説明

光学スケール、および、これを備える光学ユニット

【課題】 本発明は、湾曲可能であって高精度に微小位置変位の測定を実現することの可能な光学スケール、及び、それを備えた光学ユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】 光透過性を有する樹脂基板2と、該樹脂基板2面上に所定のパターンにて積層形成されているアルミニウム金属膜3とからなる積層構造体4を備え、該積層構造体4におけるアルミニウム金属膜形成面側の表面を覆って光透過性を有する粘着層5が積層されており、且つ、粘着層5面上にアルミニウム金属膜3よりも正反射率の低い低反射層6が積層されている光学スケール1により、湾曲可能であって高精度に微小位置変位の測定を実現することの可能な光学スケール1、及び、それを備えた光学ユニット10が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学スケール、および、これを備える光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
光学スケールと光センサと光源を備える光学ユニットを搭載した装置が様々な分野で用いられており、そのような装置として、例えば光学式位置検出装置などが知られている。
【0003】
光学式位置検出装置では、光学ユニットは、光学スケールに目盛り部を設けられており、光源から照射され目盛り部を経由した光を光センサで検出するように構成される。光学式位置検出装置としては、光センサで検出された光の経路の違いに応じて、反射型と透過型とが知られている。
【0004】
反射型の光学式位置検出装置に搭載される光学ユニットでは、光学スケールに、光を正反射する正反射部と正反射部よりも正反射率の低い低反射部とが所定のパターンで形成されており、これらが光学スケールおける目盛り部を構成する。具体的にこのような光学スケールとしては、ガラス製の基板の上に、光を反射する光反射層を格子状のパターンにパターン形成した光学素子が提案されている(特許文献1)。この光学スケールでは、光学スケールの平面視上、光反射層をなす格子状のパターンの非形成部に、光反射層よりも正反射率の低い部分が形成されることになる。すると、光学スケールには、格子状のパターンに応じて正反射率の高い部分(正反射部)と正反射率の低い部分(低反射部)とが所定のパターンで形成されていることになる。
【0005】
このような光学ユニットにおいては、光学スケールの正反射部と低反射部がより精緻なパターンでパターン形成されると、目盛り部がより細やかな目盛りを有することとなり、わずかな位置変位の検出も可能となる。
【0006】
そして、光学ユニットを用いた微小な位置変位の検出は、半導体製造工程などといった高度の精密性を要請される状況や、カメラなど高精度の調整を要請される精密機器類といった、多種多様な状況や機器類にて要請されるようになってきている。このような要請の多種多様化に伴い、光学ユニットの設置形態として要請される形態も多様化している。具体的に、光学ユニットには、光学スケールを所定の曲率で湾曲させつつ所定の位置に設置した形態のものの実現が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−281870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に示すような光学スケールは、可撓性に劣ることから、それを湾曲させた状態にして所定の位置に安定設置することは極めて困難である。
【0009】
本発明は、湾曲可能であって高精度に微小な位置変位の測定を実現することの可能な光学スケール、及び、それを備えた光学ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(1)光透過性を有する樹脂基板と、該樹脂基板表面上に所定のパターンにて積層形成されているアルミニウム金属膜とからなる積層構造体を備え、
該積層構造体におけるアルミニウム金属膜形成面側の表面を覆って光透過性を有する粘着層が積層されており、且つ、粘着層表面上にアルミニウム金属膜よりも正反射率の低い低反射層が積層されている、ことを特徴とする光学スケール、
