光変調器及び光信号発生装置
【課題】簡便な調整手段によって、振幅変調方式・位相変調方式のいずれかのフォーマットの光信号も発生でき、かつその動作が高安定な光変調器及び光信号発生装置を提供する。
【解決手段】本発明の光変調器は、第1偏波分離合成手段と、第2偏波分離合成手段と、第1偏波面保存光ファイバと、第2偏波面保存光ファイバと、第1半端面保存光ファイバと第2偏波面保存光ファイバとの接続箇所に1/2波長板を設け、1/2波長板の光学軸方向を回転可能な偏波面回転調整手段と、第2偏波分離合成手段と結合され、直線偏光である制御光を入力する第1光カプラを有する第3偏波面保存光ファイバと、第2偏波分離合成手段と結合された第4偏波面保存光ファイバと、第3偏波面保存光ファイバの他端と第4偏波面保存光ファイバの他端とを接続し、入力光の偏波面を変換する第1偏波面変換手段とを備えることを特徴とする。
【解決手段】本発明の光変調器は、第1偏波分離合成手段と、第2偏波分離合成手段と、第1偏波面保存光ファイバと、第2偏波面保存光ファイバと、第1半端面保存光ファイバと第2偏波面保存光ファイバとの接続箇所に1/2波長板を設け、1/2波長板の光学軸方向を回転可能な偏波面回転調整手段と、第2偏波分離合成手段と結合され、直線偏光である制御光を入力する第1光カプラを有する第3偏波面保存光ファイバと、第2偏波分離合成手段と結合された第4偏波面保存光ファイバと、第3偏波面保存光ファイバの他端と第4偏波面保存光ファイバの他端とを接続し、入力光の偏波面を変換する第1偏波面変換手段とを備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器及び光信号発生装置に関し、例えば、長距離大容量光ファイバ通信などに利用される、制御光によって被制御光に強度変調又は位相変調を与える光変調器及び光信号発生装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
例えばインターネット等に代表されるネットワーク技術の発展に伴い、光ファイバ通信の通信容量の大容量化への要求が近年ますます高まってきている。
【0003】
近年の光ファイバ通信の通信容量の大容量化のためには、送受信可能な波長チャンネル数を増やすこと(例えば、波長多重通信技術(WDM:Wavelength Division Multiplexing)と、各波長チャンネルあたりの通信速度を高速化することによってなされている。
【0004】
波長チャンネルあたりの通信速度を高速化する手段としては、例えば、時分割多重通信(TDM:Time Division Multiplexing)等の多重通信方法が検討され、また実用化されている。このTDM方式は、複数チャンネルを時分割多重した時分割多重信号を用いることにより、波長チャンネルあたりの通信速度を高速化する方式である。
【0005】
TDM方式は、受信側において、クロック信号から生成されるゲート信号に基づき、時分割多重信号から個々のチャンネルを分離する多重分離手段を備え、個々のチャンネルの情報を個別に取り出して受信することがなされている。また、従来採用されているTDM方式は、電子デバイスレベルで時分割多重信号発生・多重信号分離を行う方式である。この方式を、特に電気TDMと呼ぶ。
【0006】
電気TDMの通信速度を高速化するためには、電子デバイス、及び光電変換を行うためのフォトダイオード、半導体レーザなどのオプトエレクトロニクスデバイスの高速化が必要である。その通信速度は40Gbit/s程度のビットレートが限界であった。
【0007】
TDM方式の通信速度をさらに高速化するためには、上記の多重信号発生・多重信号分離手段を全て光学的な手段で実現するのが望ましい。この方式を、特に光TDMと呼ぶ。
【0008】
光TDM方式では、例えば光カップラなどを結合させた光回路を用いて、時分割多重された光パルス信号の生成を行うことが望ましい。また、受信側での多重分離としては、制御光である光制御信号でゲート動作させた、全光型光スイッチを用いて実行するのが望ましい。さらにまた、長距離伝送などのための光中継器や、光ネットワークのノードにおいては、波長変換や変調光信号の生成さらには光信号再生動作などの光信号制御技術が必要となるが、これらについてもまた、同様に、制御光信号で、被制御光信号の波長変換、変調光信号の生成、信号再生などを行う、全光型波長変換器・光変調器などを用いて実行するのが望ましい。
【0009】
すなわち、光TDM方式では、その受信端における多重分離や、あるいは光中継器等における光信号再生などを実行するために、制御光信号で、被制御光信号のスイッチ動作、変調信号生成動作を行う、全光型光スイッチ・変調器が必要となる。
【0010】
全光型光スイッチ・変調器を実現する手法として、光ファイバにおいて発現する光カー効果を利用する方法は、その好ましい一例である。
【0011】
光ファイバにおいて発現する光カー効果は、光ファイバを強度の強い光が伝播することにより光ファイバの屈折率が変化する現象であり、その応答速度は数フェムト秒(fs)である。すなわち、光ファイバの光カー効果を利用して光スイッチや光変調器を構成すれば、およそ数百Gbit/s以上の光パルス信号のスイッチングや変調が可能な光スイッチ・光変調器を実現できる可能性がある。
【0012】
光カー効果を利用した光スイッチとして、偏波面保存型の単一モード光ファイバ内で発現する光カー効果を利用した光スイッチが研究されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0013】
非特許文献1に開示されている光カー効果を利用した光スイッチは、光カー効果を発現させる光ファイバとして偏波保存単一モード光ファイバ(以後「偏波面保存光ファイバ」あるいは単に「光ファイバ」ということもある。)が利用されている。
【0014】
この偏波面保存光ファイバは、このファイバの光の伝播方向(以後「光ファイバの光軸方向」ということもある。)に対して垂直な面内に設定された遅相軸あるいはスロー(Slow)軸と呼ばれる光学軸の方向と、Slow軸と直交する進相軸あるいはファスト(fast)軸と呼ばれる光学軸の方向とでは、導波される光に対する等価屈折率が異なる構造である。
【0015】
そして、非特許文献1に開示されている光スイッチに利用されている光ファイバは、2本の偏波保存単一モード光ファイバの光学軸を直交させて融着された面を有し、偏波面保存型の単一モード光ファイバの有する複屈折性を相殺できる構造を有している。
【0016】
非特許文献1に記載の光スイッチには、偏波面保存光ファイバの光学軸と平行な偏波面を有する直線偏波の制御光と、偏波面保存光ファイバの光学軸から45度傾いた偏波面を有する直線偏波の信号光(被制御光)が入力される。
【0017】
そして、この光スイッチに信号光を構成する光パルスと制御光を構成する光パルスとが同期して入力されない場合には、信号光の光パルスは、この光スイッチヘの入力時と同一の直線偏光状態で出力される。一方、制御光の光パルスと信号光の光パルスとが同期して入力された場合には、信号光の光パルスの偏光成分のうち制御光の光パルスの偏波方向と平行な偏波成分に対して、制御光の光パルスによって光カー効果が誘起される。すなわち、光カー効果によって、信号光の光パルスと制御光の光パルスとの間で発現する相互位相変調効果によって、信号光の光パルスに位相シフトが生じる。
【0018】
ここで、制御光の光パルスと信号光の光パルスとが同期して入力されるとは、制御光の有する一つの光パルス信号が、以下で説明する第3偏波面保存光ファイバ22に入力されるときに、信号光の有する一つの光パルスと時間的に一致するように、制御光パルス信号又は信号光の遅延時間が調整されて入力される状態を指す。またこの際、以下で詳細に説明するように、群速度分散によるウオークオフの効果を見込んで、制御光の光パルス位置と信号光の光パルス位置に若干のオフセットを与えて入力する場合もあり、同期して入力される状態とは、この場合も含めた状態を意味する。
【0019】
この位相シフト量φがπに等しい時、信号光の光パルスの偏波方向が、この光スイッチヘの入力時に対して90度回転する。すなわち、信号光の光パルスの偏波方向が、光ファイバの光学軸に対して−45度の方向になる。そして、光スイッチの出力側に検光子を配置することで、制御光により信号光の光パルスを通過させたり、遮断したりすることができる。
【0020】
すなわち、検光子の光学軸の方向を、信号光の光パルスの偏波方向がこの光スイッチヘの入力時に対して90度回転している場合には透過し、入力時と同一の偏波方向である場合には遮断する向きに設定して配置すれば、制御光によって偏波面が回転された光パルスのみがこの光スイッチを透過できるので、制御光によって、信号光の光パルスをスイッチできる。
【0021】
非特許文献1に開示されている光スイッチを実現するには、2本の偏波保存単一モード光ファイバのファイバ長の厳密な調整といった、現実のデバイス作製を煩雑にする問題点がある。さらには、非特許文献2に開示される、現実の偏波保存単一モード光ファイバにおいて存在する偏波クロストーク成分による、スイッチ動作不安定性の問題もある。
【0022】
これらの問題を解決する方法として、我々は、特許文献1に開示される光スイッチをこれまでに提案している。
【0023】
すなわち、特許文献1では、光スイッチを構成する偏波保存単一モード光ファイバのファイバ長の調整が不要であり、かつ、光カー効果を生じさせる偏波保存単一モード光ファイバとして、長尺なものを用いても、偏波クロストーク成分によるスイッチ動作の不安定性が生じない、光スイッチが開示されている。
【0024】
【特許文献1】特開2006−58508号公報
【非特許文献1】“Ultrafast Optical multi/demultiplexer utilizing optical Kerr effect in polarization-maintaining single-mode fibres”,T.Morioka,M.Saruwatari and A Takada,Electronic Letters,Vol.23,No.9 pp.453-454,1987.
【非特許文献2】荒井慎一 他5名,“偏波保持光ファイバ”,古川電工時報,平成14年1月 第109号,pp.5-10,2002.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
光通信システムにおいて利用される光信号の符号化フォーマットは、多種多様なものが提案・利用されている。その代表的なものは、光信号のピーク強度の大小によって2値デジタル信号を表す振幅変調方式と、光信号の光搬送波の光位相の違いによって2値デジタル信号を表す位相変調方式である。
【0026】
振幅変調方式、位相変調方式は、それぞれネットワークの要求仕様を最大限満足するものが、適宜選択されて使用されることが望ましい。また光通信ネットワークは、様々な仕様の複数のネットワークを相互接続させた形態を有する。すなわち、光通信ネットワークは、振幅変調方式、位相変調方式など様々な変調フォーマットで符号化された様々な光信号が、それぞれ適材適所で混在して運用されることが望ましい。
【0027】
このような状況を鑑みたとき、符号化された光信号を発生するための光変調器としては、振幅変調方式、位相変調方式のいずれの方式にも対応できるような汎用性を有していることが望ましい。
【0028】
前記の非特許文献1や特許文献1に開示の全光型光スイッチは、そのピーク強度の大小による振幅変調方式によって信号化された光パルス信号を制御光として用いることで、振幅変調された変調光信号を発生する全光型光強度変調器として用いることができる。
【0029】
しかしながら、非特許文献1や特許文献1に開示の全光型光スイッチは、位相変調された変調光信号を発生する全光型光位相変調器として用いるのは困難である。
【0030】
非特許文献1や特許文献1に開示の全光型光スイッチの動作原理である光カー効果による相互位相変調効果は、そのまま位相変調器の動作原理として転用できるので、これを用いて全光型光位相変調器を提供することはできる。
【0031】
しかしながらこの場合、振幅変調方式・位相変調方式の双方に対応するために、それぞれの方式に対応した別個の全光型光変調器を用意することになる。このことは、装置の大型化・コスト増・消費電力の増大を招き、問題となる。
【0032】
1台の装置を用いて、簡便な調整手段によって、振幅変調方式・位相変調方式のいずれのフォーマットの光信号も発生できる、全光型強度・位相変調器を実現できれば、上記の問題を解決できる。その際、変調フォーマットの変化に伴う光損失の格段の変化など、光信号品質の格段の変化を伴わないことが実用上望ましい。さらにまた、信号光波長や環境温度が変化しても特性が変化しない、高安定な動作特性を担保できれば、安定化制御にかかわる部品・コスト・消費電力の増加がなく、実用上大きなメリットを享受できるようになる。
【0033】
そこで、本発明の目的は、簡便な調整手段によって、振幅変調方式・位相変調方式のいずれかのフォーマットの光信号も発生でき、かつ、その動作が高安定な、全光光変調器を提供することにある。さらにまた、それを用いた光信号発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
かかる課題を解決するために、第1の本発明の光変調器は、(1)直線偏光である信号光を入力する第1入出力端と、この第1入出力端に対向する側に第1偏波面保存光ファイバの一端と結合する第2入出力端と、スイッチされた信号光を出力する第3入出力端とを有する第1偏波分離合成手段と、(2)第2偏波面保存光ファイバの一端と結合する第1入出力端と、この第1入出力端に対向する側に第3偏波面保存光ファイバの一端と結合する第2入出力端と、第4偏波面保存光ファイバの一端と結合する第3入出力端と、この第3入出力端に対向する側に偏波クロストーク成分を出力する第4入出力端とを有する第2偏波分離合成手段と、(3)一端が第1偏波分離合成手段の第2入出力端と結合された第1偏波面保存光ファイバと、(4)一端が第2偏波分離合成手段の第1入出力端と結合された第2偏波面保存光ファイバと、(5)第1半端面保存光ファイバの他端と第2偏波面保存光ファイバの他端との接続箇所に1/2波長板を設け、1/2波長板の光学軸方向を回転可能な偏波面回転調整手段と、(6)一端が第2偏波分離合成手段の第2入出力端と結合され、直線偏光である制御光を入力する第1光カプラを有する上記第3偏波面保存光ファイバと、(7)一端が第2偏波分離合成手段の第3入出力端と結合された第4偏波面保存光ファイバと、(8)第3偏波面保存光ファイバの他端と第4偏波面保存光ファイバの他端とを接続し、入力光の偏波面を変換する第1偏波面変換手段とを備えることを特徴とする。
【0035】
第2の本発明の光信号発生装置は、(1)外部からの入力光信号に基づいて、入力光信号のビットレートに相当する周波数の電気クロック信号を生成するクロック信号生成手段と、(2)クロック信号生成手段から電気クロック信号に基づいて、外部からの入力光信号と同期した光パルス列を発生する第1光パルス列発生手段と、(3)クロック信号生成手段から電気クロック信号に基づいて、外部からの入力光信号と同期した光パルス列を発生する第2光パルス列発生手段と、(4)外部からの入力光信号に基づいて、入力光信号と同一波長及び同一位相の連続光を出力する光位相同期手段と、(5)クロック信号生成手段からの電気クロック信号に基づいて、光位相同期手段からの連続光を受け入れ、光注入同期現象により外部からの入力光信号と同一波長及び同一位相の光パルス列を発生する第2光パルス列発生手段と、(6)第2光パルス列発生手段からの光クロックパルス列と、外部からの入力光信号との干渉光を出力する光カップラと、(7)光カップラからの出力光を制御光として入力すると共に、第1光パルス列発生手段からの光パルス列を信号光として入力するものであって、第1の本発明の光変調器とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、簡便な調整手段によって、振幅変調方式・位相変調方式のいずれかのフォーマットの光信号も発生でき、かつ、その動作が高安定な光変調器及び光信号発生装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
(A)第1の実施形態
以下、本発明の光変調器の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。第1の実施形態では、本発明の全光型光変調器を光スイッチに適用した場合を例示する。
【0038】
(A−1)第1の実施形態の構成
(A−1−1)全体構成
図1は、第1の実施形態の光スイッチの主な構成を示す構成図である。図1において、第1の実施形態の光スイッチ1Aは、全光型光変調器として、第1偏波分離合成モジュール10と、第2偏波分離合成モジュール18と、第1偏波面保存光ファイバ12と、第2偏波面保存光ファイバ16と、1/2波長板14と、第3偏波面保存光ファイバ22と、第4偏波面保存光ファイバ26と、第1偏波面変換部24とを少なくとも備えている。
【0039】
また、図1に示す光スイッチ1Aは、上記構成の他に、第1光カプラ20、光バンドパスフィルタ28及び38、3ポート光サーキュレータ30、信号光入力用光ファイバ32−1及び32−2、変調光信号出力用光ファイバ27、29、37及び39、制御光入力ポート31、を少なくとも備えている。
【0040】
第1偏波分離合成モジュール10は、信号光を入力するための入力用光ファイバ32−2の一端が結合されている第1入出力端10−1と、第1入出力端10−1に対向する側に第1偏波面保存光ファイバ12の一端が結合されている第2入出力端10−2と、変調された信号光(以下、変調光信号と呼ぶ)を出力する第3入出力端10−3とを具えているものである。
【0041】
第2偏波分離合成モジュール18は、第2偏波面保存光ファイバ16の一端を結合する第1入出力端18−1と、第1入出力端18−1に対向する側に第3偏波面保存光ファイバ22の一端を結合する第2入出力端18−2と、第4偏波面保存光ファイバ26の一端を結合する第3入出力端18−3と、第3入出力端18−3に対向する側に偏波クロストーク成分を出力する第4入出力端18−4を具えている。
【0042】
第1及び第2偏波分離合成モジュール10及び18は、例えば既存の薄膜を用いたタイプの偏光ビームスプリッタの中から好適なものを適用することができる。また、第1及び第2偏波分離合成モジュール10及び18は、例えば薄膜を用いたタイプの偏光ビームスプリッタに限定されるものではなく、複屈折結晶を用いたいわゆる偏光プリズムを適用するようにしてもよい。
【0043】
第1偏波面保存光ファイバ12は、第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2に一端が結合されており、他端が1/2波長板14に結合されている光ファイバである。
【0044】
第2偏波面保存光ファイバ16は、1/2波長板に一端が結合されており、他端が第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に結合されている光ファイバである。
【0045】
1/2波長板14は、第1偏波面保存光ファイバ12と第2偏波面保存光ファイバ16と結合するものである。1/2波長板14は、第1偏波面保存光ファイバ12を通じて入力された直線偏光を、任意の偏光方向、又は後述する方法により決定された2方向の偏光方向の直線偏光として、第2偏波面保存光ファイバ16に出力するものである。
【0046】
このような1/2波長板14の機能は、1/2波長板14の光軸方向を、手動又は与えられた制御信号によって自動に回転させる偏波回転装置を備えることで実現することができる。この1/2波長板を用いた偏波回転装置は、既存技術である偏波面回転技術を行う偏波面回転モジュールを広く適用することができる。
【0047】
第3偏波面保存光ファイバ22は、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端に一端が結合され、他端が第1偏波面変換部24(図1では「A」と示されている)に結合されている光ファイバである。また、第3偏波面保存光ファイバ22は、制御光入力ポート31を有する第1光カプラ20を具えるものである。
【0048】
第1光カプラ20も、偏波面保存型の光カプラを適用することが望ましい。また、第1光カプラ20は、制御光入力ポート31から入力された直線偏光である制御光を、第3偏波面保存光ファイバ22、第4偏波面保存光ファイバ26の順に伝播させる。
【0049】
なお、第1光カプラ20は、光分岐比が1:1に設計されたいわゆる3dB光カップラや、それぞれ波長の異なる制御光および信号光を合波・分離するように設計されたWDMカップラを用いるようにしてもよい。
【0050】
第4偏波面保存光ファイバ26は、第1偏波面変換部24に一端が結合され、他端が第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3に結合されている光ファイバである。
【0051】
第1偏波面変換部24は、第3偏波面保存光ファイバ22と第4偏波面保存光ファイバ26と結合されるものであり、図1では「A」と示される位置に設けられるものである。
【0052】
(A−1−2)各構成要件の詳細について
第1〜第4偏波面保存光ファイバ12、16、22及び26や第1光カップラ20として利用して好適な偏波面保存光ファイバとしては、PANDA(Polarization-maintaining AND Absorption-reducing)型光ファイバを適用することができる。このPANDA型光ファイバは、コアの近傍に応力付与部を形成し、コアに強い応力を加えることにより偏波保持性を得ている。
【0053】
図2は、偏波面保存光ファイバに適用するPANDA型光ファイバの光伝播方向に対して垂直に切断した断面の概略的な断面構造図である。
【0054】
図2において、PANDA型光ファイバは、光を導波するコア142と、コア142を取り囲むクラッド140と、コア142を挟む形でクラッド140の屈折率よりも高い屈折率を持つ応力付与部144とを有して形成される。
【0055】
例えば、クラッドはSiO2で形成され、コア142はGeO2がドープされたSiO2で形成され、応力付与部144はB203がドープされたSiO2で形成される。
【0056】
図2に示すような構成を形成することにより、PANDA型光ファイバの光伝播方向に垂直な面内において、Slow軸の方向の光に対する等価屈折率と、Slow軸と直交するfast軸の方向の光に対する等価屈折率とは異なるものとなる。
【0057】
すなわち、コア142の近くに応力付与部144がおかれているために、光の電場ベクトルの振動方向のfast軸の方向に平行な光に対する等価屈折率より、光の電場ベクトルの振動方向のSlow軸の方向に平行な光に対する等価屈折率が高くなる。
【0058】
このような等価屈折率の非対称性があるために、PANDA型光ファイバに入力される光の偏波面は保存されて伝播されるようになる。すなわち、PANDA型光ファイバでは、直線偏波の光の偏波面を、図2に示すSlow軸(又はfast軸)に合わせて入力すると、偏波状態が保たれたまま光がPANDA型光ファイバ中を伝搬し、出射端においても、偏波面がSlow軸(又はfast軸)に一致するので、直線偏波の光成分のみを得ることが可能である。
【0059】
第1の実施形態では、説明便宜のために、図1に示す光スイッチの概略的構成図において、光伝送路である偏波面保存光ファイバを伝播する光の偏波方向を次のように規定しておく。
【0060】
光の電場ベクトルの振動方向が、図2に示すSlow軸方向と平行な偏光をTE(Transverse-Electric Modes)偏波と呼ぶこともあり、またこの方向をTE方向と呼ぶこともある。また、Slow軸と直交した、fast軸方向に平行な偏光をTM(Transverse-Magnetic Modes)偏波と呼び、その方向をTM方向と呼ぶこともある。
【0061】
また、第1の実施形態では、第1偏波分離合成モジュール10等の偏波分離合成モジュールヘ光が入射する場合、入射光の偏波分離合成モジュールの偏波面選択反射面に対する電場ベクトルの振動方向に対応する成分を次のように定義する。
【0062】
すなわち、偏波面選択反射面へ入射する入射光の入射面に平行な方向に電場ベクトルが振動する成分をp成分、入射光の入射面に垂直な方向に電場ベクトルが振動する成分をs成分と呼ぶこととする。
【0063】
例えば、第1偏波分離合成モジュール10へ光が入射する場合、第1偏波分離合成モジュールを構成している偏波分離合成素子の偏波面選択反射面10Rに対する入射面に平行な方向に電場ベクトルが振動する成分はp成分、入射光の入射面に垂直な方向に電場ベクトルが振動する成分はs成分である。第2偏波分離合成モジュール18においても同様である。
【0064】
第1偏波分離合成モジュール10において、第1入出力端10−1から入力されたp偏波成分は、第2入出力端10−2に出力され、第2入出力端10−2から入力されたs偏波成分は、第3入出力端10−3に出力される。また、第1偏波分離合成モジュール10において、第2入出力端10−2から入力されたp偏波成分は、第1入出力端10−1に出力される。
【0065】
次に、第1及び第2偏波分離合成モジュール10及び18の入出力端と、各偏波面保存光ファイバの入出力端との結合について説明する。
【0066】
第1及び第2偏波分離合成モジュール10及び18が備える各入出力端と、第1〜第4偏波面保存光ファイバ12、16、22及び26の各入出力端とは、各偏波分離合成モジュール10及び18のp波ないしはs波の偏光方向と、各偏波面保存光ファイバ12、16、22及び26のSlow軸ないしはfast軸の方向とが合致するように接合されているものとする。
【0067】
以下の説明では、便宜のために、各偏波分離合成モジュール10及び18のp波の偏光方向と、各偏波面保存光ファイバ12、16、22及び26のSlow軸の方向とが合致するように接合されているものとして説明する。勿論、上記の場合に限定されるものではなく、いくつかの接合箇所が、偏波分離合成モジュールのp波の偏光方向と、偏波面保存光ファイバのfast軸の方向とが合致するように接合されていたとしても、本発明の効果を実現できる。
【0068】
次に、第1偏波面変換部24における第3偏波保存光ファイバ22の端部と第4偏波面保存光ファイバ26の端部との接続方法について説明する。
【0069】
図3は、第1偏波面変換部24における接続方法を説明する説明図である。図3(B)は、第1偏波面変換部24における、第3偏波面保存光ファイバ22と第4偏波面保存光ファイバ26との接続断面を示す断面図である。図3(A)は、第3偏波面保存光ファイバ22及び第4偏波面保存光ファイバ26のそれぞれの断面図である。
【0070】
図3に示すように、第1偏波面変換部24において、第3偏波面保存光ファイバ22及び第4偏波面保存光ファイバ26は、互いに対向する端面176及び174のSlow軸同士が90度回転される形で接続されている。言い換えれば、互いのSlow軸とfast軸とが平行になるように接続されている。このような接続は、ファイバアダプタや融着接続などの容易な方法により実現することができる。
