説明

光子検出器

【解決手段】光子検出システムは、アバランシェフォトダイオードと、 前記アバランシェフォトダイオードのための電圧源と、を具備し、前記アバランシェフォトダイオードは、シリコンまたはそのヘテロ構造を具備し、前記電圧源は、時間に関して静的な電圧成分と時間と共に変化する電圧成分とで、前記アバランシェフォトダイオードにバイアスをかける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に本明細書で説明される実施形態は、弱い光信号を検出するための光子検出器および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
個々の光子のレベルへの応答を記録することができる光学的な光検出器に関する多くの応用において差し迫った必要がある。単一光子検出器は、デバイス上の1以上の光子の存在を検出するが光子の数を判定することができない閾値デバイスである。それらは、検出器で光子の到着時刻を判定することに基づく様々な応用のためと同様に、一般的な低い光レベル検出に用いられる。
【0003】
単一光子検出器の応用は工業用の検査、環境モニタリング、光ファイバーケーブルおよび成分の試験、医学画像、化学分析および科学的調査を含んでいる。これらの応用の多くは、単一光子検出器が単一光子の到達時刻を測定する能力を用いる。工業用の検査システムでは、明るいレーザパルスは検査の下の物体に向けられる。また、反射されるパルスからの複数の単一光子に関する時刻が記録される。飛行データの時間から、物体の3D画像を構築することは可能である。単一光子検出器に関連する同様の技術は、光ファイバーとコンポーネントの障害の位置を判定し、かつ大気中の粒子を測定するために用いられる。
【0004】
単一光子検出もまた、赤外波長でのレーザー光学画像でと同様に、医学画像での放射性同位体およびX線の様々な形式で使用される。単一光子検出を用いる寿命蛍光測定を、ある病状の診断に用いることができる。それは、サンプルの化学的なレシピを判定する分析化学において使用される。単一光子検出はまた、素粒子物理学、宇宙物理学および材料科学の分野における科学研究において使用される。
【0005】
光子数検出器は、光子の存在を検出するだけでなく、入射光パルスにおける光子数を数えることもできる。単一光子検出器のように、それらは、検出器での光子の到達時刻を判定することができる。光子数検出器は、光子計数に基づいた低ノイズ光検出に必要である。ここでそれらは、より強い光の強度で操作することができる単一光子検出器よりも優位にある。
【0006】
入射パルスでの光子数を解明する能力はまた、量子情報技術での多くの応用にとって非常に重要である。量子中継では、例えば、各検出器において0,1,および2光子検出イベントを区別する必要がある。同様の検出器能力は、線形光学量子計算において用いられるゲートの多くに必要とされる。
【0007】
可視/近赤外線の波長(300−1100nm)で作動することができる光子数検出器は、線形の光学的な量子計算、量子リレーおよびリピーター、量子暗号、光子数状態の生成および調整、および、光源の光子放射統計の特性への応用を有する。
【0008】
現在、ガイガーモードシリコンアバランシェフォトダイオード(Geiger Mode Silicon Avalanche Photodiodes)(APD)は可視/近赤外線の波長(300−1100nm)で低ノイズ光検出に用いられる。
【0009】
引用文献リスト
WO2008/104799
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、次の限定されない実施形態を参照して記述される:
【図1】図1は、本発明の実施形態に従うシリコン自己差分(Self-Differencing)アバランシェフォトダイオードの概略図である;
【図2】図2は、本発明の実施形態に従うフォトダイオードにバイアスをかけるために用いられるAPDバイアス電圧のプロットである;
【図3】図3は、図2のスキームを用いてバイアスがかけられた、図1のデバイスからの出力信号Voutのプロットである;
【図4】図4は、オシロスコープ上で捕らえられた、図1のデバイスの出力のプロットである;
【図5】図5は、図1のデバイスの単一光子検出効率の関数として、暗計数確率P(円)およびアフターパルス確率P(正方形)のプロットである;
