施形態に係る光受信器1の概要構成を示す斜視図(光軸ずれ無し)
【図4】本発明の第1の実施形態に係る光学素子110の概要を示す模式図
【図5】本発明の第1の実施形態に係る検出用受光部130の概要を示す模式図
【図6】本発明の第2の実施形態に係る光受信器2の概要構成の一例を示すブロック図(光軸ずれ無し)
【図7】本発明の第2の実施形態に係る光受信器2の概要構成の一例を示すブロック図(光軸ずれ有り)
【図8】本発明の第2の実施形態に係る光軸調整部151の動作の一例を示すフローチャート
【図9】本発明の第3の実施形態に係る光受信器3の概要構成の一例を示すブロック図
【図10】本発明の第3の実施形態に係る光軸調整部152の動作の一例を示すフローチャート
【図11】従来の光受信器の構成を示すブロック図
【図12】従来の光受信器で用いられる光軸検出用受光素子930の概要構成の一例を示す図
【符号の説明】
【0068】
1〜3 光受信器
100 集光部
110 光学素子
111 透過領域
112 分岐領域
113 光束断面
120 信号用受光部
121 受信回路部
130 検出用受光部
131〜134 光電気変換領域
140 光軸検出部
150〜152 光軸調整部
160 透過光の像
161 分岐光の像
900 全反射ミラー
901,902 集光レンズ
910 分岐ミラー
920 信号用受光素子
930 光軸検出用受光素子
940 光軸検出回路部
950 光軸調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を媒体に伝送された光信号を受信する光受信器であって、
入射された前記光信号を集光する集光部と、
透過領域と分岐領域とを有し、前記集光部で集光された光信号が入射される光学素子と、
前記透過領域を透過した透過光を受光し、光電気変換する信号用受光部と、
前記分岐領域にて分岐された分岐光を受光し、光電気変換することで前記分岐光の強度を示す検出用強度信号を出力する検出用受光部と、
前記検出用受光部から出力された検出用強度信号に基づき光軸ずれを検出し、光軸検出信号を出力する光軸検出部と、
前記光軸検出信号に基づき光軸調整を行う光軸調整部とを備え、
前記光学素子は、前記集光部と前記信号用受光部との間の位置に、前記信号用受光部の中心軸と前記透過領域の中心軸とが略一致するように配置され、
前記分岐領域は、前記光信号の一部であり光軸ずれによって生じる漏れ光が入射され、前記検出用受光部に向けて分岐光を出射することを特徴とする、光受信器。
【請求項2】
前記光学素子は、前記透過領域と前記分岐領域との境界の形状が環状であり、前記境界の径が、前記光学素子の位置における前記集光された光信号の光束断面の径よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の光受信器。
【請求項3】
前記光学素子は、前記透過領域と前記分岐領域との境界の形状が環状であり、前記境界の径が、前記光学素子の位置における前記集光された光信号の光束断面の径よりも大きく、かつ前記境界の形状が、前記光学素子の位置における前記集光された光信号の光束断面と略相似であることを特徴とする、請求項1に記載の光受信器。
【請求項4】
前記透過領域は、前記光学素子に開けられた前記集光された光信号の光束断面の径よりも大きい径をもつ穴であることを特徴とする、請求項1に記載の光受信器。
【請求項5】
前記検出用受光部は、前記信号用受光部と同心円状に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の光受信器。
【請求項6】
前記検出用受光部は、前記信号用受光部と同心円状に配置され、光電気変換を行う領域を複数有することを特徴とする、請求項1に記載の光受信器。
【請求項7】
前記分岐領域は、負の焦点距離を有し、前記検出用受光部に向け入射光を広げて出射することを特徴とする、請求項1に記載の光受信器。
【請求項8】
前記分岐領域は、フレネルレンズで構成されることを特徴とする、請求項7に記載の光受信器。
【請求項9】
前記分岐領域は、回折レンズで構成されることを特徴とする、請求項7に記載の光受信器。
【請求項10】
前記検出用受光部は、前記信号用受光部と同一基板上に作成されていることを特徴とする、請求項1に記載の光受信器。
