説明

光学ガラス、精密プレス成形用プリフォーム、光学素子とその製造方法

【課題】 高品質の光学素子を安定生産可能にする高屈折率低分散光学ガラスを提供する。
【解決手段】 カチオン%表示で、
3+ 20〜50%、
La3+ 5〜35%、
Nb5+ 1〜30%、
Ta5+ 0.5〜15%、
Zn2+ 11〜40%、
を必須成分として含み、
3+およびSi4+の合計含有量が20〜50%、La3+、Gd3+およびY3+の合計含有量が5〜35%、カチオン比((B3++Si4+)/(La3++Gd3++Y3+))が1〜5、Ti4+、Nb5+、Ta5+、およびW6+の合計含有量が10〜35%、カチオン比((Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0.7〜1、カチオン比((B3++Si4+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0.5〜4、カチオン比((La3++Gd3++Y3+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0.2〜3、Zn2+/(Zn2++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)が0.8〜1であり、屈折率ndが1.89以上、アッベ数νdが27〜37である光学ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率ndが1.89以上、アッベ数νdが27〜37である光学ガラス、前記ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームと光学素子、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高屈折率低分散光学ガラスは、各種レンズなどの光学素子材料として需要が高い。例えば、高屈折率高分散性のレンズとの組合せにより、コンパクトで高機能な色収差補正用の光学系を構成することができる。
さらに、高屈折率低分散性のレンズの光学機能面を非球面化することにより、各種光学系の一層の高機能化、コンパクト化を図ることができる。
【0003】
非球面レンズなど、研削、研磨などの加工では非常に手間とコストがかかるガラス製光学素子を効率よく製造する方法として、精密プレス成形法が知られている。こうした精密プレス成形法に使用される高屈折率低分散光学ガラスが、特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2008−050591号公報
【特許文献2】特開2006−137645号公報
【特許文献3】特開2005−247613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に開示されている光学ガラスは、高屈折率低分散性を得るために、高屈折率付与成分の中でも低分散化に有利なLaなどの希土類成分と、高屈折率化により有利なTi、Wなどの成分を構成成分として導入している。
【0006】
ところで、特許文献1〜3に開示されているガラスのように、希土類成分とTi、Wなどの高屈折率付与成分を含むガラスを用いて精密プレス成形を行うと、プレス回数を重ねるに従って、プレス成形型の成形面にガラスが融着したり、成形した光学素子の表面にクモリが生じ、品質が低下したり、ガラスが破損するなどの問題がおこる。
【0007】
本発明は、上記問題を解決し、高品質の光学素子を安定生産可能にする高屈折率低分散光学ガラスを提供することを第1の目的とし、前記光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームおよび光学素子と、前記光学素子の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、
(1)カチオン%表示で、
3+ 20〜50%、
Si4+ 0〜10%
La3+ 5〜35%、
Gd3+ 0〜10%、
3+ 0〜10%、
Yb3+ 0〜10%、
Ti4+ 0〜4%、
Nb5+ 1〜30%、
Ta5+ 0.5〜15%、
6+ 0〜5%、
Zr4+ 0〜10%、
Zn2+ 11〜40%、
Mg2+ 0〜10%、
Ca2+ 0〜10%、
Sr2+ 0〜10%、
Ba2+ 0〜10%、
Li 0〜10%、
Na 0〜10%、
0〜10%、
Te4+ 0〜10%、
Ge4+ 0〜10%、
Bi3+ 0〜10%、
Al3+ 0〜10%、
を含み、
3+およびSi4+の合計含有量(B3++Si4+)が20〜50%、
La3+、Gd3+およびY3+の合計含有量(La3++Gd3++Y3+)が5〜35%、
カチオン比((B3++Si4+)/(La3++Gd3++Y3+))が1〜5、
Ti4+、Nb5+、Ta5+、およびW6+の合計含有量(Ti4++Nb5++Ta5++W6+)が10〜35%、
カチオン比((Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0.7〜1、
カチオン比((B3++Si4+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0.5〜4、
カチオン比((La3++Gd3++Y3+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0.2〜3、
Zn2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量に対するZn2+の含有量のカチオン比(Zn2+/(Zn2++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+))が0.8〜1であり、
屈折率ndが1.89以上、アッベ数νdが27〜37である光学ガラス、
(2)Nb5+およびTa5+の合計含有量(Nb5++Ta5+)が5〜35カチオン%、Ti4+およびW6+の合計含有量(Ti4++W6+)が0〜6カチオン%である上記(1)項に記載の光学ガラス、
(3)ガラス転移温度が630℃以下である上記(1)または(2)項に記載の光学ガラス、
(4)液相温度が1200℃以下である上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の光学ガラス、
(5)部分分散比Pg,Fの偏差△Pg,Fが0.006以下である上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の光学ガラス、
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォーム、
(7)上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子、および
(8)上記(6)項に記載の精密プレス成形用プリフォームを加熱し、プレス成形型を用いて精密プレス成形する光学素子の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、精密プレス成形などにより、高品質の光学素子を安定生産可能にする高屈折率低分散光学ガラスを提供すること、前記光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームおよび光学素子と、前記光学素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の光学ガラスにおける好ましい光学特性の範囲を光学恒数図により示したものである。 図中のAで示された範囲は、光学特性範囲Aにおける好ましい範囲、Bで示された範囲は、光学特性範囲Bにおける好ましい範囲、Cで示された範囲は光学特性範囲Cにおける好ましい範囲にそれぞれ相当する。
【0011】
【図2】本発明の光学ガラスにおけるより好ましい光学特性の範囲を光学恒数図により示したものである。 図中のAで示された範囲は、光学特性範囲A内にあってより好ましい範囲、Bで示された範囲は、光学特性範囲B内にあってより好ましい範囲、Cで示された範囲は、光学特性範囲C内にあってより好ましい範囲にそれぞれ相当する。
【0012】
【図3】本発明の光学ガラスにおけるさらに好ましい光学特性の範囲を光学恒数図により示したものである。 図中のAで示された範囲は、光学特性範囲A内にあってさらに好ましい範囲、Bで示された範囲は、光学特性範囲B内にあってさらに好ましい範囲、Cで示された範囲は、光学特性範囲C内にあってさらに好ましい範囲にそれぞれ相当する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、プレス成形の回数を重ねるに従い、プレス成形型の成形面にガラスが融着する、光学機能面を含むガラス表面にクモリが発生し、光学素子の品質が低下する、ガラスが破損するといった問題の発生メカニズムについて、検討を行った。
上記の問題は、次のような現象に起因すると推察される。
【0014】
低分散性を維持しつつ、屈折率を高めるには、ガラス成分としてLaなど希土類成分を導入する必要がある。しかし、希土類成分のみで高屈折率化を行うとガラスの熱的安定性が著しく低下し、ガラスの製造が困難になるため、Ti、Nb、Wなどの高屈折率付与成分も導入し、高屈折率化が図られている。
【0015】
高屈折率付与成分の中でも、Tiは、導入量当たりの屈折率増加量が大きく、高屈折率化に非常に有利である。また、Wは、高屈折率付与成分の中では、ガラス転移温度の上昇を抑える上で有利な成分である。したがって、これまで、ガラス成分として、TiやWの導入が積極的に行われてきた。
