説明

光吸収性組成物

【課題】近赤外領域に吸収を有し、400〜700nmの領域に吸収を有さない不可視性に優れた高堅牢な赤外線吸収性組成物、並びにその塗布物(情報記録記録物やフィルタ等)を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物とジチオール金属錯体化合物とを含む光吸収性組成物。


(式中、R1はアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素、金属原子を表し、R1及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光吸収性組成物に関し、特に、近赤外領域に吸収を有し、かつ可視域に吸収を有さない赤外線吸収組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外吸収色素は、プラズマディスプレイパネル(PDP)やCCD用の赤外線カットフィルムや熱線遮蔽フィルムとしての光学フィルタ用途や、追記型光ディスク(CD−R)やフラッシュ溶融定着材料としての光熱変換材料用途、セキュリティーインクや、不可視バーコードインクとしての情報表示材料として用いられており、特に近赤外色素に特徴的な性能として、近赤外領域に強い吸収を有することに併せて、目に見えないと言う不可視性への高い要求がある。また、同時に色素全般に要求される性能として高い堅牢性が要求されている。
【0003】
400nm〜700nmの領域に吸収をほとんど持たない不可視性に優れる色素としては、第一にシアニンメチン色素やそのJ会合体が挙げられるが、長いメチン共役鎖は、フレキシブルであるため異性化に伴う吸収形の変化や熱や酸素、求核剤との反応による分解が起こりやすく、堅牢性が低い。
剛直な骨格をもち高堅牢な近赤外吸収色素としては、日本触媒(株)から上市されているバナジルナフタロシアニン色素やBASF(株)から上市されているクオータリレン色素があるが、バナジルフタロシアニンは不可視性が不十分である。一方、クオータリレンは溶液など分子分散状態では良好な不可視性を有するものの、濃度を上げると会合により可視域に吸収を生じ、不可視性が失われ、使用形態が限定される。
不可視性に優れ、赤外領域を広くカバーする色素としては、日本化薬(株)等から上市されているジインモニウム色素があるが、還元されやすく、堅牢性は不十分であり、使用形態が限定されてしまう。
このように、現在、不可視性と堅牢性とを両立する近赤外色素は上市されておらず、これら性能を両立する近赤外色素の開発が望まれている。
【0004】
また、新規赤外色素としてピロロピロール系色素が知られている(例えば非特許文献1を参照)。非特許文献1では、赤外蛍光色素を目指し検討した結果が記載されており、ホウ素錯体化し、分子の剛直性を挙げることで、高い蛍光量子収率を達成することが記載されている。また、この骨格群に特徴的な蛍光色素を応用した例として有機エレクトロルミネッセンス素子への応用が知られている(例えば特許文献1〜3を参照)。
一般に、強い蛍光を発するには、蛍光色素を濃度消光を起こさない希薄状態で用い、ホスト材料を共蒸着を行い分子分散状態で使用される。また、このような蛍光色素は、一般に耐光性が低いことが知られている。
【0005】
不可視性と堅牢性とを両立する近赤外色素組成物をピロロピロール系色素で達成するためには、堅牢性(特に光堅牢性)の改善が重要な課題であり、特に分子分散した分散物の塗布物や、アモルファス状態の塗布膜(アモルファス膜)での耐光性の改善が望まれていた。また、ピロロピロール系色素は、微粒子として用いた場合には耐光性が向上することが知られているが、さらなる耐光性の改善が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特許第3704748号公報
【特許文献2】特開2003−027049号公報
【特許文献3】国際公開WO2003/048268号パンフレット
【非特許文献1】「アンゲバンテ・ヘミー・インターナショナル・エディション・オブ・イングリッシュ(Angewante Chemie International Edition of English)」,第46巻,第3750〜3753ページ(2007年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、近赤外領域に吸収を有し、400〜700nmの領域に吸収を有さない不可視性に優れた高堅牢な赤外線吸収性組成物を提供することであり、その塗布物(情報記録記録物やフィルタ等)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、下記の手段によって解決された。
[1]下記一般式(1)で表される化合物とジチオール金属錯体化合物とを含む光吸収性組成物。
【化1】

(式中、R1はアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素、金属原子を表し、R1及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。)
【0009】
[2]前記ジチオール金属錯体化合物が下記一般式(A)で表される化合物である、[1]項に記載の光吸収性組成物。
【化2】

(式中、Ra1及びRa2は、各々独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、チオ基、又はシアノ基を表し、Ra1とRa2とが連結して環構造を形成しても良く、形成された環は、飽和環もしくは不飽和環のいずれであっても良い。nは2又は3の整数を表す。Mは金属原子を表す。Zaは0、1−、2−を表す。また、Zaが1−、2−を表すとき、YはZaの電荷を中和するカチオン化合物を表す。)
【0010】
[3]前記一般式(A)で表される化合物が下記一般式(A1)で表される化合物である、[2]項に記載の光吸収性組成物。
【化3】

(式中、Ra1、Ra2、Ra3、Ra4は、各々独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、チオ基、又はシアノ基を表し、Ra1とRa2ないしRa3とRa4が連結して環構造を形成しても良く、形成された環は、飽和環もしくは不飽和環のいずれであっても良い。Mは金属原子を表す。Zaは0、1−、2−を表す。また、Zaが1−、2−を表すとき、YはZaの電荷を中和するカチオン化合物を表す。)
【0011】
[4]前記一般式(A)で表される化合物が下記一般式(A2)〜(A5)のいずれかで表される化合物である、[2]項に記載の光吸収性組成物。
【化4】

(前記一般式(A2)〜(A5)中、R11は置換基を表し、mは1〜4の整数を表す。複数のR11は同一でも異なっていても良い。EWGは電子吸引性基を表す。Arはアリール基またはヘテロアリール基を表す。R12及びR13は各々独立にアリール基、ヘテロアリール基、又はアルキル基を表す。nは2又は3の整数を表す。Mは金属原子を表す。Zaは0、1−、2−を表す。また、Zaが1−、2−を表すとき、YはZaの電荷を中和するカチオン化合物を表す。)
【0012】
[5]前記一般式(1)におけるR3がヘテロ環である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の光吸収性組成物。
[6]前記一般式(1)で表される化合物が分子分散している、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の光吸収性組成物。
[7]アモルファス状態である、[6]項に記載の光吸収性組成物。
[8]前記一般式(1)で表される化合物からなる微粒子を含む、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の光吸収性組成物。
【0013】
[9][1]〜[8]のいずれか1項に記載の光吸収性組成物であって、700nm以上1000nm以下の赤外線を吸収する、赤外線吸収性組成物。
[10]前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物である、[9]項に記載の赤外線吸収性化合物。
【化5】

