説明

光学システム、光学システムの利用法、ならびに光学システムで物体を観察する方法

【課題】手術用顕微鏡において、マクロ的な解像度に加えて細胞レベルでの光学解像度も提供する。
【解決手段】光学システム1は、第1の部分システム3と、第2の部分システム5とを有しており、第1の部分システム3の第2の結像段8は視覚式またはデジタル式に構成されるとともに第2の部分システム5の第2の結像段9は視覚式またはデジタル式に構成されており、視覚式の結像段は少なくとも1つの接眼レンズと種々のレンズを備える拡大システムとを有しており、デジタル式の結像段は少なくとも1つのカメラアダプタと種々のレンズを備える拡大システムとを有しており、第2の部分システム5の第2の結像段9は、第1の部分システム3の第2の結像段8よりも高い、観察されるべき物体2の光学解像度を可能にするように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を観察するための光学システムに関するものであり、特に手術用顕微鏡に関するものである。さらに本発明は、このような種類の光学システムの利用法、ならびにこのような種類の光学システムで物体を観察する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体を観察するための光学システムは多くのものが知られている。たとえば特に医学では、たとえば脳の腫瘍を検出したり耳鼻科検診をするために手術用顕微鏡が用いられる。あるいは光学システムは、それ以外の多くの分野でも物体を観察するために利用されている。たとえばこのような種類の光学システムは、材料の試料、素材、液体などを観察するために利用することができる。化学においても、このような種類の光学システムは物質を観察するのに適用されている。
【0003】
手術用顕微鏡は、物体の実像を生成する2段階の結像系として記述することができる。図1を参照のこと。手術用顕微鏡100では視覚式とデジタル式の手術用顕微鏡が区別され、ないしは、視覚式とデジタル式の結像段が区別される。視覚式の手術用顕微鏡100では、接眼レンズを通して手術用顕微鏡100をのぞいて見るのに対して、デジタル式の手術用顕微鏡100ではカメラチップによって画像撮影が行われる。手術用顕微鏡100の第1の結像段は、焦点距離Fの対物レンズ101、いわゆる主対物レンズを有している。対物レンズ101は一定の焦点距離を有していてもよく、または、いわゆるバリオスコープとして構成されていてもよく、すなわち可変の焦点距離を備えていてもよい。対物レンズは、立体手術用顕微鏡100の場合、両方の観察光路が対物レンズ101を貫通するように構成されているのが通常である。
手術用顕微鏡100の第2の結像段は、ちょうどそれ以後から両方の観察光路が分かれて進むことになる個所から始まっている。通常、第2の結像段は2つのサブユニットが組み合わされてなっている。第1のサブユニットは、さまざまなレンズを備える拡大系ないしズーム系である。視覚式の手術用顕微鏡100の場合、第2のサブユニットは鏡胴である。デジタル式の手術用顕微鏡100の場合、第2のサブユニットはカメラアダプタである。第2の結像段の焦点距離はfで表されるのが普通である。2段階の結像系によって生成された物体の画像は、視覚式の手術用顕微鏡ではDで表され、デジタル式の手術用顕微鏡ではcで表される。視覚式の手術用顕微鏡では、画像Dは接眼レンズで観察され、デジタル式の手術用顕微鏡100では、画像cはカメラに付属するディスプレイに表示されるのが普通である。
システム全体の倍率vは、両方の結像段の焦点距離の比率f/Fからなっている。視覚式の手術用顕微鏡100の場合、接眼レンズの倍率が乗算されて付け加わる。作用間隔ないし操作間隔AA、すなわち対物レンズ101と物体ないし物体区域ODの間の間隔は、第1の結像段の対物レンズ101によって規定される。公知の手術用顕微鏡100では、通常の操作間隔は200mmから500mmの間である。
【0004】
画像Dないしcの地点での光学解像度にとって決定的に重要なのは、結像光学系の開口数NAである。開口数NAは、対物レンズ101の物体側の開き角の半分の正弦である。開口数の値が高くなるほど、対物レンズ101の分解能も高くなる。
すなわち、プレパラートで隣接する2つのディテールを分解する対物レンズ101の能力は、その開口数NAに依存して決まる。次の式は、対物レンズ101の理論的に可能な光学分解能を開口数から計算するために適用されるものである:d=λ/2・NA。λは光の波長であり、dは光学解像度であり、すなわち、まだぎりぎり解像される物体の2つの点の間隔である。決定的な基本量は、ひとみの直径pと主対物レンズの焦点距離Fであり、これらから物体側の開口数NAが算出される。角度αは、ステレオベースBと焦点距離Fから算出されるステレオ角を表している。
【0005】
地点Dないしcで生成される実像は適当な検出器で受け取られなくてはならない。視覚式の手術用顕微鏡100の場合、検出器は、地点Dの画像を接眼レンズを通じて観察する観察者の目である。デジタル式の手術用顕微鏡100の場合、検出器は、画像の地点cに直接位置決めされるカメラチップである。
【0006】
従来技術により、2つの部分システムを備える光学システムが知られている。第1の部分システムは、多くの場合、操作者が物体を観察する2つの観察光路を備えた立体視による視覚式の部分システムであり、それに対して第2の部分システムは、多くの場合、平面視のデジタル式部分システムであり、このシステムの観察光路はカメラへと通じている。すなわち、従来式の手術用顕微鏡では第1および第2の部分システムが知られており、観察される物体の実像は一方では視覚式に、もう一方ではデジタル式に表示される。これら両方の実像の光学的な物体解像度は、このような公知の手術用顕微鏡では同じ大きさである。
【0007】
このように、手術用顕微鏡は観察者に物体ないし手術区域の拡大された画像を供給し、最善の照明のもとで、小さな組織構造を手術することを手術者に可能にする。手術用顕微鏡の倍率範囲は3.5倍から20倍の範囲内にある。
【0008】
手技による本来の手術の実施のためにではなく、光学式の生検という意味での診断目的のために、明らかに改善された細胞レベルの倍率が望ましいはずの状況が手術中には数多く生じる。同様のことは、ごく小さな構造を観察する場合にも当てはまる。たとえば木目などを有している物体で材料構造を観察するには、観察される物体のきわめて優れた倍率を得ることが望ましい。
【0009】
従来技術により、組織構造へ介入したときに組織資料を採取し、手術中にこれを病理学者にインビトロ検査させることが知られている。こうした並行する検査の結果は、手術の以後の進行にとって重大な意義がある。たとえば腫瘍が存在していれば、これをできる限り完全に取り除かなくてはならない。従来技術から知られている物体の観察と並行して行われる組織構造の検査の欠点は、検査されるべき物体から組織構造をまず採取しなくてはならず、それから別の人物によって、特に病理学者によって、手術と並行して検査をしなくてはならないことである。このことは時間的なデメリットに加えて、コストが高くなるという欠点もある。病理学検査を追加的に実施しなくてはならないからである。しかも、検査されるべき物体が組織試料の採取によって損傷をうける。このことは特に、組織構造が健全であることが以後の検査で判明したような場合に欠点となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、物体に損傷を与えることなく、細胞レベルの大きさを有する組織構造の検査を物体に関して実施することを、簡単、迅速、かつ低コストなやり方で可能にする光学システムおよび方法を提供することである。このとき光学システムは、特に手術用顕微鏡は、さまざまな解像度で物体を同時に観察することを可能にするのが望ましく、この光学システムは、従来式の手術用顕微鏡のマクロ的に可能な光学解像度に加えて、細胞レベルでの光学解像度も観察者に提供するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の根底にある知見は、ただ1つの光学システムが、特に手術用顕微鏡が、複数の機能を実行できることによって上述の課題を解決できるということである。
