説明

光増幅器および光増幅装置

【課題】信号光を劣化させずに増幅すること。
【解決手段】光増幅器100は、入力された信号光101を光パラメトリック増幅する。光増幅器100は、励起光源110と、光カプラ120と、増幅部130と、光フィルタ140と、を備えている。励起光源110は、信号光101とは波長が異なる励起光102を出力する。光カプラ120は、励起光源110によって出力された励起光102と信号光101を合波する。増幅部130は、光カプラ120によって合波された光を透過させる非線形光学媒質131,133を有し、信号光101と励起光102に起因するアイドラ光103を非線形光学媒質131,133の途中で除去する。光フィルタ140は、増幅部130を透過した光から信号光101を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号光を増幅する光増幅器および光増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
信号光を増幅する従来技術として、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier:エルビウム添加ファイバ増幅器)や、非線形光学媒質を用いた光パラメトリック増幅器(OPA:Optical Parametric Amplifier)がある。EDFAは、添加されている希土類元素(Er)に依存した利得帯域を持つ。これに対して、光パラメトリック増幅器は、光ファイバの零分散波長を調整することで利得帯域が確保されるため、広い利得帯域(たとえば、下記非特許文献1参照。)と高い利得量(たとえば、下記非特許文献2参照。)が得られる。また、光パラメトリック増幅器は低い雑音指数を実現することができる(たとえば、下記非特許文献3参照。)。
【0003】
また、EDFAは、比較的遅い緩和時間を持つ誘導放出過程により信号光を増幅するため、利得飽和領域においても信号光波形に変化を与えない。これに対して、光パラメトリック増幅器においては高速なパラメトリック過程により増幅するため、利得飽和領域において信号光波形の強度に対して非線形な出力をするため波形整形器としても用いられる。
【0004】
光パラメトリック増幅器は、信号光と非線形光学媒質の零分散波長付近の波長である励起光を合波し、非線形光学媒質内で光パラメトリック過程により信号光を増幅する。光パラメトリック増幅器は、たとえば、信号光と異なる波長の励起光、信号光と励起光を合波する光カプラ、非線形光学媒質および信号光を取り出す光フィルタを備える。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M−C.Ho,K.Uesaka,M.Marhic,Y.Akasaka,and L.G.Kazovsky,“200−nm−Bandwidth Fiber Optical Amplifier Combining Parametric and Raman Gain”J.Lightw.Technol,19,pp.977−981,2001
【非特許文献2】Thomas Torounidis,Peter A.Andrekson,and Bengt−Erik Olsson,“Fiber−Optical Parametric Amplifier With 70−dB Gain”IEEE Photon.Technol.Lett,18,pp.1194−1196,2006
【非特許文献3】Tong,C. Lundstrom,A. Bogris,M.Karlsson,P.Andrekson,and D.Syvridis,“Measurement of Sub−1dB Noise Figure in a Non−Degenerate Cascaded Phase−Sensitive Fibre Parametric Amplifier,”,35th European Conference on Optical Communication,Paper 1.1.2,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、光パラメトリック過程で非線形光学媒質において異常分散波長の光が発生するため、変調不安定現象(非線形光学効果)により雑音が増大する。このため、信号光を増幅する際に雑音が大きくなり信号品質が劣化するという問題がある。つぎに、光パラメトリック増幅による雑音の増大について具体的に説明する。
【0007】
図8−1〜図8−4は、光パラメトリック増幅による雑音の増大を示す図である。図8−1〜図8−4において、横軸は波長(λ)を示し、縦軸は光パワーを示している。図8−1に示すように、光パラメトリック増幅器においては、互いに波長が異なる信号光801および励起光802が合波されて非線形光学媒質へ入力される。波長λsは信号光801の波長を示している。波長λpは励起光802の波長を示している。
【0008】
