説明

光多重反射板

【課題】 色度むらのほとんどない光多重反射板を提供する。
【解決手段】 波長370nmの光吸収率が0.05以下である紫外線吸収剤を含有した熱可塑性樹脂からなる光多重反射板を提供する。該光多重反射板は、耐光安定剤としてヒンダードアミン化合物を含有していることが好ましい。また、前記熱可塑性樹脂としては脂環式構造含有重合体であることが好ましい。さらに、本発明の好適な光多重反射板としては導光板及び光拡散板が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光多重反射板に関する。さらに詳しくは、本発明は、色度むらが少ない光多重反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピューター、薄型テレビジョン、カーナビゲーションシステム、携帯電話などの表示画面に、平面表示装置が広く用いられている。平面表示装置としては、液晶表示装置やEL表示装置などが挙げられる。液晶表示装置の場合、液晶自体は発光体ではないためバックライトやフロントライトのような照明装置が必要となり、該照明装置には、側端面部に設けられた冷陰極放電管などの光源からの光を面状の光に変換する導光板や、液晶表示装置の背部に配置された光源からの光を輝度の均一な面状の光に変換するための光拡散板などの光多重反射板が用いられる。
そして、このような導光板及び光拡散板などの光多重反射板は熱可塑性樹脂で製造されるが、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、滑剤、可塑剤及び帯電防止剤などの添加剤を含有している場合が多い。
特許文献1には、そのような熱可塑性樹脂組成物を用いた導光板が開示してある。
【0003】
ところで、光多重反射板が導光板である場合、光入射面から入った光は導光板の光反射面と光出射面間で何回も反射しながら出射していくため一般に平均光路長が長い。
また、光多重反射板が光拡散板である場合も、液晶表示装置の背部に配置された光源からの光が、光拡散板の光入射面、光出射面及び光拡散剤とリフレクタ間で何回も反射されてから出射していくため、同様に平均光路長が長くなっている。このような光多重反射板は平均光路長の長いが故に、色度むらが生じやすく、液晶に表示される画像の色が本来の色とズレてしまう問題が発生し、特に光多重反射板が導光板の場合には光入射面から近い部分と光入射面から遠い部分の色度むらが大きくなりやすい問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2000−89032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、色度むらのほとんどない光多重反射板、さらに詳しくは平均光路長が長い場合であっても色度むらのほとんどない光多重反射板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂の添加剤の中で紫外線吸収剤が色度ムラに強く影響していること、紫外線吸収剤の特性の中でも波長370nmの光吸収率が色度むらに強く影響しており、波長370nmの光吸収率が特定の数値以下の紫外線吸収剤を用いることで、光多重反射板の色度むら、とりわけ平均光路長が長い場合の色度むらが激減することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)波長370nmの光吸収率が0.05以下である紫外線吸収剤を含有した熱可塑性樹脂からなる光多重反射板、
(2)更に耐候安定剤としてヒンダードアミン化合物を含有する第1項記載の光多重反射板、
(3)熱可塑性樹脂が脂環式構造含有重合体である第1項または第2項記載の光多重反射板、
(4)導光板である第1項ないし第3項のいずれかに記載の光多重反射板、
(5)光拡散板である第1項ないし第3項のいずれかに記載の光多重反射板、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、色度むらのほとんどない光多重反射板が提供される。本発明の光多重反射板を用いた場合には、平面表示装置に表示される画像の色と本来の色とのズレが防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の光多重反射板は、波長370nmの光吸収率が0.05以下である紫外線吸収剤を含有した熱可塑性樹脂からなることを特徴とする。本発明において、光吸収率とは、紫外線吸収剤を10mg/L濃度のクロロホルム溶液とし、長さ10mmの光路セルを用い、波長370nmで測定した場合の光吸収率を意味する。
【0010】
