説明

光学シート、及びそれを用いた画像表示装置

【課題】コントラスト向上層を備えた光学シートを粘着剤層でディスプレイパネルに貼り付けた後に貼り直すときにコンラトスト向上層部分が分断しない様なリワーク性を改善した光学シートと、それを備えた画像表示装置を提供する。
【解決手段】
光学シート10は基材層1上にコントラスト向上層2を備え、コントラスト向上層は光透過部3と光透過部間に配列された光吸収部4と、基材層と光吸収部及び光透過部との間に光透過部と同一材料のランド部5を有し、Y={(光吸収部の基材側の幅Wb×ランド部の厚みTr)/(光吸収部の配列ピッチP×コントラスト向上層の厚みTc)}×100〔%〕を、2.0%以上とする。コントラスト向上層上に粘着剤層を有するのが好ましく、そのガラス板への粘着力は1N/25mm以上且つ20N/25mm未満が好ましい。画像表示装置はこの光学シートを備えたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイパネルの観察者側に配置して、明室環境下での外光による画像のコントラスト低下を抑制するコントラスト向上層を備えた光学シートと、この光学シートを用いた画像表示装置に関する。更に詳しくは、ディスプレイパネルに貼り付け後のリワーク性を改善した光学シートと、それを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラズマディスプレイパネル、液晶パネル、EL(電界発光)パネル等の種々の平面表示型のディスプレイパネルが普及し、これらディスプレイパネルを用いた、テレビジョン、電子看板、モニターディスプレイなどの各種画像表示装置が実用化されている。そして、明室環境下で表示画像を観察するときに、蛍光灯や太陽光等の外光がディスプレイパネルに入射して、明室下での画像コントラスト、つまり、明室コントラストが低下しない様に、ディスプレイパネルの前面に配置する光学シートとして、コントラスト向上シートが知られている。コントラスト向上シートとしては、透明な樹脂層中に、暗色で断面が楔形状等の柱状物からなる光吸収部を、ストライプ状にシート面方向に配列した光制御構造が知られている(特許文献1)。
この様な光制御構造を有するコントラスト向上層は、配列した暗色の光吸収部の間の透明部で、ディスプレイからの画像光を観察者の方向に通す一方、光吸収部で主としてディスプレイ画面に斜めに入り込む外光を吸収することで、明室コントラストを向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−26860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ディスプレイの前面に配置する光学シートは、間に空気層を介して配置すると、空気層との界面での光反射による輝度低下等の画質が低下する。この為、光学シートは、ディスプレイパネルの前面ガラス基板等に、空気層は介さずに、粘着剤層など樹脂層を介して直接に貼り付けるのが好まれる。
しかしながら、粘着剤層で前面ガラス基板等に貼り付けるとき、貼り付け位置がずれたり、気泡が混入したりして、貼り付け不良が発生することがある。そこで、貼り付けた光学シートを剥がして、光学シートを貼り直す「リワーク」が行われている。しかし、一度貼り付けた光学シートを剥がすときに、粘着剤層の一部が前面ガラス基板等の被着体側に残る「糊残り」が発生することがある。そして、コントラスト向上層を有する光学シートの場合は、ストライプ状に延びている光吸収部の延在方向に向かって光学シートを剥がすときは、糊残りの問題が生じなければ、リワーク時の問題は回避できる。
【0005】
しかし、図5の断面図で示す様に、コントラスト向上層21を有する従来の光学シート20では、ストライプ状に延びている光吸収部24の配列方向に向かって剥がすときに、光吸収部24の所で、コントラスト向上層21が断裂することがある。また、コントラスト向上層21の断裂が生じて、断裂したコントラスト向上層21が被着体7側に残れば、当然に粘着剤層6も被着体7側に残るので、糊残りが発生していると言える。また、コントラスト向上層21が完全には断裂しないまでも、被着体7側から粘着剤層6と共に剥がれれば、糊残りは生じない。しかし、一旦、コントラスト向上層21が断裂して傷付いた光学シート20は不良品となり、再度貼り直すことは出来ない。
この様に、従来のコントラスト向上層を有する光学シート20の貼り直しの場合には、一旦貼り付けた光学シート20を剥がすときに、綺麗に剥がれずリワーク性が悪いという問題があった。
【0006】
すなわち、本発明の課題は、ディスプレイパネルの観察者側に配置するコントラスト向上層を備えた光学シートについて、リワーク性を改善することである。また、この様なリワーク性の改善された光学シートを備えた画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明では、次の様な構成の、光学シート及びそれを用いた画像表示装置とした。
(1)ディスプレイパネルより観察者側に配置され、該ディスプレイパネルから入射した光を制御して前記観察者側に出射する光学シートにおいて、
基材層と、該基材層に積層されたコントラスト向上層とを備え、
該コントラスト向上層は、光を透過可能にシート面に沿って配列された光透過部と、該光透過部間に光を吸収可能に配列された光吸収部と、基材層と光吸収部及び光透過部との間に前記光透過部と同一材料からなり前記光透過部に接続したランド部を有し、
Y={(光吸収部の基材層側の幅Wb×ランド部の厚みTr)/(光吸収部の配列ピッチP×コントラスト向上層の厚みTc)}×100〔%〕が、2.0%以上である、光学シート。
【0008】
(2)上記コントラスト向上層の上記基材層側とは反対側の面に、該コントラスト向上層に接して粘着剤層が形成されている、上記(1)の光学シート。
(3)上記粘着剤層の粘着力(JIS Z 0237に準拠して、ガラス板に接着後の剥離速度300mm/minでの180°剥離)が、1N/25mm以上、20N/25mm未満である、上記(2)の光学シート。
(4)上記粘着剤層は、近赤外線吸収、ネオン光吸収、色補正のいずれか1以上の機能を有する光学機能層を兼用する、上記(2)又は(3)の記載の光学シート。
