説明

光学デバイスモジュール

【課題】ガラス材料に光学デバイス素子が搭載された光学デバイスモジュールの信頼性と生産性を向上させる。
【解決手段】光学デバイス素子より大きな形状で、かつ深さが前記光学素子の厚みより大きい凹部と、前記凹部に前記光学デバイス素子の少なくとも一部が納めることにより、軽量で、薄型・小型、かつ実装基板の背面から入射する光等による光ノイズ耐性に優れた光学デバイスモジュールを実現できる。この結果、取付け後の調製もほとんど不要となり、製造工程も大幅に簡略化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学デバイス素子をパッケージに実装した光学デバイスモジュールの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明部材を直接貼り付けた構成の光学デバイスモジュールは、有効受光領域の周囲に複数の突起電極が形成された光学デバイス素子と、電極パターンが形成された光学ガラス板とから構成されている。そして、光学ガラス板の電極パターン形成面の中央に、光学デバイス素子の有効受光領域を除く周辺領域が接合材料を介して接合されるとともに、電極パターンの一端が突起電極に電気的に接続されている。なお、配線パターンの他端側は外部接続用電極としている構成が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−242072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の光学デバイスモジュールの構成においては、光学ガラス板の電極パターンの一端と光学デバイス素子上の電極をフリップチップ方式で接合するための突起電極が、光学デバイス素子上の電極に形成されている。
【0005】
このため、従来の光学デバイスモジュールの構成では、光学デバイス素子が接続される配線基板に貫通開口が形成されている。この配線基板に光学デバイス素子を接続した場合、配線基板の裏面に配線を設けることが出来ず、光学デバイスモジュールの高密度化を妨げる。さらに、配線基板に光学デバイス素子を接合したままでは貫通開口背面から光が入射し光学特性を損ねるために、配線基板の背面から貫通開口内部を遮光性樹脂で充填する構成としているが、製造工程が煩雑で、部品点数も多くなり低コスト化を妨げるという課題を有する。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するもので、製造歩留りと光学特性に優れ、軽量で、薄型・小型の光学デバイスモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために、本発明の光学デバイスは、受光領域または発光領域と突起電極とが光学機能面に設けられた光学デバイス素子と、前記光学デバイス素子よりも広い面積を有し、前記光学デバイス素子に電気的に接続する電極および外部接続用電極が形成されている透明部材と、を備え、前記光学デバイス素子の前記光学機能面と、前記透明部材の前記電極形成面とは対向しており、前記突起電極と前記電極とが金属接合されていることによって電気的な接続が保持されている構成からなる。
【0008】
本発明の光学デバイスモジュールは、前記の光学デバイス素子と、前記光学デバイス素子を実装する透明部材を有しており、前記光学デバイス素子を格納する実装基板とを備え、前記実装基板には、前記光学デバイス素子を収容するための、前記光学デバイス素子より大きな形状で、かつ深さが前記光学素子の厚みより大きい凹部と、前記凹部の周囲に配置された第1の基板端子と、該第1の基板端子と凹部底部に有する第2の基板端子とを電気的に接続する基板配線とが前記凹部の最高部面と前記凹部底部最低部面に設けられており、前記凹部には前記光学デバイス素子の少なくとも一部が納められており、前記第1の基板端子及び前記第2の基板端子は、外部接続用電極に対向する位置に配置されているとともに、貫通電極35を介して外部接続用電極と電気的に接合されている構成からなる。
【0009】
このような構成とすることにより、軽量で、薄型・小型、かつ実装基板の背面から入射する光等による光ノイズ耐性に優れた光学デバイスモジュールを実現できる。この結果、取付け後の調製もほとんど不要となり、製造工程も大幅に簡略化できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学デバイスモジュールは、軽量で、薄型・小型で、かつ光学特性および品質の優れた光学デバイスモジュールを低コストで実現できるという大きな効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる光学デバイスモジュールを説明するための模式的に示した断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態にかかる光学デバイスモジュールの構成部材である実装基板3を説明するための模式的に示した上面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態にかかる光学デバイスモジュールの構成部材である実装基板3を説明するための模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施例では、いわゆる光学デバイス、光学デバイスモジュールとして説明する。光学デバイス、光学デバイスモジュールは照度センサーなどからなる受光電子部品またはLEDなどからなる発光電子部品である。