【0071】
また、別の接続方法としては、第3偏波面保存光ファイバ22の端面におけるSlow軸と、第4偏波面保存光ファイバ26の端面におけるSlow軸とが一致するように接続してもよいが、この場合、接合部に、例えば1/2波長板等を設置するようにする。
【0072】
次に、1/2波長板14に接続する第1偏波面保存光ファイバ12の端面と第2偏波面保存光ファイバ16の端面との接合について説明する。
【0073】
図4は、位相変調光信号発生時の信号光の偏波状態を説明する説明図である。図4では、1/2波長板14における、第1偏波面保存光ファイバ12の端面と第2偏波面保存光ファイバ16の端面との接続断面も示している。なお、図4では、位相変調光信号発生時の信号光の偏波状態について説明するものであるが、この点については動作の項で詳細に説明する。
【0074】
図4に示すように、1/2波長板14に接続する、第1偏波面保存光ファイバ12のSlow軸方向と、第2偏波面保存光ファイバ16のSlow軸方向とが一致するように調整されているものとする。なお、1/2波長板14の光学軸の方向については、後述する動作の項で説明するように調整可能なものである。
【0075】
なお、上述したように、偏波分離合成モジュールと各偏波面保存光ファイバとの接合箇所において、互いのp偏波方向とfast軸を合致させた部分が含まれるような状況の場合には、第1偏波面保存光ファイバ12と第2偏波面保存光ファイバ16との対向するファイバ端面をSlow軸とfast軸が一致するように調整するようにしてもよい。この場合でも、本発明の効果を実現できる。
【0076】
また、第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2から1/2波長板14に至る経路の長さ、すなわち第1偏波面保存光ファイバ12の長さをl1(経路L1ということもある。)とする。1/2波長板14から第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に至る経路の長さ、すなわち第2偏波面保存光ファイバ16の長さをl2(経路L2ということもある。)とする。第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2から第1偏波面変換部24に至る経路、すなわち第3偏波面保存光ファイバ22の長さをl3(経路L3ということもある。)とする。第1偏波面変換部24から第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3に至る経路、すなわち第4偏波面保存光ファイバ26の長さをl4(経路L4ということもある。)とする。
【0077】
第3偏波面保存光ファイバ22もしくは第4偏波面保存光ファイバ26、またはその両方において、波長λpの制御光による光カー効果により、波長λsの被制御光である信号光に対して相互位相変調効果による位相シフトが生じるものとする。
【0078】
なお、光カー効果の発現による位相シフトの発生に特段の寄与をしない、第1偏波面保存光ファイバ12、第2偏波面保存光ファイバ16、第3偏波面保存光ファイバ22もしくは第4偏波面保存光ファイバ26のいずれか一方は、光ファイバではなく、空間光学系とすることでも本発明の効果は得られる。
【0079】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の光スイッチ1Aにおける処理を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0080】
図1において、波長λsの被制御光である信号光が、入力用光ファイバ32−2に入力され、第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1に到達する。
【0081】
ここで、信号光は、ピーク強度の揃った光パルスが等時間間隔に並んだ、いわゆる光パルス列である。また、信号光のパルス時間間隔は、所望とする変調光信号のビットレートの逆数と一致する。例えば、10ギガビット毎秒の変調光信号を所望とする場合、光パルス列である信号光のパルス時間間隔は100ピコ秒である。
【0082】
第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1に到達する信号光は、第1偏波分離合成モジュール10において、p偏波成分に平行な直線偏光となるように偏波方向が調整される。その結果、信号光は、第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2から直線偏光として出力される。
【0083】
その後、信号光は、第1偏波面保存光ファイバ12中を伝播して1/2波長板14に到達する。このとき、信号光は、第1偏波面保存光ファイバのSlow軸と平行は直線偏光として伝播する。
【0084】
ここで、上述したように、1/2波長板14においては、第1偏波面保存光ファイバ12と第2偏波面保存光ファイバ16とのそれぞれ対向するファイバ端面は、互いのSlow軸方向が一致するように調整されている。
【0085】
第1の実施形態では、1/2波長板14の光軸方向を回転することで、最終的に所望とされる変調光信号の変調フォーマット(位相変調方式及び振幅変調方式)の切り替えが可能となる。
【0086】
以下では、その動作について説明する。
【0087】
(A−2−1)ケース1:位相変調光の出力
まず、最終的に所望とされる変調光信号のデータフォーマットが、位相変調信号である場合を説明する。
【0088】
この場合、1/2波長板14のいずれか一方の光学軸が、第1偏波面保存光ファイバ12と第2偏波面保存光ファイバ16のSlow軸と一致するように、1/2波長板14の光学軸を調整する。
【0089】
このとき、1/2波長板14を出力して第2偏波面保存光ファイバ16に結合される信号光の偏光方向は、第2偏波面保存光ファイバ16のSlow軸と偏波方向が一致した直線偏光となる(図4(A))。
【0090】
その後、信号光は、第2偏波面保存光ファイバ16中を、そのSlow軸と平行な直線偏光として伝播し、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に入力される。
【0091】
第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に入力された信号光は、p偏波成分しか持たないので、信号光のすべてが、第2入出力端18−2に出力され、第3偏波面保存光ファイバ22に与えられる。
【0092】
その後、信号光は、第1光カプラ20を経由し、第3偏波面保存光ファイバ22のSlow軸と平行な直線偏光として第3偏波面保存光ファイバ22を伝播し、次に、第1偏波面変換部24(「A」)を経由して、第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸と平行な直線偏光として第4偏波面保存光ファイバ26を伝播する。
【0093】
そして、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3に入力された信号光は、その偏光方向がs偏波方向であるため、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1から出力される。
【0094】
第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端から出力された信号光は、第1偏波面保存光ファイバ16のfast軸と一致する偏光方向の直線偏波として第2偏波面保存光ファイバ16を通過し、1/2波長板14を経由する。
【0095】
そして、信号光は、第1偏波面保存光ファイバ12のfast軸と平行な直線偏光として第1偏波面保存光ファイバ12を伝播し、第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2に到達する。この信号光は、s偏波方向であるため、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3から出力される。
【0096】
ここで、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3から出力される信号光は、制御光によって位相変調された位相変調光信号となる。なお、位相変調信号となる理由については、後で詳細に説明する。
【0097】
この位相変調光信号は、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3に結合された出力用光ファイバ27を経由し、光バンドパスフィルタ28に入力される。
【0098】
光バンドパスフィルタ28は、波長λsの信号光波長成分のみを選択的に通過させ、波長λpの制御光成分を遮断するものである。従って、位相変調光信号が光バンドパスフィルタ28を通過すると、波長λpの光成分が遮断され、波長λsの光成分が出力用光ファイバ29に出力される。これにより、最終的に所望とされる位相変調光信号が出力される。
【0099】
一方、振幅変調方式によって符号化された波長λpの制御光は、制御光入力ポート31から入力し、第1光カプラ20を経由して、第3偏波面保存光ファイバ22に入力される。
【0100】
ここで、制御光は、第3偏波面保存光ファイバ22のSlow軸に平行な直線偏波光になるように、その偏波面が調整されて入力される。また、制御光の有する一つの光パルス信号が、第3偏波面保存光ファイバ22に入力されるときに、信号光の有する一つの光パルスと時間的に一致するように、制御光パルス信号又は信号光の遅延時間が調整されて入力される。あるいはまた、光カー効果を生じさせる第3偏波面保存光ファイバ22と第4偏波面保存光ファイバ26との両方又はいずれか一方において、群速度分散による制御光と信号光間のウオークオフの効果が存在するときには、光カー効果による相互位相変調効果を最大化するために、制御光の光パルス位置と信号光の光パルス位置に若干のオフセットを与えて入力するようにしてもよい。
【0101】
ここで、便宜のために、所望とする位相変調光信号については、信号「0」が光位相「0」、信号「1」が光位相「π」に対応する位相変調信号として以下に動作を説明する。
【0102】
また同様に説明便宜のために、振幅変調された制御光が信号「1」に対応するピーク強度が1に対して、信号「0」に対応するピーク強度が限りなく0に近い、消光比が無限大の振幅変調信号であるとする。このような振幅変調信号は、on−off−keying信号と呼ばれることもある。
【0103】
制御信号が「0」である場合、信号光は何ら相互位相変調による位相シフトを受けない。この状態を、光位相0の位相変調信号であるとする。
【0104】
ここで、光信号の偏光方向及び光位相状態を便宜的に表すために、図4に示すようなベクトル表記を用いることとする。
【0105】
すなわち、信号光が、第2偏波分離合成モジュール18、第3偏波面保存光ファイバ22、第4偏波面保存光ファイバ26で構成される閉ループを通過し、第2偏波面保存光ファイバ16を経過し、1/2波長板14に入力される直前で、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に到達したときの信号光(=位相変調光)の偏光方向、光位相を考える。
【0106】
まず、制御信号が「0」である場合、位相変調光の偏光方向はfast軸に平行で、光位相が「0」であるので、この光信号の偏光・光位相状態を、図4(B)のように、右向きの矢印で示すものとする。
【0107】
次に、制御信号が「1」である場合、信号光は制御光との相互位相変調による位相シフトが生じる。第3偏波面保存光ファイバ22及び第4偏波面保存光ファイバ26で生じる位相シフトの総量がπとなるように、制御光のピーク強度が調整される。
【0108】
信号光が、入力用光ファイバ32−2に入力されて、第2偏波分離合成モジュール18、第3偏波面保存光ファイバ22、第4偏波面保存光ファイバ26で構成される閉ループを通過し、第2偏波面保存光ファイバ16を経過し、1/2波長板14に入力される直前での、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に到達するまでの光経路、および各経路を通過する偏光状態は、制御信号の「1」、「0」にかかわらず不変である。
【0109】
従って、信号光が第2偏波面保存光ファイバ16の左端に到達するまでに、その光位相を変化させる要素は、制御光による相互位相変調効果による位相シフト分のみと成る。
【0110】
そうすると、制御信号が「1」である場合、位相変調光の偏光方向はfast軸に平行であり、位相変調光の光位相がπであるので、この光信号の偏光・光位相状態は、図4(C)に示すように、左向きの矢印で示すものとする。
【0111】
さらにまた、光信号が第2偏波面保存光ファイバ16の左端から出力され、1/2波長板14、第1偏波面保存ファイバ12などを経過し出力用光ファイバ29から出力されるに至る光経路、および各経路を通過する偏光状態は、やはり制御信号の「1」、「0」にかかわらず不変である。従って、この経路を通過するにあたって、制御信号の「1」、「0」による付加的な光位相シフトは生じない。
【0112】
すなわち、以上の動作により、図1に示すように、出力用光ファイバ29から、制御信号の「1」、「0」に対応して、光位相が「π」、「0」に符号化された、位相変調光信号が出力される。
【0113】
(A−2−2)ケース2:振幅変調光の出力
次に、最終的に所望とされる変調光信号のデータフォーマットが、振幅変調信号である場合を説明する。
【0114】
図5は、振幅変調光信号発生時の信号光の偏波状態を説明する説明図である。
【0115】
図5に示すように、この場合、1/2波長板14のいずれか一方の光学軸が、第1偏波面保存光ファイバ12のSlow軸から22.5度傾けた位置になるように調整する。
【0116】
このとき、1/2波長板14を出力して第2偏波面保存光ファイバ16に結合される信号光の偏光方向は、第2偏波面保存光ファイバ16のSlow軸と45度傾いた直線偏光となる(図5(A)参照)。
【0117】
その後、信号光は、第2偏波面保存光ファイバ16中を、そのSlow軸と平行な直線偏光成分と、そのfast軸方向に平行な直線偏光成分とに分かれて伝播し、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に入力される。
【0118】
ここで、上記で述べた、Slow軸と平行な信号光の直線偏光成分をS1成分と定義し、そのfast軸方向に平行な信号光の直線偏光成分をS2成分と定義する。
【0119】
S1成分とS2成分の強度比は、第2偏波面保存光ファイバ16に結合される直線偏光たる信号光の偏光方向が、第2偏波面保存光ファイバ16のSlow軸と45度傾いているため、1:1となる。
【0120】
ケース1の場合と同様、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に入力されたときのS1成分、S2成分の偏波方向、光位相をベクトルで表現すると図5(A)のようになる。
【0121】
すなわち、S1成分はSlow軸に平行な上向きの矢印、S2成分はfast軸に平行な右向きの矢印として表現される。
【0122】
その後、S1成分は、偏光方向がp偏波方向であるため、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2から出力され、第3偏波面保存光ファイバ22のSlow軸と平行な直線偏光として第3偏波面保存光ファイバ22を伝播する。
【0123】
そして、S1成分は、第1偏波面変換部24(「A」)を経由して、第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸と平行な直線偏光として第4偏波面保存光ファイバ26を伝播し、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3に入力する。
【0124】
このS1成分の偏光方向はs偏波方向であるため、S1成分は、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1から出力され、第2偏波面保存光ファイバ16のfast軸と一致する偏光方向の直線偏波として第2偏波面保存光ファイバ16を通過し、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に至る。
【0125】
一方、S2成分は、偏光方向がs偏波方向であるため、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3から出力され、第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸と平行な直線偏光として第4偏波面保存光ファイバ26を伝播する。
【0126】
そして、S2成分は、第1偏波面変換部24(「A」)を経由して、第3偏波面保存光ファイバ22のSlow軸と平行な直線偏光として第3偏波面保存光ファイバ22を伝播し、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2に入力する。
【0127】
このS2成分の偏光方向はp偏波方向であるため、S2成分は、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1から出力され、第2偏波面保存光ファイバ16のSlow軸と一致する偏光方向の直線偏波として第2偏波面保存光ファイバ16を通過し、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に至る。
【0128】
ここで、ケース1の場合と同一の制御光が第1光カップラ20を介して入力された場合を考える。この同一とは、ケース1の場合と同じピーク強度、同じ消光比で、パルス信号の時間位置も全く同一で、ケース1の場合に比べて格段の異なる遅延時間も与えない、という意味である。
【0129】
制御光が「0」信号である場合、S1成分、S2成分ともに、制御光による相互位相変調による位相シフトは生じない。このとき、S1成分、S2成分が、第2偏波面保存光ファイバ16の左端より入力され、第2偏波分離合成モジュール18、第3偏波面保存光ファイバ22、第4偏波面保存光ファイバ26で構成される閉ループを通過し、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に再度到達するまでの光路長を考える。光路長とは、光ファイバなどの光学媒体の物理長に屈折率を掛けた値である。
【0130】
このとき、S1成分の経過する全光路長は、
nSl2+nSl3+nfl4+nfl2 …(1)
で与えられる。
【0131】
S2成分の経過する全光路長は、
nfl2+nfl4+nSl3+nSl2 …(2)
で与えられる。ここで、偏波面保存ファイバのSlow軸の屈折率をns、fast軸の屈折率をnfとする。
【0132】
式(1),(2)から、S1成分、S2成分が、第2偏波面保存光ファイバ16の左端より入力され、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に再度到達するまでの光路長は、全く同じであることがわかる。
【0133】
すなわち、制御光が“0”信号である場合、S1成分、S2成分の間には、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に再度到達するまでの間に相対的な光位相の差は生じない。従って、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に再度到達したときの、S1成分、S2成分のベクトル表現は、そのベクトル表現は、図5(A)の場合と同様に、上向きの矢印、右向きの矢印として表現される(図5(B))。
【0134】
ただし、S1成分の偏光方向はfast軸平行方向、S2成分の偏光方向はSlow軸平行となるため、図5(A)に示す、第2偏波面保存光ファイバ16の左端入力時の状態に比較して、互いに入れ替えた状態となる。
【0135】
その後、S1、S2成分が、1/2波長板14を経由して、第1偏波面保存光ファイバ12の右端に到達するとき、S1成分とS2成分が再合渡して得られる信号光は、第1偏波面保存光ファイバ12のSlow軸に平行な直線偏波となる(図5(B))。
【0136】
信号光は、その後再び第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2に入力され、その偏光方向がp偏波方向であるため、第1入出力端10−1から出力される。すなわち、第3入出力端10−3には出力されない。
【0137】
一方、制御光が「1」信号である場合、ケース1の場合の動作と同じく、制御光と同一方向に伝播するS1成分に対して、制御光による相互位相変調により、πの位相シフトが生じる。
【0138】
一方、制御光と逆行して伝播するS2成分に対しては、制御光による相互位相変調による位相シフトは無視できるほど小さいとする。そこで、第1の実施形態では、この場合の制御光による相互位相変調による位相シフトが無視できるほど小さいものであることを条件として説明する。
【0139】
このとき、S1成分に対して、S2成分に比してπの光位相シフトが生じるため、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に再度到達したときの、S1成分、S2成分のベクトル表現は、図5(C)のように表される。
【0140】
すなわち、S2成分に対しては、図5(B)の場合と同様に、上向きの矢印と表されるのに対し、S1成分に対しては、図5(B)の場合と反転した、左向きの矢印として表現される(図5(C))。
【0141】
その後、S1、S2成分が、1/2波長板14を経由して、第1偏波面保存光ファイバ12の右端に到達するとき、S1成分とS2成分が再合渡して得られる信号光は、この場合、第1偏波面保存光ファイバ12のfast軸に平行な直線偏波となる(図5(C))。
【0142】
その後、信号光は、再び第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2に入力され、その偏光方向がs偏波方向であるため、第3入出力端10−3から出力される。その後、ケース1の場合と同様に、出力用ファイバ27、光バンドパスフィルタ28を経由して、出力用光ファイバ29から出力される。
【0143】
以上のように、この場合、信号光は、制御光が「1」信号である場合のみ、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3から出力され、結果、出力用ファイバ29から出力される。
【0144】
すなわち、出力用光ファイバ29から、制御信号の「1」、「0」に対応して、ピーク強度が変調された、振幅変調光信号が出力される。この例の場合では、制御信号が「0」の場合、信号光はまったく出力されないので、いわゆるon−off−keying信号が出力される。
【0145】
以上のように、ケース1の位相変調フォーマット、ケース2の振幅変調フォーマットで発生する変調光信号のパルス波形について考察する。
【0146】
いずれのフォーマットにおいても、信号光が通過する光経路は同一である。従って、挿入損失は同一であり、また、群速度分散などの波形歪を生じさせる因子も同一である。従って、波形歪は同一である。
【0147】
また、位相変調フォーマットにおいては、信号光は何らの干渉効果も生じずに装置への入出力が行われる。一方、振幅変調フォーマットにおいては、信号光はループ内をS1成分、S2成分に分かれて伝播するが、最終的に、第1偏波面保存光ファイバ12の右端に入力されるときに再合波されるときに、それらは同相にて合波されるため、エネルギー損失が生じない。すなわち、干渉効果は存在するが、そこでのエネルギー損失はない。
【0148】
ゆえに、いずれのフォーマットにおいても、変調光信号のピーク強度(振幅変調の場合、「1」信号のピーク強度)は同一である。
【0149】
以上述べた様に、第1の実施形態においては、1/2波長板14の光軸方向の回転調整という簡便な手段によって、位相変調・振幅変調いずれのフォーマットの光信号も発生できる全光型光変調器を提供することができる。変調フォーマットの切り替えに応じて、制御光のピーク強度や光パルスの時間位置の変更なども不要である。また、発生する変調光信号のピーク強度(振幅変調信号の場合、「1」信号のピーク強度)にも変化がない。
【0150】
また、装置を構成する偏波面保存ファイバの複屈折は、式(1)、(2)に示されるように、自動的にキャンセルされる構造を有している。このことは、特に、S1成分とS2成分がともに存在し、それらの干渉を利用する、振幅変調フォーマットの場合において効果的である。すなわち、非特許文献1に示されるように、複屈折をキャンセルするための偏波面保存ファイバ長の高精度な調整が不要である。
【0151】
さらにまた、第3偏波面保存光ファイバ22及び第4偏波面保存光ファイバ26で生じる偏波クロクトーク成分は、全て第2偏波分離合成モジュール18の光ファイバ等への結合を必要としない第4入出力端18−4に出力される。これは、特許文献1の場合と同様に、位相変調フォーマットの場合、偏波クロクトーク成分は、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3にp偏波成分として入力され、また振幅変調フォーマットの場合、S1成分に対して生じる偏波クロクトーク成分は、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3にp偏波成分として入力され、S2成分に対して生じる偏波クロクトーク成分は、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2にs偏波成分として入力されるためである。従って、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3に、第3偏波面保存光ファイバ22及び第4偏波面保存光ファイバ26で生じる偏波クロクトーク成分が、本来所望とする変調光信号に混在して出力されることはない。
【0152】
従って、特許文献1と同様に、制御光のピーク強度を低減するために、長尺な第3偏波面保存光ファイバ22及び第4偏波面保存光ファイバ26を用いても、それらのファイバで生じる偏波クロストークによる動作不安定性の発現を抑制できる。
【0153】
以上のことから、第1の実施形態においては、偏波面保存ファイバの使用による複屈折の影響や、また、偏波クロストークの発生による、光変調動作の動作不安定性を抑制できる。すなわち、信号光波長や環境温度が変化しても特性が変化せず、また、高安定な動作特性を担保した、全光型光変調器を提供することができる。
【0154】