(5)前記光吸収部の基材層と反対側は、基材層側に向かって凹となる窪みを有しており、その深さは、0.5μm以上、6.0μm未満である、上記(1)〜(4)のいずれかの光学シート。
【0009】
(6)プラズマディスプレイパネルと、該プラズマディスプレイパネルより観察者側に配置された上記(2)〜(5)のいずれかの光学シートであってコントラスト向上層に接して粘着剤層が形成されている光学シートとを備え、該光学シートはコントラスト向上層に対して基材層側が観察者側に向けられている、画像表示装置。
【発明の効果】
【0010】
(1)本発明による光学シートによれば、リワーク性が改善され、一旦貼り付けた光学シートを剥がすときのコントラスト向上層の断裂が防げるので、貼り直しが容易となる。その結果、製品歩留まりが向上する。
(2)特に、リワークできる様に粘着剤層の粘着力が前記特定範囲の様な弱粘着力とした光学シートに於いて、リワーク性の改善効果が大きい。
(3)本発明による画像表示装置によれば、観察者側に配置する光学シートとして前記光学シートを用いているので、上記した効果が得られる。その結果、リワーク性の改善により製品歩留まりが向上した画像表示装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による光学シートの一形態の例示と、各寸法の定義を説明する断面図。-
【図2】本発明による光学シートの別の形態例(粘着剤層あり)を示す断面図。
【図3】本発明による画像表示装置の一形態例を示す断面図。
【図4】光吸収部の他の形状例の幾つかを例示する断面図。
【図5】従来の光学シートで、コントラスト向上層によってリワーク性が悪い状況を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0013】
〔A〕光学シート
先ず、図1は、本発明による光学シートの一実施形態を示す断面図である。同図に示す光学シート10は、基材層1と、該基材層1に接して積層されたコントラスト向上層2とを備える。また、コントラスト向上層2は、光を透過可能にシート面に沿って配列された光透過部3と、該光透過部3間に光を吸収可能に配列された光吸収部4と、基材層1と、該光吸収部4及び前記光透過部3との間に、該光透過部3と同一材料からなり該光透過部3に接続したランド部5とを有する。なお、基材層1、光透過部3及びランド部5は全て透明な材料から構成される。
【0014】
さらに、下記式[1]で表されるYの値〔%〕を2.0%以上とすることによって、リワーク性が改善する。
【0015】
【数1】

【0016】
上記式[1]中、光吸収部4の基材層1側の幅Wb、ランド部5の厚みTr、光吸収部4の配列ピッチP、及びコントラスト向上層2の厚みTcの意味は、図1に示すとおりである。また、上記式[1]中の分母は、図1で右下がりの斜線でハッチングした領域Aの断面積に該当する。また、上記式[1]中の分子は、図1で左下りの斜線でハッチングした領域Bの断面積に該当する。なお、図では判り易くする為に、領域A及び領域Bは、各々四隅を丸めた四角形で示してある。なお、幅Wbは、光吸収部4の配列方向に平行な方向での寸法である。
つまり、領域A及び領域Bの断面積に注目して、この関係を特定の範囲とすることによって、理由は定かではないが、リワーク性が改善されることを見出したのが、本発明である。
【0017】
Y値が2%以上である場合にリワーク性が良くなるが、Y値が大きすぎると、リワーク性とは別の問題が発生し易くなる。すなわち、Y値が大きくなる様な厚みの厚いランド部5の形状にする為には、光透過部4及びランド部5を、シリンダ状(円筒状)の成形型を用いた2P法で同時に連続的に成形するときに、成形型の型面に対し、帯状シートとして供給する基材層1を型面に対してギャップをあけて供給する必要がある。そうすると今度は、成形型に樹脂材料を挟んで帯状シート(基材層1)を押し付ける成型ニップの圧力をかけることができず、ニップロールの厚みムラや、塗工樹脂の膜厚ムラの影響が大きくなってしまい、その結果、ランド部5の厚みTrの安定性が低下し、該厚みTrのバラツキが大きくなり、外観上、スジ状のムラが発生し、光学性能がバラツキだす。この為、Y値は12%以下とするのが好ましい。従って、Y値は2〜12%とするのが良い。
ただ、Y値の下限は、リワーク性をより安定して得られる様に様にする点で、より好ましくは4%以上が望ましい。
【0018】
なお、リワーク性とは、粘着剤層によって被着体に光学シートを貼り付けた後の、貼り直す時の問題である。従って、リワーク性には粘着剤層の関与が必須ではあるが、剥がす時の問題であるから、その粘着剤層の由来が光学シートであるか否かは問題ではない。ただ、通常は光学シートは粘着剤層を備えていることが多い。従って、本光学シートに於いても、図2に示す別の形態例の光学シート10の様に、粘着剤層6を備えていても良い。但し、その場合、本リワーク性の改善に効果的である構成は、図2に示す様に、粘着剤層6がコントラスト向上層2に接して積層されている形態である。
【0019】
以下、光学シートの構成層について、更に詳述する。
【0020】
《基材層》
基材層1は、透明な基材であり、また、貼り直し可能な程度に可撓性を備えた基材である。基材層1としては、この様な透明性、及び可撓性を備えた材料であれば、特に制限はなく公知のものを適宜採用できる。この様な基材層1としては、樹脂フィルムが代表的であり、その樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、或いはアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等である。これら樹脂は、フィルム、シート、板の形態で使用される。なお、「フィルム」、「シート」、「板」は通常は厚みにより大まかに区別されるが、本発明では単に呼称上の違いのみであり、その意味の区別は特にない。なお、基材層1の厚みは、例えば25〜300μmである。
【0021】
《コントラスト向上層》
