光周波数分割多重伝送システム
【課題】周波数配置と偏波配置とを適切に組み合わせてFWM雑音光を効果的に低減することが可能な光周波数分割多重伝送システムを提供する。
【解決手段】 光ファイバ13を介して、光の周波数の異なる複数のチャンネルの光信号を多重化して伝送する光周波数分割多重伝送システムにおいて、複数のチャンネルに含まれ連続するNチャンネルからなるM個のベースユニットUを備え、複数のチャンネルにおける周波数配置を、反復不等間隔配置、等間隔反復不等間隔配置、不等間隔反復不等間隔配置の何れか1つとするとともに、複数のチャンネルにおける偏波配置を、隣接するチャンネル間で偏波直交する配置、各ベースユニットU内のチャンネルの偏波一定かつ隣接するベースユニットU間で偏波直交する配置、光ファイバ13の零分散周波数を境界として偏波直交する配置の何れか1つとする。
【解決手段】 光ファイバ13を介して、光の周波数の異なる複数のチャンネルの光信号を多重化して伝送する光周波数分割多重伝送システムにおいて、複数のチャンネルに含まれ連続するNチャンネルからなるM個のベースユニットUを備え、複数のチャンネルにおける周波数配置を、反復不等間隔配置、等間隔反復不等間隔配置、不等間隔反復不等間隔配置の何れか1つとするとともに、複数のチャンネルにおける偏波配置を、隣接するチャンネル間で偏波直交する配置、各ベースユニットU内のチャンネルの偏波一定かつ隣接するベースユニットU間で偏波直交する配置、光ファイバ13の零分散周波数を境界として偏波直交する配置の何れか1つとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光周波数分割多重伝送システム、特に四光波混合により発生する雑音光を低減することが可能な光周波数分割多重伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信システムは、光信号を光周波数領域で高密度多重化し伝送する光周波数分割多重(Frequency Division Multiplexing:FDM)伝送方式によって伝送容量が飛躍的に増大した。ところが、光ファイバ中で長距離にわたり光信号を伝送させるため、光ファイバの非線形効果が顕著に現われるようになった。特に、四光波混合(Four Wave Mixing:FWM)により発生するFWM雑音光が伝送に与える影響は大きく、FWM雑音光の発生を抑制する必要がある。ここで、四光波混合とは、3つ異なる光周波数fp,fq,fr(r≠p,q)の光から、光ファイバの3次非線形光学効果により、光周波数fFWM =fp+fq−frの光が発生する現象である。
【0003】
FWM雑音光は、光周波数配置が等間隔(ES)配置の時に最も大きくなることが知られている。そこで、光周波数配置を、任意の光信号間の光周波数間隔を不等間隔とする不等間隔(US)配置、不等間隔(US)配置の光周波数群を光周波数軸上に等間隔に配置する反復不等間隔(RUS)配置、不等間隔(RUS)配置の光周波数群を光周波数軸上に隣接する光周波数群間における周波数間隔を等間隔に配置する等間隔RUS(ERUS)配置、不等間隔(RUS)配置の光周波数群を光周波数軸上に隣接する光周波数群間における周波数間隔を不等間隔に配置する不等間隔RUS(URUS)配置とすることにより、FWM雑音光を低減することが提案されている(非特許文献1参照。)。
【0004】
また、FWM雑音光は、偏波配置によっても低減することが知られている。例えば、FWM雑音光の発生効率が、発生に関わる光信号の偏波が一致した場合に高く、直交した場合には低くなることが知られている(特許文献1の段落0010参照。)。
【特許文献1】特開平2001−103037号公報
【非特許文献1】S.Kojima and T.Numai, Jounal of Lightwave Technology, vol.24, No.24, pp.2786−2797,JULY 2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、周波数配置と偏波配置とを適切に組み合わせてFWM雑音光を効果的に低減することが可能な光周波数分割多重伝送システムは提案されていない。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、周波数配置と偏波配置とを適切に組み合わせてFWM雑音光を効果的に低減することが可能な光周波数分割多重伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の光周波数分割多重伝送システムは、光ファイバを介して、光の周波数の異なる複数のチャンネルの光信号を多重化して伝送する光周波数分割多重伝送システムにおいて、前記複数のチャンネルにおける周波数配置を、隣接するチャンネルの周波数間隔が等しい等間隔配置とするとともに、前記複数のチャンネルにおける偏波配置を、前記複数のチャンネルに含まれ連続するNチャンネルからなるM個のベースユニット(N、Mはともに2以上の整数)の各ベースユニットにおける偏波を一定とするとともに隣接する前記ベースユニット間で偏波が直交するように配置、または、前記光ファイバの零分散周波数を境界として偏波が直交するように配置することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の光周波数分割多重伝送システムは、光ファイバを介して、光の周波数の異なる複数のチャンネルの光信号を多重化して伝送する光周波数分割多重伝送システムにおいて、前記複数のチャンネルに含まれ連続するNチャンネルからなるM個のベースユニット(N、Mはともに2以上の整数)を備え、前記複数のチャンネルにおける周波数配置を、各前記ベースユニット内のチャンネルの周波数間隔が全て異なる不等間隔配置とするとともに前記ベースユニット内のチャンネルの最大周波数が当該ベースユニットと隣接するベースユニット内のチャンネルの最小周波数とが等しくなるように配置する反復不等間隔配置、各前記ベースユニット内のチャンネルの周波数間隔が全て異なる不等間隔配置とするとともに隣接するベースユニット間における周波数間隔が等しくなるように配置する等間隔反復不等間隔配置、各前記ベースユニット内のチャンネルの周波数間隔が全て異なる不等間隔配置とするとともに隣接するベースユニット間における周波数間隔が全て異なるように配置する不等間隔反復不等間隔配置、の何れか1つとするとともに、前記複数のチャンネルにおける偏波配置を、隣接する前記チャンネル間で偏波が直交するように配置、各前記ベースユニット内のチャンネルの偏波を一定とするとともに隣接する前記ベースユニット間で偏波が直交するように配置、前記光ファイバの零分散周波数を境界として偏波が直交するように配置、の何れか1つとすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の光周波数分割多重伝送システムによれば、周波数配置を等間隔配置とするとき、従来の如く複数のチャンネルにおける偏波を一定とするように偏波配置する場合に比べて、四光波混合により発生する雑音光を低減することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の光周波数分割多重伝送システムによれば、従来の如く複数のチャンネルにおける偏波を一定に偏波配置し周波数配置を等間隔配置、不等間隔配置、反復等間隔(RUS)配置、等間隔RUS配置、不等間隔RUS配置の何れか1つとする場合に比べて、四光波混合により発生する雑音光を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る光周波数分割多重伝送システムについて、図面に基づき説明する。まず、本発明に係る光周波数分割多重伝送システムに関する基本原理について説明する。3つ異なる光周波数fp,fq,fr(r≠p,q)の光から、四光波混合(Four Wave Mixing:FWM)により発生するFWM光のFWM光の光周波数fFWMは、
【数1】
である。光信号とFWM光は単色光であり、光波伝送モードは基本モードであり、光はz軸に沿って伝送し、電界はx軸に沿って振動していると仮定すると、非線形分極PNL は、
【数2】
で与えられる。ここで、Ep,Eq,Erは光ファイバ内を伝送する光信号の電界、X1111 は非線形感受率である。Dは縮退係数であり、fp=fq=frのときD=1、fp=fq≠frのときD=3、fp≠fq≠frのときD=6の値となる。
【0012】
位置zにおける光信号の電界El(z)は、
【数3】
で与えられる。ここで、αは光吸収係数、klは光信号の波数である。そこで、FWM光の電界E(z)は、
【数4】
となる。ここで、iは虚数単位、ω=2πfpqr はFWM光の角周波数、nr は光ファイバの実効屈折率、cは真空中の光速である。また、光ファイバ端ではz=0であり、波数差△βは、
【数5】
で表される。ここで、k=nrω/cはFWM光の波数である。
【0013】
ところで、時間平均FWM光強度Iは、
【数6】
で与えられる。なお、積分は光ファイバの全長にわたって行われる。光強度Ip,Iq,Irを用いると式(6)は、
【数7】
と書き換えられる。ここで、Acffは光ファイバの実効コア面積である。
【数8】
で規定される効率η(0≦η≦1)を導入すると、時間平均FWM光強度Iは、
【数9】
で与えられる。
【0014】
式(5)より、波数差△βは、FWM光周波数f=fpqr における波数β(f)を用いて、
【数10】
で表される。ここで、fp,fq,frは信号の光周波数である。波数差△βが十分に小さいとき、β(f)は零分散周波数f0の周りに展開することができ、波数差△βは、
【数11】
で与えられる。ここで、λはFWM光の波長、dDc/dλは光ファイバの微分分散係数である。本明細書においては、式(8)、式(9)および式(11)を数値計算のために用いた。零分散周波数f0の周辺の光周波数に着目した理由は、FWMによる雑音が零分散周波数f0周りの光周波数にて最も大きいためである。
【0015】
次に、Ip=Iq=IrおよびdDc/dλが一定であると仮定する。その結果、時間平均光強度Iは、効率ηと縮退係数Dとによって与えられる。時間平均光強度Iは、
【数12】
と表される。ここで、
【数13】
である。
【0016】
チャンネルnの光周波数と同じ光周波数fnをもつFWM光は雑音となる。一般的に、光信号の光周波数を有する複数のFWM光が存在し、FMW光周波数fnは、
【数14】
で表される。ここで、mは正整数である。光周波数fnをもつFWM光の全効率ηnFWMは、
【数15】
で与えられる。ここで、ηnFWM(i)(i=1,2,・・・m)はFWM光効率であり、式(12)によって与えられる。
【0017】
強度変調/直接検出方式(Intensity Modulated/Direct Detection:IM/DD)における非零復帰(Non Return to Zero:NRZ)信号のビットエラーレート(ビット誤り率、Bit Error Rate:BER)が計算される。ガウス近似を用いてIM/DD伝送における光ファイバFWMのビットエラーレートPe及びパワーペナルティを求めることができる。ガウス近似を用いると、ビットエラーレートPeは、
【数16】
で表され、
【数17】
なお、
【数18】
【数19】
【数20】
【数21】
である。ここで、PSは光信号の入射ピークパワー、PS0はFWMが無いときに、システムで要求されるBERを実現するための光信号の入射ピークパワー、ηは検知器の量子効率、eは電気素量、hはプランク定数、fは光周波数、Nthは熱雑音パワー、Nshはショット雑音パワー、Q0はシステムで要求されるBERに対応するQ値である。そして、k=2BMxで定められる。ここで、Bは電気フィルターのバンド幅、Mはアバランシェフォトダイオード(Avalanche Photo Diode:APD)の増幅率、xはAPD過剰雑音である。
【0018】
そして、APDの量子効率ηを80%、光ファイバとAPDとの光結合効率を−6dBと仮定する。チャンネル数NCを19とし、CIM(m)における選択チャンネルsを10とする。光ファイバの零分散周波数は光信号の全バンド幅の中間点に一致するとする。受信器パラメータをB=2.5GHz×0.7,5.0GHz×0.7,10.0GHz×0.7、M=15、x=0.7とすると、非線形係数κは、
【数22】
で与えられ、κ=5.84×10−6m−2W−2となる。
