光学センサ、画像形成装置及び判別方法
【課題】対象物の識別を精度良く安定して行うことが可能な光学センサを提供する。
【解決手段】 第1の光照射系10、第2の光照射系20、第1の正反射光検出系30、第2の正反射光検出系40などを有している。第1の光照射系10は、暗箱50の開口部に対して−X側に配置され、第2の光照射系20は、暗箱50の開口部に対して+X側に配置され、それぞれ開口部に向けて光束を射出する。試料台の表面に対する、第1の光照射系10からの照射光の入射角、及び第2の光照射系20からの照射光の入射角は、同じ入射角である。第1の正反射光検出系30は、第1の光照射系10から射出され、記録紙で正反射された光束を検出し、第2の正反射光検出系40は、第2の光照射系20から射出され、記録紙で正反射された光束を検出する。
【解決手段】 第1の光照射系10、第2の光照射系20、第1の正反射光検出系30、第2の正反射光検出系40などを有している。第1の光照射系10は、暗箱50の開口部に対して−X側に配置され、第2の光照射系20は、暗箱50の開口部に対して+X側に配置され、それぞれ開口部に向けて光束を射出する。試料台の表面に対する、第1の光照射系10からの照射光の入射角、及び第2の光照射系20からの照射光の入射角は、同じ入射角である。第1の正反射光検出系30は、第1の光照射系10から射出され、記録紙で正反射された光束を検出し、第2の正反射光検出系40は、第2の光照射系20から射出され、記録紙で正反射された光束を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学センサ、画像形成装置及び判別方法に係り、更に詳しくは、対象物を特定するのに好適な光学センサ、前記光学センサを備える画像形成装置、及び前記光学センサを用いて紙の種類を判別する判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル複写機、レーザプリンタ等のいわゆる電子写真方式の画像形成装置では、記録紙等の記録媒体にトナー像を転写し、該記録媒体を所定の条件で加熱及び加圧することにより、トナー像を記録媒体に定着させている。この場合、高画質な画像形成を行うには、トナー像を定着するための条件を記録媒体の種類に応じて適切に設定する必要がある。
【0003】
ところで、特許文献1には、記録材表面に当接して走査することにより該記録材表面の表面性を識別するセンサを備える表面性識別装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、圧力センサが用紙に当接して検出した圧力値から、用紙種類を判別する印刷装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、反射光と透過光とを用いて記録材の種類を判別する記録材判別装置が開示されている。
【0006】
特許文献4には、移動中のシート材の材質をシート材の表面で反射した反射光量とシート材を透過した透過光量に基づいて判別するシート材材質判別装置が開示されている。
【0007】
特許文献5には、反射型光学センサからの検出出力に基づいて、給紙部に収容された記録材の有無と給紙部の有無とを判別する判別手段を有する画像形成装置が開示されている。
【0008】
特許文献6には、記録媒体に光を照射してその反射光の2つの偏光成分の光量をそれぞれ検出して記録媒体の表面性を判別する画像形成装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の装置は、必ずしも安定した十分な識別精度を有していなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、対象物の表面に向けて、第1の方向から光を射出する第1の照射系と、前記対象物の表面に向けて、前記第1の方向とは異なる第2の方向から光を射出する第2の照射系と、前記第1の照射系から射出され前記対象物で正反射された光を受光する第1の正反射光受光系と、前記第2の照射系から射出され前記対象物で正反射された光を受光する第2の正反射光受光系とを備え、前記対象物は、平面上に載置され、前記第1及び第2の照射系から射出された光の前記平面に対する入射角は互いに等しい光学センサである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学センサによれば、対象物の識別を精度良く安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図1における光学センサの構成を説明するための図(その1)である。
【図3】図1における光学センサの構成を説明するための図(その2)である。
【図4】面発光レーザアレイを説明するための図である。
【図5】図5(A)及び図5(B)は、それぞれ試料台表面に対する照射光の入射角を説明するための図である。
【図6】第1の測定系を説明するための図である。
【図7】第2の測定系を説明するための図である。
【図8】図8(A)は表面正反射光を説明するための図であり、図8(B)は表面拡散反射光を説明するための図であり、図8(C)は内部拡散反射光を説明するための図である。
【図9】照明領域のシフトを説明するための図である。
【図10】照明領域の傾斜を説明するための図である。
【図11】光学センサの変形例1を説明するための図である。
【図12】光学センサの変形例2を説明するための図である。
【図13】光学センサの変形例3を説明するための図(その1)である。
【図14】光学センサの変形例3を説明するための図(その2)である。
【図15】光学センサの変形例4を説明するための図(その1)である。
【図16】光学センサの変形例4を説明するための図(その2)である。
【図17】記録紙判別テーブルを説明するための図である。
【図18】傾き補正の効果を説明するための図である。
【図19】光学センサの変形例5を説明するための図(その1)である。
【図20】光学センサの変形例5を説明するための図(その2)である。
【図21】内部拡散反射光量と記録紙の厚さとの関係を説明するための図である。
【図22】内部拡散反射光量と記録紙の密度との関係を説明するための図である。
【図23】光学センサの変形例6を説明するための図(その1)である。
【図24】光学センサの変形例6を説明するための図(その2)である。
【図25】図25(A)〜図25(C)は、それぞれ記録紙表面に一軸配向の凹凸構造があるときの、光の入射方向と反射光との関係を説明するための図(その1)である。
【図26】図26(A)及び図26(B)は、それぞれ記録紙表面に一軸配向の凹凸構造があるときの、光の入射方向と反射光との関係を説明するための図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
【0014】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着装置2050、給紙コロ2054、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、光学センサ2245、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
【0015】
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0016】
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するAD変換回路などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、上位装置からの要求に応じて各部を制御するとともに、上位装置からの画像情報を光走査装置2010に送る。
【0017】
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
【0018】
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
【0019】
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
【0020】
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
【0021】
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。なお、各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転する。
【0022】
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
【0023】
光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)に基づいて色毎に変調された光束によって、対応する帯電された感光体ドラムの表面をそれぞれ走査する。これにより、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像ローラの方向に移動する。
【0024】
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
【0025】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされて多色のカラー画像が形成される。
【0026】
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出す。該記録紙は、所定のタイミングで転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出される。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。ここでカラー画像が転写された記録紙は、定着装置2050に送られる。
【0027】
定着装置2050では、カラー画像が転写された記録紙に熱と圧力とが加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。ここでトナーが定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次積み重ねられる。
【0028】
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
【0029】
光学センサ2245は、給紙トレイ2060内に収容されている記録紙の銘柄を特定するのに用いられる。すなわち、光学センサ2245は、記録紙の種類を判別するのに用いられる。
【0030】
この光学センサ2245は、一例として図2及び図3に示されるように、第1の光照射系10、第2の光照射系20、第1の正反射光検出系30、第2の正反射光検出系40、及びこれらが収納される暗箱50などを有している。
【0031】
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、記録紙が載置される試料台の表面に直交する方向をZ軸方向、試料台の表面に平行な面をXY面として説明する。そして、光学センサ2245は、記録紙の+Z側に配置されているものとする。また、記録紙は、+Y方向に移動するものとする。
【0032】
暗箱50は、金属製の箱部材、例えば、アルミニウム製の箱部材であり、外乱光及び迷光の影響を低減するため、表面に黒アルマイト処理が施されている。暗箱50の−Z側の面の中央には、開口部が設けられている。
【0033】
第1の光照射系10と第1の正反射光検出系30は組として用いられ、以下では、「第1の測定系」ともいう。
【0034】
同様に、第2の光照射系20と第2の正反射光検出系40は組として用いられ、以下では、「第2の測定系」ともいう。
【0035】
第1の光照射系10は、暗箱50の開口部に対して−X側に配置され、光源11及びコリメートレンズ12を有している。
【0036】
第2の光照射系20は、暗箱50の開口部に対して+X側に配置され、光源21及びコリメートレンズ22を有している。
【0037】
各光源は、複数の発光部を有する面発光レーザアレイを有している。ここでは、一例として図4に示されるように、9個の発光部が2次元配列されている。
【0038】
各光源の複数の発光部は、プリンタ制御装置2090によって個別に点灯及び消灯される。
【0039】
コリメートレンズ12は、光源11から射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光とする。コリメートレンズ12を介した光束が、第1の光照射系10から射出される光束である。
【0040】
第1の光照射系10は、該第1の光照射系10から射出された光束が、Z軸方向からみたときX軸方向に対して平行であり、Y軸方向からみたときX軸方向及びY軸方向のいずれに対しても傾斜して、暗箱50の開口部に向かうように配置されている。
【0041】
コリメートレンズ22は、光源21から射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光とする。コリメートレンズ22を介した光束が、第2の光照射系20から射出される光束である。
【0042】
第2の光照射系20は、該第2の光照射系20から射出された光束が、Z軸方向からみたときX軸方向に対して平行であり、Y軸方向からみたときX軸方向及びY軸方向のいずれに対しても傾斜して、暗箱50の開口部に向かうように配置されている。
【0043】
すなわち、Z軸方向からみたとき、第1の光照射系10から射出された光束と第2の光照射系20から射出された光束は、平行である。
【0044】
そして、第1の測定系と第2の測定系は、干渉を避けるため、Y軸方向に関して距離Dだけ離れて配置されている。
【0045】
第1の光照射系10から射出された光束及び第2の光照射系20から射出された光束は、図5(A)及び図5(B)に示されるように、いずれも暗箱50の開口部を通過して記録紙を照明する。
【0046】
なお、以下では、記録紙の表面における照明領域の中心を「照明中心」と略述する。また、各光照射系から射出された光束を「照射光」ともいう。
【0047】
試料台の表面に対する、第1の光照射系10からの照射光の入射角、及び第2の光照射系20からの照射光の入射角は、同じ入射角θである。ここでは、一例としてθ=80°としている。
【0048】
また、第1の光照射系10からの照射光による照明領域の面積と、第2の光照射系20からの照射光による照明領域の面積とは、略同じである。
