光多重装置および光ネットワークシステム
【課題】情報を高密度に安定して多重伝送する。
【解決手段】パイロット信号抽出部21は、伝送路2を伝搬している搬送光EC(j-1)に多重されているパイロット信号を抽出する。制御光生成部22は、伝送路2で伝送するデータ信号とパイロット信号抽出部21で抽出されたパイロット信号とに基づいて光サブキャリア変調信号ES(j)を生成する。光合波器23は、伝送路2中の非線形光学媒質24において、伝送路2を伝搬している搬送光EC(j-1)にデータ信号を多重するために、制御光生成部22で生成された光サブキャリア変調信号ES(j)を搬送光EC(j-1)に合波する。
【解決手段】パイロット信号抽出部21は、伝送路2を伝搬している搬送光EC(j-1)に多重されているパイロット信号を抽出する。制御光生成部22は、伝送路2で伝送するデータ信号とパイロット信号抽出部21で抽出されたパイロット信号とに基づいて光サブキャリア変調信号ES(j)を生成する。光合波器23は、伝送路2中の非線形光学媒質24において、伝送路2を伝搬している搬送光EC(j-1)にデータ信号を多重するために、制御光生成部22で生成された光サブキャリア変調信号ES(j)を搬送光EC(j-1)に合波する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、搬送光に情報を多重する光多重装置および光ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報を光多重伝送する技術として、WDM(Wavelength Division Multiplexing)がある。WDMは、異なる波長の光信号を多重化し、1本の光ファイバで複数の情報を伝送することができる。
【0003】
将来の光ネットワークは、例えば、従来の光通信システムをベースとしつつ、中継光ノード等、端局装置から離れた地点に置かれた装置において、信号光の分岐挿入やスイッチング等の処理を行う必要がある。その際、できるだけ光信号と電気信号との間で変換をしないで情報を伝搬・処理していくことが、エネルギー効率の観点から有効である。
【0004】
しかし、現状の中継光ノード等においては、端局装置のように光−電気変換を用いて信号処理を行っており、例えば、伝送されてきた信号光をいったん電気信号に変換し、これを電気的に処理した後、再び光信号に変換している。このため、装置構成は複雑となり、また、光−電気変換のために大きな電力を必要とする。
【0005】
ところで、光ネットワークでは、各所においてリアルタイムに各種情報をモニタし、その情報を基に、有効なネットワーク制御を行っている。将来の光ネットワークにおいては、この情報の情報量は増大し、省エネルギーの光ネットワークを実現することが有効となる。また、より柔軟な光ネットワークを実現するためには、光ノードに限らず、任意の地点において情報をネットワークに挿入できる機能が有効となる。
【0006】
しかし、現状では、情報の挿入は、光ノード装置や端局装置において行われており、特にモニタ情報は、信号光を光−電気変換して信号光のヘッダ部に書き込むか、または、専用の光波を用いるなどして伝搬されている。
【0007】
なお、従来、送信局と、受信局との間に、光伝送路を介して敷設される中継局に、送信局からの入力信号光および励起光を非線形光学媒質に供給する信号光/励起光供給手段と、非線形光学媒質に供給された入力信号光および励起光により発生した出力信号光および位相共役光を抽出する信号光/位相共役光抽出手段とを有する位相共役光発生装置と、励起光を中継局固有の監視データにより変調する変調手段を備え、変調された監視データを含む位相共役光を受信局へ送信することを特徴とする位相共役光を用いた中継局が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3436310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、WDMにおいて、さらなる広帯域の情報伝送を実現するために、搬送光の数を増やすよう波長間隔を狭くすると、各搬送光の波長の揺れによって、例えば、隣り合う搬送光の波長が重なってしまい、情報伝送が不安定になるという問題点があった。
【0010】
本件はこのような点に鑑みてなされたものであり、情報を高密度に安定して多重伝送することができる光多重装置および光ネットワークシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、光多重装置が提供される。この光多重装置は、伝送路を伝搬している光に多重されているパイロット信号を抽出する抽出部と、前記伝送路で伝送するデータ信号と前記抽出部で抽出された前記パイロット信号とに基づいて光サブキャリア変調信号を生成する生成部と、前記伝送路中の非線形光学媒質において前記伝送路を伝搬している搬送光に前記データ信号を多重するために、前記生成部で生成された前記光サブキャリア変調信号を前記搬送光に合波する合波器と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
開示の装置およびシステムによれば、情報を高密度に安定して多重伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係る光多重装置を用いた光ネットワークシステムを示した図である。
【図2】光ネットワークシステムの光スペクトルを示した図である。
【図3】光多重装置のブロック図である。
【図4】光多重装置でのスペクトルを説明する図である。
【図5】パイロット信号抽出部のブロック図である。
【図6】制御光生成部のブロック図である。
【図7】WDMにおける搬送光の周波数揺らぎの影響を説明する図である。
【図8】図3の光多重装置における搬送光の周波数揺らぎの影響を説明する図である。
【図9】ローカル発振器を用いた場合における周波数揺らぎの影響を説明する図である。
【図10】パイロット信号の周波数揺らぎの影響を説明する図である。
【図11】ローカル発振器を用いた場合における受信機の位相揺らぎの影響を説明する図である。
【図12】図3の光伝送装置における受信機の位相揺らぎの影響を説明する図である。
【図13】第2の実施の形態に係る制御光生成部のブロック図である。
【図14】光周波数逓倍シフタのブロック図である。
【図15】第3の実施の形態に係る制御光生成部のブロック図である。
【図16】第4の実施の形態に係る光多重装置のブロック図である。
【図17】信号のスペクトルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る光多重装置を用いた光ネットワークシステムを示した図である。図1に示すように、光ネットワークシステムは、光多重装置1a〜1n、伝送路2、および受信機3を有している。光多重装置1a〜1nは、伝送路2中に設けられている。伝送路2は、例えば、光ファイバである。
【0015】
伝送路2には、搬送光が伝搬している。搬送光は、CW(Continuous Wave)光である。または、搬送光は、ベースバンド変調された信号光である。ベースバンド変調された信号光のビットレートは、以下で説明する光サブキャリア変調信号の周波数(光強度の周波数)に比べ十分低いものとする。また、ベースバンド変調された信号光のビットレートは、以下で説明するパイロット信号の周波数(光強度の周波数)に比べ十分低いものとする。
【0016】
光多重装置1a〜1nには、例えば、図示しない装置から、搬送光によって伝送するデータ信号が送られてくる。データ信号は、例えば、電気信号で送られてくる。
光多重装置1a〜1nのそれぞれは、伝送路2で伝送するデータ信号と、伝送路2を伝搬しているパイロット信号とに基づいて、異なる周波数の光サブキャリア変調信号を生成する。光多重装置1a〜1nのそれぞれは、生成した光サブキャリア変調信号で、伝送路2を伝搬している搬送光を変調し、搬送光にデータ信号を周波数多重する。
【0017】
受信機3は、伝送路2を伝搬する搬送光を受信し、復調処理を行って、光多重装置1a〜1nから送信されるデータ信号を受信する。データ信号は、例えば、光直接検波、ヘテロダイン検波、またはコヒーレント検波などによって受信することができる。
【0018】
図2は、光ネットワークシステムの光スペクトルを示した図である。図2において、図1と同じものには、同じ符号が付してある。伝送路2には、光周波数νCの搬送光が伝搬している。
【0019】
図2に示すスペクトル11a〜11dは、伝送路2を伝搬している搬送光のスペクトルを示している。スペクトル11a〜11dの横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
【0020】
図2に示すスペクトル12a〜12cは、搬送光に合波される光サブキャリア変調信号の光強度の周波数を示している。スペクトル12a〜12cの横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
【0021】
スペクトル11a〜11dに示すνCは、伝送路2を伝搬する搬送光の光周波数を示している。スペクトル11a〜11dに示すfPは、伝送路2を伝搬するパイロット信号の周波数を示す。パイロット信号は、スペクトル11a〜11dに示すように、搬送光に多重され、伝送路2を伝搬する。なお、パイロット信号は、搬送光とは別の光に多重して、伝送路2を伝送するようにしてもよい。
【0022】
光多重装置1a〜1nは、搬送光に多重されているパイロット信号を抽出する。光多重装置1a〜1nは、抽出したパイロット信号と、伝送路2で伝送するデータ信号とに基づいて、異なる周波数の光サブキャリア変調信号を生成する。例えば、光多重装置1a〜1nは、スペクトル12a〜12cに示すように、周波数f1,f2,fNの光サブキャリア変調信号を生成する。
【0023】
光多重装置1a〜1nは、生成した光サブキャリア変調信号を搬送光に合波する。以下で述べるが、光サブキャリア変調信号が合波された搬送光は、伝送路2中の非線形光学媒質によって、光サブキャリア変調信号により光相互変調される。これにより、周波数f1,f2,fNの光サブキャリア変調信号は、スペクトル11a〜11dに示すように、光周波数νCの搬送光に周波数多重される。
【0024】
図3は、光多重装置のブロック図である。図3に示す光多重装置は、図2に示す光多重装置1a〜1nの左からj番目の光多重装置を示している。図3に示すように、光多重装置は、パイロット信号抽出部21、制御光生成部22、光合波器23、および非線形光学媒質24を有している。j番目以外の光多重装置1a〜1nも図3と同様のブロックを有している。
【0025】
パイロット信号抽出部21には、伝送路2を伝搬している光周波数νCの搬送光EC(j-1)が入力される。パイロット信号抽出部21は、搬送光EC(j-1)に多重されているパイロット信号を抽出し、その周波数fPを抽出する。
【0026】
制御光生成部22には、伝送路2で伝送するデータ信号と、パイロット信号抽出部21で抽出されたパイロット信号の周波数fPとが入力される。制御光生成部22は、搬送光EC(j-1)にデータ信号を多重するための制御光(光サブキャリア変調信号ES(j))を生成する。制御光生成部22は、データ信号と、パイロット信号の周波数fPとに基づいて、周波数fjの光サブキャリア変調信号ES(j)を生成する。周波数fjは、次の式(1)の関係がある。
【0027】
fj=jfP …(1)
これにより、例えば、図2の光多重装置1aからは、周波数fPの光サブキャリア変調信号ES1が出力され、光多重装置1bからは、周波数2fPの光サブキャリア変調信号ES2が出力される。また、光多重装置1nからは、周波数nfPの光サブキャリア変調信号ESnが出力される。すなわち、光多重装置1a〜1nのそれぞれからは、異なる周波数の光サブキャリア変調信号が出力される。
【0028】
光合波器23は、伝送路2中の非線形光学媒質において、伝送路2を伝搬している搬送光に光サブキャリア変調信号を多重するため、制御光生成部22で生成された光サブキャリア変調信号を搬送光に合波する。
【0029】
非線形光学媒質24には、光サブキャリア変調信号が合波された搬送光が入力される。非線形光学媒質24に入力された搬送光は、非線形光学媒質24によって、光サブキャリア変調信号により光相互変調され、光サブキャリア変調信号が多重される。