なお、以上の説明においては、説明便宜上、光位相(0:π)で変調された位相変調信号発生と、ピーク強度(0:1)で変調された振幅変調信号(on−off−keying信号)発生を想定して説明したが、第1の実施形態で実現できる光変調器の信号フォーマットは上記に限定されない。例えば、制御光をピーク強度(0:1)のon−off−keying信号とし、相互位相変調効果による位相シフトが0.5πとなるように制御光ピークパワーを調整すれば、光位相(0:π)で変調された位相変調信号発生が可能となる。この際、制御光をピーク強度(0.5:1)の振幅変調信号としても良い。また、制御光をピーク強度(0.5:1)の振幅変調信号とし、ピーク強度(0.5:1)の振幅変調信号を発生することも可能である。その他、様々な光位相関係、ピーク強度比を待った位相変調信号・振幅変調信号を、適宜、制御光のピーク強度などを調整して発生できる。
【0155】
また、変調光信号として振幅変調信号を発生する場合、出力用光ファイバ29から出力される所望の振幅変調光信号とは論理反転した振幅変調光信号が、入力用光ファイバ32−2から、信号光と逆行して伝播する形で同時に出力される。この論理反転信号を、所望とする正論理振幅変調光信号の信号品質モニタ等として使用することもできる。この場合において、入力用光ファイバ32−2の信号光入力端に、3ポート光サーキュレータ30を接続する。
【0156】
3ポート光サーキュレータ30は、それぞれの入出力ポートに接続された光ファイバ32−1、32−2、37を有する。光ファイバ32−1から入力された信号光は、光ファイバ32−2から出力される。光ファイバ32−2の他端は、第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1に接続される。第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1に入力される信号光は、p偏波成分に平行な直線偏光となるように、その偏波方向が調整されているものとする。論理反転した振幅変調光信号は、第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1から出力され、光ファイバ32−2に入力され、光ファイバ37から出力される。所望とする正論理振幅変調光信号の場合と同様に、制御光除去用の光バンドパスフィルタ38を透過する信号光波長成分のみを、論理反転した振幅変調光信号として、出力用光ファイバ39を介して出力させる。
【0157】
(A−3)第1の実施形態の動作
以上のように、第1の実施形態によれば、以下の効果を奏し得る。
【0158】
すなわち、第1の実施形態によれば、1台の装置を用いて、1/2波長板の光軸方向の回転という簡便な手段によって、振幅変調方式・位相変調方式のいずれのフォーマットの光信号も発生できる全光型光強度・位相変調器を提供できる。
【0159】
また、第1の実施形態によれば、変調フォーマットの変化に伴う変調光信号のパルス波形やピーク強度など、光信号品質の格段の変化を伴わない。
【0160】
さらに、第1の実施形態によれば、変調フォーマットの変化に伴う制御光のピーク強度・遅延時間などの調整も不要である。
【0161】
さらにまた、第1の実施形態によれば、信号光波長や環境温度が変化しても特性が変化しない、高安定な動作特性を担保できる。
【0162】
(B)第2の実施形態
次に、本発明の光変調器の第2の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0163】
第1の実施形態では、全光型光変調器を振幅変調フォーマットで動作させる際の説明において、制御光と逆行して伝播するS2成分に対する相互位相変調効果による位相シフトは無視するものとして処理する場合を例示した。
【0164】
このような処理は、制御光において、そのパルス幅をパルス周期で除した値で定義されるデューティ比が十分に小さい場合に有効である。
【0165】
しかしながら、デューティ比が大きくなってくると、S2成分に対する相互位相変調効果による位相シフトは顕著となり無視できなくなる。
【0166】
そこで、第2の実施形態では、S2成分に対する相互位相変調効果による位相シフトを考慮した全光型光変調器の実施形態を説明する。
【0167】
(B−1)第2の実施形態の構成
図6は、第2の実施形態の光スイッチ1Bの構成を示す構成図である。
【0168】
第2の実施形態の光スイッチ1Bの構成が、第1の実施形態の実施形態の構成と異なる点は、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2から、第3偏波面保存光ファイバ22、第1偏波面変換部24、第4偏波面保存光ファイバ26、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3までの光経路上のいずれかの位置に、光位相バイアス回路40を備える点である。
【0169】
また、それ以外の構成は、第1の実施形態で説明した構成と同様であるので、これら構成の詳細な説明は省略する。
【0170】
光位相バイアス回路40は、第1偏波面変換部24と第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3との間の第4偏波面保存光ファイバ26上に設けられるものである。なお、光位相バイアス回路40の配置位置は、図6に示す位置に限定されるものではなく、閉ループの光経路上のいずれかの位置に配置するようにしてもよい。
【0171】
図7は、光位相バイアス回路40の構成を示す構成図である。図7において、光位相バイアス回路40は、直線偏波光の偏波面を+45度回転させるファラデー回転子278と、直線偏波光の偏波面を−45度回転させるファラデー回転子280と、光軸X及び光軸Y軸を有する複屈折媒体282とを有して構成されるものである。
【0172】
なお、複屈折媒体282としては、以下で説明する機能を実現することができれば、種々のものを適用することができ、例えば、偏波面保存ファイバを用いるようにしてもよい、また、1軸性又は2軸性の複屈折を有する光学結晶を用いてもよい。いずれの場合においても、当該複屈折媒体282の、長さを調整することで、位相シフト補償量を調整できる。あるいはまた、ほぼ適当な長さに調整された複屈折媒体を用意して、温度変化による複屈折変化を用いて微調整しても良い。
【0173】
あるいはまた、複屈折媒体282として、複屈折結晶を重ね合わせた、いわゆる、バビネソレイユ補償板を用いることもできる。この場合、位相シフト補償量を可変にできるため、制御光のデューティ比の変化に適宜対応できる適応型光位相バイアス回路を構成できる。
【0174】
(B−2)第2の実施形態の動作
第2の実施形態の全光型光変調器は、逆行制御光の相互位相変調効果による位相シフトを考慮して光変調動作を行うものである。
【0175】
下記の文献Aには、光カップラで閉ループで構成した全光型光スイッチ等において、逆行制御光からの相互位相変調効果による位相シフトが全光型光スイッチのスイッチング動作に影響を与えることが議論されている。
【0176】
(文献A)S.Arahira,H.Murai,and Y.Ogawa,“Modified NOLM for Stable and Improved 2R Operation at Ultra-High Bit Rates”,IEICE Trans.Commun,Vol.E89-B,No.12,pp.3296-3305,2006
第1の実施形態の全光型光変調器も、文献Aに記載の光スイッチと同様に、閉ループ構造を有するものであり、逆行制御光からの相互位相変調効果による位相シフトがもたらす、光変調効果への影響が存在する。
【0177】
文献Aには、逆行制御光からの相互位相変調効果による位相シフトは、制御光がループを1周伝播するのに要する伝播時間が、制御光のパルス周期(ビット周期、例えば10ギガビット毎秒の場合、100ps)に比べて十分大きい場合、時間依存性を持たない、定常的な位相シフトとなることが記載されている。
【0178】
そうすると、このような条件は非線形効果の発現のために、ある程度長い相互作用長を有する多くの全光型光スイッチで成り立ち、第1の実施形態の全光型光変調器1Aにおいても、第3及び第4偏波面保存ファイバ22及び26の長さ(l3、l4)が極端に短くない場合に成立する。すなわち、上記仮定は、現実的な装置構成を有する多くの全光型光変調器において成立する。
【0179】
第1の実施形態のS2成分の信号光に対して生じる上記のような定常的な位相シフトは、文献Aの記載のように、振幅変調フォーマットにおける信号消光比の劣化と、変調信号波形の歪みを生じさせる。
【0180】
従って、第2の実施形態は、これを除去するために、第2偏波分離合成モジュール18、第3偏波面保存光ファイバ22、第4偏波面保存光ファイバ26で構成される閉ループのいずれかの箇所に、光位相バイアス回路40を挿入することで、上記の逆行制御光からの相互位相変調効果による位相シフトをキャンセルしようとするものである。
【0181】
なお、S2成分が存在しない位相変調フォーマットにおいては、このような逆行制御光からの相互位相変調効果による位相シフトは存在しないので、位相変調フォーマットの場合の動作説明は省略する。
【0182】
以下、図6及び7を参照しながら、第2の実施形態の全光型光変調器の動作について説明する。
【0183】
図7において、まず、信号光のS1成分が、第4偏波面保存光ファイバ26を伝播し、光位相バイアス回路40に結合された後、再び第4偏波面保存光ファイバ26に結合されるときのS1成分の偏波状態を説明する。
【0184】
S1成分は、第1の実施形態で説明したとおり、図7の右側から第4偏波面保存光ファイバ26から、そのfast軸に平行な直線偏波として出力され、光位相バイアス回路40に結合される。
【0185】
光位相バイアス回路40において、S1成分は、まずファラデー回転子280を経由して、偏波方向が−45度回転する。ここで、複屈折媒体282は、偏波回転したS1成分の偏波方向と、複屈折媒体282の光軸(X軸、Y軸)のうち一方の光軸(図7ではY軸)とが一致するように配置される。
【0186】
S1成分は、複屈折媒体282の光軸(Y軸)と平行な直線偏波として複屈折媒体282を通過した後、ファラデー回転子278に入力する。そして、ファラデー回転子278において、S1成分は+45度回転される。
【0187】
その結果、S1成分は、その偏波方向が図7の左側の第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸に平行な直線偏波として第4偏波面保存光ファイバ26に到達し、再び第4偏波面保存光ファイバ26を伝播していく。
【0188】
一方、S2成分は、第1の実施形態で説明したように、図7の左側の第4偏波面保存光ファイバ26から、第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸に平行な直線偏波として出力され、光位相バイアス回路40に到達される。
【0189】
光位相バイアス回路40において、S2成分は、まずファラデー回転子278を通過して偏波方向が+45度回転する。このとき、偏波回転されたS2成分の偏波方向は、複屈折媒体282のX軸方向の光軸方向に一致する。
【0190】
従って、S2成分は、複屈折媒体282のX軸と平行な直線偏波として複屈折媒体282を通過して、ファラデー回転子280に入力される。そして、ファラデー回転子280において、S2成分は−45度回転される。
【0191】
その結果、S2成分は、その偏波方向が図7の右側の第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸に平行な直線偏波として、図7右側の第4偏波面保存光ファイバ26に到達し、再び第4偏波面保存光ファイバ26を伝播していく。
【0192】
すなわち、S1成分、S2成分は、光位相バイアス回路40の挿入にもかかわらず、当該箇所以外は、第1の実施形態と同じ偏波状態で、各光経路を通過していく。すなわち、第1の実施形態の説明で述べた基本的な光変調動作及び発明の効果は、第2の実施形態でも保たれる。
【0193】
一方、第2の実施形態においては、S1成分、S2成分は、光位相バイアス回路40内に配置された複屈折媒体282を、互いに直交する光軸(X軸、Y軸)に平行な直線偏光の状態で通過する。そのため、この両成分間に、複屈折媒体282の有する複屈折に基づく光位相差が生じる。
【0194】
この光位相差を、S2成分に対して生じる逆行制御光との相互位相変調効果による位相シフトと正負反転した値に設定することで、S2成分に対して生じる逆行制御光との相互位相変調効果による位相シフトをキャンセルすることができる。
【0195】
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態で説明した効果に加えて、次に示す効果を期待できる。
【0196】
すなわち、第2の実施形態によれば、制御光として高デューティ比の光パルス信号を用いても、消光比の劣化や波形歪のない、良好な振幅変調光信号の発生が可能となる。このことは、制御光として、連続する「1」信号の間で光強度の変化がない、いわゆるノンリターン・トウ・ゼロ信号を用いることができることを意味する。この場合、信号光として、光パルス列の代わりに連続光を用いれば、同じく、ノンリターン・トウ・ゼロ方式の振幅変調光信号・位相変調光信号の発生が可能となる。
【0197】
(C)第3の実施形態
次に、本発明の光信号発生装置の第3の実施形態を図面を参照して説明する。
【0198】
第3の実施形態は、第1の実施形態又は第2の実施形態で説明した全光型光変調器を構成に含む光信号発生装置の実施形態を説明する。
【0199】
(C−1)第3の実施形態の構成
図8は、第3の実施形態の光信号発生装置2Aの構成を示す構成図である。
【0200】
図8において、第3の実施形態の光信号発生装置2Aは、第2光カプラ60と、第3光カプラ62と、第4光カプラ64と、第5光カプラ66と、クロック抽出回路70と、光パルス光源80と、光パルス光源82と、光PLL(Phase Locked Loop)回路90と、光データ信号識別回路100と、全光型光変調器50とを少なくとも有して構成される。
【0201】
光信号発生装置2Aは、符号化フォーマットが位相変調方式又は振幅変調方式のいずれの光データ信号を外部から入力し、位相変調方式又は振幅変調方式のいずれの符号化フォーマットの変調光信号を適宜選択して発生することができるものである。
【0202】
全光型光変調器50は、第1の実施形態又は第2の実施形態で説明した全光型光変調器を適用することができる。全光型光変調器50は、光パルス光源82から信号光入力用ファイバ32−1を介して信号光(波長λs)を取り込むと共に、光カプラ64から制御光入力ポート31を介して制御光(波長λp)を取り込み、最終的に所望とする変調光信号を出力用ファイバ29から出力するものである。
【0203】
なお、全光型光変調器50の詳細な内部構成は、第1及び第2の実施形態で説明したので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0204】
第2〜第5光カプラ60、62、64及び66は、少なくとも3個の光信号の入出力ポートを有する光カプラである。また、第2〜第5光カプラ60、62、64及び66は、1個の入力ポートから入力された光信号を、適宜設計された出力分岐比で2個の出力ポートから出力するものであったり、又は2個の入力ポートから入力された各光信号を、適宜設計された出力合成比で合波し、その合波信号を1個の出力ポートから出力するものを適用することができる。
【0205】
第2光カップラ60は、光データ信号を入力するポート60−1と、第2光カップラのポート62−1に出力するポート60−2と、クロック抽出回路70に出力するポート60−3とを有するものである。
【0206】
第3光カップラ62は、光カップラ60のポート60−2から出力された光信号を入力するポート62−1と、第5光カップラ66のポート66−1に出力するポート62−2と、光PLL回路90に出力するポート62−3とを有するものである。
【0207】
第5光カップラ66は、第3光カップラのポート62−2から出力された光信号を入力するポート66−1と、光データ信号識別回路100に出力するポート66−2と、第4光カップラ64のポート64−2に出力するポート66−3とを有するものである。
【0208】
第4光カップラ64は、第5光カップラ66のポート66−3から出力された光信号を入力するポート64−2と、光パルス光源80からの出力を入力するポート64−3と、全光型光変調器50に制御光を出力するポート64−1とを有するものである。
【0209】
クロック抽出回路70は、光カップラ60のポート60−3から出力された光データ信号を入力し、その入力した光データ信号に基づいて、光データ信号のビットレートに相当する周波数の電気クロックを抽出するものである。なお、入力する光データ信号は、振幅変調又は位相変調された波長λpの光データ信号である。
【0210】
ここで、ビットレートに相当する周波数の電気クロック信号とは、例えば装置外部から入力される光データ信号のビットレートが10ギガビット毎秒であるとき、周波数が10GHzで連続的な繰り返し波形を有するものであって、この光データ信号とタイミング同期された正弦波状又はパルス状の電気変調信号をいう。
【0211】
また、クロック抽出回路70は、抽出した電気クロック信号を光パルス光源80及び82に出力するものである。
【0212】
光パルス光源82は、クロック抽出回路70から出力された電気クロック信号を入力し、この電気クロック信号に基づいて、光データ信号とタイミング同期した波長λsの連続的な光クロックパルス列を発生するものである。また、光パルス光源82は、発生した光クロックパルス列を信号光として全光型光変調器50に与えるものである。
【0213】
ここで、光パルス光源82としては、例えば、既存のモード同期半導体レーザやモード同期ファイバレーザなどを適用することができる。また、光パルス光源82として、波長λsの連続光源と、LiNbO3光変調器や半導体電界吸収型光変調器などの光強度変調器とを組み合わせた光源を適用することができる。
【0214】
光PLL回路90は、第3光カプラ62のポート62−3から出力された光データ信号を入力し、その光データ信号の有する光キャリア成分が光位相検波され、その結果、光データの光キャリア成分と位相同期させた波長λpの連続光を光パルス光源80に与えるものである。
【0215】
また、光PLL回路90の構成及び動作原理としては、従来研究開発されているコヒーレント光通信システムの受信端において用いられるヘテロダイン検波などの技術を適用することができる。
【0216】
光パルス光源80は、クロック抽出回路70から電気クロック信号を入力すると共に、光PLL回路90から波長λpの連続光を入力する。また、光パルス光源80は、電気クロック信号を用いて光データ信号とタイミング同期させ、かつ、波長λpの連続光と光位相同期させた波長λpの連続的な光クロックパルス列を発生するものである。さらに、光パルス光源80は、発生させた波長λpの光パルス列を、第4光カップラ64のポート64−3に与えるものである。
【0217】
ここで、光パルス光源80としては、先に述べたLiNbO3光変調器や半導体電界吸収型光変調器などの光強度変調器に、光PLL回路90からの連続光を入力して動作させた光源を適用することができる。また、光パルス光源80として、文献Bに開示されるような、外部からの連続光に対して光注入同期動作させたモード同期半導体レーザを適用するようにしてもよい。
【0218】
(文献B)Shin Arahira,Hiroki Yaegashi,Koji Nakamura,and Yoh Ogawa,“Chirp Control and Broadband wavelength-tuning of 40-GHz Monolithic Actively mode-locked laser diodes module with an external CWlight injection”,IEEE J.Selected Topics in Quantum Electron,vol.11,No.5,pp.1103-1111,2005
光データ信号識別回路100は、第5光カップラ66のポート66−2から出力された光データ信号を入力し、入力された光データ信号が位相変調信号であるか又は振幅変調信号であるかを識別する識別回路である。
【0219】
また、光データ信号識別回路100は、識別結果に応じた制御電気信号を、全光型光変調器50に与えるものである。これにより、全光型光変調器50は、制御電気信号に基づいて、第1又は第2の実施形態で説明した1/2波長板14の回転調整を制御させることができる。
【0220】
なお、光データ信号の識別方法については、後述する動作の項において詳細に説明する。また、光データ信号回路100の設置位置は、図8に示す位置に限定されるものではなく、入力する光データ信号を取り込むことができる位置であれば、いかなる光経路に設けるようにしてもよい。
【0221】
(C−2)第3の実施形態の動作
次に、第3の実施形態の動作を図面を参照しながら説明する。
【0222】
まず、光データ信号が、装置外部から光信号発生装置2Aに入力する。光データ信号は、第2光カップラ60のポート60−1に入力し、第2光カップラ60のポート60−3から出力されて、クロック抽出回路70に入力する。
【0223】
光データ信号がクロック抽出回路70に入力されると、クロック抽出回路70は、光データ信号に基づいて、光データ信号のビットレートに相当する周波数の電気クロック信号を抽出する。
【0224】
そして、この電気クロック信号が光パルス光源80及び82に与えられ、光パルス光源80及び82が電気クロック信号を用いて駆動することで、光データ信号にタイミング同期した光クロックパルスが連続的に出力される。
【0225】
光パルス光源82からの波長λsの光クロックパルス列は、信号光入力用ファイバ32−1を通じて、信号光として全光型光変調器50に入力される。
【0226】
一方、第2光カップラ60のポート60−2から出力される光データ信号は、第3光カップラ62のポート62−1に入力される。光データ信号は、第3光カップラ62のポート62−2及び62−3から2分岐されて、第5光カップラ66及び光PLL回路90に出力される。
【0227】
光データ信号が光PLL回路90に入力されると、光PLL回路90において、光データ信号の有する光キャリア成分の光位相検波が実行され、その結果、光データ信号の有する光キャリア成分と位相同期された波長λpの連続光が、光パルス光源80に与えられる。
【0228】
光PLL回路90からの波長λpの連続光が光パルス光源80に入力すると、光パルス光源80では、光データ信号と光位相同期された装置外部からの光データ信号と同じ波長λpの連続的な光クロックパルス列を発生する光パルス光源として動作する。
【0229】
また、このとき同時に、光パルス光源80では、クロック抽出回路70からの電気クロック信号を受け入れて駆動されることで、発生する光クロックパルス列が、装置外部から入力される光データ信号とタイミング同期もされている。
【0230】
そして、光パルス光源80からの波長λpの光クロックパルス列は、第4光カップラ64のポート64−3に入力される。
【0231】
ここで適用される光パルス光源80からの光クロックパルス列は、後に詳細に述べる理由によって、光PLL回路90からの連続光、ひいては装置外部から入力される光データ信号と同一波長で、かつ、光位相同期されていなければならない。
【0232】
一方、第3光カップラ62のポート62−2から出力される光データ信号は、適宜光ファイバなどの光経路を通過した後、第4光カップラ64のポート64−2に入力される。
【0233】
その結果、第4光カップラ64のポート64−1からは、光パルス光源80からの波長λpの光クロックパルス列と、装置外部から入力された波長λpの光データ信号との合成波が出力される。
【0234】
ここでの光データ信号は、実際には装置に入力された光データ信号を光カップラなどで多段分岐したものであるが、その信号品質は、強度を除けば初期の装置に入力された光データ信号と同一のものであるので、その信号処理の結果は、初期の装置に入力された光データ信号に加えた信号処理の結果と同一のものと考えてよい。
【0235】
また、第4光カップラ64のポート64−1から出力される合成波は、光パルス光源80からの波長λpの光クロックパルス列と、装置外部から入力された波長λpの光データ信号との干渉出力となる。
【0236】
これら2つの光の偏波面が同一方向となるように調整されているものとする。そのためには、これら2つの光が第4光カップラ64のポート64−2及び64−3に到達するまでの光経路に、例えば偏波面コントローラなどの偏波面調整手段を適宜挿入することで容易に実現できる。あるいはまた、偏波面保存ファイバなどの偏波面保持手段を適用するようにしてもよい。
【0237】
また、光パルス光源80からの波長λpの光クロックパルス列のパルス幅及びピーク強度は、第4光カップラ64の入力ポート64−2に入力される光データ信号のパルス幅及びピーク強度と同一であるとする。そのためには、光パルス光源80の駆動条件を調整したり、又は、光データ信号及び光クロックパルス列が第4光カップラ64のポート64−2及び64−3に到達するまでの光経路に光増幅器を適宜挿入したりすることで実現できる。
【0238】
次に、図9を参照して、第4光カップラ64のポート64−1から出力される、光パルス光源80からの波長λpの光クロックパルス列と、装置外部から入力された波長λpの光データ信号との干渉出力を考察する。
【0239】
図9(A)において、入力された光データ信号が位相変調信号である場合を示す。ここでは、図9(A−1)に示すように、入力された光データ信号の光位相が(π、0、π、π)と変調された4ビットの位相変調信号を考える。また、図9(A−2)に示すように、光クロックパルス列の光位相は、入力された光データ信号と比較して、相対的にπであるとする。
【0240】
光クロックパルス列は、入力された光データ信号と光位相同期されて出力されたものであるために、入力された光データ信号と、光クロックパルス列との相対的な光位相関係が、図9(A−2)に示されたような状態に安定的に維持することが可能となる。
【0241】
このとき、第4光カップラ64のポート64−1から出力される、光パルス光源80からの波長λpの光クロックパルス列と、装置外部から入力された波長λpの光データ信号との干渉出力は、図9(A−3)に示されたようになる。
【0242】
すなわち、光データ信号の光位相が「0」であるとき、光クロックパルス列の光位相は「π」であるため、逆相で干渉した結果、合成出力(=干渉出力)の強度はゼロとなる。また、光データ信号の光位相が「π」であるとき、光クロックパルス列の光位相は「π」であるため、合成出力は両者の足し合わせとなり、有意な光強度が現れる。
【0243】
