説明

光受信器

【課題】複数のレンズ及び複数のミラーを含む光受信器において、受光角を広げるために、レンズ及びミラーの数を増やすことは、コストアップに繋がる。また、光受信器を組み立てる際に、レンズとミラーとの組み合わせ毎に光軸調整を行う必要があるので、光受信器の組立が煩雑であった。
【解決手段】受光素子120は、第2レンズ面102と、焦点Fp1との間に配置される。また、受光素子120の受光面121に直接入射しない光は、ミラー130及び反射部110によって反射された後に、受光面121に入射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信器に関し、より特定的には、空間を伝送された光信号を受信する光受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信端末の設置の自由度を増すために、ケーブル配線の不要な無線伝送方式が盛んに採用されている。例えば、無線伝送方式が採用された機器として、搬送波として2.4/5.0GHz帯の電波を用いる無線LAN端末等が広く普及している。
【0003】
無線伝送方式には、ケーブル配線が不要であるというメリットがある反面、電波漏洩によるチャネル間干渉やセキュリティ低下、伝送速度の限界(数10Mbps)等のデメリットもある。
【0004】
そこで、例えば赤外線のように、電波に比べて様々な利点のある光を利用する光空間伝送方式が注目され始めている。搬送波に光を利用するメリットとして、光の直進性/遮光性によるセキュリティの向上、光搬送波が有する広帯域性を利用した高速伝送の可能性などが挙げられる。ただし、光搬送波を利用する通信機器において、光の直進性のため、送信機及び受信器の各々を、光空間伝送が可能な程度に対向させて設置する必要がある。したがって、送信機及び受信器の設置の自由度を高めるためには、光受信器の受光角の範囲が広いことが好ましい。
【0005】
従来、光受信器の受光角範囲を拡大するために、光受信器自体を移動自在にしたり、レンズや受光素子のような構成部品の一部を移動自在にしたりすることによって、光信号に対する光受信器の光軸を調整する機械的方法と、高開口数のレンズを使用する等、光学部品を工夫する光学的方法とが知られている。しかしながら、機械的方法においては、光受信器全体または一部の構成部品を動かすために、モーター等の機構部品や、移動量を制御する回路等の周辺部品が必要であるため、光受信器のサイズが増加し、また、光受信器を製造するためのコストアップを招く。したがって、受光角が広く、効率的に信号光を受光することができる光学系が求められている。
【0006】
例えば、受光効率を維持しつつ、受光角の範囲を広げるために、複数のレンズとミラーとを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図8は、特許文献1に記載されている従来の光受信器の概略構成を示す図である。
【0008】
図8に示される光受信器は、受光素子800と、第1の集光レンズ810と、第2の集光レンズ811と、第3の集光レンズ812と、反射鏡820及び821とから構成されている。
【0009】
第1の集光レンズ810は、受光素子800の受光面と対向し、かつ、その焦点が受光素子800の受光面の中心に一致するように配置されている。
【0010】
第2の集光レンズ811は、第1の集光レンズ810に隣接し、かつ、その中心軸に直交する平面が、第1の集光レンズ810の中心軸と直交する平面から角度A1だけ傾斜するように配置されている。
【0011】
同様に、第3の集光レンズ812は、第1の集光レンズ810に隣接し、かつ、その中心軸に直交する平面が、第1の集光レンズ810の中心軸と直交する平面から角度A1だけ傾斜するように配置されている。
【0012】
また、反射鏡820は、第2の集光レンズ811から出射された光が受光素子800の受光面の中心上で焦点を結ぶように配置されている。同様に、反射鏡821は、第3の集光レンズ812から出射された光が受光素子800の受光面の中心上で焦点を結ぶように配置されている。
【0013】
図8に示される光受信器に、第1の集光レンズ810の中心軸からとは異なる光軸を有する光が入射した場合、入射光は、第2の集光レンズ811または第3の集光レンズ812のいずれか一方によって集光された後、反射鏡820または821のいずれかによって受光素子800へと反射される。
【特許文献1】実開平5−40836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のように、特許文献1に記載されている光受信器は、複数の集光レンズと、複数のミラーとの組み合わせによって、光受信器の受光角を広げることができる。
【0015】
しかしながら、光受信器を構成するために、複数のレンズ及び複数のミラーを用いることは、コストアップに繋がるという問題がある。また、複数のレンズ及び複数のミラーを有する光受信器を組み立てる際に、レンズとミラーの組み合わせ毎に光軸を調整する必要があるので、光受信器の組立が煩雑であるという問題もある。