【0016】
希土類成分はガラス転移温度や屈伏点を上昇させる作用がある。そのため、低分散性を維持しつつ高屈折率化を図ると、希土類成分を少量に抑えることができるガラスと比較し、ガラス転移温度が高くなる。
【0017】
一方、Ti、Wは、精密プレス成形時のように高温で価数変化を起こしやすく、ガラス中のTi、Wがプレス成形型と高温下で密着することによって、プレス成形型の成形面を構成する材料、例えば、炭素などとの間で酸化還元反応が起こりやすくなる。この反応はプレス成形温度が高いほど促進されるため、希土類成分の導入によってガラス転移温度が上昇したガラスの精密プレス成形では、こうした反応が助長され、結果として、上記問題が発生する。
【0018】
プレス成形型とガラスの間の反応を抑えるには、Ti、Wといった成分の含有量を制限するとともに、ガラス転移温度の上昇を抑えることが重要である。同時に、ガラスの熱的安定性が損なわれることがないよう、配慮することが大切である。
【0019】
このようにして完成に至った本発明の光学ガラスは、
カチオン%表示で、
3+ 20〜50%、
Si4+ 0〜10%
La3+ 5〜35%、
Gd3+ 0〜10%、
3+ 0〜10%、
Yb3+ 0〜10%、
Ti4+ 0〜4%、
Nb5+ 1〜30%、
Ta5+ 0.5〜15%、
6+ 0〜5%、
Zr4+ 0〜10%、
Zn2+ 11〜40%、
Mg2+ 0〜10%、
Ca2+ 0〜10%、
Sr2+ 0〜10%、
Ba2+ 0〜10%、
Li 0〜10%、
Na 0〜10%、
0〜10%、
Te4+ 0〜10%、
Ge4+ 0〜10%、
Bi3+ 0〜10%、
Al3+ 0〜10%、
を含み、
3+およびSi4+の合計含有量(B3++Si4+)が20〜50%、
La3+、Gd3+およびY3+の合計含有量(La3++Gd3++Y3+)が5〜35%、
カチオン比((B3++Si4+)/(La3++Gd3++Y3+))が1〜5、
Ti4+、Nb5+、Ta5+、およびW6+の合計含有量(Ti4++Nb5++Ta5++W6+)が10〜35%、
カチオン比((Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0.7〜1、
カチオン比((B3++Si4+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0.5〜4、
カチオン比((La3++Gd3++Y3+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0.2〜3、
Zn2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量に対するZn2+の含有量のカチオン比(Zn2+/(Zn2++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+))が0.8〜1であり、
屈折率ndが1.89以上、アッベ数νdが27〜37である光学ガラスである。
【0020】
以下、本発明の光学ガラスについて詳説する。以下、特記しない限り、各カチオン成分の含有量、合計含有量はカチオン%にて表示し、前記含有量の比はカチオン比にて表示するものとする。
【0021】
3+は、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熱的安定性を維持する上で必須の成分であり、熔融性を改善する働きもある。B3+の含有量が20%未満であると上記効果を得ることが難しくなり、50%を超えると屈折率が低下する。したがって、B3+の含有量を20〜50%の範囲とする。
【0022】
Si4+は、ガラスの熱的安定性を改善する働きをする成分であり、ガラス融液を成形する際、成形に適した粘性を得る上でも有効な成分である。しかし、Si4+の含有量が10%を超えると、屈折率が低下し、ガラス転移温度が上昇する。したがって、Si4+の含有量を0〜10%の範囲とする。
【0023】
3+およびSi4+はともにネットワーク形成成分であり、ガラスの熱的安定性を維持する上から、B3+およびSi4+の合計含有量(B3++Si4+)を20%以上とする。しかし、B3+およびSi4+の合計含有量が50%を超えると所要の光学特性を得ることが困難になることから、B3+およびSi4+の合計含有量を20〜50%の範囲とする。
La3+は、低分散性を維持しつつ屈折率を高める働きをする成分である。La3+の含有量が5%未満になると、上記効果を得ることが難しくなり、35%を超えると、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラス転移温度が上昇する傾向を示す。したがって、La3+の含有量を5〜35%の範囲とする。
【0024】
Gd3+、Y3+、Yb3+は、いずれも低分散性を維持しつつ屈折率を高める働きをする成分である。Gd3+、Y3+、Yb3+の含有量のいずれかが10%を超えると、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラス転移温度が上昇する傾向を示す。したがって、Gd3+、Y3+、Yb3+の各成分の含有量をいずれも0〜10%の範囲とする。Gd3+、Y3+、Yb3+の各成分の含有量の好ましい範囲はいずれの成分においても0〜6%、より好ましい範囲はいずれの成分においても0〜3%、さらに好ましい範囲はいずれの成分においても0〜2%、一層好ましい範囲はいずれの成分においても0〜1%であり、いずれの成分においても含有しないことがより一層好ましい。
【0025】
なお、低分散性を維持しつつ、屈折率を高める上から、La3+、Gd3+およびY3+の合計含有量(La3++Gd3++Y3+)を5%以上とするが、La3+、Gd3+およびY3+の合計含有量が35%を超えると、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラス転移温度も上昇傾向を示すため、La3+、Gd3+およびY3+の合計含有量を5〜35%の範囲とする。
【0026】
さらに、カチオン比((B3++Si4+)/(La3++Gd3++Y3+))が1未満であるとガラスの熱的安定性が低下し、5を超えると所要の光学特性を維持することが困難になるため、カチオン比((B3++Si4+)/(La3++Gd3++Y3+))を1〜5の範囲とする。
【0027】
Ti4+は、屈折率を高める働きをする成分である。Ti4+の含有量が4%を超えると、精密プレス成形性が低下するとともに、ガラスが着色する傾向を示す。したがって、Ti4+の含有量を0〜4%の範囲とする。
【0028】
Nb5+は、屈折率を高める働きをするとともに、ガラス成分としてLa3+と共存することによりガラスの熱的安定性を改善する働きをする必須成分である。さらに、Nb5+は、Ti4+、Ta5+、W6+といった屈折率を高める作用が大きい成分の中にあって、Ta5+とともに比較的、プレス成形型との酸化還元反応をおこしにくく、ガラスとプレス成形型との融着、ガラス表面のくもり、傷などの不具合をおこしにくい成分でもある。Nb5+の含有量が1%未満であるとこうした効果を得ることが困難になり、30%を超えるとガラスの熱的安定性が低下し、液相温度が上昇する傾向を示す。したがって、Nb5+の含有量を1〜30%の範囲とする。
【0029】
Ta5+は、屈折率を高める働きをする成分であるとともに、Nb5+と同様、Ti4+やW6+よりもプレス成形型との酸化還元反応を起こしにくい成分でもある。精密プレス成形性に優れた高屈折率ガラスを得る上から、Ta5+の含有量を0.5%以上とするが、Ta5+の含有量が15%を超えるとガラスの熱的安定性が低下する傾向を示すため、Ta5+の含有量を0.5〜15%の範囲とする。
【0030】
6+は、屈折率を高め、ガラスの熱的安定性を改善し、液相温度を低下させる働きをする成分であるが、W6+の含有量が5%を超えると精密プレス成形性が低下するとともに、ガラスが着色する傾向を示す。したがって、W6+の含有量を0〜5%の範囲とする。
【0031】
なお、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量(Ti4++Nb5++Ta5++W6+)が10%未満になるか、35%超えると、所要の光学特性とガラスの熱的安定性を維持することが困難になる。したがって、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量を10〜35%の範囲とする。
【0032】
前述のように、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+のうち、Nb5+、Ta5+は、精密プレス成形性を悪化させにくい成分であることから、高屈折率化に伴う、精密プレス成形性の悪化を防ぐため、カチオン比((Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))を0.7〜1の範囲に制限する。
【0033】
さらに、Nb5+およびTa5+の合計含有量(Nb5++Ta5+)を5〜35%の範囲、Ti4+およびW6+の合計含有量(Ti4++W6+)を0〜6%の範囲とすることが、上記理由と同様の理由から、それぞれ好ましい。
【0034】
さらに、ガラスの熱的安定性を維持しつつ、所要の光学特性を実現するため、カチオン比((B3++Si4+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))を0.5〜4の範囲とし、カチオン比((La3++Gd3++Y3+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))を0.2〜3の範囲とする。