コントラスト向上層2は、光透過部3、光吸収部4、及びランド部5とを有する。このうち光透過部3及びランド部5は同一材料から構成され、また通常は一体的に同時に形成され、従って通常は両者の界面での屈折率差は存在しない。従って、ランド部5と光透過部3とは、通常は、切断面を観察すると両者は同一の外観を示し、それらが占める位置によって区別されるのみである。ランド部5は、多少の曖昧性はあるが、平易に言えば、光透過部3よりも基材層1側の領域部分と、光吸収部4よりも基材層1側の領域部分である。ランド部5を、より厳密に言えば、コントラスト向上層2の厚み方向(図1では、光学シート10のシート面に立てた法線Nの方向)において、(光吸収部4の基材層1側の部分が曲面の場合もあり得る為)光吸収部4の基材層1側に最も近い部分での基材層1との境界に対して、その境界と同じ厚み水準よりも基材層1側のコントラスト向上層2の全ての領域である。つまり、光透過部3の最も基材層1側の厚み水準は、光吸収部4の最も基材層1側の厚み水準に等しい。言い換えると、ランド部5は、光透過部3が光吸収部4よりも基材層1側の部分の層部分まで拡張された領域部分である。
従って、従来は、このランド部5は光透過部4の一部として捉えられてきた部分である。しかし、本発明では、あえて、このランド部5を従来の捉え方の光透過部の様に、該光透過部の一部であるとせずに、区別して捉えることによって、リワーク性の改善に繋がることを見出した。
なお、本コントラスト向上層2の各構成要素は、材料的には特に制限はなく公知のものを適宜採用できる。
【0022】
(光透過部)
光透過部3は、光学シート10のシート面の法線N方向に於いて、上記した様に、基材層1側の境界を、光吸収部4の基材層1側の基材層1に最も近い部分の境界と同じくする。一方、逆側の光透過部3の境界は、図1の実施形態の場合では光吸収部4の(同図では粘着剤層がないので空気層との)境界と同じくする。そして、前記シート面に沿った方向に於いては、光透過部3と光吸収部4とは、交互に配列される。
また、光透過部3は、通常、コントラスト向上層2の前記シート面に投影した面積の主要(50%超過)な部分を占める。
なお、光吸収部4の基材層1側とは反対側の境界は、光透過部3の基材層1側とは反対側の境界よりも基材層1側となることもあり得る。
【0023】
光透過部3は透明材料から構成すれば良く、該透明材料としては、可撓性を持たせることが可能で、且つ形成も容易な点等から、好ましくは樹脂材料を用いる。該樹脂材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂でも良いが、耐溶剤性があり固化が迅速などの点で、好ましくは、硬化性樹脂、それも、紫外線や電子線で硬化する電離放射線硬化性樹脂を用いるのが良い。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系などの樹脂が挙げられる。なお、光透過部3の厚みは、例えば10〜200μm程度である。
【0024】
この様に、光透過部3の厚みは通常基材層1と同程度かそれ以上などと、例えばせいぜい数十μm程度のハードコート層等に対して比較的厚い。このため、電離放射線硬化性樹脂など硬化性樹脂を用いると、形成時の硬化収縮などによる内部応力の発生によって、光学シートがカールし易くなる。この点で、光透過部3に用いる樹脂は、硬化性樹脂であっても応力を分散できる柔軟性を有するものが好ましく、例えば、電離放射線硬化性樹脂の場合で言えば、アクリレート系樹脂ではウレタン結合を有するウレタンアクリレート系樹脂が好ましい樹脂の一種である。
【0025】
(ランド部)
ランド部5は、上記した様に、光透過部3と同一材料から構成され、通常は一体的に同時に形成され、両者の界面での屈折率差は存在しない。ランド部5は、コントラスト向上層2の厚み方向において、光吸収部4の基材層1側に最も近い部分での基材層1との境界に対して、その境界と同じ厚み水準よりも基材層1側のコントラスト向上層2の全ての領域である。つまり、ランド部5は、光透過部3が光吸収部4よりも基材層1側の部分の層部分まで拡張された領域部分である。
【0026】
(光吸収部)
光吸収部4は、本実施形態では、その主切断面形状が、基材層1側に近づくほど先細りの楔形状の柱状の光学要素である。光吸収部4は、その延在方向を互いに平行にして、光学シートのシート面に平行な方向で且つ該延在方向と直交する方向に多数配列している。光吸収部4の延在方向は、同図で紙面に垂直方向であり直線状に延在している。また、本実施形態に於ける該光吸収部4の主切断面形状の楔形状は台形形状であり、狭幅の上底を基材層1側に向けた配置でもある。また、該楔形状は台形であるのでその両斜辺は夫々一本の直線から構成される。
【0027】
なお、「主切断面形状」とは、光学シート10のシート面(乃至はコントラスト向上層2の層面)に立てた法線Nを含む断面である「縦断面」のうち、柱状の光吸収部4の延在方向に直交する断面として定義される「主切断面」に於ける断面形状のことを意味する。
【0028】
なお、柱状の光吸収部4の延在方向は、外光は通常ディスプレイパネル観察時にその鉛直方向からの成分光が多いため、ディスプレイパネルの水平方向とすることが多い。ただし、ディスプレイパネルの配列画素とのモアレ発生を防ぐ為に水平方向から傾斜させることがある。
【0029】
従って、仮に光吸収部4の延在方向が水平方向であった場合、コントラスト向上層2が有るが故にリワーク性が問題視される方向は、一旦貼り付けた後の光学シートを剥がす方向が、特に鉛直方向である。ただ、通常、剥がし始の部位は、四隅からが剥がし易いので、例えば水平と垂直の中間の45度など斜め方向に剥がす場合でも、剥がす方向を水平及び垂直のベクトル成分に分解して考えれば、鉛直方向成分が半分存在するので、やはりリワーク性が問題視される。
【0030】
なお、光吸収部4の大きさとその配列ピッチPは、リワーク性の観点から、上記した式[1]で表されるY値を2%以上とするのが好ましい。Y値は2%以上で且つ前記した様にランド部5の厚みTrのバラツキ抑制の観点から12%以下が好ましい。従って、Y値は、2〜12%の範囲内で、用途により要求される光学特性などを考慮して適宜設定すると良い。例えば、広幅の方の幅(図1の形態ではWa)は5〜50μm、狭幅の方の幅(図1の形態ではWb)は2〜50μm、高さはHは10〜200μm、斜面傾斜角は0〜15°、配列ピッチPは10〜200μmの範囲に設定する。
【0031】
なお、光吸収部4は、光吸収性の暗色材料で形成することができる。暗色材料としては有機材料、無機材料、いずれでも良い。例えば、該暗色材料には、カーボンブラックやアニリンブラック等の光吸収性色材を樹脂バインダに含有させた、塗料(乃至はインキ)等の樹脂組成物を用いる。なお、暗色の代表色は黒色だが、画像表示色に悪影響しなければ、低明度の茶褐色、紺色、臙脂色、深緑色等の有彩色もあり得る。