【0030】
非線形光学媒質による光相互変調としては、相互位相変調による光位相変調や光パラメトリック効果による光強度変調などを用いることができる。非線形光学媒質としては、例えば、光ファイバ、周期分極反転ニオブ酸リチウム、半導体光増幅器、シリコン細線導波路等の高屈折率差光導波路を用いることができる。なお、伝送路2の光ファイバを非線形光学媒質24として利用し、搬送光EC(j-1)を光サブキャリア変調信号により光相互変調してもよい。
【0031】
図4は、光多重装置でのスペクトルを説明する図である。図4において、図3と同じものには同じ符号が付してある。
図4に示すスペクトル31は、伝送路2を伝搬している搬送光EC(j-1)のスペクトルを示している。スペクトル31の横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。スペクトル31に示すように、搬送光EC(j-1)には、周波数fPのパイロット信号が多重されている。
【0032】
スペクトル32は、制御光生成部22によって生成される光サブキャリア変調信号のスペクトルを示している。スペクトル32の横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。制御光生成部22は、周波数fPのパイロット信号とデータ信号とに基づいて、スペクトル32に示すように、周波数jfPの光サブキャリア変調信号を生成する。
【0033】
スペクトル33は、非線形光学媒質24から出力される搬送光EC(j)のスペクトルを示している。スペクトル33の横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。スペクトル33に示すように、搬送光EC(j)には、光周波数νCから±fj(fj=jfP)のところに、光サブキャリア変調信号が多重されている。
【0034】
図5は、パイロット信号抽出部のブロック図である。図5に示すように、パイロット信号抽出部21は、光分波器41、フォトディテクタ42、ローパスフィルタ43、および位相同期回路44を有している。
【0035】
光分波器41は、伝送路2から搬送光を分波する。分波した搬送光は、フォトディテクタ42に出力される。
フォトディテクタ42は、光分波器41から出力される光を電気信号に変換する。
【0036】
ローパスフィルタ43は、フォトディテクタ42から出力される電気信号の低域周波数成分を通過させる。ローパスフィルタ43の遮断周波数は、パイロット信号の周波数fPである。すなわち、ローパスフィルタ43は、パイロット信号を抽出する。なお、フォトディテクタ42の帯域が狭い場合、ローパスフィルタ43は不要である。
【0037】
位相同期回路44は、ローパスフィルタ43から出力されるパイロット信号の周波数fPを抽出する。位相同期回路44は、例えば、PLL(Phase Locked Loop)である。
図6は、制御光生成部のブロック図である。図6に示すように、制御光生成部22は、逓倍器51、乗算器52、および光変調器53を有している。
【0038】
逓倍器51は、パイロット信号抽出部21から出力される周波数fPの信号の周波数を逓倍した周波数を有するサブキャリア信号を生成する。例えば、上記の式(1)で示される周波数fjのサブキャリア信号を生成する。
【0039】
乗算器52には、逓倍器51から出力されるサブキャリア信号と、伝送路2で伝送するデータ信号とが入力される。乗算器52は、サブキャリア信号とデータ信号とを乗算した信号を出力する。すなわち、乗算器52は、逓倍器51から出力されるサブキャリア信号をデータ信号で変調したサブキャリア変調信号を出力する。
【0040】
光変調器53は、乗算器52から出力されるサブキャリア変調信号の変化に応じた光強度の光サブキャリア変調信号ES(j)を出力する。光変調器53から出力される光サブキャリア変調信号ES(j)は、図3に示す光合波器23に出力され、伝送路2を伝搬している搬送光に合波される。
【0041】
光変調器53は、例えば、レーザダイオードである。レーザダイオードは、乗算器52から出力されるサブキャリア変調信号が駆動電流として入力される。または、光変調器53は、例えば、マッハ・ツェンダ変調器(LN(Lithium Niobate)変調器)である。例えば、マッハ・ツェンダ変調器(LN変調器)は、CW光源から出力されるCW光をデータ信号により変調する。
【0042】
図7は、WDMにおける搬送光の周波数揺らぎの影響を説明する図である。図7には、伝送路を伝搬するWDMの搬送光のスペクトルが示してある。横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
【0043】
光周波数ν1〜ν4は、1つの伝送路を伝搬している4つの搬送光の光周波数を示している。4つの搬送光は、4つの光源から出力される。
WDMにおいて、さらなる広帯域の情報伝送を実現するには、搬送光の波長間隔を狭くし、伝送路で伝送する搬送光の数を増やす。この場合、光源は、高精度な周波数の搬送光を出力することが求められる。
【0044】
例えば、4つの光源から出力される搬送光の周波数が、図7の矢印に示すように揺らぐと、隣り合う搬送光の周波数(波長)が重なってしまう。この場合、搬送光で伝送する情報が適切に伝送されなくなる。
【0045】
図8は、図3の光多重装置における搬送光の周波数揺らぎの影響を説明する図である。図8には、伝送路2を伝搬する搬送光のスペクトルと、搬送光に多重された光サブキャリア変調信号のスペクトルとが示してある。横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。ν0は、搬送光の光周波数を示し、ν1〜ν4は、図3に示す4台の光多重装置の生成する光サブキャリア変調信号の光周波数を示している。
【0046】
図8の最左側の矢印に示すように、搬送光の周波数がδν0揺らいだとする。この場合、4台の光多重装置の生成する光サブキャリア変調信号の光周波数ν1〜ν4も、図8の右側4つの矢印に示すように、δν0揺らぐ。従って、図3の光多重装置では、搬送光の周波数が揺らいでも、光サブキャリア変調信号の光周波数ν1〜ν4が重なることがなく、適切に情報を伝送することができる。
【0047】
つまり、図3の光多重装置では、搬送光に多重されたパイロット信号とデータ信号とに基づいて、光サブキャリア変調信号を生成する。そのため、搬送光の光周波数ν0が、図8に示すように揺らいでも、パイロット信号も同様に揺らぐ。そして、パイロット信号に基づいて生成される光サブキャリア変調信号も同様に揺らぐ。これにより、光サブキャリア変調信号の光周波数ν1〜ν4は重なることがなく、適切に情報を伝送することができる。また、搬送光の周波数が揺らいでも、光サブキャリア変調信号の光周波数が重ならないので、高密度な情報伝送が可能になる。
【0048】
図9は、ローカル発振器を用いた場合における周波数揺らぎの影響を説明する図である。図9には、4台の光多重装置が、ローカル発振器を用いて光サブキャリア変調信号を生成した場合のスペクトルが示してある。例えば、図6に示す制御光生成部22の乗算器52には、逓倍器51から出力されるサブキャリア信号を入力せず、ローカル発振器から出力されたサブキャリア信号を入力した場合のスペクトルが示してある。すなわち、図9には、4台の光多重装置のそれぞれが、ローカル発振器によって個別にサブキャリア信号を生成し、光サブキャリア変調信号を生成した場合のスペクトルが示してある。横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
【0049】
4台の光多重装置のそれぞれが、ローカル発振器によって個別にサブキャリア信号を生成すると、図9の矢印に示すように、ローカル発振器の周波数(位相)揺らぎによって、光サブキャリア変調信号が重なってしまう場合が生じる。この場合、搬送光で伝送する情報が適切に伝送されなくなる。
【0050】
図10は、パイロット信号の周波数揺らぎの影響を説明する図である。図10には、光サブキャリア変調信号のスペクトルが示してある。横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。ν0は、搬送光の光周波数を示し、ν1〜ν4は、図3に示す4台の光多重装置の生成する光サブキャリア変調信号の光周波数を示している。
【0051】
搬送光に多重されているパイロット信号の周波数(位相)が揺らいだとする。この場合でも、図3に示す4台の光多重装置では、パイロット信号が共通なので、それぞれの光多重装置においてパイロット信号の周波数が同じように揺らぐ。すなわち、図3の光多重装置では、パイロット信号の周波数が揺らいでも、図10に示すように光サブキャリア変調信号の光周波数ν1〜ν4が重なることがなく、適切に情報を伝送することができる。また、パイロット信号の周波数が揺らいでも、光サブキャリア変調信号の光周波数が重ならないので、高密度な情報伝送が可能になる。
【0052】
図11は、ローカル発振器を用いた場合における受信機の位相揺らぎの影響を説明する図である。図11には、光サブキャリア変調信号のスペクトルが示してある。横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。f1〜f4は、4台の光多重装置が、ローカル発振器で光サブキャリア変調信号を生成した場合の周波数を示している。
【0053】
光サブキャリア変調信号は、本来、周波数f1〜f4を有し、伝送路を伝搬するとする。しかし、光サブキャリア変調信号の周波数は、伝送路において、図11の右向き矢印に示すように、δφずれたとする。
【0054】
搬送光を受信する受信機は、ローカル発振器を用いて周波数f1〜f4を生成し、図11の下向き矢印に示す光サブキャリア変調信号を識別(抽出)する。
しかし、受信機は、光サブキャリア変調信号の周波数がずれると、ローカル発振器で生成した周波数f1〜f4と、光サブキャリア変調信号の周波数とが異なるため、光サブキャリア変調信号を識別することができなくなる。
【0055】
図12は、図3の光伝送装置における受信機の位相揺らぎの影響を説明する図である。図12には、光サブキャリア変調信号のスペクトルが示してある。横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。f1〜f4は、4台の図3に示す光多重装置が、パイロット信号に基づいて光サブキャリア変調信号を生成した場合の周波数を示している。
【0056】
図3に示す光多重装置は、搬送光に多重されているパイロット信号に基づいて、光サブキャリア変調信号を生成する。また、受信機は、搬送光に多重されているパイロット信号に基づいて、光サブキャリア変調信号を識別するための周波数f1〜f4を生成することができる。
【0057】
従って、受信機は、伝送路2において、光サブキャリア変調信号の位相が揺らいでも、その位相の揺らぎと同様の揺らぎを持ったパイロット信号で、光サブキャリア変調信号を識別するための周波数を生成することができる。すなわち、受信機は、光サブキャリア変調信号を識別する位相が、点線下向き矢印から、実線下向き矢印に変動しても、適切に光サブキャリア変調信号を識別することができる。
【0058】
このように、光多重装置は、伝送路2を伝搬している光に多重されているパイロット信号を抽出し、抽出したパイロット信号と、伝送路2で伝送するデータ信号とに基づいて光サブキャリア変調信号を生成する。そして、光多重装置は、伝送路2中の非線形光学媒質24において、伝送路2を伝搬している搬送光に光サブキャリア変調信号を多重するために、光サブキャリア変調信号を搬送光に合波するようにした。これにより、光多重装置は、情報を高密度に安定して多重伝送することができる。
【0059】
なお、上記では、光多重装置は、1つの光サブキャリア変調信号を生成して、搬送光に合波するようにしたが、複数の光サブキャリア変調信号を生成して、搬送光に合波するようにしてもよい。
【0060】
例えば、図6において、逓倍器51は、周波数fPを逓倍した、異なる2つの周波数kfP,周波数(k+1)fPのサブキャリア信号を生成する。そして、光多重装置は、2つの乗算器によって、周波数kfP,周波数(k+1)fPのサブキャリア信号をデータ信号で変調し、2つの光変調器で2つの光サブキャリア変調信号を生成する。そして、光多重装置は、2つの光サブキャリア変調信号を足し合わせた信号を光合波器23に出力するようにする。
