説明

光合成ユニット装置

【課題】光栄養生物(独立栄養微生物)であるシアノバクテリア(微細藻類)の培養を効率よく行う、食料・エネルギーの蓄積システムを提供する。
【解決手段】シアノバクテリアを培養する数十リットルの透明容器(金網入ガラス等)において、培養槽(セル)の構造は上部鍔付大径円筒部1aと球体形状の胴体部1b、これと小径の筒状の下部1cが中心線上に接続されている形状で、この培養セルを上中下三段構成ユニットとし、シアノバクテリアが小径の筒状部に集合濃縮したものを、可動弁4を開いて上段から中段へ中段から下段へ所定量だけ流下させ、シアノバクテリアの濃度を上げる。この最下段のセルの下端部に切換えシリンダー弁6を設け、シアノバクテリアが小径の筒状に集合濃縮したものを,メッシュのセットされたカップ7で受取り分離収穫する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水圏における微細生物のシアノバクテリアは、光量子エネルギーの分子軌道への転化システムが効率良く安定している。このシアノバクテリアを含む微細生物を、最適条件で最大増殖速度に誘導し、光合成性能を発揮させながら、これを維持できるようにした小型でコンパクトにまとまった還元型培養セルユニット装置を構築させる。
【0002】
無機物質と光エネルギーより増殖生産されたシアノバクテリア(有機物質)を、簡易に分離収穫し、食品に利用できまたバイオテクノロジーによる酸化型発酵技術によって、さらに利用価値を高めながら、還元と酸化の相互共役システムを成立させる技術も可能である。
【背景技術】
【0003】
背景技術を俯瞰して見た時この時空場においては、従来の技術の大半が、自己保存と自己複製と自己有利のベクトルである発エルゴン反応(ギブズエネルギーが正反応方向)に因るものであり、常に自由エネルギーの消費(酸化・発散)を伴う。酸化型技術で人間は膨張し発展してきた、未だ更なるこの傾向の技術に浸っているが、場としての制限があり、この時空場の物理的エネルギーの制約に従うことになる。今までの酸化型技術のみでは資源、食料、人口等に、限界が予測され、逆に環境汚染等となって顕現されてきた。従来の酸化型技術では、一般産業および農業基盤である土壌圏にもエネルギーの衰徴が進行する。現在、一部、還元型技術もあるが総合的な科学技術の急速な進展を汲み取っているとは言い難い。これに対し酸素発生型シアノバクテリアの培養は、太陽の放射する光量子エネルギーを光合成色素で吸収し、分子軌道に転化できる。まず、この様な自由エネルギーを獲得する還元型技術が必要である。
【0004】
【特許文献1】特開2001−231538
【特許文献2】特開平10−108565
【特許文献3】特開2003−222
【特許文献4】特開2003−24043
【特許文献5】特開2005−40035
【0005】
還元型技術の背景技術として、上記の特許出願の発明が有る。特許文献1〜5と、本発明に類似性の有るものとの違いを説明する。
特許文献1では、光分散担体が配置された上槽と光分散担体の無い下槽に隔てる貫通のスリットのある固定プレートと開閉可能な移動プレートによって藻体を分離する機構と、スパージヤで通気によって培養液を混合攪拌し、下降流によって藻体を下槽に自然沈降させ、藻体を分離することを特徴とする。
本発明は、流動培養であり、常にセル内を循環させるので、上槽・下槽の明暗部は不要である。さらには、軸流により発生する渦流(横循環流)によって流体力学的にセル中央下部に藻体を集合させる。さらに三段構成のセルは、藻体濃縮と藻体濃度の臨界を予防するため、上段・中段セルは連接ドレンによって、下段セルに流下させる。水平方向の移動プレートによる分離機構(スリット)は使用せず,下段セル下部のシリンダーに集合濃縮させ、これを切欠きプランジャーの180°回転とストローク往復によって圧送分離、収穫する。このため、スリットと液送ポンプは不要である。
特許文献2は、培養槽に内部照射の発光体を設置し、槽下部の藻体分離部が漏斗状であり、培養部の培養液攪拌と槽下の藻体分離部の藻体分離を通気ガス流量調節によりコントロールすることを特徴とする。
