説明

光学ガラス

【課題】本発明は、屈折率が1.98以上で、アッベ数が20以下の光学恒数を有し、しかも光透過特性に優れたリン酸塩系光学ガラスの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、酸化物基準の質量%で、P:10−18%、Bi:37−64%、Nb:5−25%、NaO:4.1超−10%、KO:0−2%、LiO:0−0.2%、WO:0−20%未満、TiO:0−3%およびB:0−2%を含み、n:1.98以上、ν:20以下である光学ガラスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率で、精密プレス成形が可能で、板材成形性やプリフォーム用ゴブ成形性に優れるリン酸塩系光学ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
高屈折率、高分散領域の光学ガラスで、鉛非含有のものとしては、特許文献1、特許文献2などにリン酸塩をベースにした系が提案されてきたが、屈折率(n)が1.98を超える具体的な組成はほとんど提案されていない。
【0003】
屈折率(n)は高いほどレンズのパワーを大きくできるため好ましいが、1.98を超える高屈折率光学ガラスとして、リン酸塩をベースにし、環境負荷物質である鉛やテルルの非含有の系が特許文献3および特許文献4にわずかに提案されている。
【0004】
特許文献3には、高屈折率で、低アッベ数、非鉛含有のリン酸塩系光学ガラスが提案されているが、nが1.98以上の条件を満たす組成においては、液相温度(L)は920℃以上と高い温度であり、耐失透性が不充分となるおそれがある。
【0005】
また、特許文献3および特許文献4で提案されている光学ガラスは、原子価の変化により可視域の吸収に影響を及ぼすTi、W、Bi等を多く含んだガラスであり、液相温度(L)が高すぎると、低温でのガラス保持が充分にできないため、ガラスを流出して板成形やゴブ成型前の融液の酸化還元状態をガラスの透過率の向上に有利な酸化状態(Ti,W,Biでは大きな原子価では着色の程度が小さいために透過率が高い)に制御できず、透過率が悪い還元状態のままとなりやすく、光学ガラスとして重要な高い透過特性を満足できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−321245号公報
【特許文献2】特開2005−8518号公報
【特許文献3】特開2007−15904号公報
【特許文献4】特開2006−111499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、屈折率(n)が1.98以上で、アッベ数(ν)が20以下である光学恒数を有し、ガラス転移点が低いため精密プレス成形しやすく、プリフォーム用ゴブ成形性に好適な液相粘性を有し、しかも透過特性に優れた光学ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、酸化物基準の質量%で、
:10−18%、
Bi:37−64%、
Nb:5−25%、
NaO:4.1超−10%、
O:0−2%、
LiO:0−0.2%、
WO:0−20%未満、
TiO:0−3%、および
:0−2%
を含み、n:1.98以上、ν:20以下である光学ガラスを提供する。なお、特に断りがない場合には、上記化学組成の数値範囲の下限値は以上を、上限値は以下をそれぞれ示すものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のリン酸塩系の光学ガラス(以下、本ガラスという)は、P、Bi、Nb、NaOを必須成分とするため、屈折率n:1.98以上、アッベ数ν:20以下の光学特性が得られる。
【0010】
本ガラスによれば、NaOを適正量含み、BaOを含まず、TiOを含まないか、仮に、TiOを含んでもその含有量を少なくし、一方、WOとBiを多く含有する場合にはガラスの安定化に繋げて液相温度を下げることにより、ガラス融液の酸化還元状態制御により透過率を高めることができ、光学材料として必要な透過率の高いレンズを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、屈折率が1.98以上、アッベ数が20以下で、高透過率の光学ガラスを得るために種々検討した結果に基づくものである。
【0012】