【0061】
また、光多重装置は、複数の光サブキャリア変調信号を生成する場合、複数の光サブキャリア変調信号を足し合わせた信号を、光分散媒質に透過させてから光合波器23に入力するようにしてもよい。これにより、光サブキャリア変調信号の瞬時光パワーを抑制することができ、非線形光学媒質24でのクロストーク増大を抑制することができる。
【0062】
また、光多重装置は、制御光生成部22から出力される光サブキャリア変調信号を、搬送光と同一の偏波となるように制御して搬送光に合波するようにしてもよい。例えば、図4において、制御光生成部22と光合波器23との間に、偏向制御器を設けるようにしてもよい。これにより、非線形光学媒質24において、高効率な光相互変調を得ることができる。
【0063】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。第2の実施の形態では、制御光生成部の別の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態における光ネットワークシステムは、図1と同様である。また、光多重装置のブロックも図3と同様であるが、制御光生成部22が異なる。
【0064】
図13は、第2の実施の形態に係る制御光生成部のブロック図である。図13に示すように、制御光生成部は、基準光生成部61、光周波数逓倍シフタ62、光変調器63、および光合波器64を有している。
【0065】
基準光生成部61は、光周波数νS0,νS1の2つのCW光を出力する。2つのCW光の光周波数νS0,νS1は、同じであってもよい。
基準光生成部61は、例えば、光コム光源である。光コム光源は、パイロット信号の周波数fPを基にした光周波数間隔のCW光を生成することができる。光周波数νS0,νS1の2つのCW光は、光コム光源の光周波数間隔k・fPの2つのモード成分を、光波長分波器により抽出して得ることができる(νS1=νS0±k・fP)。
【0066】
または、基準光生成部61は、CW光源から出力される光を、光スプリッタによって2つに分割し、同じ光周波数のCW光を得るようにしてもよい。(νS1=νS0)。
光周波数逓倍シフタ62には、パイロット信号抽出部21から出力されるパイロット信号の周波数fPと、基準光生成部61から出力される光周波数νS1のCW光が入力される。光周波数逓倍シフタ62は、基準光生成部61から出力されるCW光の光周波数νS1を、パイロット信号の周波数fPの整数倍分シフトする。例えば、光周波数逓倍シフタ62は、CW光の光周波数νS1を、パイロット信号の周波数fPのj倍分シフトし、次の式(2)に示す光周波数のCW光(サブキャリア光)を出力する。
【0067】
ν’S1=νS1±jfP …(2)
光変調器63には、光周波数逓倍シフタ62から出力されるサブキャリア光と、伝送路2で伝送するデータ信号が入力される。光変調器63は、サブキャリア光をデータ信号で変調する。
【0068】
光変調器63は、例えば、ニオブ酸リチウム光変調器またはEA(Electro Absorption)変調器であり、サブキャリア光をデータ信号で光強度変調または位相変調する。また、光変調器63は、光ファイバ、周期分極反転ニオブ酸リチウム、半導体光増幅器、シリコン細線導波路などの非線形光学媒質であってもよい。
【0069】
光合波器64には、基準光生成部61から出力される光周波数νS0のCW光と、データ信号で変調されたサブキャリア光とが入力される。光合波器64は、光周波数νS0のCW光と、データ信号で変調されたサブキャリア光とを合波する。これにより、光合波器64からは、次の式(3)に示す周波数の光サブキャリア変調信号が出力される。
【0070】
fj=|νS0−ν’S1|=|νS0−(νS1±jfP)| …(3)
光合波器64から出力される光サブキャリア変調信号は、例えば、図3に示した光合波器23に出力される。
【0071】
図13の制御光生成部では、光周波数逓倍シフタ62と光合波器64との間に光変調器63を設けるようにしたが、基準光生成部61と光合波器64との間に設けるようにしてもよい。また、光変調器63は、光周波数逓倍シフタ62と光合波器64との間に設けるとともに、基準光生成部61と光合波器64との間にも設けるようにしてもよい。この場合、光変調器63と、基準光生成部61と光合波器64との間に設けた光変調器には、同じデータ信号を入力する。また、光変調器63は、光合波器64のあとに設けてもよい。
【0072】
図14は、光周波数逓倍シフタのブロック図である。図14に示すように、光周波数逓倍シフタ62は、光スイッチ71,75,76、光カプラ72、光遅延線73、光周波数シフタ74、注入同期レーザ77、およびコントローラ78を有している。
【0073】
光スイッチ71には、基準光生成部61で生成された光周波数νS1のCW光が入力される。光スイッチ71は、コントローラ78の制御に応じて、入力されるCW光を光カプラ72に出力する。
【0074】
光カプラ72は、光スイッチ71から出力されるCW光を光遅延線73に出力する。また、光カプラ72は、光スイッチ75から出力される光を光遅延線73と光スイッチ76とに出力する。
【0075】
光遅延線73は、入力される光を遅延して出力する。
光周波数シフタ74には、パイロット信号抽出部21から出力されるパイロット信号の周波数fPと、光遅延線73から出力される光とが入力される。光周波数シフタ74は、光遅延線73から出力される光周波数を周波数fP分シフトして出力する。従って、光カプラ72、光遅延線73、光周波数シフタ74、および光スイッチ75のループを周回する光は、j回周回すると、その光周波数は次の式(4)に示すようになる。
【0076】
νj=νS1±jfP …(4)
光周波数シフタ74は、例えば、デュアルマッハ−ツェンダ光変調器の正弦波(周波数fP)による光片側波帯変調によって、入力される光の光周波数を周波数fP分シフトすることができる。または、光周波数シフタ74は、パイロット信号の周波数fPを基にした光周波数間隔の光コム発生器の出力から、周波数fP分シフトした光の光周波数モードを光フィルタで抽出することにより、入力される光の光周波数を周波数fP分シフトすることができる。または、光周波数シフタ74は、音響光学光スイッチのドップラシフト(fP)による光周波数シフトにより、入力される光の光周波数を周波数fP分シフトすることができる。
【0077】
光スイッチ75は、コントローラ78の制御に応じて、光周波数シフタ74から出力される光を光カプラ72に出力する。
光スイッチ76は、コントローラ78の制御に応じて、光カプラ72から出力される光を注入同期レーザ77に出力する。
【0078】
光スイッチ76からは、光遅延線73の遅延時間で決まる時間幅を持つバースト状の光が出力される。注入同期レーザ77は、バースト状の光を連続して出力する。すなわち、注入同期レーザ77からは、光周波数νS1±jfPのサブキャリア光が出力される。注入同期レーザ77から出力されるサブキャリア光は、光変調器63に出力される。
【0079】
コントローラ78は、光スイッチ71に入力される光周波数νS1のCW光が、光カプラ72、光遅延線73、光周波数シフタ74、および光スイッチ75のループを1周回るように、光スイッチ71のオン・オフを制御する。また、コントローラ78は、光カプラ72、光遅延線73、光周波数シフタ74、および光スイッチ75のループを、光がj回周回するように光スイッチ75のオン・オフを制御する。これにより、CW光がループを1周回ると、光カプラ72から光周波数νS1±fPの光が光スイッチ76に出力され、CW光が2周回ると、光カプラ72から光周波数νS1±2fPの光が光スイッチ76に出力される。コントローラ78は、光カプラ72から光周波数νS1±jfPの光が光スイッチ76に出力されたとき、光スイッチ76をオンし、式(4)に示す光周波数の光を注入同期レーザ77に出力するようにする。
【0080】
このように、制御光生成部は、CW光の光周波数νS1を、パイロット信号の周波数fPの整数倍分シフトし、光周波数νS0のCW光と合波して、光サブキャリア変調信号を生成するようにした。これによっても、光多重装置は、情報を高密度に安定して多重伝送することができる。
【0081】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。第2の実施の形態では、制御光生成部は、1つのデータ信号が多重された光サブキャリア変調信号を生成した。第3の実施の形態では、複数のデータ信号が多重された光サブキャリア変調信号を生成し、搬送光に合波する。なお、第3の実施の形態における光ネットワークシステムは、図1と同様である。また、光多重装置のブロックも図3と同様であるが、制御光生成部22が異なる。
【0082】
図15は、第3の実施の形態に係る制御光生成部のブロック図である。図15に示すように、制御光生成部は、基準光生成部81、n個の光周波数シフタ82a,82b,…,82n、n−1個の光スプリッタ83a,83b,…、n個の光変調器84a,84b,…,84n、および光合波器85,86を有している。基準光生成部81、光周波数シフタ82a,82b,…,82n、光スプリッタ83a,83b,…、および光変調器84a,84b,…,84nは、ツリー構造を有している。
【0083】
基準光生成部81は、光周波数νS0,νS1の2つのCW光を出力する。2つのCW光の光周波数νS0,νS1は、同じであってもよい。基準光生成部81は、図13で説明した基準光生成部61と同様に、例えば、光コム光源またはCW光源によって形成することができる。
【0084】
光周波数シフタ82a,82b,…,82nには、パイロット信号抽出部21から出力されるパイロット信号の周波数fPが入力される。光周波数シフタ82a,82b,…,82nは、入力される光の光周波数を、周波数fP分シフトして出力する。例えば、初段の光周波数シフタ82aには、光周波数νS1のCW光が入力される。従って、光周波数シフタ82aからは、光周波数νS1±fPのCW光が出力される。
【0085】
n−1個の光スプリッタ83a,83b,…は、n−1個の光周波数シフタ82a,82b,…の出力に対応して設けられる。光スプリッタ83a,83b,…は、光周波数シフタ82a,82b,…から出力される光を分割して、一方の光を次段の光周波数シフタ82b,…,82nに出力する。また、光スプリッタ83a,83b,…は、分割した他方の光をn−1個の光変調器84a,84b,…に出力する。
【0086】
例えば、光スプリッタ83aは、光周波数シフタ82aから出力される光周波数νS1±fPのCW光を分割して、光周波数シフタ82bと光変調器84aとに出力する。なお、上記したように、光周波数シフタ82a,82b,…,82nは、入力される光の光周波数を、周波数fP分シフトして出力する。従って、例えば、光周波数シフタ82bは、光周波数νS1±2fPのCW光を光スプリッタ83bに出力する。
【0087】
n−1個の光変調器84a,84b,…には、n−1個の光スプリッタ83a,83b,…から出力されるCW光が入力される。n番目の光変調器84nには、光周波数シフタ82nから出力されるCW光が入力される。従って、n個の光変調器84a,84b,…,84nのそれぞれには、光周波数νS1±fP,νS1±2fP,…,νS1±nfPのCW光(サブキャリア光)が入力される。
【0088】
また、n個の光変調器84a,84b,…,84nには、異なるn個のデータ信号D1,D2,…,Dnが入力される。光変調器84a,84b,…,84nのそれぞれは、サブキャリア信号をデータ信号D1,D2,…,Dnで変調して、光合波器85に出力する。光変調器84a,84b,…,84nは、図13で説明した光変調器63と同様に、例えば、ニオブ酸リチウム光変調器またはEA変調器によって形成される。または、光変調器84a,84b,…,84nは、光ファイバ、周期分極反転ニオブ酸リチウム、半導体光増幅器、シリコン細線導波路などの非線形光学媒質で形成される。
【0089】
光合波器85は、光変調器84a,84b,…,84nから出力される光を合波する。
