説明

光学シートの製造方法

【課題】複数の光学シートを積層したときに、凸部に傷又は欠けを生じ難くすることができる光学シートの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る光学シートの製造方法は、複数の凹部と該凹部に連なる曲面状の複数の凸部とを表面に有する光学シートの製造方法である。本発明に係る光学シートの製造方法では、複数の凸部と該凸部に連なる複数の凹部とを表面に有する賦型ロール本体と、該賦型ロール本体の表面上に積層されており、かつ複数の凸部と該凸部に連なる曲面状の複数の凹部とを表面に有する離型層とを備える賦型ロール4が用いられる。本発明に係る光学シートの製造方法では、賦型ロール4の表面4a上に押出しされたシート状の熱可塑性樹脂Aを圧着させ、該シート状の熱可塑性樹脂Aに賦型ロール4の表面4aの形状を転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融押出法により、複数の凹部と該凹部に連なる複数の凸部とを表面に有する光学シートを製造する方法に関し、より詳細には、液晶表示装置又は照明器具などにおいて、光を制御するために用いられる光学シートを得ることができる光学シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置又は照明器具では、点状光源又は線状光源等の光源の光出射面側に、光の拡散又は集光などを目的として透明な光学シートが配置されている。この種の光学シートとして、該光学シートの光出射面側に複数のレンズが設けられたレンズシートが広く用いられている。光源から出射された光がレンズシートに入射した後、入射した光の出射方向をレンズの形状によって制御できる。これによって、例えば、液晶表示装置の輝度むらの抑制又は輝度の向上が図られている。
【0003】
例えば、従来、直下方式のバックライトでは、該バックライトの光出射面の下方に、複数の光源が配置されている。このバックライトでは、光出射面において、光源の直上における輝度がその他の部分における輝度よりも高くなる傾向がある。すなわち、輝度むらが生じて、ランプイメージが視認されやすくなる傾向がある。この輝度むらを解消するために、下記の特許文献1には、マイクロレンズアレイシートを用いる方法が開示されている。
【0004】
また、上記マイクロレンズアレイシートの製造方法の一例として、下記の特許文献2には、熱可塑性樹脂をプレス成形又は溶融押出成形して、光学シートを得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−145329号公報
【特許文献2】特開2007−256748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、拡散シート及び輝度向上シート等の光学シートにおいて、光学特性をより一層高めるために、レンズ形状の微細化が進行している。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載のように、熱可塑性樹脂をプレス成形又は溶融押出成形して、レンズ形状を付与しただけでは、微細なレンズ形状を精度よく賦型することは極めて困難である。
【0008】
また、例えば、マイクロレンズアレイシートの光の拡散機能を向上させるためには、複数のマイクロレンズは、できるだけ密に配置されていることが望ましく、細密充填配置されていることがより望ましい。しかしながら、凹状の複数のマイクロレンズを細密充填配置したマイクロレンズアレイシートでは、凹状のマイクロレンズ間の凸部が先細りし、尖った形状になりやすい。このため、複数のマイクロレンズアレイシートを積層したときに、凹状のマイクロレンズ間の凸部が傷ついたり、欠けたりすることがある。
【0009】
本発明の目的は、複数の凹部と該凹部に連なる曲面状の複数の凸部とを表面に有する光学シートを得ることができ、得られた複数の光学シートを積層したときに、凸部に傷又は欠けを生じ難くすることができる光学シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、複数の凹部と該凹部に連なる複数の凸部とを表面に有する光学シートの製造方法であって、溶融した熱可塑性樹脂をシート状に押出しする工程と、複数の凸部と該凸部に連なる複数の凹部とを表面に有する賦型ロール本体と、該賦型ロール本体の表面上に積層されており、かつ複数の凸部と該凸部に連なる曲面状の複数の凹部とを表面に有する離型層とを備える賦型ロールを用いて、該賦型ロールの表面上に押出しされたシート状の熱可塑性樹脂を圧着させ、該シート状の熱可塑性樹脂に賦型ロールの表面の形状を転写する工程と、賦型ロールの表面の形状が転写されたシート状の熱可塑性樹脂を冷却して、複数の凹部と該凹部に連なる曲面状の複数の凸部とを表面に有する光学シートを得る工程とを備える、光学シートの製造方法が提供される。