その結果、第4光カップラ64からの合成出力は、光ピーク強度が(1、0、1、1)と変調された振幅変調信号となる。すなわち、第4光カップラ64のポート64−1からは、入力光データ信号の光位相「π」の状態を光ピーク強度「1」、入力光データ信号の光位相「0」の状態を光ピーク強度「0」に換算して変換した、入力光データ信号の信号パターンと同一な信号パターンの振幅変調信号が得られる。
【0244】
次に、図9(B)は、入力された光データ信号が振幅変調信号である場合を示す。ここでは、図9(B−1)に示すように、入力された光信号の光ピーク強度が(1、0、1、1)と変調された4ビットの振幅変調信号を考える。振幅変調信号であるために、各信号の光位相は全て同じであり、ここでは、各信号の光位相を「0」であるとする。
【0245】
次に、図9(B−2)に示すように、光クロックパルス列の光位相は、図9(A)の場合と同様に、入力された光データ信号と比較して相対的に「π」であるとする。
【0246】
先の場合と同様に、光クロックパルス列は、入力された光データ信号と光位相同期されて出力されたものであるために、入力された光データ信号と、光クロックパルス列の相対的な光位相関係を図9(B−2)に示されたような状態で、安定的に維持することが可能となる。
【0247】
このとき、第4光カップラ64のポート64−1から出力される、光パルス光源80からの波長λpの光クロックパルス列と、装置外部から入力された波長λpの光データ信号との干渉出力は、図9(B−3)に示されたようになる。
【0248】
すなわち、光データ信号の光ピーク強度が「1」であるとき、光クロックパルス列の光位相は「π」であるため、逆相で干渉した結果、合成出力(=干渉出力)の強度はゼロとなる。また、光データ信号の光ピーク強度が「0」であるとき、光クロックパルス列の光波形がそのまま出力されて、合成出力に有意な光強度が現れる。
【0249】
その結果、第4光カップラ64からの合成出力は、光ピーク強度が(0、1、0、0)と変調された振幅変調信号となる。すなわち、第4光カップラ64のポート64−1からは、入力光データ信号の光ピーク強度「1」の状態を光ピーク強度「0」、入力光データ信号の光ピーク強度「0」の状態を光ピーク強度「1」に換算して変換した、入力光データ信号の信号パターンと同一な信号パターンの振幅変調信号が得られる。
【0250】
以上の考察より、第4光カップラ64のポート64−1からは、入力された光データ信号が位相変調信号・振幅変調信号の如何を問わず、入力光データ信号の信号パターンと同一な信号パターンの振幅変調信号が得られる。これを制御光として、全光型光変調器50の制御光入力ポート31に入力することで、最終的に、入力光データ信号の信号パターンと同一な信号パターンの、変調光信号が、全光型光変調器50の出力ボートファイバ29から得ることができる。
【0251】
図9で考察した効果は、第4光カップラ64のボート64−3に入力された光クロックパルス列が、装置外部から入力され、その一部が第4光カップラ64のポート64−2に入力された光データ信号と光位相同期され、かつ、同一波長であるために生じる。
【0252】
光クロックパルス列が、入力された光データ信号と光位相同期されておらず、何らの光位相の相関を有していない場合、入力された光データ信号と、光クロックパルス列の相対的な光位相関係を、図9(A−2)又は図9(B−2)に示されたように、一定の関係を保つことができない。この場合、例えば入力光データ信号が位相変調信号である場合に、光データ信号の光位相が「0」であっても、合成出力(=干渉出力)の強度がゼロとならない。すなわち、干渉出力の信号パターンは、初期光データ信号の信号パターンと一致したものにはならない。これは、最終的に出力された変調光信号の符号誤りを生じさせる。
【0253】
また、光クロックパルス列の波長と、入力された光データ信号の波長が一致しない場合、入力された光データ信号と、干渉出力に波長差に相当した周期の強度変動が生じる。この場合もまた、干渉出力の信号パターンは、初期光データ信号の信号パターンと一致したものにはならず、最終的に出力された変調光信号の符号誤りを生じさせる。
【0254】
すなわち、図9に示すような、初期光データ信号の信号パターンと一致した干渉出力の信号パターンを得るためには、光クロックパルス列が、入力された光データ信号と光位相同期され、かつ、同一波長である必要が生じる。先に述べた光パルス光源80においては、光PLL回路90からの連続光を入力して動作させた光強度変調器、あるいは光PLL回路90からの連続光に光注入同期させて動作させた、文献Bに開示されるようなモード同期半導体レーザを利用することで、これを実現することができる。
【0255】
また、図9(A−1)、(B−1)に示す、位相変調あるいは振幅変調された、装置外部から入力された光データ信号のベースバンド信号配列パターンを(1、0、1、1)であると定義し、最終的に出力される変調光信号のベースバンド信号配列パターンを考察すると、図9(A−3)、(B−3)に示される制御光の強度パターンを反映して、装置外部から入力された光データ信号が位相変調信号である場合には、(1、0、1、1)と初期光データ信号と同じ配列パターンになるのに対し、初期光データ信号が振幅変調信号である場合には、(0、1、0、0)と、外部から入力された光データ信号と論理反転した配列パターンとなる。
【0256】
装置外部から入力された光データ信号が振幅変調信号である場合の制御光の論理反転は、最終的に所望とする変調光信号が位相変調信号である場合には、位相変調信号は単に光信号の相対光位相のみを問題とするので、問題とはならない。
【0257】
一方、最終的に所望とする変調光信号が振幅変調信号である場合には、このような現象は、例えば受信端での論理識別を反転して考えればよいので、実用上やはりそれほど大きな問題とはならない一方、これを回避することもできる。
【0258】
例えば、図6に示す、第2の実施形態において、光位相バイアス回路にて与える光位相を、逆行制御光からの相互位相変調効果による位相シフトを補償する量に加えて、さらにπの位相シフト量を与える。
【0259】
このとき、振幅変調光信号の正論理信号・論理反転信号の出力ポートは交換される。すなわち、出力用光ファイバ29からは論理反転信号が出力され、すなわち、この場合、(1、0、1、1)と、入力された光データ信号と同じ配列パターンの振幅変調光信号を得ることができる。
【0260】
出力用光ファイバ29より出力される変調光信号の変調フォーマットの切り替え(位相変調⇔振幅変調)は、本装置が設置される光中継器などの基地局から発生される制御信号に基づいて、1/2波長板14の光軸回転を実行することで行われる。
【0261】
あるいはまた、装置外部から入力された光データ信号と、最終的に所望とされる変調光信号との間で、変調フォーマットの変換を伴わないような用途においては、次のような使用も可能である。ここで、変調フォーマットの変換を伴わないとは、入力光データ信号が振幅変調信号である場合、振幅変調信号を一意に出力させ、入力光データ信号が位相変調信号である場合、位相変調信号を一意に出力させる、という意味である。
【0262】
すなわち、第3光カップラ62のポート62−2と第4光カップラ64のポート64−2とを結合する、光データ信号の伝播する光経路に、第5光カップラ66を挿入し、光データ信号の分岐出力を得、これを光データ信号識別回路100に入力する。光データ信号識別回路100において、入力光データ信号の変調フォーマットが位相変調信号であるか、振幅変調信号あるかの判別を行う。その結果に応じて制御電気信号を発生し、この電気信号に応じて入/2波長板14の光軸回転を実行する。
【0263】
その結果、装置外部から入力された光データ信号の変調フォーマット判別を自動的に行う、自律的な装置構成が可能となる。
【0264】
このような光データ信号識別回路100は、図8の構成例によらず、装置へ入力された光データ信号が経由するいかなる光経路に挿入しても良い。
【0265】
図10は、光データ信号識別回路100により光データ信号の判別方法を説明する概略的な説明図である。光データ信号識別回路100は、図10(A)、(B)に示す方法で光データ信号を判別するものを適用することができる。
【0266】
図10(A)において、光データ信号を構成する各光パルスが同じパルス波形を有し、かつ、光データ信号の平均強度が同じであるとした場合、光データ信号を構成する各光パルスのピーク強度に、光データ信号の変調フォーマットによる違いが生じる。
【0267】
具体的には、光データ信号識別回路100は、光データ信号のピーク強度を検出することで、光データ信号を判別する方法を適用することができる。つまり、光データ信号が位相変調信号である場合、各光パルスのピーク強度は、「1」信号、「0」信号の場合とも同じである。このときのピーク強度をIpであるとする。一方、光データ信号が振幅変調信号である場合、「1」信号、「0」信号のピーク強度は異なる。今、光信号がon−off−keying信号であるとし、マーク率をMとした場合、「1」信号のピーク強度はIp/Mとなり、光データ信号が位相変調信号である場合のピーク強度に比べて1/M倍に増強される。従って、ピーク強度を検出することで、光データ信号が振幅変調信号か又は位相変調信号かの判別が可能となる。
【0268】
また例えば、光データ信号識別回路100は、装置に入力された光データ信号の個々の光信号のピーク強度をサンプリングし、その分布を調べ、その分布が極度に広がった信号を振幅変調信号と判定し、また分布が狭い信号を位相変調信号と判定するようにしてもよい。
【0269】
また、図10(B)に示すように、光データ信号識別回路100は、位相変調信号と振幅変調信号の光スペクトルの違いに基づいて判別してもよい。
【0270】
具体的には、例えば図10(B)に示すように、振幅変調信号は、その光キャリア波長成分に離散的なスペクトル成分を有する。一方、位相変調信号は、光キャリア波長での離散的なスペクトル成分を持たず、光キャリア波長近傍で光スペクトルはブロードに広がる。
【0271】
光データ信号を、その光キャリア波長から若干離調した波長にピーク透過率を有し、かつ、十分狭い帯域を有する光バンドパスフィルタを透過させる。すると、光データ信号が振幅変調信号である場合、光バンドパスフィルタを透過する光データ信号強度は低い。一方、光データ信号が位相変調信号である場合、光バンドパスフィルタを透過する光データ信号強度は、その光スペクトル広がりを反映して高くなる。従って、光データ信号識別回路100は、このような光バンドパスフィルタを透過する光データ信号強度を検出することで、光データ信号が振幅変調信号か又は位相変調信号かの判別が可能となる。
【0272】
(C−3)第3の実施形態の効果
以上のように、第3の実施形態によれば、第1又は第2の実施形態で説明した全光型光変調器を備える光信号発生装置を実現することにより、外部から入力される光データ信号の符号化フォーマットが位相変調方式又は振幅変調方式の何れの方式であっても、位相変調方式又は振幅変調方式の何れの符号化フォーマットの変調光信号をも適宜選択して発生することが可能な光信号発生装置を提供することができる。
【0273】
(D)第4の実施形態
次に、本発明の光信号発生装置の第4の実施形態を図面を参照して説明する。
【0274】
図11は、第4の実施形態の光信号発生装置2Bの構成を示す構成図である。
【0275】
図11において、第4の実施形態の光信号発生装置2Bは、第2光カプラ60と、第3光カプラ62と、第4光カプラ64と、第5光カプラ66と、クロック抽出回路70と、光パルス光源80と、光パルス光源82と、光PLL(Phase Locked Loop)回路90と、光データ信号識別回路100と、全光型光変調器50と、波長変換器110を少なくとも有して構成される。
【0276】
図11に示す第4の実施形態の光信号発生装置2Bが図8の光信号発生装置2Aと異なる点は、波長変換器110を新たに加える点、及び光パルス光源82の機能の点である。それ以外の構成は、図8の光信号発生装置2Aの構成と同じであるので、第4の実施形態では、波長変換器110及び光パルス光源82の構成を中心に説明する。
【0277】
第3の実施形態においては、全光型光変調器50において、信号光と制御光の分離のために、それらの波長を、光バンドパスフィルタ28、38において、信号光波長成分のみ選択的に透過可能な程度に異ならせておく必要があった。従って、第3の実施形態においては、外部から入力された光データ信号の波長(λp)と、最終的に発生させる変調光信号の波長(λs)とが異なる、波長変換動作を本質的に伴う。
【0278】
しかしながら、これら両者の波長が一致して動作することを要求する応用も多い。例えばWDMシステムにおいて、長距離伝送のための光中継器として、第3の実施形態の光信号発生器を用いる場合がそれに相当する。第4の実施形態においては、波長変換器110を用いることで、全光型光変調器50に入力される制御光の波長を、外部から入力された光データ信号の波長(λp)とは異なる波長(λp’)に変換する。それによって、全光型光変調器50に入力される信号光の波長(λs)と、外部から入力された光データ信号の波長(λp)が一致しても、光バンドパスフィルタ28、38において信号光波長成分のみを選択的に透過し、制御光波長成分を遮断できるため、全光型光変調器50における光変調動作が阻害されない。
【0279】
波長変換器110は、第4光カップラ64のポート64−1と全光型光変調器50の制御光入力ポート31とを結ぶ光経路上に設けられているものである。波長変換器110は、第4光カップラ64のポート64−1からの出力光の波長を変換し、変換した波長の光を全光型光変調器50に与えるものである。
【0280】
波長変換器110としては様々なタイプのものを用いることができる。例えば、半導体光増幅器、LiNbO3などの非線形光学結晶、非線形光学結晶に光導波路と分極反転による擬似位相整合構造を作りこんだデバイス、光ファイバなどにおける、3波混合効果や4波混合効果を応用したものを用いることができる。
【0281】
また、波長変換器110は、文献Cなどに開示の光ファイバなどにおける光カー効果に基づく、光信号再生効果を伴う波長変換器を用いることができれば、光信号再生効果を伴う光信号発生装置の提供が可能となる。
【0282】
(文献C)P.V.Mamyshev,“All-Optical data Regeneration based on self-phase modulation effect”,Technical digest of European Conference on Optical Communication 98(ECOC 98),vol.1,pp.475-476,Madrid,Spain,1998
光パルス光源82は、クロック抽出回路70からの電気クロック信号を用いて、装置外部から入力された光データ信号とタイミング同期した波長λpの光パルス列を発生させるものである。これにより、外部から入力された光データ信号の波長λpと一致させた光パルス列を全光型光変調器50に与えることができる。
【0283】
なお、光信号発生装置2Bの構成は、図11に示す構成に限定されるものではない。例えば、光パルス光源82を用いず、光パルス光源80のみを用意し、それからの光クロック出力を光カップラなどで2分岐し、一方の出力を全光型変調器50の信号光入力用ファイバ32−1に接続して信号光として供給し、もう一方の出力を外部から入力された光データ信号との干渉のために第4光カップラ64のポート64―3に接続しても良い。
【0284】
この場合、光パルス光源82が不要な構成となる。その他の構成は第3の実施形態と同様であるため、ここではその説明を割愛する。
【0285】
(D−3)第4の実施形態の効果
以上のように、第4の実施形態によれば、第3の実施形態の効果に加えて、次の効果を期待できる。すなわち、第4の実施形態によれば、外部から入力された光データ信号と同一波長の位相変調又は振幅変調された変調光信号を発生する、光信号発生装置の提供が可能となる。
【0286】
(E)他の実施形態
第1〜第4の実施形態では、光カー効果に基づき相互位相変調効果を発現する媒体として光ファイバを考慮したが、本発明で得られる効果は、このような光ファイバの使用に限定されるものではない。制御光により被制御光の光位相を変化させる効果を有する光デバイスであれば、その応用形態に応じて、多種多様なデバイスを用いて、本発明の効果を生じることができる。例えば、動作するビットレートが、1Gb/sなど比較的低ビットレートであれば、半導体光増幅器や電解吸収型光変調器を用いることもできる。また、Siをコアとし、SiO2をクラッドとして形成した、いわゆるシリコン細線導波路を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0287】
【図1】第1の実施形態の光スイッチの構成を示す構成図である。
【図2】偏波面保存光ファイバに適用するPANDA型光ファイバの光伝播方向に対して垂直に切断した断面の概略的な断面構造図である。
【図3】第1の実施形態の第1偏波面変換部における接続方法を説明する説明図である。
【図4】第1の実施形態の位相変調光信号発生時の信号光の偏波状態を説明する説明図である。
【図5】第1の実施形態の振幅変調光信号発生時の信号光の偏波状態を説明する説明図である。
【図6】第2の実施形態の光スイッチの構成を示す構成図である。
【図7】第2の実施形態の光位相バイアス回路の構成を示す構成図である。
【図8】第3の実施形態の光信号発生装置の構成を示す構成図である。
【図9】第3の実施形態の制御光生成過程を説明する説明図である。
【図10】第3の実施形態の光データ信号識別回路による光データ信号識別方法を説明する説明図である。
【図11】第4の実施形態の光信号発生装置の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0288】
1A及び1B(50)…光スイッチ、10…第1偏波分離合成モジュール、18…第2偏波分離合成モジュール、12、16、22、26…第1〜第4偏波面保存ファイバ、14…1/2波長板モジュール、24…第1偏波面変換部、28、38…光バンドパスフィルタ(中心波長λs)、32−1及び32−2…信号光入力用光ファイバ、27、29、37、39…変調光信号出力用光ファイバ、31…制御光入力ポート、40…光位相バイアス、
2A及び2B…光信号発生装置、60、62、64、66…第2〜第5光カップラ、70…クロック抽出回路、80…光パルス光源、82…光パルス光源、90…光PLL回路、100…光データ信号識別回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器及び光信号発生装置に関し、例えば、長距離大容量光ファイバ通信などに利用される、制御光によって被制御光に強度変調又は位相変調を与える光変調器及び光信号発生装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
例えばインターネット等に代表されるネットワーク技術の発展に伴い、光ファイバ通信の通信容量の大容量化への要求が近年ますます高まってきている。
【0003】
近年の光ファイバ通信の通信容量の大容量化のためには、送受信可能な波長チャンネル数を増やすこと(例えば、波長多重通信技術(WDM:Wavelength Division Multiplexing)と、各波長チャンネルあたりの通信速度を高速化することによってなされている。
【0004】
波長チャンネルあたりの通信速度を高速化する手段としては、例えば、時分割多重通信(TDM:Time Division Multiplexing)等の多重通信方法が検討され、また実用化されている。このTDM方式は、複数チャンネルを時分割多重した時分割多重信号を用いることにより、波長チャンネルあたりの通信速度を高速化する方式である。
【0005】
TDM方式は、受信側において、クロック信号から生成されるゲート信号に基づき、時分割多重信号から個々のチャンネルを分離する多重分離手段を備え、個々のチャンネルの情報を個別に取り出して受信することがなされている。また、従来採用されているTDM方式は、電子デバイスレベルで時分割多重信号発生・多重信号分離を行う方式である。この方式を、特に電気TDMと呼ぶ。
【0006】
電気TDMの通信速度を高速化するためには、電子デバイス、及び光電変換を行うためのフォトダイオード、半導体レーザなどのオプトエレクトロニクスデバイスの高速化が必要である。その通信速度は40Gbit/s程度のビットレートが限界であった。
【0007】
TDM方式の通信速度をさらに高速化するためには、上記の多重信号発生・多重信号分離手段を全て光学的な手段で実現するのが望ましい。この方式を、特に光TDMと呼ぶ。
【0008】
光TDM方式では、例えば光カップラなどを結合させた光回路を用いて、時分割多重された光パルス信号の生成を行うことが望ましい。また、受信側での多重分離としては、制御光である光制御信号でゲート動作させた、全光型光スイッチを用いて実行するのが望ましい。さらにまた、長距離伝送などのための光中継器や、光ネットワークのノードにおいては、波長変換や変調光信号の生成さらには光信号再生動作などの光信号制御技術が必要となるが、これらについてもまた、同様に、制御光信号で、被制御光信号の波長変換、変調光信号の生成、信号再生などを行う、全光型波長変換器・光変調器などを用いて実行するのが望ましい。
【0009】
すなわち、光TDM方式では、その受信端における多重分離や、あるいは光中継器等における光信号再生などを実行するために、制御光信号で、被制御光信号のスイッチ動作、変調信号生成動作を行う、全光型光スイッチ・変調器が必要となる。
【0010】
全光型光スイッチ・変調器を実現する手法として、光ファイバにおいて発現する光カー効果を利用する方法は、その好ましい一例である。
【0011】
光ファイバにおいて発現する光カー効果は、光ファイバを強度の強い光が伝播することにより光ファイバの屈折率が変化する現象であり、その応答速度は数フェムト秒(fs)である。すなわち、光ファイバの光カー効果を利用して光スイッチや光変調器を構成すれば、およそ数百Gbit/s以上の光パルス信号のスイッチングや変調が可能な光スイッチ・光変調器を実現できる可能性がある。
【0012】
光カー効果を利用した光スイッチとして、偏波面保存型の単一モード光ファイバ内で発現する光カー効果を利用した光スイッチが研究されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0013】
非特許文献1に開示されている光カー効果を利用した光スイッチは、光カー効果を発現させる光ファイバとして偏波保存単一モード光ファイバ(以後「偏波面保存光ファイバ」あるいは単に「光ファイバ」ということもある。)が利用されている。
【0014】
この偏波面保存光ファイバは、このファイバの光の伝播方向(以後「光ファイバの光軸方向」ということもある。)に対して垂直な面内に設定された遅相軸あるいはスロー(Slow)軸と呼ばれる光学軸の方向と、Slow軸と直交する進相軸あるいはファスト(fast)軸と呼ばれる光学軸の方向とでは、導波される光に対する等価屈折率が異なる構造である。
【0015】
そして、非特許文献1に開示されている光スイッチに利用されている光ファイバは、2本の偏波保存単一モード光ファイバの光学軸を直交させて融着された面を有し、偏波面保存型の単一モード光ファイバの有する複屈折性を相殺できる構造を有している。
【0016】
非特許文献1に記載の光スイッチには、偏波面保存光ファイバの光学軸と平行な偏波面を有する直線偏波の制御光と、偏波面保存光ファイバの光学軸から45度傾いた偏波面を有する直線偏波の信号光(被制御光)が入力される。
【0017】
そして、この光スイッチに信号光を構成する光パルスと制御光を構成する光パルスとが同期して入力されない場合には、信号光の光パルスは、この光スイッチヘの入力時と同一の直線偏光状態で出力される。一方、制御光の光パルスと信号光の光パルスとが同期して入力された場合には、信号光の光パルスの偏光成分のうち制御光の光パルスの偏波方向と平行な偏波成分に対して、制御光の光パルスによって光カー効果が誘起される。すなわち、光カー効果によって、信号光の光パルスと制御光の光パルスとの間で発現する相互位相変調効果によって、信号光の光パルスに位相シフトが生じる。
【0018】
ここで、制御光の光パルスと信号光の光パルスとが同期して入力されるとは、制御光の有する一つの光パルス信号が、以下で説明する第3偏波面保存光ファイバ22に入力されるときに、信号光の有する一つの光パルスと時間的に一致するように、制御光パルス信号又は信号光の遅延時間が調整されて入力される状態を指す。またこの際、以下で詳細に説明するように、群速度分散によるウオークオフの効果を見込んで、制御光の光パルス位置と信号光の光パルス位置に若干のオフセットを与えて入力する場合もあり、同期して入力される状態とは、この場合も含めた状態を意味する。
【0019】
この位相シフト量φがπに等しい時、信号光の光パルスの偏波方向が、この光スイッチヘの入力時に対して90度回転する。すなわち、信号光の光パルスの偏波方向が、光ファイバの光学軸に対して−45度の方向になる。そして、光スイッチの出力側に検光子を配置することで、制御光により信号光の光パルスを通過させたり、遮断したりすることができる。
【0020】
すなわち、検光子の光学軸の方向を、信号光の光パルスの偏波方向がこの光スイッチヘの入力時に対して90度回転している場合には透過し、入力時と同一の偏波方向である場合には遮断する向きに設定して配置すれば、制御光によって偏波面が回転された光パルスのみがこの光スイッチを透過できるので、制御光によって、信号光の光パルスをスイッチできる。
【0021】
非特許文献1に開示されている光スイッチを実現するには、2本の偏波保存単一モード光ファイバのファイバ長の厳密な調整といった、現実のデバイス作製を煩雑にする問題点がある。さらには、非特許文献2に開示される、現実の偏波保存単一モード光ファイバにおいて存在する偏波クロストーク成分による、スイッチ動作不安定性の問題もある。
【0022】
これらの問題を解決する方法として、我々は、特許文献1に開示される光スイッチをこれまでに提案している。
【0023】
すなわち、特許文献1では、光スイッチを構成する偏波保存単一モード光ファイバのファイバ長の調整が不要であり、かつ、光カー効果を生じさせる偏波保存単一モード光ファイバとして、長尺なものを用いても、偏波クロストーク成分によるスイッチ動作の不安定性が生じない、光スイッチが開示されている。
【0024】
【特許文献1】特開2006−58508号公報
【非特許文献1】“Ultrafast Optical multi/demultiplexer utilizing optical Kerr effect in polarization-maintaining single-mode fibres”,T.Morioka,M.Saruwatari and A Takada,Electronic Letters,Vol.23,No.9 pp.453-454,1987.