光合波器86は、光合波器85から出力される光と、基準光生成部81から出力される光周波数νS0のCW光とを合波する。従って、光合波器86からは、データ信号D1,D2,…,Dnによって変調された光サブキャリア変調信号が出力される。光合波器86から出力される光サブキャリア変調信号は、例えば、図3に示した光合波器23に出力される。
【0090】
このように、制御光生成部は、入力される光の光周波数をパイロット信号の周波数fP分シフトする、初段に光周波数νS1の光が入力されるn個の光周波数シフタ82a〜82nを有する。また、制御光生成部は、n−1個の光周波数シフタ82a,82b,…から出力される光を分割し、一方の光を次段の光周波数シフタ82b,…,82nに出力するn−1個の光スプリッタ83a,83b,…を有する。また、制御光生成部は、n−1個の光スプリッタから出力される他方の光と、最終段の光周波数シフタ82nから出力される光とを複数の異なるデータ信号D1,D2,…,Dnで変調するn個の光変調器84a,84b,…84nを有する。さらに、制御光生成部は、n個の光変調器84a,84b,…84nから出力される光を合波する光合波器85と、光合波器85から出力される光と光周波数νS0の光とを合波し、光サブキャリア変調信号を生成する光合波器86を有する。これによっても、光多重装置は、情報を高密度に安定して多重伝送することができる。
【0091】
また、光多重装置のそれぞれは、複数種類のデータ信号を搬送光に多重して伝送することができる。ただし、光多重装置のそれぞれは、搬送光に多重されるデータ信号が重ならないようにする。例えば、光多重装置のそれぞれは、光周波数シフタ82a,82b,…,82nの段数を変え、異なる周波数ifPを有するサブキャリア光を生成するようにする。
【0092】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。第2の実施の形態では、図13で説明したように、基準光生成部61で光周波数νS0,νS1のCW光を生成した。第4の実施の形態では、光周波数νS0,νS1のCW光に対応する光を伝送路で伝送し、この光を受信して光サブキャリア変調信号を生成するようにする。なお、第4の実施の形態における光ネットワークシステムは、図1と同様である。また、光多重装置のブロックも図3と同様であるが、制御光生成部22が異なる。
【0093】
図16は、第4の実施の形態に係る光多重装置のブロック図である。図16に示す光多重装置は、図2に示す光多重装置1a〜1nの左からj番目の光多重装置を示している。図16に示すように、光多重装置は、光分波器91、パイロット信号抽出部92、光波長分波器93、注入同期レーザ94、光周波数シフタ95、光変調器96、光合波器97,98、および非線形光学媒質99を有している。
【0094】
伝送路2には、光周波数νCの搬送光EC(j-1)が伝搬している。また、伝送路2には、光周波数νS0,νS(j-1)の制御光ES(j-1)が伝搬している。光分波器91は、伝送路2を伝搬している搬送光EC(j-1)と制御光ES(j-1)とを分波し、搬送光EC(j-1)をパイロット信号抽出部92に出力し、制御光ES(j-1)を光波長分波器93に出力する。
【0095】
搬送光EC(j-1)には、パイロット信号が多重されている。パイロット信号抽出部92は、搬送光EC(j-1)からパイロット信号を抽出し、その周波数fPを抽出する。
光波長分波器93は、光周波数νS0と光周波数νS(j-1)との光に分波し、光周波数νS0の光を光合波器97に出力し、光周波数νS(j-1)の光を注入同期レーザ94に出力する。なお、光周波数νS0の光は、CW光であり、光周波数νS(j-1)の光は、前段の光多重装置(j−1番目の光多重装置)で生成された光サブキャリア変調信号である。
【0096】
注入同期レーザ94は、光波長分波器93から出力される光サブキャリア変調信号をCW光として出力する。すなわち、注入同期レーザ94は、光周波数νS(j-1)のCW光を出力する。
【0097】
光周波数シフタ95には、パイロット信号抽出部92で抽出されたパイロット信号の周波数fPと、注入同期レーザ94から出力される光周波数νS(j-1)のCW光が入力される。光周波数シフタ95は、注入同期レーザ94から出力されるCW光の光周波数νS(j-1)を、パイロット信号の周波数fP分シフトする。従って、光周波数シフタ95からは、次の式(5)に示す光周波数のCW光(サブキャリア光)が出力される。
【0098】
νS(j)=νS(j-1)±fP …(5)
光変調器96には、光周波数シフタ95から出力されるサブキャリア光と、伝送路2で伝送するデータ信号とが入力される。光変調器96は、サブキャリア光をデータ信号で変調する。光変調器96は、例えば、図13で説明した光変調器63と同様に、例えば、ニオブ酸リチウム光変調器またはEA変調器によって形成される。または、光変調器96は、光ファイバ、周期分極反転ニオブ酸リチウム、半導体光増幅器、シリコン細線導波路などの非線形光学媒質で形成される。
【0099】
光合波器97は、光変調器96から出力されるデータ信号で変調された光キャリア信号と、光波長分波器93から出力される光周波数νS0のCW光とが入力される。光合波器97は、光周波数νS0のCW光と、データ信号で変調されたサブキャリア光とを合波する。これにより、光合波器97からは、次の式(6)に示す周波数の光サブキャリア変調信号が出力される。
【0100】
fS(j)=|νS0−νS(j)|=|νS0−(νS(j-1)±fP)| …(6)
なお、光合波器97からは、光周波数νS0,νS(j)の光(制御光ES(j))が出力される。
【0101】
光合波器98は、伝送路2中の非線形光学媒質において、伝送路2を伝搬している搬送光に光サブキャリア変調信号を多重するため、光合波器97から出力される光サブキャリア変調信号を搬送光に合波する。
【0102】
非線形光学媒質99には、光サブキャリア変調信号が合波された搬送光が入力される。非線形光学媒質99に入力された搬送光は、非線形光学媒質99によって、光サブキャリア変調信号により光相互変調され、光サブキャリア変調信号が多重される。
【0103】
図17は、信号のスペクトルを説明する図である。図17において、図16と同じものには同じ符号が付してある。
図17に示すスペクトル101aは、図17に示すj番目の光多重装置の入力におけるスペクトルを示している。横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
【0104】
スペクトル101aのνCは、搬送光EC(j-1)のスペクトルを示している。νCの両隣りに立っているパワーは、パイロット信号のパワーを示している。また、パイロット信号の外側に立っているパワーは、前段の光多重装置で多重された光サブキャリア変調信号のパワーを示している。
【0105】
スペクトル101aのνS0は、CW光のスペクトルを示している。νS(j-1)は、光サブキャリア変調信号のスペクトルを示している。
すなわち、伝送路2には、パイロット信号と光サブキャリア変調信号とが多重された搬送光EC(j-1)が伝搬している。また、伝送路2には、光周波数νS(j)のCW光と光周波数νS(j-1)の光サブキャリア変調信号との制御光ES(j-1)が伝搬している。
【0106】
スペクトル101bは、光合波器97から出力される光サブキャリア変調信号のスペクトルを示している。横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。光合波器97からは、スペクトル101bに示すように、周波数fS(j)の光サブキャリア変調信号が出力される。
【0107】
スペクトル101cは、非線形光学媒質99の出力におけるスペクトルを示している。横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
非線形光学媒質99の出力では、スペクトル101cに示すように、光周波数νCの搬送光に、光合波器97から出力された光サブキャリア変調信号が多重されている。非線形光学媒質99からは、光周波数νS0のCW光と、光周波数νS(j)の光サブキャリア変調信号との制御光ES(j)が出力される。
【0108】
このように、光分波器91は、伝送路2を伝搬している搬送光と制御光とを分波する。光波長分波器93は、光分波器91によって分波された制御光を、CW光と前段の光多重装置で生成された光サブキャリア変調信号とに分波する。注入同期レーザ94は、分波された光サブキャリア変調信号からCW光を生成し、光周波数シフタ95は、CW光の光周波数を、パイロット信号の周波数分シフトし、サブキャリア光を生成する。光変調器96は、サブキャリア光をデータ信号で変調し、光合波器97は、光波長分波器93から出力されるCW光と、データ信号で変調されたサブキャリア光とを合波して、光サブキャリア変調信号を生成する。これによっても、光多重装置は、情報を高密度に安定して多重伝送することができる。
【符号の説明】
【0109】
1a〜1n 光多重装置
2 伝送路
3 受信機
21 パイロット信号抽出部
22 制御光生成部
23 光合波器
24 非線形光学媒質
【技術分野】
【0001】
本件は、搬送光に情報を多重する光多重装置および光ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報を光多重伝送する技術として、WDM(Wavelength Division Multiplexing)がある。WDMは、異なる波長の光信号を多重化し、1本の光ファイバで複数の情報を伝送することができる。
【0003】
将来の光ネットワークは、例えば、従来の光通信システムをベースとしつつ、中継光ノード等、端局装置から離れた地点に置かれた装置において、信号光の分岐挿入やスイッチング等の処理を行う必要がある。その際、できるだけ光信号と電気信号との間で変換をしないで情報を伝搬・処理していくことが、エネルギー効率の観点から有効である。
【0004】
しかし、現状の中継光ノード等においては、端局装置のように光−電気変換を用いて信号処理を行っており、例えば、伝送されてきた信号光をいったん電気信号に変換し、これを電気的に処理した後、再び光信号に変換している。このため、装置構成は複雑となり、また、光−電気変換のために大きな電力を必要とする。
【0005】
ところで、光ネットワークでは、各所においてリアルタイムに各種情報をモニタし、その情報を基に、有効なネットワーク制御を行っている。将来の光ネットワークにおいては、この情報の情報量は増大し、省エネルギーの光ネットワークを実現することが有効となる。また、より柔軟な光ネットワークを実現するためには、光ノードに限らず、任意の地点において情報をネットワークに挿入できる機能が有効となる。
【0006】
しかし、現状では、情報の挿入は、光ノード装置や端局装置において行われており、特にモニタ情報は、信号光を光−電気変換して信号光のヘッダ部に書き込むか、または、専用の光波を用いるなどして伝搬されている。
【0007】
なお、従来、送信局と、受信局との間に、光伝送路を介して敷設される中継局に、送信局からの入力信号光および励起光を非線形光学媒質に供給する信号光/励起光供給手段と、非線形光学媒質に供給された入力信号光および励起光により発生した出力信号光および位相共役光を抽出する信号光/位相共役光抽出手段とを有する位相共役光発生装置と、励起光を中継局固有の監視データにより変調する変調手段を備え、変調された監視データを含む位相共役光を受信局へ送信することを特徴とする位相共役光を用いた中継局が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3436310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、WDMにおいて、さらなる広帯域の情報伝送を実現するために、搬送光の数を増やすよう波長間隔を狭くすると、各搬送光の波長の揺れによって、例えば、隣り合う搬送光の波長が重なってしまい、情報伝送が不安定になるという問題点があった。
【0010】
