説明

光学ガラス、プレス成形用ガラスゴブおよび光学素子

【課題】屈折率が高く、着色が低減された光学ガラスを提供する。
【解決手段】重量%表示で、Bを2〜45%、SiOを0〜30%(ただし、B含有量>SiO含有量)、Laを10〜50%、TiOを0〜30%、ZnOを0〜15%、ZrOを0〜15%、Nbを0〜35%、BaOを0〜35%、SrOを0〜5%、CaOを0%以上8%未満、MgOを0%以上13%未満(ただし、BaO、SrO、CaOおよびMgOの合計含有量0〜40%)、Gdを0〜20%、Yを0〜15%、Taを0〜18%、WOを0%以上0.5%未満、NaOとKOとLiOを合計で0%以上1.5%未満、GeOを0〜10%、Biを0〜20%、Ybを0〜10%、Alを0〜10%、Sbを0%以上2%未満およびSnOを0〜1%含む光学ガラスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、プレス成形用ガラスゴブおよび光学素子に関する。さらに詳しくは、本発明は、屈折率が高く、かつ着色が低減された光学ガラス、およびこの光学ガラスからなるプレス成形用ガラスゴブと光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラの普及に伴い、小型レンズの需要はますます高まってきている。このような小型レンズを作製するための光学ガラス材料として、高屈折率ガラスは好適である。しかしながら、従来のガラスにおいては、屈折率が高くなると共に、着色する傾向が強くなるという不都合があった。特に、デジタルカメラの場合、撮像素子にCCDを用いるので、撮像装置全体として見た場合、三原色のうち、短波長側にある青色の感度が減衰するという問題があった。また、この種の用途に使用される高屈折率低分散光学ガラスとして特許文献1に記載されたガラスがあるが、このガラスは、高価なHfOを使用しなければならないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭53−4023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような事情のもとで、屈折率が高く、着色が低減された光学ガラス、および該光学ガラスからなるプレス成形用ガラスゴブと光学素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有する光学ガラスにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)重量%表示で、Bを2〜45%、SiOを0〜30%(ただし、Bの含有量>SiO含有量)、Laを10〜50%、TiOを0〜30%、ZnOを0〜15%、ZrOを0〜15%、Nbを0〜35%、BaOを0〜35%、SrOを0〜5%、CaOを0%以上8%未満、MgOを0%以上13%未満(ただし、BaO、SrO、CaOおよびMgOの合計含有量0〜40%)、Gdを0〜
20%、Yを0〜15%、Taを0〜18%、WOを0%以上0.5%未満、NaOとKOとLiOを合計で0%以上1.5%未満、GeOを0〜10%、Biを0〜20%、Ybを0〜10%、Alを0〜10%、Sbを0%以上2%未満およびSnOを0〜1%含むことを特徴とする光学ガラス、
(2)屈折率(nd)が1.8〜2.1で、アッベ数(νd)が20〜40である上記(1)項に記載の光学ガラス、
(3)上記(1)または(2)項に記載の光学ガラスからなり、かつ加熱、軟化してプレス成形に供することを特徴とするプレス成形用ガラスゴブ、および
(4)上記(1)または(2)項に記載の光学ガラスからなることを特徴とする光学素子、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、屈折率が高く、着色が低減された光学ガラスを提供することができる。
また、本発明によれば、屈折率が高く、着色が低減された光学ガラスからなる光学素子をプレス成形によって作製するためのプレス成形用ガラスゴブを提供することができる。