検討の結果、P、Bi、Nb、WOおよびNaO、をバランスよく含有させ、KO、LiOおよびTiO2を含まないか、または含んだとしてもその含有量を抑えることで、本目的を達成できることを見出したものである。本ガラスの各成分範囲を設定した理由は、以下のとおりである。なお、本明細書では、以下、特に断りのない限り%は質量%を意味するものとする。また、化学組成は、酸化物基準とする。
【0013】
本ガラスにおいて、Pは必須の成分であり、ガラスを形成する主成分(ガラス形成酸化物)であるとともに、ガラスの粘性を高める成分である。本ガラスにおいて、P含有量が少なすぎると、ガラスが不安定になるとともに粘性が低くなるおそれがあるため、本ガラスではP含有量は10%以上である。P含有量が13%以上であると好ましく、P含有量が13.5%以上であるとより好ましい。一方、P含有量が多すぎると屈折率が下がってしまうため、本ガラスではP含有量は、18%以下である。P含有量が17.2%以下であると好ましく、P含有量が15.8%以下であるとより好ましい。
【0014】
本ガラスにおいて、Biは必須の成分であり、ガラスを高屈折率化させるとともにガラスを軟化させる効果がある。含有量が少なすぎると前記効果が不充分となるおそれがあることから、本ガラスのBi含有量は37%以上である。Bi含有量が40%以上であると好ましく、Bi含有量が44%以上であるとより好ましい。一方、Bi含有量が多すぎると粘性とともに短波長側の透過率が低下することから、本ガラスのBi含有量は64%以下である。Bi含有量が57%以下であると好ましく、Bi含有量が45%以下であるとより好ましい。
【0015】
本ガラスにおいて、Nbは必須の成分であり、ガラスを高屈折率化させる効果がある。含有量が少なすぎると前記効果が不充分となるおそれがあることから、本ガラスのNb含有量は5%以上である。Nb含有量が11%以上であると好ましく、Nb含有量が19%以上であるとより好ましい。一方、Nb含有量が多くなるとガラスが不安定になることから、本ガラスのNb含有量は25%以下である。Nb含有量が24%以下であると好ましく、Nb含有量が23%以下であるとさらに好ましい。
【0016】
本ガラスにおいて、NaOは必須の成分であり、ガラスを軟化させる成分であると同時に、また、ガラスを安定化させる成分の一つでもある。本ガラスにおいて、NaO含有量が少なすぎると、ガラスが不安定になるおそれがあるため、本ガラスではNaO含有量は4.1%超(4.1%を含めない)である。NaO含有量が4.2%以上であると好ましく、NaO含有量が4.3%以上であるとさらに好ましい。
【0017】
一方、NaO含有量が多くなると屈折率が下がってしまうため、本ガラスではNaO含有量は、10%以下である。NaO含有量が8%以下であると好ましく、NaO含有量が6%以下であるとさらに好ましい。
【0018】
本ガラスにおいて、KOはガラスを軟化させる成分であり、任意成分である。KO含有量が多くなると屈折率が下がるとともにガラスが不安定になってしまうため、本ガラスではKOを含む場合の含有量は、2%以下である。
【0019】
本ガラスにおいて、LiOは任意成分である。LiO含有量が0.2%を超えると粘性を下げすぎ、板材成形や、ゴブ成形をする際に脈理が入り易く良品率をさげてしまうおそれがある。そのため、LiOを含有する場合の含有量は、0.2%以下である。
【0020】
本ガラスにおいて、WOはガラスを高屈折率化させる効果があり、任意成分である。含有量が少なすぎると前記効果が低くなるため、WOを含有する場合の含有量は、10%以上であると好ましい。WO含有量が12.0%以上であるとさらに好ましい。
【0021】
一方、WO含有量が多くなると可視域の光透過特性が低下するとともにガラスが不安定になることから、本ガラスのWO含有量としては、20%未満である。WO含有量が19.5%以下であると好ましく、WO含有量が15.0%以下であるとさらに好ましい。
【0022】
本ガラスにおいて、TiOはガラスを形成すると同時にガラスを高屈折率化させる効果があり、屈折率(n)とアッベ数(ν)を調整するための任意成分である。例えば、PからTiへ1カチオン%置換した場合、nで約0.012上昇し、νで約0.4低下する。高屈折率成分であるBiからTiへ1カチオン%置換した場合、nで約0.0003低下し、νで約0.1低下する。このように分散の調整を目標に応じて調節できる。
【0023】
一方、TiO含有量が多くなると可視域の光透過特性が低下するとともにガラス転移点が高くなる。また、ガラスが不安定となり、液相温度が高くなることから、本ガラスにおいてTiOを含有する場合の含有量は3%以下である。TiO含有量を実質的に0%にすると好ましい。