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る光周波数分割多重伝送システムの第1の構成について図1に基いて説明する。この構成は、光周波数多重送信局11、光周波数多重受信局12、伝送用の光ファイバ13、光増幅器14,15とからなっている。光周波数多重送信局11は、第1〜第nチャンネルの光送信機T1〜Tnと、各光送信機T1〜Tnから出力された光信号の偏波状態をそれぞれ変化させるn個の偏波状態制御器Pと、1つの合波器16とを備えている。光送信機T1〜Tnはそれぞれ光周波数f1〜fnの光信号を出力する。光送信機T1〜Tnから出力された各光信号は偏波状態が偏波状態制御器Pによって変化させられて合波器16に入射される。合波器16によって合波された光周波数多重信号は、光周波数多重送信局11の外部に出力される。光周波数多重送信局11から出力された光周波数多重信号は、光増幅器14で増幅され、光ファイバ13を伝送して、光増幅器15で再び増幅されて光周波数多重受信局12に入射される。光周波数多重受信局12は、第1〜第nチャンネルの光受信機R1〜Rnと分波器17とを備えている。光周波数多重送信局12に入射された光周波数多重信号は、分波器17によって分波され、光受信機R1〜Rnによってそれぞれ受信される。
【0020】
次に、本発明の実施形態に係る光周波数分割多重伝送システムの第2の構成について図2に基いて説明する。この構成は、図1に示した第1の構成における光周波数多重送信局11とは異なり、連続するNチャンネルをそれぞれユニット化したM個のベースユニットU1〜UMを光周波数多重送信局21は有している(N,Mは2以上の整数)。k番目のベースユニットUkは、当該ベースユニットUk内における第1〜第Nチャンネルの光送信機TN(k−1)+1〜TNkと、各光送信機TN(k−1)+1〜TNkから出力された光信号の偏波状態をそれぞれ変化させるN個の偏波状態制御器Pと、1つの合波器22とを備えている。光送信機T1〜Tnはそれぞれ光周波数f1〜fnの光信号を出力する。光送信機T1〜Tnから出力された各光信号は偏波状態が偏波状態制御器Pによって変化させられてベースユニットU1〜UMごとに各合波器22に入射され、各合波器22から出力された光周波数多重信号は合波器23に入射される。合波器23によって合波された光周波数多重信号は、光周波数多重送信局21の外部に出力される。なお、各ベースユニットU内のチャンネル数は互いに異なるものであってもよい。
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る光周波数分割多重伝送システムにおいて用いられる、あるいは関連する周波数配置について図3から図7に基いて説明する。まず、等間隔(Equally Spaced:ES)配置は、図3に示すように、隣接するチャンネルの光送信機T1〜Tnから出力される光信号間の光周波数間隔が等間隔である周波数配置である。ES配置は、上記第1または第2の構成の何れにも用いることができる。チャンネル数Nc(=n)が19である場合のES配置の一例が図3に示されている。ここで、チャンネル周波数Fc=fi−f1であり、周波数間隔△fc=fi+1−fiである。
【0022】
不等間隔(Unequally Spaced:US)配置は、図4に示すように、各チャンネルの光送信機T1〜Tnから出力される任意の2つの光信号間の光周波数間隔が不等間隔である周波数配置である。US配置は、上記第1または第2の構成の何れにも用いることができる。
【0023】
反復不等間隔(Repeated Unequally Spaced:RUS)配置は、図5に示すように、各ベースユニットUに含まれる光送信機Tから出力される光信号の光周波数配置をUS配置するとともに、各ベースユニットUから出力される光信号の光周波数群を光周波数軸上に等間隔に配置する周波数配置である。RUS配置は、上記第2の構成にのみ用いることができる。チャンネル数Nc(=n)が19、ユニット数NU(=m)が4である場合のRUS配置の一例が図5に示されている。
【0024】
等間隔RUS(Equally Spaced RUS:ERUS)配置は、図6に示すように、各ベースユニットUに含まれる光送信機Tから出力される光信号の光周波数配置をUS配置するとともに、各ベースユニットUから出力される光信号の光周波数群を光周波数軸上に隣接するベースユニットU間における周波数間隔を等間隔△fSに配置する周波数配置である。これにより、ベースユニットU内におけるチャンネルの最大周波数が当該ベースユニットUと隣接するベースユニットU内におけるチャンネルの最小周波数が等しくなるように配置される。ERUS配置は、上記第2の構成にのみ用いることができる。チャンネル数Nc(=n)が19、ユニット数NU(=m)が3である場合のERUS配置の一例が図6に示されている。
【0025】
不等間隔RUS(Unequally Spaced RUS:URUS)配置は、図7に示すように、各ベースユニットUに含まれる光送信機Tから出力される光信号の光周波数配置をUS配置するとともに、各ベースユニットUから出力される光信号の光周波数群を光周波数軸上に隣接するベースユニットU間における周波数間隔を不等間隔に配置する周波数配置である。URUS配置は、上記第2の構成にのみ用いることができる。チャンネル数Nc(=n)が19、ユニット数NU(=m)が3である場合のRUS配置の一例が図7に示されている。
【0026】
次に、本発明の実施形態に係る光周波数分割多重伝送システムの第1または第2の構成において用いられる偏波配置について図8(a)から図8(d)に基いて説明する。なお、各チャンネルの光送信機T1〜Tnから出力される光信号の偏波状態は、各チャンネルの偏波状態制御器Pが必要に応じて変化させる。まず、第1の偏波配置は、図8(a)に示すように、各チャンネルの光送信機T1〜Tnから出力される全て光信号の偏波が一定となるように偏波が配置される。第2の偏波配置は、図8(b)に示すように、隣接するチャンネルの光送信機Tから出力される光信号の偏波が直交するように偏波が配置される。第3の偏波配置は、図8(c)に示すように、ベースユニットU内の各光送信機Tから出力される光信号の偏波が一定となるようにするとともに隣接するベースユニットU間から出力される光信号で偏波が直交するように偏波が配置される。さらに、第4の偏波配置は、図8(d)に示すように、各チャンネルの光送信機T1〜Tnから出力される光信号の偏波が光ファイバ13の零分散周波数f0を境界として直交するように偏波が配置される。
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る光周波数分割多重伝送システムの第1または第2の構成において、周波数配置と偏波配置とを組み合わせて行った数値計算について図9から図1に基いて説明する。図9は、周波数配置と偏波配置とを組み合わせて式(8)から平均FMW光効率ηを数値計算した結果を示すグラフである。入射信号光強度は0.5mW(−3dB)とした。周波数配置はES配置、RUS配置、ERUS配置、URUS配置とし、図3、図5から図7に示した各周波数配置の配置例を用いた。偏波配置は上記の第1から第4の偏波配置を用いた。図9から分かるように、第1の偏波配置とした場合に比べて、第2から第4の偏波配置とした場合の方が上記全ての周波数配置において平均FMW光効率が低減している。また、ES配置とした場合に比べて、RUS配置、ERUS配置、URUS配置とした場合の方が上記全ての偏波配置において平均FMW光効率が低減している。平均FMW光効率の最大値はES配置かつ第1の偏波配置とした場合における9.4dBであり、平均FMW光効率の最大値はURUS配置かつ第4の偏波配置とした場合における−30.6dBであって最大値よりも40dB低減している。