【0012】
すなわち上述の課題は、本発明によると、請求項1に記載の光学システムによって解決され、また、請求項18に記載の方法によって解決される。さらに上述の課題は、請求項17に記載された本発明に基づく光学システムの利用法によって解決される。本発明のそれ以外の実施形態は従属請求項に記載されている。このとき、本発明の光学システムとの関連で説明されている構成要件や詳細事項は、当然ながら、適用が可能である限りにおいて、本発明の方法との関連でも有効であり、その逆も成り立つ。
【0013】
物体を観察するための光学システムは、少なくとも1つの観察光路を備える第1の部分システムと、少なくとも1つの別の観察光路を備える第2の部分システムとを有しており、これら少なくとも2つの部分システムは共通または別個の第1の結像段と別々の第2の結像段とを有しており、第1の結像段は対物レンズを有しており、第1の部分システムの第2の結像段は視覚式またはデジタル式に構成されるとともに第2の部分システムの第2の結像段は視覚式またはデジタル式に構成されており、視覚式の結像段は少なくとも1つの接眼レンズと種々のレンズを備える拡大システムとを有しており、デジタル式の結像段は少なくとも1つのカメラアダプタと種々のレンズを備える拡大システムとを有しており、第2の部分システムの第2の結像段は、第1の部分システムの第2の結像段よりも高い、観察されるべき物体の光学解像度を可能にするとともに、物体に損傷を与えることなく、細胞レベルの大きさを有する組織構造の検査を物体に関して実施することを簡単、迅速、かつ低コストなやり方で可能にする光学システムをなすように構成されている。このとき本発明の光学システムによって、特に手術用顕微鏡によって、物体を異なる光学解像度で同時に観察することが可能となる。観察者は、たとえば第1の部分システムによって物体をマクロ的に観察することができ、すなわち、従来式の手術用顕微鏡の通常の範囲内にある光学解像度で観察することができ、また、第2の部分システムによって同じ物体の部分領域のさらに拡大された像を観察することができる。
【0014】
物体の観察者ないし手術者は第1の部分システムによって、通常3.5〜20倍の範囲内にある、物体を手術するのに十分な倍率を得られる。観察者ないし手術者は第2の部分システムによって、物体の組織構造をいっそう拡大して観察することができる。このことは、物体に対する本来の手技による手術の実施にとっては必要ないが、診断目的のための組織構造のいっそう細かい解像度を観察者ないし手術者に可能にする。本発明の光学システムにより、物体の観察者ないし手術者は、同一の光学システムを用いながら、組織構造の詳細な診断を行えると同時に物体での手術も行うことができる。組織試料の採取とこれに続く病理学検査は不要であり、それにより、一方では検査されるべき物体が損傷を受けることがなく、また他方では、診断を下すために大幅な時間的節約が可能である。このような種類の光学システムで観察することができる物体としては、人間の組織構造のほか、素材の組織構造も考慮の対象となる。たとえば物体は、衣服の材料、金属試料、プラスチック試料、または木材試料であってもよい。さらに、このような種類の光学システムを用いて液体も簡単かつ良好に観察することができる。特に流動や粒子分布などを液体中で良好に観察することができる。
【0015】
この光学システムは、少なくとも1つの観察光路を備える第1の部分システムと、少なくとも1つの別の観察光路を備える少なくとも1つの第2の部分システムとを有している。これら両方の部分システムは、それぞれ独自の対物レンズを備える、それぞれ独自の第1の結像段を有することができる。しかし光学システムのこの解決法は、一方の対物レンズから他方の対物レンズへの切換が必要なので高いコストがかかる。異なる対物レンズは、回転機構によって観察光路へ挿入することができる。複数の対物レンズは費用の増大も意味している。
【0016】
この理由により、両方の部分システムが1つの共通の第1の結像段を有していると特別に好ましく、それによって光学システムが、特に手術用顕微鏡が、簡単かつコンパクトに構成される。共通の第1の結像段は、別個の第1の結像段を備えている光学システムに比べてコストを削減する。第1の結像段は、無限の像距離と、0.09から0.14の値範囲の開口数とを備える対物レンズを有しているのが格別に好ましい。ここでの無限の像距離は、物体から反射される光線が、物体と反対を向いているほうの対物レンズの側以後、平行に進むことを意味している。したがって、ミクロ的な中間像を発生させるためには鏡胴レンズが追加的に必要である。このとき対物レンズと鏡胴レンズは、1つの機能的なユニットを形成する。光線が平行に進んでいることから、対物レンズと鏡胴レンズとの間の距離を変えることができる。それにより、この領域に第2の部分システムを設けるという可能性が生まれる。無限の焦点距離をもつ対物レンズを備えた光学システムはコンパクトで安定しており、拡充の可能性という面でフレキシブルである。
【0017】
対物レンズは、0.09から0.14の値範囲の開口数NAを有しているのが好ましい。このことは、物体ないし物体の組織構造の高い解像度を可能にするために必要である。第1の結像段の開口数は、物体の最大限可能な解像度を規定する。0.09から0.14までの範囲内の値をもつ開口数NAを有している対物レンズは、およそ2〜3μmの最大の光学解像度dを可能にし、このとき光の波長λの値としてはおよそ500〜550nmを想定している。組織学上の試料ないし腫瘍の意義の判定をするときの決定的な基準は、細胞分散、細胞核分散、および核・細胞質の関係である。人間の細胞の直径は10〜20μmの範囲内にある。細胞核は約5μmの直径を有している。このように小さい構造を表示できるようにするには、光学システムの光学解像度が約2.5μmでなくてはならない。第1の結像段が光学システム全体の光学解像度を制限しないようにするために、第1の結像段の対物レンズは0.09から0.14の間の範囲内の値の開口数を有しているのが好ましい。第1の結像段の対物レンズの0.1から0.11までの開口数NAが格別に好適である。それにより、物体の組織構造の2.5μmの範囲内の光学解像度が可能になるからである。さらに、このような種類の対物レンズにより、約200mmの作業間隔すなわち対物レンズと物体の間の間隔を具体化することができる。
【0018】
両方の部分システムの第2の結像段は、本発明では異なる構成になっており、第2の部分システムの第2の結像段は、第1の部分システムの第2の結像段よりも高い、観察されるべき物体の光学解像度を可能にするように構成されている。このことは、異なる光学解像度で物体を観察することを物体の観察者に可能にする。第1の部分システムは、第2の部分システムよりも低い光学解像度で物体の実像を表示する。観察者は、まず最初に光学システムの第1の部分システムを通して物体を観察して、物体の組織構造に関する概要を把握することができる。第1の部分システムは、たとえば公知の手術用顕微鏡の通常の倍率範囲と解像範囲での物体の立体視観察を観察者に可能にする。このことは、前者の場合、公知の従来技術に基づく視覚式の立体視手術用顕微鏡については、中間像の地点で約5.5μmの解像度があることを意味している。したがって物体サイズに換算すると、第2の結像段が視覚式に構成されている光学システムは、最高で約6.5μmの範囲内の物体構造を光学式に解像することができる。このような種類の第1の部分システムを備える光学システムは、物体の組織内部のクリティカルな個所の発見を可能にするが、組織構造の診断を可能にする詳細な観察は可能ではないことになる。
【0019】
したがって、第2の部分システムの第2の結像段の光学解像度が、第1の部分システムの第2の結像段の光学解像度よりも2.5から3倍だけ高い光学システムが好ましい。第1の部分システムの第2の結像段が6.0μmまでの大きさの物体を光学的に解像するように構成されており、第2の部分システムの第2の結像段が2.0μmまでの大きさの物体を光学的に解像するように構成されている光学システムが特に好ましい。このような種類の光学システムでは、第1の部分システムは、約6.5μmの範囲内の物体構造を光学的に解像することができる従来式の手術用顕微鏡として構成されていてもよく、第2の部分システムは、約2〜3μmの範囲内の物体構造を光学的に解像することができる、上記よりも分解能の高い顕微鏡である。