【0035】
Zr4+は、屈折率を高める働きをする成分である。Zr4+の含有量が10%を超えると、ガラスの熱的安定性が低下し、液相温度が上昇する傾向を示す。したがって、Zr4+の含有量を0〜10%の範囲とする。
【0036】
Zn2+は、高屈折率を維持しつつ、ガラス転移温度を低下させる働きをするとともに、熔融性を改善する働きをする成分である。Zn2+の含有量が11%未満であると上記効果を得ることが困難になり、40%を超えるとガラスの熱的安定性が低下する傾向を示す。したがって、Zn2+の含有量を11〜40%の範囲とする。
【0037】
Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+は、いずれも熔融性を改善する働きをするが、それぞれ含有量が10%を超えると屈折率が低下し、ガラスの熱的安定性も低下する傾向を示す。したがって、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+の各成分の含有量をいずれも0〜10%の範囲とする。Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+の各成分の含有量の好ましい範囲はいずれの成分においても0〜6%、より好ましい範囲はいずれの成分においても0〜3%、さらに好ましい範囲はいずれの成分においても0〜2%、一層好ましい範囲はいずれの成分においても0〜1%であり、いずれの成分においても含有しないことがより一層好ましい。
【0038】
2価金属成分であるZn2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の中でも、Zn2+は、高屈折率特性を維持しつつ、ガラス転移温度を低下させる働きに優れた成分であることから、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量に対するZn2+の含有量のカチオン比(Zn2+/(Zn2++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+))を0.8〜1の範囲とする。
【0039】
Liは、熔融性を改善し、ガラス転移温度を大幅に低下させる働きをするとともに、少量であればガラスの熱的安定性を改善する働きをする成分である。また、アルカリ金属成分の中で、高屈折率特性を維持する上で最も有利な成分である。しかし、Liの含有量が10%を超えると、屈折率が低下するとともに、ガラスの熱的安定性も低下傾向を示す。したがって、Liの含有量を0〜10%の範囲とする。Liの含有量の好ましい範囲は0〜6%、より好ましい範囲は0〜3%、さらに好ましい範囲は0〜2%、一層好ましい範囲は0〜1%であり、含有しないことがより一層好ましい。
【0040】
Na、Kは、いずれも熔融性を改善し、ガラス転移温度を低下させる働きをするが、Na、Kの各成分の含有量が10%を超えると、屈折率が低下し、ガラスの熱的安定性も低下する傾向を示す。したがって、Na、Kの各成分の含有量をいずれも0〜10%の範囲とする。Na、Kの各成分の含有量の好ましい範囲はいずれも0〜6%、より好ましい範囲はいずれも0〜3%、さらに好ましい範囲はいずれも0〜2%、一層好ましい範囲はいずれも0〜1%であり、いずれの成分においても含有しないことがより一層好ましい。
【0041】
なお、Liは、Na、Kと比べ、高屈折率特性を維持しつつ、ガラス転移温度を低下させる働きに優れていることから、Liの含有量を、Na、Kの各成分の含有量よりも多くすることが好ましい。
【0042】
Te4+は、屈折率を高めるとともに、ガラスの熱的安定性を高める働きをする成分であるが、Te4+の含有量が10%を超えるとガラスの熱的安定性が低下するため、Te4+の含有量を0〜10%の範囲とする。Te4+は環境負荷への配慮の観点から、その使用量を削減することが望まれる。こうした観点から、Te4+の含有量を0〜6%の範囲にすることが好ましく、0〜3%の範囲にすることがより好ましく、0〜2%の範囲にすることがさらに好ましく、0〜1%の範囲にすることが一層好ましく、含有させないことがより一層好ましい。
【0043】
Ge4+は、屈折率を高めるとともに、ガラスの熱的安定性を高める働きをする成分であるが、Ge4+の含有量が10%を超えるとガラスの熱的安定性が低下する。したがって、Ge4+の含有量を0〜10%の範囲とする。Ge4+は、ガラス成分として使用される物質の中で、格段に高価な成分であり、製造コストの増大を抑える観点から、その使用量を少なくすることが望まれ、その含有量を0〜6%の範囲にすることが好ましく、0〜3%の範囲にすることがより好ましく、0〜2%の範囲にすることがさらに好ましく、0〜1%の範囲にすることが一層好ましく、含有させないことがより一層好ましい。
【0044】
Bi3+は、屈折率を高めるとともに、ガラスの熱的安定性を高める働きをする成分であるが、Bi3+の含有量が10%を超えると、ガラスの熱的安定性が低下するとともに、ガラスが着色する傾向を示す。したがって、Bi3+の含有量を0〜10%の範囲とする。Bi3+の含有量の好ましい範囲は0〜6%、より好ましい範囲は0〜3%、さらに好ましい範囲は0〜1%、含有させないことが一層好ましい。
【0045】
Al3+は、ガラスの熱的安定性、化学的耐久性を改善する働きをする成分であるが、Al3+の含有量が10%を超えると、屈折率が低下するとともに、ガラスの熱的安定性が低下する傾向を示す。したがって、Al3+の含有量を0〜10%の範囲とする。Al3+の含有量の好ましい範囲は0〜6%、より好ましい範囲は0〜3%、さらに好ましい範囲は0〜1%、含有させないことが一層好ましい。
【0046】
本発明の光学ガラスは、主要アニオン成分はO2−であって、基本的に酸化物ガラスである。O2−以外のアニオン成分としては、F、Clなどのハロゲン成分を少量導入することもできる。ただし、熔融ガラスの揮発性を抑え、成形をより容易にする点を重視する場合は、揮発性のあるF成分の導入量を抑えること、すなわち、F成分の導入しないことが望ましい。なお、ガラス成分ではなく、清澄剤として極少量のハロゲン、例えば、F、Clを添加してガラスを熔融することもできる。
【0047】
清澄剤として、Sb、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩などを少量添加してもよい。ただし、Sbを添加する場合は、Sbの酸化力が強いことから、プレス成形型の成形面との酸化還元反応を助長させないために、Sbの外割り添加量を0〜1質量%の範囲とすることが好ましく、0〜0.5質量%の範囲とすることがより好ましい。
【0048】
なお、Fe、Cr、Co、Cuはガラスが着色するため、添加しないことが望ましい。
また、Pb、Cd、Tl、Asなど環境への悪影響が懸念される成分も導入しないことが望ましい。
【0049】
Lu、Gaは本発明の目的を損なわない範囲で少量、導入することができるが、これらの成分は、非常に高価であり、使用しなくても本発明の目的を達成することができるので、コスト上昇を抑える上から、Lu、Gaをガラス中に導入しないことが望ましい。
【0050】
上記組成範囲において、所要の光学特性を維持しつつ、ガラスの熱的安定性をより良好なものとし、ガラス転移温度を低下し、精密プレス成形性をより良好なものとする上から、B3+、Si4+、La3+、Gd3+、Y3+、Yb3+、Ti4+、Nb5+、Ta5+、W6+、Zr4+、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Li、NaおよびKの合計含有量を95%以上にすることが好ましく、98%以上にすることがより好ましく、99%以上にすることがさらに好ましく、99.5%以上にすることが一層好ましく、100%にすることがより一層好ましい。
【0051】
さらに、B3+、Si4+、La3+、Gd3+、Y3+、Yb3+、Ti4+、Nb5+、Ta5+、W6+、Zr4+、Zn2+およびLiの合計含有量を95%以上にすることが好ましく、98%以上にすることがより好ましく、99%以上にすることがさらに好ましく、99.5%以上にすることが一層好ましく、100%にすることがより一層好ましい。
【0052】
より好ましくは、B3+、Si4+、La3+、Gd3+、Y3+、Yb3+、Ti4+、Nb5+、Ta5+、W6+、Zr4+およびZn2+の合計含有量を95%以上にすることが好ましく、98%以上にすることがより好ましく、99%以上にすることがさらに好ましく、99.5%以上にすることが一層好ましく、100%にすることがより一層好ましい。
【0053】
[屈折率・分散]
本発明の光学ガラスの屈折率ndは1.89以上、アッベ数νdは27〜37である。屈折率ndが1.89以上であることにより、本発明の光学ガラスを用いて撮像光学系やプロジェクターなどの投射光学系などの光学系をコンパクト化することができる。また、光学系のズーム比を大きくすることもできる。さらに、屈折率が高いため、所要の集光力を得るためのレンズの光学機能面の曲率の絶対値を小さくすることができる。光学機能面の曲率の絶対値を小さくすることができることにより、精密プレス成形に用いるプレス成形型の成形面の加工が容易になる。精密プレス成形時にガラスとプレス成形型の間に雰囲気ガスが閉じ込められ(一般にガストラップという。)、型への転写精度が低下するトラブルを低減することもできる。光学機能面を研削、研磨する場合も、加工が容易になる。また、光学機能面の曲率の絶対値を小さくできることにより、レンズの有効径を大きくすることもできる。