(式中、Z1はアリール環もしくはヘテロアリール環を形成する原子団を表す。R5は炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20のカルバモイル基、ハロゲン原子、又はシアノ基のいずれか1つを表し、R5とZ1とが結合して縮合環を形成しても良い。R22及びR23は各々独立にシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜20の含窒素ヘテロアリール基を表し、又はR22及びR23が結合して環状酸性核を表す。R4は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20ヘテロアリール基、金属原子、又は置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20のヘテロアリール基を有する置換ホウ素を表し、R23と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。また、当該化合物は更に置換基を有しても良い。)
【0014】
[11]前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(3)で表される化合物である、[9]項に記載の赤外線吸収性化合物。
【化6】

(式中、R31は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R32はシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基を表す。R6及びR7は各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基は炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数4〜10のヘテロアリール基を表し、R6及びR7は結合して環を形成してよく、形成する環としては炭素数5〜10の脂環、炭素数6〜10のアリール環、又は炭素数3〜10のヘテロアリール環である。R8及びR9は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数3〜10のヘテロアリール基を表す。Xは酸素原子、イオウ原子、−NR−、−CRR’−を表し、R及びR’は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表す。)
[12][1]〜[11]のいずれか1項に記載の組成物を含む塗布物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光吸収性組成物は、優れた光吸収特性、高い堅牢性(特に高い耐光性)をすべて満足する性能を有する。特に、前記一般式(1)におけるR3がヘテロ環である組成物は良好な性能を示す。また、前記一般式(1)で表される化合物が前記一般式(2)で表される化合物である光吸収性組成物は、特に優れた不可視性を有する。また、前記一般式(1)で表される化合物が前記一般式(3)で表される化合物である光吸収性組成物は、より高い堅牢性とより高い不可視性とを両立することができる。さらに、本発明の光吸収性組成物は、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物からなる微粒子を含むことにより、より高い堅牢性を示す。
また、本発明の光吸収性組成物は、優れた赤外線吸収能を有し、700nm以上1000nm以下の赤外線を選択的に吸収することができる。
また、本発明の光吸収性組成物および塗布物(インク、トナー、赤外性情報記録物、光熱変換体、フィルタ等)は、優れた赤外線吸収能を有し、優れた不可視性と優れた耐久性とを両立する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の光吸収性組成物は、下記一般式(1)で表される化合物とジチオール金属錯体化合物とを含有する。本発明の光吸収性組成物は、優れた赤外線吸収特性、不可視性、堅牢性をすべて満足する性能を有する。
【0017】
〔一般式(1)で表される化合物〕
まず、下記一般式(1)で表される化合物について説明する。
【化7】