【0024】
本ガラスにおいて、Bは、ガラスを形成する成分であると同時に、屈折率(n)とアッベ数(ν)を調整するために用いる任意成分である。例えば、PからBへ1カチオン%置換した場合、nで約0.0003上昇し、νで約0.1低下する。一方、B含有量が多すぎると屈折率が低下するので、本ガラスがBを含有する場合の含有量は2%以下である。B含有量が1.8%以下であると好ましい。
【0025】
本ガラスにおいて、SiOは、ガラスを形成する成分であり、任意成分である。添加する場合は、ガラス転移点と屈折率の点から、SiO含有量を1%以下とするのが好ましい。
【0026】
本ガラスにおいて、上記成分の合計が95%以上であると、諸特性のバランスが取れるため好ましい。上記成分の合計が98%以上であるとさらに好ましく、本ガラスが上記成分から実質的になると特に好ましい。なお、本明細書において、「上記成分から実質的になる」とは、「不可避的不純物を除いては、上記成分からなる」との意味である。
【0027】
本ガラスにおいて、光学特性を調整するために、Al、GeO、Ga、ZrO、Gd、La、Y、Ta、MgO、CaO、SrOのいずれか1種以上をさらに任意成分として添加できる。含有量が少ないと光学特性の調整効果がほとんど得られないことから、含有量としては、それぞれ単独で、含有量が0.1%以上であると好ましく、前記含有量が1.0%以上であるとより好ましく、前記含有量が2%以上であると特に好ましい。一方、前記各成分は、含有量が多くなるとガラスが不安定になったり、原料が比較的高価であるため、工業上はこれらの元素を極力含有量を抑えることが好ましい。したがって、それぞれ単独で5.0%以下とするのが好ましく、4.0%以下とするとより好ましく、3.0%以下とすると特に好ましい。
【0028】
また、本ガラスにおいては、成形温度の観点や環境面への影響等からPbO、TeO、FおよびAsを実質的に含有しないことが好ましい。本ガラスにおいて、BaOは、ガラスを不安定にする傾向があり、液相温度が上昇するおそれもある。液相温度が上昇すると、ゴブ成形時の溶融ガラスの温度を高くする必要があり、溶融ガラスの粘性が低くなりゴブを成形しにくくなるという問題がある。本明細書においては、成分Xを実質的に含有しないとは、不可避的な不純物として混入するものを別にして、積極的に添加しないことを意味する。その目安としては含有量が0.05%未満程度である。
【0029】
本ガラスにおいて、Sbは、必須の成分ではないがガラス溶融の際の清澄剤として添加できる。その含有量としては、1%以下が好ましく、0.5%以下であるとさらに好ましく、0.1%以下であると特に好ましい。本ガラスにおいて、Sbを添加する場合の下限としては、0.01%以上であると好ましく、0.05%以上であるとさらに好ましく、0.1%以上であるとより好ましい。
【0030】
本ガラスの光学特性としては、屈折率(n)が1.98以上である。本ガラスの屈折率(n)が、2以上であると好ましい。一方で、諸特性をバランスさせるためには、本ガラスの屈折率(n)を2.02以下とするのが好ましく、同様の理由で屈折率(n)を2.01以下とするのがさらに好ましい。
【0031】
また、本ガラスのアッベ数(ν)は20以下である。本ガラスのアッベ数(ν)が19.2以下であるとさらに好ましい。一方、本ガラスのアッベ数(ν)を18.5未満とするのは難しいため、18.7以上とするのが好ましい。
【0032】
本ガラスの光透過特性としては、できるだけλが短波長側にあるほど好ましく、λが415nm以下であると好ましく、λが410nm以下であるとさらに好ましい。同様にしてλ70が485nm以下であると好ましく、λ70が480nm以下であるとさらに好ましい。
【0033】
ここでλ、λ70とは、平行に研磨した厚さ1cmのサンプルの透過率を分光光度計で測定し、透過率が5%の波長をλ、透過率が70%の波長をλ70、とそれぞれいう。λは短波長の光がどの波長域まで透過するかを示し、λ70は可視域の短波長の光をどの程度透過するかを示す指標となる。λ、λ70共に値が大きくなると短波長の光の透過が低くなり透過光が黄色味から赤味がかって写真等の色再現性が悪くなる。
【0034】