さらに、本発明によれば、屈折率が高く、着色が低減された光学ガラスからなる光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の光学ガラスは、重量%表示で、Bを2〜45%、SiOを0〜30%(ただし、Bの含有量>SiO含有量)、Laを10〜50%、TiOを0〜30%、ZnOを0〜15%、ZrOを0〜15%、Nbを0〜35%、BaOを0〜35%、SrOを0〜5%、CaOを0%以上8%未満、MgOを0%以上13%未満(ただし、BaO、SrO、CaOおよびMgOの合計含有量0〜40%)、Gdを0〜20%、Yを0〜15%、Taを0〜18%、WOを0%以上0.5%未満、NaOとKOとLiOを合計で0%以上1.5%未満、GeOを0〜10%、Biを0〜20%、Ybを0〜10%、Alを0〜10%、Sbを0%以上2%未満およびSnOを0〜1%含むものである。
【0009】
上記光学ガラスによれば、可視光領域において高い透過率を得ることができ、特に、可視域の短波長領域において、高い透過率を得ることができる。
また、屈折率(nd)が1.8〜2.1、アッベ数(νd)が20〜40の範囲でより安定したガラスを得ることができる。
【0010】
次に上記組成範囲について詳細に説明する。以下、各成分の含有量は重量%表示とする。
は、上記ガラスにおいて網目形成酸化物として、またガラスの溶融性、流動粘性の温度低下に効果的な成分であり、2%以上を必要とする。しかし、45%を上回ると屈折率が低下するので、Bを2〜45%とする。好ましくは3〜24%であり、より好ましくは5〜18%である。
【0011】
SiOは、上記ガラスにおいて耐失透性を維持する機能を果たす。SiOを導入した場合、ガラス網目形成成分として機能する。しかし、30%を上回ると溶解性が悪化し、安定に製造することが難しくなるため、SiOの量を0〜30%とする。好ましい量は0〜18%であり、さらに好ましい量は1〜18%である。
また、Bの含有量がSiOの含有量以下になると、ガラスに着色が生じやすくなるとともに、溶解性・耐失透性が悪化してしまうため、Bの量をSiOの量よりも多くする。
【0012】
Laは高屈折率、低分散ガラスを得るために必須の成分であり、10%より少ないと、屈折率が低下し、50%より多いと耐失透性が低下するため、安定生産可能なガラスが得られにくくなる。したがって、Laの導入量は10〜50%とする。好ましくは、18〜47%であり、より好ましくは25〜47%である。
【0013】
TiOは、屈折率やアッベ数などの光学的特性を調整しつつ、化学的耐久性、耐失透性を向上させるための成分であり、ガラスに上記性質を付与する上から、その導入量は0〜30%が必要であり、0〜26%が好ましく、1〜26%がより好ましく、8〜26%がさらに好ましい。
【0014】
ZnOは、ガラスに高屈折率と低分散性(屈折率の波長依存性が小さい)を付与するとともに、耐失透性の良化、粘性流動の温度を低下させる効果を有する成分である。しかし
、導入量が15%を上回ると失透性が強くなり、安定製造可能なガラスが得られにくくなる。したがって、ZnOを0〜15%とする。好ましくは0〜12%である。ZnOは適量の添加で分光透過率の短波長端の立上りが急峻になるので、0%超かつ5%以下添加するのがより好ましく、0.5〜5%添加するのがさらに好ましく、1〜5%添加するのがより一層好ましい。
【0015】
ZrOは、高屈折率をもたらす成分であり、少量の添加で耐失透性を改善する効果を有する。しかし、15%を上回ると逆に耐失透性が低下し、溶解性も悪化する。したがってZrOを0〜15%とする。好ましくは0〜10%であり、より好ましくは1〜10%である。
【0016】
Nbは、高屈折率を付与するための成分であり、耐失透性を改善する効果も有する。その導入量は、0〜35%とすることが適当である。35%を超えると短波長域での吸収が強まり、着色を生じる傾向が強い。好ましくは0〜30%であり、より好ましくは1〜30%であり、さらに好ましくは1〜20%であり、より一層好ましくは1〜15%である。
【0017】
BaO、SrO、CaO、MgOはガラス原料として炭酸塩、硝酸塩を用いることにより脱泡を促進する効果が有る。
BaOは、0〜35%の添加で着色を改善する効果がある。しかし、35%を上回ると耐失透性が悪化する。好ましくは0〜32%であり、より好ましくは1〜32%、さらに好ましくは1〜25%である。
【0018】