【0049】
また、第2の光照射系20から光束を射出するタイミングを、記録紙の移動速度と上記距離Dに基づいて、第1の光照射系10から光束を射出するタイミングに対して遅らせることにより、第1の光照射系10からの照射光の照明中心と、第2の光照射系20からの照射光の照明中心とが略一致するようにしている。
【0050】
ところで、光が媒質の境界面に入射するとき、入射光線と入射点に立てた境界面の法線とを含む面は「入射面」と呼ばれている。そこで、入射光が複数の光線からなる場合は、光線毎に入射面が存在することとなるが、ここでは、便宜上、照明中心に入射する光線の入射面を、記録紙における入射面ということとする。すなわち、照明中心を含みXZ面に平行な面が記録紙における入射面である。
【0051】
第1の正反射光検出系30は、集光レンズを備えた光検出器31を有し、一例として図6に示されるように、第1の光照射系10から射出され、記録紙で正反射された光束の光路上に配置されている。
【0052】
そして、Z軸方向からみると、第1の光照射系10と第1の正反射光検出系30は、X軸方向に延びる同一直線上に位置している。
【0053】
第2の正反射光検出系40は、集光レンズを備えた光検出器41を有し、一例として図7に示されるように、第2の光照射系20から射出され、記録紙で正反射された光束の光路上に配置されている。
【0054】
そして、Z軸方向からみると、第2の光照射系20と第2の正反射光検出系40は、X軸方向に延びる同一直線上に位置している。
【0055】
各光検出器の出力信号は、プリンタ制御装置2090に送られる。以下では、光検出器31の出力信号における信号レベルを「S11」といい、光検出器41の出力信号における信号レベルを「S21」という。
【0056】
ところで、記録紙を照明したときの記録紙から反射光は、記録紙の表面で反射された反射光と、記録紙の内部で反射された反射光に分けて考えることができる。また、記録紙の表面で反射された反射光は、正反射された反射光と拡散反射された反射光に分けて考えることができる。以下では、便宜上、記録紙の表面で正反射された反射光を「表面正反射光」、拡散反射された反射光を「表面拡散反射光」ともいう(図8(A)及び図8(B)参照)。
【0057】
一方、記録紙の内部からの反射光は、該記録紙が一般の印刷用紙である場合、その内部の繊維中で多重散乱するため拡散反射光のみとなる。以下では、便宜上、記録紙の内部からの反射光を「内部拡散反射光」ともいう(図8(C)参照)。この内部拡散反射光も、表面拡散反射光と同様に、完全に散乱反射された反射光であり、その反射方向は等方性があるとみなせる。
【0058】
表面正反射光及び表面拡散反射光の偏光状態は、入射光の偏光状態と同じである。一方、内部拡散反射光の偏光状態は、入射光の偏光状態に対して異なっている。これは、繊維中を透過し、多重散乱される間に旋光し、偏光方向が回転するためと考えている。
【0059】
ところで、記録紙は、たわみや振動等の理由から、その表面における照射光が照射される領域(照明領域)が、設計上の位置に対してZ軸方向にシフトしたり、XY面に対して傾斜したりすることがある。なお、以下では、XY面に平行な設計上の記録紙表面を「基準面」という。
【0060】
図9には、上記照明領域が、上記基準面に対して−Z方向にdだけシフトしている場合が示されている。なお、図9では、分かりやすくするため、シフト量が誇張して示されている。
【0061】
この場合、光検出器での表面正反射光の受光位置は、集光レンズがないとき、2d×sinθだけずれる。
【0062】
例えば、入射角度θが80°、シフト量dが1mmの場合、受光位置のずれ量は約2mmとなる。この場合、(a)光検出器の受光素子として受光領域の大きさが2mm以上のフォトダイオード(PD)を用いる、(b)表面正反射光のビーム径が2mmに対して十分小さくなるように照射光のビーム径を小さくする、(c)受光部の前方に口径が2mm以上の大きさの集光レンズを配置する、ことにより対処できる。
【0063】
このとき、上記フォトダイオード(PD)に代えて、複数の受光領域を有し、受光領域の合計の大きさが2mm以上のPDアレイを用いても良い。この場合、受光位置がずれたとしても、複数の受光領域から個別に出力される信号のうち最大レベルの信号を表面正反射光の受光信号とすることができる。また、上記フォトダイオード(PD)では、受光位置が受光領域の中心からずれることに起因して出力が変化するおそれがあるが、PDアレイでは、個々の受光領域を小さくすることができるため、上記おそれはなく、より正確な検出を行うことができる。
【0064】
また、図10には、上記照明領域が上記基準面上のY軸方向に平行な軸(傾斜軸)まわりに角度αだけ傾斜している場合が示されている。なお、図10では、分かりやすくするため、傾斜が誇張して示されている。
【0065】
この場合は、照明領域に対する照射光の入射角がθ+αとなり、照明領域が傾斜していないときに対して、照明領域での照射光の反射率が変化する。すなわち、同じ銘柄の記録紙であっても、その照明領域が傾斜している場合と、傾斜していない場合とでは、光検出器の出力レベルが異なることとなる。
【0066】
次の(1)式で示されるフレネル係数R(n,θ)を用いて、無偏光の光が正反射される場合に、入射角の変化による反射率の変化を演算したところ、仮に入射角が80°から81°に変化すると、反射率の変化は約4%であった。nは相対屈折率、θは入射角である。ここでは、相対屈折率nとして、光が空気から一般的な記録紙の主成分であるセルロースに進むときの相対屈折率である1.53を用いた。
【0067】
【数1】
【0068】
そこで、反射率の変化に起因する光検出器の出力レベルの変化を補正することが必要となる。この補正方法として2つの方法が考えられる。
【0069】
(A)第1の補正方法
第1の補正方法は、次の(2)式を用いて、光検出器31の信号レベルS11と光検出器41の信号レベルS21の平均値Saveを算出し、該Saveを補正された信号レベルSmodとする。
Save=(S11+S21)/2 ……(2)
【0070】
(B)第2の補正方法
第2の補正方法は、信号レベルS11と信号レベルS21とから照明領域の傾斜角を求め、該傾斜角に基づいて信号レベルを補正する。
【0071】
照明領域が傾斜していないときの入射角θと傾斜角αとフレネル係数との間には、次の(3)式の関係がある。
【0072】
【数2】
上記(3)式から、本実施形態では、次の(4)式の関係が得られる。
【0073】
【数3】
上記(4)式から得られた傾斜角αを用い、次の(5)式から補正された信号レベルSmodを算出する。
【0074】
【数4】
【0075】
また、照明領域が傾斜していると、光検出器での表面正反射光の受光位置は、照明中心と光検出器の距離をLとすると、集光レンズがないとき、L×tan2αだけずれる。
【0076】
例えば、L=30mmで、入射角が80°から81°に変化すると、受光位置のずれは約1mmとなる。この場合、(1)光検出器の受光素子として受光領域の大きさが1mm以上のフォトダイオード(PD)を用いる、(2)表面正反射光のビーム径が1mmに対して十分小さくなるように照射光のビーム径を小さくする、(c)受光部の前方に口径が1mm以上の大きさの集光レンズを配置する、ことにより対処できる。
【0077】
なお、照明領域の傾斜及びシフトは、表面正反射光だけでなく、表面拡散反射光及び内部拡散反射光にも影響する。
【0078】
ここでは、カラープリンタ2000が対応可能な複数種類の記録紙に関して、予め調整工程等の出荷前工程で記録紙の種類毎に信号レベルS11を計測し、該計測結果に基づいて、誤差範囲を含めた信号レベルS11の範囲を記録紙に対応させた「記録紙判別テーブル」を作成し、プリンタ制御装置2090のROMに格納している。なお、信号レベルS11の計測に際しては、記録紙の表面が基準面と同一面となるように調整されている。また、複数種類の記録紙は、光沢度及び平滑度の少なくとも一方が異なる記録紙である。
【0079】
また、カラープリンタ2000が対応可能な複数銘柄の記録紙に関して、予め調整工程等の出荷前工程で記録紙の銘柄毎に各ステーションでの最適な現像条件及び転写条件を決定し、該決定結果を「現像・転写テーブル」としてプリンタ制御装置2090のROMに格納している。
【0080】
プリンタ制御装置2090は、カラープリンタ2000の電源が入れられたとき、及び給紙トレイ2060に記録紙が供給されたときなどに、光学センサ2245を用いて記録紙の紙種判別処理を行う。このプリンタ制御装置2090によって行われる紙種判別処理について以下に説明する。
【0081】
(1)光源11の複数の発光部を同時に点灯させる。
【0082】
(2)光検出器31の出力信号から信号レベルS11の値を求める。
【0083】
(3)光源11の複数の発光部を同時に消灯させる。
【0084】
(4)照明中心が略一致するように、記録紙の移動速度及び前記距離Dに基づいて算出された時間経過後に、光源21の複数の発光部を同時に点灯させる。
【0085】
(5)光検出器41の出力信号から信号レベルS21の値を求める。
【0086】
(6)光源21の複数の発光部を同時に消灯させる。
【0087】
(7)上記第1の補正方法あるいは第2の補正方法によって、補正された信号レベルSmodを求める。
【0088】
(8)上記記録紙判別テーブルを参照し、補正された信号レベルSmodと同じ値の信号レベルS11に対応する記録紙の種類を抽出する。これが、特定された記録紙の種類となる。
【0089】
(9)上記特定された記録紙の種類をRAMに保存し、紙種判別処理を終了する。
【0090】
プリンタ制御装置2090は、ユーザからの印刷ジョブ要求を受け取ると、RAMに保存されている記録紙の銘柄を読み出し、該記録紙の銘柄に対応する最適な現像条件及び転写条件を、現像・転写テーブルから抽出する。
【0091】
そして、プリンタ制御装置2090は、抽出された最適な現像条件及び転写条件に応じて各ステーションの現像装置及び転写装置を制御する。例えば、転写電圧やトナー量を制御する。これにより、高い品質の画像が記録紙に形成される。
【0092】
以上説明したように、本実施形態に係るカラープリンタ2000によると、光走査装置2010、4つの画像形成ステーション、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着装置2050、給紙コロ2054、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、光学センサ2245、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
【0093】
光学センサ2245は、第1の光照射系10、第2の光照射系20、第1の正反射光検出系30、第2の正反射光検出系40、及びこれらが収納される暗箱50などを有している。
【0094】
第1の光照射系10は、暗箱50の開口部よりも−X側に配置され、開口部に向けて光束を射出する。第2の光照射系20は、暗箱50の開口部よりも+X側に配置され、開口部に向けて光束を射出する。
【0095】
試料台の表面に対する、第1の光照射系10からの照射光の入射角、及び第2の光照射系20からの照射光の入射角は、同じ入射角θである。
【0096】
また、第1の光照射系10からの照射光による照明領域の面積と、第2の光照射系20からの照射光による照明領域の面積とは、略同じである。
【0097】
第1の正反射光検出系30は、集光レンズを備えた光検出器31を有し、第1の光照射系10から射出され、記録紙で正反射された光束の光路上に配置されている。第2の正反射光検出系40は、集光レンズを備えた光検出器41を有し、第2の光照射系20から射出され、記録紙で正反射された光束の光路上に配置されている。
【0098】
プリンタ制御装置2090は、記録紙の紙種判別処理を行う際に、光検出器31の出力信号と光検出器41の出力信号とに基づいて、照明領域の傾斜に起因する反射率の変化の影響を補正している。
【0099】
そこで、記録紙のたわみや振動等によって、照明領域が基準面に対して傾斜しても、記録紙の紙種判別を精度良く行うことができる。そして、その結果、記録紙の種類に応じた画像品質を適切に得ることができる。
【0100】
また、第1の光照射系10からの照射光の照明中心と、第2の光照射系20からの照射光の照明中心とが略一致しているため、記録紙表面の凹凸の影響を低減することができる。
【0101】
また、各光源が複数の発光部を有する面発光レーザアレイを有しているため、スペックルノイズを低減させることができるとともに、照射光の光量が高くなりS/Nの向上を図ることができる。さらに、照射光を容易に平行光にすることができるため、光利用効率が向上し、光検出器の出力信号の信号レベルを安定化させることができる。
【0102】
なお、上記実施形態では、面発光レーザアレイが9個の発光部を有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0103】
また、上記実施形態において、光学センサ2245は、記録紙の紙種判別処理の際にプリンタ制御装置2090で行われる処理の少なくとも一部を行う処理装置を有していても良い。
【0104】
《光学センサの変形例1》
変形例1の光学センサ(光学センサ2245aという)が図11に示されている。この光学センサ2245aは、前記光学センサ2245において、Z軸方向からみたとき、第1の測定系と第2の測定系とを非平行に配置したものである。この場合は、静止している記録紙において、第1の光照射系10からの照射光の照明中心と、第2の光照射系20からの照射光の照明中心とを略一致させることができる。そこで、第1の光照射系10の複数の発光部と、第2の光照射系20の複数の発光部を同時に点灯させることができる。
【0105】
《光学センサの変形例2》
変形例2の光学センサ(光学センサ2245bという)が図12に示されている。この光学センサ2245bは、前記光学センサ2245において、各光照射系の前方にビームスプリッタを配置し、正反射光を分岐させたものである。この場合は、Z軸方向からみたとき、第1の光照射系10からの照射光の光路、及び第2の光照射系20からの照射光の光路を、いずれもX軸方向に平行とするとともに、静止している記録紙において、第1の光照射系10からの照射光の照明中心と、第2の光照射系20からの照射光の照明中心とを略一致させることができる。
【0106】
《光学センサの変形例3》