【0020】
視覚式の結像段では、少なくとも1つの接眼レンズと、鏡胴レンズと、種々のレンズを備える拡大システムとが設けられており、デジタル式の結像段では、少なくとも1つのカメラアダプタと、種々のレンズを備える拡大システムとが設けられている。拡大システムはズームシステムとして構成されていてもよい。
【0021】
本発明による光学システムは、たとえば手術用顕微鏡の通常の倍率範囲と解像範囲での物体の立体視観察を可能にすると同時に、これよりも明らかに高い倍率およびそれによって生じる小さい被写界深度での細胞レベルの解像度を可能にする。細胞レベルの解像度とは、本発明の枠内では、2〜3μmのオーダーの光学解像度を意味している。本発明による光学システムは、光学解像度が細胞レベルの範囲内にある第2の部分システムを有しているのが好ましい。
【0022】
さらに、第2の結像段の構造に基づき、第1の部分システムの物体側の開口数が第2の部分システムの対応する開口数よりも小さい光学システムが好ましい。物体側の開口数は光学解像度を表す目安となるので、第2の部分システムの光学解像度は第1の部分システムの光学解像度よりも高い。すなわち、第1の結像段が共通の場合、第2の部分システムの物体側の開口数は、第1の部分システムの第2の結像段の開口数よりも係数3〜3.5だけ大きいのが好ましい。開口数を係数3だけ高めると、被写界深度が係数9だけ小さくなるという結果につながる。被写界深度は開口数の2乗でスケーリングされるからである。対物レンズの開口数は、対物レンズの焦点距離と反比例してスケーリングされるので、細胞レベルの解像度で撮像をするためには、できる限り短い焦点距離が得られるよう尽力すべきである。ただし十分に広い作業間隔は、手術を成功させるための基本条件である。通常、手術用顕微鏡の作業間隔は200mmから500mmの間である。このことは、手術者にとっての十分な運動の自由を可能にする。第1の結像段の対物レンズについて0.09〜0.14の開口数の必要性があるので、細胞レベルの解像度で撮像するケースについては光学システムを物体の手前近傍へ動かさなくてはならず、すなわちできる限り短い作業間隔にしなくてはならない。約200mmの作業間隔が好ましい作業間隔となるであろう。
【0023】
第1の部分システムの第2の結像段を通って延びる少なくとも1つの観察光路から、第2の部分システムの第2の結像段を通って延びる少なくとも1つの別の観察光路を分離するために、少なくとも1つのビームスプリッタおよび/または少なくとも1つの遮断部材が設けられている。ビームスプリッタは、第1の部分システムの少なくとも1つの観察光路の光線の一部を分割し、これを事前設定された角度で方向転換させ、そのようにして、第2の部分システムの第2の結像段の少なくとも1つの別の観察光路を形成する。ビームスプリッタの代替または追加として遮断部材が設けられていてもよい。本発明の意味における遮断部材は、遮断部材の個々の領域または複数の領域が、高い透過性の状態と散乱状態との間で切換可能であるように構成されている。遮断部材の1つまたは複数の領域を透過状態と拡散状態の間で切換可能であることにより、遮断部材は光学システムで複数の機能を行うことができる。遮断部材が高い散乱作用を有している拡散状態のとき、遮断部材の1つないし複数の領域はそれが配置されている光路の一部を閉ざし、特に1つまたは複数の観察光路の一部を閉ざす。それによって遮断部材は、部分的なシャッター絞りないしいわゆる光トラップの役割を担う。透過状態のとき、遮断部材の各領域は1つまたは複数の観察光路を妨げることがない。遮断部材は、いわゆるブロックマトリクスであってもよい。すなわち遮断部材の横断面が多数のブロックないし格子に区分されており、それぞれ個々のブロックないしそれぞれ個々の格子を透過状態から拡散状態へと切換可能である。遮断部材は、1つまたは複数の旋回可能なポインタを有するように構成されていてもよく、この1つまたは複数のポインタの端部が1つまたは複数の格子の大きさを有している。必要に応じて、1つまたは複数のポインタが遮断部材の的確な領域を覆い、そのようにして光路の一部を遮蔽する。遮断部材は、1つまたは複数の観察光路へ挿入することができる、1つまたは複数の機械式または電気式の絞りであってもよい。
【0024】
遮断部材は、電子式に励起することができる電気光学スイッチであるのが好ましい。遮断部材の電子式の励起により、異なる状態の間での遮断部材のそれぞれの領域の迅速な切換を確保することができる。ビームが完全に遮蔽される状態すなわち拡散状態に加えて、あるいはビームが完全に通過する状態すなわち透過状態に加えて、これら両極端の間のそれぞれの状態を具体化することもできる。このことは、従来技術から知られているような絞りを利用することによっては不可能である。このとき時間的な経過もプリセットすることができ、それにより、遮断部材ないし遮断部材の各領域の時間的な状態パターンを具体化することができる。
【0025】
遮断部材は電子式に切換可能な液晶ポリマー素子(LCP)であるのが好ましい。以下においてはポリマーシャッター絞りまたはポリマーシャッターとも呼ぶこのような液晶ポリマー素子は、一方では、本発明に基づいて必要となる両方の状態へ高い信頼度で変わることができ、また他方では、励起時の非常に高い反応速度を有しているので格別に好ましい。ポリマーシャッターと呼ばれるのは、特に、電子制御可能な光散乱をベースとする光学素子である。この素子は外部電界によって制御され、電界がオフになっているときには結晶の相応の配向によって高度に透過性であり、また、電界を印加することで液晶ポリマー素子に不透明度およびこれに伴う高い散乱能力が与えられる。ポリマーシャッターは非偏光で作動し、可視領域全体にわたって高い透過性を可能にする。液晶ポリマー素子としては、サブミリ秒単位の反応時間を有するポリマーシャッターを使用することができる。
【0026】
本発明は、ポリマーシャッターの特定の実施形態に限定されるものではない。考えられる1つの実施形態は、たとえば能動層が間に配置されている1組のガラス板によって構成されていてもよく、能動層は自由な液晶分子を有している。このような液晶分子は、従来式の液晶の存在下での液晶ポリマー分子の光重合によって得ることができる。ポリマーシャッターでは、電界を印加するために、たとえば透明電極を使用することができる。ポリマーシャッターに供給することができる電圧はたとえば200Vであってもよく、これは電圧推移のそれぞれの最大値の差である。ポリマーシャッターを作動させるには、1つまたは複数のポリマーシャッターに追加の電気接続部が設けられているだけでもよい。遮断部材の励起ないし活動化とは、本発明の意味においては、遮断部材ないし遮断部材の個々の領域が拡散状態に変わることを意味している。したがって電子ベースで作動する遮断部材では、励起とは、散乱状態を調整するための必要な電圧の印加を意味している。光学機器は、第1の遮断部材と第2の遮断部材を励起するための操作装置を有しているのが好ましい。この操作装置は、たとえば遮断部材または遮断部材の各領域が活動化されるスイッチであってもよい。
【0027】
光学システムの両方の部分システムは、両方とも平面視で構成されていてもよく、または両方とも立体視で構成されていてもよい。光学システムの格別に好ましい実施形態では、第1の部分システムは立体視で構成されており、第2の部分システムは平面視で構成されている。第1の部分システムの立体視の構成は、観察者がまず最初に物体の第1の拡大像を得ることを可能にする。立体視の第1の部分システムの倍率は、従来式の手術用顕微鏡の倍率と同じであると考えてもよい。第1の部分システムの物体の解像度に比べて明らかに高い物体の解像度を可能にする第2の部分システムは、平面視で構成されているのが好ましい。平面視の第2の部分システムは、接続されているディスプレイで物体の部分領域の拡大表示を観察するために十分である。
【0028】
