説明

光学シート、それを備えたバックライトユニットおよびディスプレイ装置

【課題】空気層となる開口部のつぶれ防止と、接合層の剥がれ防止とを両立することができる光学シート及びそれを備えたバックライトユニット、ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】光源からの光を拡散する拡散層7と、該拡散層7の射出側に配置され、アレイ状の光学素子が配列された光学素子部1、前記拡散層7と前記光学素子部1との間に形成され、前記光学素子のそれぞれに対する光の入射範囲を規制する開口部5aを備えた反射部5とを有する光学シートにおいて、前記拡散層7と前記反射部5とが接合層6を介して一体化され、前記接合層6の構成材料の酸価aが20≦a≦60に設定されていることを特徴とする光学シート。該光学シートを備えてなるバックライトユニットおよびディスプレイ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シート、それを備えたバックライトユニットおよびディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)に代表されるディスプレイ装置は、提供される画像等の情報を認識するために、光源(バックライト)を内蔵している。この光源で消費する電力は、ディスプレイ装置全体で消費する電力の相当部分を占めており、総電力の低減が強く要望される昨今においては、光源の利用効率を向上させることが要求されている。
【0003】
この問題を解決する手段として、輝度向上フィルム(BEF;Brightness Enhancement Film:米国3M社の登録商標)を備えたものが広く使用されている。
BEFは、透明基材上に断面三角形状の単位プリズムを一方向に周期的に配列したフィルムである。このプリズムは、光の波長に比較して大きいサイズ(ピッチ)で形成されている。BEFは、“軸外(off−axis)”からの光を集光し、この光を視聴者に向けて“軸上(on−axis)”に方向転換(redirect)、または“リサイクル(recycle)”する。そのため、ディスプレイの使用時(観察時)には、光源から発光する光線をBEFによって軸外輝度を低下させることで、軸上輝度を増大させることができる。
なお、「軸上」とは、視聴者の視覚方向に一致する方向であり、一般的にはディスプレイ画面に対する法線方向である。
【0004】
BEFにおいて、プリズムの反復的アレイ構造が1方向のみの配列では、その配列方向での方向転換またはリサイクルのみが可能である。そこで、水平面における横方向及びこれに直交する縦方向での表示光の輝度制御を行なうために、プリズム群の配列方向が互いに略直交するように2枚のBEFを重ねて組み合わせて用いることもある。このように、BEFの採用により、電力消費を低減しながら所望の軸上輝度を達成することができるようになった。
BEFに代表されるプリズムの反復的アレイ構造を有する輝度制御部材をディスプレイ装置等の光学シートに採用することは、多数の特許文献に開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
上述したBEFを輝度制御部材として用いた光学シートを備えた、例えばエッジライト方式のディスプレイ装置では、光源からの光がプリズムの傾斜面から射出する。そして、プリズムの傾斜面から射出した光は、その屈折作用によって軸上方向を光の中心として制御された或る角度範囲の光として出射され、視聴者の視覚方向の光の強度を高めるように制御される。
しかしながら、これと同時にプリズムの一方の傾斜面を界面として反射され、他方の傾斜面で屈折する光成分が、視聴者の視覚方向に進むことなく横方向に無駄に出射されてしまうという不具合があった。
【0006】
図3は、縦軸を光強度、横軸を軸上(on−axis)を中心とする観察者の視野角とした、ディスプレイ装置における視野角に対する輝度分布を示す図である。
図3に示すように、上述したBEFの光学シートを備えたディスプレイ装置についての光強度分布は、破線Bで示すように、視聴者の視覚方向F(図1参照:軸上方向にあたる)の角度0°における光強度が最も高められるものの、視覚方向F(軸上方向)に対して水平方向における射出角度が両側(±)方向に次第に変化するに従って光強度が徐々に減少する。そして、横軸に一致する±90°近辺の射出角度では、視野方向から外れるサイドローブ光が小さな光強度ピークとして示される。このサイドローブ光は観察者の視野から外れるため、プリズムの横方向から無駄に出射される光が増えてしまうという問題がある。
一般的には、一方のプリズムの並列される方向に対して他方のプリズムが略直交する様に、2枚のプリズムシートが重ねて併用される使用形態が普及している。図3に示すグラフの破線Bは、BEFの光学シート(プリズムシート)1枚だけの場合の光強度分布である。そのため、図3に破線Bで示すサイドローブ光の光強度ピークを有する輝度分布は望ましくはなく、実線Aで略正規分布曲線として示す、±90°近辺でのサイドローブ光による光強度ピークのない滑らかな輝度分布の方が好ましい。
【0007】
一方、軸上輝度のみが過度に増大すると、グラフ中の山の幅が著しく狭くなり、視域が極端に限定される。
そのため、グラフ中の山の幅を適度に拡げるために、光学シートに光拡散部材(拡散層)を設けることが考えられる。ところが、この場合には光学部材の数が増加し、輝度が低下する現象が生じる。
【特許文献1】特公平1−37801号公報
【特許文献2】特開平6−102506号公報
【特許文献3】特表平10−506500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような欠点を克服するために、BEF等の輝度制御部材と拡散層との界面に空気層を形成したものがある。この空気層は、一度拡散層で拡散した光が、空気層における界面屈折を利用することで、レンズに対して大きな入射角で入射する光を、中央に再度集めるものであり、中心輝度の向上を図ることができる。
しかし、輝度制御部材と拡散層とを一体化する上で、空気層の形状(容積)を変形させずに保持することが難点となっている。そこで、開口部を有する反射層を、輝度制御部材と拡散層との間のスペーサーとして用い、該反射層間の開口部を空気層として形成することが考えられる。これにより、粘着剤や接着剤等の接合材料を介して、拡散層と輝度制御部材とを貼り合わせることで、空気層の形状を変形させずに保持することができる。
【0009】
しかしながら、上述のような構成の場合、以下のような問題点がある。