波長370nmの光吸収率が0.05以下である紫外線吸収剤としては、N−2−エチルフェニル−N'−2−エトキシ−5−t−フェニルシュウ酸ジアミド及びN−2−エチルフェニル−N'−2−エトキシフェニルシュウ酸アミドなどの蓚酸アニリド系紫外線吸収剤;エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート及び1,3−ビス−[2’−シアノ−3',3−ジフェニルアクリロイルオキシ]−2,2−ビス{[2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイルオキシ]メチル}プロパンなどのシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2−(p−メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、ビス[2−(p−オキシベンジリデン)マロン酸ジメチル]メタン及びフェニル−1,4−ビス(エチル−2−エトキシカルボニル−1−プロペノエート)などのマロン酸エステル系紫外線吸収剤;などが挙げられるが、これらの中でも蓚酸アニリド系紫外線吸収剤またはシアノアクリレート系紫外線吸収剤が好ましく、N−2−エチルフェニル−N'−2−エトキシフェニルシュウ酸アミドまたはエチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートが特に好ましい。
上記の紫外線吸収剤を用いることで、色度むらが改善される。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.001〜2重量部であることが好ましく、0.005〜0.5重量部であることがより好ましく、0.01〜0.2重量部であることが特に好ましい。添加量が少なすぎる場合には紫外線による劣化を防止する機能が十分でなく、多すぎる場合には紫外線吸収剤そのものが着色するために光多重反射板が変色してしまう。
また紫外線吸収剤の融点は80℃〜180℃が好ましく、100℃〜160℃がより好ましく、120℃〜160℃が特に好ましい。融点が低い場合には熱可塑性樹脂との混合時に紫外線吸収剤が早く融解しすぎ、高すぎる場合には融解が遅すぎ、いずれの場合にも熱可塑性樹脂との均一分散を得ることが難しくなる。
【0011】
本発明に用いる熱可塑性樹脂に特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、プロピレン−エチレン共重合体、ポリスチレン、テレフタル酸−エチレングリコール−シクロヘキサンジメタノール共重合体、ポリカーボネート、アクリル樹脂(メタクリル樹脂を含む)及び脂環式構造を有する重合体樹脂などを挙げることができるが、透明性の観点からアクリル樹脂または脂環式構造を有する重合体樹脂が好ましく、脂環式構造を有する重合体樹脂が特に好ましい。脂環式構造含有重合体は成形時における流動性が良く、高耐熱性、低吸湿性、そりが少ないなどの優れた特徴を有している。
【0012】
脂環式構造を有する重合体樹脂とは、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有するものであり、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械的強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械的強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式構造を有する重合体樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が過度に少ないと、耐熱性が低下し好ましくない。なお、脂環式構造を有する重合体樹脂中における脂環式構造を有する繰り返し単位以外の繰り返し単位は、使用目的に応じて適宜選択される。
脂環式構造を有する重合体樹脂の具体例としては、例えば、(1)ノルボルネン系モノマーの開環重合体及びノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、並びにこれらの水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体及びノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などのノルボルネン系重合体;(2)単環の環状オレフィン系重合体及びその水素添加物;(3)環状共役ジエン系重合体及びその水素添加物;(4)ビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体及びビニル脂環式炭化水素系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの共重合体、並びにこれらの水素添加物、ビニル芳香族系モノマーの重合体の二重結合部分(芳香環も含む)の水素添加物及びビニル芳香族モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの共重合体の二重結合部分(芳香環も含む)の水素添加物などのビニル脂環式炭化水素系重合体;などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体及びビニル脂環式炭化水素系重合体が好ましく、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物、ノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体水素添加物、ビニル芳香族系モノマーの重合体の二重結合部分(芳香環も含む)の水素添加物及びビニル芳香族モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの共重合体の二重結合部分(芳香環も含む)の水素添加物がさらに好ましい。
【0013】