(2)アルミニウム金属膜は、アルミニウム蒸着膜からなる、上記(1)に記載の光学スケール、
(3)低反射層は、光吸収層で形成されている、上記(1)または(2)に記載の光学スケール、
(4)低反射層上に、樹脂製の裏当て基板が積層されている、上記(1)から(3)のいずれかに記載の光学スケール、
(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載された光学スケールと、光源と、光センサを備え、
光源から光学スケールに照射された光のうち光学スケールのアルミニウム金属膜で反射した反射光を光センサで検出可能に構成してなる光学ユニット、を要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、湾曲可能であって微小変位を高精度に測定することを実現可能な光学スケール、及び、それを備えた光学ユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明における光学スケールの実施例の1つを模式的に説明するための概略縦断面模式図である。
【図2】(2A)から(2E)は、いずれも本発明における光学スケールの製造方法の1つの例を説明するための工程断面図である。
【図3】本発明における光学スケールの他の実施例の1つを模式的に説明するための概略縦断面模式図である。
【図4】(4A)本発明における光学ユニットの実施例の1つを模式的に説明するための概略模式図である。(4B)図4Aに示す光学ユニットにおいて、光学スケールを図4AのA−A線縦断面として見た場合の光学ユニットの状態を模式的に説明するための概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[光学スケール1の構造]
本発明の光学スケール1は、図1に示すように、光透過性を有する樹脂基板2と、樹脂基板2に積層されたアルミニウム金属膜3とからなる積層構造体4を備える。光学スケール1は、積層構造体4の少なくともアルミニウム金属膜形成面側の表面4aを覆って粘着層5を積層しており、さらに、粘着層5表面上に低反射層6を積層している。
【0014】
(樹脂基板2)
樹脂基板2は、光透過性と可撓性を有するものであれば特に限定されるものではなく、樹脂製の基板を適宜選択されてよい。したがって、樹脂基板2を構成する樹脂としては、特に限定されず、具体的には、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリル樹脂など、適宜選択可能である。
【0015】
樹脂基板2の厚みは、適宜選択可能である。樹脂基板2として、フィルム状の薄い厚みにて形成されたものが選択されても、それよりも厚みのあるシート状に形成されたものが選択されてもよい。ただし、樹脂基板2の厚みは、光学スケール1の取り扱いを容易とする点では1μm以上100μm以下の範囲とされることが好ましい。
【0016】
(アルミニウム金属膜3)
アルミニウム金属膜3は、樹脂基板2面上に、好ましくは樹脂基板2面に直接に形成されており、所定のパターンにてパターン形成されている。アルミニウム金属膜3が樹脂基板2面に直接形成されていると光学スケール1における界面数の増加が抑制される。また、アルミニウム金属膜3は、より確実に樹脂基板2面上に形成させることができる点で、アルミニウム蒸着膜であることが好適である。この場合、アルミニウム金属膜3をなすアルミニウム蒸着膜は、後述するように樹脂基板2面上にアルミニウムを蒸着させて得られる蒸着膜を所定のパターンにエッチングすることで形成される。
【0017】
アルミニウム金属膜3の形成パターンとしては、光学スケール1の規格や用途に応じて適宜パターンを設定可能であり、好適には、単位パターンを所定方向に、必要に応じて所定の間隔で、繰り返し配置形成してなるパターンが適宜設定される。より具体的には、アルミニウム金属膜3の形成パターンには、格子状や縞状などのパターンが適宜設定される。
【0018】
アルミニウム金属膜3の厚みは、適宜設定可能であるが、アルミニウム金属膜3を正反射率のばらつきの抑制された均質な膜体としやすい点では300nm以上800nm以下の範囲で設定されることが好ましい。
【0019】
(アルミニウム金属膜3の機能)
