説明

光変調素子、光変調方法、および光変調装置

【課題】光変調において、高速な動作が可能であり、かつ消費電力を少なくすることができ、また多段階階調性を得ること。
【解決手段】変調する光を透過しかつ導電性を有する透明電極層14と、強磁性を有しかつ導電性を有する磁性酸化物層13と、酸化材料を含む酸素供給層12と、酸素供給層12から供給される酸素により酸化される導電性膜からなる酸化性電極層11とがこの順に設けられる。酸化性電極層11および酸素供給層12はいずれも非磁性であり、透明電極層14は垂直磁化性を有するものとすることができる。また、透明電極層14が透明基板15の表面に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光に対し電気信号によって光変調を行う光変調素子、光変調方法、および光変調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光がもつ強度や位相または偏光などの空間分布を電気信号によって変調する光変調素子は、光シャッタや空間光変調器またはディスプレイ(プロジェクタ)などの種々の用途に用いられている。
【0003】
しかし、液晶(LCD)やデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)などに代表される従来の光変調素子は、その動作速度が10μsec〜10msecとかなり低速であった。
【0004】
より高速で動作可能な光変調素子として、磁気光学効果を利用した光変調素子が提案されている。
【0005】
例えば、LaSrMnO3 などの強相関電子材料上に3電極を形成した半導体デバイスが提案されている(特許文献1)。これによると、ゲート電極に印加する電圧を制御することにより、半導性強相関電子材料のキャリア濃度を変調し、常温で強磁性と常磁性とが切り換えられる。
【0006】
また、電子軌道が整列状態を示す固体材料を電極で挟んだ素子と、素子から生じた透過光または反射光の偏光面の回転を検出する手段を具備した固体表示素子が提案されている(特許文献2)。電圧の印加によって、固体材料を反強的軌道秩序相または強的秩序相に相変化させる。
【0007】
また、2つの電極間に微小な磁性体を配置し、磁性体にスピンの向きがそろった電子を流すスピン注入型の光変調素子が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−92903号
【特許文献2】特許第3809910号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、光通信技術または光情報処理技術の進展のためには、遅くとも100nsec程度の高速で動作する光変調素子の開発が望まれる。また、環境負荷を低減する観点から、省電力の光変調素子の開発も望まれる。
【0010】
さらに、複数の光変調素子を2次元アレイ状に配置した空間光変調器やディスプレイに利用するためには、一層の高精細化が求められる。従来のいずれの光変調素子も、こうした状況に十分に対応できるものではなかった。
【0011】
また、スピン注入型の光変調素子では、電流駆動型であるので、消費電力が大きくなる。
【0012】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、磁気光学効果などを利用することによって高速な動作が可能であり、かつ消費電力を少なくすることができ、また多段階階調性を得ることが可能な光変調素子、そのような光変調素子を用いた光変調方法、および光変調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書で提案される実施形態の光変調素子は、変調する光を透過しかつ導電性を有する透明電極層と、強磁性を有しかつ導電性を有する磁性酸化物層と、酸化材料を含む酸素供給層と、前記酸素供給層から供給される酸素により酸化される導電性膜からなる酸化性電極層と、がこの順に設けられる。
【0014】
本明細書で提案される実施形態の光変調方法は、前記酸化性電極層と前記透明電極層との間に、正負が交互に反転する交番電圧を印加して前記磁性酸化物層における飽和磁化を変化させ、前記透明電極層の側から入射した偏光に対し磁気光学効果を与えて偏光面を回転させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、高速な動作が可能であり、かつ消費電力を少なくすることができ、また多段階階調性を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態の光変調素子の構造を示す図である。
【図2】第1の実施形態の光変調素子の動作状態を示す図である。
【図3】光変調素子による光変調方法を説明する図である。
【図4】磁性酸化物層の飽和磁化Msの変化の様子を説明する図である。
【図5】光変調素子に印加する交番電圧の波形の例を示す図である。
【図6】第2の実施形態の光変調素子の構造を示す図である。
【図7】第2の実施形態の光変調素子の動作状態を示す図である。
【図8】第3の実施形態の光変調素子の構造を示す図である。
【図9】第3の実施形態の光変調素子の動作状態を示す図である。
【図10】垂直磁化膜の磁化の様子を説明する図である。
【図11】第4の実施形態の光変調素子の構造を示す図である。
【図12】第4の実施形態の光変調素子の動作状態を示す図である。
【図13】第5の実施形態の光変調素子の動作状態を示す図である。