変形例3の光学センサ(光学センサ2245cという)が図13及び図14に示されている。この光学センサ2245cは、前記光学センサ2245に、第3の光照射系60と第3の正反射光検出系70とからなる第3の測定系を追加したものである。なお、図14では、煩雑さを避けるため、前記第1の測定系及び前記第2の測定系の図示を省略している。
【0107】
第3の光照射系60は、光源61及びコリメートレンズ62を有し、暗箱50の開口部に対して−Y側に配置され、開口部に向けて光束を射出する。
【0108】
試料台の表面に対する、第3の光照射系60からの照射光の入射角は、第1の光照射系10からの照射光の入射角、及び第2の光照射系20からの照射光の入射角と同じ入射角θである。
【0109】
また、第3の光照射系60からの照射光による照明領域の面積は、第1の光照射系10からの照射光による照明領域の面積、及び第2の光照射系20からの照射光による照明領域の面積と略同じである。
【0110】
また、第3の光照射系60からの照射光の照明中心は、第1の光照射系10からの照射光の照明中心、及び第2の光照射系20からの照射光の照明中心にできるだけ近接するように設定されている。
【0111】
第3の正反射光検出系70は、集光レンズを備えた光検出器71を有し、第3の光照射系60から射出され、記録紙で正反射された光束の光路上に配置されている。以下では、光検出器71の出力信号における信号レベルを「S31」という。
【0112】
第3の光照射系60と第3の正反射光検出系70は、Z軸方向からみると、Y軸方向に延びる同一直線上に位置している。
【0113】
光源61の複数の発光部は、プリンタ制御装置2090によって個別に点灯及び消灯される。光検出器71の出力信号は、プリンタ制御装置2090に送られる。
【0114】
この場合、上記第1の補正方法では、上記(2)式に代えて、次の(6)式が用いられ、光検出器31の信号レベルS11と光検出器41の信号レベルS21と光検出器71の信号レベルS31の平均値Saveを補正された信号レベルSmodとする。
Save=(S11+S21+S31)/3 ……(6)
【0115】
また、上記第2の補正方法では、上記(4)式に代えて、次の(7)式〜(12)式が用いられ、上記(5)式に代えて、次の(13)式が用いられる。
【0116】
【数5】
【0117】
そこで、一般化するため、測定系の数をN個とし、i番目の測定系の光検出器の信号レベルをSi1、j(≠i)番目の測定系の光検出器の信号レベルをSj1とすると、上記第1の補正方法では、上記(2)式に代えて、次の(14)式が用いられ、上記第2の補正方法では、上記(4)式に代えて、次の(15)式が用いられ、上記(5)式に代えて、次の(16)式が用いられる。なお、(15)式は、i=1〜N、j=1〜N、i≠jについて求められる。
【0118】
【数6】
【0119】
この場合は、照明領域が更に上記基準面上のX軸方向に平行な軸(傾斜軸)まわりに傾斜していても、該傾斜の影響を補正することができる。
【0120】
なお、第1の測定系及び第2の測定系が、前記光学センサ2245aあるいは前記光学センサ2245bと同等であっても良い。
【0121】
《光学センサの変形例4》
変形例4の光学センサ2245dが図15及び図16に示されている。この光学センサ2245dは、前記光学センサ2245cに、拡散反射光検出系80を追加したものである。なお、図16では、煩雑さを避けるため、前記第3の測定系の図示を省略している。
【0122】
第1の光照射系10と第2の光照射系20と第1の正反射光検出系30は、Z軸方向からみると、X軸方向に延びる同一直線上に位置している。
【0123】
拡散反射光検出系80は、集光レンズを備えた光検出器81を有し、第1の光照射系10から射出され、記録紙で拡散反射された光束の光路上に配置されている。ここでは、図16における符号Ψは120°である。光検出器81は、第1の光照射系10から記録紙に照射された光の表面拡散反射光及び内部拡散反射光の合成光を検出するためのものである。光検出器81の出力信号は、プリンタ制御装置2090に送られる。なお、以下では、光検出器81の出力信号の信号レベルをS12という。
【0124】
この場合は、カラープリンタ2000が対応可能な複数種類の記録紙に関して、予め調整工程等の出荷前工程で記録紙の種類毎にS11及びS12の値を計測し、該計測結果を「記録紙判別テーブル」としてプリンタ制御装置2090のROMに格納している。この記録紙判別テーブルを図にしたものが図17に示されている。
【0125】
また、図18には、上記記録紙判別テーブルにおける前記第1又は第2の補正を行う前のS11とS12に対応する位置と、前記第1又は第2の補正で得られたSmodとS12に対応する位置とが示されている。補正前のS11とS12では記録紙の銘柄を特定することができなかったが、補正により、記録紙が銘柄Aであることが特定できた。
【0126】
光学センサ2245dを用いることにより、上記実施形態よりも更に精度良く記録紙の銘柄を判別することができる。
【0127】
なお、光学センサ2245dでは、1つの計測系にのみ拡散反射光検出系が付加されているが、複数の計測系に拡散反射光検出系がそれぞれ付加されても良い。
【0128】
また、第1の測定系及び第2の測定系が、前記光学センサ2245aあるいは前記光学センサ2245bと同等であっても良い。
【0129】
また、前記光学センサ2245に、拡散反射光検出系80が追加されても良い。
【0130】
《光学センサの変形例5》
変形例5の光学センサ2245eが図19及び図20に示されている。この光学センサ2245eは、前記光学センサ2245dに、内部拡散反射光検出系90を追加したものである。また、各光照射系に偏光素子が追加されている。なお、図19では、煩雑さを避けるため、前記第3の測定系の図示を省略している。
【0131】
第1の光照射系10は、コリメートレンズ12を介した光束を第1の偏光方向の直線偏光にする偏光素子13を有している。
【0132】
第2の光照射系20は、コリメートレンズ22を介した光束を第1の偏光方向の直線偏光にする偏光素子23を有している。
【0133】
第3の光照射系60は、コリメートレンズ62を介した光束を第1の偏光方向の直線偏光にする偏光素子63を有している。
【0134】
内部拡散反射光検出系90は、照明中心の+Z側に配置され、第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の直線偏光を透過させる偏光フィルタ92と、該偏光フィルタ92を通過した光束を受光し、集光レンズを備えた光検出器91を有している。光検出器91の出力信号は、プリンタ制御装置2090に送られる。なお、以下では、光検出器91の出力信号の信号レベルをS13という。
【0135】
ここでは、第1の偏光方向の直線偏光をs偏光、第2の偏光方向の直線偏光をp偏光としている。なお、第1の偏光方向は、前記基準面に平行である。また、図19における符号Φは略90°である。
【0136】
この場合は、上記フレネル係数R(n,θ)は、次の(17)式で示される。
【0137】
【数7】
【0138】
なお、第1の偏光方向の直線偏光をp偏光とする場合は、上記フレネル係数R(n,θ)は、次の(18)式で示される。
【0139】
【数8】
【0140】
第1の光照射系10と第1の正反射光検出系30と拡散反射光検出系80と内部拡散反射光検出系90とは、Z軸方向からみると、X軸方向に延びる同一直線上に位置している。
【0141】
表面正反射光及び表面拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向と同じである。ところで、記録紙の表面で偏光方向が回転するには、入射光がその光軸に対して該回転の向きに傾斜した面で反射されなくてはならない。ここでは、光源の中心と照明中心と各受光器の中心とが同一平面上にあるため、記録紙の表面で偏光方向が回転した反射光は、いずれの受光器の方向にも反射されない。
【0142】
一方、内部拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向に対して回転している。これは、繊維中を透過し、多重散乱される間に旋光し、偏光方向が回転するためと考えている。
【0143】
そこで、第1の光照射系10から光が射出されると、偏光フィルタ92には、表面拡散反射光及び内部拡散反射光が入射する。表面拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向と同じであるため、表面拡散反射光は、偏光フィルタ92で遮光される。一方、内部拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向に対して回転しているため、内部拡散反射光に含まれるp偏光成分が、偏光フィルタ92を透過する。すなわち、内部拡散反射光に含まれるp偏光成分が光検出器91で受光される。
【0144】
内部拡散反射光に含まれるp偏光成分の光量は、記録紙の厚みや密度に相関を持つことが発明者らによって確認されている。これは、該p偏光成分の光量が、記録紙の繊維中を通過する際の経路長に依存するためである。
【0145】
一例として図21に示されるように、内部拡散反射光量と記録紙の厚さとは相関関係があり、記録紙の厚さが厚くなると内部拡散反射光量の値が増加する。そこで、内部拡散反射光量の値に基づき記録紙の厚さを知ることができる。
【0146】
また、一例として図22に示されるように、内部拡散反射光量と記録紙の密度とは相関関係があり、記録紙の密度が高くなると内部拡散反射光量の値が増加する。そこで、内部拡散反射光量の値に基づき記録紙の密度を知ることができる。
【0147】
なお、図21及び図22は、厚さ及び密度の異なる複数の記録紙を用いて測定した結果である。
【0148】
そこで、光学センサ2245eを用いることにより、光沢度、平滑度、厚さ、及び密度の少なくともいずれかが異なる複数の記録紙のなかから対象物の銘柄を特定することが可能である。
【0149】
また、光学センサ2245eを用いることにより、記録紙の種類を判別するための基準(判別基準)が、(a)表面正反射光量、(b)表面拡散反射光量、(c)内部拡散反射光量の3つとなり、更に詳細な判別を行うことができる。
【0150】
この場合は、カラープリンタ2000が対応可能な複数種類の記録紙に関して、予め調整工程等の出荷前工程で記録紙の種類毎にS11、S12及びS13の値を計測し、該計測結果を「記録紙判別テーブル」としてプリンタ制御装置2090のROMに格納している。
【0151】
ところで、精度の高い内部拡散反射光の検出を行うためには、少なくとも検出方向に向かう光が表面正反射光の成分を含まないのが好ましい。実際の照射系では、完全な一方向(第1の偏光方向)のみの光を射出することは困難である。そこで、記録紙の表面で反射された光にも、第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の成分が含まれてしまう。
【0152】
具体的には、表面正反射光が検出される位置に光検出器を設置し、偏光フィルタを用いて第2の偏光方向の偏光成分の光量を検出する場合、記録紙に照射される光に第2の偏光方向の偏光成分が含まれていると、この偏光成分も光検出器で検出されてしまい、内部拡散反射光の光量の検出精度が低下する。
【0153】
記録紙からの内部拡散反射光は光量が少ないため、記録紙に照射される光に含まれている第2の偏光方向の偏光成分の光量が、内部拡散反射光の光量よりも多くなるおそれがある。
【0154】
なお、記録紙に照射される光を完全な第1の偏光方向の光とすることも可能ではあるが、この場合、消光比の高い偏光フィルタを用いることが必要となり、高コスト化を招く。
【0155】
また、精度の高い内部拡散反射光の検出を行うためには、記録紙の表面に略直交する方向に光検出器を配置するのが好ましい。これは、内部拡散反射光を完全拡散反射光とみなすことができるため、検出方向と反射光量の関係をランバート分布で近似することができ。すなわち、照明領域に直交する方向が最も内部拡散反射光の光量が多くなる。
【0156】
内部拡散反射光は光量が微小であるため、照明領域に略直交する方向に光検出器を配置することにより、S/Nが向上し、内部拡散反射光の検出精度を最も高くすることができる。
【0157】
なお、内部拡散反射光を検出するための光検出器が複数設置される場合には、該複数の光検出器は、光検出器同士が干渉しない位置であって、照明領域に略直交する方向に設置されるのが好ましい。また、この場合、照明領域に略直交する方向にビームスプリッタを設けて反射光を分岐させても良い。
【0158】
上記第1及び第2の補正方法では、2つの信号レベルから反射率の変化量を直線近似しているが、実際の反射率の変化は上記(1)式に示されるように非線形である。そこで、入射角と反射率の関係が線形に近いほど、第1及び第2の補正方法を用いて正確に補正することができる。
【0159】
光学センサ2245eでは、直線偏光が記録紙に照射されるため、無偏光が記録紙に照射される場合に比べて入射角と反射率の関係を線形に近づけることができる。すなわち、上記実施形態よりも、より正確に補正することができる。
【0160】
また、記録紙の表面では、s偏光は、無偏光及びp偏光に比べて反射率が小さい。光学センサ2245eでは、s偏光が記録紙に照射されるため、無偏光及びp偏光に比べて内部拡散反射光の光量が大きく、光検出器91の出力信号における信号レベルのS/Nを向上させることができる。
【0161】
近年の画像形成装置の進歩と表現方法の多様化に伴い、印刷用紙の種類は印刷用紙だけでも数百種類以上存在し、さらにそれぞれの種類において坪量や厚さなどの仕様の違いで多岐にわたる銘柄がある。高品質の画像形成のためにはこれら銘柄の1つ1つに応じた細かな定着条件を設定する必要がある。
【0162】
また、近年、普通紙、グロスコート紙・マットコート紙・アートコート紙に代表される塗工紙、プラスチックシート、表面にエンボス加工が施された特殊紙に関しても銘柄が増加している。
【0163】
しかしながら、特許文献3に開示されている記録材判別装置で判別できるのは、平滑性が異なる記録材だけであり、平滑性が同じで厚みが異なる記録材を区別することはできなかった。
【0164】
また、特許文献4に開示されているシート材材質判別装置、特許文献5及び特許文献6に開示されている画像形成装置では、識別(判別)可能なのは、非塗工紙と塗工紙とOHPシートの違いのみであり、高品質の画像形成に必要な銘柄までの特定はできなかった。