SrOは、BaOとの置換により0〜5%添加が可能である。同様にCaOを0%以上8%未満、MgOを0%以上13%未満添加することが可能である。SrOはガラスを再加熱して成形する場合の耐失透性を向上させる上から、0%以上1%未満とすることが好ましい。特に屈折率(nd)が1.8〜1.86の場合、上記耐失透性の低下に留意したほうがよく、屈折率(nd)が1.8〜1.86の場合、SrOを0%以上1%未満、屈折率(nd)が1.86超〜2.1の場合、SrOを0〜5%とするのがよい。また、屈折率(nd)が1.8〜2.1の場合、SrOを0〜0.8%とするのがより好ましい。
【0019】
また、BaO、SrO、CaO、MgOの合計含有量が40%を上回ると耐失透性が低下し、安定生産可能なガラスが得られにくくなるため、BaO、SrO、CaO、MgOの合計含有量を0〜40%とする。
【0020】
Gdは、Laとの置換により20%まで添加することが可能であるが、20%を超えると耐失透性が悪化し、安定生産可能なガラスが得られにくくなる。したがって、Gdの含有量を0〜20%とする。好ましくは、0〜10%である。
【0021】
、Ybもまた、Laとの置換によりそれぞれ0〜15%、0〜10%の添加が可能である。しかし、これらの量を上回ると耐失透性が悪化し、安定生産可能なガラスが得られにくくなる。好ましい範囲はYが0%以上2%未満、Ybが0〜4%である。より好ましいYの範囲は0〜1.5%である。
【0022】
Taは、高屈折率、低分散特性を付与するための成分であり、ガラスを低分散にさせる場合には有用であるが、18%を超えると溶解性が悪化する。したがってTaの含有量は0〜18%が適当である。
【0023】
WOは少量の添加によって 耐失透性を良化させる成分であるが、0.5%以上にな
るとガラスの短波長域の吸収が強まり着色を生じる傾向が強い。したがってWOの量を
0%以上0.5%未満とする。0〜0.4%が好ましい。
【0024】
NaO、KO、LiOは、ガラス転移温度(Tg)の低下に効果的な成分である。特にLiOは極めて効果が高い。しかし、耐失透性の低下および屈折率の低下が大きいため、NaO、KO、LiOの合計含有量を0%以上1.5%未満とする。
【0025】
GeOは、SiOと同様の効果を有し、10%まで添加することができる。しかし、10%を上回ると耐失透性が低下する。したがってGeOの量は0〜10%が適当である。しかし、上記ガラスでは、GeOを添加しなくても所望の特性、性質を得ることができるので、高価なGeOを導入しないことが好ましい。
【0026】
Biは、少量の添加でガラス転移温度(Tg)を低下させる効果を有するが、20%を超えると耐失透性が低下し、また着色を生じる。したがってBiの量は0〜20%が適当である。
【0027】
Alは、少量の添加で耐失透性を改善する作用を有する場合があるが、同時に屈折率が低下するため、その添加量は0〜10%とする。
なお、Ga、Inも10%程度まで添加することはできるが、添加によって耐失透性が悪化するおそれがあること、高価な原料であることからGa、Inを導入しないことが望ましい。
【0028】
上記成分以外に一般的に清澄剤として用いられているSb、SnOの添加が可能である。Sbの添加量は0%以上2%未満、SnOの添加量は0〜1%である。
ただし、清澄剤として強力な作用を有するAsは毒性があるため、添加しないことが望ましい。
【0029】
その他、導入しないことが望ましいものとしては、鉛及びその化合物、UやThなどの放射性物質などである。また、ガラスの着色を低減するという観点から、Cu、Cr、V、Fe、Ni、Coなどの着色原因となる物質の導入も避けるべきである。また、Te、Se、Cdの添加も避けるべきである。
なお上述の特許文献1に記載された光学ガラスは、高価なHfOを必須成分としているが、本発明においてはHfOを用いなくても所望の光学ガラスを得ることができる。
上記説明において、各成分の好ましい含有量として示した範囲を任意に組合せた組成範囲は、所要のガラスを得る上から好ましいものである。
【0030】
本発明の光学ガラスにおいて、好ましい屈折率(nd)及びアッベ数(νd)の範囲は、屈折率(nd)が1.8〜2.1、アッベ数(νd)が20〜40である。より好ましいアッベ数(νd)は20〜39の範囲である。また、より好ましい屈折率(nd)は1.81〜2.1、さらに好ましくは1.85〜2.1である。