【0011】
本発明に係る光学シートの製造方法のある特定の局面では、上記賦型ロールとして、上記賦型ロール本体の表面上に離型剤をコーティングすることにより離型層が積層された賦型ロールが用いられる。
【0012】
本発明に係る光学シートの製造方法の他の特定の局面では、上記離型剤としてフッ素樹脂が用いられる。
【0013】
本発明に係る光学シートの製造方法のさらに他の特定の局面では、複数のレンズである凹部と該凹部に連なる曲面状の複数の凸部とを表面に有する光学シートを得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る光学シートの製造方法は、複数の凸部と該凸部に連なる複数の凹部とを表面に有する賦型ロール本体と、該賦型ロール本体の表面上に積層されており、かつ複数の凸部と該凸部に連なる曲面状の複数の凹部とを表面に有する賦型ロールを用いて、溶融押出しされたシート状の熱可塑性樹脂に賦型ロールの表面形状を転写するので、複数の凹部と該凹部に連なる曲面状の複数の凸部とを表面に有する光学シートを得ることができる。また、本発明によれば、離型層の表面形状に対応して、光学シートに曲面状の複数の凸部を形成するので、複数の光学シートを積層したときに、凸部に傷又は欠けが生じ難い光学シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光学シートの製造方法を説明するための概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る光学シートの製造方法に用いられる賦型ロールを示す部分切欠横断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る光学シートの製造方法により得られる光学シートの一例を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0017】
本発明に係る光学シートの製造方法は、複数の凹部と該凹部に連なる曲面状の複数の凸部とを表面に有する光学シートの製造方法である。本発明に係る光学シートの製造方法により得られる光学シートは、凹凸形状を表面に有する。1つの凸部は、2つの凹部間に配置されており、隣接する2つの凹部に連なっている。凹部はレンズであることが好ましい。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る光学シートの製造方法を説明するための概略構成図である。
【0019】
図1に示すように、光学シートの製造装置1は、溶融押出法により、熱可塑性樹脂をシート状に成膜するために用いられる装置である。製造装置1は、溶融押出装置である。製造装置1は、金型3を有する押出機2と、賦型ロール4と、ロール5,6間に架け渡された無端ベルト7と、冷却ロール8,9とを備える。
【0020】
押出機2は、熱可塑性樹脂を溶融し、シート状に押出しするための金型3を有する。金型3は、押出機2の先端に取り付けられている。
【0021】
熱可塑性樹脂をシート状に成膜する際には、先ず、押出機2内で、熱可塑性樹脂を加熱して溶融し、混練する。押出機2から溶融した熱可塑性樹脂を押出しして、押出機2の先端に取り付けられた金型3に供給する。押出機2と金型3との間には、ギアポンプ及びフィルター等が配置されていてもよい。
【0022】
金型3に供給された熱可塑性樹脂を、金型3の開口からシート状に押出しして、排出し、熱可塑性樹脂をシート状に成膜する。押出しされたシート状の熱可塑性樹脂Aを、賦型ロール4と無端ベルト7との間に導く。賦型ロール4は、軸が固定されており、図1の矢印X1の方向に回転する。無端ベルト7は、ロール5,6間に架け渡されている。ロール5及びロール6の内の少なくとも一方を図1の矢印X2,X3の方向に回転させることにより、無端ベルト7は、図1のX4の方向に移動する。
【0023】
無端ベルト7は、シート状の熱可塑性樹脂Aが導かれたときに、該シート状の熱可塑性樹脂Aを賦型ロール4の表面4a上に圧着させるために用いられている。無端ベルト7は、金属により形成された金属無端ベルトであることが好ましい。無端ベルトに用いられる金属としては、ステンレス及びニッケル等が挙げられる。無端ベルト7にかえて、タッチロール、エアナイフ又は静電ピニング等を用いてもよい。シート状の熱可塑性樹脂Aの両面に凹凸を形成するために、無端ベルト7にかえて、賦型ロール4のような凸部及び凹部を表面に有する賦型ロールを用いてもよい。