本件はこのような点に鑑みてなされたものであり、情報を高密度に安定して多重伝送することができる光多重装置および光ネットワークシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、光多重装置が提供される。この光多重装置は、伝送路を伝搬している光に多重されているパイロット信号を抽出する抽出部と、前記伝送路で伝送するデータ信号と前記抽出部で抽出された前記パイロット信号とに基づいて光サブキャリア変調信号を生成する生成部と、前記伝送路中の非線形光学媒質において前記伝送路を伝搬している搬送光に前記データ信号を多重するために、前記生成部で生成された前記光サブキャリア変調信号を前記搬送光に合波する合波器と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
開示の装置およびシステムによれば、情報を高密度に安定して多重伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係る光多重装置を用いた光ネットワークシステムを示した図である。
【図2】光ネットワークシステムの光スペクトルを示した図である。
【図3】光多重装置のブロック図である。
【図4】光多重装置でのスペクトルを説明する図である。
【図5】パイロット信号抽出部のブロック図である。
【図6】制御光生成部のブロック図である。
【図7】WDMにおける搬送光の周波数揺らぎの影響を説明する図である。
【図8】図3の光多重装置における搬送光の周波数揺らぎの影響を説明する図である。
【図9】ローカル発振器を用いた場合における周波数揺らぎの影響を説明する図である。
【図10】パイロット信号の周波数揺らぎの影響を説明する図である。
【図11】ローカル発振器を用いた場合における受信機の位相揺らぎの影響を説明する図である。
【図12】図3の光伝送装置における受信機の位相揺らぎの影響を説明する図である。
【図13】第2の実施の形態に係る制御光生成部のブロック図である。
【図14】光周波数逓倍シフタのブロック図である。
【図15】第3の実施の形態に係る制御光生成部のブロック図である。
【図16】第4の実施の形態に係る光多重装置のブロック図である。
【図17】信号のスペクトルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る光多重装置を用いた光ネットワークシステムを示した図である。図1に示すように、光ネットワークシステムは、光多重装置1a〜1n、伝送路2、および受信機3を有している。光多重装置1a〜1nは、伝送路2中に設けられている。伝送路2は、例えば、光ファイバである。
【0015】
伝送路2には、搬送光が伝搬している。搬送光は、CW(Continuous Wave)光である。または、搬送光は、ベースバンド変調された信号光である。ベースバンド変調された信号光のビットレートは、以下で説明する光サブキャリア変調信号の周波数(光強度の周波数)に比べ十分低いものとする。また、ベースバンド変調された信号光のビットレートは、以下で説明するパイロット信号の周波数(光強度の周波数)に比べ十分低いものとする。
【0016】
光多重装置1a〜1nには、例えば、図示しない装置から、搬送光によって伝送するデータ信号が送られてくる。データ信号は、例えば、電気信号で送られてくる。
光多重装置1a〜1nのそれぞれは、伝送路2で伝送するデータ信号と、伝送路2を伝搬しているパイロット信号とに基づいて、異なる周波数の光サブキャリア変調信号を生成する。光多重装置1a〜1nのそれぞれは、生成した光サブキャリア変調信号で、伝送路2を伝搬している搬送光を変調し、搬送光にデータ信号を周波数多重する。
【0017】
受信機3は、伝送路2を伝搬する搬送光を受信し、復調処理を行って、光多重装置1a〜1nから送信されるデータ信号を受信する。データ信号は、例えば、光直接検波、ヘテロダイン検波、またはコヒーレント検波などによって受信することができる。
【0018】
図2は、光ネットワークシステムの光スペクトルを示した図である。図2において、図1と同じものには、同じ符号が付してある。伝送路2には、光周波数νCの搬送光が伝搬している。
【0019】
図2に示すスペクトル11a〜11dは、伝送路2を伝搬している搬送光のスペクトルを示している。スペクトル11a〜11dの横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
【0020】
図2に示すスペクトル12a〜12cは、搬送光に合波される光サブキャリア変調信号の光強度の周波数を示している。スペクトル12a〜12cの横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
【0021】
スペクトル11a〜11dに示すνCは、伝送路2を伝搬する搬送光の光周波数を示している。スペクトル11a〜11dに示すfPは、伝送路2を伝搬するパイロット信号の周波数を示す。パイロット信号は、スペクトル11a〜11dに示すように、搬送光に多重され、伝送路2を伝搬する。なお、パイロット信号は、搬送光とは別の光に多重して、伝送路2を伝送するようにしてもよい。
【0022】
光多重装置1a〜1nは、搬送光に多重されているパイロット信号を抽出する。光多重装置1a〜1nは、抽出したパイロット信号と、伝送路2で伝送するデータ信号とに基づいて、異なる周波数の光サブキャリア変調信号を生成する。例えば、光多重装置1a〜1nは、スペクトル12a〜12cに示すように、周波数f1,f2,fNの光サブキャリア変調信号を生成する。
【0023】
光多重装置1a〜1nは、生成した光サブキャリア変調信号を搬送光に合波する。以下で述べるが、光サブキャリア変調信号が合波された搬送光は、伝送路2中の非線形光学媒質によって、光サブキャリア変調信号により光相互変調される。これにより、周波数f1,f2,fNの光サブキャリア変調信号は、スペクトル11a〜11dに示すように、光周波数νCの搬送光に周波数多重される。
【0024】
図3は、光多重装置のブロック図である。図3に示す光多重装置は、図2に示す光多重装置1a〜1nの左からj番目の光多重装置を示している。図3に示すように、光多重装置は、パイロット信号抽出部21、制御光生成部22、光合波器23、および非線形光学媒質24を有している。j番目以外の光多重装置1a〜1nも図3と同様のブロックを有している。
【0025】
パイロット信号抽出部21には、伝送路2を伝搬している光周波数νCの搬送光EC(j-1)が入力される。パイロット信号抽出部21は、搬送光EC(j-1)に多重されているパイロット信号を抽出し、その周波数fPを抽出する。
【0026】
制御光生成部22には、伝送路2で伝送するデータ信号と、パイロット信号抽出部21で抽出されたパイロット信号の周波数fPとが入力される。制御光生成部22は、搬送光EC(j-1)にデータ信号を多重するための制御光(光サブキャリア変調信号ES(j))を生成する。制御光生成部22は、データ信号と、パイロット信号の周波数fPとに基づいて、周波数fjの光サブキャリア変調信号ES(j)を生成する。周波数fjは、次の式(1)の関係がある。
【0027】
fj=jfP …(1)
これにより、例えば、図2の光多重装置1aからは、周波数fPの光サブキャリア変調信号ES1が出力され、光多重装置1bからは、周波数2fPの光サブキャリア変調信号ES2が出力される。また、光多重装置1nからは、周波数nfPの光サブキャリア変調信号ESnが出力される。すなわち、光多重装置1a〜1nのそれぞれからは、異なる周波数の光サブキャリア変調信号が出力される。
【0028】
光合波器23は、伝送路2中の非線形光学媒質において、伝送路2を伝搬している搬送光に光サブキャリア変調信号を多重するため、制御光生成部22で生成された光サブキャリア変調信号を搬送光に合波する。
【0029】
非線形光学媒質24には、光サブキャリア変調信号が合波された搬送光が入力される。非線形光学媒質24に入力された搬送光は、非線形光学媒質24によって、光サブキャリア変調信号により光相互変調され、光サブキャリア変調信号が多重される。
【0030】
非線形光学媒質による光相互変調としては、相互位相変調による光位相変調や光パラメトリック効果による光強度変調などを用いることができる。非線形光学媒質としては、例えば、光ファイバ、周期分極反転ニオブ酸リチウム、半導体光増幅器、シリコン細線導波路等の高屈折率差光導波路を用いることができる。なお、伝送路2の光ファイバを非線形光学媒質24として利用し、搬送光EC(j-1)を光サブキャリア変調信号により光相互変調してもよい。
【0031】
図4は、光多重装置でのスペクトルを説明する図である。図4において、図3と同じものには同じ符号が付してある。
図4に示すスペクトル31は、伝送路2を伝搬している搬送光EC(j-1)のスペクトルを示している。スペクトル31の横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。スペクトル31に示すように、搬送光EC(j-1)には、周波数fPのパイロット信号が多重されている。
【0032】
スペクトル32は、制御光生成部22によって生成される光サブキャリア変調信号のスペクトルを示している。スペクトル32の横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。制御光生成部22は、周波数fPのパイロット信号とデータ信号とに基づいて、スペクトル32に示すように、周波数jfPの光サブキャリア変調信号を生成する。
【0033】
スペクトル33は、非線形光学媒質24から出力される搬送光EC(j)のスペクトルを示している。スペクトル33の横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。スペクトル33に示すように、搬送光EC(j)には、光周波数νCから±fj(fj=jfP)のところに、光サブキャリア変調信号が多重されている。
【0034】
図5は、パイロット信号抽出部のブロック図である。図5に示すように、パイロット信号抽出部21は、光分波器41、フォトディテクタ42、ローパスフィルタ43、および位相同期回路44を有している。
【0035】
光分波器41は、伝送路2から搬送光を分波する。分波した搬送光は、フォトディテクタ42に出力される。
フォトディテクタ42は、光分波器41から出力される光を電気信号に変換する。
【0036】
ローパスフィルタ43は、フォトディテクタ42から出力される電気信号の低域周波数成分を通過させる。ローパスフィルタ43の遮断周波数は、パイロット信号の周波数fPである。すなわち、ローパスフィルタ43は、パイロット信号を抽出する。なお、フォトディテクタ42の帯域が狭い場合、ローパスフィルタ43は不要である。
【0037】
位相同期回路44は、ローパスフィルタ43から出力されるパイロット信号の周波数fPを抽出する。位相同期回路44は、例えば、PLL(Phase Locked Loop)である。
図6は、制御光生成部のブロック図である。図6に示すように、制御光生成部22は、逓倍器51、乗算器52、および光変調器53を有している。
【0038】
逓倍器51は、パイロット信号抽出部21から出力される周波数fPの信号の周波数を逓倍した周波数を有するサブキャリア信号を生成する。例えば、上記の式(1)で示される周波数fjのサブキャリア信号を生成する。
【0039】
乗算器52には、逓倍器51から出力されるサブキャリア信号と、伝送路2で伝送するデータ信号とが入力される。乗算器52は、サブキャリア信号とデータ信号とを乗算した信号を出力する。すなわち、乗算器52は、逓倍器51から出力されるサブキャリア信号をデータ信号で変調したサブキャリア変調信号を出力する。
【0040】
光変調器53は、乗算器52から出力されるサブキャリア変調信号の変化に応じた光強度の光サブキャリア変調信号ES(j)を出力する。光変調器53から出力される光サブキャリア変調信号ES(j)は、図3に示す光合波器23に出力され、伝送路2を伝搬している搬送光に合波される。
【0041】
光変調器53は、例えば、レーザダイオードである。レーザダイオードは、乗算器52から出力されるサブキャリア変調信号が駆動電流として入力される。または、光変調器53は、例えば、マッハ・ツェンダ変調器(LN(Lithium Niobate)変調器)である。例えば、マッハ・ツェンダ変調器(LN変調器)は、CW光源から出力されるCW光をデータ信号により変調する。
【0042】
図7は、WDMにおける搬送光の周波数揺らぎの影響を説明する図である。図7には、伝送路を伝搬するWDMの搬送光のスペクトルが示してある。横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