この場合は、対流による流動培養ができない。本発明は、球体セルにおける流動培養を行う。光合成による分裂増殖は対流(縦循環流)で、藻体の集合濃縮は渦流で行う。また、光量子は、太陽光及び人工光の外部照射で十分でありできる限り外部の、つまり太陽からのエネルギー獲得に意義がある。またガス置換翼と流動スクリューによって、確実に光合成を調速リードさせる。
特許文献3は、培養槽の溶存酸素濃度を大きくするためのディスクタービン翼を特徴とするが、本発明において、シアノバクテリアは、酸素発生型還元菌であるので、酸素の余分な供給そのものが不要である。
特許文献4は投入薬液と圧縮空気をノーズル先端から攪拌翼に投入することを特徴とするが、本発明では、無機塩類の注入は、正確な定量点滴注入法と、ガス置換のための、穴明スプーン翼と軸流スクリューによって垂直上下方向の対流を、球形体セル内で円周流動させ、この対流による流動培養に投入を行う。
特許文献5はヘッドタンクとポンプによる強制オーバーフローと密閉型水平培養槽を特徴とするが、本発明では、培養セルは球形であり、開放型である。
オーバーフローは、セルの基準水平面の維持のためのオーバーフローである。ヘッドタンクは、補充液定量点滴注入のためのタンクである。
上記記載の特許文献のみならず、光量子エネルギーの獲得と固定確率が最重要であるとした場合、本発明は、外部エネルギー(太陽光)の獲得と固定のみが、工業生産であれ消費生活であれ、エネルギーの基礎ベースとして先ず、必要であると認識し、理解して装置を開発した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽の背景放射による光量子エネルギーを、地球で保存するには還元型生物の光合成に依存しなければならない。
シアノバクテリアの色素多チャンネル光学系とこれに対応する合成系は、この分子軌道への転化効率が優れている。このシアノバクテリアの培養増殖を最適条件で高速分裂を高効率で維持するには、光学的、生化学的にも安定した培養セルと光量子の収率の改善と効果がもたらされる装置が、小型でコンパクトにユニット化され、平面上ばかりではなく空間的、立体的にも設置できるように、意図するべきと思われる。
【0007】
この課題を解決するには、物理、化学、生物学的基礎理論と知見が必要であり、しかも現在、食糧、エネルギー、環境、人口問題の人間活動に適合させるためには、合理的集約産業や農業ばかりではなく、各個人、家庭の平面とビル型の空間、立体を樹形とみなして、普遍化配置できるユニット装置が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
エネルギーを物理的概念の方向から観た場合、生命もエネルギー機関の一種として位置付けすることができる。したがって、このエネルギーの獲得が必要条件となってくる。このための手段として、シアノバクテリアの光合成システムを保存し、増殖させるためには、意識的に技術を集約し、開発した。
【0009】
実用化の一つとしてこのシアノバクテリアを透明球形のガラス(金網入ガラス)セル構造体で流動培養する。容量は20L〜30Lでこれを植物の一枚の大きな葉とみなし、光合成反応を行わせる。この培養セルを上中下三段構成ユニットとし、定量点滴注入法と回転型気液混合、軸流スクリューによる対流(縦循環流)で流動培養し、これによって分裂増殖したシアノバクテリアを渦流(横循環流)によって小径の筒状部に集合濃縮させたものを上段・中段同軸連結可動弁を開き、上段から中段へ、中段から下段へ所定量だけ流下させることによってシアノバクテリアの濃度を上げる。この最下段のセルの下端部に切換えシリンダー弁を設け、シアノバクテリアが小径の筒状に集合濃縮したものをシリンダーに吸引、濃縮確保させ、これに弁を設け、所定の時間周期で取り出し方向に切換え開口して、プランジャー駆動力で圧送して,メッシュのセットされたカップで受取り分離収穫する。これらの構造と効果による最適増殖濃度値を平衡に維持させる制御機構とこのコントロール部を装備させた。
【発明の効果】
【0010】
光合成システムを光量子エネルギーの分子軌道への固定確率(効率)として見た場合、単細胞生物、微細藻類のシアノバクテリアでは分裂速度と増殖数となって顕現してくる。
【0011】