【0024】
賦型ロール4の表面4aには、溶融押出しされたシート状の熱可塑性樹脂及び光学シートに形成すべき、凹凸形状を反転した形状が設けられている。賦型ロール4は、シート状の熱可塑性樹脂Aが導かれたときに、該シート状の熱可塑性樹脂Aの表面に凹凸形状を形成するためのロールである。なお、賦型ロール4の表面の凹凸形状は微細であるため、図1では、図示の便宜上、賦型ロールの表面の凹凸形状の図示は省略している。
【0025】
図2に賦型ロール4を拡大して横断面図で示すように、賦型ロール4は、賦型ロール本体11と、賦型ロール本体11の表面11a上に積層された離型層12とを有する。
【0026】
賦型ロール本体11は表面11aに、複数の凸部11bと該凸部11bに連なる複数の凹部11cとを有する。1つの凹部11cは、2つの凸部11b間に配置されている。2つの凸部11bに挟まれるように1つの凹部11cが設けられている。本実施形態では、複数の凹部11cは曲面状ではない。複数の凹部11cは曲面状であってもよい。
【0027】
離型層12は表面12aに、複数の凸部12bと該凸部12bに連なる曲面状の複数の凹部12cとを有する。1つの凹部12cは、2つの凸部12b間に配置されている。2つの凸部12bに挟まれるように1つの凹部12cが設けられている。曲面状の凹部12cの先端(最深部)は、尖っておらず、丸みを帯びている。本実施形態では、凹部12cが曲面状であるように離型層12が設けられている。
【0028】
従って、押出しされたシート状の熱可塑性樹脂Aを、賦型ロール4の表面4a上に圧着させることにより、賦型ロール4の表面4aの形状、すなわち離型層12の表面12aの凸部12b及び凹部12cの形状がシート状の熱可塑性樹脂Aに転写される。この結果、シート状の熱可塑性樹脂Aの表面に、複数の凹部と該凹部に連なる曲面状の凸部とが形成される。特に、離型層12の凹部12cが曲面状であるため、シート状の熱可塑性樹脂Aの表面に、曲面状の凸部を形成することができる。さらに、離型層12は離型性を有するので、賦型ロール4の表面4aの形状が転写されたシート状の熱可塑性樹脂Aが賦型ロール4から剥離する際に、型崩れすることなく、賦型された凹凸形状を精度良く維持することができる。
【0029】
賦型ロール本体11は、表面に目的とする凹凸形状を有する限り、適宜のロールにより形成される。賦型ロール本体11は、表面11aが金属である金属ロールであることが好ましい。賦型ロール本体11に用いられる金属としては、ステンレス、ニッケル、銅及びニッケルリン等が挙げられる。
【0030】
離型層12は、賦型ロール本体11の表面11a上に離型剤をコーティングすることにより形成されていることが好ましい。この場合には、離型層12の表面12aに、複数の凸部12bと該凸部12bに連なる曲面状の複数の凹部12cとを容易に形成することができる。特に、離型剤をコーティングすると、凹部12cは容易に曲面状になり、先端が尖らずに丸みを帯びるようになる。例えば、賦型ロール本体11の凹部11cが曲面状ではない場合でも、離型剤をコーティングすることにより、凹部12は容易に曲面状になり、先端が尖らずに丸みを帯びるようになる。この結果、光学シートを得るために、微細な凹凸形状を精度よく賦型することができる。
【0031】
上記離型剤は、コーティング時に、流動性を有することが好ましく、液状であることが好ましい。この場合には、凹部12cが容易に曲面状になる。上記離型剤は特に限定されない。上記離型剤として、従来公知の離型剤を用いることができる。上記離型剤は、フッ素樹脂であることが好ましい。フッ素樹脂は表面エネルギーが小さいため、フッ素樹脂の使用により、微細でかつ薄い離型層を高精度に形成することができる。さらに、フッ素樹脂の使用により、離型層12の表面12aに、複数の凸部12bと該凸部12bに連なる曲面状の複数の凹部12cとをより一層容易にかつ形成することができる。この結果、光学シートを得るために、微細な凹凸形状をより一層精度よく賦型することができる。
【0032】