【図6】図6は、図1のデバイス用の固定された平均光子フラックスに関して、出力(Vsd)のアバランシェピークの高さの統計を反映する確率分布のプロットである;
【図7】図7は、同じ光子フラックスに関して減衰されたレーザー源のポアソン分布に対応して適合(黒い実線)した測定されたアバランシェ確率分布(円)のプロットである;
【図8】図8は、光子フラックスμと、図1のデバイス用の自己差分器出力Vsdの関数として、ページから出て来る(coming out of the page)、アバランシェ確率分布の導関数δ(確率)/δVsdのグレースケールプロットである;
【図9】図9a)は、印加されたDCバイアスVdcの関数として図1のデバイスの単一光子アバランシェ確率分布のプロットであり、図9b)は、図1のデバイス用の印加されたDCバイアスの関数として、測定された単一光子のピーク幅のW、および0−1光子ピーク分離Δ0−1のプロットを示す;
【図10】図10は、本発明の更なる実施形態に従う光子検出器の概略図である;
【図11】図11(a)は、検出器が、側面から見て熱電冷却器上に積載される本発明の実施形態に従う光子検出器の概略図であり、図11(b)は、正面から見た図11(a)の同じ光子検出器の概略図である;
【図12】図12は、正弦波ゲーティング変調(sine-wave gating modulation)を用いて、本発明の更なる実施形態に従う検出器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態によれば、アバランシェフォトダイオードと、前記アバランシェフォトダイオードのための電圧源と、を具備する光子検出システムが提供され、前記アバランシェフォトダイオードは、シリコンまたはそのヘテロ構造を具備し、前記電圧源は、前記アバランシェフォトダイオードに、時間に関して静的である電圧成分および時間に関して変化する電圧成分でバイアスをかける。
【0012】
実施形態では、APD内の光子吸収層は、1eVより大きなバンドギャップがある。APDは、SiあるいはSi−GeのようなSiヘテロ構造を含んでもよい。
【0013】
更なる実施形態では、APDへのバイアスは、DCバイアス、および時間に関して周期的に変化するAC変調バイアスを含む。
【0014】
AC変調周期(period)は、100nsあるいはそれ以下でもよく、1ボルト以上の振幅である。DCバイアスは、APDの破壊電圧(breakdown voltage)より大きくてもよい。
【0015】
本発明の実施形態に従う検出器を、高い周波数で用いることができるので、それらは準連続である操作を達成することができる。準連続である操作では、光子の源と検出器との間で同期化は必要とされない。非常に高いゲーティング周波数に関しては、検出器が光子を検出することができない期間が、全体の検出効率にとって禁止はされないので、準連続である操作は可能である。
【0016】
準連続である操作を増強するために、検出ウィンドウを広げるゲート信号の周期を変えることは可能である。周期は、ランダムにあるいはノイズとして変えられてもよい。したがって、実施形態では、変調の周期は時間の関数として変化する。この状況では、バイアスを変える時間は準周期的である。例えば、そのようなバイアスは、わずかだけ(例えば50Hzよりも小さく)ゲーティング周波数を変えてもよい。
【0017】
実施形態では、APDバイアス電圧は、変調バイアスのそれぞれの周期(period)で、その最高値ではAPD破壊電圧より上であり、その最低値ではAPD破壊電圧より下である。この周期はゲーティング周期またはクロッキング周期(clocking period)と呼ばれてもよい。
【0018】
実施形態では、検出器は、前記アバランシェフォトダイオードから出力信号を受信し、前記出力信号を処理して、時間的に変化する成分を取り除く出力回路を具備する。
【0019】
実施形態によれば、アバランシェフォトダイオードと、前記アバランシェフォトダイオードのための出力回路とを具備する光子検出システムが提供され、前記アバランシェフォトダイオードは、シリコンまたはそのヘテロ構造を具備し、前記出力回路は、前記アバランシェフォトダイオードからの出力信号を受信し、前記出力信号を処理して時間的に変化する成分を前記出力信号から取り除く。