光学システムのさらに別の好ましい実施形態は、第1の部分システムと第2の部分システムの観察光路が互いに平行に延びており、第1の部分システムの第2の結像段と第2の部分システムの第2の結像段はそれぞれデジタル式に構成されており、第1の部分システムと第2の部分システムの観察光路の間の切換は遮断部材の時間シーケンシャルな励起によって行われることを意図している。デジタル式に構成された第2の結像段のカメラチップが非常に多数のピクセルを有していれば、高解像度のケースでも、観察される物体ないし観察される試料を細胞レベルで走査することができる。
【0029】
上記の代替案として、第2の部分システムの第2の結像段の少なくとも1つの別の観察光路への切換により、第2の部分システムの第2の結像段の少なくとも1つの別の観察光路へ別のレンズシステムを機械式および/または電気式に挿入することができる。第1の部分システムと第2の部分システムの分離ないし切換は、上に述べたポリマーシャッターを介して行われるのが好ましい。すなわち遮断部材を介して、第1の部分システムと第2の部分システムの間で時間的に相前後して切換がなされ、第1の部分システムは低い開口数で立体視として構成されており、第2の部分システムは高い開口数で平面視として構成されているのが好ましい。第1および第2の部分システムのそれぞれの第2の結像段の間で開口数に関する差異を得るために、第2の部分システムの第2の結像段の少なくとも1つの別の観察光路へ追加のレンズシステムが機械式および/または電気式に挿入される。追加のレンズシステムは、少なくとも1つの遮断部材の切換と同期して、少なくとも1つの別の観察光路へ挿入されるのが好ましい。第1および第2の部分システムのデジタル式の第2の結像段は、第1の部分システムと第2の部分システムのそれぞれの観察光路が互いに平行に延びている光学システムに格別に良く適している。切換を迅速に行うことができるからである。
【0030】
さらに、視覚式の第2の結像段の接眼レンズの射出ひとみが0.5mmから1.0mmの間の大きさの範囲内にある光学システムが好ましい。それにより、光学システムの全体の倍率がいわゆる有効倍率の範囲内に収まる。射出ひとみとは、たとえば手術用顕微鏡などの光学システムでは、観察者の目のひとみと重ね合わされなくてはならない器具ひとみの直径を意味している。光学システムの倍率が高くなればなるほど、対物レンズにおける所与の物体側の開口数で、接眼レンズの射出ひとみは小さくなる。光学システムの射出ひとみの直径では、0.5mmの値を下回らないように留意すべきである。そうしないと、屈折現象のせいで像のコントラストが低いという印象が目に生じるからである。そのようなときには空倍率という用語も使われる。他方、1mmを超える値は、目の網膜の分解能が限られていることから、知覚の利得をもたらすことはほとんどない。
【0031】
第2の部分システムのデジタル式の第2の結像段がカメラチップを備えるカメラを有しており、第2の結像段のカメラアダプタに接続されたカメラのピクセル解像度はカメラチップの地点における光学解像度に相当している光学システムの実施形態が好ましい。視覚式の結像段の場合における検出器は、接眼レンズをのぞき込む観察者の目である。デジタル式の結像段の場合、検出器はカメラチップである。このとき、カメラチップのピクセルサイズが決定的に重要となる。ナイキストの定理により、ピクセルサイズaをもつチップは2aの大きさの最小構造を検出することができる。これがピクセル解像度と呼ばれるもので、その逆数がピクセル限界周波数である。
【0032】
さらに、第1および/または第2の部分システムの視覚式および/またはデジタル式の第2の結像段に焦点合せ装置が設けられている光学システムが好ましい。焦点合せ装置は手動で、またはいわゆるオートフォーカスを通じて自動的に、作動させることができる。焦点合せ装置により、観察される物体の方向へ対物レンズを動かすことができる。それによって焦点面を調整することができる。第1および/または第2の部分システムのデジタル式の第2の結合段階の焦点合せ装置が電気光学素子を有していると格別に好ましい。それにより、焦点面を格別に容易に調整することができる。特にオートフォーカスによって、被写界深度の簡単な調整が可能である。手動調整は対物レンズの調整つまみを通じて行うことができる。第1の結像段におけるこのような種類の焦点合せ装置も同様に考えられる。第1の結像段の対物レンズは、いわゆるバリオスコープとして構成されていてもよい。
【0033】
ビームスプリッタが傾動可能に支承されている光学システムが、格別に好ましい。このときビームスプリッタは、1つまたは複数の軸を中心として傾動させることができる。この光学システムは、ビームスプリッタを傾動させることができる傾動装置を有しているのが好ましい。ビームスプリッタの傾動により、第2の部分システムの測定区画を変位させることができる。測定区画とは、光学システムの第2の部分システムによって観察することができる物体の部分領域である。このような第2の部分システムによって認識可能な物体の部分領域は、第1の部分システムによって観察される物体よりも高い光学解像度で表示される。このように、測定区画は物体の一部分である。ビームスプリッタを動かすことで、観察される物体全体にわたって測定区画を変位させることができ、すなわち、観察者ないし手術者が高い光学解像度で観察したいと考える、物体のどの所望の部分領域でも表示させることができる。物体ないし第1の部分システムによって観察される物体区画は変わらずに保たれるのに対して、物体の部分領域すなわち測定区画は、物体ないし物体区画の全体にわたって可変に変位させることができる。ビームスプリッタを傾動させることで、観察者は、細胞レベルの解像度をもつ第2の部分システムの測定区画を、第1の部分システムの物体区画のなかで位置決めすることができる。第2の部分システムの測定区画の位置決めは、自動的に行うこともできる。そのために観察者は、第1の部分システムを通じて見ている物体上で地点を決めてから、ビームスプリッタを傾動させることで、第2の部分システムによってその地点に近づくことができる。このとき、観察者のひとみを動かすことによって、第2の部分システムの測定区画を変位させることも考えられる。そのために光学システムは、観察者の目の動きと視線方向を記録する測定装置と、視線方向に依存して測定区画を変位させる制御ユニットとを有することができる。ビームスプリッタは、スキャンミラーとして構成されているのが好ましい。
【0034】
第2の部分システムの測定区画の像は、観察をするために、カメラに接続されたスクリーンに結像することができる。あるいは像は、第1の部分システムの、特に立体視で構成された部分システムの、1つまたは複数の観察光路へ反射させることもできる。この反射は恒常的または順次的に行うことができる。
【0035】
さらに、第1および/または第2の部分システムの第2の結像段がズームシステムを有している光学システムが好ましい。それにより、さまざまな焦点距離を調整することができる。
【0036】
光学システムの第1の結像段の対物レンズは、先ほど述べたように、0.09から0.14の値範囲内の開口数を有しているのがよい。この対物レンズは望遠対物レンズとして構成されていてもよい。望遠対物レンズでは、まず正のグループすなわち集光レンズが光路にあり、これに続いて負のグループいわゆる発散レンズがあり、それによって対物レンズの作業間隔が焦点距離よりも短くなる。さらに、第1の結像段の対物レンズがリトロフォーカス対物レンズである光学システムが好ましい。リトロフォーカスという概念は、焦点距離の短い対物レンズの特別な設計形態を意味している。リトロフォーカス型の設計形態は、対物レンズの望遠型の設計形態の逆であり、すなわち、リトロフォーカス対物レンズでは順序が逆になっており、それによって作業間隔が拡大される。リトロフォーカス対物レンズは、対物レンズから物体までの作業間隔よりも焦点距離が短く、したがって高い開口数を可能にするという利点を有している。リトロフォーカス対物レンズを用いて、0.09から0.14の値範囲の開口数を格別に簡単に具体化可能である。
【0037】
少なくとも2つの異なる解像度を備える、物体を観察するための上に述べた光学システムの使用は、物体の「大まかな」観察と「詳しい」観察を観察者ないし手術者に可能にする。特に、本発明の光学システムを使用することで、一方では従来式の倍率範囲内での物体の観察を行うことができ、他方では、細胞レベルでの物体の部分領域の観察を行うことができる。