本発明の光多重反射板は、耐光性向上の観点から耐光安定剤を含有することが好ましい。耐光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系耐光安定剤(HALS)、ベンゾエート系耐光安定剤などを挙げることができる。ヒンダードアミン系耐光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートなどを挙げることができる。ベンゾエート系耐光安定剤としては、例えば、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどを挙げることができる。これらの耐光安定剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、ヒンダードアミン系耐光安定剤を好適に用いることができ、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートを特に好適に用いることができる。耐光安定剤の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、0.02〜1重量部であることがより好ましく、0.05〜0.6重量部であることが特に好ましい。
【0014】
本発明の光多重反射板は、酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤などを挙げることができる。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート及びテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどを挙げることができる。リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト及びジフェニルイソデシルホスファイトなどを挙げることができる。イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネートなどを挙げることができる。これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、フェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換酸化防止剤を好適に用いることができる。酸化防止剤の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、0.02〜1重量部であることがより好ましく、0.05〜0.5重量部であることがさらに好ましい。
【0015】
本発明においては、必要に応じて、さらに他の添加剤を添加することができる。他の添加剤としては、例えば、熱安定剤及び近赤外線吸収剤などの安定剤;滑剤及び可塑剤などの樹脂改質剤;染料及び顔料などの着色剤;帯電防止剤などを挙げることができる。なお、上記樹脂組成物は、本発明の光多重反射板に用いられる以外にも、EL表示装置および液晶表示装置のレンズシートなどにも使用することができる。
【0016】
本発明において光多重反射板とは、入射した光が出射するまでの平均反射回数が、2回以上、好ましくは10回以上、特に好ましくは50回以上のものをいう。
本発明の光多重反射板は、導光板または光拡散板であることが好ましく、平均光路長が特に長いことから導光板が特に好ましい。
【0017】
本発明の光多重反射板が導光板である場合、その形状は楔型が好ましく、その大きさは、使用する液晶の画面サイズに応じて選択される。導光板は、短手方向の長さが、好ましくは10mm以上、より好ましくは50mm以上、さらに好ましくは100mm以上、特に好ましくは180mm以上である。大型の導光板ほど平均光路長が長いために色度むらが増大しやすく、特に光入射面側に近い部分からの出射光と光入射面と反対側の面からの出射光の間の色度むらが激しくなりやすいため、本発明の効果が顕著に現れる。
【0018】
本発明の導光板は、側面から取り入れた光源からの光を、液晶表示素子に向けて出射させるための光反射機能を有する微細凹凸形状を、少なくとも一つの面上に有することが好ましい。微細凹凸形状を有する少なくとも一つの面は、液晶表示素子に対面する面の反対面であることが好ましい。微細凹凸形状は、光反射機能を有する形状であれば特に制限はないが、側面から取り入れた光源からの光を液晶表示素子に向けて反射する面を複数有する形状であることが好ましい。このような形状としては、例えば、複数の平行するV型溝からなる形状、連続プリズム形状、ホログラフィー面などを挙げることができる。V型溝やプリズムのピッチは、10〜500μmであることが好ましく、20〜300μmであることがより好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。V型溝やプリズムの幅は、1〜250μmであることが好ましく、2〜100μmであることがより好ましく、5〜50μmであることがさらに好ましい。V型溝の深さ又はプリズムの高さは、1〜250μmであることが好ましく、2〜100μmであることがより好ましく、5〜50μmであることがさらに好ましい。なお、本発明の導光板は、少なくとも一つの面に、光反射防止層を有することもできる。
【0019】