【非特許文献2】荒井慎一 他5名,“偏波保持光ファイバ”,古川電工時報,平成14年1月 第109号,pp.5-10,2002.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
光通信システムにおいて利用される光信号の符号化フォーマットは、多種多様なものが提案・利用されている。その代表的なものは、光信号のピーク強度の大小によって2値デジタル信号を表す振幅変調方式と、光信号の光搬送波の光位相の違いによって2値デジタル信号を表す位相変調方式である。
【0026】
振幅変調方式、位相変調方式は、それぞれネットワークの要求仕様を最大限満足するものが、適宜選択されて使用されることが望ましい。また光通信ネットワークは、様々な仕様の複数のネットワークを相互接続させた形態を有する。すなわち、光通信ネットワークは、振幅変調方式、位相変調方式など様々な変調フォーマットで符号化された様々な光信号が、それぞれ適材適所で混在して運用されることが望ましい。
【0027】
このような状況を鑑みたとき、符号化された光信号を発生するための光変調器としては、振幅変調方式、位相変調方式のいずれの方式にも対応できるような汎用性を有していることが望ましい。
【0028】
前記の非特許文献1や特許文献1に開示の全光型光スイッチは、そのピーク強度の大小による振幅変調方式によって信号化された光パルス信号を制御光として用いることで、振幅変調された変調光信号を発生する全光型光強度変調器として用いることができる。
【0029】
しかしながら、非特許文献1や特許文献1に開示の全光型光スイッチは、位相変調された変調光信号を発生する全光型光位相変調器として用いるのは困難である。
【0030】
非特許文献1や特許文献1に開示の全光型光スイッチの動作原理である光カー効果による相互位相変調効果は、そのまま位相変調器の動作原理として転用できるので、これを用いて全光型光位相変調器を提供することはできる。
【0031】
しかしながらこの場合、振幅変調方式・位相変調方式の双方に対応するために、それぞれの方式に対応した別個の全光型光変調器を用意することになる。このことは、装置の大型化・コスト増・消費電力の増大を招き、問題となる。
【0032】
1台の装置を用いて、簡便な調整手段によって、振幅変調方式・位相変調方式のいずれのフォーマットの光信号も発生できる、全光型強度・位相変調器を実現できれば、上記の問題を解決できる。その際、変調フォーマットの変化に伴う光損失の格段の変化など、光信号品質の格段の変化を伴わないことが実用上望ましい。さらにまた、信号光波長や環境温度が変化しても特性が変化しない、高安定な動作特性を担保できれば、安定化制御にかかわる部品・コスト・消費電力の増加がなく、実用上大きなメリットを享受できるようになる。
【0033】
そこで、本発明の目的は、簡便な調整手段によって、振幅変調方式・位相変調方式のいずれかのフォーマットの光信号も発生でき、かつ、その動作が高安定な、全光光変調器を提供することにある。さらにまた、それを用いた光信号発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
かかる課題を解決するために、第1の本発明の光変調器は、(1)直線偏光である信号光を入力する第1入出力端と、この第1入出力端に対向する側に第1偏波面保存光ファイバの一端と結合する第2入出力端と、スイッチされた信号光を出力する第3入出力端とを有する第1偏波分離合成手段と、(2)第2偏波面保存光ファイバの一端と結合する第1入出力端と、この第1入出力端に対向する側に第3偏波面保存光ファイバの一端と結合する第2入出力端と、第4偏波面保存光ファイバの一端と結合する第3入出力端と、この第3入出力端に対向する側に偏波クロストーク成分を出力する第4入出力端とを有する第2偏波分離合成手段と、(3)一端が第1偏波分離合成手段の第2入出力端と結合された第1偏波面保存光ファイバと、(4)一端が第2偏波分離合成手段の第1入出力端と結合された第2偏波面保存光ファイバと、(5)第1半端面保存光ファイバの他端と第2偏波面保存光ファイバの他端との接続箇所に1/2波長板を設け、1/2波長板の光学軸方向を回転可能な偏波面回転調整手段と、(6)一端が第2偏波分離合成手段の第2入出力端と結合され、直線偏光である制御光を入力する第1光カプラを有する上記第3偏波面保存光ファイバと、(7)一端が第2偏波分離合成手段の第3入出力端と結合された第4偏波面保存光ファイバと、(8)第3偏波面保存光ファイバの他端と第4偏波面保存光ファイバの他端とを接続し、入力光の偏波面を変換する第1偏波面変換手段とを備えることを特徴とする。
【0035】
第2の本発明の光信号発生装置は、(1)外部からの入力光信号に基づいて、入力光信号のビットレートに相当する周波数の電気クロック信号を生成するクロック信号生成手段と、(2)クロック信号生成手段から電気クロック信号に基づいて、外部からの入力光信号と同期した光パルス列を発生する第1光パルス列発生手段と、(3)クロック信号生成手段から電気クロック信号に基づいて、外部からの入力光信号と同期した光パルス列を発生する第2光パルス列発生手段と、(4)外部からの入力光信号に基づいて、入力光信号と同一波長及び同一位相の連続光を出力する光位相同期手段と、(5)クロック信号生成手段からの電気クロック信号に基づいて、光位相同期手段からの連続光を受け入れ、光注入同期現象により外部からの入力光信号と同一波長及び同一位相の光パルス列を発生する第2光パルス列発生手段と、(6)第2光パルス列発生手段からの光クロックパルス列と、外部からの入力光信号との干渉光を出力する光カップラと、(7)光カップラからの出力光を制御光として入力すると共に、第1光パルス列発生手段からの光パルス列を信号光として入力するものであって、第1の本発明の光変調器とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、簡便な調整手段によって、振幅変調方式・位相変調方式のいずれかのフォーマットの光信号も発生でき、かつ、その動作が高安定な光変調器及び光信号発生装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
(A)第1の実施形態
以下、本発明の光変調器の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。第1の実施形態では、本発明の全光型光変調器を光スイッチに適用した場合を例示する。
【0038】
(A−1)第1の実施形態の構成
(A−1−1)全体構成
図1は、第1の実施形態の光スイッチの主な構成を示す構成図である。図1において、第1の実施形態の光スイッチ1Aは、全光型光変調器として、第1偏波分離合成モジュール10と、第2偏波分離合成モジュール18と、第1偏波面保存光ファイバ12と、第2偏波面保存光ファイバ16と、1/2波長板14と、第3偏波面保存光ファイバ22と、第4偏波面保存光ファイバ26と、第1偏波面変換部24とを少なくとも備えている。
【0039】
また、図1に示す光スイッチ1Aは、上記構成の他に、第1光カプラ20、光バンドパスフィルタ28及び38、3ポート光サーキュレータ30、信号光入力用光ファイバ32−1及び32−2、変調光信号出力用光ファイバ27、29、37及び39、制御光入力ポート31、を少なくとも備えている。
【0040】
第1偏波分離合成モジュール10は、信号光を入力するための入力用光ファイバ32−2の一端が結合されている第1入出力端10−1と、第1入出力端10−1に対向する側に第1偏波面保存光ファイバ12の一端が結合されている第2入出力端10−2と、変調された信号光(以下、変調光信号と呼ぶ)を出力する第3入出力端10−3とを具えているものである。
【0041】
第2偏波分離合成モジュール18は、第2偏波面保存光ファイバ16の一端を結合する第1入出力端18−1と、第1入出力端18−1に対向する側に第3偏波面保存光ファイバ22の一端を結合する第2入出力端18−2と、第4偏波面保存光ファイバ26の一端を結合する第3入出力端18−3と、第3入出力端18−3に対向する側に偏波クロストーク成分を出力する第4入出力端18−4を具えている。
【0042】
第1及び第2偏波分離合成モジュール10及び18は、例えば既存の薄膜を用いたタイプの偏光ビームスプリッタの中から好適なものを適用することができる。また、第1及び第2偏波分離合成モジュール10及び18は、例えば薄膜を用いたタイプの偏光ビームスプリッタに限定されるものではなく、複屈折結晶を用いたいわゆる偏光プリズムを適用するようにしてもよい。
【0043】
第1偏波面保存光ファイバ12は、第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2に一端が結合されており、他端が1/2波長板14に結合されている光ファイバである。
【0044】
第2偏波面保存光ファイバ16は、1/2波長板に一端が結合されており、他端が第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に結合されている光ファイバである。
【0045】
1/2波長板14は、第1偏波面保存光ファイバ12と第2偏波面保存光ファイバ16と結合するものである。1/2波長板14は、第1偏波面保存光ファイバ12を通じて入力された直線偏光を、任意の偏光方向、又は後述する方法により決定された2方向の偏光方向の直線偏光として、第2偏波面保存光ファイバ16に出力するものである。
【0046】
このような1/2波長板14の機能は、1/2波長板14の光軸方向を、手動又は与えられた制御信号によって自動に回転させる偏波回転装置を備えることで実現することができる。この1/2波長板を用いた偏波回転装置は、既存技術である偏波面回転技術を行う偏波面回転モジュールを広く適用することができる。
【0047】
第3偏波面保存光ファイバ22は、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端に一端が結合され、他端が第1偏波面変換部24(図1では「A」と示されている)に結合されている光ファイバである。また、第3偏波面保存光ファイバ22は、制御光入力ポート31を有する第1光カプラ20を具えるものである。
【0048】
第1光カプラ20も、偏波面保存型の光カプラを適用することが望ましい。また、第1光カプラ20は、制御光入力ポート31から入力された直線偏光である制御光を、第3偏波面保存光ファイバ22、第4偏波面保存光ファイバ26の順に伝播させる。
【0049】
なお、第1光カプラ20は、光分岐比が1:1に設計されたいわゆる3dB光カップラや、それぞれ波長の異なる制御光および信号光を合波・分離するように設計されたWDMカップラを用いるようにしてもよい。
【0050】
第4偏波面保存光ファイバ26は、第1偏波面変換部24に一端が結合され、他端が第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3に結合されている光ファイバである。
【0051】
第1偏波面変換部24は、第3偏波面保存光ファイバ22と第4偏波面保存光ファイバ26と結合されるものであり、図1では「A」と示される位置に設けられるものである。
【0052】
(A−1−2)各構成要件の詳細について
第1〜第4偏波面保存光ファイバ12、16、22及び26や第1光カップラ20として利用して好適な偏波面保存光ファイバとしては、PANDA(Polarization-maintaining AND Absorption-reducing)型光ファイバを適用することができる。このPANDA型光ファイバは、コアの近傍に応力付与部を形成し、コアに強い応力を加えることにより偏波保持性を得ている。
【0053】
図2は、偏波面保存光ファイバに適用するPANDA型光ファイバの光伝播方向に対して垂直に切断した断面の概略的な断面構造図である。
【0054】
図2において、PANDA型光ファイバは、光を導波するコア142と、コア142を取り囲むクラッド140と、コア142を挟む形でクラッド140の屈折率よりも高い屈折率を持つ応力付与部144とを有して形成される。
【0055】
例えば、クラッドはSiO2で形成され、コア142はGeO2がドープされたSiO2で形成され、応力付与部144はB203がドープされたSiO2で形成される。
【0056】
図2に示すような構成を形成することにより、PANDA型光ファイバの光伝播方向に垂直な面内において、Slow軸の方向の光に対する等価屈折率と、Slow軸と直交するfast軸の方向の光に対する等価屈折率とは異なるものとなる。
【0057】
すなわち、コア142の近くに応力付与部144がおかれているために、光の電場ベクトルの振動方向のfast軸の方向に平行な光に対する等価屈折率より、光の電場ベクトルの振動方向のSlow軸の方向に平行な光に対する等価屈折率が高くなる。
【0058】
このような等価屈折率の非対称性があるために、PANDA型光ファイバに入力される光の偏波面は保存されて伝播されるようになる。すなわち、PANDA型光ファイバでは、直線偏波の光の偏波面を、図2に示すSlow軸(又はfast軸)に合わせて入力すると、偏波状態が保たれたまま光がPANDA型光ファイバ中を伝搬し、出射端においても、偏波面がSlow軸(又はfast軸)に一致するので、直線偏波の光成分のみを得ることが可能である。
【0059】
第1の実施形態では、説明便宜のために、図1に示す光スイッチの概略的構成図において、光伝送路である偏波面保存光ファイバを伝播する光の偏波方向を次のように規定しておく。
【0060】
光の電場ベクトルの振動方向が、図2に示すSlow軸方向と平行な偏光をTE(Transverse-Electric Modes)偏波と呼ぶこともあり、またこの方向をTE方向と呼ぶこともある。また、Slow軸と直交した、fast軸方向に平行な偏光をTM(Transverse-Magnetic Modes)偏波と呼び、その方向をTM方向と呼ぶこともある。
【0061】
また、第1の実施形態では、第1偏波分離合成モジュール10等の偏波分離合成モジュールヘ光が入射する場合、入射光の偏波分離合成モジュールの偏波面選択反射面に対する電場ベクトルの振動方向に対応する成分を次のように定義する。
【0062】
すなわち、偏波面選択反射面へ入射する入射光の入射面に平行な方向に電場ベクトルが振動する成分をp成分、入射光の入射面に垂直な方向に電場ベクトルが振動する成分をs成分と呼ぶこととする。
【0063】
例えば、第1偏波分離合成モジュール10へ光が入射する場合、第1偏波分離合成モジュールを構成している偏波分離合成素子の偏波面選択反射面10Rに対する入射面に平行な方向に電場ベクトルが振動する成分はp成分、入射光の入射面に垂直な方向に電場ベクトルが振動する成分はs成分である。第2偏波分離合成モジュール18においても同様である。
【0064】
第1偏波分離合成モジュール10において、第1入出力端10−1から入力されたp偏波成分は、第2入出力端10−2に出力され、第2入出力端10−2から入力されたs偏波成分は、第3入出力端10−3に出力される。また、第1偏波分離合成モジュール10において、第2入出力端10−2から入力されたp偏波成分は、第1入出力端10−1に出力される。
【0065】
次に、第1及び第2偏波分離合成モジュール10及び18の入出力端と、各偏波面保存光ファイバの入出力端との結合について説明する。
【0066】
第1及び第2偏波分離合成モジュール10及び18が備える各入出力端と、第1〜第4偏波面保存光ファイバ12、16、22及び26の各入出力端とは、各偏波分離合成モジュール10及び18のp波ないしはs波の偏光方向と、各偏波面保存光ファイバ12、16、22及び26のSlow軸ないしはfast軸の方向とが合致するように接合されているものとする。
【0067】
以下の説明では、便宜のために、各偏波分離合成モジュール10及び18のp波の偏光方向と、各偏波面保存光ファイバ12、16、22及び26のSlow軸の方向とが合致するように接合されているものとして説明する。勿論、上記の場合に限定されるものではなく、いくつかの接合箇所が、偏波分離合成モジュールのp波の偏光方向と、偏波面保存光ファイバのfast軸の方向とが合致するように接合されていたとしても、本発明の効果を実現できる。
【0068】
次に、第1偏波面変換部24における第3偏波保存光ファイバ22の端部と第4偏波面保存光ファイバ26の端部との接続方法について説明する。
【0069】
図3は、第1偏波面変換部24における接続方法を説明する説明図である。図3(B)は、第1偏波面変換部24における、第3偏波面保存光ファイバ22と第4偏波面保存光ファイバ26との接続断面を示す断面図である。図3(A)は、第3偏波面保存光ファイバ22及び第4偏波面保存光ファイバ26のそれぞれの断面図である。
【0070】
図3に示すように、第1偏波面変換部24において、第3偏波面保存光ファイバ22及び第4偏波面保存光ファイバ26は、互いに対向する端面176及び174のSlow軸同士が90度回転される形で接続されている。言い換えれば、互いのSlow軸とfast軸とが平行になるように接続されている。このような接続は、ファイバアダプタや融着接続などの容易な方法により実現することができる。
【0071】
また、別の接続方法としては、第3偏波面保存光ファイバ22の端面におけるSlow軸と、第4偏波面保存光ファイバ26の端面におけるSlow軸とが一致するように接続してもよいが、この場合、接合部に、例えば1/2波長板等を設置するようにする。
【0072】
次に、1/2波長板14に接続する第1偏波面保存光ファイバ12の端面と第2偏波面保存光ファイバ16の端面との接合について説明する。
【0073】
図4は、位相変調光信号発生時の信号光の偏波状態を説明する説明図である。図4では、1/2波長板14における、第1偏波面保存光ファイバ12の端面と第2偏波面保存光ファイバ16の端面との接続断面も示している。なお、図4では、位相変調光信号発生時の信号光の偏波状態について説明するものであるが、この点については動作の項で詳細に説明する。
【0074】
図4に示すように、1/2波長板14に接続する、第1偏波面保存光ファイバ12のSlow軸方向と、第2偏波面保存光ファイバ16のSlow軸方向とが一致するように調整されているものとする。なお、1/2波長板14の光学軸の方向については、後述する動作の項で説明するように調整可能なものである。
【0075】
なお、上述したように、偏波分離合成モジュールと各偏波面保存光ファイバとの接合箇所において、互いのp偏波方向とfast軸を合致させた部分が含まれるような状況の場合には、第1偏波面保存光ファイバ12と第2偏波面保存光ファイバ16との対向するファイバ端面をSlow軸とfast軸が一致するように調整するようにしてもよい。この場合でも、本発明の効果を実現できる。
【0076】
また、第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2から1/2波長板14に至る経路の長さ、すなわち第1偏波面保存光ファイバ12の長さをl1(経路L1ということもある。)とする。1/2波長板14から第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に至る経路の長さ、すなわち第2偏波面保存光ファイバ16の長さをl2(経路L2ということもある。)とする。第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2から第1偏波面変換部24に至る経路、すなわち第3偏波面保存光ファイバ22の長さをl3(経路L3ということもある。)とする。第1偏波面変換部24から第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3に至る経路、すなわち第4偏波面保存光ファイバ26の長さをl4(経路L4ということもある。)とする。
【0077】
第3偏波面保存光ファイバ22もしくは第4偏波面保存光ファイバ26、またはその両方において、波長λpの制御光による光カー効果により、波長λsの被制御光である信号光に対して相互位相変調効果による位相シフトが生じるものとする。
【0078】
なお、光カー効果の発現による位相シフトの発生に特段の寄与をしない、第1偏波面保存光ファイバ12、第2偏波面保存光ファイバ16、第3偏波面保存光ファイバ22もしくは第4偏波面保存光ファイバ26のいずれか一方は、光ファイバではなく、空間光学系とすることでも本発明の効果は得られる。
【0079】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の光スイッチ1Aにおける処理を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0080】
図1において、波長λsの被制御光である信号光が、入力用光ファイバ32−2に入力され、第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1に到達する。
【0081】
ここで、信号光は、ピーク強度の揃った光パルスが等時間間隔に並んだ、いわゆる光パルス列である。また、信号光のパルス時間間隔は、所望とする変調光信号のビットレートの逆数と一致する。例えば、10ギガビット毎秒の変調光信号を所望とする場合、光パルス列である信号光のパルス時間間隔は100ピコ秒である。
【0082】
第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1に到達する信号光は、第1偏波分離合成モジュール10において、p偏波成分に平行な直線偏光となるように偏波方向が調整される。その結果、信号光は、第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2から直線偏光として出力される。
【0083】
その後、信号光は、第1偏波面保存光ファイバ12中を伝播して1/2波長板14に到達する。このとき、信号光は、第1偏波面保存光ファイバのSlow軸と平行は直線偏光として伝播する。
【0084】
ここで、上述したように、1/2波長板14においては、第1偏波面保存光ファイバ12と第2偏波面保存光ファイバ16とのそれぞれ対向するファイバ端面は、互いのSlow軸方向が一致するように調整されている。
【0085】
第1の実施形態では、1/2波長板14の光軸方向を回転することで、最終的に所望とされる変調光信号の変調フォーマット(位相変調方式及び振幅変調方式)の切り替えが可能となる。
【0086】
以下では、その動作について説明する。
【0087】
(A−2−1)ケース1:位相変調光の出力
まず、最終的に所望とされる変調光信号のデータフォーマットが、位相変調信号である場合を説明する。
【0088】
この場合、1/2波長板14のいずれか一方の光学軸が、第1偏波面保存光ファイバ12と第2偏波面保存光ファイバ16のSlow軸と一致するように、1/2波長板14の光学軸を調整する。
【0089】
このとき、1/2波長板14を出力して第2偏波面保存光ファイバ16に結合される信号光の偏光方向は、第2偏波面保存光ファイバ16のSlow軸と偏波方向が一致した直線偏光となる(図4(A))。
【0090】
その後、信号光は、第2偏波面保存光ファイバ16中を、そのSlow軸と平行な直線偏光として伝播し、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に入力される。
【0091】
第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に入力された信号光は、p偏波成分しか持たないので、信号光のすべてが、第2入出力端18−2に出力され、第3偏波面保存光ファイバ22に与えられる。
【0092】
その後、信号光は、第1光カプラ20を経由し、第3偏波面保存光ファイバ22のSlow軸と平行な直線偏光として第3偏波面保存光ファイバ22を伝播し、次に、第1偏波面変換部24(「A」)を経由して、第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸と平行な直線偏光として第4偏波面保存光ファイバ26を伝播する。
【0093】
そして、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3に入力された信号光は、その偏光方向がs偏波方向であるため、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1から出力される。
【0094】
第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端から出力された信号光は、第1偏波面保存光ファイバ16のfast軸と一致する偏光方向の直線偏波として第2偏波面保存光ファイバ16を通過し、1/2波長板14を経由する。
【0095】
そして、信号光は、第1偏波面保存光ファイバ12のfast軸と平行な直線偏光として第1偏波面保存光ファイバ12を伝播し、第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2に到達する。この信号光は、s偏波方向であるため、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3から出力される。