信号光801および励起光802が非線形光学媒質へ入力されると、図8−2に示すように、高次の効果として、四光波混合によってアイドラ光803が発生する。波長λiはアイドラ光803の波長を示している。アイドラ光803の波長λiは異常分散波長となるため、図8−3に示すように、アイドラ光803の雑音が増大する。
【0009】
このため、図8−4に示すように、雑音が増大したアイドラ光803は励起光802の強度を変調し、励起光802が大きな雑音を持つことになる。そして、大きな雑音を持った励起光802は信号光801の強度を変調することになるため、信号光801の雑音が増大する。このように、光パラメトリック増幅においては、非線形光学媒質においてアイドラ光803が発生するため、変調不安定(非線形光学効果)によって信号光801の雑音が増大する。
【0010】
開示の光増幅器および光増幅装置は、上述した問題点を解消するものであり、信号光の持つ雑音を増大させず信号品質を維持しつつ増幅することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、開示技術は、入力された信号光を光パラメトリック増幅する光増幅器において、前記信号光とは波長が異なる励起光を出力する励起光源と、前記励起光源によって出力された励起光と前記信号光を合波する合波部と、前記合波部によって合波された光を透過させる非線形光学媒質を有し、前記信号光と前記励起光に起因するアイドラ光を前記非線形光学媒質の途中で除去する増幅部と、前記増幅部を透過した光から前記信号光を抽出する抽出フィルタと、を備えることを要件とする。
【発明の効果】
【0012】
開示の光増幅器および光増幅装置によれば、信号光の持つ雑音を増大させずに信号品質を維持しつつ増幅することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1にかかる光増幅器を示す図である。
【図2】実施の形態2にかかる光増幅器を示す図である。
【図3】実施の形態3にかかる光増幅器を示す図である。
【図4】実施の形態4にかかる光増幅器を示す図である。
【図5】光パラメトリック増幅による利得飽和特性を示すグラフである。
【図6】実施の形態5にかかる光増幅装置を示す図である。
【図7】実施の形態6にかかる光増幅器を示す図である。
【図8−1】光パラメトリック増幅による雑音の増大を示す図(その1)である。
【図8−2】光パラメトリック増幅による雑音の増大を示す図(その2)である。
【図8−3】光パラメトリック増幅による雑音の増大を示す図(その3)である。
【図8−4】光パラメトリック増幅による雑音の増大を示す図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、開示の光増幅器および光増幅装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。開示の光増幅器および光増幅装置は、光パラメトリック増幅を行う非線形光学媒質の途中でアイドラ光を除去することで、非線形光学媒質によって増幅される光に含まれるアイドラ光を低減し、信号光の劣化を抑えつつ増幅する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる光増幅器を示す図である。図1において、信号光101および励起光102の横軸は時間(t)を示している。図1に示すように、実施の形態1にかかる光増幅器100は、励起光源110と、光カプラ120と、増幅部130と、光フィルタ140と、を備えている。光増幅器100は、前段の伝送路から入力された信号光101を光パラメトリック増幅する。信号光101は、たとえば、強度変調されたRZ(Return to Zero)信号である。信号光101の波長を波長λsとする。
【0016】
励起光源110は、励起光102を生成して光カプラ120へ出力する。励起光102は、信号光101とは波長が異なる励起光である。励起光102の波長を波長λpとする。また、励起光102は、たとえばCW光(Continuous Wave)である。
【0017】
光カプラ120は、信号光101と励起光102を合波して増幅部130へ出力する合波部である。符号120aは、光カプラ120から出力される光を示している。符号120aにおいて、横軸は波長(λ)を示し、縦軸は光パワーを示している(符号131a,132a,133aにおいても同様)。符号120aに示すように、光カプラ120から出力される光には、信号光101および励起光102が含まれている。
【0018】
増幅部130は、光カプラ120から出力された光を透過させる非線形光学媒質131,133を有し、信号光101と励起光源110に起因するアイドラ光を非線形光学媒質131,133の途中で除去する増幅部である。具体的には、増幅部130は、非線形光学媒質131と、光フィルタ132と、非線形光学媒質133と、を備えている。
【0019】
ここで、増幅部130において、光カプラ120から出力された光に含まれる信号光101を所望の利得で増幅するための非線形光学媒質の合計の長さをLとする。この場合に、非線形光学媒質131,133の各長さを、各長さの合計がLになるように設計する。たとえば、非線形光学媒質131,133の長さをそれぞれL/2とする。