【0020】
実施形態では、出力回路は、APDの出力電圧と前期での電圧と比較する。更なる実施形態では、回路は、ゲーティングバイアス周期の前半と後半でのAPDの出力電圧を合成する。
【0021】
更なる実施形態では、信号を2つの部分に分離する信号分割器と、ある部分を他の部分に対して遅延させる電線と、前記2つの部分間での差を出力する信号差分器を具備する自己差分回路が提供される。
【0022】
一実施形態では、遅延は整数個のゲート周期である。
【0023】
また更なる実施形態では、信号を2つの部分に分離する信号分割器と、前記2つの部分のうちの1つの位相を180度シフトする位相シフターまたは信号インバーターと、前記2つの部分の和を出力する信号合成器と、を具備する自己差分回路が提供される。
【0024】
自己差分回路が提供される場合、それは前記2つの部分の強度の平衡を保つ、および/または、遅延の長さを変える制御部をさらに具備してもよい。
【0025】
増幅器は自己差分回路の出力を増幅するために提供されてもよい。
【0026】
出力回路はまた、周期的なバックグラウンドを除去する、またはアバランシェ信号を識別するための「ロックイン」技術を使用するフィルターを具備してもよい。
【0027】
以前に言及されたように、本発明の実施形態は光子計数に用いられてもよい。したがって、更なる実施形態では、出力回路は、多数の所定レベル間での出力電圧を識別するために提供される。例えば、ピークの高さが検出された光子数に依存するように、そのような回路はアバランシェピークの高さを測定するように構成されてもよい。さらに次の例では;出力回路は弁別器が提供されていて、前記弁別器は多数の識別レベルを設定するように構成され、個々の弁別器レベルは1つ、2つ、3つ、4つの光子などに関する出力信号の値に対応する。
【0028】
更なる実施形態では、光子検出法は、アバランシェフォトダイオードの温度を低下させるためにさらにクーラーを含む。更なる実施形態では、光子検出システムは、多数のアバランシェフォトダイオードを用いて検出されるいくつかのパルスへ入射パルスを細分化するビームスプリッターを具備する。更なる実施形態では、検出システムはAPD素子のアレイを具備する。
【0029】
光は光ファイバーによってアバランシェフォトダイオードにつながれるかもしれない。
【0030】
更なる実施形態によれば、光子を検出する方法が提供され、その方法は、シリコンまたはそのヘテロ構造を具備するアバランシェフォトダイオードを提供し、時間に関して静的な電圧成分、および時間に応じて変化する電圧成分を持ったアバランシェフォトダイオードにバイアスを適用する、ことを具備する。
【0031】
図1は本発明の実施形態に従って光子検出器を表現する。光子検出器は、出力信号の自己差分を可能にする構成中に配置されるシリコンアバランシェフォトダイオードである。自己差分は、後で説明でより詳細に述べられるだろう。検出器は、シリコン自己差分アバランシェフォトダイオード(Silicon Self-Differencing Avalanche Photodiode)(Si SD−APD)と呼ばれる。
【0032】
APDは当技術において有名であり、APDの内部層状構造はここでは説明しない。
【0033】
それが逆バイアスされるように、シリコンベースのアバランシェフォトダイオード(APD)117が接続される。バイアス電圧は、DCバイアス源113からのDC成分のVDC111、およびACバイアス源109からのAC成分のVAC107の両方を含む。AC成分。
【0034】
AC 107およびDC 111の成分は、バイアスティー105を用いて合成される。バイアスティー105は、ティーの第1のアーム上でAC源109に接続されたキャパシタ101と、ティーの第2のアーム上でDC源113に接続されたインダクタ103とを具備する。
【0035】
APD 117の出力は、(地面に導く)抵抗119と自己差分化回路123とに分割される。
【0036】
光子がAPD 117上に入射する場合、アバランシェ光電流は、出力電圧Vout121に対応する直列抵抗119にわたって電圧を導く光子検出に起因するアバランシェによって引き起こされる。
【0037】
高速操作に起因する小さな複数のアバランシェを覆い隠すゲーティング変調に対して、APD 117の周期的な容量性応答を分離させるために、信号分割器125、2つの電線127および129、および信号差分器131を具備する自己差分化回路123が使用される。