本発明の導光板は、バックライト導光板、フロントライト導光板のいずれとしても用いることができるが、大型のものが要求されるバックライト導光板として好適に用いることができる。なお、本発明の導光板は、特開平11−288611号公報に記載されている広発光エリアを確保したタンデム型面光源装置の導光板ユニットとしても使用することができる。
【0020】
本発明の光拡散板は、透明樹脂を成形して得られる板状成形体であって、光入射面と光出射面をそれぞれ一つ以上有する。また、光拡散板の内部には、光を散乱する機能を有する、光反射物質及び/又は空気の層(泡)などが分散しており、光入射面から入射した光源からの光を乱反射させながら光出射面に導く。光反射物質としては、有機微粒子や無機微粒子などが挙げられ、ポリスチレン粒子やシリコーン粒子などの有機微粒子や、シリカ、アルミナ、及びチタニアなどの無機微粒子などが好ましい。また、導光板同様に、光入射面には、波長350nm以下の波長の光線を吸収する金属酸化物層を設けても構わない。本発明の光拡散板は、対角線の長さが好ましくは500mm以上、特に好ましくは600mm以上である。大型の光拡散板ほど平均光路長が長いために色度むらが発生しやすく、本発明の効果が顕著に現れる。
【0021】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0022】
なお、色度むらの測定は以下の方法で行った。
[色度むらの測定方法]
(a)導光板の場合
導光板の光反射面に反射シート[東レ(株)製、E60L]を積層し、光出射面に下向きプリズムシート[三菱レイヨン(株)、D117TF]と拡散シート[(株)ツジデン、D117TF]を積層し、光入射面に冷陰極蛍光ランプ[ハリソン東芝ライティング(株)、MBVM16J]を取り付け、冷陰極蛍光ランプを内面が白色の反射板で覆ってバックライトを作製した。
輝度計(ミノルタ(株)製、型式CA-1500W)を用い、導光板の光入射面の端から9.2mmの位置で、該光入射面と直交する両側面から12.2mm離れた2点と光入射面の中心の1点を合わせた計3点の測定点の平均色度y1、及び、該測定点に対応する光入射面と反対側の端から9.2mmに位置する測定点3点の平均色度y2を測定し、色度むらΔY=|(y1の平均値)-(y2の平均値)|とした。
(b)光拡散板の場合
30型液晶テレビジョン(シャープ(株)製、LC−30AD1)の液晶セル、光学シート及び光拡散板を取り外し、本発明の光拡散板と光学シートを取り付け、輝度計(ミノルタ(株)製、型式CA-1500W)を用い、液晶テレビジョンの縦横をそれぞれ5等分した25点で色度を測定し、その最大値Ymaxと最小値Yminの差を色度むらΔY=Ymax−Yminとした。
【0023】
[製造例1](ノルボルネン系重合体の製造)
脱水したシクロヘキサン500部、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部、及びトリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で十分に乾燥し、窒素置換したステンレス製耐圧容器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン、以下、「DCP」と略記する。)170部と、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン(エチリデンテトラシクロドデセン、以下、「ETD」と略記する。)30部と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)40部とを、2時間かけて連続的に添加し重合した。重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。
次いで、得られた開環重合体を含有する反応溶液100部に対して、シクロヘキサン35部を加え、さらに水素添加触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温した後、4時間反応させ、DCP/ETD開環重合体水素添加物を20%含有する反応溶液を得た。瀘過により水素添加触媒を除去した後、前記水素添加物100部にあたり0.1部のフェノール系酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を、得られた溶液に添加して溶解させた。次いで、円筒型濃縮乾燥器[日立製作所製]を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去しつつ水素添加物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化してペレットを回収した。この開環重合体水素添加物の、重量平均分子量(Mw)は31,000、水素添加率は99.9%、Tgは100℃であった。
【0024】
[実施例1]
熱可塑性樹脂として、製造例1で得られたノルボルネン系重合体100重量部に、耐光安定剤としてビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート0.5重量部、紫外線吸収剤としてN−2−エチルフエニル−N'−2−エトキシフェニルシュウ酸アミド0.05重量部を混合し、二軸混練機で混練し、ストランドをストランドカッターで切断してペレット状の成形材料を得た。