【請求項11】
前記信号用受光部が前記透過光を光電気変換した信号に基づいて、前記透過光の受信強度を示す受信用強度信号を出力する受信回路部をさらに備え、
前記光軸調整部は、前記光軸検出信号、及び前記受信用強度信号に基づいて、光軸調整を行うことを特徴とする、請求項1に記載の光受信器。
【請求項12】
前記光軸調整部は、
前記受信用強度信号が第1のしきい値よりも大きく、かつ前記光軸検出信号が第2のしきい値よりも小さいという第1の条件を満たす場合に光軸を維持し、
前記第1の条件を満たさない場合に、前記受信用強度信号が前記第1のしきい値よりも大きく、かつ前記光軸検出信号が前記第2のしきい値よりも大きいという第2の条件を満たすか否かを判定し、前記第2の条件を満たす場合に、光軸調整の変化幅を小さくして光軸調整を行い、
前記第2の条件を満たさない場合に、前記受信用強度信号が前記第1のしきい値よりも小さく、かつ前記光軸検出信号が前記第2のしきい値よりも大きいという第3の条件を満たすか否かを判定し、前記第3の条件を満たす場合に、光軸調整の変化幅を中程度にして光軸調整を行い、
前記第3の条件を満たさない場合に、前記光軸調整の変化幅を大きくして、光軸調整可能な全方位に光軸検索を行い、その際に前記受信用強度信号が前記第1のしきい値よりも大きいか、あるいは前記光軸検出信号が前記第2のしきい値よりも大きいという第4の条件を満たすか否かを判定し、前記第4の条件を満たす場合に、前記第1の条件を満たすか否かを再度判定し、
前記第4の条件を満たさない場合に、光軸調整を中断することを特徴とする、請求項11に記載の光受信器。
【請求項13】
前記光軸調整部は、
前記光軸検出信号が所定のしきい値よりも大きいという第1の条件を満たす場合に、前記光軸検出信号に基づいて光軸を調整し、
前記第1の条件を満たさない場合に、前記受信用強度信号が、前記信号用受光部が誤りなく通信可能な最小受信信号強度よりも大きいという第2の条件を満たすか否かを判定し、前記第2の条件を満たす場合に、光軸を維持し、
前記第2の満たさない場合に、光軸調整可能な全方位に光軸検索を行い、その際に前記光軸検出信号が前記所定のしきい値よりも大きいという第3の条件を満たすか否かを判定し、前記第3の条件を満たす場合に、前記光軸検出信号に基づいて光軸を調整し、
前記第3の条件を満たさない場合に、光軸調整を中断することを特徴とする、請求項11に記載の光受信器。
【請求項14】
空間を媒体に伝送された光信号を受信する光受信器が実行する光受信方法であって、
入射された前記光信号を集光する集光ステップと、
前記集光された光信号のうち、光軸と一致した光信号を透過光として透過し、光軸と一致しなかった光信号を分岐光として分岐するステップと、
前記透過光を受光し、光電気変換する信号用受光ステップと、
前記分岐光を受光し、光電気変換することで前記分岐光の強度を示す検出用強度信号を出力する検出用受光ステップと、
前記検出用強度信号に基づき光軸ずれを検出し、光軸検出信号を出力する光軸検出ステップと、
前記光軸検出信号に基づき光軸調整を行う光軸調整ステップとを備える、方法。
【請求項15】
空間を媒体に伝送された光信号を受信する光受信器が実行する光軸ずれ検出方法であって、
入射された前記光信号を集光する集光ステップと、
前記集光された光信号のうち、光軸と一致した光信号を透過光として透過し、光軸ずれによって生じる漏れ光を分岐光として分岐するステップと、
前記透過光を受光し、光電気変換する信号用受光ステップと、
前記分岐光を受光し、光電気変換することで前記分岐光の強度を示す検出用強度信号を出力する検出用受光ステップと、
前記検出用強度信号に基づき光軸ずれを検出し、光軸検出信号を出力する光軸検出ステップとを備える、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−318741(P2007−318741A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115748(P2007−115748)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】