【0043】
光周波数ν1〜ν4は、1つの伝送路を伝搬している4つの搬送光の光周波数を示している。4つの搬送光は、4つの光源から出力される。
WDMにおいて、さらなる広帯域の情報伝送を実現するには、搬送光の波長間隔を狭くし、伝送路で伝送する搬送光の数を増やす。この場合、光源は、高精度な周波数の搬送光を出力することが求められる。
【0044】
例えば、4つの光源から出力される搬送光の周波数が、図7の矢印に示すように揺らぐと、隣り合う搬送光の周波数(波長)が重なってしまう。この場合、搬送光で伝送する情報が適切に伝送されなくなる。
【0045】
図8は、図3の光多重装置における搬送光の周波数揺らぎの影響を説明する図である。図8には、伝送路2を伝搬する搬送光のスペクトルと、搬送光に多重された光サブキャリア変調信号のスペクトルとが示してある。横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。ν0は、搬送光の光周波数を示し、ν1〜ν4は、図3に示す4台の光多重装置の生成する光サブキャリア変調信号の光周波数を示している。
【0046】
図8の最左側の矢印に示すように、搬送光の周波数がδν0揺らいだとする。この場合、4台の光多重装置の生成する光サブキャリア変調信号の光周波数ν1〜ν4も、図8の右側4つの矢印に示すように、δν0揺らぐ。従って、図3の光多重装置では、搬送光の周波数が揺らいでも、光サブキャリア変調信号の光周波数ν1〜ν4が重なることがなく、適切に情報を伝送することができる。
【0047】
つまり、図3の光多重装置では、搬送光に多重されたパイロット信号とデータ信号とに基づいて、光サブキャリア変調信号を生成する。そのため、搬送光の光周波数ν0が、図8に示すように揺らいでも、パイロット信号も同様に揺らぐ。そして、パイロット信号に基づいて生成される光サブキャリア変調信号も同様に揺らぐ。これにより、光サブキャリア変調信号の光周波数ν1〜ν4は重なることがなく、適切に情報を伝送することができる。また、搬送光の周波数が揺らいでも、光サブキャリア変調信号の光周波数が重ならないので、高密度な情報伝送が可能になる。
【0048】
図9は、ローカル発振器を用いた場合における周波数揺らぎの影響を説明する図である。図9には、4台の光多重装置が、ローカル発振器を用いて光サブキャリア変調信号を生成した場合のスペクトルが示してある。例えば、図6に示す制御光生成部22の乗算器52には、逓倍器51から出力されるサブキャリア信号を入力せず、ローカル発振器から出力されたサブキャリア信号を入力した場合のスペクトルが示してある。すなわち、図9には、4台の光多重装置のそれぞれが、ローカル発振器によって個別にサブキャリア信号を生成し、光サブキャリア変調信号を生成した場合のスペクトルが示してある。横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
【0049】
4台の光多重装置のそれぞれが、ローカル発振器によって個別にサブキャリア信号を生成すると、図9の矢印に示すように、ローカル発振器の周波数(位相)揺らぎによって、光サブキャリア変調信号が重なってしまう場合が生じる。この場合、搬送光で伝送する情報が適切に伝送されなくなる。
【0050】
図10は、パイロット信号の周波数揺らぎの影響を説明する図である。図10には、光サブキャリア変調信号のスペクトルが示してある。横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。ν0は、搬送光の光周波数を示し、ν1〜ν4は、図3に示す4台の光多重装置の生成する光サブキャリア変調信号の光周波数を示している。
【0051】
搬送光に多重されているパイロット信号の周波数(位相)が揺らいだとする。この場合でも、図3に示す4台の光多重装置では、パイロット信号が共通なので、それぞれの光多重装置においてパイロット信号の周波数が同じように揺らぐ。すなわち、図3の光多重装置では、パイロット信号の周波数が揺らいでも、図10に示すように光サブキャリア変調信号の光周波数ν1〜ν4が重なることがなく、適切に情報を伝送することができる。また、パイロット信号の周波数が揺らいでも、光サブキャリア変調信号の光周波数が重ならないので、高密度な情報伝送が可能になる。
【0052】
図11は、ローカル発振器を用いた場合における受信機の位相揺らぎの影響を説明する図である。図11には、光サブキャリア変調信号のスペクトルが示してある。横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。f1〜f4は、4台の光多重装置が、ローカル発振器で光サブキャリア変調信号を生成した場合の周波数を示している。
【0053】
光サブキャリア変調信号は、本来、周波数f1〜f4を有し、伝送路を伝搬するとする。しかし、光サブキャリア変調信号の周波数は、伝送路において、図11の右向き矢印に示すように、δφずれたとする。
【0054】
搬送光を受信する受信機は、ローカル発振器を用いて周波数f1〜f4を生成し、図11の下向き矢印に示す光サブキャリア変調信号を識別(抽出)する。
しかし、受信機は、光サブキャリア変調信号の周波数がずれると、ローカル発振器で生成した周波数f1〜f4と、光サブキャリア変調信号の周波数とが異なるため、光サブキャリア変調信号を識別することができなくなる。
【0055】
図12は、図3の光伝送装置における受信機の位相揺らぎの影響を説明する図である。図12には、光サブキャリア変調信号のスペクトルが示してある。横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。f1〜f4は、4台の図3に示す光多重装置が、パイロット信号に基づいて光サブキャリア変調信号を生成した場合の周波数を示している。
【0056】
図3に示す光多重装置は、搬送光に多重されているパイロット信号に基づいて、光サブキャリア変調信号を生成する。また、受信機は、搬送光に多重されているパイロット信号に基づいて、光サブキャリア変調信号を識別するための周波数f1〜f4を生成することができる。
【0057】
従って、受信機は、伝送路2において、光サブキャリア変調信号の位相が揺らいでも、その位相の揺らぎと同様の揺らぎを持ったパイロット信号で、光サブキャリア変調信号を識別するための周波数を生成することができる。すなわち、受信機は、光サブキャリア変調信号を識別する位相が、点線下向き矢印から、実線下向き矢印に変動しても、適切に光サブキャリア変調信号を識別することができる。
【0058】
このように、光多重装置は、伝送路2を伝搬している光に多重されているパイロット信号を抽出し、抽出したパイロット信号と、伝送路2で伝送するデータ信号とに基づいて光サブキャリア変調信号を生成する。そして、光多重装置は、伝送路2中の非線形光学媒質24において、伝送路2を伝搬している搬送光に光サブキャリア変調信号を多重するために、光サブキャリア変調信号を搬送光に合波するようにした。これにより、光多重装置は、情報を高密度に安定して多重伝送することができる。
【0059】
なお、上記では、光多重装置は、1つの光サブキャリア変調信号を生成して、搬送光に合波するようにしたが、複数の光サブキャリア変調信号を生成して、搬送光に合波するようにしてもよい。
【0060】
例えば、図6において、逓倍器51は、周波数fPを逓倍した、異なる2つの周波数kfP,周波数(k+1)fPのサブキャリア信号を生成する。そして、光多重装置は、2つの乗算器によって、周波数kfP,周波数(k+1)fPのサブキャリア信号をデータ信号で変調し、2つの光変調器で2つの光サブキャリア変調信号を生成する。そして、光多重装置は、2つの光サブキャリア変調信号を足し合わせた信号を光合波器23に出力するようにする。
【0061】
また、光多重装置は、複数の光サブキャリア変調信号を生成する場合、複数の光サブキャリア変調信号を足し合わせた信号を、光分散媒質に透過させてから光合波器23に入力するようにしてもよい。これにより、光サブキャリア変調信号の瞬時光パワーを抑制することができ、非線形光学媒質24でのクロストーク増大を抑制することができる。
【0062】
また、光多重装置は、制御光生成部22から出力される光サブキャリア変調信号を、搬送光と同一の偏波となるように制御して搬送光に合波するようにしてもよい。例えば、図4において、制御光生成部22と光合波器23との間に、偏向制御器を設けるようにしてもよい。これにより、非線形光学媒質24において、高効率な光相互変調を得ることができる。
【0063】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。第2の実施の形態では、制御光生成部の別の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態における光ネットワークシステムは、図1と同様である。また、光多重装置のブロックも図3と同様であるが、制御光生成部22が異なる。
【0064】
図13は、第2の実施の形態に係る制御光生成部のブロック図である。図13に示すように、制御光生成部は、基準光生成部61、光周波数逓倍シフタ62、光変調器63、および光合波器64を有している。
【0065】
基準光生成部61は、光周波数νS0,νS1の2つのCW光を出力する。2つのCW光の光周波数νS0,νS1は、同じであってもよい。
基準光生成部61は、例えば、光コム光源である。光コム光源は、パイロット信号の周波数fPを基にした光周波数間隔のCW光を生成することができる。光周波数νS0,νS1の2つのCW光は、光コム光源の光周波数間隔k・fPの2つのモード成分を、光波長分波器により抽出して得ることができる(νS1=νS0±k・fP)。
【0066】
または、基準光生成部61は、CW光源から出力される光を、光スプリッタによって2つに分割し、同じ光周波数のCW光を得るようにしてもよい。(νS1=νS0)。
光周波数逓倍シフタ62には、パイロット信号抽出部21から出力されるパイロット信号の周波数fPと、基準光生成部61から出力される光周波数νS1のCW光が入力される。光周波数逓倍シフタ62は、基準光生成部61から出力されるCW光の光周波数νS1を、パイロット信号の周波数fPの整数倍分シフトする。例えば、光周波数逓倍シフタ62は、CW光の光周波数νS1を、パイロット信号の周波数fPのj倍分シフトし、次の式(2)に示す光周波数のCW光(サブキャリア光)を出力する。
【0067】
ν’S1=νS1±jfP …(2)
光変調器63には、光周波数逓倍シフタ62から出力されるサブキャリア光と、伝送路2で伝送するデータ信号が入力される。光変調器63は、サブキャリア光をデータ信号で変調する。
【0068】
光変調器63は、例えば、ニオブ酸リチウム光変調器またはEA(Electro Absorption)変調器であり、サブキャリア光をデータ信号で光強度変調または位相変調する。また、光変調器63は、光ファイバ、周期分極反転ニオブ酸リチウム、半導体光増幅器、シリコン細線導波路などの非線形光学媒質であってもよい。
【0069】
光合波器64には、基準光生成部61から出力される光周波数νS0のCW光と、データ信号で変調されたサブキャリア光とが入力される。光合波器64は、光周波数νS0のCW光と、データ信号で変調されたサブキャリア光とを合波する。これにより、光合波器64からは、次の式(3)に示す周波数の光サブキャリア変調信号が出力される。
【0070】
fj=|νS0−ν’S1|=|νS0−(νS1±jfP)| …(3)
光合波器64から出力される光サブキャリア変調信号は、例えば、図3に示した光合波器23に出力される。
【0071】
図13の制御光生成部では、光周波数逓倍シフタ62と光合波器64との間に光変調器63を設けるようにしたが、基準光生成部61と光合波器64との間に設けるようにしてもよい。また、光変調器63は、光周波数逓倍シフタ62と光合波器64との間に設けるとともに、基準光生成部61と光合波器64との間にも設けるようにしてもよい。この場合、光変調器63と、基準光生成部61と光合波器64との間に設けた光変調器には、同じデータ信号を入力する。また、光変調器63は、光合波器64のあとに設けてもよい。
【0072】