すなわち、接合材料による拡散層と輝度制御部材との貼り合わせには、空気層を潰さない程度に接合材料を薄膜化する必要がある。しかし、接合材料を薄膜化することで、拡散層の表面凹凸が空気層内に浮き出て、接合層の密着性が低下し、接合層が剥がれてしまうという問題がある。また、拡散層と輝度制御部材との十分な密着性を確保するために、柔軟な接合材料を使用すると、これらの流動性から反射層で押圧された硬化前の接合材料が、周辺の開口部に侵入し、開口部が埋まってしまう。これにより、空気層がつぶれ、空気層が失われた状態で硬化されるといった問題がある。その結果、個々の空気層の状態がばらついて不均一であるため、一層の輝度ムラを発生するという不具合があった。
【0010】
そこで、本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであって、空気層となる開口部のつぶれ防止と、接合層の剥がれ防止とを両立することができる光学シート及びそれを備えたバックライトユニット、ディスプレイ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、
光源からの光を拡散する拡散層と、該拡散層の射出側に配置され、アレイ状の光学素子が配列された光学素子部と、前記拡散層と前記光学素子部との間に形成され、前記光学素子のそれぞれに対する光の入射範囲を規制する開口部を備えた反射部とを有する光学シートにおいて、前記拡散層と前記反射部とが接合層を介して一体化され、前記接合層の構成材料の酸価aが20≦a≦60に設定されていることを特徴とする光学シートである。
【0012】
ここで、「酸価」とは、接合層の構成材料の油分1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を示し、反応点の指標となるものである。酸価が高ければ反応点は多く、低ければ反応点は少ない。接合層中に含まれる硬化剤との反応を考えた場合、反応点が多く存在するほど、架橋は進行し、接合層としては硬くなる方向へ進む。接合層の硬さは、密着力とトレードオフの関係にあるため、空気層となる開口部を保持しつつ、必要な密着力を維持する最適な酸価が存在するものと考えられる。
この構成によれば、接合層の構成材料の酸価aを20≦aに設定することにより、空気層となる開口部のつぶれ防止が可能になり、a≦60に設定することにより接合層の剥がれ防止が可能になる。そのため、開口部のつぶれ防止と、接合層の剥がれ防止とを両立することができ、開口部の形状のばらつきを抑制することができる。これにより、拡散層で拡散させた光に対して、所望の屈折効果を得ることができるため、光学素子に対して大きな入射角で入射する光を集光することができる。したがって、光の利用効率に優れ、しかも輝度ムラを抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、光源からの光を拡散する拡散層と、該拡散層の射出側に配置され、アレイ状の光学素子が配列された光学素子部と、前記拡散層と前記光学素子部との間に形成され、前記光学素子のそれぞれに対する光の入射範囲を規制する開口部を備えた反射部とを有する光学シートにおいて、前記拡散層と前記反射部とが接合層を介して一体化され、
前記反射部と前記接合層の界面において、前記接合層の算術平均粗さRaが0.01μm以上1μm以下に設定されていることを特徴とする光学シートである。
この構成によれば、開口部のつぶれを抑制することができ、かつ、接合層の密着性を維持することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、光源からの光を拡散する拡散層と、該拡散層の射出側に配置され、アレイ状の光学素子が配列された光学素子部と、前記拡散層と前記光学素子部との間に形成され、前記光学素子のそれぞれに対する光の入射範囲を規制する開口部を備えた反射部とを有する光学シートにおいて、前記拡散層と前記反射部とが接合層を介して一体化され、
前記接合層の構成材料の粘着力が100gf/inch以上500gf/inch以下に設定されていることを特徴とする光学シートである。
この構成によれば、構成材料の粘着力を100gf/inch以上に設定することで開口部のつぶれを抑制することができ、構成材料の粘着力を500gf/inch以下に設定することで接合層の密着性を維持することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、 前記接合層の構成材料は、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ビニル系の樹脂材料のうち少なくとも何れかからなり、前記接合層の厚みbが5μm≦b≦50μmに設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートである。
この構成によれば、接合層の厚みbを5μm≦bに設定することで、拡散層と反射部とを貼り合わせた際に、接合層の剥がれ防止が可能になり、また接合層の厚みbをb≦50μmに設定することで、空気層となる開口部のつぶれ防止が可能になる。これにより、開口部の形状を確保することができるため、光源から射出される光が所望の屈折効果を得ることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記接合層の構成材料は、光拡散微粒子を含有し、該光拡散微粒子の分解温度が200℃以上に設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学シートである。
この構成によれば、光学シートを高温下に曝した際でも、接合層の密着性を維持して、拡散層や反射部の剥がれを抑制することができる。そのため、高品質な光学シートを提供することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記光拡散微粒子の粒度が、30μm以下に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の光学シートである。
この構成によれば、接合層の被膜強度を確保した上で、開口部のつぶれや、拡散層や反射部の剥がれを抑制することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、前記光拡散微粒子は、10%以上30%以下の重量割合で前記接合層の構成材料に混合されていることを特徴とする請求項5または6に記載の光学シートである。
この構成によれば、接合層中の光拡散微粒子の重量割合を10%以上に設定することで、開口部のつぶれを抑制することができ、光拡散微粒子の重量割合を30%以下に設定することで接合層の密着性を維持することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、 請求項1〜7のいずれかに記載の光学シートを備えていることを特徴とするバックライトユニットである。
この構成によれば、光の利用効率に優れ、しかも輝度ムラを抑制できる光学シートを備えているため、高性能なバックライトユニットを提供することができる。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のバックライトユニットを備えていることを特徴とするディスプレイ装置である。