【0165】
光学センサ2245eを用いると、記録紙表面の情報に、記録紙内部の情報が加わることにより、普通紙とマットコート紙の区別だけでなく、複数銘柄の普通紙、及び複数銘柄のマットコート紙もそれぞれ区別することが可能となる。すなわち、光沢度、平滑度、厚さ、及び密度の少なくともいずれかが異なる複数の記録紙のなかから対象物の銘柄を特定することが可能となる。
【0166】
なお、第1の測定系及び第2の測定系が、前記光学センサ2245aあるいは前記光学センサ2245bと同等であっても良い。
【0167】
また、前記光学センサ2245に、内部拡散反射光検出系90が追加されても良い。
【0168】
《光学センサの変形例6》
変形例6の光学センサ2245fが図23及び図24に示されている。この光学センサ2245fは、前記光学センサ2245eに、第4の光照射系100と第4の正反射光検出系110とからなる第4の測定系を追加したものである。なお、図24では、煩雑さを避けるため、前記第1の測定系、前記第2の測定系、前記拡散反射光検出系80、及び前記内部拡散反射光検出系90の図示を省略している。
【0169】
第4の光照射系100は、光源101、コリメートレンズ102、及び偏光素子103を有し、暗箱50の開口部に対して+Y側に配置され、開口部に向けて光束を射出する。
【0170】
第4の正反射光検出系110は、集光レンズを備えた光検出器111を有し、第4の光照射系100から射出され、記録紙で正反射された光束の光路上に配置されている。
【0171】
光源101の複数の発光部は、プリンタ制御装置2090によって個別に点灯及び消灯される。光検出器111の出力信号は、プリンタ制御装置2090に送られる。
【0172】
第4の光照射系100と第4の正反射光検出系110は、Z軸方向からみると、Y軸方向に延びる同一直線上に位置している。
【0173】
試料台の表面に対する、第4の光照射系100からの照射光の入射角は、第1の光照射系10からの照射光の入射角、第2の光照射系20からの照射光の入射角、及び第3の光照射系60からの照射光の入射角と同じ入射角θである。
【0174】
また、第4の光照射系100からの照射光による照明領域の面積は、第1の光照射系10からの照射光による照明領域の面積、第2の光照射系20からの照射光による照明領域の面積、及び第3の光照射系60からの照射光による照明領域の面積と略同じである。
【0175】
また、第4の光照射系100からの照射光の照明中心は、第1の光照射系10からの照射光の照明中心、第2の光照射系20からの照射光の照明中心、及び第3の光照射系60からの照射光の照明中心にできるだけ近接するように設定されている。
【0176】
なお、第1の測定系及び第2の測定系が、前記光学センサ2245aあるいは前記光学センサ2245bと同等であっても良い。
【0177】
また、Z軸方向からみたとき、第3の測定系と第4の測定系とが非平行に配置されても良い。
【0178】
また、第3の測定系及び第4の測定系が、前記光学センサ2245bでの第1の測定系及び第2の測定系と同様に、各光照射系の前方に正反射光を分岐させるビームスプリッタを有していても良い。
【0179】
ところで、記録紙は、製造工程において一方向に流れるように製造される。これにより記録紙には流れ目と称される記録紙を構成する繊維の配向が生じている。この繊維の配向は記録紙の製造工程において記録紙が流れる方向に沿うように形成されている。このため、同じ記録紙でも光の照射される方向によって反射特性が異なることがある。
【0180】
このことについて、図25(A)〜図26(B)を用いて説明する。図25(A)〜図26(B)では、記録紙は、流れ目がY軸方向に沿っており、表面に該流れ目による凹凸が形成されている。
【0181】
ここで、図25(A)及び図25(B)に示されるように、YZ面に平行な方向から光が照射される場合は、記録紙の表面は平滑な平面とみなすことができ、照射光の大部分は記録紙の表面で正反射され、表面拡散反射光はほとんど発生しない。また、記録紙の表面における照明領域がY軸方向にずれたとしても、表面正反射光の光量は変化しない。
【0182】
また、図25(C)に示されるように、図25(A)及び図25(B)に示される照射光に対して、Z軸方向に平行な軸まわりに180°回転した方向から同じ照明領域に同じ入射角で照射された光の表面正反射光の光量は、図25(A)及び図25(B)の場合と同じである。
【0183】
次に、図26(A)及び図26(B)に示されるように、YZ面に直交する方向から光が照射される場合は、記録紙の表面は凹凸のある斜面とみなすことができ、照射光の大部分は表面で拡散反射され、表面正反射光はほとんど発生しない。そこで、この場合は、表面拡散反射光の光量が、図25(A)及び図25(B)の場合よりも多くなる。
【0184】
また、記録紙の表面における照明領域がX軸方向にずれると、表面拡散反射光の光量は、照明領域の傾斜に応じて変化する。
【0185】
また、図26(A)及び図26(B)に示される照射光に対して、Z軸方向に平行な軸まわりに180°回転した方向から同じ照明領域に同じ入射角で照射された光の表面拡散反射光の光量は、図25(A)及び図25(B)の場合とは異なる。
【0186】
通常、記録紙は、流れ目の方向と記録紙の長辺方向とが平行となるように裁断され製紙されている場合が多い。そこで、上記実施形態では、X軸方向が記録紙における流れ目の方向と一致するように光学センサ2245を配置するのが好ましい。この場合、光検出器31の出力信号及び光検出器41の出力信号を安定化させることができる。そこで、プリンタ制御装置2090は、光検出器31の出力信号及び光検出器41の出力信号に基づいて記録紙の紙種判別処理を行う際に、記録紙のたわみや振動等によって、照明領域が基準面に対して傾斜しても、記録紙の紙種判別を更に精度良く行うことができる。
【0187】
また、光学センサ2245fを用いる場合には、流れ目の方向と長辺方向とが平行となるように裁断された記録紙、及び流れ目の方向と短辺方向とが平行となるように裁断された記録紙のいずれにも対応することができる。
【0188】
なお、記録紙の表面における凹凸の一軸配向性が100%でない場合には、最も配向性の高い方向がX軸方向と一致するように光学センサ2245を配置することにより、光学センサ2245から出力される各信号レベルの安定性を高めることができる。
【0189】
また、上記実施形態では、給紙トレイが1つの場合について説明したが、これに限定されるものではなく、給紙トレイが複数あっても良い。この場合は、給紙トレイ毎に光学センサ2245を設けても良い。
【0190】
また、上記実施形態において、搬送中に記録紙の銘柄を特定しても良い。この場合は、光学センサ2245は搬送路近傍に配置される。例えば、光学センサ2245を、前記給紙コロ2504と前記転写ローラ2042の間の搬送路近傍に配置しても良い。
【0191】
また、光学センサ2245によって識別される対象物は、記録紙に限定されるものではない。
【0192】
なお、上記実施形態では、画像形成装置としてカラープリンタ2000の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、光プロッタやデジタル複写装置であっても良い。
【0193】
また、上記実施形態では、画像形成装置が4つの感光体ドラムを有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0194】
また、光学センサ2245、及び上記各変形例は、記録紙にインクを吹き付けて画像を形成する画像形成装置にも適用可能である。
【0195】
なお、光学センサ2245e及び光学センサ2245fを対象物の厚さ検出へ応用することができる。従来の厚さセンサは透過型の構成となっており、必ず対象物を挟んだ双方向に光学系をそれぞれ配置しなければならなかった。そのため、支持部材などが必要であった。一方、光学センサ2245c及び光学センサ2245dでは、反射光のみで厚さを検出するため、対象物の一側にのみ光学系を配置すれば良い。そこで、部品点数を少なくすることができ、低コスト化及び小型化が可能となる。対象物の厚さ検出を必要とする画像形成装置内に設置するには最適である。そして、プリンタ制御装置2090は、検出された厚さに応じて画像形成条件を調整しても良い。
【0196】
また、光学センサ2245e及び光学センサ2245fを対象物の密度検出へ応用することができる。従来の密度センサは透過型の構成となっており、必ず対象物を挟んだ双方向に光学系をそれぞれ配置しなければならなかった。そのため、支持部材などが必要であった。一方、光学センサ2245c及び光学センサ2245dでは、反射光のみで密度を検出するため、対象物の一側にのみ光学系を配置すれば良い。そこで、部品点数を少なくすることができ、低コスト化及び小型化が可能となる。対象物の密度検出を必要とする画像形成装置内に設置するには最適である。そして、プリンタ制御装置2090は、検出された密度に応じて画像形成条件を調整しても良い。
【0197】
また、光学センサ2245及び上記各変形例を対象物の平滑度検出へ応用することができる。記録紙の表面は、平面部と傾面部とで構成され、その割合で記録紙表面の平滑性が決定される。平面部で反射された光は表面正反射光となり、斜面部で反射された光は表面拡散反射光となる。表面拡散反射光は、完全に散乱反射された反射光であり、その反射方向は等方性があるとみなせる。そして、平滑性が高くなるほど表面正反射光の光量が増加する。そして、プリンタ制御装置2090は、検出された平滑度に応じて画像形成条件を調整しても良い。
【0198】
また、光学センサ2245及び上記各変形例を対象物の傾斜角検出へ応用することができる。
【符号の説明】
【0199】
10…第1の光照射系、11…光源、12…コリメートレンズ、13…偏光素子、20…第2の光照射系、21…光源、22…コリメートレンズ、23…偏光素子、30…第1の正反射光検出系、31…光検出器、40…第2の正反射光検出系、41…光検出器、50…暗箱、60…第3の光照射系、61…光源、62…コリメートレンズ、63…偏光素子、70…第3の正反射光検出系、71…光検出器、80…拡散反射光検出系、81…光検出器、90…内部拡散反射光検出系、91…光検出器、92…偏光フィルタ(光学素子)、100…第4の光照射系、101…光源、102…コリメートレンズ、103…偏光素子、110…第4の正反射光検出系、111…光検出器、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2010…光走査装置、2030a,2030b,2030c,2030d…感光体ドラム(像担持体)、2032a,2032b,2032c,2032d…帯電装置、2033a,2033b,2033c,2033d…現像ローラ、2040…転写ベルト、2042…転写ローラ、2050…定着装置、2090…プリンタ制御装置(調整装置)、2245…光学センサ、2245a〜2245f…光学センサ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0200】
【特許文献1】特開2002−340518号公報
【特許文献2】特開2003−292170号公報
【特許文献3】特開2005−156380号公報
【特許文献4】特開平10−160687号公報
【特許文献5】特開2006−062842号公報
【特許文献6】特開平11−249353号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学センサ、画像形成装置及び判別方法に係り、更に詳しくは、対象物を特定するのに好適な光学センサ、前記光学センサを備える画像形成装置、及び前記光学センサを用いて紙の種類を判別する判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル複写機、レーザプリンタ等のいわゆる電子写真方式の画像形成装置では、記録紙等の記録媒体にトナー像を転写し、該記録媒体を所定の条件で加熱及び加圧することにより、トナー像を記録媒体に定着させている。この場合、高画質な画像形成を行うには、トナー像を定着するための条件を記録媒体の種類に応じて適切に設定する必要がある。
【0003】
ところで、特許文献1には、記録材表面に当接して走査することにより該記録材表面の表面性を識別するセンサを備える表面性識別装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、圧力センサが用紙に当接して検出した圧力値から、用紙種類を判別する印刷装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、反射光と透過光とを用いて記録材の種類を判別する記録材判別装置が開示されている。
【0006】
特許文献4には、移動中のシート材の材質をシート材の表面で反射した反射光量とシート材を透過した透過光量に基づいて判別するシート材材質判別装置が開示されている。
【0007】
特許文献5には、反射型光学センサからの検出出力に基づいて、給紙部に収容された記録材の有無と給紙部の有無とを判別する判別手段を有する画像形成装置が開示されている。
【0008】
特許文献6には、記録媒体に光を照射してその反射光の2つの偏光成分の光量をそれぞれ検出して記録媒体の表面性を判別する画像形成装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の装置は、必ずしも安定した十分な識別精度を有していなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、対象物の表面に向けて、第1の方向から光を射出する第1の照射系と、前記対象物の表面に向けて、前記第1の方向とは異なる第2の方向から光を射出する第2の照射系と、前記第1の照射系から射出され前記対象物で正反射された光を受光する第1の正反射光受光系と、前記第2の照射系から射出され前記対象物で正反射された光を受光する第2の正反射光受光系とを備え、前記対象物は、平面上に載置され、前記第1及び第2の照射系から射出された光の前記平面に対する入射角は互いに等しい光学センサである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学センサによれば、対象物の識別を精度良く安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図1における光学センサの構成を説明するための図(その1)である。