【0018】
(式中、R1はアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素、金属原子を表し、R1及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。)
【0019】
前記一般式(1)中、R1で表されるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30(本発明では、「A〜B」は、「A以上B以下」の意味で用いる。)、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
また、R1で表されるアリール基としては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えばフェニル、o−メチルフェニル、p−メチルフェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラニル、フェナントリルなどが挙げられる。
1で表されるヘテロアリール基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロアリール基であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ナフトチアゾリル、ベンズオキサゾリル、m−カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。
前記一般式(1)中の2つのR1は、互いに同一でも異なってもよい。
【0020】
2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。置換基としては例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラニル、フェナントリルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、芳香族ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
【0021】
アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、
【0022】
芳香族ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。
【0023】
2又はR3で表される電子吸引性基としては、好ましくはHammettのσm値もしくはσp値(シグマパラ値)が0.2以上の電子吸引性基を表し、例えばシアノ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、ヘテロ環基などが挙げられる。これら電子吸引性基はさらに置換されていても良い。
【0024】
ハメットの置換基定数σ値について説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版,1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊,122号,96〜103頁,1979年(南光堂)、Chem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページなどに詳しい。本発明におけるハメットの置換基定数σm値もしくはσp値が0.2以上の置換基とは電子求引性基であることを示している。σm値もしくはσp値として好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.3以上であり、特に好ましくは0.35以上である。
【0025】
具体例としては、シアノ基(σp=0.66)、カルボキシル基(-COOH:σp=0.45)、アルコキシカルボニル基(-COOMe:σp=0.45)、アリールオキシカルボニル基(-COOPh:σp=0.44)、カルバモイル基(-CONH2:σp=0.36)、アルキルカルボニル基(-COMe:σp=0.50)、アリールカルボニル基(-COPh:σp=0.43)、アルキルスルホニル基(-SO2Me:σp=0.72)、アリールスルホニル基(-SO2Ph:σp=0.68)、または、2−ピリジル基(σm=0.33)、3−ピリジル基(σp=0.25)、4−ピリジル基(σp=0.44)または2−ベンゾチアゾリル(σp=0.29)、2−ベンゾオキサゾリル(σp=0.33)などが挙げられる。本明細書において、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。なお、括弧内の値は代表的な置換基のσ値をChem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページから抜粋したものである。
【0026】
さらに、R2及びR3が結合して環を形成した場合は、5ないし7員環(好ましくは5ないし6員環)の環を形成し、形成される環としては通常メロシアニン色素で酸性核として用いられるものが好ましく、その具体例としては例えば以下のものが挙げられる。
(a)1,3−ジカルボニル核:例えば1,3−インダンジオン核、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオンなど。
(b)ピラゾリノン核:例えば1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾイル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オンなど。
(c)イソオキサゾリノン核:例えば3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オンなど。
(d)オキシインドール核:例えば1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドールなど。
(e)2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核:例えばバルビツル酸または2−チオバルビツル酸およびその誘導体など。誘導体としては例えば1−メチル、1−エチル等の1−アルキル体、1,3−ジメチル、1,3−ジエチル、1,3−ジブチル等の1,3−ジアルキル体、1,3−ジフェニル、1,3−ジ(p−クロロフェニル)、1,3−ジ(p−エトキシカルボニルフェニル)等の1,3−ジアリール体、1−エチル−3−フェニル等の1−アルキル−1−アリール体、1,3−ジ(2―ピリジル)等の1,3位ジヘテロ環置換体等が挙げられる。
(f)2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核:例えばローダニンおよびその誘導体など。誘導体としては例えば3−メチルローダニン、3−エチルローダニン、3−アリルローダニン等の3−アルキルローダニン、3−フェニルローダニン等の3−アリールローダニン、3−(2−ピリジル)ローダニン等の3位ヘテロ環置換ローダニン等が挙げられる。
(g)2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(2−チオ−2,4−(3H,5H)−オキサゾールジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオンなど。
(h)チアナフテノン核:例えば3(2H)−チアナフテノン−1,1−ジオキサイドなど。
(i)2−チオ−2,5−チオゾリジンジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオンなど。
(j)2,4−チオゾリジンジオン核:例えば2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−2,4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオンなど。
(k)チアゾリン−4−オン核:例えば4−チアゾリノン、2−エチル−4−チアゾリノンなど。
(l)4−チアゾリジノン核:例えば2−エチルメルカプト−5−チアゾリン−4−オン、2−アルキルフェニルアミノ−5−チアゾリン−4−オンなど。
(m)2,4−イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核:例えば2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオンなど。
(n)2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン(2−チオヒダントイン)核:例えば2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオンなど。
(o)イミダゾリン−5−オン核:例えば2−プロピルメルカプト−2−イミダゾリン−5−オンなど。
(p)3,5−ピラゾリジンジオン核:例えば1,2−ジフェニル−3,5−ピラゾリジンジオン、1,2−ジメチル−3,5−ピラゾリジンジオンなど。
(q)ベンゾチオフェン−3−オン核:例えばベンゾチオフェン−3−オン、オキソベンゾチオフェン−3−オン、ジオキソベンゾチオフェン−3−オンなど。
(r)インダノン核:例えば1−インダノン、3−フェニル−1−インダノン、3−メチル−1−インダノン、3,3−ジフェニル−1−インダノン、3,3−ジメチル−1−インダノンなど。
【0027】
なお、環を形成する場合のR2及びR3のσ値を規定することができないが、本発明においてはR2及びR3にそれぞれ環の部分構造が置換しているとみなして、環形成の場合のσ値を定義することとする。例えば1,3−インダンジオン環を形成している場合、R2及びR3にそれぞれベンゾイル基が置換したものとして考える。
【0028】
2及びR3が結合して形成される環としては、好ましくは1,3−ジカルボニル核、ピラゾリノン核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)、2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核、2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核、2,4−チアゾリジンジオン核、2,4−イミダゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン核、2−イミダゾリン−5−オン核、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェン−3−オン核、またはインダノン核であり、更に好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェン−3−オン核、またはインダノン核である。
【0029】
3はヘテロ環であることが特に好ましい。
前記一般式(1)中の2つのR2は、互いに同一でも異なってもよく、また、2つのR3は、互いに同一でも異なってもよい。
【0030】
4で表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は、R1で説明した置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。R4で表される置換ホウ素の置換基は、R2及びR3について上述した置換基と同義であり、好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である。また、R4で表される金属原子は、好ましくは遷移金属、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、又はスズであり、より好ましくはアルミニウム、亜鉛、すず、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、イリジウム、又は白金であり、特に好ましくはアルミニウム、亜鉛、バナジウム、鉄、銅、パラジウム、イリジウム、白金である。
4は、R1及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。
前記一般式(1)中の2つのR4は、互いに同一でも異なってもよい。
【0031】
前記一般式(1)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(2)又は(3)で表される化合物である。
【0032】
【化8】

【0033】
(式中、Z1はアリール環もしくはヘテロアリール環を形成する原子団を表す。R5は炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20のカルバモイル基、ハロゲン原子、又はシアノ基のいずれか1つを表し、R5とZ1とが結合して縮合環を形成しても良い。R22及びR23は各々独立にシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜20の含窒素ヘテロアリール基を表し、又はR22及びR23が結合して環状酸性核を表す。R4は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20ヘテロアリール基、金属原子、又は置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20のヘテロアリール基を有する置換ホウ素を表し、R23と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。また、当該化合物は更に置換基を有しても良い。)
【0034】
【化9】