【0038】
Si−APD出力電圧、Vout121は、信号を等しい成分に近い2つに分割する信号分割器125に入力される。ポテンシオメーター135は、分割比の平衡を保ち、さらに2つの成分を均等にするために用いられる。電線のうちの1つ127が他の電線129より長いので、これらの成分のうちの1つは遅延する。
【0039】
遅延は、AC電圧源111によって供給される整数個のゲーティング周期Tになるように選択され、遅延線127は、Tとは無関係に遅延を調整するために、調整可能になるように選択される。
【0040】
これらの2つの信号が信号差分器 131に入力される場合、それらは他方から減じられたものであり、また、強い周期的な容量性バックグラウンドは、自己差分器出力電圧Vsd133で大部分キャンセルされる。容量性バックグラウンドの遅延をさらに改善するために、780MHzのローパスフィルタ137および増幅器139を使用することは一般的である。
【0041】
これは、小さな複数のアバランシェが自己差分器出力、Vsd133で明らかにされることを可能にする。これらの小さな複数のアバランシェの振幅は、入射光子数に依存する。
【0042】
図1での設備の代わりとして、電線127と129との間での電気的遅延は、奇数個の、ゲーティング周期Tの半分になるように選択されてもよい。
【0043】
この場合、信号差分器 131は、2つの信号を足し合わせる信号合成器と取り替えられる。これはまた、弱い光子だけがアバランシェを誘起するようにしておくAPD 117の容量性応答をキャンセルする効果を有する。
【0044】
APD 117は、シリコンを具備し、そして深い接合または浅い接合の品種でもよい。さらに、それはシリコン−ゲルマニウムヘテロ構造でもよい。一実施形態では、光子吸収は、1eVより大きなエネルギーバンドギャップを持った層でのAPD内で起こる。好ましくは、APDは、10〜200ミクロンのその活動的な領域の直径を持っている。好ましくは、それは10pF未満の接合キャパシタンスを有している。
【0045】
本発明の実施形態に従う光子検出器は、可視の/近赤外線の波長(300−1100nm)で低ノイズ光検出を許可する。
【0046】
本発明の実施形態に従う検出器では、APDはガイガーモードとは異なるモードで操作される。ここで、定常状態バイアスと同様に時間変化バイアスが印加される。これは、周期的または準周期的なアーチファクトを、通常動作で光子に誘起された複数のアバランシェによる所望信号を圧倒する出力信号に導入する。これは、通常、所望の光子誘起信号の検出を妨げている。結果として、それは以前には望ましくないと見なされていた。本発明の実施形態に従う検出器では、デバイスの動作から発生するアーチアファクトは、出力信号から取り除かれる。例えば、異なる周期からの出力信号を比較するか合成するかによって、あるいは、フィルタリングまた「ロックイン」スタイルの技術によって時間変化する信号を取り除くことによって本発明の実施形態に従う検出器では、ノイズは、信号内の光子数での統計変動により、ショットノイズ(量子雑音)によってのみ制限されている。増幅器ノイズのような他のすべての騒音源が取り除かれる。
【0047】
本発明の実施形態に従う検出器には、可視/近赤外線の波長での低ノイズ光検出を提供する他の検出器(例えば、光電子増倍管、Siフォトダイオード、Si APDおよびガイガーモードSi APD)に対して他のかなりの利点を提供する。例えば、それはより高い光子検出効率、より低い暗計数ノイズレート、より低いアフターパルスレート;より低いタイミングジッタ;外部時計に同期する能力;比較的高いダイナミックレンジ(つまり、ガイガーモードSi APDよりも強い光の強度を検出することができる);室温での、あるいは熱電冷却(つまり、冷凍剤を必要としない)での作動を提供し、比較的安価な標準の技術を使用する。
【0048】
さらに、本発明の実施形態に従う検出器は、入射パルスにおける光子数が判定されることを可能にし、また次のような現在の光子数検出器に対するかなりの利点を提供する:高い光子検出効率;低い暗計数ノイズレート;低いアフターパルスレート;低いタイミングジッタ;外部時計と同期されている;高いダイナミックレンジ;室温で、あるいは熱電冷却(つまり、冷凍剤を必要としない)の下で作動する;そして、比較的安価な標準の技術を使用する。