透明球体形セル内の、培養液の流動である対流と渦流は単なる攪拌流ではなく、光照射と反照射、シアノバクテリア特にスピルリナの生態は浮遊形であるので、要するに光学系と合成系を考慮した秩序ある円周流動で循環し、光合成作用の詳しくは、チラコイド膜の電子伝達機構とストロマにおける生化学合成系、デンプン合成と細胞質における分解合成系(解糖系と多数の合成経路)の物理生化学的作用と概日リズムに適合させる培養液の流動性を駆使し利用した透明球体セル構造と流体力学と2段階回転翼によるガス置換と栄養塩供給による相乗効果がシアノバクテリアの光合成作用と最大増殖を誘導し、生産性効率を高める効果が現れた。
【0012】
光量子エネルギーと水(以下HOとする)、二酸化炭素(以下COとする)、無機塩類と光合成の環境としての場の条件が適合してエネルギーを獲得したら、これをさらに利用しやすい分子に変換合成させれば、食料のみならずバイオテクノロジーの技術により有機肥料またエタノール、化学製品に転換し応用すれば、ストック(化石)エネルギーの代替エネルギーとしての価値と各個人がこの水圏における生物生産と光合成を実行することによる自給自足と自己保存の精神的安定の効果も望める。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0014】
シアノバクテリア類の内、Spirulina platensis(スピルリナ)(NIES−39)(IAM M−135)の培養を行う。無機塩類栄養液組成は重曹(NaHCO)が主成分のSOT培地でpHは9.2〜10.0の強アルカリ性でコンタミなどの外来汚染を防止できる。光合成色素の吸収スペクトルは約380nm〜770nmの可視光であり、幅広い吸収スペクトルを持つので、光吸収効率が大きい太陽光下、明るい室内、また蛍光灯などの人工光源でも培養可能である。
【0015】
この還元・酸素発生型微生物を20L〜30Lの光透過性に支障のないように薄肉の透明容器(金網入ガラスまたは、外側に補強リブ付き)で培養する、培養槽(セル)の構造は、培養液の液面維持オーバーフロー用分岐管1d(図1)付き上部鍔付大径円筒部1aと球体形状の胴体部1bと、この底部球面に小径筒状の突起部1cが中心線上に接続されている形状で胴体部内面が曲面を必要とする透明で球形の培養セル構造体(図1)を形成する。
【0016】
この培養セルを4本支柱の構造体であるラック29(図2)に上・中・下三段構成し、上段セル1・中段セル2・下段セル3は対流A(図1、球状面に沿った培養槽内上下の円周流動の縦循環流を対流として説明する)、渦流B(図1、球状面に沿った培養槽内横方向の円周流動の横循環流を渦流として説明する)の流動を緩やかにつくり、上・中・下各段とも対流によって流動で培養増殖し、渦流によって集合濃縮をさせる。上段セルのシアノバクテリアが小径の筒状部1c内に集合濃縮したものをソレノイド26で可動弁4を開き、筒状部容量を中段のセルに所定量だけ流下させる。
なお、培養セルは、上・中・下三段構成ユニットを基本とし、上段セル数の増減は自由に選択できる。
【0017】
このようにして中段のシアノバクテリアの濃度を上げる。同様にして中段から下段に流下させ、この最下段のセルの下端部に180°回転で切換えできる切欠きプランジャー弁6b・6c(図2)を設け、シリンダーを開口させて、シアノバクテリアが小径の筒状部に集合濃縮したものをシリンダー6a(図2)に吸引集合濃縮させ、この可動弁としての切欠きプランジャー6bを180°回転させて上部の培養セル側を閉鎖し、プランジャーを駆動して下側に流下させるか,プランジャーで圧送し、メッシュのセットされたカップ7で受取り分離収穫する。
この切り欠きプランジャー弁6b・6cは、共に連動させてシリンダーの開閉ができ、プランジャー駆動による吸引と圧送も、手動または自動制御によって運転することができる。
【0018】
渦流によるシアノバクテリアの集合濃縮と分離法。
シアノバクテリアの光学系IIは、光照射によって水(HO)を電気分解し酸素(以下O2とする)ガスを分離させ、細胞内から細胞外に移動させる。この間O2ガスによって浮力を発生させ水面に向かって上昇し、O2ガスの気泡を開放すると水底に沈む、スピルリナにおいては各個体によって多少異なるが、約0.02〜0.04m/sの浮沈速度で移動する。また、光照射のない場合(夜間)は代謝系の合成系と細胞分裂活動のため水底に静止する。
