説明

光学ドライブ装置

【課題】レーザ光の収束位置を調整するために必要な電力を低減できる光学ドライブ装置を提供する。
【解決手段】光学ドライブ装置は、張架された形状記憶合金(SMA)の変形度合いに応じた変位量で、対物レンズによるレーザ光の収束位置を調整できる。ここで、光ディスクは温度変形があるため熱源(光学ドライブ装置のモータ等)によって加熱されると反りが生じるが、上記SMAの引張応力を適度に調整することにより、光ディスクの温度変形に関する温度変化特性CD(CDf、CDg)に、SMAによるレーザ光の収束位置の変位に関する温度変化特性CJ(CJf、CJg)を略適合させる。これにより、80℃程度までの温度範囲においてはSMAを加熱するための通電を行うことなく光ディスクの変形に追従できるため、レーザ光の収束位置を調整するために必要な電力を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに関する情報の読取りおよび/または書込みが可能な光学ドライブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクに関する情報の読取り(および書込み)が可能な光学ドライブ装置においては、レーザ光が光ディスクの記録面に精度良く収束するように対物レンズの傾きを調整できるものがある。
【0003】
例えば特許文献1には、対物レンズの傾きを形状記憶合金(SMA)を用いて制御する技術が開示されている。この技術によれば、対物レンズを支持するSMAに加熱用のビームを照射して変形させることにより、対物レンズ(対物光学系)によるレーザ光の収束位置の調整が可能となっている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−161755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、レーザ光の収束位置の調整に加熱用ビームの照射が必要であるため、ビーム照射に必要な電力が過大となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、レーザ光の収束位置を調整するために必要な電力を低減できる光学ドライブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、光ディスクに関する情報の読取りおよび/または書込みが可能な光学ドライブ装置であって、(a)前記光ディスクを保持して回転駆動が可能な保持手段と、(b)前記保持手段に保持された光ディスクの記録面にレーザ光を収束させるための対物光学系と、(c)形状記憶合金部の変形度合いに応じた変位量で、前記対物光学系によるレーザ光の収束位置を調整可能な調整手段とを備えるとともに、前記光ディスクは、温度変形があり、前記レーザ光の収束位置に対応した箇所での変形に関する光ディスクの温度変化特性に、前記調整手段によるレーザ光の収束位置の変位に関する形状記憶合金部の温度変化特性を所定の温度範囲において略適合させている。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る光学ドライブ装置において、前記形状記憶合金部を所定の引張応力で張架することにより、前記形状記憶合金部の温度変化特性を前記光ディスクの温度変化特性に略適合させる。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る光学ドライブ装置において、700度を超える温度で形状記憶合金部を熱処理することにより、前記形状記憶合金部の温度変化特性を前記光ディスクの温度変化特性に略適合させる。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明に係る光学ドライブ装置において、前記形状記憶合金部は、異なる温度変化特性を有した複数の形状記憶合金からなっている。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る光学ドライブ装置において、1本の形状記憶合金を複数の区間に分け、前記複数の区間それぞれを異なる温度で熱処理することにより、前記複数の形状記憶合金が形成される。
【0012】
また、請求項6の発明は、請求項4の発明に係る光学ドライブ装置において、前記複数の形状記憶合金は、平行に張架された熱処理温度の異なる複数本の形状記憶合金である。
【0013】
また、請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかの発明に係る光学ドライブ装置において、(d)前記対物光学系を保持する光ヘッド本体をさらに備え、前記調整手段は、(c-1)前記形状記憶合金部の変形度合いに応じて前記光ヘッド本体に対する前記対物光学系の変位を与える手段を有する。
【0014】
また、請求項8の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかの発明に係る光学ドライブ装置において、(e)前記対物光学系を保持するホルダをさらに備え、前記ホルダの側面は、所定の弾性を有するとともに、前記ホルダの側面には、前記形状記憶合金部としてフィルム状の形状記憶合金が貼設されている。
【0015】
また、請求項9の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかの発明に係る光学ドライブ装置において、(f)前記対物光学系を保持する光ヘッド本体と、(g)前記光ヘッド本体をガイド部材に沿って移動させる移動手段とをさらに備え、前記ガイド部材は、前記形状記憶合金部を有するとともに、前記形状記憶合金部の変形に応じて前記ガイド部材が湾曲する。
【0016】
また、請求項10の発明は、請求項1ないし請求項9のいずれかの発明に係る光学ドライブ装置において、前記調整手段は、(c-2)前記光ディスクの温度変化特性より相対的に変形量が大きい温度変化特性の光ディスクが前記保持手段で保持される場合には、前記形状記憶合金部に通電を行うことにより前記形状記憶合金部の変形を助勢する通電手段を有する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1ないし請求項10の発明によれば、レーザ光の収束位置に対応した箇所での変形に関する光ディスクの温度変化特性に、調整手段によるレーザ光の収束位置の変位に関する形状記憶合金部の温度変化特性を所定の温度範囲において略適合させている。その結果、レーザ光の収束位置を調整するために必要な電力を低減できる。
【0018】
特に、請求項2の発明においては、形状記憶合金部を所定の引張応力で張架することにより形状記憶合金部の温度変化特性を光ディスクの温度変化特性に略適合させるため、温度変化特性の適合が容易になる。
【0019】
また、請求項3の発明においては、700度を超える温度で形状記憶合金部を熱処理することにより形状記憶合金部の温度変化特性を光ディスクの温度変化特性に略適合させるため、温度変化特性の適合が容易になる。
【0020】
また、請求項4の発明においては、形状記憶合金部は、異なる温度変化特性を有した複数の形状記憶合金からなっているため、光ディスクの温度変化特性に対する形状記憶合金の温度変化特性の適合を適切に行える。
【0021】
また、請求項5の発明においては、1本の形状記憶合金を複数の区間に分け、複数の区間それぞれを異なる温度で熱処理することにより、複数の形状記憶合金が形成されるため、異なる温度変化特性を有する複数の形状記憶合金を容易に生成できる。
【0022】
また、請求項6の発明においては、複数の形状記憶合金は平行に張架された熱処理温度の異なる複数本の形状記憶合金であるため、異なる温度変化特性を有した複数の形状記憶合金を容易に形成できる。
【0023】
また、請求項7の発明においては、形状記憶合金部の変形度合いに応じて光ヘッド本体に対する対物光学系の変位を与えるため、レーザ光の収束位置を容易に調整できる。
【0024】
また、請求項8の発明においては、所定の弾性を有するホルダの側面には、形状記憶合金部としてフィルム状の形状記憶合金が貼設されているため、レーザ光の収束位置を容易に調整できる。
【0025】
また、請求項9の発明においては、光ヘッド本体が移動するガイド部材は、形状記憶合金部を有するとともに、形状記憶合金部の変形に応じてガイド部材が湾曲するため、ディスクの中心からの温度変形特性とガイド軸の変形特性を略一致させることでより高精度なチルト補正が実現できるレーザ光の収束位置を容易に調整できる。
【0026】
また、請求項10の発明においては、変形量が相対的に大きい温度変化特性の光ディスクが保持手段で保持される場合には、形状記憶合金部に通電を行うことにより形状記憶合金部の変形を助勢するため、温度変形が比較的大きい光ディスクに対しても少ない消費電力で対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<第1実施形態>
<光学ドライブ装置の要部構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る光学ドライブ装置1の要部構成を示す外観図である。
【0028】
光学ドライブ装置1は、光ディスク9に関する情報の読取りおよび/または書込みが可能となっており、光ディスク9を保持して回転駆動可能なターンテーブル8と、ターンテーブル8に保持された光ディスク9の記録面にレーザ光を収束させるための対物レンズ(対物光学系)11と、を光ディスク9に対する対物レンズ11の相対的な変位を与える駆動部10とを備えている。