【0049】
ガイガーモードSi APDでは、直流電圧源からの連続的な直流電圧は、その破壊電圧より上でAPDにバイアスをかけるために提供される。入射光子の吸収は、デバイスを通る電荷キャリアのアバランシェを促進することができる電子正孔ペアを生成する。アバランシェを、デバイスからの電流パルスとして検出することができる。アバランシェパルスは、それがデバイスを飽和させるように典型的には十分大きい。したがって、1つ、2つのあるいは3以上の光子の吸収によって生成された信号に認識可能な差異はない。
【0050】
対照的に、本発明の実施形態に従う検出器では、APDに周期的にその破壊電圧以上および以下でバイアスをかける交互バイアスを提供するために、静電圧源および時間変動する電圧源の両方が使用される。
【0051】
実施形態(シリコン自己差分アバランシェフォトダイオード(Si SD−APD))では、APD出力電圧と整数のゲーティングバイアス周期によって遅延される電圧と比較する自己差分回路が使用される。非常に弱い複数のアバランシェをSi SD−APDで検出することができ、それはデバイスを飽和させない、そして生成される信号は吸収された光子数に依存する。そのような回路はWO2008/104799に説明されている。
【0052】
デバイスは、シリコンAPDまたはシリコンヘテロ構造を具備するAPDを備えるシリコンに基づいたシステムを使用する。
【0053】
上記の配置においてSi APDを用いることは、自己差分配置においてInGaAsに基づくAPDを使用するよりも、顕著な利点を提供する。Si APDは非常に高い検出効率である。最高で80%までの単一光子検出効率が測定された。また、より高い値は、より高い量子効率を有するAPDを使用すると可能である。高い検出効率は、シングルショットの光子数検出(すなわち、個々のパルスにおいて光子数を判定すること)にとって重要である。これは、量子リレーまたはリピーターにおいて、または線形光学量子計算のような多くの量子情報応用にとって望ましい。
【0054】
図2は、シリコン自己差分アバランシェフォトダイオードから、高い単一光子検出効率および光子数分解能を得るのに必要な特別のバイアス条件を示す。
【0055】
APDは、逆方向の破壊電圧Vbr201を有する。この電圧より上では光励起キャリアの巨視的なアバランシェゲインが生じる。
【0056】
APDバイアス電圧Vapd115は、頂点間振幅Vac107と周期T203を有するAC電圧上に重ね合わせられたDC電圧Vdc111を具備する。ACバイアスの周期はゲーティング周期あるいはクロック周期と時々呼ばれ、ゲーティング周波数かクロック周波数の逆数である。
【0057】
ゲーティング周期またはクロック周期は光子源の周期と同期してもよい。一実施形態では、検出器のゲーティング周波数は、検出器が光子を検出することができる時間窓を本質的に広げるために使用される僅かな量(例えば50kHz)によって変えられる。その最高値Vhigh209では破壊電圧201より上にあり、その最低値Vlow205では破壊電圧201より下にあるAPDバイアス電圧115に起因する。Vdcはまた破壊電圧以下に設定することができる。
【0058】
DCバイアスVdc111は逆方向破壊電圧、Vbr201より大きさにおいてより大きい場合は好ましいことが実験的に見出された。
【0059】
Si SD−APDは、(1GHzのゲーティング周波数に対応する)1nsのACゲーティング周期で操作されてもよい。
【0060】
動作温度および実際のデバイス構造に依存して、APDに関する破壊電圧は20Vから300Vまで変化する。(それは実際にAPDのpn接合に適用された逆バイアスであるが、これが正の数として書かれていることに注意する)。
【0061】
Si−APDは、48.5ボルトのDCバイアスVdcおよびVac=12.0VのAC電圧頂点間振幅で作動されてもよい。
【0062】
図3は、回路へのシリコンAPDの測定された電気的な応答Vout121と、上述したバイアス条件Vapd 115を示す。
【0063】
out121で観察された強く振動する信号は、印加されたAC電圧Vac107に対するAPD 117の容量性応答による。
【0064】