【0020】
非線形光学媒質131は、光カプラ120から出力された光を透過させて光フィルタ132へ出力する第一非線形光学媒質である。符号131aは、非線形光学媒質131から出力される光を示している。符号131aに示すように、非線形光学媒質131から出力される光には、信号光101、励起光102およびアイドラ光103が含まれている。アイドラ光103は、信号光101と励起光102に起因して非線形光学媒質131の四光波混合によって発生する。アイドラ光103の波長を波長λiとする。波長λiは、たとえば、波長λsおよび波長λpを用いて波長λi=2λp−λsと表すことができる。
【0021】
光フィルタ132は、非線形光学媒質131から出力された光に含まれる信号光101および励起光102を透過させて非線形光学媒質133へ出力する。また、光フィルタ132は、非線形光学媒質131から出力された光に含まれるアイドラ光103を透過させずに除去する除去フィルタである。光フィルタ132には、たとえば多層膜フィルタなどの光帯域透過フィルタを用いることができる。
【0022】
光フィルタ132から出力される光には、信号光101および励起光102が含まれており、アイドラ光103は含まれていない。光フィルタ132の帯域透過特性132Aは、信号光101の波長λsおよび励起光102の波長λpを透過させ、アイドラ光103の波長λi=2λp−λsを透過させないように設計されている。
【0023】
非線形光学媒質133は、光フィルタ132から出力された光を透過させて光フィルタ140へ出力する第二非線形光学媒質である。符号133aは、非線形光学媒質133から出力される光を示している。符号133aに示すように、非線形光学媒質133から出力される光には、信号光101、励起光102およびアイドラ光103が含まれている。
【0024】
非線形光学媒質133から出力される光には、非線形光学媒質133の四光波混合によって発生したアイドラ光103が含まれる。ただし、このアイドラ光103は、長さがL/2の非線形光学媒質133において発生したアイドラ光であるため、たとえば長さがLの非線形光学媒質において発生したアイドラ光より小さい。
【0025】
増幅部130は、たとえば、非線形光学媒質131、光フィルタ132および非線形光学媒質133を別々に形成して組み合わせることによって実現される。または、増幅部130は、アイドラ光103を除去するブラッググレーティングを非線形光学媒質の途中に部分形成することによって実現してもよい。この場合は、非線形光学媒質の両端がそれぞれ非線形光学媒質131および非線形光学媒質133となり、非線形光学媒質のブラッググレーティングが形成された部分が光フィルタ132となる。
【0026】
非線形光学媒質131,133のそれぞれは、たとえば励起光102の波長と一致または略一致する平均零分散波長を有する光ファイバによって実現することができる。または、非線形光学媒質131,133のそれぞれは、励起光102の波長と一致または略一致する平均零分散波長を有する周期分極ニオブ酸リチウムによって実現することができる。
【0027】
光フィルタ140は、増幅部130から出力された光に含まれる信号光101を透過させて後段へ出力する抽出フィルタである。また、光フィルタ140は、増幅部130から出力された光に含まれる励起光102およびアイドラ光103は透過させない。これにより、増幅部130によって増幅された信号光101を抽出して出力することができる。
【0028】
このように、実施の形態1にかかる光増幅器100によれば、非線形光学媒質131と非線形光学媒質133の間の光フィルタ132によって、非線形光学媒質131において発生するアイドラ光103を除去することができる。非線形光学媒質131と非線形光学媒質133の間(非線形光学媒質の途中)でアイドラ光103を除去することで、非線形光学媒質133において、非線形光学媒質131で発生したアイドラ光103がない状態で光パラメトリック増幅を行うことができる。このため、非線形光学媒質133におけるアイドラ光を介した雑音の増大を抑え、信号光101を劣化させずに増幅することができる。
【0029】
また、光フィルタ132によってアイドラ光103を除去しても信号光101と励起光102の相互作用は維持されるため、十分な利得を得ることができる。たとえば、増幅部130においては、長さLの非線形光学媒質を用いる場合と同等の利得を得ることができる。また、光フィルタ132は信号光101を透過させるため、非線形光学媒質133における利得帯域は狭まらず、増幅部130において十分な利得帯域を得ることができる。
【0030】
図1においては、増幅部130において2つの非線形光学媒質(非線形光学媒質131,133)を用いる構成について説明したが、非線形光学媒質は3つ以上用いてもよい。この場合は、非線形光学媒質の各間にアイドラ光103を除去する光フィルタを設けるとよい。これにより、非線形光学媒質の途中でアイドラ光103をこまめに除去し、アイドラ光103がより少ない状態で光パラメトリック増幅を行うことができる。このため、信号光をさらに劣化させずに増幅することができる。