【0038】
さらに前述の課題は、観察者が第1の部分システムの少なくとも1つの観察光路によって物体を拡大し、第2の部分システムの観察光路によって物体の部分領域をさらに拡大して観察することができる、上に説明した本発明の光学システムで物体を観察する方法によって解決される。このようにして、観察者は光学システムの第1の部分システムを用いてまず最初に手術に必要な倍率で物体を観察し、このときの倍率は3.5から20倍の範囲内にあるのが普通である。第1の部分システムによる物体のこのような観察は、マクロ的な観察と呼ぶこともできる。第2の部分システムにより、観察者は物体の部分領域をさらに拡大して観察することができ、このときには細胞レベルの光学解像度が可能である。細胞レベルの解像度とは、本発明の意味においては、光学システムの第2の部分システムの第2の結像段の解像度が最大2μmであることを意味している。それにより、観察者ないし手術者は最小の組織構造を、特に細胞核を観察することができる。
【0039】
物体の観察者が第2の部分システムの少なくとも1つの別の観察光路によって物体の部分領域を、第1の部分システムの少なくとも1つの観察光路よりも2.5から3倍拡大して観察することができる、上に説明した光学システムで物体を観察する方法が特に好ましい。それにより、光学システムの第2の部分システムでは最大2μmの光学解像度が可能であるのに対して、光学システムの第1の部分システムによっては約6.5μmの光学解像度を具体化可能である。
【0040】
さらに、操作装置を通じて少なくとも1つの遮断部材と別のレンズシステムが第2の部分システムの第2の結像段の少なくとも1つの別の観察光路へ挿入される方法が好ましい。光学システムの両方の部分システムがデジタル式に構成されているときは、少なくとも1つの遮断部材を通じて、第1の部分システムと第2の部分システムの間を往復するように切り換えることができる。操作装置を操作することで、少なくとも1つの遮断部材と別のレンズシステムが第2の部分システムの第2の結像段の少なくとも1つの別の観察光路へ挿入され、ないしはこれから取り出される。このとき、第2の部分システムの第2の結像段の少なくとも1つの別の観察光路への別のレンズシステムの挿入、ないし、第2の部分システムの第2の結像段の少なくとも1つの別の観察光路からの別のレンズシステムの取出しは、少なくとも1つの遮断部材の切換と同期して行われるのが格別に好ましい。光学システムの第2の結像段がデジタル式であれば、両方の部分システムの間の切換が格別に簡単かつ迅速に行われる。
【0041】
第1および/または第2の部分システムの結像段が視覚式であるとき、焦点合せが手動式またはオートフォーカスによって行われる方法は、さらに別の好ましい方法である。それにより、光学システムの第1および第2の結像段の焦点距離を簡単に変えることができる。焦点距離の変更により、被写界深度に影響を与えることができる。
【0042】
第1および/または第2の部分システムの焦点距離を迅速に変えるために、電気光学素子が設けられていてもよい。この場合、第1および/または第2の部分システムの結像段がデジタル式であるとき、カメラの画像のコントラスト評価に基づいて焦点合せが行われる方法が好ましい。コントラストに関わる画像の評価によって、希望するコントラスト調整に合わせて焦点距離を自動的に適合化することができる。
【0043】
物体が静止しているとき、焦点距離の手動または自動の調整によって光学システムを焦点合せすることができ、すなわち被写界深度の範囲を適合化することができる。このことは、特に視覚式の結像段で具体化することができる。
【0044】
通常の架台を使用して動いている物体に関して手術をするときは、たとえば人間の対象物における呼吸運動のようなこうした運動に基づき、あるいは装置の振動に基づき、光学システムと物体の間の相対運動が起こり、このような相対運動は、視覚式の第2の結像段が焦点合せに関する要求を満たすことができないほどの大きさとなる。このようなケースでは、第1および/または第2の部分システムの第2の結像段はデジタル式に構成されているのがよい。すなわち被写界深度が非常に小さく、たとえば患者の呼吸や鼓動のせいで、患者ないしシステムは互いに常に少し動いているため、実際問題として、高い解像度の像は電子式にしか撮影することができない。迅速なオートフォーカスに加えて、高いフレームレートと短い露光時間を備えるカメラを使用するのが格別に好ましい。高いフレームレートと短い露光時間を備えるカメラを使用すれば、連続する焦点合せによって画像のスタックを撮影し、このような画像のスタックのなかから「鮮明な」画像を探し出すことができる。画像のスタックのなかの種々の画像を組み合わせて、「鮮明な」画像をつくることも考えられる。
【0045】
さらに、第2の部分システムの少なくとも1つの別の観察光路を変更することで、第1の部分システムを通じて観察者に見えている物体の部分領域を可変に設定することができる方法が好ましい。すなわち、第2の部分システムの少なくとも1つの別の観察光路は、測定区画すなわち第2の部分システムによって表示される物体の部分領域を小さく表示したり大きく表示することができるように、または位置に関してシステム全体に対して相対的に変位可能であるように、変更することができる。このことは、上に説明した遮断部材によって行うことができる。特にポリマーシャッターは、物体の部分領域を変更するのに非常に良く適している。希望する測定区画の結像サイズに応じて、ポリマーシャッターの開口を小さく調整したり、大きく調整したりすることができる。それにより、特に第2の部分システムの測定区画の大きさを変更することができる。
【0046】
さらに、第2の部分システムの少なくとも1つの別の観察光路の変更が、ビームスプリッタないしスキャンミラーの傾動によって行われる方法が好ましい。それにより、観察される物体の部分領域の位置を可変に調整可能である。すなわち光学システムの第2の部分システムの測定区画を、物体全体を通じて変位させることが可能である。この変位は、ビームスプリッタないしスキャンミラーの傾きに依存して行われる。ビームスプリッタないしスキャンミラーは、光学システムの第1の部分システムの少なくとも1つの観察光路に配置されており、1つまたは複数の軸を中心として回すことができる。それにより、測定区画をどの任意の位置へでも変位させることができる。
【0047】
さらに、第2の部分システムのカメラに付属する表示装置で表示される、拡大して表示される物体の部分領域の像が、第1の部分システムの少なくとも1つの観察光路へ投影される、上に説明した本発明の光学システムで物体を観察する方法が好ましい。このことは、自分の位置を変えることなく、物体の部分領域を高い解像度で観察することを観察者ないし手術者に可能にする。たとえば第1の部分システムにより、物体全体を第1の解像度で観察するだけでなく、物体の部分領域を第1の解像度よりも高い第2の解像度で観察することもできる。このことは、両方の部分システムのデジタル式の第2の結像段を備えている光学システムで、格別に簡単に具体化可能である。観察者は、視線を第1の部分システムから離して第2の部分システムに付属する表示装置へ向ける必要はなく、物体を2通りの異なる解像度で観察するために、視線を変えずに維持することができる。そのために、第2の部分システムで表示される像が第1の部分システムの少なくとも1つの観察光路へ投影されて、この少なくとも1つの観察光路内部の相応の共役平面で表示される。
【0048】
さらに、第1の部分システムを通じて観察している物体の観察者が特定の位置を物体上で選択し、第2の部分システムの少なくとも1つの別の観察光路の変更によってこれらの位置へ順次接近し、第2の部分システムの少なくとも1つの別の観察光路で表示させることができる方法が好ましい。すなわち観察者は、さまざまな個所を物体区画でマーキングし、ビームスプリッタの相応の位置決めによって、これらの個所へ自動的に接近が行われる。このことは、物体の観察者が第1の部分システムによって物体のいわゆるマクロ的な観察をするときに、クリティカルなように見える組織構造に関してまず良好な概観を把握して、これにマーキングを施してから自動的に接近させて、第2の部分システムによって高い解像度で表示させることができるという利点がある。事前のマーキングが可能であり、引き続いてマーキングされた点へ自動的に接近することで、クリティカルな個所を見逃したり、近づいて拡大表示させるのを忘れたりするミスが起こることがあり得ない。