この構成によれば、光の利用効率に優れ、しかも輝度ムラを抑制できるバックライトユニットを備えているため、高性能なディスプレイ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、開口部のつぶれ防止と、接合層の剥がれ防止とを両立することができる。これにより、拡散層で拡散させた光に対して、所望の屈折効果を得ることができ、光学素子に対して大きな入射角で入射する光を集光することができる。したがって、光の利用効率に優れ、しかも輝度ムラを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する(ディスプレイ装置)。
図1は、本発明の実施形態に係るディスプレイ装置の概略構成を示す模式的な断面図である。なお、図1においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を適宜異ならせてある。
【0023】
図1に示すように、本実施形態のディスプレイ装置100は、光源部20および、光学シート21、液晶表示部22がこの順に積層され、液晶表示部22から、図示上側に向けて、画像信号によって表示制御された表示光を出射することで、平面視矩形状の画像を表示するものである。
光源部20と光学シート21とは、バックライトユニット23を構成している。
以下では、このような配置に基づいて、図1の(A)上方向を単に表示画面側(射出側)、下方向を単に背面側と称する場合がある。
【0024】
光源部20は、紙面左右方向に延びるライン状の発光部が紙面奥行き方向に沿って等間隔に配置された複数の光源20aと、これら光源20aを背面側から覆って表示画面側が開口された反射板20bとで構成される直下型方式を採用している。
光源20aとしては、例えば、冷陰極管などを用いることができるが、複数のLED素子を紙面奥行き方向に沿うライン上に配列したLED光源などを採用してもよい。ただし、光源部20は、光学シート21の背面側に白色光を出射できればこのような構成には限定されず、周知のいかなる構成の光源部を採用してもよい。例えば、導光板の側面にライン状光源を配置したエッジライト式の面光源などを採用してもよい。
【0025】
光学シート21は、光源部20から表示画面側に射出される光の一部を集光して、表示画面側に透過させ、他の光を光源部20側に反射して光源部20に再入射させるものであり、背面側から表示画面側に向けて、拡散層7、接合層6、反射部5、及びレンズ部(光学素子部)1が、この順に積層されてなる。すなわち、後述するように、反射部5で形成される空気層5aの形成領域では、接合層6、レンズ部1がこの順に積層されている。
【0026】
拡散層7は、光源部20の表示画面側を覆う位置に設けられた板状部材である。拡散層7は、透明樹脂とこの透明樹脂中の光拡散領域とを具備して構成されており、これら透明樹脂の屈折率と光拡散領域の屈折率が異なるものとされる。拡散層7は、光源部20から表示画面側に出射される光Pを拡散させるものであり、複数の光源20aによる図示水平方向の照度ムラを抑制するとともに、表示光に適宜の視野角を付与することができるようになっている。
拡散層は、ヘイズ値が20%以上であることが好ましい。ヘイズ値が20%未満の場合は、拡散性能が不十分となり、面内輝度の均一性が悪化するため好ましくない。拡散層は、透明樹脂に光拡散領域が分散されて形成されている。透明樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などを用いることができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、アクリルニトリルスチレン共重合体、アクリロニトリルポリスチレン共重合体などを用いることができる。
光拡散領域は、光拡散粒子からなることが好ましい。好適な拡散性能を容易に得ることができるためである。
光拡散粒子としては、無機酸化物または樹脂からなる透明粒子を用いることができる。無機酸化物からなる透明粒子としては、例えば、シリカ、アルミナなどを用いることができる。また、樹脂からなる透明粒子としては、アクリル粒子、スチレン粒子、スチレンアクリル粒子及びその架橋体、メラミン・ホルマリン縮合物の粒子、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PVDF(ポリフルオロビニリデン)、及びETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体)等のフッ素ポリマー粒子、シリコーン樹脂粒子などを用いることができる。
また、上述した透明粒子から2種類以上の透明粒子を組み合わせて使用してもよい。さらにまた、透明粒子の大きさ、形状は、特に規定されない。
光拡散領域として光拡散粒子を用いた場合には、光拡散層の厚さが0.05〜5mmであることが好ましい。
光拡散層の厚みが0.05〜5mmである場合には、最適な拡散性能と輝度を得ることができる。逆に、0.05mm未満の場合には、拡散性能が足りず、5mmを超える場合には、樹脂量が多いため吸収による輝度低下が生じる。
なお、透明樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合には、光拡散領域として気泡を用いても良い。
すなわち、熱可塑性樹脂の内部に形成された気泡の内部表面が光の乱反射を生じさせ、光拡散粒子を分散させた場合と同等以上の光拡散機能を発現させることができる。そのため、光拡散部材の膜厚をより薄くすることが可能となる。
このような光拡散層として、白色PETや白色PPなどを挙げることができる。白色PETは、PETと相溶性のない樹脂や酸化チタン(TiO)、硫酸化バリウム(BaSO)、炭酸カルシウムのようなフィラーをPETに分散させた後、該PETを2軸延伸法で延伸することにより、該フィラーの周りに気泡を発生させて形成する。
なお、熱可塑性樹脂からなる光拡散層は、少なくとも1軸方向に延伸されてなればよい。少なくとも1軸方向に延伸させれば、フィラーの周りに気泡を発生させることができるためである。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエステル樹脂、イソフタル酸共重合ポリエステル樹脂、スポログリコール共重合ポリエステル樹脂、フルオレン共重合ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、脂環式オレフィン共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンポリマー、およびこれらを成分とする共重合体、またこれら樹脂の混合物などを用いることができ、特に制限されることはない。