【0031】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2にかかる光増幅器を示す図である。図2において、図1に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図2に示すように、実施の形態2にかかる光増幅器100は、図1に示した増幅部130に代えて帯域透過性非線形光学媒質210を備えている。光カプラ120は、信号光101と励起光102を合波した光を帯域透過性非線形光学媒質210へ出力する。
【0032】
帯域透過性非線形光学媒質210は、信号光101および励起光102を透過させて光フィルタ140へ出力し、アイドラ光103を透過させない帯域透過特性を有する非線形光学媒質である。帯域透過性非線形光学媒質210は、たとえば、非線形光学媒質の全体にブラッググレーティングを形成することで実現することができる。または、帯域透過性非線形光学媒質210は、フォトニック結晶ファイバなどの帯域透過特性を有する非線形光学媒質によって実現することができる。
【0033】
帯域透過性非線形光学媒質210を透過する光210aには、信号光101および励起光102が含まれている。また、帯域透過性非線形光学媒質210においてはアイドラ光103(図1参照)も発生するが、帯域透過性非線形光学媒質210はアイドラ光103を透過させない帯域透過特性210Aを有する。
【0034】
このため、帯域透過性非線形光学媒質210を透過する光にはアイドラ光103は含まれない。帯域透過性非線形光学媒質210から出力される光210bには、信号光101および励起光102が含まれ、アイドラ光103は含まれていない。
【0035】
このように、実施の形態2にかかる光増幅器100によれば、アイドラ光103を透過させない帯域透過特性を有する帯域透過性非線形光学媒質210を用いることで、光パラメトリック増幅の過程で発生するアイドラ光103を除去することができる。帯域透過性非線形光学媒質210(非線形光学媒質の途中)でアイドラ光103を除去することで、帯域透過性非線形光学媒質210においてアイドラ光103がない状態で光パラメトリック増幅を行うことができる。このため、帯域透過性非線形光学媒質210におけるアイドラ光を介した雑音の増大を抑え、信号光101を劣化させずに増幅することができる。
【0036】
(実施の形態3)
図3は、実施の形態3にかかる光増幅器を示す図である。図3において、図1に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。実施の形態3にかかる光増幅器100は、光パラメトリック増幅器を多段に接続して構成する。具体的には、実施の形態3にかかる光増幅器100は、図3に示すように、図1に示した構成に加えて励起光源310および光カプラ320を備えている。
【0037】
増幅部130の光フィルタ132は、非線形光学媒質131から出力された光に含まれる信号光101を透過させて光カプラ320へ出力する。また、光フィルタ132は、非線形光学媒質131から出力された光に含まれる励起光102およびアイドラ光103は透過させずに除去する。励起光源310は、信号光101とは波長が異なる励起光301を生成して光カプラ320へ出力する第二励起光源である。励起光301はたとえばCW光である。ここでは、励起光301の波長を励起光102と同じ波長λpとする。
【0038】
光カプラ320は、増幅部130の非線形光学媒質131の後段に設けられている。光カプラ320には、光フィルタ132からの信号光101と、励起光源310からの励起光301と、が入力される。光カプラ320は、信号光101と励起光301を合波して非線形光学媒質133へ出力する第二合波部である。非線形光学媒質133は、光カプラ320から出力された光を透過させて光フィルタ140へ出力する。
【0039】
このように、実施の形態3にかかる光増幅器100によれば、光フィルタ132によって励起光102およびアイドラ光103を除去するとともに、励起光源310および光カプラ320によって励起光301を非線形光学媒質133へ入力することができる。これにより、光フィルタ132によって励起光102を除去しても非線形光学媒質133において光パラメトリック増幅を行うことができるため、実施の形態1にかかる光増幅器100と同様の効果を得ることができる。
【0040】
また、光フィルタ132は、励起光102およびアイドラ光103を透過させない帯域透過特性であるため、光フィルタ140と同じ帯域透過特性である。このため、光フィルタ132および光フィルタ140を効率よく製造し、製造コストを抑えることができる。なお、励起光源110および励起光源310は、それぞれ別の光源によって実現されてもよいし、一つの光源によって実現されてもよい。
【0041】