【0016】
それ故に、本発明は、受光角の範囲が広く、かつ、高い結合効率を実現することができ、更に、簡易な構成を有する光受信器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る光受信器は、第1のレンズ面と第2のレンズ面とを有し、第1のレンズ面から入射した光を第2のレンズ面から出射するレンズと、レンズの焦点と、第2のレンズ面との間に配置される受光素子と、第2のレンズ面から出射された光の一部を第2のレンズ面へと反射する第1の反射部材と、受光素子と第2のレンズ面との間に配置され、焦点側から照射される光の一部を反射する第2の反射部材とを備える。
【0018】
このような構成によれば、受光素子と第2のレンズ面と距離がレンズの焦点距離より小さくなるため、受光素子は、広い範囲の入射光を受光することができる。また、第1及び第2の反射部によって、一旦受光素子から外れた入射光の一部が受光素子に集光されるので、受光効率が向上する。
【0019】
この場合、第1の反射部材は、受光素子の外周を取り囲むように環状に形成されることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、受光素子と第1の反射部材とをほぼ同一面上に配置することができるので、光受信器全体の厚みを小さくすることができる。
【0021】
また、本発明に係る光受信器において、第2の反射部材は、第2のレンズ面上に形成されても良い。
【0022】
このような構成によれば、第2の反射部材は、レンズと一体的に形成されるので、構成部品の数を少なくすることにより、光受信器の構成を更に簡単にすることができる。
【0023】
この場合、第2の反射部材は、第2のレンズ面のフレネル反射を利用して照射された光を反射しても良い。
【0024】
このような構成によれば、レンズ表面に特別な加工をする必要がなく、更に簡単な構成で反射面を実現することができる。
【0025】
あるいは、第2の反射部材の表面には、誘電体多層膜が形成されても良い。
【0026】
このような構成によれば、誘電体多層膜によって反射面が形成されるので、誘電体多層膜の特性を利用して、特定の波長に対してのみ反射率を有する第2の反射部材を実現することができる
【0027】
あるいは、第2の反射部材の表面には、金属膜が形成されても良い。
【0028】
このような構成によれば、金属膜によって反射面が形成されるので、反射率の高い第2の反射部材を形成することができる。
【0029】
また、光受信器は、第1のレンズ面と、第2のレンズ面の露出部分とに形成される反射防止膜を更に備えても良い。
【0030】
このような構成によれば、第2のレンズ面の露出部分における反射が防止されるので、第2のレンズ面と第1反射部材との間において生じる迷光を低減することができる。
【0031】
また、本発明に係る光受信器において、第2の反射部材は、第2のレンズ面から出射された光の少なくとも一部を透過するハーフミラーを含んでも良い。
【0032】
このような構成によれば、第2のレンズ面からの出射光は、ハーフミラーを透過することができるので、受光素子の受光効率を向上させることができる。
【0033】
この場合、第2の反射部材は、その表面のフレネル反射を利用して照射された光を反射しても良い。
【0034】
このような構成によれば、第2の反射部材の表面に特別な加工をする必要がないので、更に簡単な構成で反射面を実現することができる。
【0035】
あるいは、第2の反射部材の表面には、誘電体多層膜が形成されても良い。
【0036】
このような構成によれば、誘電体多層膜によって反射面が形成されるので、誘電体多層膜の特性を利用して、特定の波長に対してのみ反射率を有する第2の反射部材を実現することができる。
【0037】
あるいは、第2の反射部材の表面には、金属膜が形成されても良い。
【0038】
このような構成によれば、金属膜によって反射面が形成されるので、反射率の高い第2の反射部材を形成することができる。
【0039】
また、光受信器がハーフミラーを含む第1反射部材を有する場合、第1及び第2レンズ面に形成される反射防止膜を更に備えても良い。
【0040】
このような構成によれば、第2のレンズ面における反射が防止されるので、第2のレンズ面と第1反射部材との間において生じる迷光を低減することができる。
【0041】
更に、第2の反射部材は、その中心軸がレンズの中心軸とほぼ一致するように配置されても良い。
【0042】
このような構成によれば、レンズの中心軸に直行する方向において、受光角の変動を抑制することが可能となる。
【0043】
更に、第2の反射部材は、入射瞳の形状とほぼ相似するように形成されても良い。
【0044】
このような構成によれば、レンズの中心軸に直交する方向において、受光効率の変動を抑えることが出来る。