【0013】
これらの図において、それぞれの構成部材の厚みや長さ等は図面の作成上、実際の厚みや長さ等とは異なって描かれている。また、各構成部材の電極や端子の個数も実際とは異なり、図示しやすい数量としている。さらに、各構成部材の材質も下記説明の材質に限定されるものではない。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の形態にかかる光学デバイスモジュール100の断面図である。本実施の形態の光学デバイスモジュール100は、光学デバイス素子2と、前記光学デバイス素子を実装する透明部材1を有しており、前記光学デバイス素子2を格納する実装基板3とを備える。前記実装基板には、前記光学デバイス素子より大きな形状で、かつ深さが前記光学デバイス素子の厚みより大きい凹部4と、前記凹部4の周囲に配置された第1の基板端子31と、該第1の基板端子と凹部4底部に有する第2の基板端子33とを電気的に接続する基板配線32とが前記凹部4の最高部面と前記凹部4底部最低部面に設けられている。前記凹部には前記光学デバイス素子の少なくとも一部が納められる。前記第1の基板端子31及び前記第2の基板端子33が配置された面と反対側の面に、外部接続用電極34が配置される。第1の基板端子31と外部接続用端子34、及び第2の基板端子32と外部接続用端子34は、貫通電極35を介して電気的に接続される。
【0015】
実装基板3には、複数の貫通電極35が形成されている。また、凹部4の周囲に形成されている貫通電極35の一方側の端部に存する第1の基板端子31は、光学デバイスモジュール100の透明部材1に設けられた接続用電極11と対応する位置に配置されている。なお、第1の基板端子31と凹部4底部に有する第2の基板端子33とを電気的に接続する基板配線32はナノ金属ぺーストをインクジェットにより塗布することにより形成される。また、スパッタ、蒸着により基板配線32を形成しても良い。
【0016】
また、前記実装基板3は、例えばガラスエポキシ樹脂、アラミド不織布、ポリイミド樹脂、各種セラミック、ガラス、表面に絶縁被膜を備える金属板のうちのいずれかの材料を用いることができる。
【0017】
本実施の形態の光学デバイスモジュール100は、以下のようにして作製することができる。すなわち、実装基板3を構成する基材の一方の面の凹部4に、光学デバイスモジュール100の接続用電極11が実装基板3に形成された第1の基板端子31に接触する位置まで光学デバイス素子2を挿入する。この状態で、透明部材1の接続用電極11と実装基板3の第1の基板端子31とを位置合わせする。そして、両者間を加熱、加圧して電気的な接合と機械的な接着を行う。なお、両者間の接合は、導電性接着剤(異方性含む)やはんだ及びAuSn合金接続やナノ銀ペーストによる接続、非導電接着剤による収縮接続、あるいは陽極接合でも行うことができる。
【0018】
なお、前記透明部材1は、ソーダガラス、硬質ガラス、石英、アルミナガラス、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂等であって、少なくとも可視光に対して透明でかつ、実装基板3の基材と線膨張係数が同等レベルの材料を用いることにより、環境試験に強いモジュールを製作することができる。
【0019】
また、接続用電極11はナノ金属ペーストを直接透明部材1に塗布したが、導電性ペーストを印刷したもの、または蒸着やメッキにより形成したものであり、回路基板等の配線材料として通常用いられるものであれば特に制約なく用いることができる。例えば、銀、銅、ニッケル、金、クロム、アルミニウム等の単体構成、あるいはこれらの積層構成を用いることができる。
【0020】
また、凹部4底部に照度センサーを制御する半導体素子(図示せず)を実装することもできる。製造方法を以下に説明すると、前記照度センサーを制御する半導体素子の大きさを考慮した深さ及び底面積を有する凹部が形成された実装基板に予め、前記照度センサーを制御する半導体素子を実装した後、第1の実施の形態と同様のように透明部材1と電気的に接続することにより、制御機能を有する照度センサーを製造することも可能である。
【0021】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の形態にかかる光学デバイスモジュールの構成部材である実装基板3の上面図である。図3は、本発明の形態にかかる光学デバイスモジュールの構成部材である実装基板3の断面図である。実装基板3は、凹部4の内側面の少なくとも一面に凹部傾斜角度より緩やかな傾斜路5を備え、前記傾斜路5の最高部が前記凹部4を有する実装基板面の最高部と同一高さで、かつ前記傾斜路5の最低部が前記凹部の内側底部と同一高さで形成されている。前記凹部の周囲に配置された第1の基板端子と、前記凹部の底部に配置された第2の基板端子と、前記透明部材の接続用電極とを電気的に接続する基板配線は、ナノ金属ペーストで配線されている。
