説明

光増幅器

【課題】様々な入力光強度条件に対応した光増幅器の実現が望まれていた。
【解決手段】少なくとも入力モニタ手段3と、光増幅手段6と、前記入力モニタ手段を利用して、前記光増幅手段の増幅制御を行うための制御手段10を含む光増幅器において、ハイレベルとローレベルの入力光強度に応じた、利得制御を行うことを特徴とする光増幅器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光バースト信号が入力された場合であっても、光サージを抑圧し、入力光を増幅する光増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ネットワークは、ポイント・ツー・ポイントのネットワークから、Reconfigurable Optical Add−drop Multiplexer(ROADM)ノードを用いたリングネットワークへ、その形態が変化してきている。現在、インターネットトラフィックは、年率140%で増え続けており、今後も継続した増加が予想されている。
【0003】
こうした状況の中、次世代のネットワークでは、トラフィックの増大に対応すべく、効率的に波長資源を活用することが求められ、ROADMにおいて、通信容量の過渡的な変動に応じて、ダイナミックに波長信号数を変えることのできるダイナミックROADMが必要とされる。更に、効率的な帯域の利用も必要になると考えられており、Optical packet switching(OPS)システムや、 Optical Burst Switching(OBS)システム等の新しいネットワーク開発が行われている。
【0004】
従来のネットワーク上での光信号は、安定した光信号強度で伝送されていたが、ダイナミックROADMでは、過渡的な通信容量の変動に応じた波長数の切替えにより、光信号強度変動が生じる。又、OPS、OBSシステムネットワークにおける光信号は、パケット、バースト単位で伝送される為、信号間は完全な消光状態となっている。
【0005】
通常の光ネットワークにおいては、伝送距離の延長、伝送路中の損失補償の為に、光増幅器が使用されている。従来の光増幅器は安定した光信号強度を増幅することを前提としているため、過渡的な光信号強度変動や、パケット、バースト信号の様な完全に消光する状態で使用すると、光サージと言われる現象や、過渡的な出力変動が生じる為、使用することが出来ない。
【0006】
このような過渡的な光信号入力においても、使用可能な光増幅器技術としては、例えば、希土類添加ファイバへの光信号の入力時間と、光信号をモニタした結果に応じた励起光強度の入力時間とを遅延要素を用いて調整することにより、対応する方法が考案され特許文献1に記載されている。
【0007】
又、特許文献2では、光信号をモニタした結果に応じた励起光強度をフィードフォーワード制御により制御する際に、制御信号をオーバーシュート信号にすることで、応答性能を改善する方法が考案されている。更に、特許文献3では遅延手段を導入することで、高速応答性能の改善が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−261364
【特許文献2】特開2008−300812
【特許文献3】特開2009−200454
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような技術では、様々な強度変動量や、様々なパケット、バースト長の光信号の入力に応じた励起光強度条件にする必要がある。しかしながら、特許文献1の方法では、挿入される遅延要素が固定のため、様々な光入力条件への対応に課題があった。
【0010】
特許文献2、3による、励起光強度をオーバーシュート信号により制御を行う方法についても、特許文献1と同様に様々な入力条件に応じた励起光強度条件への対応に課題があった。
【0011】
本発明は、以上のような実情を鑑み、入力信号条件が様々な入力光強度及び時間幅においても、ゲインの過渡応答によるゲインエラー及び光サージを抑圧し、入力光を増幅する光増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の光増幅器は、ローレベルの入力光強度とハイレベルの入力光強度を用いた正確なゲイン調整により、様々な入力光強度及び時間幅の入力信号条件においても、ゲインの過渡応答によるゲインエラー及び光サージを抑圧した入力光の増幅を実現するものである。
【0013】
請求項1記載の光増幅器は、少なくとも入力モニタ手段と、光増幅手段と、前記入力モニタ手段を利用して、前記光増幅手段の増幅制御を行うための制御手段を含む光増幅器において、ハイレベルとローレベルの入力光強度に応じた、利得制御を行うことを特徴とする光増幅器である。
【0014】
「入力モニタ手段」とは、前期光増幅器への入力光の強度情報を含んだ電気信号または光信号をモニタする手段を意味する。「光増幅手段」とは、光や電子により励起され、出力光強度を入力光強度よりも大きくする増幅手段であり、光増幅媒体を含む。ここで、ハイレベルとは、信号光強度であり、ローレベルとは、信号光強度より低いレベルを意味する。
【0015】