【0045】
また、第2の反射部材は、その外周及び内周の形状が入射瞳の形状とほぼ相似するように環状に形成されても良い。
【0046】
このような構成によれば、第2のレンズ面から出射された光の一部が第2の反射部材の中央部を通過するため、第2のレンズ面の中心付近から出射される光の量を増加させることができる。
【発明の効果】
【0047】
受光素子をレンズの焦点とレンズとの間に配置することによって、受光角の範囲を広くすることができる。また、受光面から外れた光は、第1及び第2の反射部材で反射された後に、受光面に入射するので、受光効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光受信器の構成を示す模式図である。
【0049】
光受信器1は、第1のレンズ面101及び第2のレンズ面102を有するレンズ100と、第2のレンズ面102上に形成された反射部110と、受光素子120と、ミラー130と、レンズ100と、受光素子120と、ミラー130とを保持する枠体160とを備える。
【0050】
レンズ100は、第1のレンズ面101が凸形状を有し、第2のレンズ面102が平面形状を有する平凸型の集光レンズである。レンズ100は、光送信器(図示せず)から送信された光を第1のレンズ面101で受光し、受光した光を第2のレンズ面102から出射する。
【0051】
レンズ100の表面には、第1のレンズ面101と、第2のレンズ面102の露出部分(すなわち、第2のレンズ面102のうち、反射部110が形成されていない部分)を覆うように、反射防止膜(図示せず)が形成されている。反射防止膜は、例えば、誘電体多層膜によって形成される。
【0052】
反射部110は、レンズ100の第2レンズ面102上に形成されている。反射部110は、第2のレンズ面102におけるフレネル反射を利用して、レンズ100の焦点Fp側から照射された光の一部を反射する。反射部110の露出面の反射率は、反射面上の各位置においてほぼ一定である。また、本実施形態においては、反射部110は、その中心軸が、レンズ100の中心軸Aとほぼ一致するように配置されている。更に、反射部110は、入射瞳の形状とほぼ相似する形状を有するように形成されている。
【0053】
受光素子120は、レンズ100の焦点Fpと第2のレンズ面102との間において、その受光面121が第2のレンズ面と対向するように配置されている。
【0054】
ミラー130は、レンズ100の焦点Fp1と第2のレンズ面102との間において、その反射面が第2のレンズ面102と対向するように配置されている。ミラー130は、第2のレンズ面102から出射された光の一部を第2のレンズ面102へと反射する。特に、本実施形態においては、ミラー130は、受光素子120の外周を取り囲むように、環状に形成されている。
【0055】
尚、本実施形態においては、ミラー130が第1の反射部材に相当し、反射部110が第2の反射部材に相当する。
【0056】
図2は、図1に示される光受信器の光線図である。
【0057】
レンズ100の第2のレンズ面102から出射された光の一部は、受光素子120の受光面121に直接入射するが、出射光の他の一部は、受光面121から外れる。しかしながら、図2に示されるように、受光面121から外れた光の一部は、ミラー130と反射部110とによって順に反射されるので、受光面121に入射することができる。
【0058】
尚、ミラー130によって、反射部110ではなく、第2のレンズ面102に反射された光の一部は、レンズ100を通過して、第1のレンズ面101から放出される。同様に、ミラー130及び反射部110によって反射された後、受光面121に到達することなく、再度ミラー130によって第2のレンズ面102へと反射された一部の光は、第1のレンズ面101から放出される。
【0059】
図3は、図1に示される光受信器について、レンズの中心軸に対する入射光の角度と、受光素子の受光強度との関係を測定した結果を示す図である。また、図4は、参考例として、図1に示されるレンズと受光素子のみを備える光受信器について、レンズの中心軸に対する入射光の角度と、受光素子の受光強度との関係を測定した結果を示す図である。
【0060】
図3及び4において、横軸は、レンズ100の中心軸Aに対する入射光の主光線角度θ(°)を示し、縦軸は、受光素子120の出力電圧に基づいて算出される受光強度を示す図である。
【0061】
ここで、使用されたレンズ100及びミラー130の特性は、次の通りである。
<レンズ100> レンズ径Φ:15mm、第1のレンズ面の形状:曲率半径8.5mmの球面、第2のレンズ面102の形状:平面、焦点距離f1:16.8mm
<ミラー130> 反射面形状:非球面
【0062】