【0035】
(式中、R31は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R32はシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基を表す。R6及びR7は各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数4〜10のヘテロアリール基を表し、R6及びR7は結合して環を形成してよく、形成する環としては炭素数5〜10の脂環、炭素数6〜10のアリール環、又は炭素数3〜10のヘテロアリール環である。R8及びR9は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数3〜10のヘテロアリール基を表す。Xは酸素原子、イオウ原子、−NR−、−CRR’−を表し、R及びR’は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表す。)
【0036】
前記一般式(2)について説明する。
前記一般式(2)中、Z1はアリール環もしくはヘテロアリール環を形成する原子団を表す。形成されるアリール環、ヘテロアリール環は、前記一般式(1)におけるR2及びR3の置換基として説明したアリール基、ヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
5は炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20のカルバモイル基、ハロゲン原子、又はシアノ基のいずれか1つを表す。具体的には、前記一般式(1)におけるR2及びR3で説明した例と同義であり、好ましい範囲も同様である。
5とZ1とが結合して縮合環を形成しても良く、該縮合環としてはナフチル環、キノリン環などが挙げられる。
1が形成するアリール環もしくはヘテロアリール環にR5で表される基を導入することで、不可視性を大きく向上することができる。
【0037】
22及びR23は各々独立にシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜20の含窒素ヘテロアリール基を表し、又はR22及びR23が結合した環状酸性核を表す。具体的には、前記一般式(1)におけるR2及びR3で説明した例と同義であり、好ましい範囲も同様である。R4は前記一般式(1)におけるR4と同義であり、好ましい範囲も同様である。R4はR23と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。
【0038】
前記一般式(2)で表される化合物は更に置換基を有しても良く、該置換基としてはR2及びR3の置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0039】
前記一般式(2)における好ましい組合せとしては、Z1がベンゼン環もしくはピリジン環を形成し、R5がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基であり、R22及びR23が各々独立にヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はR22及びR23が結合した環状酸性核であり、R4が水素原子、置換ホウ素、遷移金属原子、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、スズである場合である。特に好ましい組合せとしては、Z1がベンゼン環を形成し、R5がアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基であり、R22及びR23が各々独立に含窒素ヘテロ環基とシアノ基もしくはアルコキシカルボニル基との組合せ、又はR22及びR23が結合した環状酸性核であり、R4が水素原子、置換ホウ素、アルミニウム、亜鉛、バナジウム、鉄、銅、パラジウム、イリジウム、白金である場合である。
【0040】
前記一般式(3)について説明する。
前記一般式(3)中、R31は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表し、具体的には、前記一般式(1)におけるR1で説明した例と同義であり、好ましい範囲も同様である。
32はシアノ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基であり、具体的には、前記一般式(1)におけるR2の例と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0041】
6及びR7は各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数4〜10のヘテロアリール基を表し、具体的には、前記一般式(1)におけるR2及びR3の置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同様である。また、R6及びR7は結合して環を形成してよく、形成する環としては炭素数5〜10の脂環、炭素数6〜10のアリール環、炭素数3〜10のヘテロアリール環であり、好ましい例としてはベンゼン環やナフタレン環、ピリジン環である。
6及びR7が置換した5員含窒素ヘテロ環を導入し、更にホウ素錯体とすることで、高い堅牢性、高い不可視性を両立する赤外線吸収色素を実現することができる。
【0042】
8及びR9は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数3〜10のヘテロアリール基を表し、具体的には、前記一般式(1)におけるR2、R3の置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同様である。
Xは酸素原子、イオウ原子、−NR−、−CRR’−を表す。R及びR’は各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表し、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基である。
【0043】
前記一般式(3)における好ましい組合せとしては、R31が炭素数1〜10のアルキル基、又はベンゼン環もしくはピリジン環であり、R32がシアノ基またはアルコキシカルボニル基であり、R6及びR7が結合してベンゼン環もしくはピリジン環、ピラジン環、又はピリミジン環を形成し、R8及びR9が各々独立に炭素原子1〜6のアルキル基、又はフェニル基もしくはナフチル基であり、Xが酸素原子、イオウ原子、−NR−、又は−CRR’−であり、R及びR’が各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基である場合である。特に好ましい組合せとしては、R31が炭素数1〜10のアルキル基、又はベンゼン環であり、R32がシアノ基であり、R6及びR7が結合してベンゼン環もしくはピリジン環であり、R8及びR9が各々独立に炭素原子1〜6のアルキル基、又はフェニル基もしくはナフチル基であり、Xは酸素原子またはイオウ原子である場合である。
【0044】
以下に、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物(色素化合物)の具体例を示すが、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0045】
【化10】

【0046】
【化11】

【0047】
【化12】

【0048】
【化13】

【0049】
【化14】

【0050】
【化15】

【0051】
次に、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物の合成法について説明する。
前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物は、該当するジケトピロロピロール化合物に、活性メチレン化合物を縮合させ、場合によっては、さらに、ホウ素や金属を反応させることで合成することができる。ジケトピロロピロールは、「ハイパフォーマンス・ピグメンツ(High Performance Pigments)」,Wiley−VCH,2002年,160〜163ページに記載の方法で合成でき、より具体的な例としては米国特許第5,969,154号明細書や特開平9−323993号公報に記載の方法で合成できる。また、ジケトピロロピロールと活性メチレン化合物との縮合反応やその後のホウ素化については、先述の非特許文献1に従って合成できる。
【0052】
前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物は、特に限定されないが、好ましくは700〜1050nm、より好ましくは700〜1000nmに吸収極大を有する。前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物は、波長700nm以上1000nm以下の赤外線を選択的に吸収することが好ましい。
また、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物は、モル吸光係数εは特に限定されないが、好ましくは50,000〜300,000であり、より好ましくは100,000〜250,000である。
【0053】
前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物は、IR色素として好ましく用いることができる。不可視であるため化合物の色は透明であることが好ましいが、ごくわずかに緑色、灰色に着色していてもよい。
【0054】
本発明の光吸収性組成物をフィルタ用途等に適用する場合は、散乱の影響を低減させるために、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物を一般に分子分散状態やアモルファス状態で使用することが好ましい。また、微粒子として用いてもよい。本発明の光吸収性組成物は、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物からなる微粒子を含むことにより、より高い堅牢性を示す。
以下に、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物からなる微粒子の調製方法について説明する。
【0055】
(微粒子の調製方法)
上記した化合物の合成方法によって、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物は粗結晶として得られるが、微粒子として用いる場合、後処理を行うことが好ましい。この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の摩砕処理、溶媒加熱処理などによる微粒子制御工程、樹脂、界面活性剤および分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
【0056】
前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物は、後処理として溶媒加熱処理を行っても良い。溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、またはこれらの混合物等が挙げられる。これらの後処理によって、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物(顔料)の平均粒子径を0.01μm〜1μmに調整することが好ましい。
【0057】
〔ジチオール金属錯体〕
次に、ジチオール金属錯体について説明する。
ピロロピロール系色素は、微粒子として用いた場合には耐光性が向上することが知られているので、更に耐光性を向上させようとは当業者は通常考えなかった。さらに、ジチオール錯体を用いることにより、吸収の変化による不可視性の低下や、溶解性の低いジチオール錯体の析出による膜の面状悪化のような懸念点(技術的なデメリット)も考えられたため、当業者はジチオール錯体の採用を想起しなかった。
本発明に用いられるジチオール金属錯体は、少なくとも1つのジチオール化合物を配位子としてもつ金属錯体であり、ジチオール配位子のみからなる金属錯体であっても良いし、他の配位子を同時に含んでいてもよい。他の配位子の好ましい例としては、配位子が2つの窒素原子を介して二座配位しているもの(N,N−二座配位子)が挙げられる。
【0058】
本発明に用いられるジチオール金属錯体は、好ましくはジチオール配位子のみからなる金属錯体であり、特に好ましくは、下記一般式(A)で表されるジチオール金属錯体である。
【0059】
【化16】