図14は、光周波数逓倍シフタのブロック図である。図14に示すように、光周波数逓倍シフタ62は、光スイッチ71,75,76、光カプラ72、光遅延線73、光周波数シフタ74、注入同期レーザ77、およびコントローラ78を有している。
【0073】
光スイッチ71には、基準光生成部61で生成された光周波数νS1のCW光が入力される。光スイッチ71は、コントローラ78の制御に応じて、入力されるCW光を光カプラ72に出力する。
【0074】
光カプラ72は、光スイッチ71から出力されるCW光を光遅延線73に出力する。また、光カプラ72は、光スイッチ75から出力される光を光遅延線73と光スイッチ76とに出力する。
【0075】
光遅延線73は、入力される光を遅延して出力する。
光周波数シフタ74には、パイロット信号抽出部21から出力されるパイロット信号の周波数fPと、光遅延線73から出力される光とが入力される。光周波数シフタ74は、光遅延線73から出力される光周波数を周波数fP分シフトして出力する。従って、光カプラ72、光遅延線73、光周波数シフタ74、および光スイッチ75のループを周回する光は、j回周回すると、その光周波数は次の式(4)に示すようになる。
【0076】
νj=νS1±jfP …(4)
光周波数シフタ74は、例えば、デュアルマッハ−ツェンダ光変調器の正弦波(周波数fP)による光片側波帯変調によって、入力される光の光周波数を周波数fP分シフトすることができる。または、光周波数シフタ74は、パイロット信号の周波数fPを基にした光周波数間隔の光コム発生器の出力から、周波数fP分シフトした光の光周波数モードを光フィルタで抽出することにより、入力される光の光周波数を周波数fP分シフトすることができる。または、光周波数シフタ74は、音響光学光スイッチのドップラシフト(fP)による光周波数シフトにより、入力される光の光周波数を周波数fP分シフトすることができる。
【0077】
光スイッチ75は、コントローラ78の制御に応じて、光周波数シフタ74から出力される光を光カプラ72に出力する。
光スイッチ76は、コントローラ78の制御に応じて、光カプラ72から出力される光を注入同期レーザ77に出力する。
【0078】
光スイッチ76からは、光遅延線73の遅延時間で決まる時間幅を持つバースト状の光が出力される。注入同期レーザ77は、バースト状の光を連続して出力する。すなわち、注入同期レーザ77からは、光周波数νS1±jfPのサブキャリア光が出力される。注入同期レーザ77から出力されるサブキャリア光は、光変調器63に出力される。
【0079】
コントローラ78は、光スイッチ71に入力される光周波数νS1のCW光が、光カプラ72、光遅延線73、光周波数シフタ74、および光スイッチ75のループを1周回るように、光スイッチ71のオン・オフを制御する。また、コントローラ78は、光カプラ72、光遅延線73、光周波数シフタ74、および光スイッチ75のループを、光がj回周回するように光スイッチ75のオン・オフを制御する。これにより、CW光がループを1周回ると、光カプラ72から光周波数νS1±fPの光が光スイッチ76に出力され、CW光が2周回ると、光カプラ72から光周波数νS1±2fPの光が光スイッチ76に出力される。コントローラ78は、光カプラ72から光周波数νS1±jfPの光が光スイッチ76に出力されたとき、光スイッチ76をオンし、式(4)に示す光周波数の光を注入同期レーザ77に出力するようにする。
【0080】
このように、制御光生成部は、CW光の光周波数νS1を、パイロット信号の周波数fPの整数倍分シフトし、光周波数νS0のCW光と合波して、光サブキャリア変調信号を生成するようにした。これによっても、光多重装置は、情報を高密度に安定して多重伝送することができる。
【0081】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。第2の実施の形態では、制御光生成部は、1つのデータ信号が多重された光サブキャリア変調信号を生成した。第3の実施の形態では、複数のデータ信号が多重された光サブキャリア変調信号を生成し、搬送光に合波する。なお、第3の実施の形態における光ネットワークシステムは、図1と同様である。また、光多重装置のブロックも図3と同様であるが、制御光生成部22が異なる。
【0082】
図15は、第3の実施の形態に係る制御光生成部のブロック図である。図15に示すように、制御光生成部は、基準光生成部81、n個の光周波数シフタ82a,82b,…,82n、n−1個の光スプリッタ83a,83b,…、n個の光変調器84a,84b,…,84n、および光合波器85,86を有している。基準光生成部81、光周波数シフタ82a,82b,…,82n、光スプリッタ83a,83b,…、および光変調器84a,84b,…,84nは、ツリー構造を有している。
【0083】
基準光生成部81は、光周波数νS0,νS1の2つのCW光を出力する。2つのCW光の光周波数νS0,νS1は、同じであってもよい。基準光生成部81は、図13で説明した基準光生成部61と同様に、例えば、光コム光源またはCW光源によって形成することができる。
【0084】
光周波数シフタ82a,82b,…,82nには、パイロット信号抽出部21から出力されるパイロット信号の周波数fPが入力される。光周波数シフタ82a,82b,…,82nは、入力される光の光周波数を、周波数fP分シフトして出力する。例えば、初段の光周波数シフタ82aには、光周波数νS1のCW光が入力される。従って、光周波数シフタ82aからは、光周波数νS1±fPのCW光が出力される。
【0085】
n−1個の光スプリッタ83a,83b,…は、n−1個の光周波数シフタ82a,82b,…の出力に対応して設けられる。光スプリッタ83a,83b,…は、光周波数シフタ82a,82b,…から出力される光を分割して、一方の光を次段の光周波数シフタ82b,…,82nに出力する。また、光スプリッタ83a,83b,…は、分割した他方の光をn−1個の光変調器84a,84b,…に出力する。
【0086】
例えば、光スプリッタ83aは、光周波数シフタ82aから出力される光周波数νS1±fPのCW光を分割して、光周波数シフタ82bと光変調器84aとに出力する。なお、上記したように、光周波数シフタ82a,82b,…,82nは、入力される光の光周波数を、周波数fP分シフトして出力する。従って、例えば、光周波数シフタ82bは、光周波数νS1±2fPのCW光を光スプリッタ83bに出力する。
【0087】
n−1個の光変調器84a,84b,…には、n−1個の光スプリッタ83a,83b,…から出力されるCW光が入力される。n番目の光変調器84nには、光周波数シフタ82nから出力されるCW光が入力される。従って、n個の光変調器84a,84b,…,84nのそれぞれには、光周波数νS1±fP,νS1±2fP,…,νS1±nfPのCW光(サブキャリア光)が入力される。
【0088】
また、n個の光変調器84a,84b,…,84nには、異なるn個のデータ信号D1,D2,…,Dnが入力される。光変調器84a,84b,…,84nのそれぞれは、サブキャリア信号をデータ信号D1,D2,…,Dnで変調して、光合波器85に出力する。光変調器84a,84b,…,84nは、図13で説明した光変調器63と同様に、例えば、ニオブ酸リチウム光変調器またはEA変調器によって形成される。または、光変調器84a,84b,…,84nは、光ファイバ、周期分極反転ニオブ酸リチウム、半導体光増幅器、シリコン細線導波路などの非線形光学媒質で形成される。
【0089】
光合波器85は、光変調器84a,84b,…,84nから出力される光を合波する。
光合波器86は、光合波器85から出力される光と、基準光生成部81から出力される光周波数νS0のCW光とを合波する。従って、光合波器86からは、データ信号D1,D2,…,Dnによって変調された光サブキャリア変調信号が出力される。光合波器86から出力される光サブキャリア変調信号は、例えば、図3に示した光合波器23に出力される。
【0090】
このように、制御光生成部は、入力される光の光周波数をパイロット信号の周波数fP分シフトする、初段に光周波数νS1の光が入力されるn個の光周波数シフタ82a〜82nを有する。また、制御光生成部は、n−1個の光周波数シフタ82a,82b,…から出力される光を分割し、一方の光を次段の光周波数シフタ82b,…,82nに出力するn−1個の光スプリッタ83a,83b,…を有する。また、制御光生成部は、n−1個の光スプリッタから出力される他方の光と、最終段の光周波数シフタ82nから出力される光とを複数の異なるデータ信号D1,D2,…,Dnで変調するn個の光変調器84a,84b,…84nを有する。さらに、制御光生成部は、n個の光変調器84a,84b,…84nから出力される光を合波する光合波器85と、光合波器85から出力される光と光周波数νS0の光とを合波し、光サブキャリア変調信号を生成する光合波器86を有する。これによっても、光多重装置は、情報を高密度に安定して多重伝送することができる。
【0091】
また、光多重装置のそれぞれは、複数種類のデータ信号を搬送光に多重して伝送することができる。ただし、光多重装置のそれぞれは、搬送光に多重されるデータ信号が重ならないようにする。例えば、光多重装置のそれぞれは、光周波数シフタ82a,82b,…,82nの段数を変え、異なる周波数ifPを有するサブキャリア光を生成するようにする。
【0092】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。第2の実施の形態では、図13で説明したように、基準光生成部61で光周波数νS0,νS1のCW光を生成した。第4の実施の形態では、光周波数νS0,νS1のCW光に対応する光を伝送路で伝送し、この光を受信して光サブキャリア変調信号を生成するようにする。なお、第4の実施の形態における光ネットワークシステムは、図1と同様である。また、光多重装置のブロックも図3と同様であるが、制御光生成部22が異なる。
【0093】
図16は、第4の実施の形態に係る光多重装置のブロック図である。図16に示す光多重装置は、図2に示す光多重装置1a〜1nの左からj番目の光多重装置を示している。図16に示すように、光多重装置は、光分波器91、パイロット信号抽出部92、光波長分波器93、注入同期レーザ94、光周波数シフタ95、光変調器96、光合波器97,98、および非線形光学媒質99を有している。
【0094】
伝送路2には、光周波数νCの搬送光EC(j-1)が伝搬している。また、伝送路2には、光周波数νS0,νS(j-1)の制御光ES(j-1)が伝搬している。光分波器91は、伝送路2を伝搬している搬送光EC(j-1)と制御光ES(j-1)とを分波し、搬送光EC(j-1)をパイロット信号抽出部92に出力し、制御光ES(j-1)を光波長分波器93に出力する。
【0095】
搬送光EC(j-1)には、パイロット信号が多重されている。パイロット信号抽出部92は、搬送光EC(j-1)からパイロット信号を抽出し、その周波数fPを抽出する。
光波長分波器93は、光周波数νS0と光周波数νS(j-1)との光に分波し、光周波数νS0の光を光合波器97に出力し、光周波数νS(j-1)の光を注入同期レーザ94に出力する。なお、光周波数νS0の光は、CW光であり、光周波数νS(j-1)の光は、前段の光多重装置(j−1番目の光多重装置)で生成された光サブキャリア変調信号である。
【0096】
注入同期レーザ94は、光波長分波器93から出力される光サブキャリア変調信号をCW光として出力する。すなわち、注入同期レーザ94は、光周波数νS(j-1)のCW光を出力する。
【0097】
光周波数シフタ95には、パイロット信号抽出部92で抽出されたパイロット信号の周波数fPと、注入同期レーザ94から出力される光周波数νS(j-1)のCW光が入力される。光周波数シフタ95は、注入同期レーザ94から出力されるCW光の光周波数νS(j-1)を、パイロット信号の周波数fP分シフトする。従って、光周波数シフタ95からは、次の式(5)に示す光周波数のCW光(サブキャリア光)が出力される。
【0098】
νS(j)=νS(j-1)±fP …(5)