図1に示すように、賦型ロール4の後段には、冷却ロール8,9が配置されている。賦型ロール4により凹凸形状が転写されたシート状の熱可塑性樹脂Aは、冷却ロール8,9で冷却され、図1の矢印X5の方向に搬送される。そして、シート状の熱可塑性樹脂Aが冷却され、固化した結果、複数の凹部と該凹部に連なる曲面状の複数の凸部とを有する光学シートを得ることができる。特に、離型層12の凹部12cが曲面状であるため、曲面状の凸部を有する光学シートを得ることができる。また、離型層12の凹部12cの先端が尖っておらず、丸みを帯びているため、凸部の先端が尖っておらず、丸みを帯びている光学シートを得ることができる。
【0033】
なお、図1に示した光学シートの製造装置1は、本発明に係る光学シートの製造方法に用いられる装置の一例である。本発明においては、使用する製造装置の構造は、図1に示した構造に限定されない。
【0034】
次に、上記光学シートの製造方法により得られる光学シートの具体例を説明する。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態に係る光学シートの製造方法により得られる光学シートの一例を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【0036】
図3に示す光学シート51は、一方の面51aに光が出射される光出射面と、他方の面51bに光が入射される光入射面とを有する。
【0037】
光学シート51は、一方の面51aに、凹部であるレンズ51cを複数有する。また、レンズ51c間には複数の凸部51dが設けられている。凸部51dは、凹部であるレンズ51cに連なっている。凸部51dは、曲面状である。凸部51dの先端は、尖っておらず、丸みを帯びている。このように凸部51dが曲面状であることにより、得られた光学シートを使用する際に、又は複数の光学シートを積層したときに、凹部間の凸部に傷又は欠けが生じ難くなる。
【0038】
溶融押出しされたシート状の熱可塑性樹脂Aを賦型ロール4に圧着させることにより、レンズ51cを容易に形成できる。また、上記光学シートの製造方法により、レンズ51cの微細化に対応でき、レンズ51c及び凸部51dを精度良く賦型できる。
【0039】
光学シート51では、レンズ51cはマイクロレンズである。光学シート51では、複数のレンズ51cによりマイクロレンズアレイが構成されている。光学シート51は、マイクロレンズアレイシートである。光学シート51の全面において光の出射方向を制御する観点からは、複数のレンズ51cは、できるだけ密に配置されていることが望ましい。
【0040】
凹部である複数のレンズ51cの形状は、特に限定されない。光の出射方向を高精度に制御する観点からは、レンズ51cの形状は、球体の一部又は回転楕円体の一部であることが好ましい。レンズ51cの形状は、回転楕円体の一部であることがより好ましい。
【0041】
光学シート51の厚み、すなわち一方の面51aと他方の面51bとを結ぶ方向の光学シート51の厚みは特に限定されず、例えば平均厚みで50μm〜500μm程度である。連続生産を容易にする観点からは、光学シート51の平均厚みは、より好ましくは100μm以上、より好ましくは400μm以下である。
【0042】
複数のレンズ51cの頂点間の距離D1は特に限定されない。距離D1は、30〜1000μmの範囲内であること好ましい。
【0043】
複数のレンズ51cの直径D2は特に限定されない。直径D2は20〜1000μmであることが好ましい。液晶表示装置に用いられる場合、直径D2は20〜1000μmであることが特に好ましい。上記直径D2はより好ましくは100μm以上である。
【0044】
複数のレンズ51cは、周期的かつマトリクス状に配置されていても、ランダムに配置されていてもよい。「マトリクス状」とは、第1の方向と、第1の方向とは角度をなす第2の方向との両方において周期的に配列されていることをいう。第1の方向と第2の方向とは相互に垂直でなくてもよく、斜めであってもよい。また、光学シート51は、複数種類のレンズ51cを有していてもよい。例えば、光学シート51は、大きさの異なる複数種類のレンズ51cを有していてもよい。
【0045】
複数のレンズ51cは、2次元配列されていることが好ましく、細密充填配置されていることが好ましい。レンズ51cのように、光学シートにおけるレンズは、マイクロレンズであることが好ましい。光学シート51のように、光学シートは、マイクロレンズアレイシートであることが好ましい。
【0046】
上記光学シートは、光透過性を有する。光学シートは、光透過性の材料により形成されている。光学シートの光が透過する光の波長領域は特に限定されない。該波長領域は、用途に応じて適宜選択できる。例えば、光学シートが液晶表示装置の導光板として用いられる場合、一般には、380nm〜700nm程度の可視光領域が、透過光の波長領域として設定される。