【0060】
(式中、Ra1及びRa2は、各々独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、チオ基、又はシアノ基を表し、Ra1とRa2とが連結して環構造を形成しても良く、形成された環は、飽和環もしくは不飽和環のいずれであっても良い。nは2又は3の整数を表す。Mは金属原子を表す。Zaは0、1−、2−を表す。また、Zaが1−、2−を表すとき、YはZaの電荷を中和するカチオン化合物を表す。)
【0061】
前記一般式(A)において、Ra1及びRa2で表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は、前記一般式(1)におけるR2及びR3で表される置換基の例として説明したアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
本発明における「チオ基」は、イオウ原子で結合する一価の置換基を意味し、具体的には、アルキルチオ基、アリールチオ基、芳香族ヘテロ環チオ基やチオエステル基を表す。
前記一般式(A)中、Mは、好ましくは遷移金属であり、より好ましくはCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Pd、Ptである。Yで表されるカチオン化合物としては、好ましくはアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、セレノニウムカチオン、金属カチオンが挙げられるが、特に4級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオンが好ましい。
【0062】
前記一般式(A)で表される化合物は、下記一般式(A1)で表される化合物であることが好ましい。
【0063】
【化17】

【0064】
前記一般式(A1)におけるRa1、Ra2、Ra3、Ra4は、各々独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、チオ基、又はシアノ基を表し、前記一般式(A)におけるRa1及びRa2と同義であり、好ましい範囲も同様である。Ra1とRa2ないしRa3とRa4が連結して環構造を形成しても良く、形成された環は、飽和環もしくは不飽和環のいずれであっても良い。前記一般式(A1)におけるM、Za及びYは、前記一般式(A)におけるM、Za及びYと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0065】
また、前記一般式(A)で表される化合物は、下記一般式(A2)〜(A5)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0066】
【化18】

【0067】
前記一般式(A2)〜(A5)中、R11は置換基を表し、前記一般式(1)におけるR2又はR3で表される置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同様である。mは1〜4の整数を表し、複数のRが置換していても良い。EWGは電子吸引性基を表し、前記一般式(1)におけるR2又はR3で表される電子吸引性基と同義であり、好ましい範囲も同様である。EWGの好ましい具体例としては、シアノ基、フルオロアルキル基(トリフルオロメチル基等)が挙げられる。Arはアリール基またはヘテロアリール基を表し、前記一般式(1)におけるR2又はR3で表される置換基の例として説明されるアリール基またはヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。R12及びR13は各々独立にアリール基、ヘテロアリール基、又はアルキル基を表し、前記一般式(1)におけるR2又はR3で表される置換基の例として説明されるアリール基、ヘテロアリール基、アルキル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。前記一般式(A2)〜(A5)におけるn、M、Za及びYは、前記一般式(A)におけるn、M、Za及びYと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0068】
以下に、前記一般式(A)で表されるジチオール金属錯体の具体例を示すが、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0069】
【化19】