【0049】
さらに現実問題としては、時間の都合上、広い組織領域を細胞レベルの解像度で測定することは不可能である。この理由により、比較的広い組織領域を検出して疑いのある領域を特定することができる、平面的に測定をする方法との組み合わせが有意義である。次いで、疑いのある領域だけが細胞レベルの解像度で測定される。それによって測定の時間コストが大幅に削減される。
疑いのある組織領域を特定するために平面的に測定をする適当な方法には、光学式のコヒーレント断層撮影、蛍光法および自動蛍光法、ラマン分光測定法、組織の偏光特性や散乱特性を検出する方法などがある。
【0050】
本発明による光学システムは観察機器であり、特に手術用顕微鏡である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】手術用顕微鏡の基本構造を模式的に示す図である。
【図2】立体視と平面視の光路を備える本発明の光学システムの構造を模式的に示す図である。
【図3】平面視の観察光路に対して相対的な立体視の観察光路の画像断片である。
【図4】光学システム1のさらに別の実施形態である。
【図5】観察光路が平面視として構成されるように切り換えられている遮断部材である。
【図6】観察光路が立体視として構成されるように切り換えられている遮断部材である。
【図7】視覚式の光学システムの1つの実施形態のための高解像度の光学系を示す図である。
【図8】デジタル式の光学システムの1つの実施形態のための高解像度の光学系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
次に、添付の図面を参照しながら、実施例を用いて本発明を詳しく説明する。
【0053】
図2は、本発明による光学システム1の構造を模式的に示している。光学システム1は、たとえば材料試料のような物体2を観察するために用いられる。光学システム1は、少なくとも1つの観察光路4を備える第1の部分システム3と、少なくとも1つの別の観察光路6を備える少なくとも1つの第2の部分システム5とを有しており、これら少なくとも2つの部分システム3,5は、共通の第1の結像段7と、それと異なる第2の結像段8,9とを有している。少なくとも2つの部分システム3,5が別々の第1の結像段7を有していることも考えられる。第1の結像段7は、無限の像距離と、0.09から0.14の値範囲の開口数NAとを備える対物レンズ10を有している。第1の部分システム3の第2の結像段8は視覚式またはデジタル式に構成されていてもよく、第2の部分システム5の第2の結像段9も同じく視覚式またはデジタル式に構成されていてもよい。視覚式の結像段は、少なくとも1つの接眼レンズと、種々のレンズを備える拡大システムとを有しており、デジタル式の結像段は、少なくとも1つのカメラアダプタと、種々のレンズを備える拡大システムとを有している。本発明による光学システム1の第2の部分システム5の第2の結像段9は、第1の部分システム3の第2の結像段8よりも高い、観察されるべき物体の光学解像度を可能にするように構成されている。
【0054】
図2の光学システム1は、第1の部分システム3の立体視で構成された第2の結像段8と、第2の部分システム5の平面視で構成された第2の結像段9とを示している。第1の部分システム3の立体視で構成された第2の結像段8と、第2の部分システム5の平面視で構成された第2の結像段9は、第1の結像段7の後で、ビームスプリッタ11によって空間的に分離されている。観察光路4,6の末端にはカメラ15が設けられていてもよい。
【0055】
本発明による光学システム1により、異なる光学解像度で物体2を同時に観察することが可能となる。観察者は、たとえば第2の部分システム3によって物体2をマクロ的に観察することができ、すなわち、従来式の手術用顕微鏡の通常の範囲内にある光学解像度で観察することができ、第2の部分システム5によって、同じ物体2の部分領域のさらに拡大された図像を観察することができる。
【0056】
この光学システムは、物体2に損傷を与えることなく、細胞レベルの範囲内の大きさを有する組織構造の検査を物体2で行うことを、簡単、迅速、かつ低コストなやり方で可能にする。
【0057】
0.09から0.14の範囲内の値の開口数NAを有する対物レンズ10により、約2〜3μmの最大の光学解像度dを可能にすることができ、このとき光の波長λの値としてはおよそ500〜550nmを想定している。人間の細胞の直径は10〜20μmの範囲内にある。細胞核は約5μmの直径を有している。このように小さい構造を表示できるようにするには、光学システムの光学解像度が約2.5μmでなくてはならない。第1の結像段7が光学システム1全体の光学解像度を制限しないようにするために、第1の結像段7の対物レンズ10は0.09から0.14の間の範囲内にある値の開口数を有しているのが好ましい。第1の結像段7の対物レンズ10の0.1から0.11までの開口数NAが、格別に好適である。それにより、物体2の組織構造の2.5μmの範囲内の光学解像度が可能になるからである。さらに、このような種類の対物レンズ10により、約200mmの作業間隔AAすなわち対物レンズ10と物体2の間の間隔を具体化することができる。
【0058】
本発明の光学システム1により、物体2の観察者ないし手術者は、同一の光学システムを用いて組織構造の詳細な診断を行えると同時に、物体2での手術も行うことができる。組織試料の採取とこれに続く病理学検査は不要であり、それにより、一方では検査されるべき物体2が損傷を受けることがなく、また他方では診断を行うのに大幅な時間的節約が可能である。
【0059】
図3は、純粋にデジタル式の光学システム1において、平面視の観察光路6に対して相対的に立体視の観察光路4の画像断片を示している。立体視の観察光路4の画像断片12は、平面視の観察光路6の画像断片13よりも大きい。細胞レベルの解像度の画像断片13のサイズは、立体視の観察光路4の画像断片12に対して相対的にのみ変化する。立体視の観察光路4については、たとえば6倍ズームの拡大システムを使用することができる。
【0060】
図4には、光学システム1の別の実施形態が示されている。第1の部分システム3の立体視の観察光路4は、第2の部分システム5の平面視の観察光路6と平行に延びている。立体視の観察光路4と平面視の観察光路6が互いに平行に延びており、すなわち、同一の光学素子を貫通している。両方の部分システム3,5の分離はシーケンシャルに行われる。適当な遮断部材14により、特にたとえばポリマーシャッター等のシャッター部材により、開口数の低い立体視の観察光路4と開口数の高い平面視の観察光路6との間で、時間的に相前後して切換が行われる。このような種類の光学システム1はデジタル式にのみ設計されているのが好ましく、両方の観察光路4,6はカメラで検出される。
【0061】
図4に示す光学システム1の実施形態では、適当な電気光学素子または切換可能な従来式の光学素子を用いて、第2の結像段8,9でその焦点距離を遮断部材14と同期して切り換えることができる。それにより、立体視の光路と平面視の光路の間の倍率の切換が、遮断部材14と同期して可能である。すなわち遮蔽部材14を介して、第1の部分システム3と第2の部分システム5の間で時間的に相前後して切換がなされ、第1の部分システム3は好ましくは立体視で低い開口数をもつように構成されており、第2の部分システム5は平面視で高い開口数をもつように構成されている。第1および第2の部分システム5の間の開口数の差異を得るために、第2の部分システム5の第2の結像段9の観察光路6へ、図示しない追加のレンズシステムが機械式および/または電気式に挿入される。第1および第2の部分システム3,5のデジタル式の第2の結像段8,9は、第1の部分システム3と第2の部分システム5のそれぞれの観察光路4,6が互いに平行に延びている光学システムに格別に良く適している。切換を迅速に行うことができるからである。