【0031】
本発明の光学ガラスの透過率特性について説明する。透過率は、次のようにして定量的に評価する。まず、上記光学ガラスよりなる両面が互いに平行に研磨された厚さ10mm±0.1mmの板状ガラスを準備する。この板状ガラスの研磨面に垂直方向から光を入射して、波長280nm〜700nmの範囲で表面反射損失を含む分光透過率を測定する。分光透過率が70%になる波長をλ70、分光透過率が5%になる波長をλとする。波長280nm〜700nmの範囲にλ70、λは一波長のみ存在することが好ましい。そして、λ〜700nmの全領域において分光透過率が5%以上を、λ70〜700nmの全領域において分光透過率が70%以上を示すことが望ましい。
【0032】
このような透過率特性を備える光学ガラスでは、λ70、λをより短波長化すること
により、可視領域の広い範囲にわたり高い透過率を示すことになる。
本発明において、λ70が460nm以下の光学ガラスが好ましく、450nm以下の光学ガラスがより好ましく、440nm以下の光学ガラスがさらに好ましい。また、上記屈折率、アッベ数をはじめとする諸性質をガラスに付与する上から、λ70を350〜4
60nmの範囲とすることが好ましく、350〜450nmの範囲とすることがより好ましく、350〜440nmの範囲とすることがさらに好ましい。
【0033】
また、本発明において、λが400nm以下の光学ガラスが好ましく、390nm以下の光学ガラスがより好ましい。また、上記屈折率、アッベ数をはじめとする諸性質をガラスに付与する上から、λを300〜390nmの範囲とすることがさらに好ましい。
さらに、λ70、λが上記範囲を同時に満たす光学ガラスが一層好ましい。
λ70、λ(特にλ70)はガラスの溶解条件で変化しやすいため、ガラスの溶解温度、溶解時間の設定においては、λ70、λがより短波長になるように留意すべきである。また、着色の原因となる不純物も極力低減すべきである。
【0034】
ここで、より好ましい組成範囲、光学恒数、λ70の範囲を例示しておく。
(光学ガラス1)
を2〜45%、SiOを0〜30%(ただし、B含有量>SiO含有量)、Laを10〜50%、TiOを0〜30%、ZnOを0〜15%、ZrOを0〜15%、Nbを0〜35%、BaOを0〜35%、SrOを0〜5%、CaOを0%以上8%未満、MgOを0%以上13%未満(ただし、BaOとSrOとCaOとMgOの合計含有量が0〜40%)、Gdを0〜20%、Yを0〜15%、Taを0〜18%、WOを0%以上0.5%未満、NaOとKOとLiOの合計含有量が0%以上1.5%未満、GeOを0〜10%、Biを0〜20%、Ybを0〜10%、Alを0〜10%、Sbを0%以上2%未満、SnOを0〜1%含み、屈折率(nd)が1.86超〜2.1であり、λ70が460nm以下であることを特徴とする光学ガラス。
【0035】
(光学ガラス2)
を2〜45%、SiOを0〜30%(ただし、B含有量>SiO含有量)、Laを10〜50%、TiOを0〜30%、ZnOを0〜15%、ZrOを0〜15%、Nbを0〜35%、BaOを0〜35%、SrOを0%以上2%未満、CaOを0%以上8%未満、MgOを0%以上13%未満(ただし、BaOとSrOとCaOとMgOの合計含有量が0〜40%)、Gdを0〜20%、Yを0〜15%、Taを0〜18%、WOを0%以上0.5%未満、NaOとKOとLiOの合計含有量が0%以上1.5%未満、GeOを0〜10%、Biを0〜20%、Ybを0〜10%、Alを0〜10%、Sbを0%以上2%未満、SnOを0〜1%含み、屈折率(nd)が1.8〜1.86であり、λ70が460nm以下であることを特徴とする光学ガラス。
【0036】
(光学ガラス3)
を2〜45%、SiOを0〜30%(ただし、B含有量>SiO含有量)、Laを10〜50%、TiOを0〜30%、ZnOを0〜15%、ZrOを0〜15%、Nbを0〜35%、BaOを0〜35%、SrOを0%以上1%未満、CaOを0%以上8%未満、MgOを0%以上13%未満(ただし、BaOとSrOとCaOとMgOの合計含有量が0〜40%)、Gdを0〜20%、Yを0〜15%、Taを0〜18%、WOを0%以上0.5%未満、NaOとKOとLiOの合計含有量が0%以上1.5%未満、GeOを0〜10%、Biを0〜20%、Ybを0〜10%、Alを0〜10%、Sbを0%以上2%未満、SnOを0〜1%含み、屈折率(nd)が1.8〜2.1であり、λ