【0070】
【化20】

【0071】
【化21】

【0072】
さらに、本発明に用いることができるジチオール金属錯体の具体例としては、特開平1−114801号、特開昭64−74272号、特開昭62−39682号、特開昭61−80106号、特開昭61−42585号、特開昭61−32003号等の各公報に記載の化合物が挙げられる。
【0073】
本発明に用いられるジチオール金属錯体は、例えば「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(Journal of American Chemical Society)」第95巻、第6970〜6979ページ(1973)や、特開昭61−32003号、特開昭61−42585号、特開昭61−57674号、特開昭61−71503号、特開昭61−80106号、特開昭64−75568号の各公報等の記載を参照して調製することができる。また、例示化合物A−21〜A−26は試薬メーカーから市販されており、これを入手することもできる。
【0074】
〔組成物〕
次に、本発明の光吸収性組成物について説明する。
本発明の光吸収性組成物は、水系であっても非水系であってもよい。
(水系組成物)
本発明の光吸収性組成物が水系組成物である場合、前記一般式(1)で表される化合物および前記ジチオール金属錯体化合物を分散する水性の液体としては、水を主成分とし、所望により親水性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。
【0075】
前記親水性有機溶剤としては,例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールものブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートトリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0076】
さらに、本発明の光吸収性組成物には水性樹脂を含んでいてもよい。水性樹脂としては,水に溶解する水溶解性の樹脂,水に分散する水分散性の樹脂,コロイダルディスパーション樹脂、またはそれらの混合物が挙げられる。水性樹脂の具体例としては、アクリル系,スチレン−アクリル系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリウレタン系,フッ素系等の樹脂が挙げられる。
【0077】
本発明において用いられる水分散性の樹脂は、主成分が水である分散媒(本明細書では溶媒と呼ぶこともある)に疎水性の合成樹脂が分散された分散物である。
溶媒中に含まれる水の含量は、30%〜100%が好ましく、50%〜100%がより好ましい。水以外の溶媒としては、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフランやブチルセロソルブなど、水に溶解性を有する溶剤が好ましく用いられる。
合成樹脂(ポリマー)としては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等、ポリアミド樹脂、フッ素系樹脂など種々のポリマーを使用することができる。また、水溶性の樹脂としてはゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0078】
アクリル樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類、メタクリルアミド及びメタクリロニトリルのいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。これらの中では、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体が好ましい。例えば、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。上記アクリル樹脂は、上記組成を主成分とし、カルボジイミド化合物との架橋反応が可能なように、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用して得られるポリマーである。
【0079】
上記ビニル樹脂としては、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくはエチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)を挙げることができる。これらの中で、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホリマール、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくは、エチレン/酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体)が好ましい。上記ビニル樹脂は、カルボジイミド化合物との架橋反応が可能なように、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル及びポリ酢酸ビニルでは、例えば、ビニルアルコール単位をポリマー中に残すことにより水酸基を有するポリマーとし、他のポリマーについては、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用することにより架橋可能なポリマーとする。
【0080】
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)、ポリヒドロキシ化合物と多塩基酸との反応により得られる脂肪族ポリエステル系ポリオール、ポリエーテルポリオール(例、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオール)、ポリカーボネート系ポリオール、及びポリエチレンテレフタレートポリオールのいずれか一種、あるいはこれらの混合物とポリイソシアネートから誘導されるポリウレタンを挙げることができる。上記ポリウレタン樹脂では、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応後、未反応として残った水酸基をカルボジイミド化合物との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。
【0081】
上記ポリエステル樹脂としては、一般にポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)と多塩基酸との反応により得られるポリマーが使用される。上記ポリエステル樹脂では、例えば、ポリオールと多塩基酸との反応終了後、未反応として残った水酸基、カルボキシル基をカルボジイミド化合物との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。もちろん、水酸基等の官能基を有する第三成分を添加してもよい。
【0082】
なお、ポリマーの水性分散物の分散状態としては、ポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持つもの等、いずれでもよい。なお、ポリマーの水性分散物(または単に水分散物と呼ぶ)については、「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))等に記載されている。分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限はなく、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0083】
なお、水分散物としては下記のような市販ポリマーを用いてもよい。
スーパフレックス830、460、870、420、420NS(第一工業製薬製ポリウレタン)、ボンディック1370NS、1320NS、ハイドランHw140SF、WLS201、WLS202、WLS213(大日本インキ化学工業製ポリウレタン)、オレスターUD350、UD500、UD600(三井化学製ポリウレタン)、ネオレッツR972、R966、R9660(楠本化成製ポリウレタン)、ファインテックスEs650、Es2200(大日本インキ化学工業製ポリエステル)、バイロナールMD1100、MD1400、MD1480(東洋紡製ポリエステル)、ジュリマーET325、ET410、AT−613、SEK301(日本純薬製アクリル)、ボンコートAN117、AN226(大日本インキ化学工業製アクリル)、ラックスターDS616、DS807(大日本インキ化学工業製スチレン−ブタジエンゴム)、ニッポールLX110、LX206、LX426、LX433(日本ゼオン製スチレン−ブタジエンゴム)、ニッポールLX513、LX1551、LX550、LX1571(日本ゼオン製アクリロニトリル−ブタジエンゴム)。
【0084】
本発明の組成物のバインダとして用いるポリマーは1種類を単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を混合して使用してもよい。
【0085】
近赤外線吸収層のバインダとして用いられるポリマーの分子量には特に制限はないが、通常、重量平均分子量で3,000〜1,000,000程度のものが好ましい。重量平均分子量が3,000未満のものは塗布層の強度が不十分になる場合があり、1,000,000を超えるものは塗布面状が悪い場合がある。
【0086】
さらに,微粒子の分散および画像の品質を向上させるため,界面活性剤および分散剤を用いてもよい。界面活性剤としては、アニオン性,ノニオン性,カチオン性,両イオン性の界面活性剤が挙げられ、いずれの界面活性剤を用いてもよいが、アニオン性または非イオン性の界面活性剤を用いるのが好ましい。アニオン性界面活性剤としては,例えば、脂肪酸塩,アルキル硫酸エステル塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ジアルキルスルホコハク酸塩,アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩,アルキルリン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩,ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物,ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩,グリセロールボレイト脂肪酸エステル,ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0087】
ノニオン性界面活性剤としては,例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル,ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルアミン,フッ素系,シリコン系等が挙げられる。
【0088】
(非水系組成物)
本発明の光吸収性組成物が非水系組成物である場合、当該組成物は、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物とジチオール金属錯体化合物とを非水系ビヒクルに分散してなる。
非水系ビヒクルに使用される樹脂は、例えば、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン/マレイン酸樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。非水系ビヒクルとして、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いてもよい。
【0089】
また、非水系ビヒクルに使用される溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0090】
前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物を微粒子として用いる場合、本発明の組成物は、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物からなる微粒子と、ジチオール金属錯体化合物と、水系または非水系の媒体とを、分散装置を用いて分散することで得られる。使用できる分散装置としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ロールミル、ジェットミル、ペイントシェイカー、アトライター、超音波分散機、ディスパー等が挙げられる。
【0091】
本発明において、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物からなる微粒子を用いる場合、当該微粒子の体積平均粒子径は10nm以上250nm以下であることが好ましい。なお、微粒子の体積平均粒子径とは、微粒子そのものの粒子径、又は微粒子に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。本発明において、微粒子の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150、商品名、日機装社製)を用いることができる。その測定は、微粒子分散体3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行う。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いる。
【0092】
より好ましい体積平均粒子径は、20nm以上250nm以下であり、更に好ましくは30nm以上230nm以下である。顔料分散物中の粒子の数平均粒子径が10nm未満である場合には、保存安定性が確保できない場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、光学濃度が低くなる場合が存在する。
【0093】
本発明の光吸収性組成物における前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物の含有量は、0.1〜35質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜25質量%の範囲であることがより好ましい。濃度が0.1質量%に満たないと、十分な色濃度が得られない場合がある。濃度が35質量%を超えると、分散安定性が低下する場合がある。
また、本発明の光吸収性組成物における前記ジチオール金属錯体化合物の含有量は、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物に対して1〜100質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましい。
【0094】
本発明の組成物の用途としては、画像、特に不可視画像を形成するための画像記録材料やフィルタ用途、光熱変換材料用途が挙げられ、具体的には、赤外線カットフィルタやインクジェット方式記録材料を始めとして、感熱記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン、フラッシュ定着用光熱変換材料や光照射溶融接着剤等があり、好ましくは、フィルタ用途、インクジェット方式記録材料、感熱記録材料、電子写真方式を用いる記録材料である。
【0095】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0096】
合成例1
[例示化合物(D−1)の調製]
下記スキームに従って、例示化合物(D−1)を調製した。
【化22】