【0054】
また、本発明の光学ガラスは、高屈折率ガラスでありながら、アッベ数νdが27以上であるため、高屈折率高分散ガラス製レンズとの組合せにより、良好な色収差補正が可能になるレンズ材料として有効である。
【0055】
また、アッベ数νdを27以上とすることにより、Ti4+、Nb5+、W6+といった高屈折得率高分散付与成分の含有量を制限することができるので、間接的に、ガラスの精密プレス成形性を向上させることもできる。
【0056】
一方、屈折率ndを1.89以上に保ちつつ、アッベ数νdが37を超えると、ガラスの熱的安定性が低下したり、ガラス転移温度が上昇する。ガラス転移温度が上昇すると、精密プレス成形時の温度を高く設定しなければならず、ガラスとプレス成形型の間の酸化還元反応が助長され、プレス成形型へのガラスの融着、ガラス表面のクモリなどの発生といったトラブルが起こりやすくなり、精密プレス成形性が低下する。
【0057】
以上の理由から、本発明の光学ガラスの屈折率ndを1.89以上、アッベ数νdを27〜37とする。
【0058】
高屈折率低分散ガラスでは、低分散性を維持しつつ屈折率を高めると、ガラスの熱的安定性が低下したり、ガラス転移温度が上昇する傾向を示すが、高分散化を許容しつつ、高屈折率化を図ることにより、熱的安定性の低下、ガラス転移温度の上昇を軽減することができる。
【0059】
したがって、熱的安定性を維持し、ガラス転移温度を低く維持する上から、本発明の光学ガラスの好ましい光学特性範囲は、屈折率の上限を規定するか、アッベ数に応じて屈折率の上限を規定(あるいは、屈折率に応じてアッベ数の上限を規定)することにより画定される。
【0060】
本発明の光学ガラスのような高屈折率低分散ガラスの場合、前述の色収差補正機能を高めるには、高屈折率化と低低分散化を行うことが好ましい。こうした観点から、本発明の光学ガラスの好ましい光学特性範囲は、屈折率の下限を規定するか、アッベ数に応じて屈折率の下限を規定(あるいは、屈折率に応じてアッベ数の下限を規定)することにより画定される。
【0061】
本発明の光学ガラスにおいて、好ましい光学特性範囲は、次の3つの範囲、すなわち、光学特性範囲A〜Cに大別することができる。これら好ましい範囲は、屈折率、アッベ数、ガラスの熱的安定性、ガラス転移温度、色収差補正機能などの光学性能の観点から定めたものである。
【0062】
光学ガラスの光学特性を表示する方法として、光学恒数図が広く用いられている。光学恒数図は、横軸にアッベ数νd、縦軸に屈折率ndをとり、横軸は右方向がアッベ数の減少方向(高分散方向)、左方向がアッベ数の増加方向(低分散方向)であり、縦軸は上方向が高屈折率方向、下方向が低屈折率方向であって、横軸、縦軸のスケールともリニアスケールとする。特定の光学ガラスの光学特性は、光学恒数図上の1点として表示される。
【0063】
図1〜図3は、本発明の光学ガラスにおける好ましい光学特性の範囲を光学恒数図上に示したものである。
【0064】
[光学特性範囲A]
光学特性範囲Aは、屈折率ndが1.89以上であり、アッベ数νdが27以上かつ31未満の範囲である。
図1に示す光学恒数図において、
座標(27 , 1.89)の点をa1、
座標(27 , 2.00)の点をa2、
座標(29 , 2.00)の点をa3、
座標(30 , 1.97)の点をa4、
座標(31 , 1.95)の点をa5、
座標(31 , 1.89)の点をa6、
としたとき、前記各点をa1→a2→a3→a4→a5→a6→a1の順に直線で結んだときに囲まれる領域と前記直線(但し、a5とa6を結ぶ直線を除く。)をあわせた範囲が、光学特性範囲Aにおける好ましい範囲である。
【0065】
図2に示す光学恒数図において、
座標(28 , 1.930)の点をa7、
座標(28 , 1.970)の点をa8、
座標(30 , 1.970)の点をa9、
座標(31 , 1.940)の点をa10、
座標(31 , 1.900)の点をa11、
座標(29 , 1.900)の点をa12、
としたとき、前記各点をa7→a8→a9→a10→a11→a12→a7の順に直線で結んだときに囲まれる領域と前記直線(但し、a10とa11を結ぶ直線を除く。)をあわせた範囲が、光学特性範囲Aにおけるより好ましい範囲である。
【0066】
図3に示す光学恒数図において、
座標(28 , 1.950)の点をa13、
座標(28 , 1.970)の点をa14、
座標(29 , 1.970)の点をa15、
座標(31 , 1.930)の点をa16、
座標(31 , 1.910)の点をa17、
座標(30 , 1.910)の点をa18、
としたとき、前記各点をa13→a14→a15→a16→a17→a18→a13の順に直線で結んだときに囲まれる領域と前記直線(但し、a16とa17を結ぶ直線を除く。)をあわせた範囲が、光学特性範囲Aにおけるさらに好ましい範囲である。
【0067】
[光学特性範囲B]
光学特性範囲Bは、屈折率ndが1.89以上であって、アッベ数νdが31〜33の範囲である。
図1に示す光学恒数図において、
座標(31 , 1.89)の点をb1、
座標(31 , 1.95)の点をb2、
座標(33 , 1.93)の点をb3
座標(33 , 1.89)の点をb4、
としたとき、前記各点をb1→b2→b3→b4→b1の順に直線で結んだときに囲まれる領域と前記直線をあわせた範囲が、光学特性範囲Bにおける好ましい範囲である。
【0068】
図2に示す光学恒数図において、
座標(31 , 1.900)の点をb5、
座標(31 , 1.940)の点をb6、
座標(33 , 1.920)の点をb7、
座標(33 , 1.890)の点をb8、
座標(32 , 1.890)の点をb9、
としたとき、前記各点をb5→b6→b7→b8→b9→b5の順に直線で結んだときに囲まれる領域と前記直線をあわせた範囲が、光学特性範囲Bにおけるより好ましい範囲である。
【0069】
図3に示す光学恒数図において、
座標(31 , 1.910)の点をb10、
座標(31 , 1.930)の点をb11、
座標(33 , 1.910)の点をb12
座標(33 , 1.900)の点をb13、
座標(32 , 1.900)の点をb14、
としたとき、前記各点をb10→b11→b12→b13→b14→b10の順に直線で結んだときに囲まれる領域と前記直線をあわせた範囲が、光学特性範囲Bにおけるさらに好ましい範囲である。
【0070】
[光学特性範囲C]
光学特性範囲Cは、屈折率ndが1.89以上であって、アッベ数νdが33を超え37以下の範囲である。
図1に示す光学恒数図において、
座標(33 , 1.89)の点をc1、
座標(33 , 1.93)の点をc2、
座標(37 , 1.89)の点をc3、
としたとき、前記各点をc1→c2→c3→c1の順に直線で結んだときに囲まれる領域と前記直線(但し、c1とc2を結ぶ直線を除く。)をあわせた範囲が、光学特性範囲Cにおける好ましい範囲である。
【0071】
図2に示す光学恒数図において、
座標(33 , 1.890)の点をc4、
座標(33 , 1.926)の点をc5、
座標(36 , 1.896)の点をc6、
座標(36 , 1.890)の点をc7、
としたとき、前記各点をc4→c5→c6→c7→c4の順に結んだときに囲まれる領域と前記直線(但し、c4とc5を結ぶ直線を除く。)をあわせた範囲が、光学特性範囲Cにおけるより好ましい範囲である。
【0072】
図3に示す光学恒数図において、
座標(33 , 1.900)の点をc8、
座標(33 , 1.922)の点をc9、
座標(35 , 1.902)の点をc10、
座標(35 , 1.900)の点をc11、
としたとき、前記各点をc8→c9→c10→c11→c8の順に結んだときに囲まれる領域と前記直線(但し、c8とc9を結ぶ直線を除く。)をあわせた範囲が、光学特性範囲Cにおけるさらに好ましい範囲である。
【0073】
図1、図2および図3の光学恒数図上に示した光学特性の範囲は、表1(光学特性範囲A)、表2(光学特性範囲B)および表3(光学特性範囲C)に示す式を選択して図示したものである。表1、表2および表3に示す屈折率ndの上、下限およびアッベ数νdの上、下限を示す各レベル数を適宜選択することにより、任意の組み合わせの光学恒数図を作成することができる。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
次に、光学特性範囲A〜Cのそれぞれの範囲における本発明の好ましいガラス組成範囲について説明する。
【0078】
[光学特性範囲Aにおける好ましいガラス組成]
本発明の光学ガラスの組成範囲において、光学特性範囲Aを備えるものとして好ましい組成範囲を以下に示す。
3+の含有量は22〜48%の範囲が好ましく、24〜46%の範囲より好ましく、26〜44%の範囲がさらに好ましく、28〜42%の範囲が一層好ましい。
Si4+の含有量は、1〜8%の範囲が好ましく、1〜7%の範囲がより好ましく、1〜6%の範囲が一層好ましい。
La3+の含有量は、6〜30%の範囲が好ましく、8〜26%の範囲がより好ましく、10〜23%の範囲がさらに好ましく、12〜18%の範囲が一層好ましい。
Ti4+の含有量は、0〜3.5%の範囲が好ましく、0〜3%の範囲がより好ましく、0.5〜2.5%の範囲がさらに好ましい。