光拡散領域として気泡を用いた場合には、光拡散層の厚さが25〜500μmであることが好ましい。
拡散層の厚さが25μm未満の場合には、シートのこしが不足し、製造工程やディスプレイ内でしわを発生しやすくなるので好ましくない。また、光拡散層の厚さが500μmを超える場合には、光学性能についてはとくに問題ないが、剛性が増すためロール状に加工しにくい、スリットが容易にできないなど、従来の拡散板と比較して得られる薄さの利点が少なくなるので好ましくない。
【0027】
また、現発明の試験体として図1の(B)構成もある。拡散層7の裏面に24が形成されている。24はシリンドリカルに並んだレンズ形状をなしており、構成材料は図1の(A)記載の符号1と同様のものである。また製造法は問わず、当該技術分野では良く知られている押し出し成形法、射出成形法、あるいは熱プレス成形法などを採用できる。
【0028】
反射部5は、空気層5aと反射層5bとを備えている。
反射層5bは、レンズ部1の背面側において、紙面奥行き方向に延びる断面視矩形状のものであり、紙面左右方向に沿って等間隔に複数配列され、ストライプ状に形成されている。反射層5bは、光源部20から射出される光Pうち、反射層5bに入射する光を背面側に反射し、この反射光を反射板20bで再反射させるものである。そして、反射板20bで再反射した光を、再度、表示画面側へ射出させることで、光の利用効率を高めることができる。反射層5bの材質は、例えば金属粒子、または二酸化チタン等の高屈折率透明粒子を分散混合してなるインキを塗布形成、または転写形成したもの、金属箔をラミネート形成したもの、金属材料を蒸着したもの等を採用することができる。なお、反射層の断面形状は、矩形断面には限定されない。例えば、背面側に縮幅する台形断面や、これら矩形断面、台形断面の背面側の角部を丸めた断面形状などを採用することができる。
【0029】
各反射層5bの間には、開口部が形成されており、この開口部が空気層5aとして構成されている。この空気層5aは、接合層6の表示画面側の表面とレンズ部1の背面側の界面との間で、レンズ部1における後述する複数のレンズのそれぞれに対する光の入射範囲を規制するものである。空気層5aは、後述する接合層6より屈折率が低く構成されており、一度拡散層7で拡散した光が、接合層6と空気層5aとの間で界面屈折することで、空気層5aを通過してレンズ部1に対して大きな入射角で入射する光を、中央に再度集めることができる。
【0030】
レンズ部1は、空気層5aを通って表示画面側に透過する拡散光を集光するため、複数の光学素子、例えばレンズを、それぞれ異なる空気層5aに対向させて等間隔でアレイ状に配列したものである。レンズ部1は、例えばPET樹脂、PC樹脂、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、アクリロニトリルポリスチレン共重合体等を用いて、当該技術分野では良く知られている押し出し成形法、射出成形法、あるいは熱プレス成形法によって形成することができる。もしくは紫外線(UV)硬化性樹脂を用いて成形することができる。
【0031】
レンズ部1は、表示画面側に凸に形成されたレンズ面1aが図中紙面奥行き方向に延ばされた凸シリンドリカルレンズを単位レンズとする、凸シリンドリカルレンズアレイからなる。すなわち、レンチキュラーレンズとして構成されている。
なお、レンズ面の形状は、必要な集光性能に応じて、周知の適宜のレンズ面形状、例えば、球面、楕円面などを採用してもよい。また、集光効率を向上するために、楕円面を基準面とし高次項により補正を加えた非球面形状としてもよい。
【0032】
ここで、接合層6は、反射部5が設けられたレンズ部1に対して拡散層7を積層一体化するためのものであり、拡散層7と反射部5とが接合層6を介して貼りあわされている。
接合層6の構成材料としては、光透過性の粘着剤等が挙げられる。本実施形態の粘着剤の主原料は、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ビニル系等の高分子材料のうち少なくとも何れかからなり、これら高分子材料中に粘着付与剤、粘着調整剤等の添加剤を含んでいるものが好ましい。また、粘着剤には、球形または無定形の形状で、かつ有機または無機の微粒子からなる光拡散性微粒子が含まれているのが好ましい。例えば光拡散性微粒子としては、シリカ微粒子、アクリル系微粒子等が挙げられる。
【0033】
接合層6に用いられる粘着剤の具体的な製造方法としては、まず光拡散微粒子を分散させた有機溶剤中に主原料の高分子材料、様々な添加剤を混合撹拌することで、光拡散微粒子を粘着剤中に分散させ、分散液を製造する。さらに、この分散液に架橋剤を混合し、基材に塗布・乾燥を行うことによって粘着剤が得られる。この時用いる基材は、安価なPET等の基材に離型処理を施したフィルムを使用しても良い。また、基材への塗布方式、乾燥方式としては特に制限はない。
【0034】
ところで、粘着剤による拡散層と反射層との貼り合わせには、反射部における空気層を潰さない程度に粘着剤を薄膜化する必要がある。しかし、粘着剤を薄膜化することで、拡散層の表面凹凸が空気層内に浮き出て、接合層の密着性が低下し、接合層が剥がれてしまうという問題がある。また、拡散層と反射層との十分な密着性を確保するために、柔軟な粘着剤を使用すると、これらの流動性から反射層で押圧された硬化前の粘着剤が、周辺の開口部(空気層)内に侵入し、空気層が埋まってしまう。これにより、空気層がつぶれてしまい、空気層が失われた状態で硬化されてしまうといった問題がある。その結果、個々の空気層の状態がばらついて不均一であるため、一層の輝度ムラを発生するという不具合があった。
一般に接合層による貼り合わせにおいては、接合層の厚みが厚い程、密着力の向上を期待できるが、接合層の流動性が増加して空気層を容易に埋めてしまう。一方、接合層の厚みを薄くすることで、流動性は抑えられるが、密着力不足で剥がれが生じてしまう。
【0035】
そこで、本発明者は、上述した接合層6に用いる粘着剤の酸価を適正な値に設定することで、接合層6の剥がれの防止と、空気層5aのつぶれの防止とを両立できることを見出した。なお、該酸価以外にも、接合層6の厚み、接合層6に含まれる光拡散微粒子の分解温度、粒度、添加量、接合層6の表面粗さや粘着力等を適正な値に設定することもとくに好ましい形態である。
【0036】