【0029】
駆動部10は、対物レンズ11が設けられた光学ヘッド12と、光学ヘッド12を2本のガイドシャフト13a、13bに沿って移動させるためのギア部14とを有している。このギア部14は、歯車14aと、光学ヘッド12の端部に取り付けられた歯車14と噛合するラック14bとを備えており、モータ(不図示)からの駆動力によって歯車14aが回転することにより光ディスク9の半径方向(ラジアル方向)Drに沿った光学ヘッド12の移動が可能となる。
【0030】
図2は、図1のII−II位置から見た断面図である。また、図3は、図2に示す矢印Wtの方向から光学ヘッド12を見た図である。
【0031】
光学ヘッド12においては、レーザ光源121から出射されたレーザ光LTがミラー122で反射された後に対物レンズ11を通って光ディスク9の記録面9aで収束することで、情報の記録、再生あるいは消去が行われる。そして、駆動部10において光学ヘッド12をラジアル方向Dr(図1)に移動させることにより、記録面9aの記録トラックに対するレーザ光LTの収束位置が制御される。
【0032】
光学ヘッド12は、レーザ光源121およびミラー122を収容するとともに、対物レンズ11をレンズホルダ部(以下では「ホルダ部」と略称する)16を介して保持するヘッド本体部15を備えている。このヘッド本体部15とホルダ部16との間には、一定の弾性を有する2本のスペーサ17(17a、17b)が介挿されている。
【0033】
ホルダ部16の下部側面には、例えば円柱形状を有する2つの突起16a、16bが設けられている。これらの突起16a、16bには、マルテンサイト変態開始温度以下の温度で外力を受けて塑性変形しても逆変態終了温度以上の温度に加熱されると記憶された形状(記憶形状)に復元するという特性を有する形状記憶合金のワイヤ(以下では「SMAワイヤ」ともいう)2が引っ掛けられている。そして、形状記憶合金部として働くSMAワイヤ2は、その両端がヘッド本体部15の上面に設けられた2つの導電性の端子15a、15bに固定されており、一定の張力で張架されている。
【0034】
SMAワイヤ2は、例えば図4に示す通電電流−変位の特性を有している。このため、SMAワイヤ2は、通電電流が電流値I1になるとジュール熱によってオーステナイト変態開始温度に加熱されるため収縮方向への変形が始まるとともに、変態終了温度に加熱される電流値I2に達すると記憶形状に復元して変形が完了する。なお、SMAワイヤ2の通電電流−変位特性については、ヒステリシスを有しており、電流増加方向の特性(実線)と電流減少方向の特性(破線)とが異なっている。
【0035】
以上のようなSMAワイヤ2の両端を固定する端子15aおよび端子15bの間に電位を与えて通電を行うと通電量(電流値)に応じたSMAワイヤ2の収縮が生じる。このSMAワイヤ2の収縮によって図5に示すようにスペーサ17aが上下方向に縮むため、ホルダ部16がラジアル方向Dr(図1)に傾斜(以下では「ラジアル・チルト」ともいう)することとなる。すなわち、SMAワイヤ2の収縮度合い(変形度合い)に応じてヘッド本体部15に対する対物レンズ11の変位が与えられる。
【0036】
一方、光ディスク9は、その温度上昇に応じてラジアル方向Drに反っていく特性(温度変形特性)を有している。よって、モータ80やレーザ光源121などの熱源からの放熱によって光ディスク9の温度が上昇すると、図5の破線Prに示ような光ディスク9の(記録面9aの)が低下する変形状態となる。
【0037】
このように光ディスク9が変形した場合には、SMAワイヤ2に通電することで光ディスク9の変形度合いに対応したホルダ部16のラジアル・チルト補正を実施することが可能である。すなわち、通電によるSMAワイヤ2の収縮度合い(変形度合い)に応じた変位量でレーザ光の収束位置Vpを調整できる。なお、光ディスク9の変形度合いは、例えばヘッド本体部15の上面に取り付けられた変形感知センサ18(図1)で検出可能である。これにより、周囲温度の上昇によって光ディスク9が変形する場合でも、変形感知センサ18からの出力に基づきレーザ光LTの収束位置を光ディスク9の記録面9a上に位置制御できることとなる。
【0038】
以上のように光ディスク9の変形に対しては、SMAワイヤ2への通電による対物レンズ11のラジアル・チルト補正によって対応可能となっているが、この場合には一定の電力が必要となる。そこで、本実施形態の光学ドライブ装置1では、上記のラジアル・チルト補正に必要な電力の低減が図れる構成(具体的にはSMAワイヤ2の温度変化特性)を採用しているが、この構成について以下で詳しく説明する。
【0039】
<SMAの温度変化特性について>