【0096】
ここで、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3から出力される信号光は、制御光によって位相変調された位相変調光信号となる。なお、位相変調信号となる理由については、後で詳細に説明する。
【0097】
この位相変調光信号は、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3に結合された出力用光ファイバ27を経由し、光バンドパスフィルタ28に入力される。
【0098】
光バンドパスフィルタ28は、波長λsの信号光波長成分のみを選択的に通過させ、波長λpの制御光成分を遮断するものである。従って、位相変調光信号が光バンドパスフィルタ28を通過すると、波長λpの光成分が遮断され、波長λsの光成分が出力用光ファイバ29に出力される。これにより、最終的に所望とされる位相変調光信号が出力される。
【0099】
一方、振幅変調方式によって符号化された波長λpの制御光は、制御光入力ポート31から入力し、第1光カプラ20を経由して、第3偏波面保存光ファイバ22に入力される。
【0100】
ここで、制御光は、第3偏波面保存光ファイバ22のSlow軸に平行な直線偏波光になるように、その偏波面が調整されて入力される。また、制御光の有する一つの光パルス信号が、第3偏波面保存光ファイバ22に入力されるときに、信号光の有する一つの光パルスと時間的に一致するように、制御光パルス信号又は信号光の遅延時間が調整されて入力される。あるいはまた、光カー効果を生じさせる第3偏波面保存光ファイバ22と第4偏波面保存光ファイバ26との両方又はいずれか一方において、群速度分散による制御光と信号光間のウオークオフの効果が存在するときには、光カー効果による相互位相変調効果を最大化するために、制御光の光パルス位置と信号光の光パルス位置に若干のオフセットを与えて入力するようにしてもよい。
【0101】
ここで、便宜のために、所望とする位相変調光信号については、信号「0」が光位相「0」、信号「1」が光位相「π」に対応する位相変調信号として以下に動作を説明する。
【0102】
また同様に説明便宜のために、振幅変調された制御光が信号「1」に対応するピーク強度が1に対して、信号「0」に対応するピーク強度が限りなく0に近い、消光比が無限大の振幅変調信号であるとする。このような振幅変調信号は、on−off−keying信号と呼ばれることもある。
【0103】
制御信号が「0」である場合、信号光は何ら相互位相変調による位相シフトを受けない。この状態を、光位相0の位相変調信号であるとする。
【0104】
ここで、光信号の偏光方向及び光位相状態を便宜的に表すために、図4に示すようなベクトル表記を用いることとする。
【0105】
すなわち、信号光が、第2偏波分離合成モジュール18、第3偏波面保存光ファイバ22、第4偏波面保存光ファイバ26で構成される閉ループを通過し、第2偏波面保存光ファイバ16を経過し、1/2波長板14に入力される直前で、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に到達したときの信号光(=位相変調光)の偏光方向、光位相を考える。
【0106】
まず、制御信号が「0」である場合、位相変調光の偏光方向はfast軸に平行で、光位相が「0」であるので、この光信号の偏光・光位相状態を、図4(B)のように、右向きの矢印で示すものとする。
【0107】
次に、制御信号が「1」である場合、信号光は制御光との相互位相変調による位相シフトが生じる。第3偏波面保存光ファイバ22及び第4偏波面保存光ファイバ26で生じる位相シフトの総量がπとなるように、制御光のピーク強度が調整される。
【0108】
信号光が、入力用光ファイバ32−2に入力されて、第2偏波分離合成モジュール18、第3偏波面保存光ファイバ22、第4偏波面保存光ファイバ26で構成される閉ループを通過し、第2偏波面保存光ファイバ16を経過し、1/2波長板14に入力される直前での、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に到達するまでの光経路、および各経路を通過する偏光状態は、制御信号の「1」、「0」にかかわらず不変である。
【0109】
従って、信号光が第2偏波面保存光ファイバ16の左端に到達するまでに、その光位相を変化させる要素は、制御光による相互位相変調効果による位相シフト分のみと成る。
【0110】
そうすると、制御信号が「1」である場合、位相変調光の偏光方向はfast軸に平行であり、位相変調光の光位相がπであるので、この光信号の偏光・光位相状態は、図4(C)に示すように、左向きの矢印で示すものとする。
【0111】
さらにまた、光信号が第2偏波面保存光ファイバ16の左端から出力され、1/2波長板14、第1偏波面保存ファイバ12などを経過し出力用光ファイバ29から出力されるに至る光経路、および各経路を通過する偏光状態は、やはり制御信号の「1」、「0」にかかわらず不変である。従って、この経路を通過するにあたって、制御信号の「1」、「0」による付加的な光位相シフトは生じない。
【0112】
すなわち、以上の動作により、図1に示すように、出力用光ファイバ29から、制御信号の「1」、「0」に対応して、光位相が「π」、「0」に符号化された、位相変調光信号が出力される。
【0113】
(A−2−2)ケース2:振幅変調光の出力
次に、最終的に所望とされる変調光信号のデータフォーマットが、振幅変調信号である場合を説明する。
【0114】
図5は、振幅変調光信号発生時の信号光の偏波状態を説明する説明図である。
【0115】
図5に示すように、この場合、1/2波長板14のいずれか一方の光学軸が、第1偏波面保存光ファイバ12のSlow軸から22.5度傾けた位置になるように調整する。
【0116】
このとき、1/2波長板14を出力して第2偏波面保存光ファイバ16に結合される信号光の偏光方向は、第2偏波面保存光ファイバ16のSlow軸と45度傾いた直線偏光となる(図5(A)参照)。
【0117】
その後、信号光は、第2偏波面保存光ファイバ16中を、そのSlow軸と平行な直線偏光成分と、そのfast軸方向に平行な直線偏光成分とに分かれて伝播し、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1に入力される。
【0118】
ここで、上記で述べた、Slow軸と平行な信号光の直線偏光成分をS1成分と定義し、そのfast軸方向に平行な信号光の直線偏光成分をS2成分と定義する。
【0119】
S1成分とS2成分の強度比は、第2偏波面保存光ファイバ16に結合される直線偏光たる信号光の偏光方向が、第2偏波面保存光ファイバ16のSlow軸と45度傾いているため、1:1となる。
【0120】
ケース1の場合と同様、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に入力されたときのS1成分、S2成分の偏波方向、光位相をベクトルで表現すると図5(A)のようになる。
【0121】
すなわち、S1成分はSlow軸に平行な上向きの矢印、S2成分はfast軸に平行な右向きの矢印として表現される。
【0122】
その後、S1成分は、偏光方向がp偏波方向であるため、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2から出力され、第3偏波面保存光ファイバ22のSlow軸と平行な直線偏光として第3偏波面保存光ファイバ22を伝播する。
【0123】
そして、S1成分は、第1偏波面変換部24(「A」)を経由して、第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸と平行な直線偏光として第4偏波面保存光ファイバ26を伝播し、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3に入力する。
【0124】
このS1成分の偏光方向はs偏波方向であるため、S1成分は、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1から出力され、第2偏波面保存光ファイバ16のfast軸と一致する偏光方向の直線偏波として第2偏波面保存光ファイバ16を通過し、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に至る。
【0125】
一方、S2成分は、偏光方向がs偏波方向であるため、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3から出力され、第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸と平行な直線偏光として第4偏波面保存光ファイバ26を伝播する。
【0126】
そして、S2成分は、第1偏波面変換部24(「A」)を経由して、第3偏波面保存光ファイバ22のSlow軸と平行な直線偏光として第3偏波面保存光ファイバ22を伝播し、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2に入力する。
【0127】
このS2成分の偏光方向はp偏波方向であるため、S2成分は、第2偏波分離合成モジュール18の第1入出力端18−1から出力され、第2偏波面保存光ファイバ16のSlow軸と一致する偏光方向の直線偏波として第2偏波面保存光ファイバ16を通過し、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に至る。
【0128】
ここで、ケース1の場合と同一の制御光が第1光カップラ20を介して入力された場合を考える。この同一とは、ケース1の場合と同じピーク強度、同じ消光比で、パルス信号の時間位置も全く同一で、ケース1の場合に比べて格段の異なる遅延時間も与えない、という意味である。
【0129】
制御光が「0」信号である場合、S1成分、S2成分ともに、制御光による相互位相変調による位相シフトは生じない。このとき、S1成分、S2成分が、第2偏波面保存光ファイバ16の左端より入力され、第2偏波分離合成モジュール18、第3偏波面保存光ファイバ22、第4偏波面保存光ファイバ26で構成される閉ループを通過し、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に再度到達するまでの光路長を考える。光路長とは、光ファイバなどの光学媒体の物理長に屈折率を掛けた値である。
【0130】
このとき、S1成分の経過する全光路長は、
nSl2+nSl3+nfl4+nfl2 …(1)
で与えられる。
【0131】
S2成分の経過する全光路長は、
nfl2+nfl4+nSl3+nSl2 …(2)
で与えられる。ここで、偏波面保存ファイバのSlow軸の屈折率をns、fast軸の屈折率をnfとする。
【0132】
式(1),(2)から、S1成分、S2成分が、第2偏波面保存光ファイバ16の左端より入力され、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に再度到達するまでの光路長は、全く同じであることがわかる。
【0133】
すなわち、制御光が“0”信号である場合、S1成分、S2成分の間には、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に再度到達するまでの間に相対的な光位相の差は生じない。従って、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に再度到達したときの、S1成分、S2成分のベクトル表現は、そのベクトル表現は、図5(A)の場合と同様に、上向きの矢印、右向きの矢印として表現される(図5(B))。
【0134】
ただし、S1成分の偏光方向はfast軸平行方向、S2成分の偏光方向はSlow軸平行となるため、図5(A)に示す、第2偏波面保存光ファイバ16の左端入力時の状態に比較して、互いに入れ替えた状態となる。
【0135】
その後、S1、S2成分が、1/2波長板14を経由して、第1偏波面保存光ファイバ12の右端に到達するとき、S1成分とS2成分が再合渡して得られる信号光は、第1偏波面保存光ファイバ12のSlow軸に平行な直線偏波となる(図5(B))。
【0136】
信号光は、その後再び第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2に入力され、その偏光方向がp偏波方向であるため、第1入出力端10−1から出力される。すなわち、第3入出力端10−3には出力されない。
【0137】
一方、制御光が「1」信号である場合、ケース1の場合の動作と同じく、制御光と同一方向に伝播するS1成分に対して、制御光による相互位相変調により、πの位相シフトが生じる。
【0138】
一方、制御光と逆行して伝播するS2成分に対しては、制御光による相互位相変調による位相シフトは無視できるほど小さいとする。そこで、第1の実施形態では、この場合の制御光による相互位相変調による位相シフトが無視できるほど小さいものであることを条件として説明する。
【0139】
このとき、S1成分に対して、S2成分に比してπの光位相シフトが生じるため、第2偏波面保存光ファイバ16の左端に再度到達したときの、S1成分、S2成分のベクトル表現は、図5(C)のように表される。
【0140】
すなわち、S2成分に対しては、図5(B)の場合と同様に、上向きの矢印と表されるのに対し、S1成分に対しては、図5(B)の場合と反転した、左向きの矢印として表現される(図5(C))。
【0141】
その後、S1、S2成分が、1/2波長板14を経由して、第1偏波面保存光ファイバ12の右端に到達するとき、S1成分とS2成分が再合渡して得られる信号光は、この場合、第1偏波面保存光ファイバ12のfast軸に平行な直線偏波となる(図5(C))。
【0142】
その後、信号光は、再び第1偏波分離合成モジュール10の第2入出力端10−2に入力され、その偏光方向がs偏波方向であるため、第3入出力端10−3から出力される。その後、ケース1の場合と同様に、出力用ファイバ27、光バンドパスフィルタ28を経由して、出力用光ファイバ29から出力される。
【0143】
以上のように、この場合、信号光は、制御光が「1」信号である場合のみ、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3から出力され、結果、出力用ファイバ29から出力される。
【0144】
すなわち、出力用光ファイバ29から、制御信号の「1」、「0」に対応して、ピーク強度が変調された、振幅変調光信号が出力される。この例の場合では、制御信号が「0」の場合、信号光はまったく出力されないので、いわゆるon−off−keying信号が出力される。
【0145】
以上のように、ケース1の位相変調フォーマット、ケース2の振幅変調フォーマットで発生する変調光信号のパルス波形について考察する。
【0146】
いずれのフォーマットにおいても、信号光が通過する光経路は同一である。従って、挿入損失は同一であり、また、群速度分散などの波形歪を生じさせる因子も同一である。従って、波形歪は同一である。
【0147】
また、位相変調フォーマットにおいては、信号光は何らの干渉効果も生じずに装置への入出力が行われる。一方、振幅変調フォーマットにおいては、信号光はループ内をS1成分、S2成分に分かれて伝播するが、最終的に、第1偏波面保存光ファイバ12の右端に入力されるときに再合波されるときに、それらは同相にて合波されるため、エネルギー損失が生じない。すなわち、干渉効果は存在するが、そこでのエネルギー損失はない。
【0148】
ゆえに、いずれのフォーマットにおいても、変調光信号のピーク強度(振幅変調の場合、「1」信号のピーク強度)は同一である。
【0149】
以上述べた様に、第1の実施形態においては、1/2波長板14の光軸方向の回転調整という簡便な手段によって、位相変調・振幅変調いずれのフォーマットの光信号も発生できる全光型光変調器を提供することができる。変調フォーマットの切り替えに応じて、制御光のピーク強度や光パルスの時間位置の変更なども不要である。また、発生する変調光信号のピーク強度(振幅変調信号の場合、「1」信号のピーク強度)にも変化がない。
【0150】
また、装置を構成する偏波面保存ファイバの複屈折は、式(1)、(2)に示されるように、自動的にキャンセルされる構造を有している。このことは、特に、S1成分とS2成分がともに存在し、それらの干渉を利用する、振幅変調フォーマットの場合において効果的である。すなわち、非特許文献1に示されるように、複屈折をキャンセルするための偏波面保存ファイバ長の高精度な調整が不要である。
【0151】
さらにまた、第3偏波面保存光ファイバ22及び第4偏波面保存光ファイバ26で生じる偏波クロクトーク成分は、全て第2偏波分離合成モジュール18の光ファイバ等への結合を必要としない第4入出力端18−4に出力される。これは、特許文献1の場合と同様に、位相変調フォーマットの場合、偏波クロクトーク成分は、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3にp偏波成分として入力され、また振幅変調フォーマットの場合、S1成分に対して生じる偏波クロクトーク成分は、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3にp偏波成分として入力され、S2成分に対して生じる偏波クロクトーク成分は、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2にs偏波成分として入力されるためである。従って、第1偏波分離合成モジュール10の第3入出力端10−3に、第3偏波面保存光ファイバ22及び第4偏波面保存光ファイバ26で生じる偏波クロクトーク成分が、本来所望とする変調光信号に混在して出力されることはない。
【0152】
従って、特許文献1と同様に、制御光のピーク強度を低減するために、長尺な第3偏波面保存光ファイバ22及び第4偏波面保存光ファイバ26を用いても、それらのファイバで生じる偏波クロストークによる動作不安定性の発現を抑制できる。
【0153】
以上のことから、第1の実施形態においては、偏波面保存ファイバの使用による複屈折の影響や、また、偏波クロストークの発生による、光変調動作の動作不安定性を抑制できる。すなわち、信号光波長や環境温度が変化しても特性が変化せず、また、高安定な動作特性を担保した、全光型光変調器を提供することができる。
【0154】
なお、以上の説明においては、説明便宜上、光位相(0:π)で変調された位相変調信号発生と、ピーク強度(0:1)で変調された振幅変調信号(on−off−keying信号)発生を想定して説明したが、第1の実施形態で実現できる光変調器の信号フォーマットは上記に限定されない。例えば、制御光をピーク強度(0:1)のon−off−keying信号とし、相互位相変調効果による位相シフトが0.5πとなるように制御光ピークパワーを調整すれば、光位相(0:π)で変調された位相変調信号発生が可能となる。この際、制御光をピーク強度(0.5:1)の振幅変調信号としても良い。また、制御光をピーク強度(0.5:1)の振幅変調信号とし、ピーク強度(0.5:1)の振幅変調信号を発生することも可能である。その他、様々な光位相関係、ピーク強度比を待った位相変調信号・振幅変調信号を、適宜、制御光のピーク強度などを調整して発生できる。
【0155】
また、変調光信号として振幅変調信号を発生する場合、出力用光ファイバ29から出力される所望の振幅変調光信号とは論理反転した振幅変調光信号が、入力用光ファイバ32−2から、信号光と逆行して伝播する形で同時に出力される。この論理反転信号を、所望とする正論理振幅変調光信号の信号品質モニタ等として使用することもできる。この場合において、入力用光ファイバ32−2の信号光入力端に、3ポート光サーキュレータ30を接続する。
【0156】
3ポート光サーキュレータ30は、それぞれの入出力ポートに接続された光ファイバ32−1、32−2、37を有する。光ファイバ32−1から入力された信号光は、光ファイバ32−2から出力される。光ファイバ32−2の他端は、第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1に接続される。第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1に入力される信号光は、p偏波成分に平行な直線偏光となるように、その偏波方向が調整されているものとする。論理反転した振幅変調光信号は、第1偏波分離合成モジュール10の第1入出力端10−1から出力され、光ファイバ32−2に入力され、光ファイバ37から出力される。所望とする正論理振幅変調光信号の場合と同様に、制御光除去用の光バンドパスフィルタ38を透過する信号光波長成分のみを、論理反転した振幅変調光信号として、出力用光ファイバ39を介して出力させる。
【0157】
(A−3)第1の実施形態の動作
以上のように、第1の実施形態によれば、以下の効果を奏し得る。
【0158】
すなわち、第1の実施形態によれば、1台の装置を用いて、1/2波長板の光軸方向の回転という簡便な手段によって、振幅変調方式・位相変調方式のいずれのフォーマットの光信号も発生できる全光型光強度・位相変調器を提供できる。
【0159】
また、第1の実施形態によれば、変調フォーマットの変化に伴う変調光信号のパルス波形やピーク強度など、光信号品質の格段の変化を伴わない。
【0160】
さらに、第1の実施形態によれば、変調フォーマットの変化に伴う制御光のピーク強度・遅延時間などの調整も不要である。
【0161】
さらにまた、第1の実施形態によれば、信号光波長や環境温度が変化しても特性が変化しない、高安定な動作特性を担保できる。
【0162】
(B)第2の実施形態
次に、本発明の光変調器の第2の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0163】
第1の実施形態では、全光型光変調器を振幅変調フォーマットで動作させる際の説明において、制御光と逆行して伝播するS2成分に対する相互位相変調効果による位相シフトは無視するものとして処理する場合を例示した。
【0164】
このような処理は、制御光において、そのパルス幅をパルス周期で除した値で定義されるデューティ比が十分に小さい場合に有効である。
【0165】
しかしながら、デューティ比が大きくなってくると、S2成分に対する相互位相変調効果による位相シフトは顕著となり無視できなくなる。
【0166】
そこで、第2の実施形態では、S2成分に対する相互位相変調効果による位相シフトを考慮した全光型光変調器の実施形態を説明する。
【0167】
(B−1)第2の実施形態の構成
図6は、第2の実施形態の光スイッチ1Bの構成を示す構成図である。
【0168】
第2の実施形態の光スイッチ1Bの構成が、第1の実施形態の実施形態の構成と異なる点は、第2偏波分離合成モジュール18の第2入出力端18−2から、第3偏波面保存光ファイバ22、第1偏波面変換部24、第4偏波面保存光ファイバ26、第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3までの光経路上のいずれかの位置に、光位相バイアス回路40を備える点である。
【0169】
また、それ以外の構成は、第1の実施形態で説明した構成と同様であるので、これら構成の詳細な説明は省略する。
【0170】
光位相バイアス回路40は、第1偏波面変換部24と第2偏波分離合成モジュール18の第3入出力端18−3との間の第4偏波面保存光ファイバ26上に設けられるものである。なお、光位相バイアス回路40の配置位置は、図6に示す位置に限定されるものではなく、閉ループの光経路上のいずれかの位置に配置するようにしてもよい。
【0171】
図7は、光位相バイアス回路40の構成を示す構成図である。図7において、光位相バイアス回路40は、直線偏波光の偏波面を+45度回転させるファラデー回転子278と、直線偏波光の偏波面を−45度回転させるファラデー回転子280と、光軸X及び光軸Y軸を有する複屈折媒体282とを有して構成されるものである。
【0172】
なお、複屈折媒体282としては、以下で説明する機能を実現することができれば、種々のものを適用することができ、例えば、偏波面保存ファイバを用いるようにしてもよい、また、1軸性又は2軸性の複屈折を有する光学結晶を用いてもよい。いずれの場合においても、当該複屈折媒体282の、長さを調整することで、位相シフト補償量を調整できる。あるいはまた、ほぼ適当な長さに調整された複屈折媒体を用意して、温度変化による複屈折変化を用いて微調整しても良い。
【0173】
あるいはまた、複屈折媒体282として、複屈折結晶を重ね合わせた、いわゆる、バビネソレイユ補償板を用いることもできる。この場合、位相シフト補償量を可変にできるため、制御光のデューティ比の変化に適宜対応できる適応型光位相バイアス回路を構成できる。
【0174】
(B−2)第2の実施形態の動作