なお、樹脂バインダとしては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂でも良いが、固化が迅速などの点で、好ましくは、硬化性樹脂、それも、紫外線や電子線で硬化する電離放射線硬化性樹脂を用いるのが良い。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系などの樹脂が挙げられる。
また、前記光透過部3と同様に、光学シートのカール防止などの点で、光吸収部4も柔軟性を有する樹脂を用いるのが良い。柔軟性を有する樹脂としては、前記光透過部3と同様である。
【0032】
また、光吸収部4の樹脂は、光吸収部4と光透過部3との密着性の観点からは、光透過部3と同種の樹脂を用いるのが好ましい。例えば、光透過部3にアクリレート系の電離放射線硬化性樹脂を用いるのであれば、同じアクリレート系の電離放射線硬化性樹脂を用いるのが好ましい。
【0033】
(光透過部、光吸収部、及びランド部の形成法)
なお、光透過部3、光吸収部4、及びランド部5は、従来公知のコントラスト向上層2の形成法で形成することができる。
例えば、加熱された成形型を熱可塑性樹脂層に押圧する熱プレス法、熱可塑性樹脂組成物を成形型内に注入して固化させるキャスティング法、射出成形法、電離放射線硬化型樹脂組成物を成形型上(内)に注入して電離放射線で硬化させる2P法(フォトポリマー法)等を利用できる。これらの成形法の中でも、2P法は生産性に優れる点でより好ましい。2P法では、シリンダ状(円筒状)の成形型を使用して、帯状シートなどを供給しながら連続的に成形できる。帯状シートとして基材層1を用いれば、基材層1上に積層された、ランド部5、及びランド部5上に該ランド部5と一体的に積層された光透過部3と、該光透過部3側の面に、光吸収部4とは逆凹凸形状の凹条部が形成できる。この凹条部の内部に、電離放射線硬化型樹脂組成物などの暗色材料を充填し固化させれば光吸収部4を形成できる。
【0034】
従って、コントラスト向上層2は、従来公知のコントラスト向上層の於いて、式[1]で表されるY値を、所定の値にする様な、寸法関係とする以外は、従来と同様な材料、方法で形成することができる。
【0035】
(コントラスト向上層の材料等とリワーク性との関係)
なお、光吸収部4と光透過部3とに、例えば同種のアクリレート系の電離放射線硬化性樹脂を用いるのが、これらの密着性の点では好ましいことは既に述べた。しかし、これらの形成法は上記した様に、光透過部3を先に形成してから、例えば、光透過部3を先に電離放射線照射で硬化させてから、その凹条部の内部に光吸収部4となる暗色材料を充填して電離放射線照射で硬化させるが普通である。また、一般的に、電離放射線硬化性樹脂を硬化させた後の硬化物層の表面は密着性が高いとは言えない。従って、電離放射線硬化性樹脂の硬化物の層同士を重ねるときは、それになり注意する必要がある。但し、コントラスト向上層2中に於ける光吸収部4は、光透過部3の凹条部の内部に埋没する様な形で存在し、両側の側面で接する光透過部3によって挟まれた状態となっている。この為、光学シートの製造過程及び貼り付け後は、両側の光透過部3に挟まれた光吸収部4がこぼれ落ちる様なことは生じ難く、平板状の層を重ねる場合ほどには、密着性は必要がないと考えられてきた。
【0036】
しかし、図5で例示した様に、一度貼り付けた光学シート20を剥がすときは、被着体7(同図ではプラズマディスプレイパネル7)から離れ始める部分では、光学シート20の形状変形が最も大きいと考えられ、コントラスト向上層2が変形し湾曲しその曲率が最も大きくなる(曲率半径で言えば最も小さくなる)共に、引き剥がす応力もこの部分に集中すると考えられる。すると、コントラスト向上層2の内部において、光透過部3間に存在し粘着剤層6側に露出(粘着剤層6が存在しないと仮定しての露出である)する光吸収部4に対して、該光吸収部4の両側側面での接触部分が離れる様に変形する。そして、これに持ち耐えられずに、光吸収部4の側面での光透過部3との接着部分が離れて、光吸収部4の両側で断層の口が開く様にコントラスト向上層2としての分断が始まるのではと考えられる。
【0037】
しかも、先に説明した様に、光透過部3は光学シート10のカール防止の観点から、どちらかと言うと柔軟な樹脂を用いることが好ましいので、この様な柔軟な樹脂を用いた場合には、光吸収部4と光透過部3との境界に該当する部分に断層の口がより開く状況となる。
更に、粘着剤層6の粘着力も、リワーク作業を考慮して弱粘着力としてある。一方、光透過部3及び光吸収部4を硬化性樹脂、それも電離放射線硬化性樹脂の硬化物層として形成すると、硬化物層となった後の表面は一般に密着性に注意する必要があることは既に述べた。従って、コントラスト向上層2の粘着剤層6側の表面の密着性は、基材層1の面に比べれば弱いのが普通である。つまり、被着体7に貼り付けられた後の、粘着剤層6の上下両側界面は、どちらも強い粘着力で接着しているとは限らない。
リワーク作業を考慮した弱粘着の粘着剤層6と、柔軟性や製造の容易性等の点で電離放射線樹脂の硬化物層として形成された、光透過部3、光吸収部4及びランド部5を有するコントラスト向上層2の強固な密着力を期待できない表面との両方が原因して、貼り付け後の粘着剤層6は、被着体7側とコントラスト向上層2側のどちらにも移行して剥がれ易い状況になり易い。
この為、粘着剤層6が被着体7側に残り易い状況が生じて、コントラスト向上層2の分断発生も影響して、糊残りが発生し易くなる。
【0038】
ところが、本発明では、この様なリワーク性の低下を防ぐことができる。この様な発明に効果が特に有効なのは、以上説明した様に、粘着剤層6が次に述べる様な弱粘着である場合、さらに、コントラスト向上層2の各部を電離放射線硬化性樹脂を硬化させて形成し、しかも柔軟性の為に、ウレタンアクリレート系樹脂の柔軟性を付与できる樹脂を用い場合である。
なお、ここでの柔軟性とは、ゴムの様に柔らかいものも含むが、基材層1として一般的な、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムよりも軟らかい事を意味する。これを、圧縮弾性率で言えば、概ね1000MPa以下の事を意味する。なお、圧縮弾性率は市販の弾性率測定装置で測定した値で良い。