セル内流動培養の流動様式と流速はこの生態のリズムに順応させる。光照射による光合成では緩やかな対流によって流動(流速0.02〜0.04m/s)させ、光照射の無い水底に静止する状態の時、渦流(セル最外流速は約0.6m/s以下で行う)によって集合濃縮させる。
【0019】
流動培養によるセル内円周長は約1.2m、流動速度0.03m/sの場合セル内一周は約40秒となり、光照射側時間は約20秒、反照射側時間は約20秒となる。
自動制御では、スクリュー軸はあらかじめセル軸心に対して対向角約15°(図3)の角度でモーターベースに取り付けておき、対流時(培養時)スクリュー軸捩れ角の傾きは垂直で、回転数を正回転(図3回転方向)約15rpmとし対流させ、渦流時(夜間)、スクリュー軸捩れ角の傾きは約30°でモーター取付ベースに支点を設けソレノイド30(図3)で傾きを構成させる、回転数を正回転約200rpmで渦流を発生させ培養セル全体に渦流が行き渡った時点に停止させ、待機(停止)4時間で集合濃縮させる。このインターバル駆動を3回繰り返すことによって上段より中段へ、中段より下段へ流下させる。最下段の集合分離は、一回に約50cc、光照射の無い時か、または夜間に4時間毎に一回で一日2回、シリンダーとプランジャーによって一日約100cc、メッシュカップへ移動させる。メッシュカップで固液分離されたシアノバクテリアはペースト状のものである。これをメッシュカップのまま水洗・洗浄し、水切りをしたものが生産物(ペースト状)である。
【0020】
培養液中へ空気およびCOガスを投入し溶解させながら、培養液中に光合成炭酸同化作用によって発生するOガスを抜き取り、これは、還元型微生物の場合、酸素感受性による各種酵素の不活性化の阻害を回避させるため行う。同時に新しい無機塩類栄養液の補充は、ユニット架台の上面にステンレス製のヘッドタンク10(図3)を設置し、無機塩類補充液をストックさせ、ニードルバルブ等による流量調整バルブ11とチューブ配管12によって透明ガラス製連結管13(図3)に滴下させ、管内で各滴を空気および、COガスと接触融解させる定量点滴注入法を行う。
【0021】
球形セル内全体のバクテリアにCOと無機塩類をまんべんなく供給するための機能を備えた回転型気液混合、ガス置換翼17と各セル所定の流動形態の形式が維持できるスクリュー18を、同軸上に上段位置は気液混合とガス置換用穴明スプーン翼17と下段位置には下向きの軸流発生用スクリュー18を備えた培養セルとその装置。
【0022】
回転穴明スプーン翼17の中央に補充液の供給ができるように、スプーン翼の中央から上部はU字型に切欠きをして、上部から差し込んである定量点滴テフロンチューブ14が、接触せずに回転運動ができる構造とする。スプーンの回転方向を、凹面側を進行方向に回転することによって(図3回転方向)、培養液を含み込んで凹面側の内圧を高くし、裏側(凸面側)の外圧を低くするので、スプーンに加工されている流通穴によって、液体は流速を加速して貫流する。この貫流によってスプーン後方に乱流ができ、COガスは、穴明きスプーン翼の表側(凹面側)の加圧効果によって培養液に混入される。Oガスは、培養液からスプーン裏側(凸面側)の減圧効果によって培養液から脱気されて、最終的には大気放出によってガス置換させる。
【0023】
点滴補充液は、スプーン裏側(凸面)後方の乱流によって、セル内培養液に混入できる。このスプーン翼の効果によって、造られた新しい栄養液と培養液の混入された液はただちに、スプーン翼下部の同軸に隣接設置されたスクリューの軸流に移動し、セル内流動培養に供給されながら対流となる。
【0024】
ヘッドタンク10(図3)の無機塩類補充液(栄養液、液体培地)は、定量点滴で上・中・下段セルの光合成と発散による栄養液の消耗を各セルに補填し、各セルの培養液の容量を一定に保つ。各セルの培養液の変動量が一定容量の上限を超えた場合には、セルの所定の位置に設置されたオーバーフロー用分岐管1d(図1)とオーバーフローホース8(図2)によって、上段セルより中段セルに、中段セルより下段セルに流下させ、下段セルのオーバーフロー液はオーバーフロータンク9(図2)にストックされる。
【0025】