これらの強い振動は、APD 117に吸収された光子によって誘起された複数のアバランシェから信号への任意の寄与を隠す。
【0065】
ACバイアス107のリーディングエッジに反応する場合、正のピーク301は、Si−APDキャパシタンスの帯電に起因して、ACバイアス107の立ち下がりから発生する容量性の放電に対応する負のピーク303が続く。
【0066】
明白に、APDの容量性応答によるこれらの非常に強い振動は、単一光子検出用のゲート制御されたガイガーモード(Geiger Mode)におけるSi−APDを操作することが通常望ましくないことを意味する。
【0067】
図4は、速いディジタルオシロスコープを使用してサンプリングした、1つの光子403、2つの光子405、および検出された光子がない401に関して、測定された自己差分器出力Vsd133を示す。
【0068】
0光子信号401は、自己差分回路の不完全なキャンセルが原因となって、有限の振幅を有することに注意する。
【0069】
2光子ピーク405は、1光子ピーク403の振幅のほぼ2倍の振幅を有している。出力電圧Vsd133が検出された光子数にほぼ線形に依存していることを示している。
【0070】
これは、検出器が光子数検出器として動作することを示している。さらに、単一周期で検出される光子数が計算されることが可能な回路が提供されてもよい。
【0071】
図5は、Si−APDの単一光子検出の性能を示すプロットを示す。暗計数確率、P(円形)およびアフターパルス確率、P(正方形)は、印加DCバイアス(Vdc)の関数として測定され、光子検出効率ηに関して示される。
【0072】
アフターパルス確率は、η<60%では無視でき、その上では鋭く増加して上昇し始め、臨界点がP=7.5%に関しおよそη=73%で発生する。
【0073】
この検出効率に関するPの値は、(ACバイアスゲートあたりで測定された)10−6であり、それはT=−35°Cで約1kHzの暗計数率に対応する。
【0074】
図6は、自己差分器出力Vsdの関数としてプロットされたアバランシェ確率に起因する、アバランシェ統計を示す。
【0075】
確率分布は600万のサンプルから得られ、速いディジタルオシロスコープを用いてリアルタイムで累積する。
【0076】
0mVのピーク601は、光子が検出されなかったゲートからの0光子寄与に相当する。
【0077】
この特徴の幅(〜15mV)は、自己差分器回路の不完全なキャンセルによりダイオードの容量性応答の残余の成分に起因する。
【0078】
26.1mV付近の特徴、ピーク603は、1つの光子の吸収から発生する複数のアバランシェに起因し、45.7mV、66.0mVおよび84.0mVでのピーク605、607および609は、それぞれ2つ、3つおよび4つの光子の検出に対応する。
【0079】
これらの特徴の定期的な間隔(periodic spacing)は、入射光子数でのSi−APDの飽和していない自己差分器出力の依存が、ほぼ線形であるという証拠である。
【0080】
検出器は、識別レベルに対する出力信号を測定する回路を具備してもよい。前記識別レベルは、受け取った光子数を区別することになっている。
【0081】
図7は、1および2光子ピーク703および705はほとんど完全に0光子ピーク701から分離される、測定されたアバランシェ確率分布(円)を示す。
【0082】
これは、Si−APDゲートに関して光子の到達時刻と、バイアスVdcおよびVacとを調整することによって達成される。黒い実線の曲線は、減衰されたレーザー源のポアソン統計に対応し、0,1,および2光子の寄与(点線)を型どることにガウシアンを適合させることによって得られる。
【0083】
これらのガウシアンの適合の幅は、統計的な広がり√Nに応じて、スケールさせる。ここでNは入射光子数である。光子数分解能は、隣接した複数のガウシアン曲線707の間での数的なオーバーラップに関して定量化され、アバランシェ電圧Vsdから入射光子数を判定する際のエラーに対応する。
【0084】
図8は、入射光子フラックスμでの自己差分Si−APD光子数検出器からの出力の依存を確かにする。
【0085】
ここで、アバランシェ確率の導関数(δ(確率)/δVsd)は、光子フラックスμおよび自己差分器出力Vsdの関数としてページから出てくるようにプロットされる。
【0086】