【図14】第6〜第9の実施形態の光変調素子の構造を示す図である。
【図15】第10の実施形態の光変調素子の構造を示す図である。
【図16】第10の実施形態の光変調素子の動作状態を示す図である。
【図17】第11の実施形態の光変調素子の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1の実施形態〕
図1において、光変調素子1は、酸化性電極層11、酸素供給層12、磁性酸化物層13、透明電極層14、および透明基板15が、この順に設けられてなっている。つまり、磁性酸化物層13と酸素供給層12とを積層した構造体(以下、「積層体KK」と記載することがある)を2つの電極(酸化性電極層11と透明電極層14)で挟んだサンドイッチ構造である。酸化性電極層11、酸素供給層12、磁性酸化物層13、および透明電極層14を「サンドイッチ構造体SK」と記載することがある。第1の実施形態の光変調素子1は、サンドイッチ構造体SKにおける透明電極層14が、透明基板15の表面に設けられたものである。
【0018】
磁性酸化物層13と酸素供給層12との2層を組み合わせることで光変調素子としての素子機能が実現される。サンドイッチ構造体SKに電圧を印加することにより(図2参照)、酸素供給層12の発生する酸素イオンに由来する電子を取り出し、この電子を磁性酸化物層13に注入する。これにより、磁性酸化物層13の電子密度を変化させ、磁性(飽和磁化)を変化させる。
【0019】
すなわち、光変調素子1を動作させるには、酸化性電極層11と透明電極層14との間に、正負が交互に反転する交番電圧を印加して磁性酸化物層13における磁性(飽和磁化)を可逆的に変化させる。これによって、透明電極層14の側から入射した偏光光線(偏光)に対し磁気光学効果(ファラデー効果、カー効果)を与えて偏光面を回転させる。
【0020】
以下、光変調素子1の構造について詳しく説明する。
【0021】
図1において、酸化性電極層11は、酸化され易い導電性膜からなり、酸素供給層12から供給される酸素により酸化される。酸化性電極層11として、非磁性の材料が用いられる。酸化性電極層11を非磁性とすることにより、透明基板15の側から入射した偏光光線が仮に酸素供給層12を透過して酸化性電極層11にまで達した場合であっても、酸化性電極層11が偏光面の回転に影響を与えることがない。具体的には、酸化性電極層11として金属が用いられ、例えば、Ta、Ti、Al、Cu、Zn、Cr、W、V、Mn、Zr、Nb、Mo、In、Sn、またはこれらの合金などが用いられる。なお、本実施形態においては、透明基板15の側から偏光光線を入射させるので、酸化性電極層11は透明である必要はない。
【0022】
酸素供給層12は、酸素イオンの移動し易い酸素イオン伝導膜であり、酸素イオンO2-を発生する。酸素供給層12には、偏光面の回転に影響を与えないように非磁性の材料を用いる。酸素供給層12は、一種の酸化物であってもよい。酸素供給層12には、例えば固体電解質などが用いられる。具体的には、酸素供給層12として、例えば、PrCaMnO3 、Y2 O3 などが用いられる。
【0023】
磁性酸化物層13は、室温で強磁性を有し、かつ導電性を有する。つまり、磁性酸化物層13として、飽和磁化が大きい材料を用いる。つまり、例えば、図4に示す大きい方の磁化曲線CVBにおける飽和磁化MsBを有する材料を用いる。また、磁性酸化物層13として、磁性イオンの価数変化によって磁性の変化が可能な酸化物膜を用いる。磁性酸化物層13に電圧を印加することによりその飽和磁化を低下させ、これによって入射した偏光光線に磁気光学効果を与える。磁性酸化物層13の厚さは、磁性酸化物層13の全体の磁性が変化する程度に薄いものとする(例えば1〜20nm程度)。なお、本実施形態において、磁性酸化物層13の磁化の状態は面内磁化膜である。
【0024】
具体的には、磁性酸化物層13として、例えば、Fe3 O4 などの鉄酸化物、LaSrMnO3 、LaNiMnO3 などMn酸化物などが用いられる。
【0025】
透明電極層14は、変調を行うために入射した光線が透過可能なように透明であり、かつ導電性を有する。透明電極層14と磁性酸化物層13との界面が酸化されることを抑止するため、透明電極層14には、酸化され難い材料を用いる。また、透明電極層14には、偏光面の回転に影響を与えないように非磁性の材料を用いる。具体的には、透明電極層14として、例えば、Pt、Au、Pd、Ruなどの非酸化性金属、または、SrRuO3 、ITO、ZnOなどの透明導電材料が用いられる。これらの合金を用いることも可能である。透明電極層14として非酸化性金属を用いる場合には、入射された偏光光線を透過させる程度に薄いこと(例えば1〜20nm程度)が必要である。
【0026】
透明基板15は、サンドイッチ構造体SKの成膜の基台となるものであり、またサンドイッチ構造体SKを支持するものである。透明基板15は、本実施形態においては、入射する偏光光線に対して透明であることが必要である。具体的には、透明基板15として、例えば、MgO、Al2 O3 、SiO2 などが用いられる。
【0027】
各層の厚さの具体例をあげると、酸化性電極層11は、100〜200nm程度、酸素供給層12は、100〜200nm程度である。磁性酸化物層13は、上に述べたように1〜20nm程度、または10〜20nm程度である。透明電極層14は、上に述べたように1〜20nm程度、または10〜20nm程度である。これらは、例えばスパッタによって成膜を行う。透明基板15は、300〜1000μm程度である。