【図3】図1における光学センサの構成を説明するための図(その2)である。
【図4】面発光レーザアレイを説明するための図である。
【図5】図5(A)及び図5(B)は、それぞれ試料台表面に対する照射光の入射角を説明するための図である。
【図6】第1の測定系を説明するための図である。
【図7】第2の測定系を説明するための図である。
【図8】図8(A)は表面正反射光を説明するための図であり、図8(B)は表面拡散反射光を説明するための図であり、図8(C)は内部拡散反射光を説明するための図である。
【図9】照明領域のシフトを説明するための図である。
【図10】照明領域の傾斜を説明するための図である。
【図11】光学センサの変形例1を説明するための図である。
【図12】光学センサの変形例2を説明するための図である。
【図13】光学センサの変形例3を説明するための図(その1)である。
【図14】光学センサの変形例3を説明するための図(その2)である。
【図15】光学センサの変形例4を説明するための図(その1)である。
【図16】光学センサの変形例4を説明するための図(その2)である。
【図17】記録紙判別テーブルを説明するための図である。
【図18】傾き補正の効果を説明するための図である。
【図19】光学センサの変形例5を説明するための図(その1)である。
【図20】光学センサの変形例5を説明するための図(その2)である。
【図21】内部拡散反射光量と記録紙の厚さとの関係を説明するための図である。
【図22】内部拡散反射光量と記録紙の密度との関係を説明するための図である。
【図23】光学センサの変形例6を説明するための図(その1)である。
【図24】光学センサの変形例6を説明するための図(その2)である。
【図25】図25(A)〜図25(C)は、それぞれ記録紙表面に一軸配向の凹凸構造があるときの、光の入射方向と反射光との関係を説明するための図(その1)である。
【図26】図26(A)及び図26(B)は、それぞれ記録紙表面に一軸配向の凹凸構造があるときの、光の入射方向と反射光との関係を説明するための図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
【0014】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着装置2050、給紙コロ2054、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、光学センサ2245、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
【0015】
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0016】
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するAD変換回路などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、上位装置からの要求に応じて各部を制御するとともに、上位装置からの画像情報を光走査装置2010に送る。
【0017】
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
【0018】
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
【0019】
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
【0020】
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
【0021】
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。なお、各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転する。
【0022】
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
【0023】
光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)に基づいて色毎に変調された光束によって、対応する帯電された感光体ドラムの表面をそれぞれ走査する。これにより、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像ローラの方向に移動する。
【0024】
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
【0025】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされて多色のカラー画像が形成される。
【0026】
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出す。該記録紙は、所定のタイミングで転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出される。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。ここでカラー画像が転写された記録紙は、定着装置2050に送られる。
【0027】
定着装置2050では、カラー画像が転写された記録紙に熱と圧力とが加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。ここでトナーが定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次積み重ねられる。
【0028】
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
【0029】
光学センサ2245は、給紙トレイ2060内に収容されている記録紙の銘柄を特定するのに用いられる。すなわち、光学センサ2245は、記録紙の種類を判別するのに用いられる。
【0030】
この光学センサ2245は、一例として図2及び図3に示されるように、第1の光照射系10、第2の光照射系20、第1の正反射光検出系30、第2の正反射光検出系40、及びこれらが収納される暗箱50などを有している。
【0031】
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、記録紙が載置される試料台の表面に直交する方向をZ軸方向、試料台の表面に平行な面をXY面として説明する。そして、光学センサ2245は、記録紙の+Z側に配置されているものとする。また、記録紙は、+Y方向に移動するものとする。
【0032】
暗箱50は、金属製の箱部材、例えば、アルミニウム製の箱部材であり、外乱光及び迷光の影響を低減するため、表面に黒アルマイト処理が施されている。暗箱50の−Z側の面の中央には、開口部が設けられている。
【0033】
第1の光照射系10と第1の正反射光検出系30は組として用いられ、以下では、「第1の測定系」ともいう。
【0034】
同様に、第2の光照射系20と第2の正反射光検出系40は組として用いられ、以下では、「第2の測定系」ともいう。
【0035】
第1の光照射系10は、暗箱50の開口部に対して−X側に配置され、光源11及びコリメートレンズ12を有している。
【0036】
第2の光照射系20は、暗箱50の開口部に対して+X側に配置され、光源21及びコリメートレンズ22を有している。
【0037】
各光源は、複数の発光部を有する面発光レーザアレイを有している。ここでは、一例として図4に示されるように、9個の発光部が2次元配列されている。
【0038】
各光源の複数の発光部は、プリンタ制御装置2090によって個別に点灯及び消灯される。
【0039】
コリメートレンズ12は、光源11から射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光とする。コリメートレンズ12を介した光束が、第1の光照射系10から射出される光束である。
【0040】
第1の光照射系10は、該第1の光照射系10から射出された光束が、Z軸方向からみたときX軸方向に対して平行であり、Y軸方向からみたときX軸方向及びY軸方向のいずれに対しても傾斜して、暗箱50の開口部に向かうように配置されている。
【0041】
コリメートレンズ22は、光源21から射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光とする。コリメートレンズ22を介した光束が、第2の光照射系20から射出される光束である。
【0042】
第2の光照射系20は、該第2の光照射系20から射出された光束が、Z軸方向からみたときX軸方向に対して平行であり、Y軸方向からみたときX軸方向及びY軸方向のいずれに対しても傾斜して、暗箱50の開口部に向かうように配置されている。
【0043】
すなわち、Z軸方向からみたとき、第1の光照射系10から射出された光束と第2の光照射系20から射出された光束は、平行である。
【0044】
そして、第1の測定系と第2の測定系は、干渉を避けるため、Y軸方向に関して距離Dだけ離れて配置されている。
【0045】
第1の光照射系10から射出された光束及び第2の光照射系20から射出された光束は、図5(A)及び図5(B)に示されるように、いずれも暗箱50の開口部を通過して記録紙を照明する。
【0046】
なお、以下では、記録紙の表面における照明領域の中心を「照明中心」と略述する。また、各光照射系から射出された光束を「照射光」ともいう。
【0047】
試料台の表面に対する、第1の光照射系10からの照射光の入射角、及び第2の光照射系20からの照射光の入射角は、同じ入射角θである。ここでは、一例としてθ=80°としている。
【0048】
また、第1の光照射系10からの照射光による照明領域の面積と、第2の光照射系20からの照射光による照明領域の面積とは、略同じである。
【0049】
また、第2の光照射系20から光束を射出するタイミングを、記録紙の移動速度と上記距離Dに基づいて、第1の光照射系10から光束を射出するタイミングに対して遅らせることにより、第1の光照射系10からの照射光の照明中心と、第2の光照射系20からの照射光の照明中心とが略一致するようにしている。
【0050】
ところで、光が媒質の境界面に入射するとき、入射光線と入射点に立てた境界面の法線とを含む面は「入射面」と呼ばれている。そこで、入射光が複数の光線からなる場合は、光線毎に入射面が存在することとなるが、ここでは、便宜上、照明中心に入射する光線の入射面を、記録紙における入射面ということとする。すなわち、照明中心を含みXZ面に平行な面が記録紙における入射面である。
【0051】
第1の正反射光検出系30は、集光レンズを備えた光検出器31を有し、一例として図6に示されるように、第1の光照射系10から射出され、記録紙で正反射された光束の光路上に配置されている。
【0052】
そして、Z軸方向からみると、第1の光照射系10と第1の正反射光検出系30は、X軸方向に延びる同一直線上に位置している。
【0053】
第2の正反射光検出系40は、集光レンズを備えた光検出器41を有し、一例として図7に示されるように、第2の光照射系20から射出され、記録紙で正反射された光束の光路上に配置されている。
【0054】
そして、Z軸方向からみると、第2の光照射系20と第2の正反射光検出系40は、X軸方向に延びる同一直線上に位置している。
【0055】
各光検出器の出力信号は、プリンタ制御装置2090に送られる。以下では、光検出器31の出力信号における信号レベルを「S11」といい、光検出器41の出力信号における信号レベルを「S21」という。
【0056】
ところで、記録紙を照明したときの記録紙から反射光は、記録紙の表面で反射された反射光と、記録紙の内部で反射された反射光に分けて考えることができる。また、記録紙の表面で反射された反射光は、正反射された反射光と拡散反射された反射光に分けて考えることができる。以下では、便宜上、記録紙の表面で正反射された反射光を「表面正反射光」、拡散反射された反射光を「表面拡散反射光」ともいう(図8(A)及び図8(B)参照)。
【0057】
一方、記録紙の内部からの反射光は、該記録紙が一般の印刷用紙である場合、その内部の繊維中で多重散乱するため拡散反射光のみとなる。以下では、便宜上、記録紙の内部からの反射光を「内部拡散反射光」ともいう(図8(C)参照)。この内部拡散反射光も、表面拡散反射光と同様に、完全に散乱反射された反射光であり、その反射方向は等方性があるとみなせる。
【0058】
表面正反射光及び表面拡散反射光の偏光状態は、入射光の偏光状態と同じである。一方、内部拡散反射光の偏光状態は、入射光の偏光状態に対して異なっている。これは、繊維中を透過し、多重散乱される間に旋光し、偏光方向が回転するためと考えている。
【0059】
ところで、記録紙は、たわみや振動等の理由から、その表面における照射光が照射される領域(照明領域)が、設計上の位置に対してZ軸方向にシフトしたり、XY面に対して傾斜したりすることがある。なお、以下では、XY面に平行な設計上の記録紙表面を「基準面」という。
【0060】
図9には、上記照明領域が、上記基準面に対して−Z方向にdだけシフトしている場合が示されている。なお、図9では、分かりやすくするため、シフト量が誇張して示されている。
【0061】
この場合、光検出器での表面正反射光の受光位置は、集光レンズがないとき、2d×sinθだけずれる。
【0062】
例えば、入射角度θが80°、シフト量dが1mmの場合、受光位置のずれ量は約2mmとなる。この場合、(a)光検出器の受光素子として受光領域の大きさが2mm以上のフォトダイオード(PD)を用いる、(b)表面正反射光のビーム径が2mmに対して十分小さくなるように照射光のビーム径を小さくする、(c)受光部の前方に口径が2mm以上の大きさの集光レンズを配置する、ことにより対処できる。
【0063】
このとき、上記フォトダイオード(PD)に代えて、複数の受光領域を有し、受光領域の合計の大きさが2mm以上のPDアレイを用いても良い。この場合、受光位置がずれたとしても、複数の受光領域から個別に出力される信号のうち最大レベルの信号を表面正反射光の受光信号とすることができる。また、上記フォトダイオード(PD)では、受光位置が受光領域の中心からずれることに起因して出力が変化するおそれがあるが、PDアレイでは、個々の受光領域を小さくすることができるため、上記おそれはなく、より正確な検出を行うことができる。