請求項2記載の光増幅器は、少なくとも入力モニタ手段と、光増幅手段と、前記入力モニタ手段を利用して、前記光増幅手段の増幅制御を行うための制御手段を含む光増幅器において、ローレベルに対応した励起光強度と、ハイレベルに対応した励起光強度とを用いて、前記光増幅手段をフィードフォーワード制御することを特徴とする光増幅器である。
【0016】
「フィードフォワード制御」とは、被制御対象物も入力する信号の大きさに応じて、被制御対象物に対して制御信号を出力し、被制御対象物を駆動する制御を意味する。
【0017】
請求項3記載の光増幅器は、少なくとも入力モニタ手段と、光増幅手段と、前記入力モニタ手段を利用して、前記光増幅手段の増幅制御を行うための制御手段を含む光増幅器において、ローレベルでのゲインと、ハイレベルでのゲインを同一になるように制御することを特徴とする光増幅器である。
【0018】
請求項4記載の光増幅器は、少なくとも入力モニタ手段と、光増幅手段と、前記入力モニタ手段を利用して、前記光増幅手段の増幅制御を行うための制御手段を含む光増幅器において、ローレベルに対応した励起光強度と、ハイレベルに対応した励起光強度とを用いて、前記光増幅手段をフィードフォーワード制御するとともに、ローレベルでのゲインとハイレベルでのゲインを同一になるように制御することを特徴とする光増幅器である。
【0019】
請求項5記載の光増幅器は、前記制御手段に乗算器と、足し算器とを含むことを特徴とした請求項1から請求項4にいずれかに記載の光増幅器である
【0020】
「乗算器」とは、乗算を行う回路を意味する。「加算器」とは、加算を行う回路を意味する。
【0021】
請求項6記載の光増幅器は、前記制御手段に掛算器と、足し算器と、FIRフィルタを含むことを特徴とした請求項1から請求項4に記載の光増幅器である
【0022】
「FIRフィルタ」とは、有限インパルス応答フィルタを意味する。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば入力信号条件が様々な入力光強度及び時間幅においても、ゲインの過渡応答によるゲインエラー及び光サージを抑圧し、入力光を増幅する光増幅器の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】入力光強度に対するゲイン図
【図2】バースト入力光強度時間波形図
【図3】バースト出力光強度時間波形図
【図4】従来技術と本発明での入力光強度に対する励起光強度調整範囲図
【図5】従来技術と本発明での入力光強度に対するゲイン比較図
【図6】本発明の第一の実施形態図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を図面にもとづいて説明する。
【0026】
本発明は、バースト信号入力時におけるゲインの過渡応答のメカニズムから、ゲイン一定制御を行う上で、最適な励起光強度制御により、ゲインの過渡応答によるゲインエラー及び光サージを抑えるための励起光強度の制御方法を提案している。
【0027】
まずは、バースト信号入力時における、ゲインの過渡応答について説明する。
【0028】
図1は、光増幅器の入力光強度に対するゲインの関係の一例を示すグラフである。グラフ中の▲1▼、▲2▼、▲3▼は励起光強度を変化させた場合の特性であり、▲1▼→▲2▼→▲3▼の順に励起光強度を増加させた特性を示している。図2は、光増幅器へのバースト入力強度時間波形の一例を示しており、ローレベル強度が−30dBm、ハイレベル強度が−10dBmを示している。図3は、励起光強度が▲2▼の状態に一定に制御された光増幅器に、図2のバースト波形を入力した際に出力される、出力光強度時間波形の一例を示している。図1のA、B、C、Dは図2、図3のそれぞれのA、B、C、Dに対応している。
【0029】
図2の入力波形が図3の出力波形となるメカニズムについて、図1を用いてA→B、B→C、C→D、D→Aの順に説明する。
【0030】
ローレベルであるAの強度が、ハイレベルのBへ変化すると、図1の点線矢印で示すようにゲイン20dBを保ったまま、Bへ移行する。(A→B)
【0031】
Bへの移行直後からゲインの減少が始まり、最終的には▲2▼上のゲイン10dBとなるCへ移行する。(B→C)
【0032】
ハイレベルであるCの強度が、ローレベルのDへと変化すると、図1の点線矢印で示すようにゲイン10dBを保ったまま、Dへ移行する。(C→D)
【0033】
Dへの移行直後からゲインの増加が始まり最終的には▲2▼上のゲイン20dBとなるAへ移行する。(D→A)
【0034】
このように、図1のような入力光強度に対するゲインの関係が分かれば、入力光強度条件より、出力光強度結果を想定することが可能である。
【0035】
本発明では、入力光強度が微少な入力の光強度から、大きな入力の光強度までの範囲において、入力光強度モニタからの出力を用いて、光増幅器ゲインが一定となるように最適な励起光強度制御を行っている。
【0036】
図4は、従来技術と本発明での入力光強度に対する励起光強度調整範囲を示している。
図5は、従来技術と本発明での入力光強度に対するゲイン比較を示している。
【0037】