Nb5+の含有量は5〜30%の範囲が好ましく、7〜29の範囲がより好ましく、8〜26%の範囲がさらに好ましく、9〜23%が一層好ましい。
Ta5+の含有量は1〜13%の範囲が好ましく、2〜10%の範囲がより好ましく、2〜8%の範囲がさらに好ましく、2〜5%の範囲が一層好ましい。
6+の含有量は、0〜4%の範囲が好ましく、0〜3.5%がより好ましく、0〜3%がさらに好ましい。
Zr4+の含有量は、1〜8%の範囲が好ましく、1〜5%の範囲がより好ましく、1〜3%の範囲がさらに好ましい。
Zn2+の含有量は、12〜38%の範囲が好ましく、13〜35%の範囲がより好ましく、14〜30%の範囲がさらに好ましく、15〜25%の範囲が一層好ましい。
3+およびSi4+の合計含有量は、24〜43%の範囲が好ましく、26〜43%の範囲がより好ましく、28〜43%の範囲がさらに好ましく、30〜43%の範囲が一層好ましい。
La3+、Gd3+およびY3+の合計含有量は、8〜24%の範囲が好ましく、10〜22%の範囲がより好ましく、12〜20%の範囲がさらに好ましく、14〜18%の範囲が一層好ましい。
La3+、Gd3+およびY3+の合計含有量に対するB3+およびSi4+の合計含有量のカチオン比((B3++Si4+)/(La3++Gd3++Y3+))は、1.25〜3.50の範囲が好ましく、1.50〜2.80の範囲がより好ましい。
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量は、12〜34%の範囲が好ましく、14〜32%の範囲がより好ましく、16〜30%の範囲がさらに好ましく、18〜28%の範囲が一層好ましい。
Nb5+およびTa5+の合計含有量は、12〜34%の範囲が好ましく、13〜31%の範囲がより好ましく、13〜28%の範囲がさらに好ましく、15〜25%の範囲が一層好ましい。
Ti4+およびW6+の合計含有量は、0〜5%の範囲が好ましく、0〜4%の範囲がより好ましく、1〜3%の範囲がさらに好ましい。
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するNb5+およびTa5+の合計含有量のカチオン比((Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))は、0.75〜1.00の範囲が好ましく、0.80〜1.00の範囲がより好ましい。
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するB3+およびSi4+の合計含有量のカチオン比((Si4++B3+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))は、0.80〜3.00の範囲が好ましく、1.30〜2.50の範囲がより好ましい。
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するLa3+、Gd3+およびY3+の合計含有量のカチオン比((La3++Gd3++Y3+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))は、0.30〜1.30の範囲が好ましく、0.40〜0.90の範囲がより好ましい。
Zn2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量に対するZn2+の含有量のカチオン比(Zn2+/(Zn2++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+))は、0.90〜1.00の範囲が好ましく、1.00がより好ましい。
【0079】
[光学特性範囲Bにおける好ましいガラス組成]
本発明の光学ガラスの組成範囲において、光学特性範囲Bを備えるものとして好ましい組成範囲を以下に示す。
3+の含有量は、30〜48%の範囲が好ましく、32〜48%の範囲がより好ましく、34〜46%の範囲がさらに好ましく、36〜44%の範囲が一層好ましい。
Si4+の含有量は、0〜8%の範囲が好ましく、1〜7%の範囲がより好ましく、2〜6%の範囲がさらに好ましい。
La3+の含有量は6〜30%の範囲が好ましく、9〜26%の範囲がより好ましく、11〜23%の範囲がさらに好ましく、13〜18%の範囲が一層好ましい。
Ti4+の含有量は、0〜3.5%の範囲が好ましく、0〜3%の範囲がより好ましく、0.5〜2.5%の範囲がさらに好ましい。
Nb5+の含有量は、5〜20%の範囲が好ましく、5〜18%の範囲がより好ましく、5〜16%の範囲がさらに好ましく、7〜14%の範囲が一層好ましい。
Ta5+の含有量は、1〜13%の範囲が好ましく、2〜10%の範囲がより好ましく、2〜8%の範囲がさらに好ましく、2〜5%の範囲が一層好ましい。
6+の含有量は、0〜4%の範囲が好ましく、0〜3.5%の範囲がより好ましく、0〜3%の範囲がさらに好ましい。
Zr4+の含有量は、1〜8%の範囲が好ましく、1〜5%の範囲がより好ましく、1〜3%の範囲がさらに好ましい。
Zn2+の含有量は12〜38%の範囲が好ましく、13〜35%の範囲がより好ましく、14〜30%の範囲がさらに好ましく、15〜25%の範囲が一層好ましい。
3+およびSi4+の合計含有量は、34〜49%の範囲が好ましく、36〜49%の範囲がより好ましく、38〜47%の範囲がさらに好ましく、40〜45%が一層好ましい。
La3+、Gd3+およびY3+の合計含有量は、8〜24%の範囲が好ましく、10〜22%の範囲がより好ましく、12〜20%の範囲がさらに好ましく、14〜18%の範囲が一層好ましい。
La3+、Gd3+およびY3+の合計含有量に対するB3+およびSi4+の合計含有量のカチオン比((B3++Si4+)/(La3++Gd3++Y3+))は、1.50〜4.00の範囲が好ましく、2.00〜3.50の範囲がより好ましい。
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量は、10〜26%の範囲が好ましく、12〜24%の範囲がより好ましく、14〜22%の範囲がさらに好ましく、16〜20%の範囲が一層好ましい。
Nb5+およびTa5+の合計含有量は、8〜24%の範囲が好ましく、10〜22%の範囲がより好ましく、12〜20%の範囲がさらに好ましく、13〜18%の範囲が一層好ましい。
Ti4+およびW6+の合計含有量は、0〜5%の範囲が好ましく、0〜4%の範囲がより好ましく、1〜3%の範囲がさらに好ましい。
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するNb5+およびTa5+の合計含有量のカチオン比((Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))は、0.75〜1.00の範囲が好ましく、0.80〜1.00の範囲がより好ましい。
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するB3+およびSi4+の合計含有量のカチオン比((B3++Si4+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))は、1.00〜3.50の範囲が好ましく、2.00〜3.00の範囲がより好ましい。
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するLa3+、Gd3+およびY3+の合計含有量のカチオン比((La3++Gd3++Y3+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))は、0.50〜1.50の範囲が好ましく、0.70〜1.15の範囲がより好ましい。
Zn2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量に対するZn2+の含有量のカチオン比(Zn2+/(Zn2++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+))は、0.90〜1.00の範囲が好ましく、1.00がより好ましい。
【0080】
[光学特性範囲Cにおける好ましいガラス組成]
本発明の光学ガラスの組成範囲において、光学特性範囲Cを備えるものとして好ましい組成範囲を以下に示す。
3+の含有量は、30〜48%の範囲が好ましく、32〜48%の範囲がより好ましく、34〜48%の範囲がさらに好ましく、36〜46%の範囲が一層好ましい。
Si4+の含有量は、0〜8%の範囲が好ましく、1〜7%の範囲がより好ましく、1〜6%の範囲がさらに好ましい。
La3+の含有量は6〜30%の範囲が好ましく、9〜27%の範囲がより好ましく、11〜25%の範囲がさらに好ましく、13〜23%の範囲が一層好ましい。
Ti4+の含有量は、0〜3.5%の範囲が好ましく、0〜3%の範囲がより好ましく、0〜2.5%の範囲がさらに好ましい。
Nb5+の含有量は1〜20%の範囲が好ましく、2〜17%の範囲がより好ましく、2〜15%の範囲がさらに好ましく、2〜13%の範囲が一層好ましい。
Ta5+の含有量は、1〜13%の範囲が好ましく、2〜11%の範囲がより好ましく、2〜9%の範囲がさらに好ましく、3〜8%の範囲が一層好ましい。
6+の含有量は、0〜4%の範囲が好ましく、0〜3.5%の範囲がより好ましく、0〜3%の範囲がさらに好ましい。
Zr4+の含有量は、1〜8%の範囲が好ましく、1〜5%の範囲がより好ましく、1〜4%の範囲がさらに好ましい。