【0064】
また、図10には、上記照明領域が上記基準面上のY軸方向に平行な軸(傾斜軸)まわりに角度αだけ傾斜している場合が示されている。なお、図10では、分かりやすくするため、傾斜が誇張して示されている。
【0065】
この場合は、照明領域に対する照射光の入射角がθ+αとなり、照明領域が傾斜していないときに対して、照明領域での照射光の反射率が変化する。すなわち、同じ銘柄の記録紙であっても、その照明領域が傾斜している場合と、傾斜していない場合とでは、光検出器の出力レベルが異なることとなる。
【0066】
次の(1)式で示されるフレネル係数R(n,θ)を用いて、無偏光の光が正反射される場合に、入射角の変化による反射率の変化を演算したところ、仮に入射角が80°から81°に変化すると、反射率の変化は約4%であった。nは相対屈折率、θは入射角である。ここでは、相対屈折率nとして、光が空気から一般的な記録紙の主成分であるセルロースに進むときの相対屈折率である1.53を用いた。
【0067】
【数1】
【0068】
そこで、反射率の変化に起因する光検出器の出力レベルの変化を補正することが必要となる。この補正方法として2つの方法が考えられる。
【0069】
(A)第1の補正方法
第1の補正方法は、次の(2)式を用いて、光検出器31の信号レベルS11と光検出器41の信号レベルS21の平均値Saveを算出し、該Saveを補正された信号レベルSmodとする。
Save=(S11+S21)/2 ……(2)
【0070】
(B)第2の補正方法
第2の補正方法は、信号レベルS11と信号レベルS21とから照明領域の傾斜角を求め、該傾斜角に基づいて信号レベルを補正する。
【0071】
照明領域が傾斜していないときの入射角θと傾斜角αとフレネル係数との間には、次の(3)式の関係がある。
【0072】
【数2】
上記(3)式から、本実施形態では、次の(4)式の関係が得られる。
【0073】
【数3】
上記(4)式から得られた傾斜角αを用い、次の(5)式から補正された信号レベルSmodを算出する。
【0074】
【数4】
【0075】
また、照明領域が傾斜していると、光検出器での表面正反射光の受光位置は、照明中心と光検出器の距離をLとすると、集光レンズがないとき、L×tan2αだけずれる。
【0076】
例えば、L=30mmで、入射角が80°から81°に変化すると、受光位置のずれは約1mmとなる。この場合、(1)光検出器の受光素子として受光領域の大きさが1mm以上のフォトダイオード(PD)を用いる、(2)表面正反射光のビーム径が1mmに対して十分小さくなるように照射光のビーム径を小さくする、(c)受光部の前方に口径が1mm以上の大きさの集光レンズを配置する、ことにより対処できる。
【0077】
なお、照明領域の傾斜及びシフトは、表面正反射光だけでなく、表面拡散反射光及び内部拡散反射光にも影響する。
【0078】
ここでは、カラープリンタ2000が対応可能な複数種類の記録紙に関して、予め調整工程等の出荷前工程で記録紙の種類毎に信号レベルS11を計測し、該計測結果に基づいて、誤差範囲を含めた信号レベルS11の範囲を記録紙に対応させた「記録紙判別テーブル」を作成し、プリンタ制御装置2090のROMに格納している。なお、信号レベルS11の計測に際しては、記録紙の表面が基準面と同一面となるように調整されている。また、複数種類の記録紙は、光沢度及び平滑度の少なくとも一方が異なる記録紙である。
【0079】
また、カラープリンタ2000が対応可能な複数銘柄の記録紙に関して、予め調整工程等の出荷前工程で記録紙の銘柄毎に各ステーションでの最適な現像条件及び転写条件を決定し、該決定結果を「現像・転写テーブル」としてプリンタ制御装置2090のROMに格納している。
【0080】
プリンタ制御装置2090は、カラープリンタ2000の電源が入れられたとき、及び給紙トレイ2060に記録紙が供給されたときなどに、光学センサ2245を用いて記録紙の紙種判別処理を行う。このプリンタ制御装置2090によって行われる紙種判別処理について以下に説明する。
【0081】
(1)光源11の複数の発光部を同時に点灯させる。
【0082】
(2)光検出器31の出力信号から信号レベルS11の値を求める。
【0083】
(3)光源11の複数の発光部を同時に消灯させる。
【0084】
(4)照明中心が略一致するように、記録紙の移動速度及び前記距離Dに基づいて算出された時間経過後に、光源21の複数の発光部を同時に点灯させる。
【0085】
(5)光検出器41の出力信号から信号レベルS21の値を求める。
【0086】
(6)光源21の複数の発光部を同時に消灯させる。
【0087】
(7)上記第1の補正方法あるいは第2の補正方法によって、補正された信号レベルSmodを求める。
【0088】
(8)上記記録紙判別テーブルを参照し、補正された信号レベルSmodと同じ値の信号レベルS11に対応する記録紙の種類を抽出する。これが、特定された記録紙の種類となる。
【0089】
(9)上記特定された記録紙の種類をRAMに保存し、紙種判別処理を終了する。
【0090】
プリンタ制御装置2090は、ユーザからの印刷ジョブ要求を受け取ると、RAMに保存されている記録紙の銘柄を読み出し、該記録紙の銘柄に対応する最適な現像条件及び転写条件を、現像・転写テーブルから抽出する。
【0091】
そして、プリンタ制御装置2090は、抽出された最適な現像条件及び転写条件に応じて各ステーションの現像装置及び転写装置を制御する。例えば、転写電圧やトナー量を制御する。これにより、高い品質の画像が記録紙に形成される。
【0092】
以上説明したように、本実施形態に係るカラープリンタ2000によると、光走査装置2010、4つの画像形成ステーション、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着装置2050、給紙コロ2054、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、光学センサ2245、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
【0093】
光学センサ2245は、第1の光照射系10、第2の光照射系20、第1の正反射光検出系30、第2の正反射光検出系40、及びこれらが収納される暗箱50などを有している。
【0094】
第1の光照射系10は、暗箱50の開口部よりも−X側に配置され、開口部に向けて光束を射出する。第2の光照射系20は、暗箱50の開口部よりも+X側に配置され、開口部に向けて光束を射出する。
【0095】
試料台の表面に対する、第1の光照射系10からの照射光の入射角、及び第2の光照射系20からの照射光の入射角は、同じ入射角θである。
【0096】
また、第1の光照射系10からの照射光による照明領域の面積と、第2の光照射系20からの照射光による照明領域の面積とは、略同じである。
【0097】
第1の正反射光検出系30は、集光レンズを備えた光検出器31を有し、第1の光照射系10から射出され、記録紙で正反射された光束の光路上に配置されている。第2の正反射光検出系40は、集光レンズを備えた光検出器41を有し、第2の光照射系20から射出され、記録紙で正反射された光束の光路上に配置されている。
【0098】
プリンタ制御装置2090は、記録紙の紙種判別処理を行う際に、光検出器31の出力信号と光検出器41の出力信号とに基づいて、照明領域の傾斜に起因する反射率の変化の影響を補正している。
【0099】
そこで、記録紙のたわみや振動等によって、照明領域が基準面に対して傾斜しても、記録紙の紙種判別を精度良く行うことができる。そして、その結果、記録紙の種類に応じた画像品質を適切に得ることができる。
【0100】
また、第1の光照射系10からの照射光の照明中心と、第2の光照射系20からの照射光の照明中心とが略一致しているため、記録紙表面の凹凸の影響を低減することができる。
【0101】
また、各光源が複数の発光部を有する面発光レーザアレイを有しているため、スペックルノイズを低減させることができるとともに、照射光の光量が高くなりS/Nの向上を図ることができる。さらに、照射光を容易に平行光にすることができるため、光利用効率が向上し、光検出器の出力信号の信号レベルを安定化させることができる。
【0102】
なお、上記実施形態では、面発光レーザアレイが9個の発光部を有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0103】
また、上記実施形態において、光学センサ2245は、記録紙の紙種判別処理の際にプリンタ制御装置2090で行われる処理の少なくとも一部を行う処理装置を有していても良い。
【0104】
《光学センサの変形例1》
変形例1の光学センサ(光学センサ2245aという)が図11に示されている。この光学センサ2245aは、前記光学センサ2245において、Z軸方向からみたとき、第1の測定系と第2の測定系とを非平行に配置したものである。この場合は、静止している記録紙において、第1の光照射系10からの照射光の照明中心と、第2の光照射系20からの照射光の照明中心とを略一致させることができる。そこで、第1の光照射系10の複数の発光部と、第2の光照射系20の複数の発光部を同時に点灯させることができる。
【0105】
《光学センサの変形例2》
変形例2の光学センサ(光学センサ2245bという)が図12に示されている。この光学センサ2245bは、前記光学センサ2245において、各光照射系の前方にビームスプリッタを配置し、正反射光を分岐させたものである。この場合は、Z軸方向からみたとき、第1の光照射系10からの照射光の光路、及び第2の光照射系20からの照射光の光路を、いずれもX軸方向に平行とするとともに、静止している記録紙において、第1の光照射系10からの照射光の照明中心と、第2の光照射系20からの照射光の照明中心とを略一致させることができる。
【0106】
《光学センサの変形例3》
変形例3の光学センサ(光学センサ2245cという)が図13及び図14に示されている。この光学センサ2245cは、前記光学センサ2245に、第3の光照射系60と第3の正反射光検出系70とからなる第3の測定系を追加したものである。なお、図14では、煩雑さを避けるため、前記第1の測定系及び前記第2の測定系の図示を省略している。
【0107】
第3の光照射系60は、光源61及びコリメートレンズ62を有し、暗箱50の開口部に対して−Y側に配置され、開口部に向けて光束を射出する。
【0108】
試料台の表面に対する、第3の光照射系60からの照射光の入射角は、第1の光照射系10からの照射光の入射角、及び第2の光照射系20からの照射光の入射角と同じ入射角θである。
【0109】
また、第3の光照射系60からの照射光による照明領域の面積は、第1の光照射系10からの照射光による照明領域の面積、及び第2の光照射系20からの照射光による照明領域の面積と略同じである。
【0110】
また、第3の光照射系60からの照射光の照明中心は、第1の光照射系10からの照射光の照明中心、及び第2の光照射系20からの照射光の照明中心にできるだけ近接するように設定されている。
【0111】
第3の正反射光検出系70は、集光レンズを備えた光検出器71を有し、第3の光照射系60から射出され、記録紙で正反射された光束の光路上に配置されている。以下では、光検出器71の出力信号における信号レベルを「S31」という。
【0112】
第3の光照射系60と第3の正反射光検出系70は、Z軸方向からみると、Y軸方向に延びる同一直線上に位置している。
【0113】
光源61の複数の発光部は、プリンタ制御装置2090によって個別に点灯及び消灯される。光検出器71の出力信号は、プリンタ制御装置2090に送られる。
【0114】
この場合、上記第1の補正方法では、上記(2)式に代えて、次の(6)式が用いられ、光検出器31の信号レベルS11と光検出器41の信号レベルS21と光検出器71の信号レベルS31の平均値Saveを補正された信号レベルSmodとする。
Save=(S11+S21+S31)/3 ……(6)
【0115】
また、上記第2の補正方法では、上記(4)式に代えて、次の(7)式〜(12)式が用いられ、上記(5)式に代えて、次の(13)式が用いられる。
【0116】
【数5】
【0117】
そこで、一般化するため、測定系の数をN個とし、i番目の測定系の光検出器の信号レベルをSi1、j(≠i)番目の測定系の光検出器の信号レベルをSj1とすると、上記第1の補正方法では、上記(2)式に代えて、次の(14)式が用いられ、上記第2の補正方法では、上記(4)式に代えて、次の(15)式が用いられ、上記(5)式に代えて、次の(16)式が用いられる。なお、(15)式は、i=1〜N、j=1〜N、i≠jについて求められる。
【0118】
【数6】
【0119】
この場合は、照明領域が更に上記基準面上のX軸方向に平行な軸(傾斜軸)まわりに傾斜していても、該傾斜の影響を補正することができる。
【0120】
なお、第1の測定系及び第2の測定系が、前記光学センサ2245aあるいは前記光学センサ2245bと同等であっても良い。
【0121】
《光学センサの変形例4》
変形例4の光学センサ2245dが図15及び図16に示されている。この光学センサ2245dは、前記光学センサ2245cに、拡散反射光検出系80を追加したものである。なお、図16では、煩雑さを避けるため、前記第3の測定系の図示を省略している。
【0122】
第1の光照射系10と第2の光照射系20と第1の正反射光検出系30は、Z軸方向からみると、X軸方向に延びる同一直線上に位置している。
【0123】
拡散反射光検出系80は、集光レンズを備えた光検出器81を有し、第1の光照射系10から射出され、記録紙で拡散反射された光束の光路上に配置されている。ここでは、図16における符号Ψは120°である。光検出器81は、第1の光照射系10から記録紙に照射された光の表面拡散反射光及び内部拡散反射光の合成光を検出するためのものである。光検出器81の出力信号は、プリンタ制御装置2090に送られる。なお、以下では、光検出器81の出力信号の信号レベルをS12という。
【0124】
この場合は、カラープリンタ2000が対応可能な複数種類の記録紙に関して、予め調整工程等の出荷前工程で記録紙の種類毎にS11及びS12の値を計測し、該計測結果を「記録紙判別テーブル」としてプリンタ制御装置2090のROMに格納している。この記録紙判別テーブルを図にしたものが図17に示されている。
【0125】