図3及び図4の測定結果を比較すると、図3に示される受光強度は、レンズ100の中心軸Aに対する入射光の角度が−7°〜+7°の範囲で、図4に示される受光強度より増加している。本実施形態に係る光受信器の受光強度が増加しているのは、受光素子120の受光面121から外れた光が、ミラー130及び反射部110によって反射された後、受光面121に入射するためである。
【0063】
以上説明したように、一旦受光素子120の受光面121から外れた光の一部は、ミラー130と反射部110とによって順に反射された後、受光面121に入射することができる。また、実施の形態1に係る光受信器1において、レンズから出射された光は、必ずしも受光面121上で結像する必要がない。したがって、受光素子120を第2のレンズ面120と焦点Fp1との間に配置することによって、受光角を広くすることができる。受光素子120及びミラー130は、所望の受光強度を考慮して、第2のレンズ面102と、レンズ100の焦点Fp1との間に配置されていれば良い。
【0064】
したがって、実施の形態1に係る光受信器1によれば、簡易な構成によって、光受信器1の受光角度を広くし、かつ、光送信器との高い結合効率を実現することが可能となる。
【0065】
尚、上記の実施の形態1では、光受信器1は、平凸形状を有するレンズ100を備えているが、他の形状を有するレンズを備えていても良い。すなわち、第2のレンズ面102の形状は、必ずしも平面状である必要はなく、凸型または凹型であっても良い。特に、第2のレンズ面102の形状が凸型の場合、レンズの開口数が大きくなるため、更に受光角の範囲が拡大することが期待される。
【0066】
また、上記の第1の実施形態において、反射部110は、その外周及び内周の形状が入射瞳の形状とほぼ相似するように環状に形成されても良い。この場合、第2のレンズ面102の中心付近から出射される光は、反射部の中央部を通過して、受光素子の受光面に入射するので、受光素子120の受光面121に直接入射する光を増加させることができる。
【0067】
更に、第2のレンズ面102が曲面状に形成される場合、反射部110の露出面の曲率は、第2のレンズ面102の曲率と一致しても良いし、第2のレンズ面102の曲率と相違しても良い。反射部110の露出面の曲率を調整することによって、受光素子120の受光面121への集光効率を更に向上させることが可能である。
【0068】
更に、上記の実施の形態1では、反射部110は、レンズ100の材質と、レンズ100外方の空間との間のフレネル反射を利用して光を反射するように形成されているが、必ずしも、フレネル反射を利用する必要はない。例えば、反射部110の露出面上に、誘電体多層膜が更に形成されていれば、誘電体多層膜の特性に応じて、信号光の反射率や、信号光とは異なる波長を有する光の反射率を制御することが可能となる。また、反射部110の露出面上に、金属膜が形成されていれば、反射部110の反射率を高めることが可能となる。
【0069】
更に、上記の実施の形態1では、反射部110は、その反射面上の各位置において、反射率が一定となるように形成されているが、反射面上の各位置において、反射率が異なっていても良い。反射面上の位置に応じて、反射部の反射率が相違する場合、安定した反射特性を得るために、同一の反射率を有する位置を結ぶ曲線の形状が反射部の外形とほぼ相似することが好ましい。
【0070】
更に、上記の実施の形態1では、ミラー130の反射面は、平面形状を有しているが、平面以外の形状を有していても良い。例えば、ミラー130は、凹面または凸面を有していても良い。また、ミラー130の反射面は、球面形状であっても良いし、非球面形状であっても良い。ミラー130の反射面形状を変化することによって、反射部110へと反射する光の量を制御することが可能となる。
【0071】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2に係る光受信器の構成を示す模式図である。
【0072】
以下においては、実施の形態2に係る光受信器2と、実施の形態1に係るものとの相違点を中心に説明する。
【0073】
レンズ140は、第1のレンズ面141が凸形状を有し、第2のレンズ面142が平面形状を有する平凸型の集光レンズである。レンズ100は、光送信器(図示せず)から送信された光を第1のレンズ面141で受光し、受光した光を第2のレンズ面142から出射する。
【0074】
レンズ140の表面には、第1のレンズ面141及び第2のレンズ面142の全体を覆うように、反射防止膜(図示せず)が形成されている。反射防止膜は、例えば、誘電体多層膜によって形成される。
【0075】
ハーフミラー150は、レンズ140の焦点Fp2と第2のレンズ面142との間において、その反射面が第2のレンズ面102と対向するように配置されている。ハーフミラー150は、第2のレンズ面142から出射された光の少なくとも一部を透過する。また、ハーフミラー150の反射面上には、誘電体多層膜が形成されており、焦点Fp2側から照射された光を反射する。ハーフミラー150の反射率は、その反射面上の各位置においてほぼ一定である。