【0022】
前記光学デバイスモジュールにおいて、前記凹部の周囲に配置された第1の基板端子31と、前記凹部の底部に配置された第2の基板端子33と、前記透明部材の接続用電極とを電気的に接続する基板配線をインクジェットによりナノ金属ペーストを描画して配線するための傾斜路5を設けることにより、前記凹部4内側の急勾配の面より安定して基板配線32を形成できる。
【0023】
また、前記傾斜路5の最高部が前記凹部4を有する実装基板面の最高部と同一高さで、かつ前記傾斜路5の最低部が前記凹部の内側底部と同一高さで、最高部及び最低部のどちらか一方または双方に傾斜していない水平部分を設けることにより、インクジェットによりナノ金属ペースト描画の精度が向上することにより、接続端子として信頼性の高い端子形状を形成できる。
【0024】
なお、前記傾斜路5を設けて形成した凹部4を有する実装基板3を特徴とし、その他の部分は第1の実施形態と同じである。この透明部材2に用いる透明基材4の材料等については、第1の実施の形態の透明基材4と同じものを用いることができる。
【0025】
前記実装基板3は、例えばガラスエポキシ樹脂、アラミド不織布、ポリイミド樹脂、各種セラミック、ガラス、表面に絶縁被膜を備える金属板のうちのいずれかの材料を用いることができる。
【0026】
また、前記の実施形態の説明では光学デバイスモジュールが1個場合の製造方法を説明したが、複数の光学デバイスモジュールを一度に製造することもできる。以下に説明すると、複数の前記光学デバイス素子2を透明部材に所定の間隔で接合する。
【0027】
次に所定の間隔に複数の前記凹部4を実装基板に形成する。次に前記複数の凹部各々に前記光学デバイス素子の少なくとも一部が納まるように第1の実施の形態と同様な電気的な接続をする。次に、切断機を用いて複数の光学デバイスモジュールを各々に分割して製造する。上記の構成とすることで、軽量で、薄型・小型の光学デバイスモジュールを容易で、かつ歩留まりよく製造することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 透明部材
11 接続用電極
2 光学デバイス素子
3 実装基板
31 第1の基板端子
32 基板配線
33 第2の基板端子
34 外部接続用電極
35 貫通電極
4 凹部
5 傾斜路
100 光学デバイスモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光領域と突起電極、または発光領域と突起電極が、光学機能面に設けられた光学デバイス素子と、
前記光学デバイス素子より広い面積を有し、接続用電極と、前記光学機能面と対向するとともに前記突起電極と金属接合により電気的に接続される電極と、を有する透明部材と、
前記光学デバイス素子を格納するとともに、該光学デバイス素子と電気的に接続する実装基板と、から構成される光学デバイスモジュール。
【請求項2】
前記実装基板は、
前記光学デバイス素子を収容する凹部と、
前記凹部の周囲に配置された第1の基板端子と、
前記凹部の底部に配置された第2の基板端子と、
前記第1の基板端子及び第2の基板端子が配置された面とは反対側の面に配置された外部接続用電極と、
前記第1の基板端子と前記第2の基板端子を電気的に接続する基板配線と、を備え、
前記第1の基板端子及び第2の基板端子は、貫通電極を介して前記外部接続用電極と電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載の光学デバイスモジュール。
【請求項3】
前記基板配線をナノ金属ペーストで配線することを特徴とする請求項2に記載の光学デバイスモジュール。
【請求項4】
前記実装基板は、前記凹部の内側面の少なくとも一面に凹部傾斜角度より小さい角度を有する傾斜路を備え、
該傾斜路の最高部が前記実装基板面の最高部と同一高さで、かつ前記傾斜路の最低部が前記凹部の内側底部と同一高さであることを特徴とする請求項2または3に記載の光学デバイスモジュール。
【請求項5】
前記基板配線は、前記傾斜路上にインクジェットによりナノ金属ペーストを描画して配線することを特徴とする請求項4に記載の光学デバイスモジュール。
【請求項6】
前記傾斜路の最高部または最低部は、傾斜していない水平部分を有することを特徴とする請求項4に記載の光学デバイスモジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−134397(P2012−134397A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286683(P2010−286683)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】