が460nm以下であることを特徴とする光学ガラス。
【0037】
(光学ガラス4)
を2〜45%、SiOを0〜30%(ただし、B含有量>SiO含有量)、Laを10〜50%、TiOを0〜30%、ZnOを0〜15%、ZrOを0〜15%、Nbを0〜35%、BaOを0〜35%、SrOを0〜0.8%、CaOを0〜7%、MgOを0〜12%(ただし、BaOとSrOとCaOとMgOの合計含有量が0〜40%)、Gdを0〜20%、Yを0〜15%、Taを0〜18%、WOを0〜0.4%、NaOとKOとLiOの合計含有量が0〜1.2%、GeOを0〜10%、Biを0〜20%、Ybを0〜10%、Alを0〜10%、Sbを0〜1.8%、SnOを0〜1%含み、λ70が460nm以下であることを特徴とする光学ガラス。
【0038】
(光学ガラス5)
を2〜45%、SiOを0〜30%(ただし、B含有量>SiO含有量)、Laを10〜50%、TiOを0〜30%、ZnOを0〜15%、ZrOを0〜15%、Nbを0〜35%、BaOを0〜35%、SrOを0%以上1%未満、CaOを0%以上8%未満、MgOを0%以上13%未満(ただし、BaOとSrOとCaOとMgOの合計含有量が0〜40%)、Gdを0〜20%、Yを0%以上2%未満、Taを0〜18%、WOを0%以上0.5%未満、NaOとKOとLiOの合計含有量が0%以上1.5%未満、GeOを0〜10%、Biを0〜20%、Ybを0〜10%、Alを0〜10%、Sbを0%以上2%未満、SnOを0〜1%含むことを特徴とする光学ガラス。
【0039】
(光学ガラス6)
上記光学ガラス5において、Bを3〜24%、SiOを0〜18%(ただし、Bの含有量/SiOの含有量の重量比が1.1以上か、又はSiOを含有しない)、Laを18〜47%、TiOを0〜26%、ZnOを0〜12%、ZrOを0〜10%、Nbを0〜30%、BaOを0〜32%、Gdを0〜10%、Ybを0〜4%含む光学ガラス。
【0040】
(光学ガラス7)
上記光学ガラス5又は光学ガラス6において、ZnOを1〜5%含む光学ガラス。
【0041】
(光学ガラス8)
光学ガラス1〜光学ガラス7のいずれかの光学ガラスにおいて、B、SiO、La、ZnO、ZrO、Nb、TiO、BaO、CaO、SrO、Gd、Y、Ta、WO、NaO、KO、LiO、GeO、Yb、Sb、SnOの合計含有量が99%以上、より好ましくは100%の光学ガラス。
【0042】
(光学ガラス9)
上記光学ガラス8において、B、SiO、La、ZnO、ZrO、Nb、TiO、BaO、Sbの合計含有量が99%以上、より好ましくは100%の光学ガラス。
【0043】
(光学ガラス10)
上記光学ガラス9において、B、SiO、La、ZnO、ZrO、Nb、TiO、BaOのいずれの成分も含有している光学ガラス。
【0044】
(光学ガラス11)
光学ガラス1〜11のいずれかの光学ガラスにおいて、TiOを含む光学ガラス。ここにNb含有量/TiO含有量は0〜7が好ましく、0〜6がより好ましい。このようにすることで、着色のより少ないガラスが得られる。
【0045】
上記透過率特性を備えることにより、可視光領域中の短波長領域の透過率が高いので、良好なカラーバランスを有する撮像光学系を構成することが容易にできる。特に、固体撮像素子用の撮像光学系を構成する光学素子、例えばレンズの材料に好適である。
【0046】
次に、本発明の光学ガラスの液相温度について説明する。本発明の光学ガラスにおいて好ましい液相温度は、1250℃以下、より好ましくは1200℃以下である。ガラスの安定性からは、液相温度が認められないものが好ましいが、上記諸特性をガラスに付与する上から、液相温度が900〜1200℃がさらに好ましい。
【0047】
次に、本発明のプレス成形用ガラスゴブとその製造方法について説明する。 プレス成形用ガラスゴブは、加熱、軟化してプレス成形に供するためのガラス成形体であり、プレス成形用プリフォームなどとも呼ばれることがあり、目的とするプレス成形品によって、重量、形状が適宜決められる。本発明のプレス成形用ガラスゴブは、上記光学ガラスからなるものであり、したがって、プレス成形用ガラスゴブの諸特性は、本発明の光学ガラスの諸特性を反映したものとなる。