図6は、SMAの変形に関する従来の温度変化特性を説明するためのグラフである。本図の温度変化特性については、SMA(例えばSMAワイヤ2)に190MPaの引張応力を与えた状態で得られるひずみを変位量として示している。
【0040】
700℃で熱処理(形状記憶処理)されたNiTiCu合金(各成分比率は例えばNi48%、Ti42%、Cu10%)からなるSMAは、温度変化特性CP(CPf、CPg)を有している。なお、温度変化特性CPについては、上述した図4の特性のようにヒステリシスを持っており、温度上昇方向の特性CPfと温度下降方向の特性CPgとが異なっている。
【0041】
一方、光ディスク9においては、対物レンズ11によるレーザ光LTの収束位置Vpに対応した箇所での変形に関して例えば温度変化特性CD(CDf、CDg)を有している。なお、光ディスクの温度変形については、ディスク材料によって多少異なっているが、図6の温度変化特性CDは温度変形が比較的小さい光ディスクの特性に対応している。
【0042】
ここで、光ディスク9の温度が例えば80℃に達した場合には、光ディスクの温度変化特性CDとSMAに関する温度変化特性CPとの間には偏差Erが生じてしまう。この場合には、偏差Erを補うためのSMAワイヤ2の通電を行うことでラジアル・チルト補正が適切に実施される。
【0043】
なお、670℃で熱処理されたNiTi合金からなるSMAは、上記の温度変化特性CPより光ディスク9の温度変化特性CDから乖離している温度変化特性CQ(CQf、CQg)を有している。よって、この温度変化特性CQを持つSMAは、温度変化特性CPを持つSMAよりラジアル・チルト補正に必要な消費電力が大きくなる。また、70℃以上では、過補正状態となってしまい、対応温度が小さくなってしまう。
【0044】
以上のように温度変化特性CP(や温度変化特性CQ)を有するSMAでは、光ディスク9の変形に応じたSMAの通電が必要であり、電力消費は少なくない。
【0045】
図7は、SMAワイヤ2で使用するSMAの変形に関する温度変化特性CJを示す図である。
【0046】
SMAの温度変化特性CJ(CJf、CJg)については、700℃で熱処理されたNiTiCu合金(各成分比率は例えばNi48%、Ti42%、Cu10%)からなるSMAを100MPaの引張応力を与えた状態で得られるひずみを変位量として示している。
【0047】
このようにSMAに適度な引張応力を与えることで、光ディスク9の温度が80℃に上昇する場合でも光ディスク9の変位にSMA(レーザ光の収束位置Vp)の変位が追従できることとなる。すなわち、SMAワイヤ2を例えば100MPaの引張応力で張架することにより、レーザ光の収束位置Vpに対応した箇所での変形に関する光ディスク9の温度変化特性CDに、上記のラジアル・チルト補正によるレーザ光の収束位置Vpの変位に関するSMAワイヤ2の温度変化特性CJfを80℃程度までの温度範囲において略適合させることができる。これにより、80℃以下の温度では、SMAワイヤ9に通電することなく光ディスク9の変形にレーザ光の収束位置Vpが自動的に追従するため、消費電力の低減が図れることとなる。
【0048】
一方、図7に示す温度変化特性CDは温度変形が比較的小さい光ディスク9の場合であったが、図8に示すように温度変形が比較的大きい温度変化特性CE(CEf、CEg)を有する光ディスク9に対しては、温度変化特性CE、CJの偏差Esを補うためのSMAワイヤ2の通電が必要となる。すなわち、図7に示す光ディスクの温度変化特性CDより相対的に変形量が大きい温度変化特性CEの光ディスクがターンテーブル8に保持される場合には、SMAワイヤ2に通電を行うことによりSMAワイヤ2の収縮(変形)を助勢する。このような場合においても、図6に示す温度変化特性CPを有する従来のSMAより消費電力の低減が図れることとなる。
【0049】
以上のような温度変化特性CJを有するSMAワイヤ2を採用する光学ドライブ装置1では、図7に示すように光ディスク9の温度変化特性CDにSMAワイヤ2に関する温度変化特性CJが略一致しているため、光ディスク9の温度変形にレーザ光の収束位置Vpが自動的に追従することとなる。その結果、レーザ光の収束位置Vpを調整するために必要な電力を低減できる。
【0050】
なお、図7に示すSMAの温度変化特性CJについては、SMAの引張応力を調整することで実現するのは必須でなく、従来に比べて高い温度で熱処理を行うことで実現しても良い。すなわち、NiTiCu合金(各成分比率は例えばNi48%、Ti42%、Cu10%)からなるSMAを七百度を超える温度、例えば七百数十度で熱処理することでも、図7に示す温度変化特性CJを実現できる。
【0051】