【0076】
また、本実施の形態においては、ハーフミラー150は、その中心軸が、レンズ140の中心軸Bとほぼ一致するように配置されている。更に、ハーフミラー150は、入射瞳の形状とほぼ相似する形状を有するように形成されている。
【0077】
尚、本実施形態においては、ミラー130が第1の反射部材に相当し、ハーフミラー150が第2の反射部材に相当する。また、図5においては、枠体の記載が省略されているが、枠体は、レンズ140と、受光素子120と、ミラー130と、ハーフミラー150とを保持することができるように形成されていれば良い。
【0078】
レンズ140の第2のレンズ面142から出射された光の一部は、受光素子120の受光面121に直接入射し、出射光の他の一部は、ハーフミラー150を透過して受光面121に直接入射する。一旦受光面121から外れた光の一部は、ミラー130とハーフミラー150とによって順に反射された後、受光面121に入射する。
【0079】
図6は、図5に示される光受信器について、レンズの中心軸に対する入射光の角度と、受光素子の受光強度との関係を測定した結果を示す図である。また、図7は、参考例として、図5に示されるレンズと受光素子のみを備える光受信器について、レンズの中心軸に対する入射光の角度と、受光素子の受光強度との関係を測定した結果を示す図である。
【0080】
図6及び7において、横軸は、レンズ140の中心軸Bに対する入射光の主光線角度θ(°)を示し、縦軸は、受光素子120の出力電圧に基づいて算出される受光強度を示す図である。
【0081】
ここで、使用された各部材の寸法は、次の通りである。
<レンズ140> レンズ径Φ:15mm、第1のレンズ面141の形状:曲率半径10.38mmの球面、第2のレンズ面142の形状:平面、焦点距離f2:20mm
<ハーフミラー150> 外形Φ:4.0mm
<受光素子120> 受光面の直径Φ:1.5mm
<ミラー130> 反射面形状:非球面
【0082】
図6及び図7の測定結果を比較すると、図6に示される受光強度は、レンズ140の中心軸Bに対する入射光の角度が−10°〜+10°の範囲で、図7に示される受光強度より増加している。本実施形態に係る光受信器の受光強度が増加しているのは、受光素子120の受光面121から外れた光が、ミラー130及びハーフミラー150によって反射された後、受光面121に入射するためである。
【0083】
以上説明したように、一旦受光素子120の受光面121から外れた光の一部は、ミラー130とハーフミラー150とによって順に反射された後、受光面121に入射することができる。また、実施の形態2に係る光受信器2において、レンズから出射された光は、必ずしも受光面121上で結像する必要がない。したがって、受光素子120を第2のレンズ面142と焦点Fp2との間に配置することによって、受光角の範囲を広くすることができる。
【0084】
したがって、実施の形態2に係る光受信器2によれば、簡易な構成によって、光受信器2の受光角度を広くし、かつ、光送信器との高い結合効率を実現することが可能となる。
【0085】
尚、上記の実施の形態2では、光受信器2は、平凸形状を有するレンズ140を備えているが、他の形状を有するレンズを備えていても良い。すなわち、第2のレンズ面142の形状は、必ずしも平面状である必要はなく、凸型または凹型であっても良い。特に、第2のレンズ面142の形状が凸型の場合、レンズの開口数が大きくなるため、更に受光角の範囲が拡大することが期待される。
【0086】
また、上記の実施の形態2において、ハーフミラー150は、その外周及び内周の形状が入射瞳の形状とほぼ相似するように環状に形成されても良い。この場合、第2のレンズ面142の中心付近から出射される光は、ハーフミラー150の中央部を通過して、受光素子120の受光面121に入射するので、受光素子120の受光面121に直接入射する光を増加させることができる。
【0087】
更に、上記の実施の形態2では、ハーフミラー150は、誘電体多層膜を有しているが、フレネル反射を利用して光を反射しても良い。また、ハーフミラー150の反射面上に、金属膜が形成されていれば、ハーフミラー150の反射率を高めることが可能となる。
【0088】
更に、上記の実施の形態2では、ハーフミラー150は、その反射面上の各位置において、反射率が一定となるように形成されているが、反射面上の各位置において、反射率が異なっていても良い。反射面上の位置に応じて、反射部の反射率が相違する場合、安定した反射特性を得るために、同一の反射率を有する位置を結ぶ曲線の形状が反射部の外形とほぼ相似することが好ましい。
【0089】