【0048】
上記プレス成形用ガラスゴブの製造方法においては、溶融ガラスを成形して光学ガラスからなるプレス成形用ガラスゴブを作製する。まず、本発明の光学ガラスが得られるようにガラス原料を調合し、溶解、清澄、均質化し、未溶解物や気泡、異物を含まない均質な溶融ガラスを作る。次に白金合金製などの流出パイプから溶融ガラスを流出する。上記流出にあたり、ガラスが失透しないよう流出パイプの温度等の条件に配慮する。流出する溶融ガラスを受け型もしくは鋳型に鋳込み所定の形状に成形する。以下に前記成形に好適な方法を例示する。
【0049】
まず、第1の成形方法は、流出パイプの下方に複数の受け型を順次、搬入し、所定重量の溶融ガラス塊を受け型で受け、ガラス塊を成形しながら冷却する方法である。この方法では、流出する溶融ガラス流の先端部を受け型で支持し、所望の重量の溶融ガラス塊が分離できるタイミングで受け型を急降下する。そうすると、溶融ガラスの受け型への供給が追いつかず、溶融ガラス流が途中で分離し、受け型で所定重量の溶融ガラス塊を受け取ることができる。このようにすることにより、溶融ガラス流を切断刃で切断した際に生じる切断痕を残さずにガラスの成形を行うことができる。この第1の成形法によれば、プレス成形用ガラスゴブ1個分の重量、あるいは前記重量よりも若干重いガラス塊を成形することができる。
【0050】
プレス成形用ガラスゴブ1個分の重量のガラス塊を成形した場合は、このガラス塊をプレス成形用ガラスゴブとして使用することができる。この場合、ガラス塊は、割れない程度のスピードで冷却することが好ましい。
【0051】
プレス成形用ガラスゴブ1個分の重量よりも重いガラス塊を成形する場合は、ガラス塊をアニール処理して歪を低減してから、機械加工を施してプレス成形用ガラスゴブ1個分の重量に仕上げ、プレス成形用ガラスゴブとする。この方法によれば、予めガラス塊を成形しておき、需要に応じて機械加工によって重量調整を行えば、様々なサイズの光学素子の成形に供することが可能なプレス成形用ガラスゴブを提供することができる。なお、上記機械加工としてバレル研磨が好ましい。
また、上記プレス成形用ガラスゴブを精密プレス成形に供する場合には、ガラス塊に機
械加工を施さないで作製したプレス成形用ガラスゴブが好適である。
【0052】
次に、第2の成形方法は、ほぼ水平な底面とその底面を挟んで平行に対向する一対の側壁を備えた鋳型に溶融ガラスを一定のスピードで鋳込むものである。鋳込まれた溶融ガラスは鋳型内に均一な厚みで広がり、前記一対の側壁の間隔で定まる幅のガラス板に成形される。成形されたガラス板は、均一な厚みと幅の板が得られるように溶融ガラスの供給スピードに応じて、鋳型の開口部から水平方向に引き出される。このようにして得られたガラス板をアニール処理し、歪を低減してから、所要のサイズに切断する。このようにして得られるガラス片はカットピースと呼ばれるが、カットピースには必要に応じて面取りを行ったり、プレス成形用ガラスゴブの重量に合わせるための機械加工を行う。なお、カットピースの面取り加工や重量調整のための機械加工にはバレル研磨が好ましい。
【0053】
このようにして、所定重量の本発明の光学ガラスからなるプレス成形用ガラスゴブを得ることができる。なお、プレス成形用ガラスゴブには、必要に応じてプレス成形時の離型を容易にするための離型膜を形成したり、粉末状の離型剤を塗布してもよいが、粉末状の離型剤を使用すると離型剤がガラスに転写されるため、精密プレス成形には好ましくない。
【0054】
次に、本発明の光学素子について説明する。本発明の光学素子は、前述の本発明の光学ガラスから構成されている。したがって、該光学ガラスが備える諸特性を本発明の光学素子は備えている。その代表的なものは、屈折率(nd)が1.8〜2.1、アッベ数(νd)が20〜40であるが、可視域の短波長側において高い透過率を示すという特性も共通する。上記光学ガラスからなる光学素子のうちの好ましいものについては、λ70、λが上記範囲にあり、高い可視透過率を示し、着色が認められないものである。このような光学素子によれば、デジタルカメラやビデオカメラ、モバイル機器に組込まれたカメラなど固体撮像素子を使用するカメラの光学系に好適な光学素子を提供することができる。