【0039】
《粘着剤層》
粘着剤層6は、透明で、貼り合わせ後でも剥がせるものであれば特に限定はない。つまり、再剥離性の有る、或いはリワーク作業が可能な粘着剤層である。この様な、再剥離性のある粘着剤層とするには、通常の(貼り合せた後では剥がし難い)粘着剤層よりも、粘着力が小さい弱粘着力の粘着剤を使用すると良い。
【0040】
この為には、粘着力を、JIS Z 0237に準拠して、ガラス板への接着後の剥離速度300mm/min(=5mm/s)での180°剥離による測定で、1N/25mm以上、且つ20N/25mm未満とするのが好ましい。更に、粘着力を好ましくは1N/25mm以上、且つ10N/25mm未満、より好ましくは3N/25mm以上、且つ7N/25mm未満とするのが望ましい。粘着力が小さ過ぎると不意に剥がれ易くなり、逆に粘着力が強すぎると、一度貼り合せた後は剥がし難くなるので、好ましくない。
【0041】
なお、上記JIS規格では、測定時の被着体として(粘着テープの場合はテープ背面等もあるが)ステレンレス板を挙げている。しかし、光学シートはプラズマディスプレイパネルなど通常ガラス板に貼り付けることが多いので、ここでもより実際に近いガラス板を採用してあり、上記粘着力とは対ガラス板の粘着力である。
なお、測定に使用したガラス板はフロートガラスであり、より詳細には接着面をフロート時のトップ面(上側)とした。そして、エタノールで表面を拭いたガラス板のトップ面に質量2kgfの圧着ローラにて貼り合わせた後、24〜36時間放置後、引張試験機にて上記条件にて剥離強さ(対ガラス板の粘着力)を測定した。
【0042】
この様な適度な粘着力を有する粘着剤層とする為の粘着剤としては、公知の粘着剤を適宜使用すれば良い。例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤などである。
なお、粘着剤層の厚みは、通常15〜50μm程度であるが、薄すぎると粘着力が弱くなり、厚過ぎるとコスト高となるので、より好ましくは20〜30μm程度である。
【0043】
《その他の構成層》
光学シート10は、上記した各層以外に、その他の構成層を含んでいても良い。例えば、次に挙げる機能層である。
【0044】
(機能層)
機能層は、図示はしないが、従来公知の、ディスプレイパネル用としての光学シートに於ける各種機能層を適宜採用できる。この様な機能層は、大別すると光学機能を担う光学機能層と、光学機能以外の機能を担う非光学機能層がある。光学機能層の例を挙げれば、近赤外線を吸収する近赤外線吸収層、紫外線を吸収する紫外線吸収層、或いは、視覚上の効果が得られる、プラズマディスプレイパネル本体からのネオン光を吸収するネオン光吸収層、表示画像を好みの色調に補正する色補正機能などの、所定の波長の光の透過を抑制し残りの所定の波長の光は透過させる機能を有する波長フィルタ層である特定光透過層、通常最外層に設けられる反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)などがある。
また、非光学機能層の例を挙げれば、ディスプレイパネルからの電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽層、表面を保護する表面保護層やハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、2層間の物質移動を防ぐバリア層、2層間を密着させる接着剤層(含む粘着剤層)などがある。
なお、光学機能層及び非光学機能層の夫々の各層は単層で機能を兼用する事もあり、光学機能層と非光学機能層間で兼用する事もある。また、近赤外線吸収層、紫外線吸収層、ネオン光吸収層、特定光透過層等は、基材層1や粘着剤層6、或いはコントラスト向上層2に於ける光透過部3やランド部5と兼用させることもできる。
また、機能層の位置は、例えば、コントラスト向上層2の基材層1とは反対側、或いは基材層1のコントラスト向上層2とは反対側、或いはこれらの両方、いずれでも良い。また、機能層の位置は、基材層1とコントラスト向上層2との間であっても良い。
【0045】
また、図2の様に粘着剤層6を有する場合、通常、その表面を使用時まで一時的に保護する離型フィルムが積層される。離型フィルムには、表面をシリコーン等で離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム等の公知のものが使用できる。
【0046】
〔B〕画像表示装置
本発明による画像表示装置は、図3の実施形態例で示す画像表示装置30の様に、上記の様な光学シート10を、プラズマディスプレイパネル7の観察者V側に備える表示装置である。なお、その際、該光学シート10は、そのコントラスト向上層2に対して基材層1側が観察者V側に向けて配置される。
【0047】
また、光学シート10はコントラスト向上層2に接して粘着剤層6を備えており、同図では、光学シート10が該粘着剤層6で直接にプラズマディスプレイパネル7に貼り付けられた構成となる。
【0048】
なお、光学シート10の被着体は、プラズマディスプレイパネル7自体でなくてもよく、例えば、プラズマディスプレイパネル7の観察者側に、間に空気層を介して又は介さずに配置するガラス板や樹脂板等の前面板でもよい。この場合、該前面板よりも光学シート10を観察者側に配置する形態と、逆に、光学シート10を該前面板よりも観察者側に配置する形態とがあり得る。従って、図1の実施形態の光学シート10の様に、光吸収部4が台形など楔形状の場合、狭幅の方(図1の場合では基材層側の幅Wbが対応)を図3の様に観察者V側に向ける形態以外に、この逆側に向ける形態もあり得る。
この様に、光吸収部4の側面(斜面)の傾斜を調整することで、プラズマディスプレイパネル7からの画像光の進行方向を調整して、視野角を調整できる。また、外光の吸収具合も調整できる。
【0049】
なお、本画像表示装置は、プラズマディスプレイパネル7、光学フィルタ10以外に、ディスプレイ駆動回路、該駆動回路とディスプレイパネルとを接続する配線、これらを一体化してパネルモジュール化するシャーシ乃至はフレーム、さらに、画像表示装置の用途に応じて、例えば、テレビジョン受像機の場合はチューナ等の各種入出力部品など、公知の各種部品、これらを収納する筐体(キャビネット)等を備えることができる。これらのその他の構成要素は、特に制限はなく、用途に応じたものとなる。