Zn2+の含有量は、12〜38%の範囲が好ましく、13〜35%の範囲がより好ましく、14〜30%の範囲がさらに好ましく、15〜25%の範囲が一層好ましい。
3+およびSi4+の合計含有量は、35〜49%の範囲が好ましく、37〜49%の範囲がより好ましく、39〜49%の範囲が一層好ましく、41〜47%の範囲がより一層好ましい。
La3+、Gd3+およびY3+の合計含有量は、13〜29%の範囲が好ましく、13〜27%の範囲がより好ましく、14〜25%の範囲がさらに好ましく、15〜23%の範囲が一層好ましい。
La3+、Gd3+およびY3+の合計含有量に対するB3+およびSi4+の合計含有量のカチオン比((B3++Si4+)/(La3++Gd3++Y3+))は、1.50〜4.00の範囲が好ましく、1.70〜3.00の範囲がより好ましい。
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量は、10〜24%の範囲が好ましく、11〜22%の範囲がより好ましく、11〜20%の範囲がさらに好ましく、13〜18%の範囲が一層好ましい。
Nb5+およびTa5+の合計含有量は、6〜23%の範囲が好ましく、6〜21%の範囲がより好ましく、6〜19%の範囲がさらに好ましく、8〜17%の範囲が一層好ましい。
Ti4+およびW6+の合計含有量は、0〜5%の範囲が好ましく、0〜4%の範囲がより好ましく、1〜4%の範囲がさらに好ましい。
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するNb5+およびTa5+の合計含有量のカチオン比((Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))は、0.70〜0.99の範囲が好ましく、0.70〜0.95の範囲がより好ましい。
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するB3+およびSi4+、の合計含有量のカチオン比((B3++Si4+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))は、1.00〜3.50の範囲が好ましく、2.00〜3.20の範囲がより好ましい。
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するLa3+、Gd3+およびY3+の合計含有量のカチオン比((La3++Gd3++Y3+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))は、0.50〜1.80の範囲が好ましく、0.70〜1.60の範囲がより好ましい。
Zn2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量に対するZn2+の含有量のカチオン比(Zn2+/(Zn2++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+))は、0.90〜1.00の範囲が好ましく、1.00がより好ましい。
【0081】
[ガラス転移温度]
高屈折率低分散化に伴うガラス転移温度の上昇を抑えることは、プレス成形温度の上昇を抑え、プレス成形型とガラスの間の化学反応を助長させない上から、非常に重要である。
【0082】
本発明の光学ガラスにおける好ましい態様は、ガラス転移温度が630℃以下の光学ガラスであり、プレス成形型と化学反応しやすい成分の含有量が制限されていることと、ガラス転移温度が低いことにより、優れた精密プレス成形性を示す。
【0083】
上記観点から、本発明におけるガラス転移温度の好ましい範囲は、620℃以下、より好ましい範囲は、610℃以下、さらに好ましい範囲は、605℃以下である。
【0084】
同様に、本発明における屈伏点の好ましい範囲は、680℃以下、より好ましい範囲は、670℃以下、さらに好ましい範囲は、660℃以下、一層好ましい範囲は650℃である。
【0085】
[液相温度]
本発明の光学ガラスは、熱的安定性に優れ、例えば、液相温度を1200℃以下にすることができる。そのため、ガラス原料の熔解を1300℃以下で行うことができ、熔解を行うルツボのガラスによる侵蝕を抑えることができる。その結果、ルツボを構成する白金などの物質が、侵蝕によってガラス中に混入し異物となったり、イオンとして溶け込んでガラスの着色を引き起こすなどの問題を回避することができる。
【0086】
さらに液相温度を1200℃以下にすることにより、熔融ガラスの温度を低くして揮発性を抑え、揮発による脈理発生、光学特性の変動を低減、抑制することもできる。熔融ガラスの温度を低下できることは、流出、成形時のガラスの粘性が成形に適した範囲にできるというメリットもある。
本発明において、液相温度の好ましい範囲は1150℃以下、より好ましい範囲は1100℃以下である。
【0087】
液相温度が上記のように低いことは、熔融ガラスを流出するとともに、流出するガラスから、所要量の熔融ガラス塊を分離し、ガラス塊が固化する過程で精密プレス成形用プリフォームに成形する方法を行う上で、非常に有利である。なお、上記プリフォームの成形法については、後述する。
【0088】
[部分分散特性]
撮像光学系、投射光学系などで、高次の色収差補正を行うには、低分散ガラス製レンズと高分散ガラス製レンズの組合せが有効である。低分散ガラスとしては、部分分散比が小さいもののほうが、高次の色収差補正にはより効果的である。本発明の光学ガラスは、高屈折率低分散ガラスとしては部分分散比が小さく、Pg,Fの値は0.57〜0.62である。Pg,Fは、g線、F線、c線における各屈折率ng、nF、ncを用いて、
Pg,F=(ng−nF)/(nF−nc)
と表される。
【0089】
部分分散比Pg,F−アッベ数νd図において、正常部分分散ガラスの基準となるノーマルライン上の部分分散比をPg,F(0)と表すと、Pg,Fはアッベ数νdを用いて、
Pg,F(0)=0.6483−(0.0018×nd)
△Pg,Fは、上記ノーマルラインからの部分分散比Pg,Fの差であり、次式で表される。
【0090】
△Pg,F=Pg,F−Pg,F(0)
=Pg,F+(0.0018×νd)−0.6483
本発明の光学ガラスにおける好ましい態様は、偏差△Pg,Fが0.007以下であり、高次の色収差補正用の光学素子材料として好適である。本発明における△Pg,Fの好ましい範囲は0.006以下、より好ましい範囲は0.003以下、さらに好ましい範囲は0.002以下、一層好ましい範囲は0以下である。
【0091】
[着色]
本発明の光学ガラスは、着色が極めて少なく、可視域の広い範囲にわたり、高い光透過性を示す。光学ガラスの着色の度合いは、着色度λ70、λ5などによって表される。着色度は、平行な一対の光学研磨された平面を備え、平面間の距離(厚み)が10mm±0.1mmのガラスに、上記平面に対して垂直方向から測定光を入射し、ガラスを透過した光の強度Ioutを入射光強度Iinで割った外部透過率(ガラス表面における反射損失も含まれる。)が、280nm〜700nmの波長域で70%となる波長をλ70、前記波長域で外部透過率が5%となる波長をλ5とする。
【0092】
本発明において、λ70の好ましい範囲は470nm以下、より好ましい範囲は450nm、さらに好ましい範囲は430nm以下、一層好ましい範囲は410nm以下である。また、λ5の好ましい範囲は370nm以下、より好ましい範囲は365nm、さらに好ましい範囲は360nm以下、一層好ましい範囲は355nm以下、より一層好ましい範囲は350nm以下である。
【0093】
[光学ガラスの製造]
本発明の光学ガラスは、目的のガラス組成が得られるように、原料である酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物などを秤量、調合し、十分に混合して混合バッチとし、熔融容器内で加熱、熔融し、脱泡、攪拌を行い均質かつ泡を含まない熔融ガラスを作り、これを成形することによって得ることができる。具体的には公知の熔融法を用いて作ることができる。
【0094】
[精密プレス成形用プリフォーム]
次に本発明の精密プレス成形用プリフォームについて説明する。
本発明の精密プレス成形用プリフォームは、上記した本発明の光学ガラスからなることを特徴とするものである。
上記精密プレス成形用プリフォーム(以下、プリフォームという)は、精密プレス成形に供されるガラス塊を意味し、精密プレス成形品の質量に相当するガラス成形体である。
以下、プリフォームについて詳説する。
【0095】
プリフォームは、加熱して精密プレス成形に供されるガラス予備成形体を意味するが、ここで精密プレス成形とは、周知のようにモールドオプティクス成形とも呼ばれ、光学素子の光学機能面をプレス成形型の成形面を転写することにより形成する方法である。なお、光学機能面とは光学素子において、制御対象の光を屈折したり、反射したり、回折したり、入出射させる面を意味し、レンズにおけるレンズ面などがこの光学機能面に相当する。
【0096】
精密プレス成形時にガラスとプレス成形型成形面との反応、融着を防止しつつ、成形面に沿ってガラスの延びが良好になるようにするため、プリフォームの表面に離型膜を被覆することが好ましい。離型膜の種類としては、
貴金属(白金、白金合金)
酸化物(Si、Al、Zr、La、Yの酸化物など)
窒化物(B、Si、Alの酸化物など)
炭素含有膜