図3においては、増幅部130において2つの非線形光学媒質(非線形光学媒質131,133)を用いる構成について説明したが、非線形光学媒質は3つ以上用いてもよい。この場合は、非線形光学媒質の各間に、光フィルタ132、励起光源310および光カプラ320を設ける。これにより、非線形光学媒質の途中でアイドラ光103をこまめに除去し、アイドラ光103がより少ない状態で光パラメトリック増幅を行うことができる。このため、信号光をさらに劣化させずに増幅することができる。
【0042】
また、励起光301の波長を励起光102と同じ波長λpにする構成について説明したが、励起光301の波長は信号光101の波長λsと異なる波長であればよい。たとえば、励起光301の波長を波長λp2(≠λs,λp)とする場合は、光フィルタ140において、波長λp2およびアイドラ光103を除去するように帯域透過特性を設定する。これにより、励起光301の波長を波長λp2としても、光フィルタ140において信号光101を抽出することができる。
【0043】
(実施の形態4)
図4は、実施の形態4にかかる光増幅器を示す図である。図4において、図1に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図4に示すように、実施の形態4にかかる光増幅器100は、図1に示した構成に加えて偏波ビームスプリッタ410および偏波制御器420を備えている。光カプラ120は、信号光101と励起光102を合波した光を偏波ビームスプリッタ410へ出力する。
【0044】
偏波ビームスプリッタ410は、光カプラ120から出力された光を偏波ごとに分離する。たとえば、偏波ビームスプリッタ410は、光を水平偏波と垂直偏波に分離する。そして、偏波ビームスプリッタ410は、分離した水平偏波の光を増幅部130へ出力するとともに、分離した垂直偏波の光を偏波制御器420へ出力する。また、偏波ビームスプリッタ410は、偏波制御器420から出力された垂直偏波の光と、増幅部130から出力された水平偏波の光と、を合波して光フィルタ140へ出力する。
【0045】
増幅部130は、たとえば図1に示した増幅部130である。増幅部130は、偏波ビームスプリッタ410から出力された水平偏波の光を透過させて増幅し、増幅した光を偏波制御器420へ出力する。また、増幅部130は、偏波制御器420から出力された垂直偏波の光を透過させて増幅し、増幅した光を偏波ビームスプリッタ410へ出力する。
【0046】
このように、増幅部130において、偏波ごとに分離された各光が逆方向に透過する偏波ダイバーシティループとすることで、信号光101の偏波状態によらずに増幅部130において光パラメトリック増幅を行うことができる。光増幅器100は、図1に示した増幅部130に限らず、図2に示した帯域透過性非線形光学媒質210や、図3に示した増幅部130および励起光源310を用いてもよい。
【0047】
偏波ダイバーシティループの具体的な構成については、たとえば非特許文献(K.K.Y.Wong,M.E.Marhic,Katsumi Uesaka,and L.G.Kazovsky,“Polarization−Independent One−Pump Fiber−Optical Parametric Amplifier”IEEE Photon.Technol.Lett,14,pp.1506−1509,2002)を適用することができる。
【0048】
偏波制御器420は、増幅部130から出力された水平偏波の光の偏波を一定に制御し、偏波を制御した光を偏波ビームスプリッタ410へ出力する。また、偏波制御器420は、偏波ビームスプリッタ410から出力された垂直偏波の光の偏波を一定に制御し、偏波を制御した光を増幅部130へ出力する。
【0049】
これにより、増幅部130および偏波制御器420から偏波ビームスプリッタ410へ入力される各光の偏波を一定に制御し、偏波ビームスプリッタ410において合波された光を精度よく光フィルタ140へ出力することができる。
【0050】
このように、実施の形態4にかかる光増幅器100によれば、偏波ビームスプリッタ410を用いて偏波ダイバーシティループとすることで、増幅部130における光パラメトリック増幅を偏波無依存化することができる。このため、入力される信号光101の偏波状態を制御しなくても、信号光101を劣化させずに増幅することができる。
【0051】
また、偏波制御器420によって偏波ごとの各光の偏波を一定に制御することで、偏波ビームスプリッタ410において合波された光を精度よく光フィルタ140へ出力することができる。これにより、偏波ビームスプリッタ410における光損失を抑えつつ、信号光101を劣化させずに増幅することができる。
【0052】
(光増幅器の光リミッタ装置への適用)
図5は、光パラメトリック増幅による利得飽和特性を示すグラフである。図5において、横軸は、光増幅器100に対する入力パワーを示している。縦軸は、光増幅器100からの出力パワーを示している。入力光パルス501は、光増幅器100へ入力される光パルスの一例を示している。出力光パルス502は、光増幅器100から出力される光パルスの一例を示している。
【0053】