第2の実施形態の全光型光変調器は、逆行制御光の相互位相変調効果による位相シフトを考慮して光変調動作を行うものである。
【0175】
下記の文献Aには、光カップラで閉ループで構成した全光型光スイッチ等において、逆行制御光からの相互位相変調効果による位相シフトが全光型光スイッチのスイッチング動作に影響を与えることが議論されている。
【0176】
(文献A)S.Arahira,H.Murai,and Y.Ogawa,“Modified NOLM for Stable and Improved 2R Operation at Ultra-High Bit Rates”,IEICE Trans.Commun,Vol.E89-B,No.12,pp.3296-3305,2006
第1の実施形態の全光型光変調器も、文献Aに記載の光スイッチと同様に、閉ループ構造を有するものであり、逆行制御光からの相互位相変調効果による位相シフトがもたらす、光変調効果への影響が存在する。
【0177】
文献Aには、逆行制御光からの相互位相変調効果による位相シフトは、制御光がループを1周伝播するのに要する伝播時間が、制御光のパルス周期(ビット周期、例えば10ギガビット毎秒の場合、100ps)に比べて十分大きい場合、時間依存性を持たない、定常的な位相シフトとなることが記載されている。
【0178】
そうすると、このような条件は非線形効果の発現のために、ある程度長い相互作用長を有する多くの全光型光スイッチで成り立ち、第1の実施形態の全光型光変調器1Aにおいても、第3及び第4偏波面保存ファイバ22及び26の長さ(l3、l4)が極端に短くない場合に成立する。すなわち、上記仮定は、現実的な装置構成を有する多くの全光型光変調器において成立する。
【0179】
第1の実施形態のS2成分の信号光に対して生じる上記のような定常的な位相シフトは、文献Aの記載のように、振幅変調フォーマットにおける信号消光比の劣化と、変調信号波形の歪みを生じさせる。
【0180】
従って、第2の実施形態は、これを除去するために、第2偏波分離合成モジュール18、第3偏波面保存光ファイバ22、第4偏波面保存光ファイバ26で構成される閉ループのいずれかの箇所に、光位相バイアス回路40を挿入することで、上記の逆行制御光からの相互位相変調効果による位相シフトをキャンセルしようとするものである。
【0181】
なお、S2成分が存在しない位相変調フォーマットにおいては、このような逆行制御光からの相互位相変調効果による位相シフトは存在しないので、位相変調フォーマットの場合の動作説明は省略する。
【0182】
以下、図6及び7を参照しながら、第2の実施形態の全光型光変調器の動作について説明する。
【0183】
図7において、まず、信号光のS1成分が、第4偏波面保存光ファイバ26を伝播し、光位相バイアス回路40に結合された後、再び第4偏波面保存光ファイバ26に結合されるときのS1成分の偏波状態を説明する。
【0184】
S1成分は、第1の実施形態で説明したとおり、図7の右側から第4偏波面保存光ファイバ26から、そのfast軸に平行な直線偏波として出力され、光位相バイアス回路40に結合される。
【0185】
光位相バイアス回路40において、S1成分は、まずファラデー回転子280を経由して、偏波方向が−45度回転する。ここで、複屈折媒体282は、偏波回転したS1成分の偏波方向と、複屈折媒体282の光軸(X軸、Y軸)のうち一方の光軸(図7ではY軸)とが一致するように配置される。
【0186】
S1成分は、複屈折媒体282の光軸(Y軸)と平行な直線偏波として複屈折媒体282を通過した後、ファラデー回転子278に入力する。そして、ファラデー回転子278において、S1成分は+45度回転される。
【0187】
その結果、S1成分は、その偏波方向が図7の左側の第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸に平行な直線偏波として第4偏波面保存光ファイバ26に到達し、再び第4偏波面保存光ファイバ26を伝播していく。
【0188】
一方、S2成分は、第1の実施形態で説明したように、図7の左側の第4偏波面保存光ファイバ26から、第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸に平行な直線偏波として出力され、光位相バイアス回路40に到達される。
【0189】
光位相バイアス回路40において、S2成分は、まずファラデー回転子278を通過して偏波方向が+45度回転する。このとき、偏波回転されたS2成分の偏波方向は、複屈折媒体282のX軸方向の光軸方向に一致する。
【0190】
従って、S2成分は、複屈折媒体282のX軸と平行な直線偏波として複屈折媒体282を通過して、ファラデー回転子280に入力される。そして、ファラデー回転子280において、S2成分は−45度回転される。
【0191】
その結果、S2成分は、その偏波方向が図7の右側の第4偏波面保存光ファイバ26のfast軸に平行な直線偏波として、図7右側の第4偏波面保存光ファイバ26に到達し、再び第4偏波面保存光ファイバ26を伝播していく。
【0192】
すなわち、S1成分、S2成分は、光位相バイアス回路40の挿入にもかかわらず、当該箇所以外は、第1の実施形態と同じ偏波状態で、各光経路を通過していく。すなわち、第1の実施形態の説明で述べた基本的な光変調動作及び発明の効果は、第2の実施形態でも保たれる。
【0193】
一方、第2の実施形態においては、S1成分、S2成分は、光位相バイアス回路40内に配置された複屈折媒体282を、互いに直交する光軸(X軸、Y軸)に平行な直線偏光の状態で通過する。そのため、この両成分間に、複屈折媒体282の有する複屈折に基づく光位相差が生じる。
【0194】
この光位相差を、S2成分に対して生じる逆行制御光との相互位相変調効果による位相シフトと正負反転した値に設定することで、S2成分に対して生じる逆行制御光との相互位相変調効果による位相シフトをキャンセルすることができる。
【0195】
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態で説明した効果に加えて、次に示す効果を期待できる。
【0196】
すなわち、第2の実施形態によれば、制御光として高デューティ比の光パルス信号を用いても、消光比の劣化や波形歪のない、良好な振幅変調光信号の発生が可能となる。このことは、制御光として、連続する「1」信号の間で光強度の変化がない、いわゆるノンリターン・トウ・ゼロ信号を用いることができることを意味する。この場合、信号光として、光パルス列の代わりに連続光を用いれば、同じく、ノンリターン・トウ・ゼロ方式の振幅変調光信号・位相変調光信号の発生が可能となる。
【0197】
(C)第3の実施形態
次に、本発明の光信号発生装置の第3の実施形態を図面を参照して説明する。
【0198】
第3の実施形態は、第1の実施形態又は第2の実施形態で説明した全光型光変調器を構成に含む光信号発生装置の実施形態を説明する。
【0199】
(C−1)第3の実施形態の構成
図8は、第3の実施形態の光信号発生装置2Aの構成を示す構成図である。
【0200】
図8において、第3の実施形態の光信号発生装置2Aは、第2光カプラ60と、第3光カプラ62と、第4光カプラ64と、第5光カプラ66と、クロック抽出回路70と、光パルス光源80と、光パルス光源82と、光PLL(Phase Locked Loop)回路90と、光データ信号識別回路100と、全光型光変調器50とを少なくとも有して構成される。
【0201】
光信号発生装置2Aは、符号化フォーマットが位相変調方式又は振幅変調方式のいずれの光データ信号を外部から入力し、位相変調方式又は振幅変調方式のいずれの符号化フォーマットの変調光信号を適宜選択して発生することができるものである。
【0202】
全光型光変調器50は、第1の実施形態又は第2の実施形態で説明した全光型光変調器を適用することができる。全光型光変調器50は、光パルス光源82から信号光入力用ファイバ32−1を介して信号光(波長λs)を取り込むと共に、光カプラ64から制御光入力ポート31を介して制御光(波長λp)を取り込み、最終的に所望とする変調光信号を出力用ファイバ29から出力するものである。
【0203】
なお、全光型光変調器50の詳細な内部構成は、第1及び第2の実施形態で説明したので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0204】
第2〜第5光カプラ60、62、64及び66は、少なくとも3個の光信号の入出力ポートを有する光カプラである。また、第2〜第5光カプラ60、62、64及び66は、1個の入力ポートから入力された光信号を、適宜設計された出力分岐比で2個の出力ポートから出力するものであったり、又は2個の入力ポートから入力された各光信号を、適宜設計された出力合成比で合波し、その合波信号を1個の出力ポートから出力するものを適用することができる。
【0205】
第2光カップラ60は、光データ信号を入力するポート60−1と、第2光カップラのポート62−1に出力するポート60−2と、クロック抽出回路70に出力するポート60−3とを有するものである。
【0206】
第3光カップラ62は、光カップラ60のポート60−2から出力された光信号を入力するポート62−1と、第5光カップラ66のポート66−1に出力するポート62−2と、光PLL回路90に出力するポート62−3とを有するものである。
【0207】
第5光カップラ66は、第3光カップラのポート62−2から出力された光信号を入力するポート66−1と、光データ信号識別回路100に出力するポート66−2と、第4光カップラ64のポート64−2に出力するポート66−3とを有するものである。
【0208】
第4光カップラ64は、第5光カップラ66のポート66−3から出力された光信号を入力するポート64−2と、光パルス光源80からの出力を入力するポート64−3と、全光型光変調器50に制御光を出力するポート64−1とを有するものである。
【0209】
クロック抽出回路70は、光カップラ60のポート60−3から出力された光データ信号を入力し、その入力した光データ信号に基づいて、光データ信号のビットレートに相当する周波数の電気クロックを抽出するものである。なお、入力する光データ信号は、振幅変調又は位相変調された波長λpの光データ信号である。
【0210】
ここで、ビットレートに相当する周波数の電気クロック信号とは、例えば装置外部から入力される光データ信号のビットレートが10ギガビット毎秒であるとき、周波数が10GHzで連続的な繰り返し波形を有するものであって、この光データ信号とタイミング同期された正弦波状又はパルス状の電気変調信号をいう。
【0211】
また、クロック抽出回路70は、抽出した電気クロック信号を光パルス光源80及び82に出力するものである。
【0212】
光パルス光源82は、クロック抽出回路70から出力された電気クロック信号を入力し、この電気クロック信号に基づいて、光データ信号とタイミング同期した波長λsの連続的な光クロックパルス列を発生するものである。また、光パルス光源82は、発生した光クロックパルス列を信号光として全光型光変調器50に与えるものである。
【0213】
ここで、光パルス光源82としては、例えば、既存のモード同期半導体レーザやモード同期ファイバレーザなどを適用することができる。また、光パルス光源82として、波長λsの連続光源と、LiNbO3光変調器や半導体電界吸収型光変調器などの光強度変調器とを組み合わせた光源を適用することができる。
【0214】
光PLL回路90は、第3光カプラ62のポート62−3から出力された光データ信号を入力し、その光データ信号の有する光キャリア成分が光位相検波され、その結果、光データの光キャリア成分と位相同期させた波長λpの連続光を光パルス光源80に与えるものである。
【0215】
また、光PLL回路90の構成及び動作原理としては、従来研究開発されているコヒーレント光通信システムの受信端において用いられるヘテロダイン検波などの技術を適用することができる。
【0216】
光パルス光源80は、クロック抽出回路70から電気クロック信号を入力すると共に、光PLL回路90から波長λpの連続光を入力する。また、光パルス光源80は、電気クロック信号を用いて光データ信号とタイミング同期させ、かつ、波長λpの連続光と光位相同期させた波長λpの連続的な光クロックパルス列を発生するものである。さらに、光パルス光源80は、発生させた波長λpの光パルス列を、第4光カップラ64のポート64−3に与えるものである。
【0217】
ここで、光パルス光源80としては、先に述べたLiNbO3光変調器や半導体電界吸収型光変調器などの光強度変調器に、光PLL回路90からの連続光を入力して動作させた光源を適用することができる。また、光パルス光源80として、文献Bに開示されるような、外部からの連続光に対して光注入同期動作させたモード同期半導体レーザを適用するようにしてもよい。
【0218】
(文献B)Shin Arahira,Hiroki Yaegashi,Koji Nakamura,and Yoh Ogawa,“Chirp Control and Broadband wavelength-tuning of 40-GHz Monolithic Actively mode-locked laser diodes module with an external CWlight injection”,IEEE J.Selected Topics in Quantum Electron,vol.11,No.5,pp.1103-1111,2005
光データ信号識別回路100は、第5光カップラ66のポート66−2から出力された光データ信号を入力し、入力された光データ信号が位相変調信号であるか又は振幅変調信号であるかを識別する識別回路である。
【0219】
また、光データ信号識別回路100は、識別結果に応じた制御電気信号を、全光型光変調器50に与えるものである。これにより、全光型光変調器50は、制御電気信号に基づいて、第1又は第2の実施形態で説明した1/2波長板14の回転調整を制御させることができる。
【0220】
なお、光データ信号の識別方法については、後述する動作の項において詳細に説明する。また、光データ信号回路100の設置位置は、図8に示す位置に限定されるものではなく、入力する光データ信号を取り込むことができる位置であれば、いかなる光経路に設けるようにしてもよい。
【0221】
(C−2)第3の実施形態の動作
次に、第3の実施形態の動作を図面を参照しながら説明する。
【0222】
まず、光データ信号が、装置外部から光信号発生装置2Aに入力する。光データ信号は、第2光カップラ60のポート60−1に入力し、第2光カップラ60のポート60−3から出力されて、クロック抽出回路70に入力する。
【0223】
光データ信号がクロック抽出回路70に入力されると、クロック抽出回路70は、光データ信号に基づいて、光データ信号のビットレートに相当する周波数の電気クロック信号を抽出する。
【0224】
そして、この電気クロック信号が光パルス光源80及び82に与えられ、光パルス光源80及び82が電気クロック信号を用いて駆動することで、光データ信号にタイミング同期した光クロックパルスが連続的に出力される。
【0225】
光パルス光源82からの波長λsの光クロックパルス列は、信号光入力用ファイバ32−1を通じて、信号光として全光型光変調器50に入力される。
【0226】
一方、第2光カップラ60のポート60−2から出力される光データ信号は、第3光カップラ62のポート62−1に入力される。光データ信号は、第3光カップラ62のポート62−2及び62−3から2分岐されて、第5光カップラ66及び光PLL回路90に出力される。
【0227】
光データ信号が光PLL回路90に入力されると、光PLL回路90において、光データ信号の有する光キャリア成分の光位相検波が実行され、その結果、光データ信号の有する光キャリア成分と位相同期された波長λpの連続光が、光パルス光源80に与えられる。
【0228】
光PLL回路90からの波長λpの連続光が光パルス光源80に入力すると、光パルス光源80では、光データ信号と光位相同期された装置外部からの光データ信号と同じ波長λpの連続的な光クロックパルス列を発生する光パルス光源として動作する。
【0229】
また、このとき同時に、光パルス光源80では、クロック抽出回路70からの電気クロック信号を受け入れて駆動されることで、発生する光クロックパルス列が、装置外部から入力される光データ信号とタイミング同期もされている。
【0230】
そして、光パルス光源80からの波長λpの光クロックパルス列は、第4光カップラ64のポート64−3に入力される。
【0231】
ここで適用される光パルス光源80からの光クロックパルス列は、後に詳細に述べる理由によって、光PLL回路90からの連続光、ひいては装置外部から入力される光データ信号と同一波長で、かつ、光位相同期されていなければならない。
【0232】
一方、第3光カップラ62のポート62−2から出力される光データ信号は、適宜光ファイバなどの光経路を通過した後、第4光カップラ64のポート64−2に入力される。
【0233】
その結果、第4光カップラ64のポート64−1からは、光パルス光源80からの波長λpの光クロックパルス列と、装置外部から入力された波長λpの光データ信号との合成波が出力される。
【0234】
ここでの光データ信号は、実際には装置に入力された光データ信号を光カップラなどで多段分岐したものであるが、その信号品質は、強度を除けば初期の装置に入力された光データ信号と同一のものであるので、その信号処理の結果は、初期の装置に入力された光データ信号に加えた信号処理の結果と同一のものと考えてよい。
【0235】
また、第4光カップラ64のポート64−1から出力される合成波は、光パルス光源80からの波長λpの光クロックパルス列と、装置外部から入力された波長λpの光データ信号との干渉出力となる。
【0236】
これら2つの光の偏波面が同一方向となるように調整されているものとする。そのためには、これら2つの光が第4光カップラ64のポート64−2及び64−3に到達するまでの光経路に、例えば偏波面コントローラなどの偏波面調整手段を適宜挿入することで容易に実現できる。あるいはまた、偏波面保存ファイバなどの偏波面保持手段を適用するようにしてもよい。
【0237】
また、光パルス光源80からの波長λpの光クロックパルス列のパルス幅及びピーク強度は、第4光カップラ64の入力ポート64−2に入力される光データ信号のパルス幅及びピーク強度と同一であるとする。そのためには、光パルス光源80の駆動条件を調整したり、又は、光データ信号及び光クロックパルス列が第4光カップラ64のポート64−2及び64−3に到達するまでの光経路に光増幅器を適宜挿入したりすることで実現できる。
【0238】
次に、図9を参照して、第4光カップラ64のポート64−1から出力される、光パルス光源80からの波長λpの光クロックパルス列と、装置外部から入力された波長λpの光データ信号との干渉出力を考察する。
【0239】
図9(A)において、入力された光データ信号が位相変調信号である場合を示す。ここでは、図9(A−1)に示すように、入力された光データ信号の光位相が(π、0、π、π)と変調された4ビットの位相変調信号を考える。また、図9(A−2)に示すように、光クロックパルス列の光位相は、入力された光データ信号と比較して、相対的にπであるとする。
【0240】
光クロックパルス列は、入力された光データ信号と光位相同期されて出力されたものであるために、入力された光データ信号と、光クロックパルス列との相対的な光位相関係が、図9(A−2)に示されたような状態に安定的に維持することが可能となる。
【0241】
このとき、第4光カップラ64のポート64−1から出力される、光パルス光源80からの波長λpの光クロックパルス列と、装置外部から入力された波長λpの光データ信号との干渉出力は、図9(A−3)に示されたようになる。
【0242】
すなわち、光データ信号の光位相が「0」であるとき、光クロックパルス列の光位相は「π」であるため、逆相で干渉した結果、合成出力(=干渉出力)の強度はゼロとなる。また、光データ信号の光位相が「π」であるとき、光クロックパルス列の光位相は「π」であるため、合成出力は両者の足し合わせとなり、有意な光強度が現れる。
【0243】
その結果、第4光カップラ64からの合成出力は、光ピーク強度が(1、0、1、1)と変調された振幅変調信号となる。すなわち、第4光カップラ64のポート64−1からは、入力光データ信号の光位相「π」の状態を光ピーク強度「1」、入力光データ信号の光位相「0」の状態を光ピーク強度「0」に換算して変換した、入力光データ信号の信号パターンと同一な信号パターンの振幅変調信号が得られる。
【0244】
次に、図9(B)は、入力された光データ信号が振幅変調信号である場合を示す。ここでは、図9(B−1)に示すように、入力された光信号の光ピーク強度が(1、0、1、1)と変調された4ビットの振幅変調信号を考える。振幅変調信号であるために、各信号の光位相は全て同じであり、ここでは、各信号の光位相を「0」であるとする。
【0245】
次に、図9(B−2)に示すように、光クロックパルス列の光位相は、図9(A)の場合と同様に、入力された光データ信号と比較して相対的に「π」であるとする。
【0246】
先の場合と同様に、光クロックパルス列は、入力された光データ信号と光位相同期されて出力されたものであるために、入力された光データ信号と、光クロックパルス列の相対的な光位相関係を図9(B−2)に示されたような状態で、安定的に維持することが可能となる。
【0247】
このとき、第4光カップラ64のポート64−1から出力される、光パルス光源80からの波長λpの光クロックパルス列と、装置外部から入力された波長λpの光データ信号との干渉出力は、図9(B−3)に示されたようになる。
【0248】
すなわち、光データ信号の光ピーク強度が「1」であるとき、光クロックパルス列の光位相は「π」であるため、逆相で干渉した結果、合成出力(=干渉出力)の強度はゼロとなる。また、光データ信号の光ピーク強度が「0」であるとき、光クロックパルス列の光波形がそのまま出力されて、合成出力に有意な光強度が現れる。
【0249】
その結果、第4光カップラ64からの合成出力は、光ピーク強度が(0、1、0、0)と変調された振幅変調信号となる。すなわち、第4光カップラ64のポート64−1からは、入力光データ信号の光ピーク強度「1」の状態を光ピーク強度「0」、入力光データ信号の光ピーク強度「0」の状態を光ピーク強度「1」に換算して変換した、入力光データ信号の信号パターンと同一な信号パターンの振幅変調信号が得られる。
【0250】
以上の考察より、第4光カップラ64のポート64−1からは、入力された光データ信号が位相変調信号・振幅変調信号の如何を問わず、入力光データ信号の信号パターンと同一な信号パターンの振幅変調信号が得られる。これを制御光として、全光型光変調器50の制御光入力ポート31に入力することで、最終的に、入力光データ信号の信号パターンと同一な信号パターンの、変調光信号が、全光型光変調器50の出力ボートファイバ29から得ることができる。
【0251】
図9で考察した効果は、第4光カップラ64のボート64−3に入力された光クロックパルス列が、装置外部から入力され、その一部が第4光カップラ64のポート64−2に入力された光データ信号と光位相同期され、かつ、同一波長であるために生じる。
【0252】
光クロックパルス列が、入力された光データ信号と光位相同期されておらず、何らの光位相の相関を有していない場合、入力された光データ信号と、光クロックパルス列の相対的な光位相関係を、図9(A−2)又は図9(B−2)に示されたように、一定の関係を保つことができない。この場合、例えば入力光データ信号が位相変調信号である場合に、光データ信号の光位相が「0」であっても、合成出力(=干渉出力)の強度がゼロとならない。すなわち、干渉出力の信号パターンは、初期光データ信号の信号パターンと一致したものにはならない。これは、最終的に出力された変調光信号の符号誤りを生じさせる。
【0253】
また、光クロックパルス列の波長と、入力された光データ信号の波長が一致しない場合、入力された光データ信号と、干渉出力に波長差に相当した周期の強度変動が生じる。この場合もまた、干渉出力の信号パターンは、初期光データ信号の信号パターンと一致したものにはならず、最終的に出力された変調光信号の符号誤りを生じさせる。
【0254】
すなわち、図9に示すような、初期光データ信号の信号パターンと一致した干渉出力の信号パターンを得るためには、光クロックパルス列が、入力された光データ信号と光位相同期され、かつ、同一波長である必要が生じる。先に述べた光パルス光源80においては、光PLL回路90からの連続光を入力して動作させた光強度変調器、あるいは光PLL回路90からの連続光に光注入同期させて動作させた、文献Bに開示されるようなモード同期半導体レーザを利用することで、これを実現することができる。
【0255】