【0028】
図10および図11は、周波数配置と偏波配置とを組み合わせて式(16)から伝送速度10Gb/sにおけるビットエラーレートPeを数値計算した結果を示すグラフである。これらの図には、周波数配置をES配置とし偏波配置を上記第1の偏波配置とした場合と、周波数配置をES配置、RUS配置、ERUS配置、URUS配置とし偏波配置を上記第4の偏波配置とした場合が表されている。なお、周波数配置は図3、図5から図7に示した各周波数配置の配置例を用い、チャンネル10におけるビットエラーレートPeを式(16)から計算した。図10から分かるように、周波数配置をES配置とし偏波配置を第1の偏波配置とした場合に比べて、周波数配置をES配置、RUS配置、ERUS配置、URUS配置とし偏波配置を上記第4の偏波配置とした場合の方が全ての周波数配置においてビットレートエラーPeが低減している。また、第4の偏波配置と周波数配置との組み合わせでは、ES配置と組み合わせた場合に比べて、RUS配置、ERUS配置、URUS配置と組み合わせた場合の方がビットレートエラーPeが低減している。第4の偏波配置とRUS配置、ERUS配置、URUS配置とを組み合わせた場合、ほぼビットレートエラーPeが同一であるが、図11から分かるように、RUS配置、ERUS配置、URUS配置との順にビットレートエラーPeが低減している。
【0029】
図12および図13は、第1の偏波配置と各周波数配置とを組み合わせてパワーペナルティを式(21)から数値計算した結果を示すグラフである。これらの図には、周波数配置をES配置、RUS配置、ERUS配置、URUS配置とし偏波配置を上記第4の偏波配置とした場合が表されている。なお、周波数配置は図3、図5から図7に示した各周波数配置の配置例を用いた。図12から分かるように、周波数配置をES配置とした場合に比べて、周波数配置をES配置、RUS配置、ERUS配置、URUS配置とした場合の方がパワーペナルティが大幅に低減している。RUS配置、ERUS配置、URUS配置ではほぼパワーペナルティがほぼ0で同一であるが、図13から分かるように、RUS配置、ERUS配置、URUS配置との順にパワーペナルティが低減している。
【0030】
上記の数値計算の結果から分かるように、周波数配置をES配置としたとき、偏波配置を第1または第2の偏波配置とする場合に比べて、偏波配置を第3または第4の偏波配置とする場合の方が、FWM光が低減する。また、周波数配置をES配置、RUS配置、ERUS配置、URUS配置の何れかとしたとき、偏波配置を第1の偏波配置とする場合に比べて、偏波配置を第2から第4の偏波配置とする場合の方が、FWM光が低減する。そして、周波数配置をURUS配置とし偏波配置を第4の偏波配置とした場合、FWM光が最も低減する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る光周波数分割多重伝送システムの第1の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光周波数分割多重伝送システムの第2の構成を示すブロック図である。
【図3】ES配置の説明図と配置例を示す表である。
【図4】US配置の説明図である。
【図5】RUS配置の説明図と配置例を示す表である。
【図6】ERUS配置の説明図と配置例を示す表である。
【図7】URUS配置の説明図と配置例を示す表である。
【図8】偏波配置の説明図であり、(a)は第1の偏波配置を、(b)は第2の偏波配置を(c)は第3の偏波配置を(d)は第4の偏波配置をそれぞれ示す。
【図9】平均FMW光効率特性を示すグラフである。
【図10】ビットエラーレート特性を示すグラフである。
【図11】ビットエラーレート特性を示すグラフである。
【図12】パワーペナルティ特性を示すグラフである。
【図13】パワーペナルティ特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
11、21 光周波数多重送信局
12 光周波数多重受信局
13 光ファイバ
14、15光増幅器
16、22、23合波器
17 分波器
P 偏波状態制御器
R1〜Rn 光受信機
T1〜Tn 光送信機
U1〜Us ベースユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、光周波数分割多重伝送システム、特に四光波混合により発生する雑音光を低減することが可能な光周波数分割多重伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信システムは、光信号を光周波数領域で高密度多重化し伝送する光周波数分割多重(Frequency Division Multiplexing:FDM)伝送方式によって伝送容量が飛躍的に増大した。ところが、光ファイバ中で長距離にわたり光信号を伝送させるため、光ファイバの非線形効果が顕著に現われるようになった。特に、四光波混合(Four Wave Mixing:FWM)により発生するFWM雑音光が伝送に与える影響は大きく、FWM雑音光の発生を抑制する必要がある。ここで、四光波混合とは、3つ異なる光周波数fp,fq,fr(r≠p,q)の光から、光ファイバの3次非線形光学効果により、光周波数fFWM =fp+fq−frの光が発生する現象である。
【0003】
FWM雑音光は、光周波数配置が等間隔(ES)配置の時に最も大きくなることが知られている。そこで、光周波数配置を、任意の光信号間の光周波数間隔を不等間隔とする不等間隔(US)配置、不等間隔(US)配置の光周波数群を光周波数軸上に等間隔に配置する反復不等間隔(RUS)配置、不等間隔(RUS)配置の光周波数群を光周波数軸上に隣接する光周波数群間における周波数間隔を等間隔に配置する等間隔RUS(ERUS)配置、不等間隔(RUS)配置の光周波数群を光周波数軸上に隣接する光周波数群間における周波数間隔を不等間隔に配置する不等間隔RUS(URUS)配置とすることにより、FWM雑音光を低減することが提案されている(非特許文献1参照。)。