【0062】
図5には、観察光路4,6が平面視として構成されるように切り換えられた遮断部材14が示されており、それに対して図6には、観察光路4,6が立体視として構成されるように切り換えられた遮断部材14が示されている。
【0063】
次に、本発明による視覚式の光学システム1と、本発明によるデジタル式の光学システム1の高解像度の部分光学系について、具体的な光学システムデータを説明する。
【0064】
視覚式の光学システム1の実施形態のための、特に手術用顕微鏡のための、高解像度の光学系が図7に示されている。視覚式の光学システム1のための光学系は次の光学デバイスで構成されている。
−F=200mmの焦点距離と、自由な作業間隔AA=196mmすなわち主対物レンズ10と物体2ないし物体区画との間の間隔とを有する固定焦点距離の主対物レンズ10。
−拡大システム、倍率Γ=2.5のいわゆる無限焦点のガリレイ式システム。
−焦点距離fT=224mmの望遠鏡胴。
−倍率VOK=20、視野直径SFZ=10、接眼レンズ焦点距離fOK=250/VOK=12.5mmの接眼レンズ20x/10。
【0065】
物体側の開口数はNA=0.1であり、したがってδ=2.5μの物体解像度が得られる。
【0066】
ガリレイと望遠鏡胴からなる全体の焦点距離は、FT=ΓfT=560mmで求められる。物体と中間像の結像縮尺βは比率β=FT/F=2.8である。
【0067】
つまり直径が3.6mmの物体区画がβで拡大されて、視野直径10mmで接眼レンズ中間像に結像される。
【0068】
ガリレイ、鏡胴、および接眼レンズからなる望遠鏡倍率VFは、VF=Fγ/fOK=45である。
【0069】
そして望遠鏡入口における40mmのひとみ直径は、AP=40/VF=0.9mmの射出ひとみAPを生じさせ、したがって0.5〜1.0mmの有効倍率の範囲内にある。
【0070】
視覚式のOPMIについての光学システムデータを表1に掲げる。
【0071】
デジタル式の光学システム1の実施形態のための、特に手術用顕微鏡のための、高解像度の光学系が図8に示されている。デジタル式の光学システム1のための光学系は次の光学デバイスで構成されている。
−F=140mmの焦点距離と、自由な作業間隔AA=200mmすなわち主対物レンズ10と物体2ないし物体区画との間の間隔とを有するリトロフォーカス主対物レンズ。
−拡大システム、倍率Γ=2.5のいわゆる無限焦点のガリレイ式システム。
−焦点距離fT=224mmの望遠鏡胴。
【0072】
物体側の開口数はNA=0.1であり、したがってδ=2.5μの物体解像度が得られる。
【0073】
ガリレイと望遠鏡胴からなる全体の焦点距離はFT=ΓfT=560mmである。
【0074】
物体平面からセンサ面すなわちCCDまでの結像縮尺βは、β=FT/F=4.0である。
【0075】
したがって、直径2.5μの物体が10μに拡大されてCCDに結像され、ピクセルサイズが5μの画像センサによってさらに解像することができる。4.6mmのチップ対角線は結像される画像区画の制限となるので、4.6mm/4.0=1.2mmの物体区画直径が得られる。
【0076】
デジタル式のOPMIについての光学システムデータを表2に掲げる。
【0077】
表1と表2には、視覚式ないしデジタル式の光学システム1の考えられるシステムデータが示されている。表1は、視覚式の光学システムの考えられるシステムデータである。表2は、デジタル式の光学システムの考えられるシステムデータである。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【符号の説明】
【0080】
1:光学システム
2:物体
3:第1の部分システム
4:観察光路
5:第2の部分システム
6:(別の)観察光路
7:第1の結像段
8:第2の結像段
9:第2の結像段
10:対物レンズ
11:ビームスプリッタ
12:画像断片
13:画像断片
14:遮断部材
15:カメラ
100:手術用顕微鏡(立体手術用顕微鏡)
101:対物レンズ





【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(2)を観察するための光学システム(1)において、少なくとも1つの観察光路(4)を備える第1の部分システム(3)と、少なくとも1つの別の観察光路(6)を備える第2の部分システム(5)とを有しており、
少なくとも2つの前記部分システム(3,5)は共通または別個の第1の結像段(7)と別々の第2の結像段(8,9)とを有しており、
第1の結像段(7)は対物レンズ(10)を有しており、第1の部分システム(3)の第2の結像段(8)は視覚式またはデジタル式に構成されるとともに第2の部分システム(5)の第2の結像段(9)は視覚式またはデジタル式に構成されており、
視覚式の結像段は少なくとも1つの接眼レンズと種々のレンズを備える拡大システムとを有しており、デジタル式の結像段は少なくとも1つのカメラアダプタと種々のレンズを備える拡大システムとを有しており、
第2の部分システム(5)の第2の結像段(9)は、第1の部分システム(3)の第2の結像段(8)よりも高い、観察されるべき物体(2)の光学解像度を可能にするように構成されており、第1の部分システム(3)の第2の結像段(8)は6.0μmまでの大きさの物体(2)を光学的に解像するように構成されており、第2の部分システム(5)の第2の結像段(9)は2.0μmまでの大きさの物体(2)を光学的に解像するように構成されている、物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項2】
物体(2)を観察するための光学システム(1)において、少なくとも1つの観察光路(4)を備える第1の部分システム(3)と、少なくとも1つの別の観察光路(6)を備える第2の部分システム(5)とを有しており、
少なくとも2つの前記部分システム(3,5)は共通または別個の第1の結像段(7)と別々の第2の結像段(8,9)とを有しており、
第1の結像段(7)は対物レンズ(10)を有しており、第1の部分システム(3)の第2の結像段(8)は視覚式またはデジタル式に構成されるとともに第2の部分システム(5)の第2の結像段(9)は視覚式またはデジタル式に構成されており、
視覚式の結像段は少なくとも1つの接眼レンズと種々のレンズを備える拡大システムとを有しており、デジタル式の結像段は少なくとも1つのカメラアダプタと種々のレンズを備える拡大システムとを有しており、
第2の部分システム(5)の第2の結像段(9)は、第1の部分システム(3)の第2の結像段(8)よりも高い、観察されるべき物体(2)の光学解像度を可能にするように構成されており、
第1の部分システム(3)と第2の部分システム(5)のそれぞれの観察光路(4,6)は互いに平行に延びており、第1の部分システム(3)の第2の結像段(8)と第2の部分システム(5)の第2の結像段(9)はそれぞれデジタル式に構成されており、第1の部分システム(3)と第2の部分システム(5)のそれぞれの観察光路(4,6)の間の切換は遮断部材(14)の時間シーケンシャルな励起によって行われる、物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項3】
対物レンズ(10)は、無限の像距離と、0.09から0.14の値範囲の開口数を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学システム(1)。
【請求項4】
第2の部分システム(5)の第2の結像段(9)の光学解像度は第1の部分システム(3)の第2の結像段(8)の光学解像度よりも2.5から3.5倍だけ高いことを特徴とする、請求項1から3のうちのいずれか一の請求項に記載の物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項5】
第1の部分システム(3)の第2の結像段(8)の開口数は第2の部分システム(5)の第2の結像段(9)の開口数よりも小さいことを特徴とする、請求項1から4のうちのいずれか一の請求項に記載の物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項6】