【0050】
この様な構成の画像表示装置とすることによって、前記した光学シートに基づく効果が得られる。その結果、リワーク性の改善により、製品歩留まりが向上した画像表示装置となる。
【0051】
〔C〕変形形態
また、本発明による、光学シート10、及びそれを用いた画像表示装置30は、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で、上記説明した以外のその他の層や部材、部品等を含んでも良い。また、上記説明した構成要素についても、上記以外の変形形態としても良い。
【0052】
例えば、光吸収部4の主切断面形状は、図1例示の実施形態では四辺が直線からなる台形形状であり、楔形状でもあったが、その他の形状でも良い。例えば、図4(a)で示す様に、斜面が法線Nに平行で光学シート面に垂直となる四角形状でも良い。つまり、光吸収部4の基材層1側の部分4bの幅Wbと、それとは反対側の部分4aの幅Waとが等しい形状である。また、主切断面形状が、三角形形状(含む二等辺三角形形状)、五角形形状、六角形形状等でも良い。或いは、台形や三角形等の両方又は片方の斜辺が、折れ線化又は曲線化した形状(光吸収部4の外側に向かって凸形状或いは凹形状)等でも良い。
【0053】
また、光吸収部4の基材層1側(図面で上側)が図4(b)の様に、光吸収部4の外側に向かって凸形状に尖点のない滑らかな連続曲線であっても良い。この場合、基材層1側の幅Wbは、光吸収部4の頂点(図面で最も上方の部分)で捉えればゼロであるが、形状因子のリワーク性への寄与を考えた場合、同図の様に、頂点部分から或る一定の高さdH分だけ低い水準位置での幅を基材層1側の幅Wbと捉えることができる。なお、該一定の高さdHは5μmで考えれば良い。ちなみに、dH5μmは、光吸収部4の高さHが100μmの場合、その1/20の位置での幅に該当する。
【0054】
以上の様に、光吸収部4の主切断面形状を調整することで、ディスプレイパネルからの画像光の進行方向を調整して視野角を調整したり、外光の各種角度成分に対する光吸収量を調整したりすることができる。
【0055】
また、コントラスト向上層2は明室コントラストの向上効果を有し得るが、この他、画像光を正面方向など視野角を特定の方向に絞って出光することも可能であり、この機能のみに注目すれば、覗き見防止フィルタとしての機能も有し得る。
【0056】
また、図1に例示の実施形態では、光吸収部4の基材層1とは反対側(図面下方)の面は、光透過部3の面Paと同一の水準であったが、光透過部3の面Paに対して、全ての部分で或いは一部の部分で、凹んでいても良いし膨らんでいても良い。
例えば、図4(c)に例示の光吸収部4は、光透過部3との接続部は該光透過部3と同一水準だが、幅方向の中央部が該光透過部3の面Paに対して凹んでいる凹み4cを有する形状例である。
なお、この様な、光吸収部4の基材層1側とは反対側の面を、光透過部3の面Paよりも凹んでいる形状とするには、例えば、次の様にして形成することができる。先ず、光透過部3間に形成した光吸収部4とは逆凹凸形状の凹条部の内部に、溶剤添加等で固化時に体積収縮する様にした電離放射線硬化性樹脂組成物などの暗色材料を、ワイピング法等で充填し固化させれば、固化時に暗色材料が体積収縮して、表面が凹んで露出した光吸収部4が形成できる。なお、凹み4cは、例えば0.5〜6μm程度である。
この様に凹み4cを有する光吸収部4とすることで、当該凹み4c側の面の表面積が増大し、その分、当該凹み4c側での、粘着剤層6(図2参照)等の他層との接触面積が増大して、層間密着力を向上できる。
【0057】
〔D〕用途
本発明による光学シートは、画像表示装置に於ける各種ディスプレイパネルの観察者側に配置される用途に好適に使用される。該ディスプレイパネルは、例えば、プラズマディスプレイパネル、液晶パネル、EL(電界発光)パネルなどであり、なかでもプラズマディスプレイパネルは好適なパネルの一つである。
この様な光学シートを、プラズマディスプレイパネルなどの観察者側に備える画像表示装置は、テレビジョン受像機、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器、デジタルフォトフレーム等の画像表示装置として好適である。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例、比較例及び参考例によって詳述する。
【0059】
《実施例1》
実施例1として、図2の様な粘着剤層付きの光学シート10を次の様にして作製した。
【0060】
(1)円筒形状の成形型の作製
コントラスト向上層2の成形用の成形型を作製した。成形型は、銅メッキが施され、当該銅メッキ部分をダイヤモンドバイトによって光透過部3に対応する溝を切削加工した。切削加工時の溝ピッチは45μmとした。そして、溝は、深さ85μm、溝底幅35μm、成形型表面の溝幅41μmの台形形状である。切削後クロムメッキを施した。
【0061】
(2)光透過部及びランド部形成用の樹脂組成物の調整
ビスフェノールA−エチレンオキシド2モル付加物40.0質量部、及びイソホロンジイソシアネート15.0質量部に、ウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液)0.02質量部を加え、80℃で5時間反応させ、その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.0質量部を加え、80℃で5時間反応させて、電離放射線硬化性のウレタンアクリレート系プレポリマーを得た。当該ウレタンアクリレート系プレポリマー60.0質量部と、電離放射線硬化性モノマーとして、フェノキシエチルアクリレート(分子量192)15.0質量部、及びビスフェノールAのエチレンオキシド4モル付加物のジアクリレート(分子量512)25.0質量と、金型離型剤として、テトラデカノール−エチレンオキシド10モル付加物のリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)0.05質量部と、ステアリルアミンエチレンオキシド15モル付加物0.05質量部、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア(登録商標)184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)3.0質量部と、を混合し、光透過部及びランド部形成用の樹脂組成物を得た。