光増幅器100は、光パラメトリック増幅を利用して信号光101を増幅する。このため、光増幅器100は、入力パワーに出力パワーが比例する線形利得特性503ではなく、入力パワーが大きくなると出力パワーが飽和する利得飽和特性504を有する。このため、光増幅器100は、利得飽和特性504を用いて光リミッタ増幅を行う光リミッタ装置に適用することもできる。光増幅器100を適用した光リミッタ装置によれば、信号光101を劣化させずに増幅して整形することができる。
【0054】
(実施の形態5)
図6は、実施の形態5にかかる光増幅装置を示す図である。図6の信号光601〜604において、横軸は時間(t)を示している。図6に示すように、実施の形態6にかかる光増幅装置600は、分散媒質610と、光増幅器100と、逆分散媒質620と、を備えている。分散媒質610には、前段の伝送路から出力された信号光601が入力される。分散媒質610は、所定の分散特性を有する分散媒質である。分散媒質610は、信号光601を透過させて光増幅器100へ出力する。
【0055】
分散媒質610から出力される信号光602は、分散媒質610の分散特性によって、信号光601よりもパルスの時間幅が広がりピークが低くなっている。光増幅器100は、分散媒質610から出力された信号光602を増幅する。光増幅器100は、増幅した信号光603を逆分散媒質620へ出力する。光増幅器100には、上述した各実施の形態にかかる光増幅器100を適用することができる。
【0056】
逆分散媒質620は、分散媒質610の分散特性に対して逆の分散特性を有する分散媒質である。逆分散媒質620は、光増幅器100から出力された信号光603を透過させて後段へ出力する。逆分散媒質620から出力される信号光604は、逆分散媒質620の分散特性によって、パルスの時間幅が狭くなりピークが高くなる。
【0057】
このように、分散媒質610で信号光601のパルス幅を拡大し、パルス幅を拡大した信号光602を光増幅器100によって増幅し、増幅した信号光603を逆分散媒質620によってパルス幅を狭め元に戻す光チャープパルス増幅を行うことができる。これにより、信号光601をさらに劣化させずに増幅することができる。
【0058】
光チャープパルス増幅の具体例については、たとえば非特許文献(A.Dubietis,R.Butkus,and A.P.Piskarskas,“Trends in Chirped Pulse Optical Parametric Amplification”IEEE J.Sel.Topics Quantum Electron,12,pp.163−172,2006)を適用することができる。
【0059】
このように、実施の形態5にかかる光増幅器100によれば、上述した各実施の形態にかかる光増幅器100の効果を得ることができるとともに、光チャープパルス増幅によって信号光601をさらに劣化させずに増幅することができる。
【0060】
(実施の形態6)
図7は、実施の形態6にかかる光増幅器を示す図である。図7において、図1に示した構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図7に示すように、実施の形態6にかかる光増幅器100の励起光源110は、信号光101とは異なる波長λpのパルス状の励起光701を生成して光カプラ120へ出力する。励起光701は、信号光101のパルスより狭いパルス幅の励起光である。
【0061】
また、励起光701は、信号光101と異なるサンプリング周期を有する励起光である。たとえば、励起光701は、信号光101のビットレートに対して遅いサンプリング周期を有する。光カプラ120には、信号光101と励起光701が入力される。光カプラ120は、信号光101と励起光701を合波して増幅部130へ出力する。これにより、増幅部130において信号光101を励起光701でサンプリングし、サンプリングによって得られた信号光702を後段へ出力することができる。
【0062】
このように、実施の形態6にかかる光増幅器100によれば、信号光101のパルスより狭いパルス幅で、信号光101と異なるサンプリング周期を有する励起光701を用いることで、光サンプリングを行うことができる。光増幅器100は光パラメトリック増幅を雑音の増大を抑えて行うことができるため、光サンプリングの雑音による劣化を抑えることができる。
【0063】
以上説明したように、光増幅器および光増幅装置によれば、光パラメトリック増幅を行う非線形光学媒質において発生するアイドラ光を非線形光学媒質の途中で除去することで、非線形光学媒質によって増幅される光に含まれるアイドラ光を低減することができる。これにより、信号光を劣化させずに増幅することができる。
【0064】
なお、上述した実施の形態1〜3,5,6において、光カプラ120へ入力される信号光101(信号光601)と励起光102(励起光701)の相対的な偏波状態を制御する偏波制御部を備えてもよい。偏波制御部は、信号光101の偏波状態を制御してもよいし、励起光102の偏波状態を制御してもよいし、信号光101と励起光102の両方の偏波状態を制御してもよい。これにより、増幅部130や帯域透過性非線形光学媒質210における光パラメトリック増幅をさらに効率よく行うことができる。