【0004】
また、FWM雑音光は、偏波配置によっても低減することが知られている。例えば、FWM雑音光の発生効率が、発生に関わる光信号の偏波が一致した場合に高く、直交した場合には低くなることが知られている(特許文献1の段落0010参照。)。
【特許文献1】特開平2001−103037号公報
【非特許文献1】S.Kojima and T.Numai, Jounal of Lightwave Technology, vol.24, No.24, pp.2786−2797,JULY 2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、周波数配置と偏波配置とを適切に組み合わせてFWM雑音光を効果的に低減することが可能な光周波数分割多重伝送システムは提案されていない。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、周波数配置と偏波配置とを適切に組み合わせてFWM雑音光を効果的に低減することが可能な光周波数分割多重伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の光周波数分割多重伝送システムは、光ファイバを介して、光の周波数の異なる複数のチャンネルの光信号を多重化して伝送する光周波数分割多重伝送システムにおいて、前記複数のチャンネルにおける周波数配置を、隣接するチャンネルの周波数間隔が等しい等間隔配置とするとともに、前記複数のチャンネルにおける偏波配置を、前記複数のチャンネルに含まれ連続するNチャンネルからなるM個のベースユニット(N、Mはともに2以上の整数)の各ベースユニットにおける偏波を一定とするとともに隣接する前記ベースユニット間で偏波が直交するように配置、または、前記光ファイバの零分散周波数を境界として偏波が直交するように配置することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の光周波数分割多重伝送システムは、光ファイバを介して、光の周波数の異なる複数のチャンネルの光信号を多重化して伝送する光周波数分割多重伝送システムにおいて、前記複数のチャンネルに含まれ連続するNチャンネルからなるM個のベースユニット(N、Mはともに2以上の整数)を備え、前記複数のチャンネルにおける周波数配置を、各前記ベースユニット内のチャンネルの周波数間隔が全て異なる不等間隔配置とするとともに前記ベースユニット内のチャンネルの最大周波数が当該ベースユニットと隣接するベースユニット内のチャンネルの最小周波数とが等しくなるように配置する反復不等間隔配置、各前記ベースユニット内のチャンネルの周波数間隔が全て異なる不等間隔配置とするとともに隣接するベースユニット間における周波数間隔が等しくなるように配置する等間隔反復不等間隔配置、各前記ベースユニット内のチャンネルの周波数間隔が全て異なる不等間隔配置とするとともに隣接するベースユニット間における周波数間隔が全て異なるように配置する不等間隔反復不等間隔配置、の何れか1つとするとともに、前記複数のチャンネルにおける偏波配置を、隣接する前記チャンネル間で偏波が直交するように配置、各前記ベースユニット内のチャンネルの偏波を一定とするとともに隣接する前記ベースユニット間で偏波が直交するように配置、前記光ファイバの零分散周波数を境界として偏波が直交するように配置、の何れか1つとすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の光周波数分割多重伝送システムによれば、周波数配置を等間隔配置とするとき、従来の如く複数のチャンネルにおける偏波を一定とするように偏波配置する場合に比べて、四光波混合により発生する雑音光を低減することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の光周波数分割多重伝送システムによれば、従来の如く複数のチャンネルにおける偏波を一定に偏波配置し周波数配置を等間隔配置、不等間隔配置、反復等間隔(RUS)配置、等間隔RUS配置、不等間隔RUS配置の何れか1つとする場合に比べて、四光波混合により発生する雑音光を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る光周波数分割多重伝送システムについて、図面に基づき説明する。まず、本発明に係る光周波数分割多重伝送システムに関する基本原理について説明する。3つ異なる光周波数fp,fq,fr(r≠p,q)の光から、四光波混合(Four Wave Mixing:FWM)により発生するFWM光のFWM光の光周波数fFWMは、
【数1】
である。光信号とFWM光は単色光であり、光波伝送モードは基本モードであり、光はz軸に沿って伝送し、電界はx軸に沿って振動していると仮定すると、非線形分極PNL は、
【数2】
で与えられる。ここで、Ep,Eq,Erは光ファイバ内を伝送する光信号の電界、X1111 は非線形感受率である。Dは縮退係数であり、fp=fq=frのときD=1、fp=fq≠frのときD=3、fp≠fq≠frのときD=6の値となる。
【0012】
位置zにおける光信号の電界El(z)は、
【数3】
で与えられる。ここで、αは光吸収係数、klは光信号の波数である。そこで、FWM光の電界E(z)は、
【数4】
となる。ここで、iは虚数単位、ω=2πfpqr はFWM光の角周波数、nr は光ファイバの実効屈折率、cは真空中の光速である。また、光ファイバ端ではz=0であり、波数差△βは、
【数5】
で表される。ここで、k=nrω/cはFWM光の波数である。
【0013】
ところで、時間平均FWM光強度Iは、
【数6】
で与えられる。なお、積分は光ファイバの全長にわたって行われる。光強度Ip,Iq,Irを用いると式(6)は、
【数7】
と書き換えられる。ここで、Acffは光ファイバの実効コア面積である。
【数8】
で規定される効率η(0≦η≦1)を導入すると、時間平均FWM光強度Iは、
【数9】
で与えられる。
【0014】
式(5)より、波数差△βは、FWM光周波数f=fpqr における波数β(f)を用いて、
【数10】
で表される。ここで、fp,fq,frは信号の光周波数である。波数差△βが十分に小さいとき、β(f)は零分散周波数f0の周りに展開することができ、波数差△βは、
【数11】