【0055】
本発明の光学素子としては、球面レンズ、非球面レンズ、マイクロレンズ、レンズアレイなどのレンズ各種、プリズム、回折格子などを例示できる。なお、本発明の光学素子には必要に応じて、反射防止膜、部分反射膜、高反射膜などの光学薄膜を形成してもよい。
【0056】
次に、本発明の光学素子の製造方法について説明する。本発明の光学素子の製造方法は、上記プレス成形用ガラスゴブ又は上記製造方法により作製されたプレス成形用ガラスゴブを加熱、軟化し、プレス成形型を用いてプレス成形することにより、光学素子を製造する。
【0057】
光学素子は、光を屈折したり、透過したり、回折したり、反射したりする光学的な機能を備える光学機能面を有する。この光学機能面をどのような方法により形成するかにより、プレス成形法は次の2つの方法に大別することができる。
【0058】
第1の方法は、目的とする光学素子の形状に近似し、光学素子よりも大きなプレス成形品をプレス成形する方法である。成形されたプレス成形品には研削や研磨加工が施され、光学機能面を含む光学素子の表面が機械加工により形成される。プレス成形後に機械加工を施すので、加工時のガラスの破損を防止する観点から、プレス成形品にはアニール処理を行って歪を低減することが好ましい。この方法によ
れば、プレス成形は大気中で行うことが可能であり、上記粉末状の離型剤の使用も可能である。
【0059】
第2の方法は、精密プレス成形と呼ばれるもので、プレス成形型の成形面を目的とする光学素子の形状を反転した形状に精密に加工し、必要に応じて離型膜を形成するとともに、プレス成形によって、加熱、軟化されたプレス成形用ガラスゴブに上記成形面の形状を
精密に転写する。この方法によれば、光学機能面が研削、研磨せずにプレス成形によって形成できる。ただし、プレス成形は窒素ガス雰囲気のような非酸化性ガス雰囲気下で行うことになる。
【0060】
この第2の方法では、プレス成形品の機械加工は必須ではないから、歪の光学的な影響が出ない範囲であれば、歪が残留していてもよく、プレス成形品のアニール処理を省略することもできる。さらに光学素子を製造する方法としては、溶融状態のガラスをプレス成形型に供給して光学素子に近似する形状のプレス成形品を作り、それに研削、研磨加工を施すことによって、光学素子に仕上げる方法もある。
【0061】
なお、光学素子の屈折率(nd)、アッベ数(νd)は、光学素子の製造過程における熱的な履歴により僅かながら変化するので、精密に定められた光学恒数を有する光学素子を作製する場合には、上記屈折率(nd)、アッベ数(νd)の変化を考慮してガラスの組成や製造過程における熱履歴を調整すればよい。
このようにして、所望の光学恒数と優れた透過率を備え、固体撮像素子などを搭載する機器の光学部品として特に好適な光学素子を提供することができる。
【実施例】
【0062】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1〜11
表1および表2に示す組成の各ガラス100gが得られるように調合された原料バッチを白金製坩堝に入れ、1300℃に設定された炉内で溶融し、攪拌、清澄後、鉄製枠に流し込み、ガラス転移温度(Tg)付近の温度で2時間保持後、徐冷して光学ガラスを得た。
【0063】
各光学ガラスについて、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、液相温度(LT)およびλ、λ70を以下のようにして測定した。その結果を表1および表2に示す。
(1)屈折率(nd)、アッベ数(νd)
1時間当たり、30℃の降温速度で冷却して得られた光学ガラスについて測定した。
(2)液相温度(LT)
複数個の白金製坩堝を用意し、各坩堝に50cmのガラスを入れて蓋をし、10℃刻みに温度が設定されている炉内に入れて、設定温度が異なる条件下に2時間保持し、冷却後、ガラス内部を100倍の顕微鏡で観察し、結晶の有無から決定した。
(3)λ、λ70