アルミニウム金属膜3は、金属光沢を有する膜体であり、光学スケール1において後述する正反射部13を形成する。
【0020】
(アルミニウム金属膜3の利点)
アルミニウム金属膜3には、ニッケルや金など、アルミニウム以外の金属からなる膜体に比べて、広い波長域にわたって正反射性に優れるという点、安価であるという点、さらには後述するようなエッチングにて極めて精緻なパターンを容易に加工形成することができるという点で極めて有効な利点が存在する。
【0021】
例えば、具体的に、アルミニウム金属膜3の形成パターンが縞状のパターンあり、その縞状のパターンが、所定の線状パターンを単位パターンとして所定の間隔で所定の方向に繰り返し単位パターンを並べて配置形成されている場合の例についてみるに、本発明の光学スケール1では、単位パターンを構成する線幅を1μm以上3μm以下程度に設定してアルミニウム金属膜3をパターン形成することができ、また、隣り合う単位パターン間の距離、すなわちピッチについても、1μm以上3μm以下程度というごく小さな値に設定してアルミニウム金属膜3をパターン形成することができる。このようにアルミニウム金属膜3が極めて精緻なパターンにてパターン形成されていると、光学スケール1において、後述するように目盛り部15を精緻に形成することができることとなり、わずかな位置変位でも検出することができるような光学ユニット10を得ることができるようになる。なお、位置変位とは、位置座標に変化が生じることを示し、所定方向への移動による変位のみならず回転移動による変位も含まれる。
【0022】
(粘着層5)
既述したように、積層構造体4の表面4a上には、粘着層5が積層される。粘着層5は、アルミニウム金属膜3の形成面側の表面4aを覆うように形成される。
【0023】
粘着層5は、光透過性を有し且つ積層構造体4に粘着又は接着可能な樹脂層であれば特に限定されない。したがって、粘着層5を構成する樹脂としては、公知の粘着剤や接着剤などを適宜用いることができ、具体的には、例えば、天然ゴム、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリエステル、シリコンゴム、フッ素系ゴム、ポリビニルブチラール等の樹脂を主成分とするもの等が挙げられる。これらのうち、アクリル系樹脂を主成分とするものが耐熱性、透明性、耐久性、耐候性等の点で、粘着層5を構成する樹脂として好ましい。
【0024】
(粘着層5の利点)
粘着層5は、上記したように樹脂層で構成されて、可撓性を有しており、光学スケール1の湾曲性向上に資する。また、光学スケール1において、粘着層5が形成されていると、仮にアルミニウム金属膜3が樹脂基板2から剥がれるような事態が生じたとしても、粘着層5でアルミニウム金属膜3の形成パターンを保持することができ、アルミニウム金属膜3の形成パターンにパターン崩れを生じてしまう虞を低減することができるようになる。また、粘着層5がアルミニウム金属膜3を覆うように形成されることで、光学スケール1においてアルミニウムの金属面が外面に露出してしまう虞を低減でき、外気に接してアルミニウム金属膜3に酸化劣化が生じてしまう虞を効果的に抑制することができるようになる。
【0025】
(低反射層6)
粘着層5の表面のうちアルミニウム金属膜3との非対向面側には、低反射層6が積層されている。低反射層6は、アルミニウム金属膜3よりも正反射率の低い層であれば、特に限定されない。このような低反射層6としては、光吸収層、光拡散層などが好ましく採用されるが、低反射層6に照射された光が後述する光センサ12に誤って検知されてしまう虞をより確実に抑制する点で、低反射層6は光吸収層であることが好ましい。低反射層6は、光学スケール1の平面視上光学スケール1の少なくとも後述の低反射部14とされる部分に形成されていればよいが、光学スケール1の底面視上粘着層5の全面を覆うように形成されることが好適である。この場合、光学スケール1の平面視上、光学スケール1に、アルミニウム金属膜3と低反射層6のいずれも存在しない領域が形成されてしまう虞を防止することができる。なお、正反射率(%)とは、対象物の反射率測定対象面への入射光の強度に対する、正反射として反射する光の強度の比率である。
【0026】