で与えられる。ここで、λはFWM光の波長、dDc/dλは光ファイバの微分分散係数である。本明細書においては、式(8)、式(9)および式(11)を数値計算のために用いた。零分散周波数f0の周辺の光周波数に着目した理由は、FWMによる雑音が零分散周波数f0周りの光周波数にて最も大きいためである。
【0015】
次に、Ip=Iq=IrおよびdDc/dλが一定であると仮定する。その結果、時間平均光強度Iは、効率ηと縮退係数Dとによって与えられる。時間平均光強度Iは、
【数12】
と表される。ここで、
【数13】
である。
【0016】
チャンネルnの光周波数と同じ光周波数fnをもつFWM光は雑音となる。一般的に、光信号の光周波数を有する複数のFWM光が存在し、FMW光周波数fnは、
【数14】
で表される。ここで、mは正整数である。光周波数fnをもつFWM光の全効率ηnFWMは、
【数15】
で与えられる。ここで、ηnFWM(i)(i=1,2,・・・m)はFWM光効率であり、式(12)によって与えられる。
【0017】
強度変調/直接検出方式(Intensity Modulated/Direct Detection:IM/DD)における非零復帰(Non Return to Zero:NRZ)信号のビットエラーレート(ビット誤り率、Bit Error Rate:BER)が計算される。ガウス近似を用いてIM/DD伝送における光ファイバFWMのビットエラーレートPe及びパワーペナルティを求めることができる。ガウス近似を用いると、ビットエラーレートPeは、
【数16】
で表され、
【数17】
なお、
【数18】
【数19】
【数20】
【数21】
である。ここで、PSは光信号の入射ピークパワー、PS0はFWMが無いときに、システムで要求されるBERを実現するための光信号の入射ピークパワー、ηは検知器の量子効率、eは電気素量、hはプランク定数、fは光周波数、Nthは熱雑音パワー、Nshはショット雑音パワー、Q0はシステムで要求されるBERに対応するQ値である。そして、k=2BMxで定められる。ここで、Bは電気フィルターのバンド幅、Mはアバランシェフォトダイオード(Avalanche Photo Diode:APD)の増幅率、xはAPD過剰雑音である。
【0018】
そして、APDの量子効率ηを80%、光ファイバとAPDとの光結合効率を−6dBと仮定する。チャンネル数NCを19とし、CIM(m)における選択チャンネルsを10とする。光ファイバの零分散周波数は光信号の全バンド幅の中間点に一致するとする。受信器パラメータをB=2.5GHz×0.7,5.0GHz×0.7,10.0GHz×0.7、M=15、x=0.7とすると、非線形係数κは、
【数22】
で与えられ、κ=5.84×10−6m−2W−2となる。
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る光周波数分割多重伝送システムの第1の構成について図1に基いて説明する。この構成は、光周波数多重送信局11、光周波数多重受信局12、伝送用の光ファイバ13、光増幅器14,15とからなっている。光周波数多重送信局11は、第1〜第nチャンネルの光送信機T1〜Tnと、各光送信機T1〜Tnから出力された光信号の偏波状態をそれぞれ変化させるn個の偏波状態制御器Pと、1つの合波器16とを備えている。光送信機T1〜Tnはそれぞれ光周波数f1〜fnの光信号を出力する。光送信機T1〜Tnから出力された各光信号は偏波状態が偏波状態制御器Pによって変化させられて合波器16に入射される。合波器16によって合波された光周波数多重信号は、光周波数多重送信局11の外部に出力される。光周波数多重送信局11から出力された光周波数多重信号は、光増幅器14で増幅され、光ファイバ13を伝送して、光増幅器15で再び増幅されて光周波数多重受信局12に入射される。光周波数多重受信局12は、第1〜第nチャンネルの光受信機R1〜Rnと分波器17とを備えている。光周波数多重送信局12に入射された光周波数多重信号は、分波器17によって分波され、光受信機R1〜Rnによってそれぞれ受信される。
【0020】
次に、本発明の実施形態に係る光周波数分割多重伝送システムの第2の構成について図2に基いて説明する。この構成は、図1に示した第1の構成における光周波数多重送信局11とは異なり、連続するNチャンネルをそれぞれユニット化したM個のベースユニットU1〜UMを光周波数多重送信局21は有している(N,Mは2以上の整数)。k番目のベースユニットUkは、当該ベースユニットUk内における第1〜第Nチャンネルの光送信機TN(k−1)+1〜TNkと、各光送信機TN(k−1)+1〜TNkから出力された光信号の偏波状態をそれぞれ変化させるN個の偏波状態制御器Pと、1つの合波器22とを備えている。光送信機T1〜Tnはそれぞれ光周波数f1〜fnの光信号を出力する。光送信機T1〜Tnから出力された各光信号は偏波状態が偏波状態制御器Pによって変化させられてベースユニットU1〜UMごとに各合波器22に入射され、各合波器22から出力された光周波数多重信号は合波器23に入射される。合波器23によって合波された光周波数多重信号は、光周波数多重送信局21の外部に出力される。なお、各ベースユニットU内のチャンネル数は互いに異なるものであってもよい。
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る光周波数分割多重伝送システムにおいて用いられる、あるいは関連する周波数配置について図3から図7に基いて説明する。まず、等間隔(Equally Spaced:ES)配置は、図3に示すように、隣接するチャンネルの光送信機T1〜Tnから出力される光信号間の光周波数間隔が等間隔である周波数配置である。ES配置は、上記第1または第2の構成の何れにも用いることができる。チャンネル数Nc(=n)が19である場合のES配置の一例が図3に示されている。ここで、チャンネル周波数Fc=fi−f1であり、周波数間隔△fc=fi+1−fiである。
【0022】
不等間隔(Unequally Spaced:US)配置は、図4に示すように、各チャンネルの光送信機T1〜Tnから出力される任意の2つの光信号間の光周波数間隔が不等間隔である周波数配置である。US配置は、上記第1または第2の構成の何れにも用いることができる。
【0023】
反復不等間隔(Repeated Unequally Spaced:RUS)配置は、図5に示すように、各ベースユニットUに含まれる光送信機Tから出力される光信号の光周波数配置をUS配置するとともに、各ベースユニットUから出力される光信号の光周波数群を光周波数軸上に等間隔に配置する周波数配置である。RUS配置は、上記第2の構成にのみ用いることができる。チャンネル数Nc(=n)が19、ユニット数NU(=m)が4である場合のRUS配置の一例が図5に示されている。