ホワイトは高い強度に相当し、また黒は低い強度に相当する。0光子ピーク801の平均電圧位置は固定されているが、1,2,3,および4光子ピーク(それぞれ803、805、807および809)の平均位置は、増加した光電流によって引き起こされるサンプルヒーティングが原因となって、光子フラックスの増加と共に僅かに低い電圧にシフトする。
【0087】
ピークの相対強度は、源のポアソン統計に従って変化する。
【0088】
図9a)は、印加DCバイアスVdcでの単一光子アバランシェ確率分布の依存を示す。1光子ピークの中心に対応する曲がった矢は、目へのガイドとして役立つ。最も上の曲線は、最も高い電圧曲線の10倍の拡大に対応する。
【0089】
dcが増加するにつれ、1光子ピーク901の幅W、およびこの特徴の0光子ピーク903からの分離Δ0−1は増加する。
【0090】
これらのパラメーターは、ポアソン統計に従うガウシアンを使用するフィット(fits)から得られ、各々の線型従属を明らかにする図9b)でのVdcの関数としてプロットされる。
【0091】
Δ0−1(正方形)の変化率は、W(円)の変化率より大きい。また、臨界電圧V905に対応する交点がある。
【0092】
この交点より上では、ピークの分離は、ピークの統計的な広がり(光子数分解能での増加に対応する)よりも増加する。
【0093】
印加することができる最大のDC電圧が、アバランシェ電流を消すために用いられる最大の入手可能なAC変調によって制限されることに注意する。
【0094】
図10は、シリコン自己差分アバランシェフォトダイオード(Si SD−APD)を示す。
【0095】
ここで、図1の電線127および129は、パワースプリッター125の2つの出力(1005、1007)のうちの1つ(1005)で180度の位相ずれを生成するように、位相シフター1001に置き換えられる。180度位相シフターは、信号インバーターとして動作する。
【0096】
図1の信号差分器131は、その関数が2つの信号を加算する信号コンバイナー(signal combiner)1003に置き換えられる。
【0097】
それらは180°の相対的な位相シフトがあるので、これはAPDの容量性応答を取り消す効果がある。
【0098】
これは、前の説明で述べられたものと同様の方法で、弱い複数のアバランシェの検出を許容する。
【0099】
図11(a)および(b)はそれぞれ、熱電冷却器1107上に搭載されるシリコン自己差分アバランシェフォトダイオード117の側面図と正面図である(正面はファイバーが前記検出器と接続される側である)。
【0100】
熱接触は、銅ヒートシンク1103および導電性ねじを介してパッケージされたデバイス117の場合に提供される。T=−35℃の温度は一般に用いられる。
【0101】
サンプルへの光学的接続は光ファイバーピグテール1101によって提供される。Si−APD、Vapd115およびVout121への電気的なアクセスは、金属ピンによって提供される。
【0102】
図12は、ゲートガイガー計数管モードシリコンアバランシェフォトダイオード(Geiger Mode Silicon Avalanche Photodiode)の別の実施形態を示す。
【0103】
ここで、Vac107を出力するAC電圧源109は、周波数fで作動する正弦波信号発生器1201に置き換えられる。正弦波変調電圧(Vsine1202)は、以前のようにAPDバイアス電圧Vapd117を形成するために、固定されたDC電圧(Vdc111)と結合する。
【0104】
自己差分回路123は、フィルターされた電圧出力V1204でのAPDの周期的な容量性応答を遅らせる正弦波周波数fに対応する阻止帯を有する帯域阻止フィルター1203に置き換えられる。
【0105】
ある実施形態では記述されているが、これらの実施形態はほんの一例として示されており、発明の範囲を制限するようには意図されない。実際、本明細書で記述された新しい方法およびシステムは様々な他の形式で具体化されてもよい。更に、本明細書で説明される方法およびシステムの形式では様々な省略、置換および変更は、発明の精神から外れずになされてもよい。添付のクレームおよびその均等物は、発明の範囲および精神内にあるように、そのような形式あるいは変更をカバーするように意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アバランシェフォトダイオードと、