低反射層6が光吸収層である場合、光吸収層としては、光センサ12で感知される波長の光の少なくとも一部を吸収可能な層であれば、特に限定されずに採用することができるが、吸収波長域の広域性の点で、黒色インク層や黒色金属層等を好適に採用することができる。黒色インク層は、黒インクを用いて調製することができる。黒インクとしては、公知のものを適宜採用することができ、カーボンブラックなどの黒色顔料と、アクリル系樹脂などの樹脂バインダーを混合して調製されたインク組成物や、そのようなインク組成物に酸化防止剤などの添加物を適宜添加した組成物等を用いることができる。また、黒色金属層は、公知方法を適宜用いて黒色金属を膜体となしたものを用いることができる。具体的には、黒色金属層としては、クロム等の蒸着膜やメッキ膜を例示することができる。
【0027】
低反射層6が光拡散層である場合、光拡散層としては、公知のものを適宜採用可能であり、炭酸カルシウムや酸化チタンなどの光拡散剤を樹脂に添加した層を例示することができる。
【0028】
(低反射層6の機能)
低反射層6は、アルミニウム金属膜3よりも正反射率の低い部分、すなわち光学スケール1において後述する低反射部14として機能する。
【0029】
(光学スケール1の目盛り部15)
光学スケール1においては、正反射部13と低反射部14とで目盛り部15が形成される。目盛り部15は、光学ユニット10で位置変位を検出するための標となる。光学スケール1においては、光学スケール1の平面視上、アルミニウム金属膜3の形成部の少なくとも一部が正反射部13を構成している。また、光学スケール1の平面視上、アルミニウム金属膜3の非形成部の少なくとも一部の領域から低反射層6が臨んでおり、この低反射層6の部分が、低反射部14をなす。そして、このように光学スケール1に形成された正反射部13と低反射部14が目盛り部15を形成する。そして、本発明の光学スケール1では、光学スケール1の平面視上、アルミニウム金属膜3を、精緻な単位パターンを極小さなピッチにて配置したパターンにパターン形成することができることから、正反射部13と低反射部14についても精緻にパターン形成することができ、精緻な目盛り部15を形成することができる。なお、光学スケール1の平面視上とは、光学スケール1の厚み方向を視線方向として光学スケール1を樹脂基板2側から見た場合の状態を示す。図1では、視線方向は、矢印Y方向となり、矢印Y方向に光学スケール1を見たときに、矢印X方向に正反射部13と低反射部14が交互に並ぶ。また、視線方向とは逆向きに光学スケール1を見た場合の状態については、光学スケール1の底面視上に対応する。
【0030】
(光学スケール1の追加構成)
光学スケール1には、図3に示すように、低反射層6上に裏当て基板7が積層されていてもよい。裏当て基板7は、光学スケール1の底面視上、低反射層6の表面全面を覆うように積層されることが好ましい。裏当て基板7は、光学スケール1からの低反射層6の剥離や破損を抑制する保護部材として機能しうる。裏当て基板7には、上述した樹脂基板2と同様に、樹脂製の基板が用いられる。その場合、裏当て基板7を構成する樹脂は、樹脂基板2を構成する樹脂として使用可能な樹脂から適宜選択されてよい。また、裏当て基板7の厚みも、適宜選択されてよい。裏当て基板7が樹脂製であると、それがガラス材や金属材などである場合に比べて可撓性に優れた光学スケール1が調製できる。
【0031】
[光学スケール1の製造方法]
光学スケール1は次のようにして製造することができる(図2)。ここでは、光学スケール1として、図3に示すような低反射層6上に裏当て基板7が積層されているものを例として説明する。
【0032】
(樹脂基板2にアルミニウム金属膜3を形成した積層構造体4の調製)
樹脂基板2を準備し、その樹脂基板2表面上に、図2Aに示すように、アルミニウムの金属を蒸着して蒸着膜8aを一面形成して一面蒸着膜を作製する。蒸着方法は、特に限定されず、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどといった公知の方法を適宜選択されてよい。次に、このアルミニウムの蒸着膜8aを一面形成した樹脂基板2における蒸着膜8a表面上に感光性樹脂組成物(レジスト)を塗布して塗布膜9aを形成し、この塗布膜9aを、図2Bに示すように、フォトマスクを介して露光して塗布膜9aを硬化させ、しかる後現像して、図2Cに示すようにレジスト硬化膜9をパターン形成する。このとき、塗布膜9aの露光時において、露光は、紫外線などの活性放射線を照射することで実施され、また、フォトマスク15としては、アルミニウム金属膜3の形成パターンに応じて光透過部16のパターンを形成しているものが用いられる。なお、図2Bでは、レジスト硬化膜9となる部分に対応した部分を光透過部16とした場合を示したが、光透過部16の形成パターンは、レジストの種類に応じて、図2Bに示すパターンを反転させたパターンとされてよい。