【0097】
まず、ジケトピロロピロール(DPP)を、4−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゾニトリルを原料にして、米国特許第5,969,154号明細書に記載された方法に従って、合成した。
【0098】
ジケトピロロピロール3グラム(1モル当量)とピリジンアセトニトリル1.6グラム(2.5モル当量)をトルエン60mL中で攪拌し、オキシ塩化リン6.5グラム(8モル当量)を加えて4時間加熱還流した。室温に冷却してクロロホルム50mLと水20mLを加え、さらに30分攪拌した。分液操作により有機層を取り出し、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒クロロホルム)で精製し、さらにクロロホルム/アセトニトリル溶媒を用いて再結晶し、目的化合物(D−1)を3グラム、収率77%で得た。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.3−1.6(m,16H),1.8(m,2H),3.95(d,4H),7.0(t,2H),7.1(d,4H),7.6(m,4H),7.7(d,4H),8.45(d,2H)
【0099】
合成例2
(例示化合物(D−25)の調製)
前記スキームに従い例示化合物(D−25)を調製した。
例示化合物(D−1)0.75グラム(1モル当量)とクロロジフェニルホウ素0.5グラム(2.5モル当量)をオルトジクロロベンゼン20mL中で3時間加熱還流した。室温に冷却して水10mLを加えた後、分液操作により有機層を取り出し、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム溶媒)で精製し、さらにクロロホルム/メタノール溶媒を用いて再結晶し、目的化合物(D−25)を0.58グラム、収率53%で得た。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.3−1.6(m,16H),1.8(m,2H),3.75(d,4H),6.35(d,4H),6.65(d,4H),6.7(t,2H),7.1−7.2(m,20H),7.35(d,2H),7.45(t,2H),7.8(d,2H)
【0100】
実施例1
(膜サンプル(S−1)の作製)
「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(Journal of American Chemical Society)」第87巻、第1483〜1489ページ(1965)に記載された方法を参照して、ジチオール金属錯体化合物(例示化合物(A−10))を合成した。
クロロホルム1mLに、例示化合物(D−25)10mgおよび例示化合物(A−10)1mgを溶解し、フィルタろ過を行い、組成物サンプル(S1)を作製した。作製した組成物サンプル(S1)をガラス基板上にスピンコート(500ppm,10秒−−1000ppm,20秒)して、膜サンプル(S−1)を作製した。なお、ガラス基板は、純水で超音波洗浄した後にアセトン洗浄したものを用いた。膜サンプル(S−1)は、例示化合物(D−25)からなるアモルファス膜である。
【0101】
(膜サンプル(S−0)の作製)
例示化合物(D−25)10mgのみをクロロホルムに溶解したこと以外は上記と同様にして、比較用の組成物サンプル(S0)を作製し、比較用の膜サンプル(S−0)を作製した。膜サンプル(S−0)は、例示化合物(D−25)からなるアモルファス膜である。
【0102】
(評価)
上記膜サンプル(S−1)及び(S−0)について、分光光度計(島津製作所製、商品名、UVPC−3100)を用いて膜吸収スペクトルを測定した。測定結果を、それぞれ極大吸収波長λmaxで規格化し、重ね合わせて図1に示す。図1中、横軸は波長を、縦軸は規格化した吸収強度を示す。
図1の結果から明らかなように、膜サンプル(S−1)及び(S−0)の極大吸収波長はほぼ同じ波長であり、また、両者の吸収スペクトルは可視領域の波長400〜700nmにおいてほとんど変化していなかった。このことから、両者はいずれも不可視性が良好で、ジチオール金属錯体化合物による不可視性への影響はないことがわかった。
【0103】
次に、膜サンプル(S−1)及び(S−0)に、メリーゴーランド型耐光試験機(イーグルエンジニアリング社製、セルテスト機III型(商品名);Schott製WG320フィルタ(商品名)付き)を用いて照度17万lxのキセノン光を照射し、例示化合物(D−25)の残存率を下式に従って算出した。
残存率%=100×(照射後の吸収強度)/(照射前の吸収強度)
なお、吸収強度は、前記一般式(1)で表される化合物の紫外線吸収スペクトルの極大吸収波長で測定した値である。結果を図2に示す。図2中、横軸はXe光照射時間(時間)を、縦軸は残存率(%)を示す。
図2の結果から明らかなように、比較例の膜サンプル(S−0)では18時間照射後には残存率が20%程度であったのに対し、本発明の膜サンプル(S−1)では48時間照射し続けても残存率が40%程度であった。このことから、本発明の膜サンプル(S−1)は耐光性に優れることがわかった。
【0104】
以上の結果から、本発明の光吸収性組成物およびその塗布膜は、近赤外領域に吸収を有し、可視領域(400〜700nm)に吸収を有さず不可視性に優れ、しかも耐光性にも優れることがわかる。
【0105】
実施例2
(膜サンプル(S−2)〜(S−7)の作製)
実施例1における前記一般式(1)で表される化合物(例示化合物(D−25))の種類、並びに前記一般式(2)で表される化合物(例示化合物(A−10))の種類および含有量を下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして膜サンプル(S−2)〜(S−7)を作製した。膜サンプル(S−2)〜(S−7)は、前記一般式(1)で表される化合物からなるアモルファス膜である。なお、本実施例で用いた前記一般式(1)で表される化合物は、合成例1と同様にして調製した。また、前記一般式(2)で表される化合物は、「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(Journal of American Chemical Society)」第95巻、第6970〜6979ページ(1973)や、特開昭61−32003号、特開昭61−42585号、特開昭61−57674号、特開昭61−71503号、特開昭61−80106号、特開昭64−75568号の各公報などに記載された方法を参照して合成した。
【0106】
(膜サンプル(S−8)及び(S−9)の作製)
1.微粒子分散液の調製
例示化合物(D−25)10質量部および分散剤としてドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)2質量部に水を加え500質量部とした。これに更に0.1mmφのジルコニアビーズ500質量部を添加し、遊星型ボールミルにて300rpmで5時間処理を行い、微細粒子の水分散液を作製した。
その後、前記水分散物からビーズを濾過で分離し、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150、商品名、日機装社製)を用いて例示化合物(D−25)からなる微粒子の粒径を測定したところ、平均粒径は0.06μmであった。
【0107】
2.微粒子分散膜の作製
得られた水分散物にゼラチン水溶液を添加し、ゼラチン下塗りしたポリエチレンテレフタレート(PET)板に塗布し、例示化合物(D−25)微粒子のゼラチン分散膜を作製した(膜サンプル(S−8))。得られたゼラチン膜の吸収スペクトルを測定し、例示化合物(D−25)の吸収のλmax光学濃度が1.5となるよう水分散物濃度を調節した。また、例示化合物(D−25)を例示化合物(D−10)に代えたこと以外は同様にして、膜サンプル(S−9)を作製した。
【0108】
(評価)
膜サンプル(S−0)〜(S−9)について、耐光性および不可視性の評価を行った。
メリーゴーランド型耐光試験機(イーグルエンジニアリング社製、セルテスト機III型(商品名);Schott製WG320フィルタ(商品名)付き)を用いて照度17万lxのXe光を照射し、Xe光照射14時間後の赤外線吸収スペクトルの極大吸収波長で透過率を測定し、実施例1と同様にして残存率を算出した。結果を表1に示す。
また、不可視性の評価は目視により行い、膜サンプル(S−0)に比べて着色が見られる場合を×、膜サンプル(S−0)と同等の着色度である場合を○、膜サンプル(S−0)に比べて着色度が低く透明性が高い場合を◎と評価した。
【0109】
【表1】