また、図18には、上記記録紙判別テーブルにおける前記第1又は第2の補正を行う前のS11とS12に対応する位置と、前記第1又は第2の補正で得られたSmodとS12に対応する位置とが示されている。補正前のS11とS12では記録紙の銘柄を特定することができなかったが、補正により、記録紙が銘柄Aであることが特定できた。
【0126】
光学センサ2245dを用いることにより、上記実施形態よりも更に精度良く記録紙の銘柄を判別することができる。
【0127】
なお、光学センサ2245dでは、1つの計測系にのみ拡散反射光検出系が付加されているが、複数の計測系に拡散反射光検出系がそれぞれ付加されても良い。
【0128】
また、第1の測定系及び第2の測定系が、前記光学センサ2245aあるいは前記光学センサ2245bと同等であっても良い。
【0129】
また、前記光学センサ2245に、拡散反射光検出系80が追加されても良い。
【0130】
《光学センサの変形例5》
変形例5の光学センサ2245eが図19及び図20に示されている。この光学センサ2245eは、前記光学センサ2245dに、内部拡散反射光検出系90を追加したものである。また、各光照射系に偏光素子が追加されている。なお、図19では、煩雑さを避けるため、前記第3の測定系の図示を省略している。
【0131】
第1の光照射系10は、コリメートレンズ12を介した光束を第1の偏光方向の直線偏光にする偏光素子13を有している。
【0132】
第2の光照射系20は、コリメートレンズ22を介した光束を第1の偏光方向の直線偏光にする偏光素子23を有している。
【0133】
第3の光照射系60は、コリメートレンズ62を介した光束を第1の偏光方向の直線偏光にする偏光素子63を有している。
【0134】
内部拡散反射光検出系90は、照明中心の+Z側に配置され、第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の直線偏光を透過させる偏光フィルタ92と、該偏光フィルタ92を通過した光束を受光し、集光レンズを備えた光検出器91を有している。光検出器91の出力信号は、プリンタ制御装置2090に送られる。なお、以下では、光検出器91の出力信号の信号レベルをS13という。
【0135】
ここでは、第1の偏光方向の直線偏光をs偏光、第2の偏光方向の直線偏光をp偏光としている。なお、第1の偏光方向は、前記基準面に平行である。また、図19における符号Φは略90°である。
【0136】
この場合は、上記フレネル係数R(n,θ)は、次の(17)式で示される。
【0137】
【数7】
【0138】
なお、第1の偏光方向の直線偏光をp偏光とする場合は、上記フレネル係数R(n,θ)は、次の(18)式で示される。
【0139】
【数8】
【0140】
第1の光照射系10と第1の正反射光検出系30と拡散反射光検出系80と内部拡散反射光検出系90とは、Z軸方向からみると、X軸方向に延びる同一直線上に位置している。
【0141】
表面正反射光及び表面拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向と同じである。ところで、記録紙の表面で偏光方向が回転するには、入射光がその光軸に対して該回転の向きに傾斜した面で反射されなくてはならない。ここでは、光源の中心と照明中心と各受光器の中心とが同一平面上にあるため、記録紙の表面で偏光方向が回転した反射光は、いずれの受光器の方向にも反射されない。
【0142】
一方、内部拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向に対して回転している。これは、繊維中を透過し、多重散乱される間に旋光し、偏光方向が回転するためと考えている。
【0143】
そこで、第1の光照射系10から光が射出されると、偏光フィルタ92には、表面拡散反射光及び内部拡散反射光が入射する。表面拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向と同じであるため、表面拡散反射光は、偏光フィルタ92で遮光される。一方、内部拡散反射光の偏光方向は、入射光の偏光方向に対して回転しているため、内部拡散反射光に含まれるp偏光成分が、偏光フィルタ92を透過する。すなわち、内部拡散反射光に含まれるp偏光成分が光検出器91で受光される。
【0144】
内部拡散反射光に含まれるp偏光成分の光量は、記録紙の厚みや密度に相関を持つことが発明者らによって確認されている。これは、該p偏光成分の光量が、記録紙の繊維中を通過する際の経路長に依存するためである。
【0145】
一例として図21に示されるように、内部拡散反射光量と記録紙の厚さとは相関関係があり、記録紙の厚さが厚くなると内部拡散反射光量の値が増加する。そこで、内部拡散反射光量の値に基づき記録紙の厚さを知ることができる。
【0146】
また、一例として図22に示されるように、内部拡散反射光量と記録紙の密度とは相関関係があり、記録紙の密度が高くなると内部拡散反射光量の値が増加する。そこで、内部拡散反射光量の値に基づき記録紙の密度を知ることができる。
【0147】
なお、図21及び図22は、厚さ及び密度の異なる複数の記録紙を用いて測定した結果である。
【0148】
そこで、光学センサ2245eを用いることにより、光沢度、平滑度、厚さ、及び密度の少なくともいずれかが異なる複数の記録紙のなかから対象物の銘柄を特定することが可能である。
【0149】
また、光学センサ2245eを用いることにより、記録紙の種類を判別するための基準(判別基準)が、(a)表面正反射光量、(b)表面拡散反射光量、(c)内部拡散反射光量の3つとなり、更に詳細な判別を行うことができる。
【0150】
この場合は、カラープリンタ2000が対応可能な複数種類の記録紙に関して、予め調整工程等の出荷前工程で記録紙の種類毎にS11、S12及びS13の値を計測し、該計測結果を「記録紙判別テーブル」としてプリンタ制御装置2090のROMに格納している。
【0151】
ところで、精度の高い内部拡散反射光の検出を行うためには、少なくとも検出方向に向かう光が表面正反射光の成分を含まないのが好ましい。実際の照射系では、完全な一方向(第1の偏光方向)のみの光を射出することは困難である。そこで、記録紙の表面で反射された光にも、第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の成分が含まれてしまう。
【0152】
具体的には、表面正反射光が検出される位置に光検出器を設置し、偏光フィルタを用いて第2の偏光方向の偏光成分の光量を検出する場合、記録紙に照射される光に第2の偏光方向の偏光成分が含まれていると、この偏光成分も光検出器で検出されてしまい、内部拡散反射光の光量の検出精度が低下する。
【0153】
記録紙からの内部拡散反射光は光量が少ないため、記録紙に照射される光に含まれている第2の偏光方向の偏光成分の光量が、内部拡散反射光の光量よりも多くなるおそれがある。
【0154】
なお、記録紙に照射される光を完全な第1の偏光方向の光とすることも可能ではあるが、この場合、消光比の高い偏光フィルタを用いることが必要となり、高コスト化を招く。
【0155】
また、精度の高い内部拡散反射光の検出を行うためには、記録紙の表面に略直交する方向に光検出器を配置するのが好ましい。これは、内部拡散反射光を完全拡散反射光とみなすことができるため、検出方向と反射光量の関係をランバート分布で近似することができ。すなわち、照明領域に直交する方向が最も内部拡散反射光の光量が多くなる。
【0156】
内部拡散反射光は光量が微小であるため、照明領域に略直交する方向に光検出器を配置することにより、S/Nが向上し、内部拡散反射光の検出精度を最も高くすることができる。
【0157】
なお、内部拡散反射光を検出するための光検出器が複数設置される場合には、該複数の光検出器は、光検出器同士が干渉しない位置であって、照明領域に略直交する方向に設置されるのが好ましい。また、この場合、照明領域に略直交する方向にビームスプリッタを設けて反射光を分岐させても良い。
【0158】
上記第1及び第2の補正方法では、2つの信号レベルから反射率の変化量を直線近似しているが、実際の反射率の変化は上記(1)式に示されるように非線形である。そこで、入射角と反射率の関係が線形に近いほど、第1及び第2の補正方法を用いて正確に補正することができる。
【0159】
光学センサ2245eでは、直線偏光が記録紙に照射されるため、無偏光が記録紙に照射される場合に比べて入射角と反射率の関係を線形に近づけることができる。すなわち、上記実施形態よりも、より正確に補正することができる。
【0160】
また、記録紙の表面では、s偏光は、無偏光及びp偏光に比べて反射率が小さい。光学センサ2245eでは、s偏光が記録紙に照射されるため、無偏光及びp偏光に比べて内部拡散反射光の光量が大きく、光検出器91の出力信号における信号レベルのS/Nを向上させることができる。
【0161】
近年の画像形成装置の進歩と表現方法の多様化に伴い、印刷用紙の種類は印刷用紙だけでも数百種類以上存在し、さらにそれぞれの種類において坪量や厚さなどの仕様の違いで多岐にわたる銘柄がある。高品質の画像形成のためにはこれら銘柄の1つ1つに応じた細かな定着条件を設定する必要がある。
【0162】
また、近年、普通紙、グロスコート紙・マットコート紙・アートコート紙に代表される塗工紙、プラスチックシート、表面にエンボス加工が施された特殊紙に関しても銘柄が増加している。
【0163】
しかしながら、特許文献3に開示されている記録材判別装置で判別できるのは、平滑性が異なる記録材だけであり、平滑性が同じで厚みが異なる記録材を区別することはできなかった。
【0164】
また、特許文献4に開示されているシート材材質判別装置、特許文献5及び特許文献6に開示されている画像形成装置では、識別(判別)可能なのは、非塗工紙と塗工紙とOHPシートの違いのみであり、高品質の画像形成に必要な銘柄までの特定はできなかった。
【0165】
光学センサ2245eを用いると、記録紙表面の情報に、記録紙内部の情報が加わることにより、普通紙とマットコート紙の区別だけでなく、複数銘柄の普通紙、及び複数銘柄のマットコート紙もそれぞれ区別することが可能となる。すなわち、光沢度、平滑度、厚さ、及び密度の少なくともいずれかが異なる複数の記録紙のなかから対象物の銘柄を特定することが可能となる。
【0166】
なお、第1の測定系及び第2の測定系が、前記光学センサ2245aあるいは前記光学センサ2245bと同等であっても良い。
【0167】
また、前記光学センサ2245に、内部拡散反射光検出系90が追加されても良い。
【0168】
《光学センサの変形例6》
変形例6の光学センサ2245fが図23及び図24に示されている。この光学センサ2245fは、前記光学センサ2245eに、第4の光照射系100と第4の正反射光検出系110とからなる第4の測定系を追加したものである。なお、図24では、煩雑さを避けるため、前記第1の測定系、前記第2の測定系、前記拡散反射光検出系80、及び前記内部拡散反射光検出系90の図示を省略している。
【0169】
第4の光照射系100は、光源101、コリメートレンズ102、及び偏光素子103を有し、暗箱50の開口部に対して+Y側に配置され、開口部に向けて光束を射出する。
【0170】
第4の正反射光検出系110は、集光レンズを備えた光検出器111を有し、第4の光照射系100から射出され、記録紙で正反射された光束の光路上に配置されている。
【0171】
光源101の複数の発光部は、プリンタ制御装置2090によって個別に点灯及び消灯される。光検出器111の出力信号は、プリンタ制御装置2090に送られる。
【0172】
第4の光照射系100と第4の正反射光検出系110は、Z軸方向からみると、Y軸方向に延びる同一直線上に位置している。
【0173】
試料台の表面に対する、第4の光照射系100からの照射光の入射角は、第1の光照射系10からの照射光の入射角、第2の光照射系20からの照射光の入射角、及び第3の光照射系60からの照射光の入射角と同じ入射角θである。
【0174】
また、第4の光照射系100からの照射光による照明領域の面積は、第1の光照射系10からの照射光による照明領域の面積、第2の光照射系20からの照射光による照明領域の面積、及び第3の光照射系60からの照射光による照明領域の面積と略同じである。
【0175】
また、第4の光照射系100からの照射光の照明中心は、第1の光照射系10からの照射光の照明中心、第2の光照射系20からの照射光の照明中心、及び第3の光照射系60からの照射光の照明中心にできるだけ近接するように設定されている。
【0176】
なお、第1の測定系及び第2の測定系が、前記光学センサ2245aあるいは前記光学センサ2245bと同等であっても良い。
【0177】
また、Z軸方向からみたとき、第3の測定系と第4の測定系とが非平行に配置されても良い。
【0178】
また、第3の測定系及び第4の測定系が、前記光学センサ2245bでの第1の測定系及び第2の測定系と同様に、各光照射系の前方に正反射光を分岐させるビームスプリッタを有していても良い。
【0179】
ところで、記録紙は、製造工程において一方向に流れるように製造される。これにより記録紙には流れ目と称される記録紙を構成する繊維の配向が生じている。この繊維の配向は記録紙の製造工程において記録紙が流れる方向に沿うように形成されている。このため、同じ記録紙でも光の照射される方向によって反射特性が異なることがある。
【0180】
このことについて、図25(A)〜図26(B)を用いて説明する。図25(A)〜図26(B)では、記録紙は、流れ目がY軸方向に沿っており、表面に該流れ目による凹凸が形成されている。
【0181】
ここで、図25(A)及び図25(B)に示されるように、YZ面に平行な方向から光が照射される場合は、記録紙の表面は平滑な平面とみなすことができ、照射光の大部分は記録紙の表面で正反射され、表面拡散反射光はほとんど発生しない。また、記録紙の表面における照明領域がY軸方向にずれたとしても、表面正反射光の光量は変化しない。
【0182】
また、図25(C)に示されるように、図25(A)及び図25(B)に示される照射光に対して、Z軸方向に平行な軸まわりに180°回転した方向から同じ照明領域に同じ入射角で照射された光の表面正反射光の光量は、図25(A)及び図25(B)の場合と同じである。
【0183】
次に、図26(A)及び図26(B)に示されるように、YZ面に直交する方向から光が照射される場合は、記録紙の表面は凹凸のある斜面とみなすことができ、照射光の大部分は表面で拡散反射され、表面正反射光はほとんど発生しない。そこで、この場合は、表面拡散反射光の光量が、図25(A)及び図25(B)の場合よりも多くなる。