少なくとも1つのビームスプリッタ(11)および/または少なくとも1つの遮断部材(14)が設けられており、それによって第2の部分システム(5)の第2の結像段(9)を通って延びる別の観察光路(6)を第1の部分システム(3)の第2の結像段(8)を通って延びる少なくとも1つの観察光路(4)から分離可能であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項の請求項に記載の物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項7】
第1の部分システム(3)は立体視で構成されており、第2の部分システム(5)は平面視で構成されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項の請求項に記載の物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項8】
第2の部分システム(5)の第2の結像段(9)の少なくとも1つの別の観察光路(6)への切換とともに、第2の部分システム(5)の第2の結像段(9)の少なくとも1つの別の観察光路(6)へ別のレンズシステムを機械式および/または電気式に挿入可能であることを特徴とする、請求項2に記載の物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項9】
視覚式の第2の結像段(8)の接眼レンズの射出ひとみは0.5mmから1.0mmの間の大きさの範囲内にあることを特徴とする、前記請求項1〜8のうちいずれか一項の請求項に記載の物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項10】
第2の部分システム(5)のデジタル式の第2の結像段(9)はカメラチップを備えるカメラ(15)を有しており、第2の結像段(9)のカメラアダプタに接続されたカメラ(15)のピクセル解像度はカメラチップの地点における光学解像度に相当していることを特徴とする、前記請求項1〜9のうちいずれか一項の請求項に記載の物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項11】
第1および/または第2の部分システム(3,5)の視覚式および/またはデジタル式の第2の結像段(8,9)に焦点合せ装置が設けられていることを特徴とする、前記請求項1〜10のうちいずれか一項の請求項に記載の物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項12】
第1および/または第2の部分システム(3,5)の視覚式および/またはデジタル式の第2の結像段(8,9)の焦点合せ装置は電気光学素子であることを特徴とする、請求項11に記載の物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項13】
ビームスプリッタ(11)は傾動可能に支承されていることを特徴とする、請求項6から12までのいずれか一項の請求項に記載の物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項14】
ビームスプリッタ(11)はスキャンミラーであることを特徴とする、請求項6から13までのいずれか一項の請求項に記載の物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項15】
第1および/または第2の部分システム(3,5)の視覚式および/またはデジタル式の第2の結像段(8,9)はズームシステムを有していることを特徴とする、前記請求項1〜14のうちいずれか一項の請求項に記載の物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項16】
第1の結像段(7)の対物レンズ(10)はレトロフォーカス対物レンズであることを特徴とする、前記請求項1〜15のうちいずれか一項の請求項に記載の物体(2)を観察するための光学システム(1)。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一項の請求項に記載の光学システム(1)の利用法において、少なくとも2通りの異なる解像度で物体(2)を観察するための利用法。
【請求項18】
請求項1から16までのいずれか一項の請求項に記載の光学システム(1)で物体(2)を観察する方法において、観察者が第1の部分システム(3)の少なくとも1つの観察光路(4)を通して物体(2)を拡大し、第2の部分システム(5)の観察光路(6)を通して物体(2)の部分領域をさらに拡大して観察することができる方法。
【請求項19】
物体(2)の観察者は第2の部分システム(5)の少なくとも1つの別の観察光路(6)を通じて、第1の部分システム(3)の観察光路(4)を通じてよりも2.5から3.5倍拡大して物体(2)の部分領域を観察することができることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
操作装置により第2の部分システム(5)の第2の結像段(9)の少なくとも1つの別の観察光路(6)へ少なくとも1つの遮断部材(14)および別のレンズシステムが挿入されることを特徴とする、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
第1および/または第2の部分システム(3,5)の視覚式の結像段で焦点合せが手動またはオートフォーカスにより行われることを特徴とする、請求項18から20までのいずれか一項の請求項に記載の方法。
【請求項22】
第1および/または第2の部分システム(3,5)のデジタル式の結像段で焦点合せがカメラ(15)の画像のコントラスト評価に基づいて行われることを特徴とする、請求項18から21までのいずれか一項の請求項に記載の方法。
【請求項23】
第2の部分システム(5)の少なくとも1つの別の観察光路(6)を変更することで第1の部分システム(3)を通じて観察者に見える物体(2)の部分領域を可変に規定することができることを特徴とする、請求項18から22までのいずれか一項の請求項に記載の方法。
【請求項24】
第2の部分システム(5)の少なくとも1つの別の観察光路(6)の変更はビームスプリッタ(11)ないしスキャンミラーの傾動によって行われることを特徴とする、請求項18から23までのいずれか一項の請求項に記載の方法。
【請求項25】
第2の部分システム(5)のカメラ(15)に付属する表示装置で表示される物体(2)の部分領域の拡大表示された画像が第1の部分システム(3)の少なくとも1つの観察光路(4)へ投影されることを特徴とする、請求項18から24までのいずれか一項の請求項に記載の方法。
【請求項26】
第1の部分システム(3)を通じて観察する物体(2)の観察者は物体(2)上で特定の位置を選択し、第2の部分システム(5)の少なくとも1つの別の観察光路(6)の変更によって該位置へ順次接近させて、第2の部分システム(5)の少なくとも1つの別の観察光路(6)で表示させることができることを特徴とする、請求項18から24までのいずれか一項の請求項に記載の方法。
【請求項27】
第2の部分システム(5)に表示される物体(2)の部分領域の選択は自動蛍光法を用いて行われることを特徴とする、請求項18から26までのいずれか一項に記載の方法。















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−80243(P2013−80243A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−267903(P2012−267903)
【出願日】平成24年12月7日(2012.12.7)
【分割の表示】特願2008−551708(P2008−551708)の分割
【原出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(506043354)カール ツァイス メディテック アーゲー (14)
【Fターム(参考)】