また、光学ドライブ装置1におけるラジアル・チルト補正については、SMAワイヤを用いて実施するのは必須でなく、フィルム状のSMAを用いて実施するようにしても良い。例えば、一定の弾性を有するホルダ部16の側面にSMAの箔3を貼設するようにする(図9)。これにより、SMA箔3に通電を行えばSMA箔3が収縮するため、図10に示すようにホルダ部16が変形して、ラジアル・チルト補正が行えることとなる。
【0052】
<第2実施形態>
<光学ドライブ装置の要部構成>
図11は、本発明の第2実施形態に係る光学ドライブ装置1Aの要部構成を示す外観図である。また、図12は、光学ドライブ装置1Aの要部構成を示す側面図である。
【0053】
光学ドライブ装置1Aは、第1実施形態の光学ドライブ装置1に対応するドライブユニットPKを備えている。なお、ドライブユニットPKでは図3に示す第1実施形態のSMAワイヤ2が削除されている。
【0054】
光学ドライブ装置1Aは、ドライブユニットPKを光ディスク9のラジアル方向Drに傾けるための回動部19(19a、19b)が設けられたベースBSを備えている。ベースBSには、その上面に2つの導電性の端子21a、21bが設けられている。そして、端子21a、21bに固定されるSMAワイヤ2Aが、ドライブユニットPKの側面に形成された2つの突起22(22a、22b)に引っ掛けられるとともに、ベースBSとドライブユニットPKとの間に例えばバネからなる弾性体BNが介挿されている。
【0055】
このような光学ドライブ装置1Aの構成により、SMAワイヤ2Aの両端を固定する端子21aおよび端子21bの間に電位を与えて通電を行うとSMAワイヤ2Aが収縮する。このSMAワイヤ2の収縮によって図13に示すようにドライブユニットPKが傾くこととなる。その結果、図14に示すようにホルダ部16を含む光学ヘッド12全体が光ディスク9のラジアル方向Drに傾斜するため、ラジアル・チルト補正が可能となる。
【0056】
第2実施形態のSMAワイヤ2Aにおいても、第1実施形態のSMAワイヤ2と同様に図7に示す温度変化特性CJを有するようにする。これにより、光ディスク9の温度変化特性CDとSMAワイヤ2Aに関する温度変化特性CJfが略一致する温度範囲、具体的には80℃程度までの温度範囲については、SMAワイヤ9に通電を行うことなく光ディスク9の温度変形に追従できるため、消費電力の低減が図れることとなる。
【0057】
なお、図8に示す温度変化特性CEのように温度変形が比較的大きい光ディスク9の場合には、温度変化特性CE、CJの偏差Esを補うためのSMAワイヤ2の通電が必要となる。この場合においても、第1実施形態と同様に図6に示す温度変化特性CPを有する従来のSMAより消費電力の低減が図れることとなる。
【0058】
以上のような温度変化特性CJを有するSMAワイヤ2Aを採用する光学ドライブ装置1Aでは、図7に示すように光ディスク9の温度変化特性CDにSMAワイヤ2Aに関する温度変化特性CJが略一致しているため、光ディスク9の温度変形にレーザ光の収束位置Vpが自動的に追従することとなる。その結果、レーザ光の収束位置Vpを調整するために必要な電力を低減できる。
【0059】
なお、光ヘッド全体のラジアル・チルト補正については、図13に示すようにSMAワイヤ2Aの収縮によって実現するのは必須でなく、以下で説明するラジアル・チルト補正機構で実現するようにしても良い。
【0060】
図15は、ラジアル・チルト補正機構が設けられた光学ドライブ装置4の要部構成を示す上面図である。
【0061】
光学ドライブ装置4は、光ディスク9を載置して回転駆動させるターンテーブル40と、レーザ光が出射される対物レンズ41を光ディスク9のラジアル方向Dtに駆動する駆動部50とを備えている。
【0062】
駆動部50は、対物レンズ41を保持するヘッド本体部51と、ヘッド本体部51を2本のガイドシャフト42(42a、42b)に沿って移動させるためのギア部43とを有している。このギア部43にはモータ45に連結されたリードスクリュー44が噛合されており、モータ45からの駆動力によってラジアル方向Drに沿ったヘッド本体部51の移動が可能である。
【0063】
ガイドシャフト(ガイド部材)42は、その一端が固定部45(45a、45b)で固定されるとともに、他端が一定の弾性を有する弾性保持部46(46a、46b)で保持されている(図17(a))。また、ガイドシャフト42は、例えば金属製の上半部42sに形状記憶合金で形成される下半部42tが貼り合わされた構造となっている。
【0064】
このようなガイドシャフト42の構造により、図17(b)に示すように通電による下半部42tの収縮(変形)度合いに応じてガイドシャフト42が湾曲することとなるため、ヘッド本体部51全体がラジアル方向Dt(図15)に傾斜するラジアル・チルト補正が可能となる。
【0065】