【0024】
等間隔RUS(Equally Spaced RUS:ERUS)配置は、図6に示すように、各ベースユニットUに含まれる光送信機Tから出力される光信号の光周波数配置をUS配置するとともに、各ベースユニットUから出力される光信号の光周波数群を光周波数軸上に隣接するベースユニットU間における周波数間隔を等間隔△fSに配置する周波数配置である。これにより、ベースユニットU内におけるチャンネルの最大周波数が当該ベースユニットUと隣接するベースユニットU内におけるチャンネルの最小周波数が等しくなるように配置される。ERUS配置は、上記第2の構成にのみ用いることができる。チャンネル数Nc(=n)が19、ユニット数NU(=m)が3である場合のERUS配置の一例が図6に示されている。
【0025】
不等間隔RUS(Unequally Spaced RUS:URUS)配置は、図7に示すように、各ベースユニットUに含まれる光送信機Tから出力される光信号の光周波数配置をUS配置するとともに、各ベースユニットUから出力される光信号の光周波数群を光周波数軸上に隣接するベースユニットU間における周波数間隔を不等間隔に配置する周波数配置である。URUS配置は、上記第2の構成にのみ用いることができる。チャンネル数Nc(=n)が19、ユニット数NU(=m)が3である場合のRUS配置の一例が図7に示されている。
【0026】
次に、本発明の実施形態に係る光周波数分割多重伝送システムの第1または第2の構成において用いられる偏波配置について図8(a)から図8(d)に基いて説明する。なお、各チャンネルの光送信機T1〜Tnから出力される光信号の偏波状態は、各チャンネルの偏波状態制御器Pが必要に応じて変化させる。まず、第1の偏波配置は、図8(a)に示すように、各チャンネルの光送信機T1〜Tnから出力される全て光信号の偏波が一定となるように偏波が配置される。第2の偏波配置は、図8(b)に示すように、隣接するチャンネルの光送信機Tから出力される光信号の偏波が直交するように偏波が配置される。第3の偏波配置は、図8(c)に示すように、ベースユニットU内の各光送信機Tから出力される光信号の偏波が一定となるようにするとともに隣接するベースユニットU間から出力される光信号で偏波が直交するように偏波が配置される。さらに、第4の偏波配置は、図8(d)に示すように、各チャンネルの光送信機T1〜Tnから出力される光信号の偏波が光ファイバ13の零分散周波数f0を境界として直交するように偏波が配置される。
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る光周波数分割多重伝送システムの第1または第2の構成において、周波数配置と偏波配置とを組み合わせて行った数値計算について図9から図1に基いて説明する。図9は、周波数配置と偏波配置とを組み合わせて式(8)から平均FMW光効率ηを数値計算した結果を示すグラフである。入射信号光強度は0.5mW(−3dB)とした。周波数配置はES配置、RUS配置、ERUS配置、URUS配置とし、図3、図5から図7に示した各周波数配置の配置例を用いた。偏波配置は上記の第1から第4の偏波配置を用いた。図9から分かるように、第1の偏波配置とした場合に比べて、第2から第4の偏波配置とした場合の方が上記全ての周波数配置において平均FMW光効率が低減している。また、ES配置とした場合に比べて、RUS配置、ERUS配置、URUS配置とした場合の方が上記全ての偏波配置において平均FMW光効率が低減している。平均FMW光効率の最大値はES配置かつ第1の偏波配置とした場合における9.4dBであり、平均FMW光効率の最大値はURUS配置かつ第4の偏波配置とした場合における−30.6dBであって最大値よりも40dB低減している。
【0028】
図10および図11は、周波数配置と偏波配置とを組み合わせて式(16)から伝送速度10Gb/sにおけるビットエラーレートPeを数値計算した結果を示すグラフである。これらの図には、周波数配置をES配置とし偏波配置を上記第1の偏波配置とした場合と、周波数配置をES配置、RUS配置、ERUS配置、URUS配置とし偏波配置を上記第4の偏波配置とした場合が表されている。なお、周波数配置は図3、図5から図7に示した各周波数配置の配置例を用い、チャンネル10におけるビットエラーレートPeを式(16)から計算した。図10から分かるように、周波数配置をES配置とし偏波配置を第1の偏波配置とした場合に比べて、周波数配置をES配置、RUS配置、ERUS配置、URUS配置とし偏波配置を上記第4の偏波配置とした場合の方が全ての周波数配置においてビットレートエラーPeが低減している。また、第4の偏波配置と周波数配置との組み合わせでは、ES配置と組み合わせた場合に比べて、RUS配置、ERUS配置、URUS配置と組み合わせた場合の方がビットレートエラーPeが低減している。第4の偏波配置とRUS配置、ERUS配置、URUS配置とを組み合わせた場合、ほぼビットレートエラーPeが同一であるが、図11から分かるように、RUS配置、ERUS配置、URUS配置との順にビットレートエラーPeが低減している。
【0029】
図12および図13は、第1の偏波配置と各周波数配置とを組み合わせてパワーペナルティを式(21)から数値計算した結果を示すグラフである。これらの図には、周波数配置をES配置、RUS配置、ERUS配置、URUS配置とし偏波配置を上記第4の偏波配置とした場合が表されている。なお、周波数配置は図3、図5から図7に示した各周波数配置の配置例を用いた。図12から分かるように、周波数配置をES配置とした場合に比べて、周波数配置をES配置、RUS配置、ERUS配置、URUS配置とした場合の方がパワーペナルティが大幅に低減している。RUS配置、ERUS配置、URUS配置ではほぼパワーペナルティがほぼ0で同一であるが、図13から分かるように、RUS配置、ERUS配置、URUS配置との順にパワーペナルティが低減している。
【0030】