【0065】
また、上述した各実施の形態においては、増幅対象の信号光101や信号光601が強度変調されたRZ信号である場合について説明した。ただし、増幅対象の信号光101や信号光601はRZ信号に限らず、たとえば位相変調された信号光であってもよい。
【0066】
また、上述した実施の形態1〜5においては、励起光102をCW光とする構成について説明したが、励起光102はCW光に限らず、たとえばクロックの励起光であってもよい。この場合は、励起光源110によって出力された励起光102のクロックを信号光101と同期させる同期部を設けるとよい。これにより、励起光102がクロックであっても信号光101を劣化させずに増幅することができる。
【0067】
また、上述した各実施の形態において、光カプラ120へ入力される励起光102(励起光701)を位相変調する変調部を設けてもよい。これにより、誘導ブリユアン散乱による信号光101(信号光601)の劣化を低減することができる。このため、信号光101をさらに劣化させずに増幅することができる。
【0068】
上述した各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0069】
(付記1)入力された信号光を増幅する光増幅器において、
前記信号光とは波長が異なる励起光を出力する励起光源と、
前記励起光源によって出力された励起光と前記信号光を合波する合波部と、
前記合波部によって合波された光を透過させ前記信号光を増幅する非線形光学媒質を有し、前記信号光と前記励起光に起因するアイドラ光を前記非線形光学媒質の途中で除去する増幅部と、
前記増幅部を透過した光から前記信号光を抽出する抽出フィルタと、
を備えることを特徴とする光増幅器。
【0070】
(付記2)前記増幅部は、
前記合波部によって合波された光を透過させ前記信号光を増幅する第一非線形光学媒質と、
前記第一非線形光学媒質を透過した光から前記アイドラ光を除去する除去フィルタと、
前記除去フィルタを透過した光を透過させ前記信号光を増幅する第二非線形光学媒質と、
を備えることを特徴とする付記1に記載の光増幅器。
【0071】
(付記3)前記非線形光学媒質は、前記アイドラ光を透過させない帯域透過特性を有することを特徴とする付記1に記載の光増幅器。
【0072】
(付記4)前記非線形光学媒質には、前記アイドラ光を透過させないブラッググレーティングが形成されていることを特徴とする付記1に記載の光増幅器。
【0073】
(付記5)前記除去フィルタは、前記アイドラ光および前記励起光を除去し、
前記信号光とは波長が異なる励起光を出力する第二励起光源と、
前記除去フィルタを透過した光と、前記第二励起光源によって出力された励起光と、を合波する第二合波部と、
を備え、前記第二非線形光学媒質は、前記第二合波部によって合波された光を透過させ前記信号光を増幅することを特徴とする付記2に記載の光増幅器。
【0074】
(付記6)前記合波部によって合波された光を偏波ごとに分離するとともに、入力された偏波ごとの各光を合波する偏波ビームスプリッタを備え、
前記増幅部は、前記偏波ビームスプリッタによって分離された偏波ごとの各光をそれぞれ逆方向に透過させて前記偏波ビームスプリッタへ入力し、
前記抽出フィルタは、前記偏波ビームスプリッタによって合波された光から前記信号光を抽出することを特徴とする付記1に記載の光増幅器。
【0075】
(付記7)前記偏波ごとの各光の偏波を一定に制御する偏波制御器を備えることを特徴とする付記6に記載の光増幅器。
【0076】
(付記8)前記増幅部による光パラメトリック増幅の利得飽和特性を用いて前記信号光を光リミッタ増幅することを特徴とする付記1〜7のいずれか一つに記載の光増幅器。
【0077】
(付記9)前記励起光源は、前記信号光のパルスより狭いパルス幅で、前記信号光と異なるサンプリング周期を有するパルス状の励起光を出力することを特徴とする付記1〜8のいずれか一つに記載の光増幅器。
【0078】
(付記10)前記非線形光学媒質は、前記励起光の波長と一致または略一致する平均零分散波長を有する光ファイバ、または前記平均零分散波長を有する周期分極ニオブ酸リチウムであることを特徴とする付記1〜9のいずれか一つに記載の光増幅器。
【0079】
(付記11)前記合波部に合波される前記信号光および前記励起光の相対的な偏波状態を制御する偏波制御部を備えることを特徴とする付記1〜10のいずれか一つに記載の光増幅器。
【0080】
(付記12)前記励起光を位相変調する変調部を備え、
前記合波部は、前記変調部によって変調された励起光と前記信号光とを合波することを特徴とする付記1〜11のいずれか一つに記載の光増幅器。
【0081】
(付記13)前記励起光源は、前記励起光としてクロックの励起光を出力し、
前記励起光源から前記合波部へ出力される励起光のクロックを前記信号光と同期させる同期部を備えることを特徴とする付記1〜12のいずれか一つに記載の光増幅器。