本ガラスのガラス転移点(T)としては、520℃以下であると成形温度を低くすることができ、高屈折率成分としてガラス中に多量に含まれるビスマス(Bi)がガラス中から出て、ガラスの表面や金型に付着してレンズ表面の曇りとなることを抑制できる。また、金型表面に形成されている保護膜等の耐久性が向上するため好ましい。本ガラスのガラス転移点を505℃以下とするとさらに好ましく、ガラス転移点を490℃以下とするとより好ましい。1℃でも低い方がBiによる曇りの抑制に効果があり、生産性が高まる。
【0035】
本ガラスの屈伏点(At)としては、ガラス転移点(T)と同様の理由で545℃以下であると好ましい。屈伏点が540℃以下であるとさらに好ましい。本ガラスの屈伏点が530℃以下であると特に好ましい。
【0036】
また、本ガラスの液相温度(L)としては、905℃以下である。ガラスを流出して板成形やゴブ成型をする前の融液をLよりも少し高い温度で保持することで融液の酸化還元状態(Redox)をガラスの透過率の向上に有利な酸化状態(Ti,W,Biでは大きな原子価では着色の程度が小さいために透過率が高い)にすることができ、透過率の高い光学レンズを得ることができる。
【0037】
液相粘性(ηLT)の好ましい範囲は、2.5dPa・s以上、20dPa・s以下であると好ましい。液相粘性が2.5dPa・s未満であると、プリフォーム用ゴブ成形において、金型上で窒素ガスによる溶融ガラス液滴の浮上と冷却を行う際に溶融ガラス液滴中に窒素ガスを巻き込むおそれがある。一方、液相粘性が20dPa・s超であると、プリフォーム用ゴブを成形し溶融ガラスから切り離す時にガラスの切り離れが悪く、ガラスの糸が生成しやすくなり形状不良、質量不良となるおそれがある。また、生成したガラスの糸がゴブ中に巻き込まれると脈理などの欠陥が発生するおそれもある。液相粘性が高すぎると、ガラス液滴を高温にして低粘度化しようとするとガラス液滴中に脈理が発生しやすくなる。
【0038】
本ガラスの液相粘性としては、2.7dPa・s以上がさらに好ましい。本ガラスの液相粘性が4dPa・s以上であると特に好ましい。他の特性を優先する場合には、本ガラスの液相粘性が15dPa・s以下であるとより好ましく、本ガラスの液相粘性が10dPa・s以下であると特に好ましい。
【0039】
本ガラスの製造法としては、特に制限されるものではなく、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の通常の光学ガラスで用いられる原料を秤量・混合し、白金ルツボ、金ルツボ、石英ルツボ、アルミナルツボ等通常光学ガラスで用いられるルツボに入れて、約1000〜1100℃で1〜10時間溶融、清澄、撹拌後、Lよりもわずかに高い温度で融液を保持して融液のRedoxを調節した後に、400〜500℃に予熱した金型に鋳込等した後、徐冷して製造できる。
【0040】
ガラス融液の酸化還元状態(Redox)を調節するための手段として、白金パイプに酸化性雰囲気ガスを通して、融液中にガスを送り込みバブリングすることにより遷移金属を高原子価状態にすることにより透過率を向上させることも可能である。例えば、酸素ガスを用いることができる。この工程を導入することにより液相温度(L)よりもわずかに高い温度で融液を保持して融液の酸化還元状態(Redox)を調節する時間を短くすることが可能である。
【0041】
上記の原料の内、炭酸塩で導入する酸化物、例えばNaCOを、硝酸塩であるNaNOで一部または全部代替することでガラス融体を酸化性にでき、透過率を向上(λ70が短波長化)することも可能である。ガラスを酸化性にするには、ガラス溶解温度を下げることが好ましく、例えば、ガラス溶解温度を50℃程度下げることでその効果が顕著となり好ましい。これらの条件変更は、原料コスト、製造時の発泡の制御のし易さを考慮して選定すればよい。
【0042】
本ガラスを用いたプリフォーム用ゴブ成形の方法としては、溶融ガラスをノズル先端から流出し、所望の質量の溶融ガラス塊を分離し、金型上に窒素ガスにて浮上させながら受けて、全面火づくり面のガラス塊を製造する方法が一例として挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0043】
また、本ガラスを光学素子に成形する方法としては、特に制限されるものではないが、本ガラスのガラス液相温度(L)をもとにして、プリフォーム用ゴブ成形により作製したプリフォームを、型表面に保護膜を形成した、高精度に加工されたプレス型(型材質としては、例えば、SiC質、超硬など)内にセットし、所定の圧力、時間プレスして所望の形状とする方法、ガラス融液を流出させて一度板材とし、次に、その板材からプレス成形に好適なガラス塊を加工により作り出して加工プリフォームとし、次に、加工プリフォームをプレス型内にセット後、プレス成形する方法などが例として挙げられるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例等を説明する。例1〜例10が本発明の実施例である。