【0033】
さてレジスト硬化膜9は、アルミニウム金属膜3の形成パターンに対応したパターンにてパターン形成される。したがって、アルミニウムの蒸着膜8aのうち、アルミニウム金属膜3の形成部に対応する部分がレジスト硬化膜9で被覆され、アルミニウム金属膜3の非形成部に対応する部分は、外面に露出している。
【0034】
次に、図2Dに示すように、蒸着膜8aのうち外面に露出した部分をエッチングによって除去してパターン形成されたパターン化蒸着膜8を得る。このエッチングでは、パターン形成されたレジスト硬化膜9は、蒸着膜8aのマスクとして機能しうる。蒸着膜8aのエッチング方法については、公知の方法を適宜採用することができる。具体的に、エッチング方法としては、ウェットエッチング法、ドライエッチング法など適宜選択可能である。例えば、ドライエッチング法についてみるに、塩素ガス(Cl)や塩化ホウ素(BCl)などをエッチングガスとして適宜用いることで、アルミニウムの蒸着膜8aをドライエッチングすることができる。また、ウェットエッチング法については、リン酸と硝酸の混合液などをエッチング液として適宜用いることで、蒸着膜8aをウェットエッチングすることができる。こうして、蒸着膜8aは、アルミニウム金属膜3のパターンに応じたパターンにパターン形成されたパターン化蒸着膜8となる。そして、図2Eに示すように、パターン化蒸着膜8を覆うレジスト硬化膜9が除去され、パターン化蒸着膜8は、アルミニウム金属膜3をなし、積層構造体4が調製される。なお、レジスト硬化膜9の除去方法は、市販のレジスト剥離液を用いた洗浄等、公知方法を適宜用いて実地することができる。
【0035】
(裏当て基板7に低反射層6及び粘着層5を形成した基板Aの調製)
樹脂製の裏当て基板7を準備し、裏当て基板7面上に低反射層6を積層形成し、さらに低反射層6面上に粘着層5を形成する。このとき、低反射層6は、低反射層6を構成する組成物を裏当て基板7面上に印刷法する方法など、公知方法を適宜用いられて形成されてよく、また、粘着層5についても、粘着層5を構成する粘着剤組成物を低反射層6面上に塗布する方法など、公知方法を適宜用いられて形成されてよい。こうして、裏当て基板7に低反射層6及び粘着層5を形成した基板Aを得る。
【0036】
(積層構造体4と基板Aの貼り合せ)
積層構造体4のアルミニウム金属膜3形成面上に、基板Aの粘着層5形成面側を向かい合わせて、積層構造体4に基板Aを重ね合わせる。こうして、積層構造体4のアルミニウム金属膜3形成面上に粘着層5を粘着させて、積層構造体4と基板Aを貼り合せ、光学スケール1が得られる。
【0037】
なお、光学スケール1は、上記に示すような基板Aを用いた製造方法のほか、積層構造体4のアルミニウム金属膜3形成面側に、粘着層5、低反射層6などを順次積層しても得られる。
【0038】
光学スケール1は、樹脂基板2上にアルミニウム金属層3と粘着層5と低反射層6を備えて構成されている。樹脂基板2及び粘着層5は、いずれも可撓性に優れることから、光学スケール1としても可撓性を有するものとなり、曲率の安定した状態で湾曲させた状態を形成することの容易なものとなる。また、アルミニウム金属層3は、樹脂基板2と粘着層5に挟まれているため、光学スケール1を湾曲させても、アルミニウム金属層3のパターンが崩れる虞や樹脂基板2からアルミニウム金属層3が剥がれる虞も抑制される。さらに、既述したように、万が一、アルミニウム金属層3が樹脂基板2から剥がれが生じても、アルミニウム金属層3にパターン崩れが生じる虞も抑制される。
【0039】
[光学ユニット10]