【0062】
(3)基材層の準備
基材層1としては、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:A4300、東洋紡績株式会社製)を用意した。
【0063】
(4)光透過部の形成
上記(1)で作製した成形型と、ニップロール間に、上記(3)の基材層1を挿入し搬送しつつ、上記(2)の樹脂組成物を基材層1上に供給し、成形型とニップロール間の押圧力により、基材層1と成形型間に該樹脂組成物を充填した。その後、基材層1側から800mJ/cm2の紫外線を照射し該樹脂組成物を硬化させて、次いで、剥離ロールにて成形型から、基材層1と共に基材層1上で硬化した光透過部3及びランド部5を離型し、コントラスト向上層2としての厚み(光透過部3とランド部5との厚み合計)が205μmの中間シート部材を作製した。
【0064】
なお、この中間シート部材の光透過部3及びランド部5の圧縮弾性率を、圧縮式微小硬度計(株式会社フッシャー・インストルメンツ製、FISCHERSCOPE(登録商標) HM2000)を用いて微小圧子に負荷をかけ、これを除荷することによって測定した。このとき、負荷力は100mN、負荷速度は4μm/10秒、保持時間は60秒とした。光透過部の弾性率は800MPaであった。
【0065】
(5)光吸収部形成用の樹脂組成物の調整
電離放射線硬化性プレポリマーとして、オキシラン,2,2’−[(1−メチルエチリデン)ビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビス−,ホモポリマー,ジ−2−プロペノアート20.0質量部と、反応性希釈モノマーとして、2−フェノキシエチル=アクリラート20.0質量部、α−アクリロイル−ω−フェノキシポリ(オキシエチレン)20.0質量部、及び2−{2−[2−(アクリロイルオキシ)(メチル)エトキシ](メチル)エトキシ}(メチル)エチル=アクリラート13.0質量部と、光吸収性色材としてカーボンブラックを25%含有した平均粒径4.0μmのアクリル架橋微粒子(ガンツ化成株式会社製)20.0質量部と、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア(登録商標)184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)7.0質量部と、を混合し、均一化して光吸収部形成用の樹脂組成物を得た。
【0066】
(6)光吸収部の形成
上記(5)で得られた樹脂組成物を、上記(4)で作製した中間シート部材上に供給し、ドクターブレードを用いたワイピング法によって、中間シート部材の光透過部3の表面に形成され略V字形状の溝内に充填するとともに、余分の樹脂組成物を掻き落とした。その後、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して該樹脂組成物を硬化させて光吸収部4を形成して、基材層1上にコントラスト向上層2が形成された中間光学シート部材を得た。
【0067】
(7)粘着剤組成物の調整
ブチルアクリレート80.0質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10.0質量部、アセトアセトキシエチルアクリレート10.0質量部、トリエチレングリコールジメルカプタン10.0質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部およびトルエン100.0質量部を攪拌し、窒素ガス気流中において、80℃で8時間反応させ、トルエンで希釈して、固形分40%のシランカップリング剤溶液を得た。
その後、ブチルアクリレート94.0質量部、アクリル酸5.0質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1.0質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部および酢酸エチル100.0質量部を攪拌させながら、窒素ガス気流中において、70℃で8時間反応させ、酢酸エチルで希釈し、固形分20%の共重合体溶液を得た。
上記共重合体溶液の固形分100.0質量部に対して、前記シランカップリング剤溶液の固形分を0.4質量部、更に、架橋剤としてポリイソシアネート(コロネート(登録商商標)L、日本ポリウレタン工業株式会社製)の固形分を0.2質量部それぞれ加えて混合し、粘着剤組成物を得た。
【0068】
(8)粘着剤層の形成
次に、上記粘着剤組成物を、第1の離型フィルム(商品名:E7007、東洋紡績株式会社製、厚さ38μm)に塗布し乾燥させ、厚さ25μmの粘着剤層を形成し、更に第2の離型フィルム(商品名:E7006、東洋紡績株式会社製、厚さ38μm)を貼合し、ノンキャリア粘着フィルムを形成した。
このノンキャリア粘着フィルムの第2の離型フィルムを剥離し、上記(6)で得た、中間光学シート部材のコントラスト向上層2の面に貼合して、目的とする図2の様な光学シート10を作製した。(なお、図2では、粘着剤層6の表面を保護する(第1の)離型フィルムの図示は省略してある。
【0069】
《実施例2〜実施例5》
実施例1に於いて、成形型を取り替えて、コントラスト向上層2の各部の寸法を表1の様に代えた他は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。
【0070】
《実施例6》
実施例1において、粘着剤層を下記粘着剤組成物で形成した以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。
この結果、粘着剤層は、近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能及び色補正機能の3機能を兼用する光学機能層を兼ねる着色された粘着剤層となった。
【0071】
(1)粘着剤組成物の調整
粘着剤層の形成用として下記粘着剤組成物を調整した。