本実施形態における「酸価(mgKOH/g)」とは、粘着剤(接合層)の油分1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を示し、反応点の指標となるものである。酸価が高ければ反応点は多く、低ければ反応点は少ない。粘着剤中に含まれる硬化剤との反応を考えた場合、反応点が多く存在するほど、架橋は進行し、粘着剤としては硬くなる方向へ進む。粘着剤の硬さは、密着力とトレードオフの関係にあるため、空気層5aを保持しつつ、必要な密着力を維持する最適な酸価が存在するものと考えられる。具体的には、粘着剤(接合層)の酸価aは20≦a≦60に設定されていることが好ましい。これは、接合層6が80℃以上の高温下で保持された場合、粘着剤の酸価aがあまり高すぎても密着力を維持できなくなり、あまり低すぎても粘着剤が軟らかくなってしまい、空気層5a内に侵入し、空気層5aのつぶれを抑制できないからである。
【0037】
以下に、酸価の測定方法を示す。
まず、粘着剤のサンプル(1g程度)を有機溶媒に溶解する。この溶液に、水酸化カリウムエタノール溶液を添加滴定する。そして、着色が所定時間維持された時点の滴定量A(ml)を記録する。
酸価の算出は、以下の式で行われる。
酸価(mgKOH/g)=(A)×(56.1)×(f)/(サンプル重量g)
なおAは滴定量(ml)であり、fは水酸化カリウムエタノール溶液の規定数等を含む定数である。
【0038】
また、粘着剤に含まれる光拡散微粒子は、接合層6が所望の屈折率を有するように調整され、その粒度は接合層6の厚みよりも十分に小さければ特に制限はない。ただし、粘着剤と混合した際、その粒度は30μm以下であることが好ましい。光拡散微粒子の粒度が30μmを超える場合、接合層6の皮膜強度が低下し、空気層5aのつぶれを抑制できない。なお、粒度は、JIS K5101の規定に基づいて測定できる。
【0039】
また、接合層6の厚みb(図1の(A)参照)は、5μm≦b≦50μmに設定されていることが好ましい。この厚みbは、上述した光拡散微粒子がスペーサーとなって空気層5aを保持することが可能な場合、所望の光の屈折効果を得るために、50μm位までは空気層5aを確保したいからである。
【0040】
さらに、光拡散微粒子の接合層6中の重量割合cは、10%≦c≦30%に設定されていることが好ましい。これは、光拡散微粒子の接合層6中の重量割合cが、あまり高すぎると密着力を維持できなくなり、あまり低すぎても空気層5aのつぶれを抑制できないからである。
【0041】
ここで、本実施形態における算術平均粗さRaについて説明する。算術平均粗さとは以下に示す数式より求められる。
【0042】
[数1]

【0043】
上記式より、粗さ曲線から、その平均線の方向に長さlだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。Raは基材に対する密着性に関係するパラメーターであり、ある程度の粗さを持つことにより、接着表面積が増加し、密着性が向上する。しかし、Raが高すぎる場合は逆に密着性は低下する。このように、上述の接合層に関して、密着力を維持する最適な算術平均粗さが存在するものと考えられる。具体的には、前記反射層5bと前記接合層6aの界面において、前記接合層の算術平均粗さRaが0.01μm以上1μm以下に設定されていることが好ましい。これは前記反射層と前記接合層の界面において、前記接合層の算術平均粗さRaがあまり高すぎると密着力を維持できなくなり、あまり低すぎても空気層5aのつぶれを抑制できないからである。
【0044】
また、接合層6の構成材料、すなわち粘着剤の粘着力が100gf/inch以上500gf/inch以下に設定されていることが好ましい。これは接合層6となる粘着剤の粘着力があまり高すぎると空気層5aのつぶれを抑制できなくなり、あまり低すぎても密着力を維持できなくなるからである。
【実施例】
【0045】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
ここで、本発明者は、上述した本実施形態における光学シートと同様の構成からなり、各種酸価を有するアクリル系樹脂からなる粘着剤を介して拡散層と反射部とを一体化した様々なサンプルシート(10cm×30cm)を作成し、これらサンプルシートを用いて環境試験を行った。そして、試験後における空気層のつぶれ・拡散層や反射層の剥がれの状態を評価した。
【0046】
以下の例において、拡散層は、有機フィラーを含有する2mm厚のポリスチレン板を使用した。粘着剤の厚さは、12μm±1μmとした。反射部は、ウレタンアクリレートと酸化チタンを混合したものを使用した。開口部は、幅56μm程度とした。光拡散微粒子を使用する場合、平均粒径1.7μm、粒度20μm以下のアクリル系微粒子を使用した。
【0047】
本環境試験の試験方法は、上述したサンプルシートを温度90℃の環境下に24時間、温度80℃の環境下に500時間、温度60℃・湿度95%の環境下に500時間曝し、その後のサンプルシートの変化を目視で確認した。
【0048】
各実施例のサンプルシートに用いた粘着剤の組成は以下の通りである。なお、各実施例の比較対象として、粘着剤の酸価aが、a<20、60<aの粘着剤により拡散層と反射部とを貼り合わせたサンプルシートを用いた。
<実施例1>
粘着剤の酸価a:20.0
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:無
<実施例2>
粘着剤の酸価a:33.5
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:無
<実施例3>
粘着剤の酸価a:60
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:無
<比較例1>
粘着剤の酸価a:17.4
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:無
<比較例2>
粘着剤の酸価a:83.8
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:無
【0049】
以上の条件で測定を行った結果、以下の表1に示すような結果が得られた。ここで、環境試験の評価基準を説明する。図2はサンプルシート(光学シート)の平面図であり、環境試験の評価基準を説明する説明図である。なお、図2中の鎖線Gは、サンプルシートにおける4隅の4×4mmの範囲を示している。
表1中空気層のつぶれ「◎」は、サンプルシートの面上において、空気層のつぶれが全くない状態を示し、「○」は、サンプルシートにおける4隅の空気層が若干つぶれているが、鎖線Gの範囲に収まっている状態であることを示している。また「×」は、空気層のつぶれがサンプルシートにおける鎖線Gの範囲を超えている状態であること(図2中符号K参照)、もしくはレンズ部(図1の(A)参照)のレンズの配列方向に沿った形状で空気層のつぶれが観測された場合(図2中符号L参照)を示している。
また、剥がれ「◎」は、拡散層と反射層(ともに図1の(A)参照)とが全く剥がれのない状態を示し、「○」は、サンプルシートにおける4隅で拡散層や反射層が若干剥がれているが、図2中鎖線Gの範囲に収まっている状態であることを示している。「×」は、拡散層や反射層の剥がれがサンプルシートにおける鎖線Gの範囲を超えている状態(図2中符号K参照)であることを示している。