光学ユニット10は、図4A、図4Bに示すように、光学スケール1と光源11と光センサ12を備える。光源11は光を光学スケール1の目盛り部15に向けて照射可能に設置され、光センサ12は、目盛り部15からの正反射光を受光可能に設置される。また、光源11及び光センサ12は、特に限定されず、公知の光学式位置検出装置に用いることができるものを適宜選択可能である。なお、光学スケール1は、図4Aでは、それを平面視した状態で記載されており、図4Bでは、概略縦断面の状態を記載されている。
【0040】
[光学ユニット1による変位の検出]
光学ユニット1において、光源から光学スケールの目盛り部に向けて光が照射されると、その目盛り部15に入射してきた光(図4A、図4B中、In)のうち、目盛り部15の正反射部13にあたった光は、その部分で正反射して正反射光(図4、図4B中、Re)となる。そして目盛り部15の正反射部13で反射した正反射光が光センサ12で検出される。一方、目盛り部15の低反射部14に向けられた光は、正反射部13よりも正反射するものが少ないため、光センサ12では十分に検出されないようにすることができる。このとき、光センサ12は正反射部13からの光を所定の検出パターンで検出することとなるが、光学スケール1と光センサ12との相対的な位置関係が変位するとその変位の大きさに応じて、この検出パターンは異なってくる。このため、光センサ12による検出パターンによって位置変位が検出できることとなる。
【0041】
光学スケール1では、アルミニウム金属膜3で正反射部13が形成されているため、アルミニウムの正反射率の高さによって正反射部13で強い正反射光を形成することができる。また、光学スケール1は、精緻なパターンにてパターン形成された正反射部13を形成可能であり、しかも樹脂基板2上のアルミニウム金属膜3を粘着層5で覆うことでアルミニウム金属層3の精緻なパターンを良好に保持される。こうしたことから、光学ユニット10は、極僅かな変位でも光センサ12による検出パターンに変化を与えることができるものとなり、極僅かな変位を高感度にて検出することが可能なものとなる。さらには、光学ユニット1は、光学スケール1を湾曲させて設置された形態にあっても、僅かな変位を高感度で検出可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 光学スケール
2 樹脂基板
3 アルミニウム金属膜
4 積層構造体
4a 積層構造体のアルミニウム金属膜形成面側の表面
5 粘着層
6 低反射層
7 裏当て基板
8 パターン化蒸着膜
8a 蒸着膜
9 レジスト硬化膜
9a 塗布膜
10 光学ユニット
11 光源
12 光センサ
13 正反射部
14 低反射部
15 フォトマスク
16 光透過部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する樹脂基板と、該樹脂基板面上に所定のパターンにて積層形成されているアルミニウム金属膜とからなる積層構造体を備え、
該積層構造体におけるアルミニウム金属膜形成面側の表面を覆って光透過性を有する粘着層が積層されており、且つ、粘着層面上にアルミニウム金属膜よりも正反射率の低い低反射層が積層されている、ことを特徴とする光学スケール。
【請求項2】
アルミニウム金属膜は、アルミニウム蒸着膜から形成される、請求項1に記載の光学スケール。
【請求項3】
低反射層は、光吸収層である、請求項1または2に記載の光学スケール。
【請求項4】
低反射層上に、樹脂製の裏当て基板が積層されている、請求項1から3のいずれかに記載の光学スケール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載された光学スケールと、光源と、光センサを備え、
光源から光学スケールに照射された光のうち光学スケールのアルミニウム金属膜で反射した反射光を光センサで検出可能に構成してなる光学ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−61156(P2013−61156A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197876(P2011−197876)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(591152643)株式会社大山光学 (6)
【Fターム(参考)】