【0047】
本発明に係る光学シートの製造方法では、複数のレンズである凹部と該凹部に連なる曲面状の複数の凸部とを表面に有する光学シートを得ることが好ましい。本発明に係る光学シートの製造方法では、複数のレンズである凹部と該凹部に連なる曲面状の複数の凸部とを少なくとも一方の表面に有する光学シートを得ることが好ましい。本発明に係る光学シートの製造方法では、凹部と該凹部に連なる曲面状の複数の凸部とを両側の表面に有する光学シートを得てもよい。
【0048】
上記光学シートの透明性を高める観点からは、光学シートの材料の主体は透明であることが好ましい。光学シートの材料100重量%中、80重量%以上の材料が透明であることが好ましい。
【0049】
上記光学シートの材料である上記熱可塑性樹脂は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート及びポリイミド等が挙げられる。なかでも、ポリカーボネートが好ましい。ポリカーボネートの使用により、光学シートの透明性を高めることができ、更に耐熱性及び耐候性も高めることができる。
【0050】
上記光学シートの材料として、透光性を阻害しない範囲で、耐候剤、架橋助剤又は補強剤等を適宜用いてもよい。
【0051】
なお、上記光学シートは、液晶表示装置に好適に用いられる。光学シートは、透写型表示装置又はテレビジョン受像機などの様々な光学装置において、光源からの光の利用効率を高める用途に適宜用いることができる。さらに、光学シートは、照明器具にも用いることができる。
【0052】
本発明に係る光学シートの製造方法によれば、複数のプリズムレンズが設けられているプリズムシートである光学シートを得ることができる。本発明に係る光学シートの製造方法により、プリズムシートの凸部であるプリズムレンズを曲面状にすることができ、プリズムレンズの先端を尖らせずに丸みを帯びさせることができる。さらに、本発明に係る光学シートの製造方法によれば、複数のシリンドリカルレンズが設けられているレンチキュラーシートである光学シートを得ることもできる。
【0053】
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0054】
(実施例1)
直径が40μmの半球状を有しかつ最密充填配置された複数の凸部と、該凸部に連なる複数の凹部とを有する金属ロール(直径250mm)を用意した。この金属ロールの凹部は、曲面状ではなかった。この金属ロールを賦型ロール本体として用いて、該賦型ロール本体の表面上に、耐熱TFEコート(フッ素樹脂、ファインケミカルジャパン製、品番:FC−103)を吹き付けてコーティングすることにより、賦型ロール本体上に薄膜である離型層を設けて、賦型ロールを得た。離型層は、複数の凸部と該凸部に連なる曲面状の複数の凹部とを有していた。凹部の先端(最深部)は尖っておらず、丸みを帯びていた。
【0055】
図1に示す押出装置1の賦型ロール4として、得られた賦型ロールを用いて、溶融押出法により、図3に示す形状のマイクロレンズアレイシートを作製した。
【0056】
ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製「パンライト1225LL」)を金型3からシート状に溶融押出しして、ライン速度15mm/分で、成膜した。賦型ロール4と金属により形成された無端ベルト7とで挟圧し、冷却ロール8,9により冷却し、搬送した。これにより、細密充填配置されたマイクロレンズである複数の凹部と該凹部に連なる複数の凸部とを形成し、集光シート(マイクロレンズアレイシート)を得た。得られたマイクロレンズアレイシートの凸部は曲面状であり、該凸部の先端は尖っておらず、丸みを帯びていた。
【0057】
得られたマイクロレンズアレイシートの平均厚みは150μmであった。マイクロレンズの形状は、半球状であった。
【0058】
(比較例1)
実施例1における賦型ロール本体に離型層を設けずに、賦型ロール本体を賦型ロールとして用いたこと以外は実施例1と同様にして、集光シート(マイクロレンズアレイシート)を得た。得られたマイクロレンズアレイシートの凸部は曲面状ではなく、該凸部の先端が尖っており、丸みを帯びていなかった。
【0059】
(評価)
(1)傷及び欠けの評価
得られた集光シートをレンズ構造面が上方になるように配置し、該集光シート上に厚み100μmのPETフィルム上に置いた。その上に100gのおもりを載せて、PETフィルムを水平方向に100mm/分の速度で移動させた後、レンズ構造面をレーザー顕微鏡で観察し、傷及び欠けの有無を評価した。