得られた成形材料を、V字状溝が予め配設された金型を用いて射出成形することにより、導光板を作製した。射出成形の成形条件は、東芝機械株式会社製の製品番号IS450の射出成形機を用い、金型温度80℃、シリンダー温度270℃、ノズル温度260℃、射出圧1200kgf/cm、保圧800kgf/cm、射出速度100cm/sとした。得られた導光板は、それぞれ、一端側の厚みが2mm、末端側の厚みが0.5mm、一端側から末端側までの長さが190mm、直線状光源の軸方向に沿った長さが250mmであり、一端側から末端側へ遠ざかる方向(直線状光源の軸芯と略垂直方向)につれて厚みが漸次薄くなるようなくさび型であった。
得られた導光板の色度むらを測定したところ、3.5/1000であった。
【0025】
[実施例2]
シリンダー温度290℃及びノズル温度280℃とした以外は実施例1と同様に実験を行い導光板を製造した。得られた導光板の色度むらを測定したところ、4.0/1000と良好であった。
【0026】
[実施例3]
紫外線吸収剤としてエチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にして実験を行った。
得られた導光板の色度むらを測定したところ、3.5/1000と良好であった。
【0027】
[実施例4]
シリンダー温度290℃及びノズル温度280℃とした以外は実施例3と同様に実験を行い導光板を製造した。得られた導光板の色度むらを測定したところ、5.0/1000と良好であった。
【0028】
[実施例5]
熱可塑性樹脂として、製造例1で得られたノルボルネン系重合体100重量部に、耐光安定剤としてビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート0.5重量部、紫外線吸収剤としてN−2−エチルフェニル−N'−2−エトキシフェニルシュウ酸アミド0.05重量部、光拡散材トスパール120(ジーイー東芝シリコーン(株)製)0.8重量部を混合し、二軸混練機で混練し、ストランドをストランドカッターで切断してペレット状の成形材料を得た。
得られた成形材料を、光入射面となる面に8個のピンポイントゲートを有する金型を用いて、縦460mm、横612mm、対角線の長さ766mm、厚さ2.0mmの30インチ型光拡散板を、射出成形により製造した。射出成形の成形条件は、東芝機械株式会社製の製品番号IS450の射出成形機を用い、金型温度85℃、シリンダー温度275℃、ノズル温度260℃、射出圧1200kgf/cm、保圧800kgf/cm、射出速度100cm/sとした。
得られた光拡散板の色度むらを測定したところ、4.5/1000であった。
【0029】
[実施例6]
シリンダー温度295℃及びノズル温度285℃とした以外は実施例5と同様に実験を行い光拡散板を製造した。得られた光拡散板の色度むらを測定したところ、5.0/1000と良好であった。
【0030】
[比較例1]
紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを用い、シリンダー温度290℃及びノズル温度280℃とした以外は、実施例1と同様にして実験を行った。得られた導光板の色度むらを測定したところ、8.0/1000であった。
【0031】
[比較例2]
紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを用いた以外は、実施例5と同様にして実験を行った。得られた光拡散板の色度むらを測定したところ、6.5/1000であった。
【0032】
[比較例3]
シリンダー温度295℃及びノズル温度285℃とした以外は比較例2と同様にして実験を行った。得られた光拡散板の色度むらを測定したところ、9.0/1000と更に悪化していた。
【0033】
紫外線吸収剤として蓚酸アニリド系のN−2−エチルフェニル−N'−2−エトキシフェニルシュウ酸アミドを用いた実施例1、2、5及び6、紫外線吸収剤としてシアノアクリレート系のエチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートを用いた実施例3及び4は、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを用いた比較例1、2、及び3に比べて顕著な色度むら改善効果が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長370nmにおける光吸収率が0.05以下である紫外線吸収剤を含有した熱可塑性樹脂からなる光多重反射板。
【請求項2】
更に耐光安定剤としてヒンダードアミン化合物を含有する請求項1記載の光多重反射板。
【請求項3】
熱可塑性樹脂が脂環式構造含有重合体である請求項1または2記載の光多重反射板。
【請求項4】
導光板である請求項1ないし3のいずれかに記載の光多重反射板。
【請求項5】
光拡散板である請求項1ないし3のいずれかに記載の光多重反射板。

【公開番号】特開2006−10877(P2006−10877A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185599(P2004−185599)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】