【0028】
次に、光変調素子1の動作について説明する。
【0029】
図2には、光変調素子1および制御電圧源21からなる光変調装置HSが示されている。
【0030】
図2(A)に示すように、酸化性電極層11と透明電極層14との間に制御電圧源(信号源)21を接続し、酸化性電極層11がプラス側、透明電極層14がマイナス側となるように、電圧を印加する。そうすると、酸素供給層12で発生した酸素イオンはマイナスの電荷を持っているので、プラス極である酸化性電極層11の界面KMに引き寄せられ、界面KMを酸化する。これにより、界面KMに酸素が偏在した状態となる。
【0031】
これにより、酸素イオンの持っている電子が取り出され、これによって、次の式に示すように酸素イオンに由来する電子e- が発生する。
【0032】
M + xO2- → MOx + 2xe-
発生した電子e- は、外部回路である制御電圧源21を介してマイナス極である透明電極層14に流入する。これにより、電子e- は、透明電極層14を介して磁性酸化物層13に注入され、鉄酸化物の場合におけるFe(+3)イオン、Mn酸化物におけるMn(+4)イオンを還元し、その価数を変化させる。つまり、磁性酸化物層13および透明電極層14の近傍に多くの電子が溜まり、電子密度が高くなる。その結果、磁性酸化物層13の飽和磁化Msが低下する。つまり、磁性酸化物層13の飽和磁化Msが小さい状態となる。例えば、図4に示す大きい方の磁化曲線CVBから小さい方の磁化曲線CVAに変化し、その結果、飽和磁化Msは、MsBからMsAと小さくなる。
【0033】
なお、図4に示す磁化曲線CVA,Bにおいて、飽和磁化MsA,Bは、それぞれ残留磁化MrA,Bと同じか、またはほぼ同じである。飽和磁化MsA,Bと残留磁化MrA,Bとが異なる場合には、上に述べた飽和磁化Msに代えて、残留磁化Mrを用いればよい。
【0034】
ところで、制御電圧源21の電圧がパルス状の電圧であっても、つまり、印加される電圧がゼロになった後も、磁性酸化物層13の近辺における電子密度の高い状態が維持され、磁性酸化物層13の飽和磁化Msの小さい状態が維持される。つまり、光変調素子1における飽和磁化Msの状態は不揮発性である。これを元の状態に戻すには、逆の極性の電圧を印加する。
【0035】
すなわち、図2(B)に示すように、制御電圧源21の極性を切り換えて、酸化性電極層11がマイナス側、透明電極層14がプラス側となるように電圧を印加する。そうすると、磁性酸化物層13に引っ張られていた電子e- はプラスの電位によって磁性酸化物層13から引き抜かれ、磁性酸化物層13のFe(+2)イオンまたはMn(+3)イオンの価数が元に戻る。その結果、磁性酸化物層13の飽和磁化Msが元の大きい状態に回復する。磁性酸化物層13から引き抜かれた電子は、外部回路である制御電圧源21を通って、マイナス極である酸化性の金属からなる酸化性電極層11に戻ってくる。
【0036】
酸化性電極層11に流入した電子は、酸化性電極層11と酸素供給層12との間で酸化状態にある界面KMを還元する。これによって、酸化性電極層11および酸素供給層12は元の状態に戻る。つまり、酸化状態にあった界面KMは、電子が入ってくることにより、酸素イオンの状態に戻る。イオンになって電荷を持つと、界面KMの酸化の状態は解消される。
【0037】
このように、酸化性電極層11と透明電極層14との間に印加する電圧の極性を交互に反転することにより、磁性酸化物層13の飽和磁化Msが大(MsB)と小(MsA)とに切り換えられる。
【0038】
そうすると、透明基板15の側から入射した偏光光線は、磁性酸化物層13と透明電極層14との界面の近辺において反射するとともに、飽和磁化Msの大きさに応じてその偏光面が回転される。
【0039】
なお、飽和磁化Msの大きさは、酸化性電極層11と透明電極層14との間に印加される電圧の大きさおよびパルス幅の大きさに依存する。大きいプラスの電圧を印加すると、飽和磁化Msの低下が大きい。また、プラスの電圧のパルス幅が大きいほど飽和磁化Msの低下が大きい。
【0040】
また、低下した飽和磁化Msを回復させるには、マイナスの電圧を印加すればよい。つまり、飽和磁化Msを低下させたときとは逆極性のエネルギーを与えることによって、飽和磁化Msが元に回復する。なお、飽和磁化Msの最大値は磁性酸化物層13の材料などに依存する。
【0041】
図3に示すように、光変調素子1の透明基板15の側から偏光光線が入射するように偏光子22を配置し、光変調素子1で反射した偏光光線が透過するように偏光子23を配置する。制御電圧源21からの電圧の大きさおよびパルス幅の大きさに応じて、反射する偏光光線の偏光面の回転角度が変化するので、偏光光線が偏光子23を通過することによって、電圧の大きさまたはパルス幅に応じた強度の偏光光線が出力される。つまり、制御電圧源21の電圧の大きさまたはパルス幅に応じて変調された偏光光線が出力される。
【0042】
図5(A)に示すように、制御電圧源21による印加電圧として、上に述べたように、プラス側のパルスPR1とマイナス側のパルスPR2とが、休止期間をおいて交互に繰り返される交番電圧VN1を用いる。この場合に、プラス側の電圧V1は、例えば+3ボルト程度、マイナス側の電圧V2は、例えば−4ボルト程度とする。また、パルスPR1,2の幅T1,T2は、いずれも、例えば1〜100nsec程度である。したがって、この場合に、パルスPR1,2の反転の周期T3を、例えば2〜100nsec程度とすることが可能である。