ここで、ガイドシャフト42の変形においても、第1実施形態のSMAワイヤ2と同様に図7に示す温度変化特性CJを有するようにする。これにより、光ディスクの温度変化特性CDとガイドシャフト42に関する温度変化特性CJfが略一致する温度範囲、具体的には80℃程度までの温度範囲については、ガイドシャフト42(の下半部42t)に通電を行うことなく光ディスクの温度変形に追従できるため、消費電力の低減が図れることとなる。
【0066】
<変形例>
上記の各実施形態においては、図7に示す温度変化特性CJを有するSMAワイヤを採用するのは必須でなく、以下で説明する温度変化特性を有する多段階変態のSMAワイヤを採用しても良い。
【0067】
図18は、本発明の変形例に係るSMAの変形に関する温度変化特性CKを示す概念図である。
【0068】
温度変化特性CK(CKf、CKg)については、図19に示すように1本のSMAワイヤ2Bを2つの区間Da、Dbに分け各区間Da、Dbを異なる温度で熱処理することによって実現している。例えばNiTiCu合金で形成されるSMAワイヤ2Bについて区間Daを七百度で熱処理するとともに区間Dbを七百数十度で熱処理することにより、図6に示す温度変化特性CPと図7に示す温度変化特性CJとが合成された温度変化特性CKが得られることとなる。
【0069】
このような2段階変態のSMAワイヤ2Bにより、光ディスクの温度変化特性CDとSMAに関する温度変化特性CKとが略一致するため、100℃程度までの温度範囲においてはSMAワイヤ2Bに通電を行うことなく光ディスクの温度変形に自動的に追従でき、消費電力の低減が図れることとなる。
【0070】
なお、図19に示すように1本のSMAワイヤを2区間に分けるのは必須でなく、3以上の区間に分けて各区間を異なる温度で熱処理しても良い。
【0071】
また、図20に示すように例えば七百度および七百数十度など熱処理温度の異なる2本のSMA2Ca、2Cbを平行に張架することによって、2段階変態の形状記憶合金部2Cを形成しても良い。この場合にも、図18に示す温度変化特性CKを実現できるため、形状記憶合金部2Cに通電を行うことなく光ディスクの温度変形に追従でき、消費電力の低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学ドライブ装置1の要部構成を示す外観図である。
【図2】図1のII−II位置から見た断面図である。
【図3】図2に示す矢印Wtの方向から光学ヘッド12を見た側面図である。
【図4】SMAの通電電流−変位の特性を示す図である。
【図5】SMAワイヤ2によるラジアル・チルト補正を説明するための図である。
【図6】SMAの変形に関する従来の温度変化特性を説明するためのグラフである。
【図7】SMAワイヤ2で使用するSMAの変形に関する温度変化特性CJを示す図である。
【図8】温度変形が比較的大きい温度変化特性CEの光ディスク9に対するラジアル・チルト補正を説明するための図である。
【図9】SMAの箔3によるラジアル・チルト補正を説明するための図である。
【図10】SMAの箔3によるラジアル・チルト補正を説明するための図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る光学ドライブ装置1Aの要部構成を示す外観図である。
【図12】光学ドライブ装置1Aの要部構成を示す側面図である。
【図13】光学ドライブ装置1Aにおけるラジアル・チルト補正を説明するための図である。
【図14】光学ドライブ装置1Aにおけるラジアル・チルト補正を説明するための図である。
【図15】ラジアル・チルト補正機構が設けられた光学ドライブ装置4の要部構成を示す上面図である。
【図16】ガイドシャフト42の構成を説明するための図である。
【図17】ガイドシャフト42によるラジアル・チルト補正を説明するための図である。
【図18】本発明の変形例に係るSMAの変形に関する温度変化特性CKを示す概念図である。
【図19】温度変化特性CKを実現するためのSMAワイヤ2Bの構成を示す図である。
【図20】温度変化特性CKを実現するための形状記憶合金部2Cの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1、1A、4 光学ドライブ装置
2、2A、2B SMAワイヤ
2C 形状記憶合金部
3 SMAの箔
9 光ディスク
9a 記録面
10、10A 駆動部
11、41 対物レンズ
12 光ヘッド
13a、13b、42、42a、42b ガイドシャフト
15、51 ヘッド本体部
16 レンズホルダ部
19、19a、19b 回動部
45、45a、45b 固定部
46、46a、46b 弾性保持部
CD、CDf、CDg 光ディスクの変形に関する温度変化特性