があげられる。炭素含有膜としては、炭素を主成分とするもの(膜中の元素含有量を原子%で表したとき、炭素の含有量が他の元素の含有量よりも多いもの)が望ましい。具体的には、炭素膜や炭化水素膜などを例示することができる。炭素含有膜の成膜法としては、炭素原料を使用した真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法や、炭化水素などの材料ガスを使用した熱分解などの公知の方法を用いればよい。その他の膜については、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、ゾルゲル法等を用いて成膜することが可能である。
【0097】
プリフォームは、ガラス原料を加熱、熔融して熔融ガラスを作製し、前記熔融ガラスを成形する工程を経て作製される。
【0098】
プリフォームの第1の作製例は、熔融ガラスから所定重量の熔融ガラス塊を分離、冷却して、当該熔融ガラス塊と等しい質量を有するプリフォームを成形する方法である。例えば、ガラス原料を熔融、清澄、均質化して均質な熔融ガラスを用意し、温度調整された白金または白金合金製の流出ノズルあるいは流出パイプから流出する。小型のプリフォームや球状のプリフォームを成形する場合は、熔融ガラスを流出ノズルから所望質量の熔融ガラス滴として滴下し、それをプリフォーム成形型によって受けてプリフォームに成形する。あるいは、同じく所望質量の熔融ガラス滴を流出ノズルより液体窒素などに滴下してプリフォームを成形する。中大型のプリフォームを作製する場合は、流出パイプより熔融ガラス流を流下させ、熔融ガラス流の先端部をプリフォーム成形型で受け、熔融ガラス流のノズルとプリフォーム成形型の間にくびれ部を形成した後、プリフォーム成形型を真下に急降下して、熔融ガラスの表面張力によってくびれ部にて熔融ガラス流を分離し、受け部材に所望質量の熔融ガラス塊を受けてプリフォームに成形する。あるいは、ガラス塊を、軟化状態にある間にプリフォーム成形型上でプレスし、精密プレス成形によって得ようとする光学素子の形状に近似する形状を有し、表面が滑らかなプリフォームに成形することもできる。
【0099】
キズ、汚れ、シワ、表面の変質などがない滑らかな表面、例えば自由表面を有するプリフォームを製造するためには、プリフォーム成形型などの上で熔融ガラス塊に風圧を加えて浮上させながらプリフォームに成形したり、液体窒素などの常温、常圧下では気体の物質を冷却して液体にした媒体中に熔融ガラス滴を入れてプリフォームに成形する方法などが用いられる。
【0100】
熔融ガラス塊を浮上させながらプリフォームに成形する場合、熔融ガラス塊にはガス(浮上ガスという)が吹きつけられ上向きの風圧が加えられることになる。この際、熔融ガラス塊の粘度が低すぎると浮上ガスがガラス中に入り込み、プリフォーム中に泡となって残ってしまう。しかし、熔融ガラス塊の粘度を3〜60dPa・sにすることにより、浮上ガスがガラス中に入り込むことなく、ガラス塊を浮上させることができる。
【0101】
プリフォームに浮上ガスが吹き付けられる際に用いられるガスとしては、空気、Nガス、Oガス、Arガス、Heガス、水蒸気等が挙げられる。また、風圧は、プリフォームが成形型表面等の固体と接することなく浮上できれば特に制限はない。
【0102】
プリフォームより製造される精密プレス成形品(例えば、光学素子)は、レンズのように回転対称軸を有するものが多いため、プリフォームの形状も回転対称軸を有する形状が望ましい。
【0103】
プリフォームの第2の作製例は均質な熔融ガラスを鋳型に鋳込んで成形した後、成形体の歪をアニールによって除去し、切断または割断して、所定の寸法、形状に分割し、複数個のガラス片を作製し、ガラス片を研磨して表面を滑らかにするとともに、所定の質量のガラスからなるプリフォームとする。このようにして作製したプリフォームの表面にも炭素含有膜を被覆して使用することが好ましい。
【0104】
[光学素子]
次に本発明の光学素子について説明する。本発明の光学素子は、上記した本発明の光学ガラスからなることを特徴とする。具体的には、非球面レンズ、球面レンズ、あるいは平凹レンズ、平凸レンズ、両凹レンズ、両凸レンズ、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズなどのレンズ、マイクロレンズ、レンズアレイ、回折格子付きレンズ、プリズム、レンズ機能付きプリズムなどを例示することができる。表面には必要に応じて反射防止膜や波長選択性のある部分反射膜などを設けてもよい。
【0105】
本発明の光学素子は、高屈折率低分散性を有するガラスにあって△Pg,Fが小さいガラスからなるので、他のガラスからなる光学素子と組合せることにより、高次の色収差補正を行うことができる。また、本発明の光学素子は屈折率が高いガラスからなるので、撮像光学系、投射光学系などに使用することで光学系をコンパクト化することができる。
【0106】
[光学素子の製造方法]
次に本発明の光学素子の製造方法について説明する。
本発明の光学素子の製造方法は、上記した本発明の精密プレス成形用プリフォームを加熱し、プレス成形型を用いて精密プレス成形する工程を備えることを特徴とする。
【0107】
プレス成形型ならびにプリフォームの加熱およびプレス工程は、プレス成形型の成形面あるいは前記成形面に設けられた離型膜の酸化を防止するため、窒素ガス、あるいは窒素ガスと水素ガスの混合ガスなどのような非酸化性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。非酸化性ガス雰囲気中ではプリフォーム表面を被覆する炭素含有膜も酸化されずに、精密プレス成形された成形品の表面に前記膜が残存することになる。この膜は、最終的には除去するべきものであるが、炭素含有膜を比較的容易にしかも完全に除去するには、精密プレス成形品を酸化性雰囲気、例えば大気中において加熱すればよい。炭素含有膜の酸化、除去は、精密プレス成形品が加熱により変形しないような温度で行うべきである。具体的には、ガラスの転移温度未満の温度範囲において行うことが好ましい。
【0108】
精密プレス成形では、予め成形面を所望の形状に高精度に加工されたプレス成形型を用いるが、成形面には、プレス成形時、ガラスに対する滑り性を改善するための膜を形成してもよい。このような膜としては、炭素含有膜や窒化物膜、貴金属膜が挙げられ、炭素含有膜としては水素化カーボン膜、炭素膜などが好ましい。精密プレス成形では、成形面が精密に形状加工された対向した一対の上型と下型との間にプリフォームを供給した後、ガラスの粘度が10〜10dPa・s相当の温度まで成形型とプリフォームの両者を加熱してプリフォームを軟化し、これを加圧成形することによって、成形型の成形面をガラスに精密に転写する。
【0109】
また、成形面が精密に形状加工された対向した一対の上型と下型との間に、予めガラスの粘度で10〜10dPa・sに相当する温度に昇温したプリフォームを供給し、これを加圧成形することによって、成形型の成形面をガラスに精密に転写することができる。
【0110】
加圧時の圧力及び時間は、ガラスの粘度などを考慮して適宜決定することができ、例えば、プレス圧力は約5〜15MPa、プレス時間は10〜300秒とすることができる。プレス時間、プレス圧力などのプレス条件は成形品の形状、寸法に合わせて周知の範囲で適宜設定すればよい。
【0111】
この後、成形型と精密プレス成形品を冷却し、好ましくは歪点以下の温度となったところで、離型し、精密プレス成形品を取出す。なお、光学特性を精密に所望の値に合わせるため、冷却時における成形品のアニール処理条件、例えばアニール速度等を適宜調整してもよい。
【0112】
上記の光学素子の製造方法は以下の2つの方法に大別できる。第1の方法は、プレス成形型にプリフォームを導入し、該成形型とガラス素材を一緒に加熱するの光学素子の製造方法であり、面精度、偏心精度など成形精度の向上を重視した場合、推奨される方法である。第2の方法は、プリフォームを加熱し、予熱したプレス成形型に導入して精密プレス成形する光学素子の製造方法であり、生産性向上を重視した場合に推奨される方法である。
【0113】
なお、本発明の光学素子は、プレス成形工程を経なくても作製することはできる。例えば、均質な熔融ガラスを鋳型に鋳込んでガラスブロックを成形し、アニールして歪を除去するとともに、ガラスの屈折率が所望の値になるようにアニール条件を調整して光学特性の調整を行ったのち、次にガラスブロックを切断または割断してガラス片を作り、さらに研削、研磨して光学素子に仕上げることにより得ることができる。
【実施例】
【0114】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0115】
(実施例1)
表4−1〜4−9に示すガラス組成になるように、各成分を導入するための原料としてそれぞれ相当する酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物などを用い、原料を秤量し、十分に混合して調合原料とし、これを白金坩堝に入れ、加熱、熔融した。熔融後、熔融ガラスを鋳型に流し込み、ガラス転移温度付近まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、ガラスの転移温度範囲で約1時間アニール処理した後、炉内で室温まで放冷することにより、表4−1〜4−9に示す光学ガラスNo.1〜51を得た。
【0116】
得られた光学ガラス中には、顕微鏡で観察できる結晶は析出しなかった。
このようにして得られた光学ガラスの諸特性を表5−1〜5−8に示す。
表6−1〜6−8は、光学ガラスNo.1〜51の各ガラスについて、酸化物換算したときの組成を質量%表示したものである。
【0117】
【表4−1】