セル内培養液は、モーター駆動による気液混合ガス置換翼とスクリューを設けて、連結管13(図3)からの補充栄養液とCOガスおよび空気C(図3)を混入させながら、かつ、球状面に沿った培養槽内上下の円周流動を対流A(図1)とし、横方向の円周流動を渦流B(図1)として循環流動させる。
【0026】
コントロールボックス28(図2)の自動制御により、これらの流動を緩やかに作り、球形セル1a,1b内に培養液を対流流動させながら、光吸収と光量調整を行い無機塩類投入とガス置換及び培養液の恒温(20℃〜40℃)の維持には、フィルムヒーター24(図3)および空調25(図4)エアコンによって保持された最適条件の20℃〜35℃で最大培養増殖速度を維持させる。また穴明スプーン翼と軸流スクリューの同軸回転の回転数の制御とON、OFFのインターバルはコントロールボックス28(図2)によって渦流の流速を変化させる。
【0027】
培養分裂増殖時は対流A(図1)でバクテリアの色素体アンテナを流動によってセルの光照射面に移動させ、光量子収率を上げて光量子を吸収させる。そして、合成系作用時にはセルの受光面の反対側の弱受光面を球面に沿って移動させる。これを概日リズムに従って、秩序よく行わせる。
【0028】
セルの底部内面は、球面になっているので、培養液の渦流B(図1)の流体力学の応用によって、流速に従って分裂増殖したバクテリアをこの球面に沿って円周流動しながら沈み込み移動させる作用が発生し、最終的には、中心線上の下端部の小径筒状部1c内に集合濃縮させる。濃縮培養液ドレン用に上、中段セルが同軸5(図2)で連結された可動弁4を設け、意図された時間間隔で動作させることができる。これは分裂増殖したシアノバクテリア濃度の臨界に達することを予防するためでもある。
【0029】
透明球形のガラスセルである根拠と利点。
透明で球形のガラスセルであれば、全球面に光量子の入射が可能である、一部分に反射板27(鏡等)を使用することによって、この反射光の利用もできる。半球面光照射の場合、セルの光照射側(表側とする)の場所領域が、光合成炭酸同化作用(明反応)側であり、反照射側(裏側とする)の場所領域が、代謝系窒素同化(暗反応)側である。
透明球形ガラスセルの表側と裏側の場所領域区分をしておき、培養液の対流による流動によって、この表・裏の場所領域の一方向の流動移動による場所替えと、循環ができる。
【0030】
この光合成による炭素同化と代謝による窒素同化の同化バランスの調節も分裂速度と増殖量を決定する要因の一つとなる。この対流の流速によって各領域滞留時間、移動時間が確保でき、この流速調節で両同化バランスと維持の調節を行うことができ、光量子エネルギーの吸収効率と同化物質の生産性を高めることができる。
【0031】
光量子エネルギーの吸収効率では、光強度は光学系では大きい方が有利であるが、合成系ではその必要はなく、長時間の連続強照射は光障害およびストレスを発生させるので、シアノバクテリアをセル内に円周流動させる対流がこの光阻害を回避予防できる。
【0032】
培養槽(セル)が透明球形のガラスセルで流動培養できる利点は、培養槽内の総べてのシアノバクテリアに培養液の軸流スクリューによるセル内対流ができ、この対流には外周と内周の流速が異なり、層流としての全体的な流動秩序も、微細な領域では相対的な流速の差異が生じているので、個々のシアノバクテリアには回転(自転)力が働き、回転(自転)する。
また大きな対流では、縦の円周回転(公転)があり循環する。上記の自転と公転によりシアノバクテリアの光色素アンテナに、光量子獲得確率を均等に配分させて、光合成を進行させてセル内全域にシアノバクテリアの均一な濃度分布を保ち得る。
【0033】
分子軌道によるπ電子雲のアンテナ。