【0043】
また、図5(B)に示すように、プラス側のパルスPR3とマイナス側のパルスPR4とが、休止期間をおくことなく、交互に繰り返される交番電圧VN2を用いてもよい。この場合に、パルスPR3,4の幅T4,T5を例えばそれぞれ0.5nsec程度とした場合には、飽和磁化Msの切り換えの周期を1nsec程度とすることも可能であり、光変調を高速で行うことができる。
【0044】
また、正負が交互に反転する交番電圧VNとして、プラス側のパルスPR1またはマイナス側のパルスPR2が、それぞれ複数個連続するような交番電圧VNでもよい。この場合には、複数個のパルスからなるパルス群によって1回の電圧の印加が行われたと考えればよい。
【0045】
このように、上に述べた実施形態の光変調素子1によると、飽和磁化Msを変化させるのが電子注入方式(電圧印加方式)であるので、高速な動作が可能である。例えば数nsec〜数十nsec程度の高速動作が可能である。
【0046】
上に述べた実施形態の光変調素子1によると、制御電圧源21から光変調素子1に対して電圧を印加することにより磁性酸化物層13の飽和磁化Msの状態を変化させることが可能であり、飽和磁化Msの状態は不揮発性であるから、電圧駆動型であり、消費電力を少なくすることができる。
【0047】
また、制御電圧源21の電圧をアナログ的な多段階階調とすることにより、飽和磁化Msを多段階階調に変化させることができ、多段階階調の光変調が可能である。
【0048】
例えば、光変調素子1をパルスによって駆動して光変調を行うとともに、パルス強度変調またはパルス幅変調などを行うことが可能である。
【0049】
上に述べた実施形態の光変調素子1は、小型のものとすることができる。したがって、例えば小型の光シャッタとして利用することができる。また、複数個の光変調素子1を2次元的にアレイ状に配置することによって、高精細の空間光変調器として利用することができる。
〔第2の実施形態〕
上に述べた第1の実施形態では、透明基板15の表面にサンドイッチ構造体SKにおける透明電極層14を設けたが、第2の実施形態では、サンドイッチ構造体SKの積層の順序を逆にし、基板15Bの表面にサンドイッチ構造体SKBにおける酸化性電極層11を設ける。
【0050】
なお、第2の実施形態では、サンドイッチ構造体SKBの表裏が逆である点を除いて第1の実施形態と同様な構造であるので、各要素に符号「B」を付して説明を省略しまたは簡略化する。以下においても同様に、各要素に符号「C」「D」などを付して示す。
【0051】
すなわち、図6において、光変調素子1Bは、透明電極層14B、磁性酸化物層13B、酸素供給層12B、酸化性電極層11B、および基板15Bが、この順に設けられてなっている。
【0052】
偏光光線は、透明電極層14Bの側から入射し、同じ側に反射する。したがって、基板15Bは透明である必要はない。
【0053】
図7に示すように、酸化性電極層11Bと透明電極層14Bとの間に制御電圧源21を接続し、交番電圧VNを印加する。これによって、第1の実施形態で述べた作用により、磁性酸化物層13Bの飽和磁化Msが可逆的に変化し、入射した偏光光線を変調することができる。
〔第3の実施形態〕
第3の実施形態では、透明電極層14Cを垂直磁化膜とする。透明電極層14Cを垂直磁化膜とすることにより、磁性酸化物層13における飽和磁化Msの変化によって、透明電極層14Cの磁化の状態が垂直磁化と面内磁化との間で変化する。これにより、偏光光線に対して極カー効果が生じ、かつ極カー効果の大きさが変化することを利用して光変調を行う。
【0054】
つまり、透明電極層14Cは、磁性酸化物層13Cにおける飽和磁化Msの変化を増幅するエンハンス層として機能する。
【0055】
すなわち、図8において、光変調素子1Cは、酸化性電極層11C、酸素供給層12C、磁性酸化物層13C、透明電極層14C、および透明基板15Cが、この順に設けられてなっている。
【0056】
透明電極層14Cは、入射した光線が透過可能なように透明であって、酸化され難く、垂直磁化を示す導電性膜である。具体的には、例えば、CoCrPtなどが用いられる。透明電極層14Cの厚さは、例えば10〜50nm程度であり、例えば25〜50nmとし、または30nm程度とすることができる。
【0057】
なお、磁性酸化物層13Cと透明電極層14Cとの厚さの比率は、磁気的な相互作用が十分に表れるように決定すればよい。例えば、磁性酸化物層13Cの厚さを10nm程度とした場合に、透明電極層14Cは30nm程度とする。
【0058】
図10(A)に示すように、透明電極層14Cの磁化の状態は、磁性酸化物層13Cの飽和磁化Msが小さいときには、垂直磁化の状態である。しかし、図10(B)に示すように、磁性酸化物層13Cの飽和磁化Msが大きくなると、その飽和磁化Msの影響を受けて、透明電極層14Cにおける垂直磁化が減少し、面内磁化の状態となる。
【0059】
図9(A)に示すように、酸化性電極層11Cと透明電極層14Cとの間に制御電圧源21を接続し、酸化性電極層11Cにプラスの電圧を印加する。これにより、酸素供給層12Cで発生した酸素イオンは酸化性電極層11Cの界面KMに引き寄せられ、界面KMに酸素が偏在した状態となる。これにより、酸素イオンに由来する電子e- が発生する。
【0060】
発生した電子e- は、制御電圧源21を介して透明電極層14Cに流入する。これにより、電子e- は磁性酸化物層13Cに注入され、その価数を変化させる。つまり、磁性酸化物層13Cおよび透明電極層14Cの近辺に多くの電子が溜まり、電子密度が高くなる。その結果、磁性酸化物層13Cの飽和磁化Msが低下する。