更に、上記の実施の形態2では、ミラー130の反射面は、平面形状を有しているが、平面以外の形状を有していても良い。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、簡易な構成によって光受信器の受光効率を向上させることができるので、例えば、光空間伝送装置等の受光電力を向上させるために有用である。また、本発明は、例えば、光センサに含まれる光受信器等にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光受信器の構成を示す模式図
【図2】図1に示される光受信器の光線図
【図3】図1に示される光受信器について、レンズの中心軸に対する入射光の角度と、受光素子の受光強度との関係を測定した結果を示す図
【図4】図1に示されるレンズと受光素子のみを備える光受信器について、レンズの中心軸に対する入射光の角度と、受光素子の受光強度との関係を測定した結果を示す図
【図5】本発明の実施の形態2に係る光受信器の構成を示す模式図
【図6】図5に示される光受信器について、レンズの中心軸に対する入射光の角度と、受光素子の受光強度との関係を測定した結果を示す図
【図7】図5に示されるレンズと受光素子のみを備える光受信器について、レンズの中心軸に対する入射光の角度と、受光素子の受光強度との関係を測定した結果を示す図
【図8】従来の光受信器の概略構成を示す図
【符号の説明】
【0092】
1、2 光受信機
100、140 レンズ
120 受光素子
121 受光面
130 ミラー
150 ハーフミラー
101、141 第1のレンズ面
102、142 第2のレンズ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間中を伝送された光信号を受信する光受信器であって、
第1のレンズ面と第2のレンズ面とを有し、前記第1のレンズ面から入射した光を前記第2のレンズ面から出射するレンズと、
前記レンズの焦点と、前記第2のレンズ面との間に配置される受光素子と、
前記第2のレンズ面から出射された光の一部を前記第2のレンズ面へと反射する第1の反射部材と、
前記受光素子と前記第2のレンズ面との間に配置され、前記焦点側から照射される光の一部を反射する第2の反射部材とを備える、光受信器。
【請求項2】
前記第1の反射部材は、前記受光素子の外周を取り囲むように環状に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の光受信器。
【請求項3】
前記第2の反射部材は、前記第2のレンズ面上に形成されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の光受信器。
【請求項4】
前記第2の反射部材は、前記第2のレンズ面のフレネル反射を利用して照射された光を反射することを特徴とする、請求項3に記載の光受信器。
【請求項5】
前記第2の反射部材の表面に形成される誘電体多層膜を更に備える、請求項3に記載の光受信器。
【請求項6】
前記第2の反射部材の表面に形成される金属膜を更に備える、請求項3に記載の光受信器。
【請求項7】
前記第1のレンズ面と、前記第2のレンズ面の露出部分とに形成される反射防止膜を更に備える、請求項3から請求項6のいずれかに記載の光受信器。
【請求項8】
前記第2の反射部材は、前記第2のレンズ面から出射された光の少なくとも一部を透過するハーフミラーを含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の光受信器。
【請求項9】
前記第2の反射部材は、その表面のフレネル反射を利用して照射された光を反射することを特徴とする、請求項8に記載の光受信器。
【請求項10】
前記第2の反射部材の表面に形成される誘電体多層膜を更に備える、請求項8に記載の光受信器。
【請求項11】
前記第2の反射部材の表面に形成される金属膜を更に備える、請求項8に記載の光受信器。
【請求項12】
前記第1及び第2レンズ面に形成される反射防止膜を更に備える、請求項8から請求項11のいずれかに記載の光受信器。
【請求項13】
前記第2の反射部材は、その中心軸が前記レンズの中心軸とほぼ一致するように配置されることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれかに記載の光受信器。
【請求項14】
前記第2の反射部材は、入射瞳の形状とほぼ相似するように形成されることを特徴とする、請求項1から請求項13のいずれかに記載の光受信器。
【請求項15】
前記第2の反射部材は、その外周及び内周の形状が入射瞳の形状とほぼ相似するように環状に形成されることを特徴とする、請求項1から請求項14のいずれかに記載の光受信器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−228250(P2007−228250A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47006(P2006−47006)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】