以上の評価に基づいて、空気層のつぶれと、拡散層や反射層の剥がれとの両者の評価が「○」以上の評価であった場合、良品の光学シートであると判定する。
【0050】
【表1】

【0051】
表1に示すように、比較例1(酸価aが17.4)では、拡散層や反射層の剥がれは全くなく、良好な状態が維持できた。しかしながら、空気層のつぶれについては、サンプルシートの4隅やレンズ部のレンズ面の背面側等で、空気層がつぶれてしまう箇所が多く確認された。これは、粘着剤の酸価aをa<20に設定すると、粘着剤が軟らかく、サンプルシートを高温化に保持した際に、粘着剤の流動性が増加することが考えられる。その結果、拡散層と反射層とを貼り合わせる際に、反射層に押圧された粘着剤が周辺の空気層内に侵入し、空気層が埋まって、つぶれてしまうことが考えられる。
【0052】
一方、比較例2(酸価aが83.8)では、空気層のつぶれは全くなく、良好な状態が維持できた。しかしながら、拡散層や反射層の剥がれについては、サンプルシートの4隅等で、剥がれてしまう箇所が多く確認された。これは、粘着剤の酸価aを60<aに設定すると、粘着剤が硬くなってしまい、密着力が低下することが考えられる。そのため、サンプルシートを高温下に保持して、サンプルシートが反ってしまうと、この反りに粘着剤が追従できなくなってしまう。その結果、粘着剤と反射層との界面、あるいは粘着剤と拡散層との界面で剥がれが生じてしまう。
【0053】
これに対して、実施例1〜3のように、酸価aを20≦a≦60に設定することで、空気層のつぶれ、拡散層や反射層の剥がれがともに少なく、良好な状態の光学シートを得ることができた。
【0054】
また本発明者は、粘着剤の主材料中に様々な分解温度の光拡散微粒子を混合したサンプルシートを用い、上述した試験条件と同様の環境試験を行い、試験後における空気層のつぶれ、拡散層や反射層の剥がれ、圧痕耐性の状態を評価した。ここで、圧痕耐性とは、サンプルシートを作成するにあたって、拡散層と反射層とを貼り合わせる際に用いる貼合ロールを、15秒間サンプルシートに押し当て、その押し当てた時点での状態と、貼合ロールによる押し当てを解除してから5分経過後の状態とを比較した。そして圧痕耐性「○」は、5分経過後に空気層のつぶれが確認されない、もしくは軽減された状態であることを示し、「×」は、5分経過後でも空気層のつぶれがはっきりと確認された状態であることを示している。
【0055】
各実施例のサンプルシートに用いた粘着剤の組成は以下の通りである。なお、各サンプルシートにおける粘着剤の酸価aは、全て33.5に設定した。また各実施例の比較対象として、200℃より低い分解温度の光拡散微粒子を混合した粘着剤を用いた。
【0056】
<実施例4>
粘着剤の酸価a:33.5
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:有
光拡散微粒子の分解温度:200℃
<実施例5>
粘着剤の酸価a:33.5
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:有
光拡散微粒子の分解温度:220℃
<比較例3>
粘着剤の酸価a:33.5
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:有
光拡散微粒子の分解温度:160℃
<比較例4>
粘着剤の酸価a:33.5
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:有
光拡散微粒子の分解温度:190℃
【0057】
【表2】

【0058】
表2に示すように、光拡散微粒子の分解温度が200℃より低い場合では、空気層のつぶれについては良好な状態を維持することができるが、サンプルシートにおける広い範囲で剥がれが生じてしまう。これは、分解温度が200℃より低い光拡散微粒子にあっては、高温時に光拡散微粒子中の分子が分解されるため、粘着剤の密着性が低下してしまうことが考えられる。また、圧痕耐性についても、貼合ロールによる押し当てが解除されてから5分経過後であっても、空気層のつぶれが残存していた。
これに対して、実施例4,5のように光拡散微粒子の分解温度が200℃以上の場合では、空気層のつぶれと、拡散層や反射層の剥がれとの両者において、良好な結果が得られた。また、圧痕耐性についても、貼合ローラによる押し当てが解除されてから5分経過後には、空気層のつぶれはなくなっているか、もしくは軽減されていることが確認された。
【0059】
このように、上述の実施の形態によれば、拡散層7と反射層5bとが接合層6を介して一体化され、接合層6の粘着剤の酸価aが20≦a≦60に設定されている構成とした。
この構成によれば、接合層6となる粘着剤の酸価aを20≦aに設定することにより、空気層5aのつぶれ防止が可能になり、a≦60に設定することにより接合層6の剥がれ防止が可能になる。そのため、空気層5aのつぶれ防止と、接合層6の剥がれ防止とを両立することができ、空気層5aの形状のばらつきを防ぐことができる。これにより、拡散層7で拡散させた光に対して、所望の屈折効果を得ることができ、レンズ部1に対して大きな入射角で入射する光を集光することができる。したがって、光の利用効率に優れ、しかも輝度ムラを抑制することができる。
【0060】
また、接合層6の厚みbを5μm≦bに設定することで、拡散層7と反射層5bとを貼り合わせた際に、接合層6の剥がれ防止が可能になり、また接合層6の厚みbをb≦50μmに設定することで、空気層5aのつぶれ防止が可能になる。空気層5aの形状を確保することができるため、光源20aから射出される光が所望の屈折効果を得ることができる。
【0061】
また、光拡散微粒子の粒度を30μm以下に設定することで、接合層6の被膜強度を確保した上で、空気層5aのつぶれや、拡散層7や反射層5bの剥がれを抑制することができる。
また、接合層6中の光拡散微粒子の重量割合を10%≦cに設定することで、空気層5aのつぶれを抑制することができ、光拡散微粒子の重量割合cをc≦30%に設定することで接合層6の密着性を維持することができる。
【0062】
また、反射層5bと接合層の界面において、接合層を構成する粘着剤の算術平均粗さRa が0.01μm以上に設定することで空気層5aのつぶれを抑制することができ、1μm以下に設定することで接合層6の密着性を維持することができる。
【0063】
また、Raは上述した光拡散微粒子を含んでいた場合に、均一に分散していることを示し、空気層5aを保持しつつ、上述の光学素子部との密着を維持することのできる指標となる。
【0064】