光量子は真夏で、1mの受光面積に約380〜770nm波長(可視光)で毎秒1021個数入射している。これを効率よく受信するためのシアノバクテリアが有する光合成色素にクロロフィル(a,b,d)、カロテノイド(カロテン、キサントフィル)、フィコビリン(フィコシアニン、フィコエリスン)の波長体バンドチャンネルがあり、これらは炭素の共役二重結合となっているためπ電子雲のアンテナ指向性が生じる、シアノバクテリアの光量子収率はこのアンテナ側の受光機構と電子の存在確率に依存しているため、受光面での入射光量子の少ししか獲得できていない。この光量子収率の改善策として本発明では、流動培養の対流によるシアノバクテリア各個体の前記(0032)による自転と公転によって光量子入射光軸に対しπ電子雲アンテナの角度を回転可変させることにより光量子の入射によってπ電子雲中の電子の共鳴(電子スピン共鳴・量子収率)確率を大きくすることができる、分子軌道の遷移(分子軌道転化)確率も大きくなる。つまり、分子は基底状態から励起状態となる率が高くなり、エネルギー(ATP,NADPH)の獲得と保存も大きくなる。このエネルギーの流用と酸化によってエネルギーは常に必要に応じて供給されて、つまり、バクテリアの代謝系による多数の合成回路とヌクレオチド合成経路と、発エルゴン反応の進行がDNA自己複製プロモーターに供与されて、分裂と増殖が誘導され目的の光合成産物が増量されることになる。
【0034】
培養液の流動によって起こるシアノバクテリアの自転と公転は、光合成によるシアノバクテリアの分裂と増殖の必要条件として、シアノバクテリア細胞膜に接触する領域の栄養塩、COガスは光合成によって使用されて不足と欠乏を来すので、この部分の培養液を移動除去し、新しい補充液による必要物質の供給とガス置換を円滑に行わなければならず、培養液の流動がこれを行う。特に、光合成によって生成したOガスは速やかに細胞膜表面から除去されて、カルボキシラーゼ、還元・再生の反応群に活性酸素による酸化反応を回避することができ、細胞膜の領域に光合成による最適な分裂と増殖の必要条件を満たし、これを維持する。
【0035】
培養槽(セル)が透明で球形のガラスである理由。
太陽の光量子エネルギーのスペクトルは地球の海面で約300〜3000(nm)で水圏における微細藻類のシアノバクテリアの色素体による光学系II、Iは、吸収スペクトルが約380〜770(nm)の可視光であり、この可視光の透過が可能な材質でなければない。しかも、セル内培養液は、pH9.2〜10のアルカリ性であるので、耐薬品の物性を持つガラスが最適である。このガラスの強度の関係と培養液の流動と循環性から、セル内面は球形が適している。
【0036】
セル直径が約0.4mである理由。
培養液中のバクテリア密度と濃度が大きくなると、光量子が吸収されて、その光量子の到達深度が小さくなるので培養槽の表面から中心部までの距離寸法に制限が出てくる。よって、半径約0.2mが限界として設定した。
【0037】
球形セル容量が20L〜30Lである理由。
緯度が30度以上では、光強度は半減し、気温(室温)も変動しやすいので、セル内培養液の温度もこれに左右される。バクテリア臨界直前濃度と、光量子の到達深度0.1m〜0.15mと培養液の液温約20℃〜40℃の調整関係から容量約25L程度とした。
【0038】
培養槽が三段である根拠。
・三段以上では、ドレン弁の連結軸の軸心の調整が困難になる。
・三段1.8m以上では、高さ寸法が大きくなり、窓際に設置する場合、窓からの採光が悪くなる。
・三段以上では、ユニット高さ寸法が大きいと重心が高くなり不安定となる。
・三段以上では、補充液ヘッドタンクが高い位置になり、管理が難しくなる。
【0039】
このような構造と機能を持つ培養セルを、小スペースでコンパクトにセットした装置ユニットが、一般家庭の家屋内外19(図4、図5)の入射光のあるベランダおよび窓辺19のような適当な半日蔭の場所に設置させる。
【0040】
水圏における光合成生産物を大量生産する場合も、この小型セルユニットをビル型(マンション等)21に光合成を考慮した空間的立体配置にすると、植物(樹木等)と同じ樹形となり、光合成の生産性はさらに上がる。
【0041】
この培養装置ユニット(図2、図5、図6)の一般家庭による運転により、光量子エネルギーと無機物質から有機物質が自動的に生産され、シアノバクテリアを自家収穫することができる。
【0042】
エネルギーの蓄積システムでは、まず、光量子エネルギーの転化である還元型バイオリアクター(シアノバクテリア)19によるCC鎖である糖を基礎ベースにする有機物質(生命物質)として生産固定されたエネルギーを一部食品用、また一部は酸化型バイオリアクター20に投入し、バイオテクノロジー、解糖系と多数の合成経路による発酵過程を経由して、熱、エネルギー(エタノール等)、有機肥料、その他の有用物質に変換できる(図6)。