【0082】
(付記14)前記増幅部は、前記信号光の波長を波長λsとし、前記励起光の波長を波長λpとした場合に、波長2λp−λsを除去することによって前記アイドラ光を除去することを特徴とする付記1〜13のいずれか一つに記載の光増幅器。
【0083】
(付記15)前記信号光のパルス幅を拡大する分散特性を有する分散媒質と、
付記1〜14のいずれか一つに記載の光増幅器であって、前記分散媒質によってパルス幅を拡大された信号光を増幅する光増幅器と、
前記分散特性の逆の分散特性を有し、前記光増幅器によって光パラメトリック増幅された信号光のパルス幅を狭める逆分散媒質と、
を備えることを特徴とする光増幅装置。
【符号の説明】
【0084】
100 光増幅器
101,601〜604,702 信号光
102,301,701 励起光
103 アイドラ光
110,310 励起光源
132A,210A 帯域透過特性
501 入力光パルス
502 出力光パルス
503 線形利得特性
504 利得飽和特性
600 光増幅装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された信号光を増幅する光増幅器において、
前記信号光とは波長が異なる励起光を出力する励起光源と、
前記励起光源によって出力された励起光と前記信号光を合波する合波部と、
前記合波部によって合波された光を透過させ前記信号光を増幅する非線形光学媒質を有し、前記信号光と前記励起光に起因するアイドラ光を前記非線形光学媒質の途中で除去する増幅部と、
前記増幅部を透過した光から前記信号光を抽出する抽出フィルタと、
を備えることを特徴とする光増幅器。
【請求項2】
前記増幅部は、
前記合波部によって合波された光を透過させ前記信号光を増幅する第一非線形光学媒質と、
前記第一非線形光学媒質を透過した光から前記アイドラ光を除去する除去フィルタと、
前記除去フィルタを透過した光を透過させ前記信号光を増幅する第二非線形光学媒質と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。
【請求項3】
前記非線形光学媒質は、前記アイドラ光を透過させない帯域透過特性を有することを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。
【請求項4】
前記非線形光学媒質には、前記アイドラ光を透過させないブラッググレーティングが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。
【請求項5】
前記除去フィルタは、前記アイドラ光および前記励起光を除去し、
前記信号光とは波長が異なる励起光を出力する第二励起光源と、
前記除去フィルタを透過した光と、前記第二励起光源によって出力された励起光と、を合波する第二合波部と、
を備え、前記第二非線形光学媒質は、前記第二合波部によって合波された光を透過させ前記信号光を増幅することを特徴とする請求項2に記載の光増幅器。
【請求項6】
前記合波部によって合波された光を偏波ごとに分離するとともに、入力された偏波ごとの各光を合波する偏波ビームスプリッタを備え、
前記増幅部は、前記偏波ビームスプリッタによって分離された偏波ごとの各光をそれぞれ逆方向に透過させて前記偏波ビームスプリッタへ入力し、
前記抽出フィルタは、前記偏波ビームスプリッタによって合波された光から前記信号光を抽出することを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。
【請求項7】
前記偏波ごとの各光の偏波を一定に制御する偏波制御器を備えることを特徴とする請求項6に記載の光増幅器。
【請求項8】
前記増幅部による光パラメトリック増幅の利得飽和特性を用いて前記信号光を光リミッタ増幅することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の光増幅器。
【請求項9】
前記励起光源は、前記信号光のパルスより狭いパルス幅で、前記信号光と異なるサンプリング周期を有するパルス状の励起光を出力することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の光増幅器。
【請求項10】
前記信号光のパルス幅を拡大する分散特性を有する分散媒質と、
請求項1〜9のいずれか一つに記載の光増幅器であって、前記分散媒質によってパルス幅を拡大された信号光を増幅する光増幅器と、
前記分散特性の逆の分散特性を有し、前記光増幅器によって光パラメトリック増幅された信号光のパルス幅を狭める逆分散媒質と、
を備えることを特徴とする光増幅装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【公開番号】特開2011−145554(P2011−145554A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7389(P2010−7389)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】