【0060】
(2)輝度むらの評価
点状光源として、LED光源(豊田合成社製、品番:E1S27*M1F7−03)を用意した。25個のLED光源を縦横1.9cm間隔で回路基板上に配置すると共に、回路基板に配線を施した。回路基板のLED光源を除く部分とケーシングの内側面とに、白色のポリエステルフィルム(東レ社製、品番:ルミラーE6SL、厚さ:250μm)を貼り付けて、さらに旭化成ケミカルズ社製の拡散板(グレードMS、厚さ2mm)を透光基板として配置することによって、縦100mm、横100mm及び高さ13.5mmの光源デバイスを作製した。
【0061】
上記光源デバイスに集光シートをレンズ構造面が上方になるように配置し、以下の要領で輝度むらを測定した。
【0062】
変位可能なステージ上に配置した光源ユニットの集光シートの光出射面の上方1.2mmに視野角特性測定装置(ELDIM社製、品名EZContrast80)を固定した。その状態で、ステージごと光源ユニットをx方向及びy方向のそれぞれに移動させながら、上記視野角特性測定装置によってx方向及びy方向のそれぞれにおいて5mmおきに正面輝度を測定した。測定結果から、正面輝度の最大値、最小値、平均値及び輝度むらを算出した。正面輝度の最大値は、測定中において最も高かった輝度である。正面輝度の最小値は、測定中において最も低かった輝度である。平均値は、測定された正面輝度の平均値である。輝度むらを、下記式(1)によって算出した。なお、ランプイメージが視認不能となる輝度むらの上限値の目安は、2.5%程度である。
【0063】
(輝度むら)=((正面輝度の最大値)−(正面輝度の最小値))/(正面輝度の平均値) ・・・式(1)
結果を下記の表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
上記表1に示す結果から、実施例1における光学シートの製造方法によって、凹部と該凹部に連なる曲面状の複数の凸部とを表面に有する光学シートを得ることにより、得られた複数の光学シートを積層したときに、凸部に傷又は欠けが生じ難くなることがわかる。さらに、細密充填配置されたマイクロレンズである複数の凹部の形成により、ランプイメージによる輝度むら抑えることができることがわかる。
【符号の説明】
【0066】
1…製造装置
2…押出機
3…金型
4…賦型ロール
4a…表面
5,6…ロール
7…無端ベルト
8,9…冷却ロール
11…賦型ロール本体
11a…表面
11b…凸部
11c…凹部
12…離型層
12a…表面
12b…凸部
12c…凹部
51…光学シート
51a…一方の面
51b…他方の面
51c…レンズ
51d…凸部
A…シート状の熱可塑性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凹部と該凹部に連なる複数の凸部とを表面に有する光学シートの製造方法であって、
溶融した熱可塑性樹脂をシート状に押出しする工程と、
複数の凸部と該凸部に連なる複数の凹部とを表面に有する賦型ロール本体と、該賦型ロール本体の表面上に積層されており、かつ複数の凸部と該凸部に連なる曲面状の複数の凹部とを表面に有する離型層とを備える賦型ロールを用いて、該賦型ロールの表面上に押出しされたシート状の熱可塑性樹脂を圧着させ、該シート状の熱可塑性樹脂に賦型ロールの表面の形状を転写する工程と、
賦型ロールの表面の形状が転写されたシート状の熱可塑性樹脂を冷却して、複数の凹部と該凹部に連なる曲面状の複数の凸部とを表面に有する光学シートを得る工程とを備える、光学シートの製造方法。
【請求項2】
前記賦型ロールとして、前記賦型ロール本体の表面上に離型剤をコーティングすることにより離型層が積層された賦型ロールを用いる、請求項1に記載の光学シートの製造方法。
【請求項3】
前記離型剤としてフッ素樹脂を用いる、請求項2に記載の光学シートの製造方法。
【請求項4】
複数のレンズである凹部と該凹部に連なる曲面状の複数の凸部とを表面に有する光学シートを得る、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−63409(P2012−63409A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205465(P2010−205465)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】