【0061】
磁性酸化物層13Cの飽和磁化Msが低下することにより、磁性酸化物層13Cとの磁気的相互作用が弱くなり、透明電極層14Cが垂直磁化の状態に戻る。これによって、入射した偏光光線に対して極カー効果が生じ、偏光光線の偏光面の回転が大きくなる。つまり、大きなカー回転角が得られる。
【0062】
次に、図9(B)に示すように、酸化性電極層11Cがマイナス側、透明電極層14Cがプラス側となるように電圧を切り換えると、磁性酸化物層13Cのイオンの価数が元に戻る。その結果、磁性酸化物層13Cの飽和磁化Msが元の大きい状態に回復する。そのため、磁性酸化物層13Cとの磁気的相互作用が強くなり、透明電極層14Cが面内磁化の状態となる。これによって、入射した偏光光線の偏光面の回転が小さくなる。つまり、小さなカー回転角が検出される。
【0063】
第3の実施形態の光変調素子1Cによると、透明電極層14Cの垂直磁化による極カー効果が主として働くので、偏光光線に対する偏光角の変化を大きくとることができる。
〔第4の実施形態〕
上に述べた第3の実施形態では、透明基板15Cの表面にサンドイッチ構造体SKCにおける透明電極層14Cを設けたが、第4の実施形態では、サンドイッチ構造体SKDの積層の順序を逆にし、基板15Dの表面にサンドイッチ構造体SKDにおける酸化性電極層11Dを設ける。
【0064】
すなわち、図11において、光変調素子1Dは、透明電極層14D、磁性酸化物層13D、酸素供給層12D、酸化性電極層11D、および基板15Dが、この順に設けられてなっている。
【0065】
偏光光線は、透明電極層14Dの側から入射し、同じ側に反射する。したがって、基板15Dは透明である必要はない。
【0066】
図12に示すように、酸化性電極層11Dと透明電極層14Dとの間に制御電圧源21を接続し、交番電圧VNを印加する。これによって、第3の実施形態で述べたと同様な作用により、磁性酸化物層13Dの飽和磁化Msが可逆的に変化し、入射した偏光光線を変調することができる。
〔第5の実施形態〕
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、第3の実施形態における各層の材料を具体的に示す。
【0067】
すなわち図13において、光変調素子1Eは、酸化性電極層11CとしてTaが用いられる。酸素供給層12CとしてPCMOが用いられ、磁性酸化物層13CとしてFe3 O4 が用いられ、透明電極層14CとしてCoCrPtが用いられる。
【0068】
このような構造の光変調素子1Eは、上に述べた光変調素子1Cと同様に動作し、入射した偏光光線を光変調することができる。
【0069】
しかし、この構造の光変調素子1Eを実際にデバイスとして製造した場合に、スパッタによる成膜後に、透明電極層14Cなどの表面が凸凹の荒れた状態となることがある。つまり、透明電極層14Cの表面が見た目でスリガラス状のようになる。その場合には、入射した偏光光線が散乱してしまう。この理由は次のように考えられる。
【0070】
すなわち、Fe3 O4 やPCMOの成膜に際しては、温度を300〜400°Cに上げた加熱成膜を行う。そのため、例えばPCMO中の酸素イオンの動きが活発化し、還元性酸化物であるFe3 O4 に酸素イオンがPCMOから拡散し、かつ、薄いFe3 O4 を通過して、Fe3 O4 とCoCrPtとの界面、またはCoCrPtと基板との界面に、酸素イオンが蓄積して気泡化する。
【0071】
CoCrPtは酸化され難く、かつ、薄いために、酸素イオンを通過させてしまう。また、透明基板15Cも酸化され難い。したがって、拡散してきた酸素イオンの逃げ道がなく、また拡散してきた酸素イオンを取り込むことができない。そのため、透明電極層14Cが透明基板15Cとの界面などに気泡を作ってしまい、その気泡が原因で膜が浮いてしまい、表面が凸凹になる。つまり、PCMOからやってきた酸素の逃げ道がなくなり、界面の近傍で気泡を作ってしまい、この気泡が膜を荒れた状態にしている。
【0072】
そこで、この問題を解決するための4つの改善案を、次に第6〜第9の実施形態として示す。
〔第6の実施形態〕
図14(A)に示すように、光変調素子1Fでは、透明電極層14Cと透明基板15Cとの間に、Al(アルミニウム)などからなる酸素吸収層16Fを設ける。酸素吸収層16Fは、拡散してきた酸素イオンによって容易に酸化され、その酸化体が透明になる非磁性の物質からなる。酸素吸収層16Fを設けることにより、逃げ場のなくなった酸素を取り込み、気泡の発生を防ぐ。
〔第7の実施形態〕
第6の実施形態では、酸素吸収層16FとしてAlを用いたので、これが酸化物となった場合に導電性がなくなる。そうすると、透明電極層14Cのみが通電に用いられることとなるが、透明電極層14Cは薄いので、耐久性の点から望ましくない。そこで、第7の実施形態では、酸素吸収層16Gを導電性のある下地層として配置した。
【0073】
第7の実施形態の光変調素子1Gでは、図14(B)に示すように、酸素吸収層16GとしてRu(ルテニウム)を用いる。Ruの酸化物は透明であるとともに導電性があるので、全体の抵抗値を下げることができ、酸素吸収層16Gを介しても通電され、透明電極層14Cの耐久性を向上させることができる。
〔第8の実施形態〕
第7の実施形態では、Ruの酸素吸収層16Gが厚すぎた場合に、Ruを酸化させるための酸素が足らなくなり、Ruが酸化しきれず、したがって透明にならない。