【0043】
また、還元型、酸化型バイオリアクターの接続システムを相互共役システムとして、温室21に同居(図4)した場合、バイオスフェアー的システムとなり、この相互共役システムに補助加担するソーラー発電22を温室の屋根に十分な隙間を取って、光量子がセルに適度に届くようにすると、シアノバクテリアは直射日光及び長時間の露光による光学反応系は合成系の速度に律速されるシステムになっているので、光照射阻害予防のため、温室の屋根および壁面は光量子が適度に入射できるように設置する。
【0044】
温室内外の電源を必要とするコントロール及び温室内の空調と、各バイオリアクターの適温を保持させ稼働を通年行えば、石油、石炭等、ストックエネルギーの補填として、太陽発の量子力学的物理量である光量子エネルギーによる環境に配慮した純粋な有機物質生産と、エネルギーの効率の良い獲得と蓄積をさせる構成システムができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
シアノバクテリアには、空中窒素の固定能があり、工業的化学肥料の製造法のように大きなエネルギー消費工程を経ず、原核生物特有のこの能力が有機肥料の生産に繋がり、この多種類の元素および分子を含む有機肥料が環境汚染をもたらさないで、植物栽培に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態による、小型透明(金網入、強化ガラス)で球体形状の水圏微細生物培養セルの縦断面図である。Aは上下(鉛直)方向の円周流動である対流(縦循環流)を示す。Bは横(水平)方向の円周流動である渦流(横循環流)を示す。
【図2】図1に示すセルの上段・中段・下段セルの三段構成と上段・中段連接ドレン、分離シリンダー、メッシュカップ、オーバーフローとオーバーフロータンクを示す、また右側の図はシリンダー部断面A―A´矢視の拡大図である。
【図3】補充液部とガス置換穴明スプーン翼と軸流スクリューの同軸回転部とこの角度変換機構である。CはCO2ガスおよび空気の流入方向を示す。
【図4】シアノバクテリアの還元バイオリアクターシステムと、酸化型バイオリアクターシステムの、温室同居と太陽光発電システムの装備された縦断面図である。
【図5】培養装置ユニットの一般家屋及びビル型家屋の設置例を示す。
【図6】還元型流動培養システムと酸化型発酵システムの接続による相互共役のブロックダイヤフラムを示す。
【符号の説明】
【0047】
1 上段培養セル
1a 鍔付大径円筒部
1b 球体形状胴体部
1c 小径筒状突起部
1d オーバーフロー用分岐管
1e 横リブ(透明ガラス)
1f 縦リブ(透明ガラス)
2 中段培養セル
3 下段培養セル
4 ドレン弁
5 連接棒
6 シリンダー
6a シリンダー
6b プランジャー1
6c プランジャー2
7 メッシュカップ(フィルター付きカップ)
8 オーバーフローホース
9 オーバーフロータンク
10 補充液タンク(ヘッドタンク)
11 流量調整バルブ
12 接続チューブ
13 連結管
14 ノーズル(テフロンチューブ)
15 ギヤードモーター
16 駆動シャフト
17 穴明スプーン翼
18 軸流スクリュー
19 ユニットシステム
20 バイオリアクター(酸化型)
21 温室
22 ソーラー(太陽光)発電パネルユニット
23 蛍光灯
24 フィルムヒーター
25 空調(温室制御)システム
26 ソレノイド(直動型ソレノイド)
27 反射板(鏡)
28 コントロールボックス
29 ラック
30 ソレノイド(ロータリーソレノイド)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元・酸素発生型微生物において、水圏で繁殖する微細藻類の内、シアノバクテリアの培養を行う、この光栄養生物(独立栄養微生物)を数十リットルの透明容器(金網入ガラス)で培養する、この場合、培養槽(セル)の構造は、培養液の液面維持オーバーフロー用分岐管付き上部鍔付き大径円筒部と球体形状の胴体部と、この底部球面に小径筒状の突起部が中心線上に接続されている形状で、主たる培養槽構造の胴体部内面が曲面を必要とする透明で球形の培養セル構造体。