【0045】
[化学組成・試料作製法]
表1に示す化学組成(%)となるように原料を秤量した。各ガラスの原料は、Pの場合はHPO、BPO、Ba(PO、NaPO、KPOを、Bの場合はHBO、BPOまたはそれらの組み合わせを、BaOの場合はBaCO、Ba(NO、Ba(POまたはそれらの組み合わせを、LiOの場合はLiCO、LiPOまたはそれらの組み合わせを、NaOの場合はNaCO、NaNO、NaPOまたはそれらの組み合わせを、KOの場合はKCO、KPOまたはそれらの組み合わせを、SiO、Bi、Nb、WO、ZnOの場合は酸化物を、それぞれ使用した。なお、例8は、NaO原料として、NaCOとNaPOを用いた。例10では、例8と同じ酸化物組成であるが、NaO原料として、NaCOの代わりにNaNOを用いた。
【0046】
秤量した原料を混合し、内容積約300ccの白金ルツボ内に入れて、例1〜9では、約1100℃で、例10では、約1050℃で1〜1.5時間溶融、清澄、撹拌後、950℃で1時間保持し、およそ400〜500℃に予熱した縦100mm×横50mmの長方形のモールドに鋳込み後、約0.5℃/分で徐冷してサンプルとした。
【0047】
[評価方法]
屈折率(n)はヘリウムd線に対する屈折率であり、屈折率計(カルニュー光学工業社製、商品名:KRP−2000)で測定した。屈折率の値は、小数点以下第5位まで測定し、小数点以下第5位を四捨五入して小数点以下第4位として記載した。
アッベ数(ν)は、ν=(n−1)/(n−n)により算出し、小数点以下第2位を四捨五入して小数点以下第1位として記載した。ただし、n、nは、それぞれ水素F線およびC線に対する屈折率である。
ガラス転移温度(T)および、屈伏点(At)は、得られた各ガラスを棒状に加工し、熱分析装置(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名:TMA4000SA)で熱膨張法により、昇温速度5℃/分で測定した。
液相温度(L)は、白金皿にガラス試料約5gを入れ、それぞれ870℃〜940℃まで5℃刻みにて1時間保持したものを自然放冷により冷却した後、結晶析出の有無を顕微鏡により観察して、結晶の認められない最低温度を液相温度とした。
透過率は、分光光度計(パーキンエルマー社製、商品名:Lambda950)を用い、厚さ10mmに両面研磨した試料について、1nmきざみで測定した。
液相粘性(ηLT)回転円筒法により粘度を測定し、液相温度(L)での粘性とした。
ガラスの溶解性等については、上記サンプル作製時に目視で観察した結果、溶解性に問題がないこと、得られたガラスサンプルには泡や脈理のないことを確認した。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明は、これら実施例に限定して解釈されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本ガラスは、屈折率1.98以上の光学ガラスであって、透過率の高い精密プレス成形用光学ガラスとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準の質量%で、
:10−18%、
Bi:37−64%、
Nb:5−25%、
NaO:4.1超−10%、
O:0−2%、
LiO:0−0.2%、
WO:0−20%未満、
TiO:0−3%、および
:0−2%
を含み、n:1.98以上、ν:20以下である光学ガラス。
【請求項2】
BaOを実質的に含有しない請求項1記載の光学ガラス。
【請求項3】
WOの含有量が10−20質量%未満である請求項1または2記載の光学ガラス。
【請求項4】
液相温度(LT)が905℃以下である請求項1、2または3記載の光学ガラス。
【請求項5】
λが415nm以下である請求項1、2、3または4記載の光学ガラス。

【公開番号】特開2010−275182(P2010−275182A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101061(P2010−101061)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】