前記アバランシェフォトダイオードのための電圧源と、を具備し、
前記アバランシェフォトダイオードは、シリコンまたはそのヘテロ構造を具備し、
前記電圧源は、時間に関して静的な電圧成分と時間と共に変化する電圧成分とで、前記アバランシェフォトダイオードにバイアスをかける、光子検出システム。
【請求項2】
前記APDへのバイアスは、DCバイアスと、時間に関して周期的に変化するAC変調バイアスを具備する請求項1の光子検出システム。
【請求項3】
前記AC変調は100ns未満の周期を有する請求項2の光子検出システム。
【請求項4】
時間に関して変化する電圧は、1ボルトより大きな振幅を持っている請求項1の光子検出システム。
【請求項5】
前記DCバイアスは、APDの破壊電圧よりも大きな値を有している請求項1の光子検出システム。
【請求項6】
前記APDバイアス電圧は、それぞれのゲート周期の間、最高値で前記APD破壊電圧より大きく、最低値で前記APD破壊電圧よりも小さい、前記全ての請求項の光子検出システム。
【請求項7】
前記アバランシェフォトダイオードからの出力信号を受け取り、前記出力信号から時間変化する成分を取り除くために前記出力信号を処理する出力回路をさらに具備する、前記全ての請求項の光子検出器。
【請求項8】
アバランシェフォトダイオードと、
前記アバランシェフォトダイオードのための出力回路と、を具備し、
前記アバランシェフォトダイオードは、シリコンまたはそのヘテロ構造を具備し、
前記出力回路は、前記アバランシェフォトダイオードからの出力信号を受け取り、前記出力信号から時間変化する成分を取り除くために前記出力信号を処理する、光子検出システム。
【請求項9】
前記出力回路は、前記APDの出力電圧を前期での電圧と比較する請求項7または8の光子検出システム。
【請求項10】
前記出力回路は、前記ゲーティングバイアス周期の前半と後半での前記APDの出力電圧を合成する請求項7または8の光子検出システム。
【請求項11】
前記出力回路は、
前記信号を2つの部分に分離する信号分割器と、
ある部分を他の部分に対して遅延させる電線と、
前記2つの部分間での差を出力する信号差分器を具備する請求項7または請求項8の光子検出システム。
【請求項12】
前記遅延は、整数個のゲート周期である請求項11に記載の光子検出システム。
【請求項13】
前記出力回路は、
前記信号を2つの部分に分離する信号分割器と、
前記2つの部分のうちの1つの位相を180度シフトする位相シフターまたは信号インバーターと、
前記2つの部分の和を出力する信号合成器と、を具備する光子検出システム。
【請求項14】
変調の周期は時間の関数として変化する請求項2の光子検出システム。
【請求項15】
前記2つの部分の強度の平衡を保つコントローラーをさらに具備する請求項11または13の光子検出システム。
【請求項16】
前記遅延の強度を変化させるコントローラをさらに具備する請求項11または13の光子検出システム。
【請求項17】
多数の所定レベル間での出力電圧を識別する回路をさらに具備する前記全ての請求項の光子検出システム。
【請求項18】
前記アバランシェフォトダイオードの温度を低下させるクーラーをさらに具備する前記全ての請求項の光子検出システム。
【請求項19】
多数のアバランシェフォトダイオード素子をさらに具備する前記全ての請求項の光子検出システム。
【請求項20】
シリコンまたはそのヘテロ構造を具備するアバランシェフォトダイオードを提供することと、
時間に関して静的な電圧成分と時間と共に変化する電圧成分とで、前記アバランシェフォトダイオードにバイアスを印加することと、を具備する、光子を検出する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−510305(P2013−510305A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537444(P2012−537444)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002049
【国際公開番号】WO2011/055126
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】