【0118】
【表4−2】

【0119】
【表4−3】

【0120】
【表4−4】

【0121】
【表4−5】

【0122】
【表4−6】

【0123】
【表4−7】

【0124】
【表4−8】

【0125】
【表4−9】

【0126】
【表5−1】

【0127】
【表5−2】

【0128】
【表5−3】

【0129】
【表5−4】

【0130】
【表5−5】

【0131】
【表5−6】

【0132】
【表5−7】

【0133】
【表5−8】

【0134】
【表6−1】

【0135】
【表6−2】

【0136】
【表6−3】

【0137】
【表6−4】

【0138】
【表6−5】

【0139】
【表6−6】

【0140】
【表6−7】

【0141】
【表6−8】


なお、光学ガラスの諸特性は、以下に示す方法により測定した。
(1)屈折率nd、ng、nF、ncおよびアッベ数νd
降温速度−30℃/時間で降温して得られたガラスについて、日本光学硝子工業会規格の屈折率測定法により、屈折率nd、ng、nF、nc、アッベ数νdを測定した。
(2)液相温度LT
ガラスを所定温度に加熱された炉内に入れて2時間保持し、冷却後、ガラス内部を100倍の光学顕微鏡で観察し、結晶の有無から液相温度を決定した。
(3)ガラス転移温度Tg、屈伏点Ts
株式会社リガク製の熱機械分析装置を用い、昇温速度を4℃/分にして測定した。
(4)部分分散比Pg,F
屈折率ng、nF、ncから算出した。
(5)部分分散比のノーマルラインからの差ΔPg,F
部分分散比Pg,Fおよびアッベ数νdから算出されるノーマルライン上の部分分散比Pg,F(0)から算出した。
(6)比重
アルキメデス法を用いて測定した。
(7)λ70、λ5
分光光度計を用いて、分光透過率を測定して求めた。
(8)精密プレス成形性
ガラスからプリフォームを多数個作製し、SiC製のプレス成形型を繰り返し用いて、非酸化性雰囲気中で、精密プレス成形を連続して行い、プレス成形型とガラスの融着に起因する思われるガラスの破損が起こるまでのプレス可能回数の平均を求めた。
【0142】
上記方法のかわりに、炭素含有率が50原子%以上の材料で構成される試験盤上にガラスを置き、試験盤ごとガラスの粘度が10〜10dPa・sになる温度まで加熱、保持した後、室温まで冷却し、試験盤とガラスの融着の有無を調べることにより、精密プレス成形性を簡易的に知ることができる。
【0143】
例えば、表4−2に記載のNo.8の光学ガラスからなるプリフォームを多数個作製し、SiC製のプレス成形型を繰り返し用いて、非酸化性雰囲気中で、精密プレス成形を連続して行った場合のプレス可能回数の平均は200回と、極めて安定した精密プレス成形が可能であることがわかった。同じガラスからなる試料を試験盤上に置き、10〜10dPa・sになる温度まで加熱、保持した後、室温まで冷却したところ、試験盤とガラスの融着は認められなかった。上記No.8の光学ガラスにおけるカチオン比((Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))は0.86である。
【0144】
一方、カチオン比((Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0.58のガラス(ガラスAという。)を用いて、精密プレス成形を繰り返し行ったところ、プレス可能回数の平均は60回であった。さらに、試験盤を用いて上記方法と同様の方法で試験盤とガラスの融着の有無を調べたところ、融着が認められた。
【0145】
このように、試験盤との融着がおこるガラスは、精密プレス成形におけるプレス可能回数が100回を大幅に下回るが、試験盤との融着がおこらないガラスは、プレス可能回数が飛躍的に改善し、優れた精密プレス成形性を備えることがわかる。
【0146】
次に、カチオン比((Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が精密プレス成形性の良否に与える影響を調べるため、カチオン比((Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0のガラス(ガラスIという。)、0.60のガラス(ガラスIIという。)、0.81のガラス(ガラスIIIという。)を試験盤の上に置き、加熱、保持した後、室温まで冷却し、融着の有無を調べたところ、ガラスI、ガラスIIでは融着が認められたが、ガラスIIIでは融着が認められなかった。
【0147】
このように、カチオン比((Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0〜0.60のガラスでは試験盤との融着がおこり、プレス可能回数も低いが、前記カチオン比が0.70以上になると試験盤との融着が認められなくなり、プレス可能回数も飛躍的に改善する。
なお、表4−1〜4−9に示す各光学ガラスとも、試験盤を用いた試験で融着の認められない、精密プレス成形性の優れたガラスである。
【0148】
(実施例2)
実施例1で作製した各光学ガラスが得られるように調合したガラス原料を熔融、清澄、均質化して熔融ガラスを作り、白金製のノズルから熔融ガラス滴を滴下してプリフォーム成形型で受け、風圧を加えて浮上させながら上記各種ガラスからなる球状のプリフォームに成形した。
【0149】
また、上記熔融ガラスを白金製パイプから連続的に流出し、その下端部をプリフォーム成形型で受け、熔融ガラス流にくびれ部を作った後、プリフォーム成形型を真下に急降下して熔融ガラス流をくびれ部で切断し、プリフォーム成形型上に分離した熔融ガラス塊を受け、風圧を加えて浮上させながら上記各種ガラスからなるプリフォームに成形した。得られたプリフォームは光学的に均質な高品質のものであった。
【0150】
なお、プリフォーム成形型上のガラス塊をプレスして、精密プレス成形によって作製しようとしている光学素子の形状に近似する形状のプリフォームを成形することもできる。こうした方法により得られるプリフォームの表面は滑らかな面となっている。
(実施例3)
実施例2で用意した熔融ガラスを連続的に流出して鋳型に鋳込み、ガラスブロックに成形した後、アニールし、切断して複数個のガラス片を得た。これらガラス片を研削、研磨して上記各種ガラスからなるプリフォームを作製した。得られたプリフォームは光学的に均質な高品質のものであった。
【0151】
(実施例4)
実施例2、3で作製したプリフォームの表面に必要に応じてコーティングを施し、成形面に炭素系離型膜を設けたSiC製の上下型および胴型を含むプレス成形型内に導入し、窒素雰囲気中で成形型とプリフォームを一緒に加熱してプリフォームを軟化し、精密プレス成形して上記各種ガラスからなる非球面凸メニスカスレンズ、非球面凹メニスカスレンズ、非球面両凸レンズ、非球面両凹レンズの各種レンズを作製した。なお、精密プレス成形の各条件は前述の範囲で調整した。
【0152】
このようにして作製した各種レンズを観察したところ、レンズ表面に傷、クモリ、破損は全く認められなかった。
【0153】
こうしたプロセスを繰り返し行い、各種レンズの量産テストを行ったが、ガラスとプレス成形型の融着などの不具合は発生せず、表面および内部ともに高品質のレンズを高精度に生産することができた。このようにして得たレンズの表面には反射防止膜をコートしてもよい。
【0154】
次いで、上記プリフォームと同様のものを加熱、軟化し、別途、予熱したプレス成形型に導入し、精密プレス成形して上記各種ガラスからなる非球面凸メニスカスレンズ、非球面凹メニスカスレンズ、非球面両凸レンズ、非球面両凹レンズの各種レンズを作製した。なお、精密プレス成形の各条件は前述の範囲で調整した。
【0155】
このようにして作製した各種レンズを観察したところ、分相による白濁等は認められず、レンズ表面に傷、クモリ、破損は全く認められなかった。
【0156】
こうしたプロセスを繰り返し行い、各種レンズの量産テストを行ったが、ガラスとプレス成形型の融着などの不具合は発生せず、表面および内部ともに高品質のレンズを高精度に生産することができた。このようにして得たレンズの表面には反射防止膜をコートしてもよい。
【0157】
プレス成形型の成形面の形状を適宜、変更し、プリズム、マイクロレンズ、レンズアレイなどの各種光学素子を作製することもできる。
【0158】
(実施例5)
実施例4で作製した各レンズを用いて、各レンズを内蔵する一眼レフカメラ用の交換レンズ各種を作製した。
【0159】
さらに実施例4で作製した各レンズを用いて、コンパクトデジタルカメラの光学系各種を作製し、モジュール化した。さらにこれら光学系にCCDあるいはCMOSなどのイメージセンサーを取り付けモジュール化した。
【0160】
このように実施例4において作製した各種レンズを用いることにより、高機能、コンパクトな光学系、交換レンズ、レンズモジュール、撮像装置を得ることができる。実施例4で作製したレンズと高屈折率高分散光学ガラス製のレンズとを組み合わせることにより、高次の色収差補正がなされる各種光学系とこの光学系を備える撮像装置を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明の光学ガラスは、高屈折率低分散特性、優れた精密プレス成形性を有し、ガラス転移温度が低く、精密プレス成形に好適な光学ガラスである。また、高次の色収差補正に好適な光学ガラスであて、精密プレス成形用プリフォーム、光学素子を作製するのに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン%表示で、
3+ 20〜50%、
Si4+ 0〜10%
La3+ 5〜35%、
Gd3+ 0〜10%、
3+ 0〜10%、
Yb3+ 0〜10%、
Ti4+ 0〜4%、
Nb5+ 1〜30%、
Ta5+ 0.5〜15%、
6+ 0〜5%、
Zr4+ 0〜10%、
Zn2+ 11〜40%、
Mg2+ 0〜10%、
Ca2+ 0〜10%、
Sr2+ 0〜10%、
Ba2+ 0〜10%、
Li 0〜10%、
Na 0〜10%、
0〜10%、
Te4+ 0〜10%、
Ge4+ 0〜10%、
Bi3+ 0〜10%、
Al3+ 0〜10%、
を含み、
3+およびSi4+の合計含有量(B3++Si4+)が20〜50%、
La3+、Gd3+およびY3+の合計含有量(La3++Gd3++Y3+)が5〜35%、
カチオン比((B3++Si4+)/(La3++Gd3++Y3+))が1〜5、
Ti4+、Nb5+、Ta5+、およびW6+の合計含有量(Ti4++Nb5++Ta5++W6+)が10〜35%、
カチオン比((Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0.7〜1、
カチオン比((B3++Si4+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0.5〜4、
カチオン比((La3++Gd3++Y3+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+))が0.2〜3、
Zn2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量に対するZn2+の含有量のカチオン比(Zn2+/(Zn2++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+))が0.8〜1であり、
屈折率ndが1.89以上、アッベ数νdが27〜37である光学ガラス。
【請求項2】
Nb5+およびTa5+の合計含有量(Nb5++Ta5+)が5〜35カチオン%、Ti4+およびW6+の合計含有量(Ti4++W6+)が0〜6カチオン%である請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
ガラス転移温度が630℃以下である請求項1または2に記載の光学ガラス。
【請求項4】
液相温度が1200℃以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項5】
部分分散比Pg,Fの偏差△Pg,Fが0.006以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォーム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【請求項8】
請求項6に記載の精密プレス成形用プリフォームを加熱し、プレス成形型を用いて精密プレス成形する光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−93781(P2011−93781A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202712(P2010−202712)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】