【0074】
そこで、第8の実施形態の光変調素子1Hでは、図14(C)に示すように、Ruの全部が酸化されて透明になるように酸素吸収層16Hを薄くする。そして、導電性を確保するために、導電性を持ち非磁性で透明な酸化体であるRuOxからなる導電性透明酸化物層17Hを設ける。導電性透明酸化物層17Hは、導電性を補助するための電極として働く。
〔第9の実施形態〕
第8の実施形態では、酸素吸収層16Hと導電性透明酸化物層17Hとの2つの層を設けたが、第9の実施形態では、図14(D)に示すように、酸化が不十分な酸化体からなる1つの導電性透明酸化物層17Jを設ける。
【0075】
導電性透明酸化物層17Jは、例えばRuOyからなり、第8の実施形態のRuOxよりも酸化が不十分である。つまり、この場合に、y<xである。導電性透明酸化物層17Jは、酸化物と金属との中間の物質のような存在である。
【0076】
なお、酸素イオンによって容易に酸化され、その酸化体が導電性を持ち、かつ透明になる物質には、Ru、Re、Ir、Os、AgPd、Mo、W、V、Nb、Cr、Cu、Zn、La、Euなどがある。これらは、酸素吸収層16F〜16H、または導電性透明酸化物層17H,17Jとして用いることが可能である。
〔第10の実施形態〕
上に述べた第1〜第9の実施形態では、磁気光学効果を用いて光変調を行っているが、第10の実施形態では、光学的な反射率を変化させることによって光変調を行う。
【0077】
すなわち、図15において、光変調素子1Kは、酸化性電極層11K、酸素供給層12K、導電性透明酸化物層18K、および透明基板15Kが、この順に設けられてなっている。酸化性電極層11K、酸素供給層12K、および導電性透明酸化物層18Kは、サンドイッチ構造体SKKを構成する。
【0078】
酸化性電極層11Kは、酸化され易い導電性膜からなる。酸化性電極層11Kは、磁性または非磁性のいずれであってもよい。具体的には、酸化性電極層11Kとして金属が用いられ、例えば、Ta、Ti、Al、Cu、Zn、Cr、W、V、Mn、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Fe、Co、Ni、またはこれらの合金などが用いられる。なお、本実施形態においては、透明基板15Kの側から光を入射させるので、酸化性電極層11Kは透明である必要はない。
【0079】
酸素供給層12Kは、酸素イオンの移動し易い酸素イオン伝導膜であり、酸素イオンO2-を発生する。酸素供給層12Kは、p型半導性であることが好ましい。酸素供給層12Kは、磁性または非磁性のいずれであってもよい。具体的には、酸素供給層12Kとして、例えば、LaSrMnO3 、LaNiMnO3 、PrCaMnO3 、Y2 O3 などが用いられる。
【0080】
導電性透明酸化物層18Kは、透明であって導電性を有する酸化物膜からなる。導電性透明酸化物層18Kは、酸化され難い電極である。導電性透明酸化物層18Kは、磁性または非磁性のいずれであってもよい。導電性透明酸化物層18Kとして、例えば、Fe3 O4 、LaSrMnO3 、LaNiMnO3 、PrCaMnO3 、RuOxなどが用いられる。
【0081】
透明基板15Kは、本実施形態においては、入射する光に対して透明であることが必要である。具体的には、透明基板15Kとして、例えば、MgO、Al2 O3 、SiO2 などが用いられる。
【0082】
各層の厚さの具体例をあげると、酸化性電極層11Kは、100〜200nm程度、酸素供給層12Kは、100〜200nm程度である。導電性透明酸化物層18Kは、20〜100nm程度である。これらは、例えばスパッタによって成膜を行う。透明基板15Kは、300〜1000μm程度である。また、酸化性電極層11Kの直径は、例えば、40μm〜400μm程度である。
【0083】
次に、光変調素子1Kの動作について説明する。
【0084】
図16(A)に示すように、酸化性電極層11Kと導電性透明酸化物層18Kとの間に制御電圧源21を接続し、酸化性電極層11Kがプラス側、導電性透明酸化物層18Kがマイナス側となるように、電圧を印加する。そうすると、酸素供給層12Kで発生した酸素イオンはプラス極である酸化性電極層11Kの界面KMに引き寄せられ、界面KMを酸化する。これにより、界面KMに酸素が偏在した状態となる。
【0085】
これにより、酸素イオンの持っている電子が取り出され、酸素イオンに由来する電子e- が発生する。
【0086】
発生した電子e- は、外部回路である制御電圧源21を介してマイナス極である導電性透明酸化物層18Kに流入する。これにより、電子e- は、導電性透明酸化物層18K、酸素供給層12K、またはこれらの界面KMBに注入される。電子e- が注入されると、その近傍において電子密度の高い状態に遷移する。その結果、物質の電子構造、例えばバンド構造などが変化し、その部分の反射率が高くなる。
【0087】
例えば、図16(A)において、導電性透明酸化物層18Kと酸素供給層12Kとの間の界面KMBが高反射率化する。反射率が高くなることによって、光の反射量が増大する。例えば、制御電圧源21による電圧をかける前と比べて、反射率が2〜10倍程度に大きくなる。
【0088】
光変調素子1Kに印加する電圧は、パルス状の電圧であっても直流であってもよい。パルス状の電圧を印加することによて、図16(A)に示した状態が維持される。つまり、不揮発性である。これを元の状態に戻すには、逆の極性の電圧を印加する。