各実施例のサンプルシートに用いた粘着剤の組成は以下の通りである。なお、各サンプルシートにおける粘着剤の酸価aは、全て33.5に設定した。また光拡散微粒子の分解温度は、200℃に設定した。各実施例の比較対象として、反射層5bと接合層6界面における、接合層6を構成する粘着剤の算術平均粗さRaはRa<0.01μm、1μm<Raに設定した粘着剤により貼り合わせたサンプルシートを用いた。
【0065】
<実施例6>
粘着剤の酸価a:33.5
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:有
光拡散微粒子の分解温度:200℃
接合層6の表面粗さ:0.01μm
<実施例7>
粘着剤の酸価a:33.5
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:有
光拡散微粒子の分解温度:200℃
接合層6の表面粗さ:1.00μm
<比較例5>
粘着剤の酸価a:33.5
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:有
光拡散微粒子の分解温度:200℃
接合層6の表面粗さ:0.005μm
<比較例6>
粘着剤の酸価a:33.5
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:有
光拡散微粒子の分解温度:200℃
接合層6の表面粗さ:1.20μm
【0066】
【表3】

【0067】
表3に示すように、比較例5(表面粗さが0.005μm)では、剥がれについては良好な状態を維持することができた。しかしながら、空気層のつぶれについては、サンプルシートの4隅やレンズ部のレンズ面の背面側等で、空気層がつぶれてしまう箇所が多く確認された。また、圧痕耐性についても、貼合ロールによる押し当てが解除されてから5分経過後であっても、空気層のつぶれが残存していた。これは接合層6の表面粗さを0.01μm未満に設定すると光拡散粒子が接合層6内で不均一に分散しており、接合層内部に埋もれてしまい、密着力は向上するものの、空気層を保持するための光拡散微粒子が表面に充分に存在せず、スペーサーとなりうる性能が低下してしまうためと考えられる。
【0068】
一方、比較例6(表面粗さが1.20μm)では、空気層のつぶれは全くなく、良好な状態が維持できた。しかしながら、拡散層や反射層の剥がれについては、サンプルシートの4隅等で、剥がれてしまう箇所が多く確認された。これは、接合層の表面粗さを1.00μm超に設定すると、粘着剤と反射層との界面にて拡散微粒子が多く存在することにより、密着力が低下することが考えられる。そのため、サンプルシートを高温下に保持して、サンプルシートが反ってしまうと、この反りに粘着剤が追従できなくなってしまう。その結果、粘着剤と反射層との界面、あるいは粘着剤と拡散層との界面で剥がれが生じてしまう。また、圧痕耐性についても、貼合ローラによる押し当てが解除されてから5分経過後には、空気層のつぶれはなくなっているか、もしくは軽減されていることが確認された。
【0069】
このように、上述の実施の形態によれば、拡散層7と反射層5bとが接合層6を介して一体化され、接合層となる粘着剤の表面粗さが0.01μm以上、1.00μm以下に設定されている構成とした。
この構成によれば、接合層6となる粘着剤の表面粗さを0.01μm以上に設定することにより、空気層5aのつぶれ防止が可能になり、1.00μm以下に設定することにより接合層6の剥がれ防止が可能になる。そのため、空気層5aのつぶれ防止と、接合層6の剥がれ防止とを両立することができ、空気層5aの形状のばらつきを防ぐことができる。これにより、拡散層7で拡散させた光に対して、所望の屈折効果を得ることができ、レンズ部1に対して大きな入射角で入射する光を集光することができる。したがって、光の利用効率に優れ、しかも輝度ムラを抑制することができる。
【0070】
さらに、光学シート21を高温下に曝した際でも、接合層6の密着性を維持して、拡散層7や反射層5bの剥がれを抑制することができる。そのため、高品質な光学シート21を提供することができる。
【0071】
また、上述の接合層6となる粘着剤の粘着力が100gf/inch以上500gf/inch以下に設定されていることが好ましい。この密着力は接合層の硬さとトレードオフの関係にあり、あまり高すぎると空気層5aのつぶれを抑制できず、あまり低すぎても、密着力を維持できなくなるからである。
【0072】
以下に、粘着力測定方法を示す。
上述の接合層を構成する粘着剤を線圧3.2kgf/cm、速度3m/minにて厚さ20±1μmで表面処理をしていないPETフィルムに転写する。その後24時間養生し、線圧5.6kgf/cm、速度3m/minにて厚さ2mmのポリスチレン板に貼合する。この際、ポリスチレン板のRaは0.01μm以上1μm以下とする。
図4に示すように、上述したサンプルに1inchの切り目を入れ、1000mm/minの速度にて180度に引き剥がす。このとき引き剥がし長さは100mm以上とする。また、ポリスチレン板に貼合後、4時間以内に測定する。
【0073】
各実施例のサンプルシートに用いた粘着剤の組成は以下の通りである。なお、各サンプルシートにおける粘着剤の酸価aは、全て33.5に設定した。また光拡散微粒子の分解温度は、200℃に設定した。各実施例の比較対象として、接合層6の粘着力は100gf/inchより低い値と高い値の粘着剤により貼り合わせたサンプルシートを用いた。
【0074】
<実施例8>
粘着剤の酸価a:33.5
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:有
光拡散微粒子の分解温度:200℃
上述の接合層を構成する粘着剤の粘着力:100gf/inch
<実施例9>
粘着剤の酸価a:33.5
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:有
光拡散微粒子の分解温度:200℃
上述の接合層となる粘着剤の粘着力:500gf/inch
<比較例7>
粘着剤の酸価a:33.5
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:有
光拡散微粒子の分解温度:200℃
上述の接合層となる粘着剤の粘着力:70gf/inch
<比較例8>
粘着剤の酸価a:33.5
粘着剤中の光拡散微粒子の有無:有
光拡散微粒子の分解温度:200℃
上述の接合層となる粘着剤の粘着力:700gf/inch
【0075】
【表4】

【0076】
表4に示すように、比較例7(粘着力70gf/inch)では、空気層のつぶれは全くなく、良好な状態が維持できた。しかしながら、拡散層や反射層の剥がれについては、サンプルシートの4隅等で、剥がれてしまう箇所が多く確認された。これは、接合層の粘着剤の硬さと粘着力はトレードオフの関係にあり、粘着力を100gf/inch以下に設定すると、粘着剤は硬くなり、粘着剤の流動性は抑えられ空気層を保持する能力は高まるものの、密着力は低下することが考えられる。そのため、サンプルシートを高温下に保持して、サンプルシートが反ってしまうと、この反りに粘着剤が追従できなくなってしまう。その結果、粘着剤と反射層との界面、あるいは粘着剤と拡散層との界面で剥がれが生じてしまう。また、圧痕耐性についても、貼合ローラによる押し当てが解除されてから5分経過後には、空気層のつぶれはなくなっているか、もしくは軽減されていることが確認された。