CE、CEf、CEg 光ディスクの変形に関する温度変化特性
CJ、CJf、CJg SMAの変形に関する温度変化特性
CK、CKf、CKg SMAの変形に関する温度変化特性
Dr、Dt ラジアル方向(光ディスクの半径方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに関する情報の読取りおよび/または書込みが可能な光学ドライブ装置であって、
(a)前記光ディスクを保持して回転駆動が可能な保持手段と、
(b)前記保持手段に保持された光ディスクの記録面にレーザ光を収束させるための対物光学系と、
(c)形状記憶合金部の変形度合いに応じた変位量で、前記対物光学系によるレーザ光の収束位置を調整可能な調整手段と、
を備えるとともに、
前記光ディスクは、温度変形があり、
前記レーザ光の収束位置に対応した箇所での変形に関する光ディスクの温度変化特性に、前記調整手段によるレーザ光の収束位置の変位に関する形状記憶合金部の温度変化特性を所定の温度範囲において略適合させていることを特徴とする光学ドライブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学ドライブ装置において、
前記形状記憶合金部を所定の引張応力で張架することにより、前記形状記憶合金部の温度変化特性を前記光ディスクの温度変化特性に略適合させることを特徴とする光学ドライブ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光学ドライブ装置において、
700度を超える温度で形状記憶合金部を熱処理することにより、前記形状記憶合金部の温度変化特性を前記光ディスクの温度変化特性に略適合させることを特徴とする光学ドライブ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光学ドライブ装置において、
前記形状記憶合金部は、異なる温度変化特性を有した複数の形状記憶合金からなっていることを特徴とする光学ドライブ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光学ドライブ装置において、
1本の形状記憶合金を複数の区間に分け、前記複数の区間それぞれを異なる温度で熱処理することにより、前記複数の形状記憶合金が形成されることを特徴とする光学ドライブ装置。
【請求項6】
請求項4に記載の光学ドライブ装置において、
前記複数の形状記憶合金は、平行に張架された熱処理温度の異なる複数本の形状記憶合金であることを特徴とする光学ドライブ装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の光学ドライブ装置において、
(d)前記対物光学系を保持する光ヘッド本体、
をさらに備え、
前記調整手段は、
(c-1)前記形状記憶合金部の変形度合いに応じて前記光ヘッド本体に対する前記対物光学系の変位を与える手段、
を有することを特徴とする光学ドライブ装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の光学ドライブ装置において、
(e)前記対物光学系を保持するホルダ、
をさらに備え、
前記ホルダの側面は、所定の弾性を有するとともに、
前記ホルダの側面には、前記形状記憶合金部としてフィルム状の形状記憶合金が貼設されていることを特徴とする光学ドライブ装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の光学ドライブ装置において、
(f)前記対物光学系を保持する光ヘッド本体と、
(g)前記光ヘッド本体をガイド部材に沿って移動させる移動手段と、
をさらに備え、
前記ガイド部材は、前記形状記憶合金部を有するとともに、前記形状記憶合金部の変形に応じて前記ガイド部材が湾曲することを特徴とする光学ドライブ装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の光学ドライブ装置において、
前記調整手段は、
(c-2)前記光ディスクの温度変化特性より相対的に変形量が大きい温度変化特性の光ディスクが前記保持手段で保持される場合には、前記形状記憶合金部に通電を行うことにより前記形状記憶合金部の変形を助勢する通電手段、
を有することを特徴とする光学ドライブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−226852(P2007−226852A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43596(P2006−43596)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】