また、図9(A−1)、(B−1)に示す、位相変調あるいは振幅変調された、装置外部から入力された光データ信号のベースバンド信号配列パターンを(1、0、1、1)であると定義し、最終的に出力される変調光信号のベースバンド信号配列パターンを考察すると、図9(A−3)、(B−3)に示される制御光の強度パターンを反映して、装置外部から入力された光データ信号が位相変調信号である場合には、(1、0、1、1)と初期光データ信号と同じ配列パターンになるのに対し、初期光データ信号が振幅変調信号である場合には、(0、1、0、0)と、外部から入力された光データ信号と論理反転した配列パターンとなる。
【0256】
装置外部から入力された光データ信号が振幅変調信号である場合の制御光の論理反転は、最終的に所望とする変調光信号が位相変調信号である場合には、位相変調信号は単に光信号の相対光位相のみを問題とするので、問題とはならない。
【0257】
一方、最終的に所望とする変調光信号が振幅変調信号である場合には、このような現象は、例えば受信端での論理識別を反転して考えればよいので、実用上やはりそれほど大きな問題とはならない一方、これを回避することもできる。
【0258】
例えば、図6に示す、第2の実施形態において、光位相バイアス回路にて与える光位相を、逆行制御光からの相互位相変調効果による位相シフトを補償する量に加えて、さらにπの位相シフト量を与える。
【0259】
このとき、振幅変調光信号の正論理信号・論理反転信号の出力ポートは交換される。すなわち、出力用光ファイバ29からは論理反転信号が出力され、すなわち、この場合、(1、0、1、1)と、入力された光データ信号と同じ配列パターンの振幅変調光信号を得ることができる。
【0260】
出力用光ファイバ29より出力される変調光信号の変調フォーマットの切り替え(位相変調⇔振幅変調)は、本装置が設置される光中継器などの基地局から発生される制御信号に基づいて、1/2波長板14の光軸回転を実行することで行われる。
【0261】
あるいはまた、装置外部から入力された光データ信号と、最終的に所望とされる変調光信号との間で、変調フォーマットの変換を伴わないような用途においては、次のような使用も可能である。ここで、変調フォーマットの変換を伴わないとは、入力光データ信号が振幅変調信号である場合、振幅変調信号を一意に出力させ、入力光データ信号が位相変調信号である場合、位相変調信号を一意に出力させる、という意味である。
【0262】
すなわち、第3光カップラ62のポート62−2と第4光カップラ64のポート64−2とを結合する、光データ信号の伝播する光経路に、第5光カップラ66を挿入し、光データ信号の分岐出力を得、これを光データ信号識別回路100に入力する。光データ信号識別回路100において、入力光データ信号の変調フォーマットが位相変調信号であるか、振幅変調信号あるかの判別を行う。その結果に応じて制御電気信号を発生し、この電気信号に応じて入/2波長板14の光軸回転を実行する。
【0263】
その結果、装置外部から入力された光データ信号の変調フォーマット判別を自動的に行う、自律的な装置構成が可能となる。
【0264】
このような光データ信号識別回路100は、図8の構成例によらず、装置へ入力された光データ信号が経由するいかなる光経路に挿入しても良い。
【0265】
図10は、光データ信号識別回路100により光データ信号の判別方法を説明する概略的な説明図である。光データ信号識別回路100は、図10(A)、(B)に示す方法で光データ信号を判別するものを適用することができる。
【0266】
図10(A)において、光データ信号を構成する各光パルスが同じパルス波形を有し、かつ、光データ信号の平均強度が同じであるとした場合、光データ信号を構成する各光パルスのピーク強度に、光データ信号の変調フォーマットによる違いが生じる。
【0267】
具体的には、光データ信号識別回路100は、光データ信号のピーク強度を検出することで、光データ信号を判別する方法を適用することができる。つまり、光データ信号が位相変調信号である場合、各光パルスのピーク強度は、「1」信号、「0」信号の場合とも同じである。このときのピーク強度をIpであるとする。一方、光データ信号が振幅変調信号である場合、「1」信号、「0」信号のピーク強度は異なる。今、光信号がon−off−keying信号であるとし、マーク率をMとした場合、「1」信号のピーク強度はIp/Mとなり、光データ信号が位相変調信号である場合のピーク強度に比べて1/M倍に増強される。従って、ピーク強度を検出することで、光データ信号が振幅変調信号か又は位相変調信号かの判別が可能となる。
【0268】
また例えば、光データ信号識別回路100は、装置に入力された光データ信号の個々の光信号のピーク強度をサンプリングし、その分布を調べ、その分布が極度に広がった信号を振幅変調信号と判定し、また分布が狭い信号を位相変調信号と判定するようにしてもよい。
【0269】
また、図10(B)に示すように、光データ信号識別回路100は、位相変調信号と振幅変調信号の光スペクトルの違いに基づいて判別してもよい。
【0270】
具体的には、例えば図10(B)に示すように、振幅変調信号は、その光キャリア波長成分に離散的なスペクトル成分を有する。一方、位相変調信号は、光キャリア波長での離散的なスペクトル成分を持たず、光キャリア波長近傍で光スペクトルはブロードに広がる。
【0271】
光データ信号を、その光キャリア波長から若干離調した波長にピーク透過率を有し、かつ、十分狭い帯域を有する光バンドパスフィルタを透過させる。すると、光データ信号が振幅変調信号である場合、光バンドパスフィルタを透過する光データ信号強度は低い。一方、光データ信号が位相変調信号である場合、光バンドパスフィルタを透過する光データ信号強度は、その光スペクトル広がりを反映して高くなる。従って、光データ信号識別回路100は、このような光バンドパスフィルタを透過する光データ信号強度を検出することで、光データ信号が振幅変調信号か又は位相変調信号かの判別が可能となる。
【0272】
(C−3)第3の実施形態の効果
以上のように、第3の実施形態によれば、第1又は第2の実施形態で説明した全光型光変調器を備える光信号発生装置を実現することにより、外部から入力される光データ信号の符号化フォーマットが位相変調方式又は振幅変調方式の何れの方式であっても、位相変調方式又は振幅変調方式の何れの符号化フォーマットの変調光信号をも適宜選択して発生することが可能な光信号発生装置を提供することができる。
【0273】
(D)第4の実施形態
次に、本発明の光信号発生装置の第4の実施形態を図面を参照して説明する。
【0274】
図11は、第4の実施形態の光信号発生装置2Bの構成を示す構成図である。
【0275】
図11において、第4の実施形態の光信号発生装置2Bは、第2光カプラ60と、第3光カプラ62と、第4光カプラ64と、第5光カプラ66と、クロック抽出回路70と、光パルス光源80と、光パルス光源82と、光PLL(Phase Locked Loop)回路90と、光データ信号識別回路100と、全光型光変調器50と、波長変換器110を少なくとも有して構成される。
【0276】
図11に示す第4の実施形態の光信号発生装置2Bが図8の光信号発生装置2Aと異なる点は、波長変換器110を新たに加える点、及び光パルス光源82の機能の点である。それ以外の構成は、図8の光信号発生装置2Aの構成と同じであるので、第4の実施形態では、波長変換器110及び光パルス光源82の構成を中心に説明する。
【0277】
第3の実施形態においては、全光型光変調器50において、信号光と制御光の分離のために、それらの波長を、光バンドパスフィルタ28、38において、信号光波長成分のみ選択的に透過可能な程度に異ならせておく必要があった。従って、第3の実施形態においては、外部から入力された光データ信号の波長(λp)と、最終的に発生させる変調光信号の波長(λs)とが異なる、波長変換動作を本質的に伴う。
【0278】
しかしながら、これら両者の波長が一致して動作することを要求する応用も多い。例えばWDMシステムにおいて、長距離伝送のための光中継器として、第3の実施形態の光信号発生器を用いる場合がそれに相当する。第4の実施形態においては、波長変換器110を用いることで、全光型光変調器50に入力される制御光の波長を、外部から入力された光データ信号の波長(λp)とは異なる波長(λp’)に変換する。それによって、全光型光変調器50に入力される信号光の波長(λs)と、外部から入力された光データ信号の波長(λp)が一致しても、光バンドパスフィルタ28、38において信号光波長成分のみを選択的に透過し、制御光波長成分を遮断できるため、全光型光変調器50における光変調動作が阻害されない。
【0279】
波長変換器110は、第4光カップラ64のポート64−1と全光型光変調器50の制御光入力ポート31とを結ぶ光経路上に設けられているものである。波長変換器110は、第4光カップラ64のポート64−1からの出力光の波長を変換し、変換した波長の光を全光型光変調器50に与えるものである。
【0280】
波長変換器110としては様々なタイプのものを用いることができる。例えば、半導体光増幅器、LiNbO3などの非線形光学結晶、非線形光学結晶に光導波路と分極反転による擬似位相整合構造を作りこんだデバイス、光ファイバなどにおける、3波混合効果や4波混合効果を応用したものを用いることができる。
【0281】
また、波長変換器110は、文献Cなどに開示の光ファイバなどにおける光カー効果に基づく、光信号再生効果を伴う波長変換器を用いることができれば、光信号再生効果を伴う光信号発生装置の提供が可能となる。
【0282】
(文献C)P.V.Mamyshev,“All-Optical data Regeneration based on self-phase modulation effect”,Technical digest of European Conference on Optical Communication 98(ECOC 98),vol.1,pp.475-476,Madrid,Spain,1998
光パルス光源82は、クロック抽出回路70からの電気クロック信号を用いて、装置外部から入力された光データ信号とタイミング同期した波長λpの光パルス列を発生させるものである。これにより、外部から入力された光データ信号の波長λpと一致させた光パルス列を全光型光変調器50に与えることができる。
【0283】
なお、光信号発生装置2Bの構成は、図11に示す構成に限定されるものではない。例えば、光パルス光源82を用いず、光パルス光源80のみを用意し、それからの光クロック出力を光カップラなどで2分岐し、一方の出力を全光型変調器50の信号光入力用ファイバ32−1に接続して信号光として供給し、もう一方の出力を外部から入力された光データ信号との干渉のために第4光カップラ64のポート64―3に接続しても良い。
【0284】
この場合、光パルス光源82が不要な構成となる。その他の構成は第3の実施形態と同様であるため、ここではその説明を割愛する。
【0285】
(D−3)第4の実施形態の効果
以上のように、第4の実施形態によれば、第3の実施形態の効果に加えて、次の効果を期待できる。すなわち、第4の実施形態によれば、外部から入力された光データ信号と同一波長の位相変調又は振幅変調された変調光信号を発生する、光信号発生装置の提供が可能となる。
【0286】
(E)他の実施形態
第1〜第4の実施形態では、光カー効果に基づき相互位相変調効果を発現する媒体として光ファイバを考慮したが、本発明で得られる効果は、このような光ファイバの使用に限定されるものではない。制御光により被制御光の光位相を変化させる効果を有する光デバイスであれば、その応用形態に応じて、多種多様なデバイスを用いて、本発明の効果を生じることができる。例えば、動作するビットレートが、1Gb/sなど比較的低ビットレートであれば、半導体光増幅器や電解吸収型光変調器を用いることもできる。また、Siをコアとし、SiO2をクラッドとして形成した、いわゆるシリコン細線導波路を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0287】
【図1】第1の実施形態の光スイッチの構成を示す構成図である。
【図2】偏波面保存光ファイバに適用するPANDA型光ファイバの光伝播方向に対して垂直に切断した断面の概略的な断面構造図である。
【図3】第1の実施形態の第1偏波面変換部における接続方法を説明する説明図である。
【図4】第1の実施形態の位相変調光信号発生時の信号光の偏波状態を説明する説明図である。
【図5】第1の実施形態の振幅変調光信号発生時の信号光の偏波状態を説明する説明図である。
【図6】第2の実施形態の光スイッチの構成を示す構成図である。
【図7】第2の実施形態の光位相バイアス回路の構成を示す構成図である。
【図8】第3の実施形態の光信号発生装置の構成を示す構成図である。
【図9】第3の実施形態の制御光生成過程を説明する説明図である。
【図10】第3の実施形態の光データ信号識別回路による光データ信号識別方法を説明する説明図である。
【図11】第4の実施形態の光信号発生装置の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0288】
1A及び1B(50)…光スイッチ、10…第1偏波分離合成モジュール、18…第2偏波分離合成モジュール、12、16、22、26…第1〜第4偏波面保存ファイバ、14…1/2波長板モジュール、24…第1偏波面変換部、28、38…光バンドパスフィルタ(中心波長λs)、32−1及び32−2…信号光入力用光ファイバ、27、29、37、39…変調光信号出力用光ファイバ、31…制御光入力ポート、40…光位相バイアス、
2A及び2B…光信号発生装置、60、62、64、66…第2〜第5光カップラ、70…クロック抽出回路、80…光パルス光源、82…光パルス光源、90…光PLL回路、100…光データ信号識別回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光である信号光を入力する第1入出力端と、この第1入出力端に対向する側に第1偏波面保存光ファイバの一端と結合する第2入出力端と、スイッチされた信号光を出力する第3入出力端とを有する第1偏波分離合成手段と、
第2偏波面保存光ファイバの一端と結合する第1入出力端と、この第1入出力端に対向する側に第3偏波面保存光ファイバの一端と結合する第2入出力端と、第4偏波面保存光ファイバの一端と結合する第3入出力端と、この第3入出力端に対向する側に偏波クロストーク成分を出力する第4入出力端とを有する第2偏波分離合成手段と、
一端が上記第1偏波分離合成手段の第2入出力端と結合された上記第1偏波面保存光ファイバと、
一端が上記第2偏波分離合成手段の第1入出力端と結合された上記第2偏波面保存光ファイバと、
上記第1半端面保存光ファイバの他端と上記第2偏波面保存光ファイバの他端との接続箇所に1/2波長板を設け、上記1/2波長板の光学軸方向を回転可能な偏波面回転調整手段と、
一端が上記第2偏波分離合成手段の第2入出力端と結合され、直線偏光である制御光を入力する第1光カプラを有する上記第3偏波面保存光ファイバと、
一端が上記第2偏波分離合成手段の第3入出力端と結合された上記第4偏波面保存光ファイバと、
上記第3偏波面保存光ファイバの他端と上記第4偏波面保存光ファイバの他端とを接続し、入力光の偏波面を変換する第1偏波面変換手段と
を備えることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
上記第1偏波面変換手段が、上記第3偏波面保存光ファイバの光学軸と上記第4偏波面保存光ファイバの光学軸とが互いに90度の角度を成して融着されて形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
上記第1偏波分離合成手段の第3入出力端に、信号光を出力する信号光出力手段が接続されているものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光変調器。
【請求項4】
上記第1偏波分離合成手段の第1入出力端に、信号光を入力する信号光入力手段が接続されているものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光変調器。
【請求項5】
上記第2偏波分離合成手段の第2入出力端と、上記第3偏波面保存光ファイバと、上記第1偏波面変換部と、上記第4偏波面保存光ファイバと、上記第2偏波面分離保存モジュールの第3入出力端とを結ぶ光経路上に、逆行光の相互位相変調による位相シフトを除去する位相シフト除去手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光変調器。
【請求項6】
上記位相シフト除去手段が、
一方の入出力端から入力された直線偏光の偏光方向を+45度回転させる第1ファラデー回転子と、
他方の入出力端から入力された直線偏光の偏光方向を−45度回転させる第2ファラデー回転子と、
上記第1ファラデー回転子と上記第2ファラデー回転子との間に、一方の光軸が前記第1ファラデー回転子を通過した直線偏光と平行な方向で、他方の光軸が前記第2ファラデー回転子を通過した直線偏光と平行な方向に設定された複屈折媒体と
を有するものであることを特徴とする請求項5に記載の光変調器。
【請求項7】
外部からの入力光信号に基づいて、入力光信号のビットレートに相当する周波数の電気クロック信号を生成するクロック信号生成手段と、
上記クロック信号生成手段から上記電気クロック信号に基づいて、上記外部からの入力光信号と同期した光パルス列を発生する第1光パルス列発生手段と、
上記クロック信号生成手段から上記電気クロック信号に基づいて、上記外部からの入力光信号と同期した光パルス列を発生する第2光パルス列発生手段と、
上記外部からの入力光信号に基づいて、入力光信号と同一波長及び同一位相の連続光を出力する光位相同期手段と、
上記クロック信号生成手段からの上記電気クロック信号に基づいて、上記光位相同期手段からの連続光を受け入れ、光注入同期現象により上記外部からの入力光信号と同一波長及び同一位相の光パルス列を発生する第2光パルス列発生手段と、
上記第2光パルス列発生手段からの光クロックパルス列と、上記外部からの入力光信号との干渉光を出力する光カップラと、
上記光カップラからの出力光を制御光として入力すると共に、上記第1光パルス列発生手段からの光パルス列を信号光として入力するものであって、請求項1〜6のいずれかに記載の光変調器と
を備えることを特徴とする光信号発生装置。
【請求項8】
上記外部からの入力光信号に基づいて入力光信号の符号フォーマットを判別し、その判別結果を上記光変調器の偏波面回転調整手段に与える光信号識別手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の光信号発生装置。
【請求項9】
上記第1光パルス発生手段が、上記外部からの入力光信号の波長と同一の波長の光パルス列を発生するものであって、
上記光カップラから上記光変調器までの光経路上に、上記光カップラから出力される干渉光の波長を変換する波長変換手段を備えることを特徴とする請求項7又は8に記載の光信号発生装置。
【請求項1】
直線偏光である信号光を入力する第1入出力端と、この第1入出力端に対向する側に第1偏波面保存光ファイバの一端と結合する第2入出力端と、スイッチされた信号光を出力する第3入出力端とを有する第1偏波分離合成手段と、
第2偏波面保存光ファイバの一端と結合する第1入出力端と、この第1入出力端に対向する側に第3偏波面保存光ファイバの一端と結合する第2入出力端と、第4偏波面保存光ファイバの一端と結合する第3入出力端と、この第3入出力端に対向する側に偏波クロストーク成分を出力する第4入出力端とを有する第2偏波分離合成手段と、
一端が上記第1偏波分離合成手段の第2入出力端と結合された上記第1偏波面保存光ファイバと、
一端が上記第2偏波分離合成手段の第1入出力端と結合された上記第2偏波面保存光ファイバと、
上記第1半端面保存光ファイバの他端と上記第2偏波面保存光ファイバの他端との接続箇所に1/2波長板を設け、上記1/2波長板の光学軸方向を回転可能な偏波面回転調整手段と、
一端が上記第2偏波分離合成手段の第2入出力端と結合され、直線偏光である制御光を入力する第1光カプラを有する上記第3偏波面保存光ファイバと、
一端が上記第2偏波分離合成手段の第3入出力端と結合された上記第4偏波面保存光ファイバと、
上記第3偏波面保存光ファイバの他端と上記第4偏波面保存光ファイバの他端とを接続し、入力光の偏波面を変換する第1偏波面変換手段と
を備えることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
上記第1偏波面変換手段が、上記第3偏波面保存光ファイバの光学軸と上記第4偏波面保存光ファイバの光学軸とが互いに90度の角度を成して融着されて形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
上記第1偏波分離合成手段の第3入出力端に、信号光を出力する信号光出力手段が接続されているものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光変調器。
【請求項4】
上記第1偏波分離合成手段の第1入出力端に、信号光を入力する信号光入力手段が接続されているものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光変調器。
【請求項5】
上記第2偏波分離合成手段の第2入出力端と、上記第3偏波面保存光ファイバと、上記第1偏波面変換部と、上記第4偏波面保存光ファイバと、上記第2偏波面分離保存モジュールの第3入出力端とを結ぶ光経路上に、逆行光の相互位相変調による位相シフトを除去する位相シフト除去手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光変調器。
【請求項6】
上記位相シフト除去手段が、
一方の入出力端から入力された直線偏光の偏光方向を+45度回転させる第1ファラデー回転子と、
他方の入出力端から入力された直線偏光の偏光方向を−45度回転させる第2ファラデー回転子と、
上記第1ファラデー回転子と上記第2ファラデー回転子との間に、一方の光軸が前記第1ファラデー回転子を通過した直線偏光と平行な方向で、他方の光軸が前記第2ファラデー回転子を通過した直線偏光と平行な方向に設定された複屈折媒体と
を有するものであることを特徴とする請求項5に記載の光変調器。
【請求項7】
外部からの入力光信号に基づいて、入力光信号のビットレートに相当する周波数の電気クロック信号を生成するクロック信号生成手段と、
上記クロック信号生成手段から上記電気クロック信号に基づいて、上記外部からの入力光信号と同期した光パルス列を発生する第1光パルス列発生手段と、
上記クロック信号生成手段から上記電気クロック信号に基づいて、上記外部からの入力光信号と同期した光パルス列を発生する第2光パルス列発生手段と、
上記外部からの入力光信号に基づいて、入力光信号と同一波長及び同一位相の連続光を出力する光位相同期手段と、
上記クロック信号生成手段からの上記電気クロック信号に基づいて、上記光位相同期手段からの連続光を受け入れ、光注入同期現象により上記外部からの入力光信号と同一波長及び同一位相の光パルス列を発生する第2光パルス列発生手段と、
上記第2光パルス列発生手段からの光クロックパルス列と、上記外部からの入力光信号との干渉光を出力する光カップラと、
上記光カップラからの出力光を制御光として入力すると共に、上記第1光パルス列発生手段からの光パルス列を信号光として入力するものであって、請求項1〜6のいずれかに記載の光変調器と
を備えることを特徴とする光信号発生装置。
【請求項8】
上記外部からの入力光信号に基づいて入力光信号の符号フォーマットを判別し、その判別結果を上記光変調器の偏波面回転調整手段に与える光信号識別手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の光信号発生装置。
【請求項9】
上記第1光パルス発生手段が、上記外部からの入力光信号の波長と同一の波長の光パルス列を発生するものであって、
上記光カップラから上記光変調器までの光経路上に、上記光カップラから出力される干渉光の波長を変換する波長変換手段を備えることを特徴とする請求項7又は8に記載の光信号発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−186606(P2009−186606A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24274(P2008−24274)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人情報通信研究機構「λユーティリティ技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人情報通信研究機構「λユーティリティ技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
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