【0089】
すなわち、図16(B)に示すように、制御電圧源21の極性を切り換えて、酸化性電極層11Kがマイナス側、導電性透明酸化物層18Kがプラス側となるように電圧を印加する。そうすると、導電性透明酸化物層18K、酸素供給層12K、または界面KMBから電子e- が引き抜かれ、これらは電子密度が小さい状態、つまり元の状態に戻る。その結果、物質の電子構造が元に戻り、反射率が小さい状態に戻る。
【0090】
引き抜かれた電子は、外部回路である制御電圧源21を通って、マイナス極である酸化性電極層11Kに戻ってくる。酸化性電極層11Kに流入した電子は、酸化性電極層11Kと酸素供給層12Kとの間の界面KMを還元する。これによって、酸化性電極層11Kおよび酸素供給層12Kは元の状態に戻る。つまり、酸化状態にあった界面KMは、電子が入ってくることにより酸素イオンの状態に戻る。
【0091】
このように、酸化性電極層11Kと導電性透明酸化物層18Kとの間に印加する電圧の極性を交互に反転することにより、導電性透明酸化物層18K、酸素供給層12K、または界面KMBの近傍における光学的な反射率が変化する。
【0092】
そうすると、透明基板15Kの側から入射した光は、界面KMBの近傍において反射するとともに、反射率に応じた強さの光となって出力される。
【0093】
なお、光変調素子1Kにおける反射率の変化の大きさは、酸化性電極層11Kと導電性透明酸化物層18Kとの間に印加される電圧の大きさおよびパルス幅の大きさに依存する。大きいプラスの電圧を印加すると、反射率が高くなる。また、プラスの電圧のパルス幅が大きいほど反射率が高くなる。
【0094】
また、光変調素子1Kにおける反射率を元に戻すには、マイナスの電圧を印加すればよい。つまり、反射率を高くさせたときとは逆極性のエネルギーを与えることによって、反射率が元に回復する。
【0095】
なお、光変調素子1Kに入射させる光は、偏光でも自然光でもよい。制御電圧源21からの電圧の大きさおよびパルス幅の大きさに応じて、反射光の強度が変化する。つまり、制御電圧源21の電圧の大きさまたはパルス幅に応じて変調された光が出力される。
【0096】
光変調素子1Kに印加する電圧として、第1の実施形態で説明したような種々の電圧を用いることができる。
【0097】
第10の実施形態の光変調素子1Kについても、電圧の印加による反射率の変化は不揮発性であるから、電圧駆動型であり、消費電力を少なくすることができる。
【0098】
また、制御電圧源21の電圧をアナログ的な多段階階調とすることにより、反射率を多段階階調に変化させることができ、多段階階調の光変調が可能である。
〔第11の実施形態〕
上に述べた第10の実施形態では、透明基板15Kの表面にサンドイッチ構造体SKKにおける導電性透明酸化物層18Kを設けたが、第11の実施形態の光変調素子1Lでは、サンドイッチ構造体SKKの積層の順序を逆にし、基板15Lの表面にサンドイッチ構造体SKLにおける酸化性電極層11Lを設ける。
【0099】
すなわち、図17において、光変調素子1Lは、導電性透明酸化物層18L、酸素供給層12L、酸化性電極層11L、および基板15Lが、この順に設けられてなっている。光は、導電性透明酸化物層18Kの側から入射し、同じ側に反射する。したがって、基板15Lは透明である必要はない。
【0100】
酸化性電極層11Lと導電性透明酸化物層18Lとの間に制御電圧源21を接続し、交番電圧VNを印加する。これによって、第10の実施形態で述べた作用により、反射率が変化し、入射した光を変調することができる。
【0101】
上に述べた第1〜第11の実施形態において、光変調素子1〜1Lにおける各層の材質、厚さ、形成方法などは、上に述べた以外の種々のものを採用することが可能である。さらに他の層を適当な位置に追加してもよい。制御電圧源21として種々の電圧源または信号源を用いることができ、電圧値、電圧波形、パルスの幅、間隔または周期などは、上に述べた以外に種々変更することが可能である。
【0102】
本実施形態には次に記載する形態も含まれる。
(付記1) (1、図1〜16)
変調する光を透過しかつ導電性を有する透明電極層と、
強磁性を有しかつ導電性を有する磁性酸化物層と、
酸化材料を含む酸素供給層と、
前記酸素供給層から供給される酸素により酸化される導電性膜からなる酸化性電極層と、
がこの順に設けられていることを特徴とする光変調素子。
(付記2) (図1〜7)
前記酸化性電極層、前記酸素供給層、および前記透明電極層は、いずれも非磁性である、
付記1記載の光変調素子。
(付記3) (2、図8〜14)
前記酸化性電極層および前記酸素供給層は、いずれも非磁性であり、
前記透明電極層は、垂直磁化性を有する、
付記1記載の光変調素子。
(付記4) (3、図8〜14)
前記磁性酸化物層は、面内磁化性を有する、
付記3記載の光変調素子。
(付記5) (図1〜5、図8〜10)
透明基板を有し、前記透明電極層が前記透明基板の表面に配置されている、
付記1ないし4のいずれに記載の光変調素子。
(付記6) (図14)
前記透明電極層と前記透明基板との間に、酸素吸収層が設けられている、
付記5記載の光変調素子。
(付記7) (4、図14)
前記酸素吸収層として導電性を有する材料が用いられている、
付記6記載の光変調素子。
(付記8) (図14)
前記酸素吸収層の導電性を補助するために、導電性を有し非磁性で透明な酸化体からなる導電性透明酸化物層が設けられている、
付記7記載の光変調素子。
(付記9) (図14)