【0110】
表1の結果から明らかなように、比較例の膜サンプル(S−0)は、残存率が30%と低かった。これに対し、本発明の膜サンプル(S−1)〜(S−9)は、膜サンプル(S−0)と同等の着色度であり、不可視性が良好で、かつ、残存率も75%以上と高く耐光性にも優れることがわかった。このことから本発明の光吸収性組成物を用いたアモルファス膜は耐光性に優れることがわかった。
また、膜サンプル(S−1)と膜サンプル(S−2)とを対比すると、ジチオール金属錯体化合物の含有量を増加させた膜サンプル(S−2)では、不可視性は維持したまま、耐光性が更に向上することがわかった。また、例示化合物(D−25)又は(D−10)の微粒子を用いた分散膜サンプル(S−9)及び(S−10)は、さらに不可視性が優れ、しかも残存率は95%及び98%と非常に高く、特に耐光性に優れることがわかった。
【0111】
前記一般式(1)で表される化合物とジチオール金属錯体化合物とを含む本発明の光吸収性組成物およびそれを使用した塗布物は、良好な赤外線吸収性と不可視性とを有し、高い耐光性を有する。本発明の光吸収性組成物は、フィルタやインク等のマーカー、産業用光熱変換材料として応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は、膜サンプル(S−1)及び膜サンプル(S−0)の膜吸収スペクトルを表す。
【図2】図2は、膜サンプル(S−1)及び膜サンプル(S−0)の耐光性評価の結果のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物とジチオール金属錯体化合物とを含む光吸収性組成物。
【化1】

(式中、R1はアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素、金属原子を表し、R1及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。)
【請求項2】
前記ジチオール金属錯体化合物が下記一般式(A)で表される化合物である、請求項1記載の光吸収性組成物。
【化2】

(式中、Ra1及びRa2は、各々独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、チオ基、又はシアノ基を表し、Ra1とRa2とが連結して環構造を形成しても良く、形成された環は、飽和環もしくは不飽和環のいずれであっても良い。nは2又は3の整数を表す。Mは金属原子を表す。Zaは0、1−、2−を表す。また、Zaが1−、2−を表すとき、YはZaの電荷を中和するカチオン化合物を表す。)
【請求項3】
前記一般式(A)で表される化合物が下記一般式(A1)で表される化合物である、請求項2記載の光吸収性組成物。
【化3】

(式中、Ra1、Ra2、Ra3、Ra4は、各々独立にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、チオ基、又はシアノ基を表し、Ra1とRa2ないしRa3とRa4が連結して環構造を形成しても良く、形成された環は、飽和環もしくは不飽和環のいずれであっても良い。Mは金属原子を表す。Zaは0、1−、2−を表す。また、Zaが1−、2−を表すとき、YはZaの電荷を中和するカチオン化合物を表す。)
【請求項4】
前記一般式(A)で表される化合物が下記一般式(A2)〜(A5)のいずれかで表される化合物である、請求項2記載の光吸収性組成物。
【化4】

(前記一般式(A2)〜(A5)中、R11は置換基を表し、mは1〜4の整数を表す。複数のR11は同一でも異なっていても良い。EWGは電子吸引性基を表す。Arはアリール基またはヘテロアリール基を表す。R12及びR13は各々独立にアリール基、ヘテロアリール基、又はアルキル基を表す。nは2又は3の整数を表す。Mは金属原子を表す。Zaは0、1−、2−を表す。また、Zaが1−、2−を表すとき、YはZaの電荷を中和するカチオン化合物を表す。)
【請求項5】
前記一般式(1)におけるR3がヘテロ環である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光吸収性組成物。
【請求項6】
前記一般式(1)で表される化合物が分子分散している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光吸収性組成物。
【請求項7】
アモルファス状態である、請求項6記載の光吸収性組成物。
【請求項8】
前記一般式(1)で表される化合物からなる微粒子を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光吸収性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光吸収性組成物であって、700nm以上1000nm以下の赤外線を吸収する、赤外線吸収性組成物。
【請求項10】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物である、請求項9記載の赤外線吸収性化合物。
【化5】

(式中、Z1はアリール環もしくはヘテロアリール環を形成する原子団を表す。R5は炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20のカルバモイル基、ハロゲン原子、又はシアノ基のいずれか1つを表し、R5とZ1とが結合して縮合環を形成しても良い。R22及びR23は各々独立にシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜20の含窒素ヘテロアリール基を表し、又はR22及びR23が結合して環状酸性核を表す。R4は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20ヘテロアリール基、金属原子、又は置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20のヘテロアリール基を有する置換ホウ素を表し、R23と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。また、当該化合物は更に置換基を有しても良い。)
【請求項11】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(3)で表される化合物である、請求項9記載の赤外線吸収性化合物。
【化6】

(式中、R31は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R32はシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基を表す。R6及びR7は各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基は炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数4〜10のヘテロアリール基を表し、R6及びR7は結合して環を形成してよく、形成する環としては炭素数5〜10の脂環、炭素数6〜10のアリール環、又は炭素数3〜10のヘテロアリール環である。R8及びR9は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数3〜10のヘテロアリール基を表す。Xは酸素原子、イオウ原子、−NR−、−CRR’−を表し、R及びR’は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表す。)
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物を含む塗布物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−18688(P2010−18688A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179503(P2008−179503)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】