上記の数値計算の結果から分かるように、周波数配置をES配置としたとき、偏波配置を第1または第2の偏波配置とする場合に比べて、偏波配置を第3または第4の偏波配置とする場合の方が、FWM光が低減する。また、周波数配置をES配置、RUS配置、ERUS配置、URUS配置の何れかとしたとき、偏波配置を第1の偏波配置とする場合に比べて、偏波配置を第2から第4の偏波配置とする場合の方が、FWM光が低減する。そして、周波数配置をURUS配置とし偏波配置を第4の偏波配置とした場合、FWM光が最も低減する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る光周波数分割多重伝送システムの第1の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光周波数分割多重伝送システムの第2の構成を示すブロック図である。
【図3】ES配置の説明図と配置例を示す表である。
【図4】US配置の説明図である。
【図5】RUS配置の説明図と配置例を示す表である。
【図6】ERUS配置の説明図と配置例を示す表である。
【図7】URUS配置の説明図と配置例を示す表である。
【図8】偏波配置の説明図であり、(a)は第1の偏波配置を、(b)は第2の偏波配置を(c)は第3の偏波配置を(d)は第4の偏波配置をそれぞれ示す。
【図9】平均FMW光効率特性を示すグラフである。
【図10】ビットエラーレート特性を示すグラフである。
【図11】ビットエラーレート特性を示すグラフである。
【図12】パワーペナルティ特性を示すグラフである。
【図13】パワーペナルティ特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
11、21 光周波数多重送信局
12 光周波数多重受信局
13 光ファイバ
14、15光増幅器
16、22、23合波器
17 分波器
P 偏波状態制御器
R1〜Rn 光受信機
T1〜Tn 光送信機
U1〜Us ベースユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを介して、光の周波数の異なる複数のチャンネルの光信号を多重化して伝送する光周波数分割多重伝送システムにおいて、
前記複数のチャンネルにおける周波数配置を、隣接するチャンネルの周波数間隔が等しい等間隔配置とするとともに、
前記複数のチャンネルにおける偏波配置を、
前記複数のチャンネルに含まれ連続するNチャンネルからなるM個のベースユニット(N、Mはともに2以上の整数)の各ベースユニットにおける偏波を一定とするとともに隣接する前記ベースユニット間で偏波が直交するように配置、
または、前記光ファイバの零分散周波数を境界として偏波が直交するように配置することを特徴とする光周波数分割多重伝送システム。
【請求項2】
光ファイバを介して、光の周波数の異なる複数のチャンネルの光信号を多重化して伝送する光周波数分割多重伝送システムにおいて、
前記複数のチャンネルに含まれ連続するNチャンネルからなるM個のベースユニット(N、Mはともに2以上の整数)を備え、
前記複数のチャンネルにおける周波数配置を、
各前記ベースユニット内のチャンネルの周波数間隔が全て異なる不等間隔配置とするとともに前記ベースユニット内のチャンネルの最大周波数が当該ベースユニットと隣接するベースユニット内のチャンネルの最小周波数とが等しくなるように配置する反復不等間隔配置、
各前記ベースユニット内のチャンネルの周波数間隔が全て異なる不等間隔配置とするとともに隣接するベースユニット間における周波数間隔が等しくなるように配置する等間隔反復不等間隔配置、
各前記ベースユニット内のチャンネルの周波数間隔が全て異なる不等間隔配置とするとともに隣接するベースユニット間における周波数間隔が全て異なるように配置する不等間隔反復不等間隔配置、
の何れか1つとするとともに、
前記複数のチャンネルにおける偏波配置を、
隣接する前記チャンネル間で偏波が直交するように配置、
各前記ベースユニット内のチャンネルの偏波を一定とするとともに隣接する前記ベースユニット間で偏波が直交するように配置、
前記光ファイバの零分散周波数を境界として偏波が直交するように配置、
の何れか1つとすることを特徴とする光周波数分割多重伝送システム。
【請求項1】
光ファイバを介して、光の周波数の異なる複数のチャンネルの光信号を多重化して伝送する光周波数分割多重伝送システムにおいて、
前記複数のチャンネルにおける周波数配置を、隣接するチャンネルの周波数間隔が等しい等間隔配置とするとともに、
前記複数のチャンネルにおける偏波配置を、
前記複数のチャンネルに含まれ連続するNチャンネルからなるM個のベースユニット(N、Mはともに2以上の整数)の各ベースユニットにおける偏波を一定とするとともに隣接する前記ベースユニット間で偏波が直交するように配置、
または、前記光ファイバの零分散周波数を境界として偏波が直交するように配置することを特徴とする光周波数分割多重伝送システム。
【請求項2】
光ファイバを介して、光の周波数の異なる複数のチャンネルの光信号を多重化して伝送する光周波数分割多重伝送システムにおいて、
前記複数のチャンネルに含まれ連続するNチャンネルからなるM個のベースユニット(N、Mはともに2以上の整数)を備え、
前記複数のチャンネルにおける周波数配置を、
各前記ベースユニット内のチャンネルの周波数間隔が全て異なる不等間隔配置とするとともに前記ベースユニット内のチャンネルの最大周波数が当該ベースユニットと隣接するベースユニット内のチャンネルの最小周波数とが等しくなるように配置する反復不等間隔配置、
各前記ベースユニット内のチャンネルの周波数間隔が全て異なる不等間隔配置とするとともに隣接するベースユニット間における周波数間隔が等しくなるように配置する等間隔反復不等間隔配置、
各前記ベースユニット内のチャンネルの周波数間隔が全て異なる不等間隔配置とするとともに隣接するベースユニット間における周波数間隔が全て異なるように配置する不等間隔反復不等間隔配置、
の何れか1つとするとともに、
前記複数のチャンネルにおける偏波配置を、
隣接する前記チャンネル間で偏波が直交するように配置、
各前記ベースユニット内のチャンネルの偏波を一定とするとともに隣接する前記ベースユニット間で偏波が直交するように配置、
前記光ファイバの零分散周波数を境界として偏波が直交するように配置、
の何れか1つとすることを特徴とする光周波数分割多重伝送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−227753(P2008−227753A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60825(P2007−60825)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】
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