光変調器96には、光周波数シフタ95から出力されるサブキャリア光と、伝送路2で伝送するデータ信号とが入力される。光変調器96は、サブキャリア光をデータ信号で変調する。光変調器96は、例えば、図13で説明した光変調器63と同様に、例えば、ニオブ酸リチウム光変調器またはEA変調器によって形成される。または、光変調器96は、光ファイバ、周期分極反転ニオブ酸リチウム、半導体光増幅器、シリコン細線導波路などの非線形光学媒質で形成される。
【0099】
光合波器97は、光変調器96から出力されるデータ信号で変調された光キャリア信号と、光波長分波器93から出力される光周波数νS0のCW光とが入力される。光合波器97は、光周波数νS0のCW光と、データ信号で変調されたサブキャリア光とを合波する。これにより、光合波器97からは、次の式(6)に示す周波数の光サブキャリア変調信号が出力される。
【0100】
fS(j)=|νS0−νS(j)|=|νS0−(νS(j-1)±fP)| …(6)
なお、光合波器97からは、光周波数νS0,νS(j)の光(制御光ES(j))が出力される。
【0101】
光合波器98は、伝送路2中の非線形光学媒質において、伝送路2を伝搬している搬送光に光サブキャリア変調信号を多重するため、光合波器97から出力される光サブキャリア変調信号を搬送光に合波する。
【0102】
非線形光学媒質99には、光サブキャリア変調信号が合波された搬送光が入力される。非線形光学媒質99に入力された搬送光は、非線形光学媒質99によって、光サブキャリア変調信号により光相互変調され、光サブキャリア変調信号が多重される。
【0103】
図17は、信号のスペクトルを説明する図である。図17において、図16と同じものには同じ符号が付してある。
図17に示すスペクトル101aは、図17に示すj番目の光多重装置の入力におけるスペクトルを示している。横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
【0104】
スペクトル101aのνCは、搬送光EC(j-1)のスペクトルを示している。νCの両隣りに立っているパワーは、パイロット信号のパワーを示している。また、パイロット信号の外側に立っているパワーは、前段の光多重装置で多重された光サブキャリア変調信号のパワーを示している。
【0105】
スペクトル101aのνS0は、CW光のスペクトルを示している。νS(j-1)は、光サブキャリア変調信号のスペクトルを示している。
すなわち、伝送路2には、パイロット信号と光サブキャリア変調信号とが多重された搬送光EC(j-1)が伝搬している。また、伝送路2には、光周波数νS(j)のCW光と光周波数νS(j-1)の光サブキャリア変調信号との制御光ES(j-1)が伝搬している。
【0106】
スペクトル101bは、光合波器97から出力される光サブキャリア変調信号のスペクトルを示している。横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。光合波器97からは、スペクトル101bに示すように、周波数fS(j)の光サブキャリア変調信号が出力される。
【0107】
スペクトル101cは、非線形光学媒質99の出力におけるスペクトルを示している。横軸は光周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
非線形光学媒質99の出力では、スペクトル101cに示すように、光周波数νCの搬送光に、光合波器97から出力された光サブキャリア変調信号が多重されている。非線形光学媒質99からは、光周波数νS0のCW光と、光周波数νS(j)の光サブキャリア変調信号との制御光ES(j)が出力される。
【0108】
このように、光分波器91は、伝送路2を伝搬している搬送光と制御光とを分波する。光波長分波器93は、光分波器91によって分波された制御光を、CW光と前段の光多重装置で生成された光サブキャリア変調信号とに分波する。注入同期レーザ94は、分波された光サブキャリア変調信号からCW光を生成し、光周波数シフタ95は、CW光の光周波数を、パイロット信号の周波数分シフトし、サブキャリア光を生成する。光変調器96は、サブキャリア光をデータ信号で変調し、光合波器97は、光波長分波器93から出力されるCW光と、データ信号で変調されたサブキャリア光とを合波して、光サブキャリア変調信号を生成する。これによっても、光多重装置は、情報を高密度に安定して多重伝送することができる。
【符号の説明】
【0109】
1a〜1n 光多重装置
2 伝送路
3 受信機
21 パイロット信号抽出部
22 制御光生成部
23 光合波器
24 非線形光学媒質
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送路を伝搬している光に多重されているパイロット信号を抽出する抽出部と、
前記伝送路で伝送するデータ信号と前記抽出部で抽出された前記パイロット信号とに基づいて光サブキャリア変調信号を生成する生成部と、
前記伝送路中の非線形光学媒質に、前記伝送路を伝搬している搬送光に前記データ信号を多重して入射するために、前記生成部で生成された前記光サブキャリア変調信号を前記搬送光に合波する合波器と、
を有することを特徴とする光多重装置。
【請求項2】
前記パイロット信号は、前記搬送光に多重されていることを特徴とする請求項1記載の光多重装置。
【請求項3】
前記生成部は、
前記抽出部によって抽出された前記パイロット信号の周波数を逓倍した周波数を有するサブキャリア信号を生成するサブキャリア信号生成部と、
前記サブキャリア信号生成部で生成された前記サブキャリア信号を前記データ信号で変調する変調器と、
前記変調器から出力される信号に応じた前記光サブキャリア変調信号を生成する光変調器と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光多重装置。
【請求項4】
前記生成部は、
第1の光の光周波数を前記抽出部によって抽出された前記パイロット信号の周波数の整数倍分シフトするシフタと、
第2の光と前記シフタによって周波数がシフトされた前記第1の光とを合波し、前記光サブキャリア変調信号を生成する変調信号合波器と、
を備え、
前記シフタから出力される前記第1の光および前記第2の光の一方または両方が、前記データ信号によって光変調されることを特徴とする請求項1または2に記載の光多重装置。
【請求項5】
前記シフタは、前記第1の光を周回ループして、前記第1の光の光周波数を前記パイロット信号の周波数の整数倍分シフトすることを特徴する請求項4記載の光多重装置。
【請求項6】
前記生成部は、さらに、
前記伝送路を伝搬している前記搬送光と制御光とを分波する第1の分波器と、
前記第1の分波器によって分波された前記制御光を第1の制御光と第2の制御光とに分波し、前記第2の制御光を前記第2の光として出力する第2の分波器と、
前記第1の制御光を連続光に変換し、前記第1の光として出力する変換部と、
を有することを特徴とする請求項4記載の光多重装置。
【請求項7】
前記生成部は、
入力される光の光周波数を前記パイロット信号の周波数分シフトする、初段に第1の光が入力される複数のシフタと、
前記複数のシフタから出力される光を分割し、一方の光を次段の前記複数のシフタに出力する複数のスプリッタと、
前記複数のスプリッタから出力される他方の光と前記複数のシフタの最終段から出力される光とを複数の異なる前記データ信号で変調する複数の光変調器と、
前記複数の光変調器から出力される光を合波する第1の光合波器と、
前記第1の光合波器から出力される光と第2の光とを合波し、前記光サブキャリア変調信号を生成する第2の光合波器と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光多重装置。
【請求項8】
伝送路と、
前記伝送路を伝搬している光に多重されているパイロット信号を抽出する抽出部と、前記伝送路で伝送するデータ信号と前記抽出部で抽出された前記パイロット信号とに基づいて光サブキャリア変調信号を生成する生成部と、前記伝送路中の非線形光学媒質において前記伝送路を伝搬している搬送光に前記データ信号を多重するために、前記生成部で生成された前記光サブキャリア変調信号を前記搬送光に合波する合波器と、を有する複数の光多重装置と、
を有することを特徴とする光ネットワークシステム。
【請求項1】
伝送路を伝搬している光に多重されているパイロット信号を抽出する抽出部と、
前記伝送路で伝送するデータ信号と前記抽出部で抽出された前記パイロット信号とに基づいて光サブキャリア変調信号を生成する生成部と、
前記伝送路中の非線形光学媒質に、前記伝送路を伝搬している搬送光に前記データ信号を多重して入射するために、前記生成部で生成された前記光サブキャリア変調信号を前記搬送光に合波する合波器と、
を有することを特徴とする光多重装置。
【請求項2】
前記パイロット信号は、前記搬送光に多重されていることを特徴とする請求項1記載の光多重装置。
【請求項3】
前記生成部は、
前記抽出部によって抽出された前記パイロット信号の周波数を逓倍した周波数を有するサブキャリア信号を生成するサブキャリア信号生成部と、
前記サブキャリア信号生成部で生成された前記サブキャリア信号を前記データ信号で変調する変調器と、
前記変調器から出力される信号に応じた前記光サブキャリア変調信号を生成する光変調器と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光多重装置。
【請求項4】
前記生成部は、
第1の光の光周波数を前記抽出部によって抽出された前記パイロット信号の周波数の整数倍分シフトするシフタと、
第2の光と前記シフタによって周波数がシフトされた前記第1の光とを合波し、前記光サブキャリア変調信号を生成する変調信号合波器と、
を備え、
前記シフタから出力される前記第1の光および前記第2の光の一方または両方が、前記データ信号によって光変調されることを特徴とする請求項1または2に記載の光多重装置。
【請求項5】
前記シフタは、前記第1の光を周回ループして、前記第1の光の光周波数を前記パイロット信号の周波数の整数倍分シフトすることを特徴する請求項4記載の光多重装置。
【請求項6】
前記生成部は、さらに、
前記伝送路を伝搬している前記搬送光と制御光とを分波する第1の分波器と、
前記第1の分波器によって分波された前記制御光を第1の制御光と第2の制御光とに分波し、前記第2の制御光を前記第2の光として出力する第2の分波器と、
前記第1の制御光を連続光に変換し、前記第1の光として出力する変換部と、
を有することを特徴とする請求項4記載の光多重装置。
【請求項7】
前記生成部は、
入力される光の光周波数を前記パイロット信号の周波数分シフトする、初段に第1の光が入力される複数のシフタと、
前記複数のシフタから出力される光を分割し、一方の光を次段の前記複数のシフタに出力する複数のスプリッタと、
前記複数のスプリッタから出力される他方の光と前記複数のシフタの最終段から出力される光とを複数の異なる前記データ信号で変調する複数の光変調器と、
前記複数の光変調器から出力される光を合波する第1の光合波器と、
前記第1の光合波器から出力される光と第2の光とを合波し、前記光サブキャリア変調信号を生成する第2の光合波器と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光多重装置。
【請求項8】
伝送路と、
前記伝送路を伝搬している光に多重されているパイロット信号を抽出する抽出部と、前記伝送路で伝送するデータ信号と前記抽出部で抽出された前記パイロット信号とに基づいて光サブキャリア変調信号を生成する生成部と、前記伝送路中の非線形光学媒質において前記伝送路を伝搬している搬送光に前記データ信号を多重するために、前記生成部で生成された前記光サブキャリア変調信号を前記搬送光に合波する合波器と、を有する複数の光多重装置と、
を有することを特徴とする光ネットワークシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−51541(P2013−51541A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188168(P2011−188168)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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