10mm厚の研磨サンプルについて分光透過率を測定し、透過率5%の波長(nm)をλとして求め、透過率70%の波長(nm)をλ70として求めた。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

表1および表2から、実施例に示す本発明の光学ガラスにおいては、ndが1.8〜2.1、νdが20〜40の範囲にあることが分かる。
【0066】
実施例12
実施例1〜11の各ガラスが得られる清澄、均質化された溶融ガラスを溶解し、一側壁が開口した鋳型に白金製パイプから一定流量で流し込み、一定の厚みと幅を有するガラス板に成形しつつ、鋳型の開口部から成形されたガラス板を引き出した。引き出されたガラス板を、アニール炉内でアニール処理し、歪を低減し、均質かつ無色、異物を含まない上記実施例1〜11の光学ガラスからなるガラス板を得た。
次に、この各ガラス板を賽の目状に切断し、同一寸法を有する複数個のカットピースを得た。さらに、複数個のカットピースをバレル研磨して、目的重量に合わせ、プレス成形用ガラスゴブとした。
上記の方法とは別に、上記溶融ガラスを一定速度で白金製ノズルから流出し、このノズルの下に多数の受け型を次々と移送して所定重量の溶融ガラス塊を次々と受け、これら溶融ガラス塊を球状又は球を扁平化した形状に成形し、アニール処理してからバレル研磨し
て目的重量に合わせ、プレス成形用ガラスゴブとしてもよい。
【0067】
実施例13
実施例12で得られた各ガラスゴブの全面に、粉末状の離型剤を塗布し、ヒーターで加熱、軟化してから上型及び下型を備えたプレス成形型内に投入し、プレス成形型で加圧してレンズ形状の各レンズブランクをプレス成形した。
続いて各レンズブランクをアニール処理して歪を取り除くとともに、所望の屈折率及びアッベ数に調整する。冷却した各レンズブランクに研削、研磨加工を施して、レンズを作製した。なお、上記一連の工程は、大気中で行った。
得られた各レンズは、透過率特性が優れており、実施例1〜11の光学ガラスが備えている諸特性が各レンズにも備わっていた。なお、このレンズには、必要に応じて、反射防止膜を設けることができる。
このようなレンズにより、良好な撮像光学系を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の光学ガラスは、屈折率が高く、かつ着色が低減されているため、撮像素子にCCDを用いたデジタルカメラ等の撮像装置に好適に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%表示で、Bを2〜45%、SiOを0〜30%(ただし、B含有量>SiO含有量)、Laを10〜50%、TiOを0〜30%、ZnOを0〜15%、ZrOを0〜15%、Nbを0〜35%、BaOを0〜35%、SrOを0〜5%、CaOを0%以上8%未満、MgOを0%以上13%未満(ただし、BaO、SrO、CaOおよびMgOの合計含有量0〜40%)、Gdを0〜20%、Yを0〜15%、Taを0〜18%、WOを0%以上0.5%未満、NaOとKOとLiOを合計で0%以上1.5%未満、GeOを0〜10%、Biを0〜20%、Ybを0〜10%、Alを0〜10%、Sbを0%以上2%未満およびSnOを0〜1%含むことを特徴とする光学ガラス。
【請求項2】
屈折率(nd)が1.8〜2.1で、アッベ数(νd)が20〜40である請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学ガラスからなり、かつ加熱、軟化してプレス成形に供することを特徴とするプレス成形用ガラスゴブ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の光学ガラスからなることを特徴とする光学素子。


【公開番号】特開2010−215503(P2010−215503A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112780(P2010−112780)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【分割の表示】特願2006−161263(P2006−161263)の分割
【原出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】