従来技術では、想定される光増幅器への入力光強度範囲内での正確なゲイン調整を行っている。従って、一般的に入力光強度としては0と見なされるような微少な入力は想定されておらず、微少入力領域での調整は行われていない。一方、本発明では上記の0と見なされるような微少な入力領域での正確なゲイン調整を行っていることを特徴としている。
【0038】
その結果、図5に示されるように、従来技術では、微少入力時の目標ゲインからの誤差が大きく、バースト信号入力時において大きな光サージ、又はゲインの過渡応答によるゲインエラーが生じる。一方、本発明では微少入力領域での調整が行われるため、広範囲でのゲイン一定制御により、光サージ、又はゲインの過渡応答によるゲインエラーの抑圧が可能である。
【実施例1】
【0039】
第一の実施形態を図6に示す。光増幅器は、入力モニタ手段3、光増幅手段6、制御手段10、から構成されている。
【0040】
入力モニタ手段3は、TAP型の受光素子4と、トランスインピーダンスタイプ電気アンプ回路(TIA)5とで構成している。また、入力光の一部を光カプラで分岐し、入力光のレベルをモニタしてもよい。さらには、本光増幅器よりも前段において分岐された入力光の一部を光増幅器の入力モニタ手段(フォトダイオード、TIA)に入力させることも可能である。
【0041】
また、WDMカプラで監視制御光を分離し、その監視制御光処理部により、入力光レベルを等価的に表す電気信号を入力モニタ手段に受け渡すことにより、入力光のレベルをモニタすることも可能である。さらには、光増幅器前段で既に処理された監視制御光処理部からの入力光レベルを等価的に表す電気信号を入力モニタ手段に受け渡すことにより、入力光のレベルをモニタすることも可能である。
【0042】
光増幅手段6は、光増幅媒体7としてEDFを用い、PUMP−LD8とPUMP−LDの駆動回路9で構成している。設定する増幅率(ゲイン)によっては、光増幅媒体7の後方から励起光が注入されるようにPUMP−LDを追加してもよい。光増幅手段は、EDFの他に、PDF(Praseodymium Doped Fiber)などの希土類添加ファイバや半導体光増幅器デバイスなども該当する。
【0043】
光増幅手段6の制御にりいては、入力光のレベル変化に応じて、高速に光増幅手段6を駆動するために、入力側TIA5出力情報により、制御手段10を介して電気信号に変換し、PUMP−LD駆動回路9に入力し、PUMP−LD8をフィードフォワード制御で駆動している。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲における変形による実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、バースト信号に対応した光増幅器が実現できるため、光通信機器として利用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 入力光
2 出力光
3 モニタ手段
4 TAP−PD
5 TIA
6 光増幅手段
7 光増幅媒体
8 PUMP−LD
9 PUMP−LD駆動回路
10 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも入力モニタ手段と、光増幅手段と、前記入力モニタ手段を利用して、前記光増幅手段の増幅制御を行うための制御手段を含む光増幅器において、ローレベルとハイレベルの入力光強度に応じた、利得制御を行うことを特徴とする光増幅器。
【請求項2】
少なくとも入力モニタ手段と、光増幅手段と、前記入力モニタ手段を利用して、前記光増幅手段の増幅制御を行うための制御手段を含む光増幅器において、ローレベルに対応した励起光強度と、ハイレベルに対応した励起光強度とを用いて、前記光増幅手段をフィードフォーワード制御することを特徴とする光増幅器。
【請求項3】
少なくとも入力モニタ手段と、光増幅手段と、前記入力モニタ手段を利用して、前記光増幅手段の増幅制御を行うための制御手段を含む光増幅器において、ローレベルでのゲインと、ハイレベルでのゲインを同一になるように制御することを特徴とする光増幅器。
【請求項4】
少なくとも入力モニタ手段と、光増幅手段と、前記入力モニタ手段を利用して、前記光増幅手段の増幅制御を行うための制御手段を含む光増幅器において、ローレベルに対応した励起光強度と、ハイレベルに対応した励起光強度とを用いて、前記光増幅手段をフィードフォーワード制御するとともに、ローレベルでのゲインとハイレベルでのゲインを同一になるように制御することを特徴とする光増幅器。
【請求項5】
前記制御手段に乗算器と、加算器とを含むことを特徴とした請求項1から請求項4のいずれかに記載の光増幅器。
【請求項6】
前記制御手段に乗算器と、加算器と、FIRフィルタを含むことを特徴とした請求項1から請求項4のいずれかに記載の光増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−186433(P2012−186433A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64945(P2011−64945)
【出願日】平成23年3月5日(2011.3.5)
【出願人】(504243718)株式会社トリマティス (24)
【Fターム(参考)】