アクリル系粘着剤(感圧性粘着剤「オリバイン(登録商標)」BPS6271:商品名、固形分27%、東洋インキ製造(株)製)99.7質量部、および硬化剤(BXX5627:商品名、東洋インキ製造(株)製)0.3質量部に、近赤外線吸収剤として、フタロシアニン系化合物(IR12:商品名、(株)日本触媒製)0.05質量部、フタロシアニン系化合物(IR14:商品名、(株)日本触媒製)0.02質量部、及びジインモニウム系化合物(IRG−068:商品名、(株)日本触媒製)0.03質量部を配合した。更に、ネオン光吸収化合物(TAP2:商品名、山田化学工業(株))を0.01質量部配合した。更に、紫外線吸収剤として、Cyasorb(登録商標)UV24(サイテック・テクノロジー社製)を4質量部、光安定剤として、TINUVIN(登録商標)144(チバ・スぺシャルティ・ケミカル(株)製)を2質量部、調色色素として、KAYASET(日本化薬(株)製)を0.1質量部、及び、層状粘土鉱物として、クニピア(登録商標)D36(クニミネ工業(株)製)を0.05質量部配合し、混合物を得た。この混合物を十分攪拌させて、着色した粘着剤組成物を作製した。
【0072】
《比較例1》
実施例1に於いて、成形型を取り替えて、コントラスト向上層2の各部の寸法を表1の様に代えた他は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。
【0073】
《比較例2》
比較例1に於いて、粘着剤層を実施例6で用いた粘着剤組成物で形成した以外は、比較例1と同様にして光学シートを作製した。
【0074】
《参考例1》
実施例1に於いて、成形型を取り替えて、コントラスト向上層2の各部の寸法を表1の様に代えた他は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。
【0075】
《リワーク性の評価》
各光学シートの離型フィルムを剥離し露出させた粘着剤層6によって、プラズマディスプレイ(サイズ50V型)の前面ガラス基板に貼り合わせた後、角から剥離し、コントラスト向上層2の断裂が発生しないか、或いは糊残りが発生しないか、目視で確認した。
これらが共に発生しない場合をOK(表1中○印)、いずれか又は両方が発生したものはNG(表1中×印)とした。
【0076】
実施例、比較例及び参考例の寸法仕様と、評価結果を、表1に纏めて示す。表1中、例えば、実1は実施例1、比1は比較例1、参1は参考例1の意味である。
【0077】
【表1】

【0078】
表1に示す様に、Y値を2%以上とした各実施例は全てリワーク性がOKであった。
一方、Y値が2%未満であった比較例1及び比較例2はリワーク性がNGであった。また、参考例1として、Y値が2%以上であるが12%以上(12.50%)のものは、リワーク性こそOKであったが、ランド部5の厚みTrがばらついた。ニップロールの厚みムラ、塗工する樹脂組成物の膜厚ムラの影響が大きく、ランド部5の厚みの均一性が悪く、外観上でも筋状のムラが発生した。
【0079】
なお、光吸収部4の基材層1側とは反対側の部分の凹みは、大小はあるが、いずれも存在し、その分、その部分での面積拡大による密着性が向上しているはずであるが、比較例1及び比較例2の様にリワーク性の改善までには至らなかった。
【符号の説明】
【0080】
1 基材層
2 コントラスト向上層
3 光透過部
4 光吸収部
4a 光吸収部の基材層とは反対側の部分
4b 光吸収部の基材層側の部分
4c 光吸収部の基材とは反対側に形成された凹み
5 ランド部
6 粘着剤層
7 プラズマディスプレイパネル(被着体)
10 光学シート
20 従来の光学シート
21 (従来の)コントラスト向上層
24 光吸収部
30 画像表示装置
H 光吸収部の高さ
N 法線
P 光吸収部の配列ピッチ
Tr ランド部の厚み
Tc コントラスト向上層の厚み(光透過部の厚み+ランド部の厚み)
V 観察者
Wa 光吸収部の基材層とは反対側の幅
Wb 光吸収部の基材層側の幅


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイパネルより観察者側に配置され、該ディスプレイパネルから入射した光を制御して前記観察者側に出射する、複数の層を有する光学シートにおいて、
基材層と、該基材層に積層されたコントラスト向上層とを備え、
該コントラスト向上層は、光を透過可能にシート面に沿って配列された光透過部と、該光透過部間に光を吸収可能に配列された光吸収部と、基材層と光吸収部及び光透過部との間に前記光透過部と同一材料からなり前記光透過部に接続したランド部を有し、
{(光吸収部の基材層側の幅Wb×ランド部の厚みTr)/(光吸収部のピッチP×コントラスト向上層の厚みTc)}×100〔%〕が、2.0%以上である、光学シート。
【請求項2】
上記コントラスト向上層の上記基材層側とは反対側の面に、該コントラスト向上層に接して粘着剤層が形成されている、請求項1記載の光学シート。
【請求項3】
上記粘着剤層の粘着力(JIS Z 0237に準拠して、ガラス板に接着後の剥離速度300mm/minでの180°剥離)が、1N/25mm以上、20N/25mm未満である、請求項2記載の光学シート。
【請求項4】
上記粘着剤層は、近赤外線吸収、ネオン光吸収、色補正のいずれか1以上の機能を有する光学機能層を兼用する、請求項2又は3に記載の光学シート。
【請求項5】
前記光吸収部の基材層と反対側は、基材層側に向かって凹となる窪みを有しており、その深さは、0.5μm以上、6.0μm未満である、請求項1〜4のいずれかに記載の光学シート。
【請求項6】
プラズマディスプレイパネルと、該プラズマディスプレイパネルより観察者側に配置された請求項2〜5のいずれかに記載の光学シートであってコントラスト向上層に接して粘着剤層が形成されている光学シートとを備え、該光学シートはコントラスト向上層に対して基材層側が観察者側に向けられている、画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−133062(P2012−133062A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284063(P2010−284063)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】