前記透明電極層と前記透明基板との間に、導電性を有し非磁性であって酸化が不十分な酸化体からなる導電性透明酸化物層が設けられている、
付記5記載の光変調素子。
(付記10) (5、図15〜17)
変調する光を透過しかつ導電性を有する酸化物からなる導電性透明酸化物層と、
酸化材料を含む酸素供給層と、
前記酸素供給層から供給される酸素により酸化される導電性膜からなる酸化性電極層と、
がこの順に設けられていることを特徴とする光変調素子。
(付記11) (図15〜16)
透明基板を有し、前記導電性透明酸化物層が前記透明基板の表面に配置されている、
付記10記載の光変調素子。
(付記12) (6、図1〜14)
付記1記載の光変調素子を用い、
前記酸化性電極層と前記透明電極層との間に、正負が交互に反転する交番電圧を印加して前記磁性酸化物層における飽和磁化を変化させ、前記透明電極層の側から入射した偏光に対し磁気光学効果を与えて偏光面を回転させる、
ことを特徴とする光変調方法。
(付記13) (7、図8〜14)
付記3または4記載の光変調素子を用い、
前記酸化性電極層と前記透明電極層との間に、正負が交互に反転する交番電圧を印加して前記磁性酸化物層における飽和磁化を変化させ、これよって前記透明電極層における垂直磁化性を変化させ、前記透明電極層の側から入射した偏光に対し極カー効果を与えて偏光面を回転させる、
ことを特徴とする光変調方法。
(付記14) (8、図15〜17)
付記10または11記載の光変調素子を用い、
前記酸化性電極層と前記導電性透明酸化物層との間に、正負が交互に反転する交番電圧を印加することにより、前記導電性透明酸化物層の側から入射した偏光に対する反射量を変化させる、
ことを特徴とする光変調方法。
(付記15) (図1〜14)
磁性酸化物層と酸素供給層との積層体を2つの電極で挟んだサンドイッチ構造とし、前記2つの電極間に交番電圧を印加して前記磁性酸化物層の飽和磁化を変化させ、入射した偏光に対し磁気光学効果を与えて偏光面を回転させる、
ことを特徴とする光変調方法。
(付記16) (9、図1〜14)
磁性酸化物層と酸素供給層とを有する積層体と、
前記積層体を挟む2つの電極と、
前記2つの電極間に交番電圧を印加する電圧源と、
を有することを特徴とする光変調装置。
【符号の説明】
【0103】
1,1B〜1L 光変調素子
11 酸化性電極層
12 酸素供給層
13 磁性酸化物層
14 透明電極層
15 透明基板
16 酸素吸収層
17 導電性透明酸化物層
18 導電性透明酸化物層
21 制御電圧源
22 偏光子
23 偏光子
HS 光変調装置
KK 積層体
SK サンドイッチ構造体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調する光を透過しかつ導電性を有する透明電極層と、
強磁性を有しかつ導電性を有する磁性酸化物層と、
酸化材料を含む酸素供給層と、
前記酸素供給層から供給される酸素により酸化される導電性膜からなる酸化性電極層と、
がこの順に設けられていることを特徴とする光変調素子。
【請求項2】
前記酸化性電極層および前記酸素供給層は、いずれも非磁性であり、
前記透明電極層は、垂直磁化性を有する、
請求項1記載の光変調素子。
【請求項3】
前記磁性酸化物層は、面内磁化性を有する、
請求項2記載の光変調素子。
【請求項4】
前記透明電極層の上に、導電性を有する材料からなる酸素吸収層が設けられている、
請求項1ないし3のいずれかに記載の光変調素子。
【請求項5】
変調する光を透過しかつ導電性を有する酸化物からなる導電性透明酸化物層と、
酸化材料を含む酸素供給層と、
前記酸素供給層から供給される酸素により酸化される導電性膜からなる酸化性電極層と、
がこの順に設けられていることを特徴とする光変調素子。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれに記載の光変調素子を用い、
前記酸化性電極層と前記透明電極層との間に、正負が交互に反転する交番電圧を印加して前記磁性酸化物層における飽和磁化を変化させ、前記透明電極層の側から入射した偏光に対し磁気光学効果を与えて偏光面を回転させる、
ことを特徴とする光変調方法。
【請求項7】
請求項2または3記載の光変調素子を用い、
前記酸化性電極層と前記透明電極層との間に、正負が交互に反転する交番電圧を印加して前記磁性酸化物層における飽和磁化を変化させ、これよって前記透明電極層における垂直磁化性を変化させ、前記透明電極層の側から入射した偏光に対し極カー効果を与えて偏光面を回転させる、
ことを特徴とする光変調方法。
【請求項8】
請求項5記載の光変調素子を用い、
前記酸化性電極層と前記導電性透明酸化物層との間に、正負が交互に反転する交番電圧を印加することにより、前記導電性透明酸化物層の側から入射した光に対する反射量を変化させる、
ことを特徴とする光変調方法。
【請求項9】
磁性酸化物層と酸素供給層とを有する積層体と、
前記積層体を挟む2つの電極と、
前記2つの電極間に交番電圧を印加する電圧源と、
を有することを特徴とする光変調装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−123303(P2011−123303A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280919(P2009−280919)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】