一方、比較例8(粘着力700gf/inch)では、剥がれについては良好な状態を維持することができた。しかしながら、空気層のつぶれについては、サンプルシートの4隅やレンズ部のレンズ面の背面側等で、空気層がつぶれてしまう箇所が多く確認された。また、圧痕耐性についても、貼合ロールによる押し当てが解除されてから5分経過後であっても、空気層のつぶれが残存していた。これは上述の理由で説明がつく。
【0077】
このように、上述の実施の形態によれば、拡散層7と反射層5bとが接合層6を介して一体化され、接合層となる粘着剤の粘着力が100gf/inch以上、500gf/inch以下に設定されている構成とした。
この構成によれば、接合層6となる粘着剤の粘着力を100gf/inch以上に設定することにより、空気層5aのつぶれ防止が可能になり、500gf/inch以下に設定することにより接合層6の剥がれ防止が可能になる。そのため、空気層5aのつぶれ防止と、接合層6の剥がれ防止とを両立することができ、空気層5aの形状のばらつきを防ぐことができる。これにより、拡散層7で拡散させた光に対して、所望の屈折効果を得ることができ、レンズ部1に対して大きな入射角で入射する光を集光することができる。したがって、光の利用効率に優れ、しかも輝度ムラを抑制することができる。
【0078】
このように、空気層5aのつぶれ防止と、接合層6の剥がれ防止とを両立し、光の利用効率に優れ、しかも輝度ムラを抑制できる光学シート21を備えているため、高性能なバックライトユニット23およびディスプレイ装置100を提供することができる。
【0079】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述した実施形態では、ディスプレイ装置として、特にカラー表示の構成について説明しなかったが、液晶表示部と光学シートとの間などにカラーフィルタを設けるといった周知の構成を付加すれば、カラー表示を行うディスプレイ装置にも適用できることは言うまでもない。
また、本発明による光学シートは、レンチキュラーレンズシートに限定されることなく、プリズムシートやその他の単位レンズをアレイ状に配列したものに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施形態におけるディスプレイ装置の概略構成を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の実施形態における環境試験に用いたサンプルシートの平面図であり、環境試験の評価基準を説明する説明図である。
【図3】光学シートの透過光の光強度分布を示すグラフである。
【図4】粘着力測定法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0081】
1,24…レンズ部(光学素子部) 7…拡散層 5…反射部 5a…空気層(開口部) 5b…反射層 6…接合層 20a…光源 23…バックライトユニット 100…ディスプレイ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を拡散する拡散層と、該拡散層の射出側に配置され、アレイ状の光学素子が配列された光学素子部と、前記拡散層と前記光学素子部との間に形成され、前記光学素子のそれぞれに対する光の入射範囲を規制する開口部を備えた反射部とを有する光学シートにおいて、前記拡散層と前記反射部とが接合層を介して一体化され、前記接合層の構成材料の酸価aが20≦a≦60に設定されていることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
光源からの光を拡散する拡散層と、該拡散層の射出側に配置され、アレイ状の光学素子が配列された光学素子部と、前記拡散層と前記光学素子部との間に形成され、前記光学素子のそれぞれに対する光の入射範囲を規制する開口部を備えた反射部とを有する光学シートにおいて、前記拡散層と前記反射部とが接合層を介して一体化され、
前記反射部と前記接合層の界面において、前記接合層の算術平均粗さRaが0.01μm以上1μm以下に設定されていることを特徴とする光学シート。
【請求項3】
光源からの光を拡散する拡散層と、該拡散層の射出側に配置され、アレイ状の光学素子が配列された光学素子部と、前記拡散層と前記光学素子部との間に形成され、前記光学素子のそれぞれに対する光の入射範囲を規制する開口部を備えた反射部とを有する光学シートにおいて、前記拡散層と前記反射部とが接合層を介して一体化され、
前記接合層の構成材料の粘着力が100gf/inch以上500gf/inch以下に設定されていることを特徴とする光学シート。
【請求項4】
前記接合層の構成材料は、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ビニル系の樹脂材料のうち少なくとも何れかからなり、前記接合層の厚みbが5μm≦b≦50μmに設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シート。
【請求項5】
前記接合層の構成材料は、光拡散微粒子を含有し、該光拡散微粒子の分解温度が200℃以上に設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学シート。
【請求項6】
前記光拡散微粒子の粒度が、30μm以下に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の光学シート。
【請求項7】
前記光拡散微粒子は、10%以上30%以下の重量割合で前記接合層の構成材料に混合されていることを特徴とする請求項5または6に記載の光学シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の光学シートを備えていることを特徴とするバックライトユニット。
【請求項9】
請求項8に記載のバックライトユニットを備えていることを特徴とするディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−265577(P2009−265577A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118423(P2008−118423)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】