【0184】
また、記録紙の表面における照明領域がX軸方向にずれると、表面拡散反射光の光量は、照明領域の傾斜に応じて変化する。
【0185】
また、図26(A)及び図26(B)に示される照射光に対して、Z軸方向に平行な軸まわりに180°回転した方向から同じ照明領域に同じ入射角で照射された光の表面拡散反射光の光量は、図25(A)及び図25(B)の場合とは異なる。
【0186】
通常、記録紙は、流れ目の方向と記録紙の長辺方向とが平行となるように裁断され製紙されている場合が多い。そこで、上記実施形態では、X軸方向が記録紙における流れ目の方向と一致するように光学センサ2245を配置するのが好ましい。この場合、光検出器31の出力信号及び光検出器41の出力信号を安定化させることができる。そこで、プリンタ制御装置2090は、光検出器31の出力信号及び光検出器41の出力信号に基づいて記録紙の紙種判別処理を行う際に、記録紙のたわみや振動等によって、照明領域が基準面に対して傾斜しても、記録紙の紙種判別を更に精度良く行うことができる。
【0187】
また、光学センサ2245fを用いる場合には、流れ目の方向と長辺方向とが平行となるように裁断された記録紙、及び流れ目の方向と短辺方向とが平行となるように裁断された記録紙のいずれにも対応することができる。
【0188】
なお、記録紙の表面における凹凸の一軸配向性が100%でない場合には、最も配向性の高い方向がX軸方向と一致するように光学センサ2245を配置することにより、光学センサ2245から出力される各信号レベルの安定性を高めることができる。
【0189】
また、上記実施形態では、給紙トレイが1つの場合について説明したが、これに限定されるものではなく、給紙トレイが複数あっても良い。この場合は、給紙トレイ毎に光学センサ2245を設けても良い。
【0190】
また、上記実施形態において、搬送中に記録紙の銘柄を特定しても良い。この場合は、光学センサ2245は搬送路近傍に配置される。例えば、光学センサ2245を、前記給紙コロ2504と前記転写ローラ2042の間の搬送路近傍に配置しても良い。
【0191】
また、光学センサ2245によって識別される対象物は、記録紙に限定されるものではない。
【0192】
なお、上記実施形態では、画像形成装置としてカラープリンタ2000の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、光プロッタやデジタル複写装置であっても良い。
【0193】
また、上記実施形態では、画像形成装置が4つの感光体ドラムを有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0194】
また、光学センサ2245、及び上記各変形例は、記録紙にインクを吹き付けて画像を形成する画像形成装置にも適用可能である。
【0195】
なお、光学センサ2245e及び光学センサ2245fを対象物の厚さ検出へ応用することができる。従来の厚さセンサは透過型の構成となっており、必ず対象物を挟んだ双方向に光学系をそれぞれ配置しなければならなかった。そのため、支持部材などが必要であった。一方、光学センサ2245c及び光学センサ2245dでは、反射光のみで厚さを検出するため、対象物の一側にのみ光学系を配置すれば良い。そこで、部品点数を少なくすることができ、低コスト化及び小型化が可能となる。対象物の厚さ検出を必要とする画像形成装置内に設置するには最適である。そして、プリンタ制御装置2090は、検出された厚さに応じて画像形成条件を調整しても良い。
【0196】
また、光学センサ2245e及び光学センサ2245fを対象物の密度検出へ応用することができる。従来の密度センサは透過型の構成となっており、必ず対象物を挟んだ双方向に光学系をそれぞれ配置しなければならなかった。そのため、支持部材などが必要であった。一方、光学センサ2245c及び光学センサ2245dでは、反射光のみで密度を検出するため、対象物の一側にのみ光学系を配置すれば良い。そこで、部品点数を少なくすることができ、低コスト化及び小型化が可能となる。対象物の密度検出を必要とする画像形成装置内に設置するには最適である。そして、プリンタ制御装置2090は、検出された密度に応じて画像形成条件を調整しても良い。
【0197】
また、光学センサ2245及び上記各変形例を対象物の平滑度検出へ応用することができる。記録紙の表面は、平面部と傾面部とで構成され、その割合で記録紙表面の平滑性が決定される。平面部で反射された光は表面正反射光となり、斜面部で反射された光は表面拡散反射光となる。表面拡散反射光は、完全に散乱反射された反射光であり、その反射方向は等方性があるとみなせる。そして、平滑性が高くなるほど表面正反射光の光量が増加する。そして、プリンタ制御装置2090は、検出された平滑度に応じて画像形成条件を調整しても良い。
【0198】
また、光学センサ2245及び上記各変形例を対象物の傾斜角検出へ応用することができる。
【符号の説明】
【0199】
10…第1の光照射系、11…光源、12…コリメートレンズ、13…偏光素子、20…第2の光照射系、21…光源、22…コリメートレンズ、23…偏光素子、30…第1の正反射光検出系、31…光検出器、40…第2の正反射光検出系、41…光検出器、50…暗箱、60…第3の光照射系、61…光源、62…コリメートレンズ、63…偏光素子、70…第3の正反射光検出系、71…光検出器、80…拡散反射光検出系、81…光検出器、90…内部拡散反射光検出系、91…光検出器、92…偏光フィルタ(光学素子)、100…第4の光照射系、101…光源、102…コリメートレンズ、103…偏光素子、110…第4の正反射光検出系、111…光検出器、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2010…光走査装置、2030a,2030b,2030c,2030d…感光体ドラム(像担持体)、2032a,2032b,2032c,2032d…帯電装置、2033a,2033b,2033c,2033d…現像ローラ、2040…転写ベルト、2042…転写ローラ、2050…定着装置、2090…プリンタ制御装置(調整装置)、2245…光学センサ、2245a〜2245f…光学センサ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0200】
【特許文献1】特開2002−340518号公報
【特許文献2】特開2003−292170号公報
【特許文献3】特開2005−156380号公報
【特許文献4】特開平10−160687号公報
【特許文献5】特開2006−062842号公報
【特許文献6】特開平11−249353号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面に向けて、第1の方向から光を射出する第1の照射系と、
前記対象物の表面に向けて、前記第1の方向とは異なる第2の方向から光を射出する第2の照射系と、
前記第1の照射系から射出され前記対象物で正反射された光を受光する第1の正反射光受光系と、
前記第2の照射系から射出され前記対象物で正反射された光を受光する第2の正反射光受光系とを備え、
前記対象物は、平面上に載置され、前記第1及び第2の照射系から射出された光の前記平面に対する入射角は互いに等しい光学センサ。
【請求項2】
前記対象物の表面に向けて、前記第1及び第2の方向のいずれとも異なる第3の方向から光を射出する第3の照射系と、
前記第3の照射系から射出され前記対象物で正反射された光を受光する第3の正反射光受光系とを更に備え、
前記第3の照射系から射出された光の前記平面に対する入射角は、前記第1及び第2の照射系から射出された光の前記平面に対する入射角と等しいことを特徴とする請求項1に記載の光学センサ。
【請求項3】
前記対象物における前記各照射系からの光によって照明される領域の中心は、等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学センサ。
【請求項4】
前記第1の照射系から射出され前記対象物で拡散反射された光を受光する拡散反射光受光系を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学センサ。
【請求項5】
前記第1の照射系は、第1の偏光方向の直線偏光を射出し、
前記対象物における入射面内で、前記対象物で拡散反射された光の光路上に配置され、前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の直線偏光成分を透過させる光学素子、及び該光学素子を透過した光を受光する光検出器を含む拡散反射光検出系を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学センサ。
【請求項6】
前記第1の偏光方向は、前記平面に平行であることを特徴とする請求項5に記載の光学センサ。
【請求項7】
前記拡散反射光検出系は、前記平面の法線方向に拡散反射された光の光路上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の光学センサ。
【請求項8】
前記各照射系は、複数の発光部を有する面発光レーザアレイを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学センサ。
【請求項9】
記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、
前記記録媒体を対象物とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学センサを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学センサを用いて、平面上に載置された紙の種類を判別する判別方法であって、
前記紙は一の方向に流れ目を有し、
前記平面に直交する方向からみたとき、前記光学センサにおける第1及び第2の照射系から射出される光の進行方向が、前記一の方向に平行となるように、前記紙及び前記光学センサの少なくとも一方の位置を設定する工程と、
前記第1及び第2の照射系から光を射出する工程と、
前記光学センサにおける第1及び第2の正反射光受光系の出力信号に基づいて、前記紙の種類を判別する工程と、を含む判別方法。
【請求項1】
対象物の表面に向けて、第1の方向から光を射出する第1の照射系と、
前記対象物の表面に向けて、前記第1の方向とは異なる第2の方向から光を射出する第2の照射系と、
前記第1の照射系から射出され前記対象物で正反射された光を受光する第1の正反射光受光系と、
前記第2の照射系から射出され前記対象物で正反射された光を受光する第2の正反射光受光系とを備え、
前記対象物は、平面上に載置され、前記第1及び第2の照射系から射出された光の前記平面に対する入射角は互いに等しい光学センサ。
【請求項2】
前記対象物の表面に向けて、前記第1及び第2の方向のいずれとも異なる第3の方向から光を射出する第3の照射系と、
前記第3の照射系から射出され前記対象物で正反射された光を受光する第3の正反射光受光系とを更に備え、
前記第3の照射系から射出された光の前記平面に対する入射角は、前記第1及び第2の照射系から射出された光の前記平面に対する入射角と等しいことを特徴とする請求項1に記載の光学センサ。
【請求項3】
前記対象物における前記各照射系からの光によって照明される領域の中心は、等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学センサ。
【請求項4】
前記第1の照射系から射出され前記対象物で拡散反射された光を受光する拡散反射光受光系を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学センサ。
【請求項5】
前記第1の照射系は、第1の偏光方向の直線偏光を射出し、
前記対象物における入射面内で、前記対象物で拡散反射された光の光路上に配置され、前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の直線偏光成分を透過させる光学素子、及び該光学素子を透過した光を受光する光検出器を含む拡散反射光検出系を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学センサ。
【請求項6】
前記第1の偏光方向は、前記平面に平行であることを特徴とする請求項5に記載の光学センサ。
【請求項7】
前記拡散反射光検出系は、前記平面の法線方向に拡散反射された光の光路上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の光学センサ。
【請求項8】
前記各照射系は、複数の発光部を有する面発光レーザアレイを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学センサ。
【請求項9】
記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、
前記記録媒体を対象物とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学センサを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学センサを用いて、平面上に載置された紙の種類を判別する判別方法であって、
前記紙は一の方向に流れ目を有し、
前記平面に直交する方向からみたとき、前記光学センサにおける第1及び第2の照射系から射出される光の進行方向が、前記一の方向に平行となるように、前記紙及び前記光学センサの少なくとも一方の位置を設定する工程と、
前記第1及び第2の照射系から光を射出する工程と、
前記光学センサにおける第1及び第2の正反射光受光系の出力信号に基づいて、前記紙の種類を判別する工程と、を含む判別方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2013−53932(P2013−53932A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192440(P2011−192440)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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