【請求項2】
前記請求項1の培養槽構造で、球形の培養セル構造体の曲率は流体力学の理論が応用でき、スクリューの軸流発生により、対流(縦循環流)と渦流(横循環流)を一定の時間間隔をおいて緩やかに構成させ、主に対流時に光合成反応を行わせる流動培養で、この光合成培養によって増殖したシアノバクテリアを渦流の作用によって、球体セルの底面曲率に沿って下降させ、下部中心に位置する小径筒状部へ集合濃縮させる請求項1に記載の培養セル構造体と効果。
【請求項3】
前記請求項1、2の培養槽構造とその効果のものをセルの中心線上に上段・中段・下段に三段構成し、光合成によって増殖したシアノバクテリアを、渦流の作用によって各セル下部の小径筒状部へ集合濃縮させる、このシアノバクテリアを小径筒状部下端部に設けた可動弁を上段、中段同軸連結させて意図された時間間隔で同時動作させ、この弁を開き、上段より中段へ、中段より下段に所定量だけ流下させる、この様に中段、下段のシアノバクテリアの濃度を順次上げる請求項1、2に記載の構造体とその効果による光合成ユニット装置。
【請求項4】
水圏における還元型微細生物のシアノバクテリア培養液中へ空気および、COガスを投入し溶解作用させながら、培養液中に光合成炭酸同化作用によって発生するOガスを抜き取り、同時に新しい栄養液の補充は定量点滴注入法で行い、球形セル内全体のバクテリアにCOと無機塩類をまんべんなく供給するための効果を備えた回転型気液混合、ガス置換翼と各セル所定の流動形態の形式が維持できるスクリューを、同軸上に上段は気液混合とガス置換用穴明スプーン翼と下段には下向きの軸流発生用スクリューを備えた培養セルとその装置で、回転穴明スプーン翼の中央に補充液の供給ができるように、スプーン翼の中央から上部はU字型に切欠きをして、この切欠き部に上部から差し込んである定量点滴ノーズル部は自由度のある耐薬品性チューブが、接触せずに回転運動ができる構造とし、上段・中段・下段の各セル内培養液は、軸回転手段による気液混合ガス置換翼とスクリューによって、CO2、空気、補充栄養液を混入させながら、かつ、対流と渦流を緩やかに作り、培養槽に培養液を流動することによって、光吸収と光量調整を行い無機塩類投入とガス置換及び培養液の恒温(20℃〜40℃)に保持された最適条件で最大増殖速度を維持させる請求項1、2および請求項3に記載の光合成ユニット装置。
【請求項5】
前記請求項1、2、3および請求項4に記載の、この構造と効果によって光合成で分裂増殖したシアノバクテリアの濃度の臨界を前もって予防するように、この最下段のセルの小径筒状下端部に切換えプランジャー弁を設け、シリンダーを開口させて、シアノバクテリアがこれと小径の筒状部に集合濃縮したものをシリンダーに吸引、濃縮確保させ、これに弁を設け、所定の時間周期で取り出し方向に切換え開口して、プランジャー駆動力で圧送して、メッシュのセットされたカップで受取り分離収穫する、これらを装備しコンパクトにまとめて一般家庭に設置できるようにした請求項1、2、3および請求項4に記載の光合成ユニット装置。
【請求項6】
前記請求項1、2、3および請求項4、5に記載の光合成ユニット装置の構造と効果による、分裂と増殖の最速・最大の生産量を実現させるためには、分裂増殖濃度の上限値である、臨界に達することを前もって予防し、常に臨界直前の最大増殖濃度値を維持する必要がある、このためには、以上上記の装置の効果によって、上段、中段、下段の最適増殖濃度値を平衡に維持させる制御機構とこのコントロール部を装備させ、コンパクトにまとめて一般家庭に設置できるようにした請求項1、2、3および請求項4、5に記載の光合成ユニット装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−106218(P2009−106218A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283105(P2007−283105)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(592169574)
【出願人】(501241944)
【Fターム(参考)】